(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136600
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】細隙灯顕微鏡
(51)【国際特許分類】
A61B 3/135 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
A61B3/135
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047755
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100107010
【弁理士】
【氏名又は名称】橋爪 健
(72)【発明者】
【氏名】須賀 隆之
(72)【発明者】
【氏名】阿部 光
(72)【発明者】
【氏名】本田 成
(72)【発明者】
【氏名】渥實 智海
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AB19
4C316FA18
4C316FB21
4C316FY02
4C316FZ01
(57)【要約】
【課題】 撮影画像からスリットの長さを自動で調整して鮮明な画像を取得すること。
【解決手段】 スリット光を照射し、被検眼(前眼部、角膜等)を撮像部(カメラ、対物レンズ等を備える。)で撮影し、演算制御部(演算回路等を備える。)で画像処理を行う。そして、画像処理の結果をスリット長駆動部(スリット長開閉機構等を備える。)にフィードバックし、照明発光部(スリット光源部等を備える。)によるスリット光の範囲を変化・調整して設定する。設定されたスリット長のスリットでスリット光を被検眼に照射して、撮像部で撮影する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細隙灯顕微鏡において、
スリットを介して照明光を被検眼へ照射する照明発光部と、
スリットのスリット長を制御するスリット長駆動部と、
被検眼を撮影する撮像部と、
演算制御部と、
を備え、
前記演算制御部は、前記照明発光部により、予め定められたスリット長のスリット光を被検眼に照射して、前記撮像部により被検眼の画像を取得し、
前記演算制御部は、被検眼の画像内に閾値以上の輝度値が無いようにスリットのスリット長を求め、
前記演算制御部は、前記スリット長駆動部により前記求めたスリット長にスリットを設定して、前記照明発光部によりスリット光を照射して、前記撮像部により画像を撮影する、
ことを特徴とする細隙灯顕微鏡。
【請求項2】
請求項1に記載された細隙灯顕微鏡において、
前記演算制御部は、前記照明発光部により、第1の長さのスリット長のスリット光を被検眼に照射し、
前記演算制御部は、前記スリット長駆動部により、スリット長を予め定められた長さ分、順次長くするように変化させていき、前記撮像部により取得した被検眼画像内に閾値以上の輝度値があると判定した直前の閾値以上の輝度値が無い状態のスリット長を求める、
ことを特徴とする細隙灯顕微鏡。
【請求項3】
請求項1に記載された細隙灯顕微鏡において、
前記演算制御部は、前記照明発光部により、第2の長さのスリット長のスリット光を被検眼に照射し、
前記演算制御部は、前記スリット長駆動部により、スリット長を予め定められた長さ分順次短くするように変化させていき、前記撮像部により取得した被検眼画像内に閾値以上の輝度値がないと判定したと場合のスリット長を求める、
ことを特徴とする細隙灯顕微鏡。
【請求項4】
請求項1に記載された細隙灯顕微鏡において、
前記演算制御部は、前記照明発光部により、第2の長さのスリット長のスリット光を被検眼に照射し、
前記演算制御部は、被検眼画像から閾値以上の輝度値の長さを算出し、
前記演算制御部は、前記スリット長駆動部により、算出した長さ分スリット長を短く制御することでスリット長を求める、
ことを特徴とする細隙灯顕微鏡。
【請求項5】
請求項1に記載された細隙灯顕微鏡において、
前記演算制御部は、スリット光を照射しないで第1の被検眼画像を取得し、
前記演算制御部は、前記照明発光部により、第2の長さのスリット長のスリット光を被検眼に照射して第2の被検眼画像を取得し、
前記演算制御部は、前記スリット長駆動部により、スリット長を予め定められた長さ分順次短くするように変化させていき、前記第1の被検眼画像と前記第2の被検眼画像の差分画像内に閾値以上の輝度値がないと判定したと場合のスリット長を求める、
ことを特徴とする細隙灯顕微鏡。
【請求項6】
請求項1に記載された細隙灯顕微鏡において、
前記演算制御部は、スリット光を照射しないで第1の被検眼画像を取得し、
前記演算制御部は、前記照明発光部により、第1の長さのスリット長のスリット光を被検眼に照射して第2の被検眼画像を取得し、
前記演算制御部は、前記スリット長駆動部により、スリット長を予め定められた長さ分順次長くするように変化させていき、前記第1の被検眼画像と前記第2の被検眼画像の差分画像内に閾値以上の輝度値があると判定した直前の状態の閾値以上の輝度値が無い状態のスリット長を求める、
ことを特徴とする細隙灯顕微鏡。
【請求項7】
請求項1に記載された細隙灯顕微鏡において、
前記演算制御部は、スリット光を照射しないで第1の被検眼画像を取得し、
前記演算制御部は、前記照明発光部により、第2の長さのスリット長のスリット光を被検眼に照射して第2の被検眼画像を取得し、
前記演算制御部は、前記第1の被検眼画像と前記第2の被検眼画像の差分画像内に閾値以上の輝度値の箇所の長さを算出し、
前記スリット長駆動部により算出された長さ分スリット長を短くすることでスリット長を求める、
ことを特徴とする細隙灯顕微鏡。
【請求項8】
細隙灯顕微鏡において、
照明光をスリットを介して被検眼へ照射する照明発光部と、
前記照明発光部のスリットのスリット長を制御するスリット長駆動部と、
被検眼からの反射光を検出するセンサーと、
演算制御部と、
を備え、
前記演算制御部は、前記照明発光部により、予め定められたスリット長のスリット光を被検眼に照射して、前記センサーにより被検眼からの反射光のセンサー値を検出し、
前記演算制御部は、前記センサーが予め定められた閾値以上のセンサー値の反射光を検知しないようにスリット長を求め、
前記演算制御部は、前記スリット長駆動部により前記求めたスリット長にスリットを設定して、前記照明発光部によりスリット光を照射して、前記撮像部により画像を撮影する、
ことを特徴とする細隙灯顕微鏡。
【請求項9】
請求項8に記載された細隙灯顕微鏡において、
前記演算制御部は、前記照明発光部から、第2の長さのスリット長のスリット光を被検眼に照射して、
前記演算制御部は、前記スリット長駆動部により、スリット長を予め定められた長さ分順次短くするように変化させていき、前記センサー値が予め定められた閾値を超えなくなった場合のスリット長を求める、
ことを特徴とする細隙灯顕微鏡。
【請求項10】
請求項8に記載された細隙灯顕微鏡において、
前記演算制御部は、前記照明発光部から、第1の長さのスリット長のスリット光を被検眼に照射して、
前記演算制御部は、前記スリット長駆動部により、スリット長を予め定められた長さ分順次長くするように変化させていき、前記センサーにより検出センサー値に閾値以上の値があると判定した直前の状態の閾値以上の値が無い状態のスリット長を求める、
ことを特徴とする細隙灯顕微鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細隙灯顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、細隙灯顕微鏡(スリットランプ顕微鏡)に関しては、例えば、次のような特許文献がある。
例えば、特許文献1には、「スリットランプ顕微鏡において、照明系の条件を検知する検知手段を有し、前記検知手段の検知結果に基づき照明光源の光度を制御することを特徴とする」(請求項1)ことが記載されている。
また、特許文献2には、「有効な光軸に配置される光調整部材を複数の光調整部材から選択可能である眼科装置」(要約)が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-187064号公報
【特許文献2】特開2021-153775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、眼球を撮影した際に、眼球結膜及び皮膚の反射率が高いために、飽和状態の輝度値又は予め定められた閾値以上状態の輝度値が存在する画像が撮影される場合がある。そのため、例えば、撮影したい箇所(角膜、瞳孔等)のオートゲインが掛かりづらい場合があり、画像が鮮明にならない場合があった。
【0005】
本発明は、以上の点に鑑み、撮影画像からスリットの長さをオート(自動)で調整して鮮明な画像を取得することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の解決手段によると、
細隙灯顕微鏡において、
スリットを介して照明光を被検眼へ照射する照明発光部と、
スリットのスリット長を制御するスリット長駆動部と、
被検眼を撮影する撮像部と、
演算制御部と、
を備え、
前記演算制御部は、前記照明発光部により、予め定められたスリット長のスリット光を被検眼に照射して、前記撮像部により被検眼の画像を取得し、
前記演算制御部は、被検眼の画像内に閾値以上の輝度値が無いようにスリットのスリット長を求め、
前記演算制御部は、前記スリット長駆動部により前記求めたスリット長にスリットを設定して、前記照明発光部によりスリット光を照射して、前記撮像部により画像を撮影する、
ことを特徴とする細隙灯顕微鏡である。
【0007】
本発明の第2の解決手段によると、
細隙灯顕微鏡において、
スリットを介して照明光を被検眼へ照射する照明発光部と、
前記照明発光部のスリットのスリット長を制御するスリット長駆動部と、
被検眼からの反射光を検出するセンサーと、
演算制御部と、
を備え、
前記演算制御部は、前記照明発光部により、予め定められたスリット長のスリット光を被検眼に照射して、前記センサーにより被検眼からの反射光のセンサー値を検出し、
前記演算制御部は、前記センサーが予め定められた閾値以上のセンサー値の反射光を検知しないようにスリット長を求め、
前記演算制御部は、前記スリット長駆動部により前記求めたスリット長にスリットを設定して、前記照明発光部によりスリット光を照射して、前記撮像部により画像を撮影する、
ことを特徴とする細隙灯顕微鏡である。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、撮影画像からスリットの長さを自動で調整して鮮明な画像を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】(A)第1の実施の形態の細隙灯顕微鏡の効果についての説明図、(B)第1の実施の形態の細隙灯顕微鏡の概略構成図。
【
図5】第1の実施の形態の細隙灯顕微鏡の制御系のブロック構成図。
【
図6】第1の実施の形態の細隙灯顕微鏡の動作を表す第1のフローチャート。
【
図8】第1の実施の形態の細隙灯顕微鏡の動作を表す第2のフローチャート。
【
図9】第1の実施の形態の細隙灯顕微鏡の動作を表す第3のフローチャート。
【
図10】第1の実施の形態の細隙灯顕微鏡の動作を表す第4のフローチャート。
【
図11】第2の実施の形態の細隙灯顕微鏡の概略構成図。
【
図13】第2の実施の形態の細隙灯顕微鏡の動作を表す第1のフローチャート。
【
図14】第2の実施の形態の細隙灯顕微鏡の動作を表す第2のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
この発明に係る細隙灯顕微鏡の実施形態の一例について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、この明細書に記載された文献の記載内容を、以下の実施形態の内容として適宜援用することが可能である。
まず方向を定義しておく。装置光学系において最も被検者側に位置する光学素子から被検者に向かう方向を前方向(z方向)とし、その逆方向を後方向とする。また、前方向に直交する水平方向を左右方向(x方向)とする。更に、前後方向と左右方向の双方に直交する方向を上下方向(y方向)とする。
【0011】
A.細隙灯顕微鏡の一例
図1に、細隙灯顕微鏡の一例の外観構成図を示す。
図2に、細隙灯顕微鏡の一例の概要構成図を示す。
この実施形態に係る細隙灯顕微鏡の外観構成について、
図1及び
図2を参照しながら説明する。なお、本発明はこの他にも適宜の細隙灯顕微鏡又は眼科装置に適用することができる。
細隙灯顕微鏡1には、演算制御部(CPU、コンピュータ)H-8が接続されている。演算制御部H-8は、各種の制御処理や演算処理を行う。演算制御部H-8には、被検眼Eの前眼部Eaの画像を撮影し結果を出力するまでの一連の動作指令を予め記憶部H-7に記憶させておき、後述する顎受け台10に配置した圧力センサー等で被検者を検知した後自動的に動作を行わせることができる。一連の動作指令はバージョンアップされるごとに書き換えることができる。なお、顕微鏡1本体(光学系等を格納する筐体)とは別に演算制御部H-8を設ける代わりに、顕微鏡1本体に同様のコンピュータを搭載した構成を適用することも可能である。またモニター等の表示部(表示装置)H-10を接続し撮影カメラ5aで撮影した被検眼Eの前眼部Ea等の画像を表示することも可能である。
【0012】
細隙灯顕微鏡1は架台H-1上に載置される。なお、演算制御部H-8は他のテーブル上又はその他の場所に設置されていてもよい。支持部8は、架台駆動部(移動機構部)H-11を介して水平方向、左右方向及び上下方向に移動可能に構成されている。
支持部8は、撮像部(撮像系)H-9及び照明発光部(照明系)H-14を支持する。支持部8の一端には、撮像部H-9を支持する固定柱7が取り付けられている。固定柱7の上部には、中央に撮影カメラ5aが設置され、撮影カメラ5aを中心に左右に第1ステレオカメラ5b、第2ステレオカメラ5cがステレオカメラ支持部5dに固定配置され、照明発光部H-14を取り囲むように配置されている。なお、第1ステレオカメラ5b、第2ステレオカメラ5cをステレオカメラ支持部5dに配置せずに、撮像部H-9が第1ステレオカメラ5b及び第2ステレオカメラ5cを撮影カメラ5aと一体に備えるようにしても良い。
【0013】
撮影カメラ5aの上部には、平行投影光を発光する光源9a、9bが設置され、撮像カメラレンズを兼用し、被検眼Eの角膜Eaに平行投影光が投影され、被検眼Eと細隙灯顕微鏡1のアラメントが調整される。
支持部8の他端の上部には、照明発光部H-14を支持する回動筒部基部6e、照明駆動部(照明部回動部)H-12が設置され、照明部6bを旋回軸周りに旋回させ、スリット照明光を被検眼Eに対し左側から、あるいは右側から照射することができる。
回動筒部基部6eの上部には、回動筒部6dが旋回軸のまわりに回動可能に設置され、回動筒部6dにはスリット照明部回動アーム6cを介しスリット6aを支持する照明部6bが配置されている。図示されていないが、スリット照明部回動アーム6cを鉛直下方に傾斜させる回動部が回動筒部6dに配置されている。
なお、スリット照明部回動アーム6cは、取り外し可能に構成してもよく、被検眼Eを斜め下部方向から斜め照明させるカーブした回動アームを装着することもできる。
【0014】
固定柱7は架台駆動部H-11のXYZ駆動部3aのz方向駆動部3a1によりz方向駆動台3a2が移動し、被検眼Eに対しz方向(前後方向)に移動可能に取り付けられている。被検眼Eへのアライメント調整の際に移動される。
また、固定柱7は架台駆動部H-11のXYZ駆動部3aのx方向駆動部(図示せず)によりx方向駆動台3b2が移動され、被検眼Eに対しx方向(左右方向)に移動可能に取り付けられている。被検眼Eの左右眼を切り替える際に移動される。被検眼Eの右眼が撮影された後、左眼が撮影される。
さらに、固定柱7は架台駆動部H-11のXYZ駆動部3aのy方向駆動部3cにより上下方向に移動され、被検眼Eに対し、撮影カメラ5aが正面に対峙するように高さ調整することができる。
【0015】
撮像部H-9は、光源9a、9bから、被検眼Eの角膜Eaに平行投影光が発光され、撮像部H-9の対物レンズと撮像素子の間に配置されたハーフミラーを介して被検眼Eの前眼部に平行投影光が投影され、前眼部にプルキンエ輝点が投影され、前眼部画像が撮影される。撮影された前眼部画像に基づき被検眼Eの位置が検出され、自動的に支持台8及び固定柱7がxyz方向に移動し、被検眼Eと細隙灯顕微鏡1本体のアラメントが調整され、被検眼Eの撮影に最適な距離に細隙灯顕微鏡1本体が配置される。
【0016】
ここで、オートアライメント(ラフアライメント)について説明する。
被検者が顎受け台10に顎を乗せ、被検眼Eの検査を開始し、ステレオカメラ5b、5cにより被検眼Eを撮影する。撮影した画像から被検眼Eの瞳孔を検出し、被検眼Eの3次元位置を特定する。瞳孔の代わりにプルキン輝点を検出してもよい。
すなわち、演算制御部H-8は顕微鏡1本体のXYZ駆動部3aを駆動し、被検眼Eと顕微鏡1本体が測定開始の基準位置である規定の位置まで移動させる。以上により、被検眼Eと顕微鏡1本体はアライメントが行われる。
【0017】
照明発光部H-14は、被検眼Eに照明光を照射する。照明発光部H-14は、前述のように、回動筒の旋回軸を中心に左右方向に駆動することができる。それにより被検眼Eに対する照明光の照射方向が変更される。
撮像部H-9に対峙する位置には顎受け台10が配置されている。顎受け台10には、被検者の顔を安定配置させるための顎受部10aと額当て10bが設けられている。
撮影カメラ5aには、対物レンズ、平行光を導光する光学レンズから構成されている。
なお、撮影倍率を変更するためのオートフォーカス機構を設置してもよく、自動的に撮影倍率が調整される。更に、撮影カメラ5aには、被検眼Eを撮影するための撮像装置が接続されている。撮像装置は撮像素子を含んで構成されている。撮像素子は、光を検出して画像信号(電気信号)を出力する光電変換素子である。画像信号は演算制御部H-8に入力される。撮像素子としては、たとえばCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサや、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサが用いられる。
更に、演算制御部H-8の代わりに、モバイル等の携帯端末装置200の表示画面100aに前眼部Ea等の画像を表示し、携帯端末装置200の演算処理装置を介して遠隔操作し、被検眼Eの観察撮影を行うこともできる。
【0018】
B.第1の実施の形態の細隙灯顕微鏡
図3(A)に、第1の実施の形態の細隙灯顕微鏡の効果についての説明図、
図3(B)に、第1の実施の形態の細隙灯顕微鏡の概略構成図をそれぞれ示す。
本実施の形態の細隙灯顕微鏡は、
図3(A)に示すように、特に、輝度値が閾値以上である箇所を画像処理で認識し、画像内にそのような箇所がないようにスリット長可変機構(モーター等)を駆動させ、スリット長を調整するものである。なお、輝度値が閾値以上である箇所の認識により、例えば、
図3(A)上図の場合又は下図の場合が考えられるが、それぞれ図示のようにスリット長を調整することで閾値以上の輝度値がないようにすることができる。閾値としては、飽和輝度値または飽和輝度の90%などが設定される。例えば、飽和輝度値が255と設定されている撮像素子を使用する場合、閾値は飽和輝度値の255、または飽和輝度値の90%である230などと設定される。
図3(B)に示すように、第1の実施の形態の細隙灯顕微鏡は、例えば、スリット光を照射し、被検眼(前眼部、角膜等)を撮像部(カメラ、対物レンズ等を備える。)で撮影し、演算制御部(演算回路等を備える。)で画像処理を行う。そして、画像処理の結果をスリット長駆動部(スリット長開閉機構等を備える。)にフィードバックし、照明発光部(スリット光源部等を備える。)によるスリット光の範囲を変化・調整して設定する。設定されたスリット長のスリットでスリット光を被検眼に照射して、撮像部で撮影する。
【0019】
第1の実施の形態は、例えば、次のような効果を奏する。
・カメラの撮影画像からスリットの長さをオートで調節して、眼球結膜や皮膚にスリット光を当たらなくすることができる。
・撮影画像が鮮明になる。
・照射範囲が狭くなり、患者に対する負担が減る。
【0020】
図4に、スリット長可変機構の説明図を示す。
スリット長可変機構は、図示のような円盤を備える。円盤は、勾玉形開口部、開口面積が異なる複数の円形開口部を有する。円盤が回転し、点線の円に重なる勾玉の箇所が変化する。これにより、スリット光源部からの照明光(照明光軸が紙面に対して垂直方向)が、被検眼に所望のスリット長で開口部(破線参照)のスリットを経て照射される。なお、スリット長さの調節機構については、例えば、特開2018-187064号公報(特許文献1)等参照。
【0021】
図5に、第1の実施の形態の細隙灯顕微鏡の制御系のブロック構成図を示す。
細隙灯顕微鏡の制御系は、操作部H-5、センサーH-6、記憶部H-7、演算制御部(CPU)H-8、撮像部H-9、表示部H-10、架台駆動部H-11、照明駆動部H-12、スリット長駆動部H-13、照明発光部H-14、を備える。架台駆動部H-11は架台H-1の位置を駆動する。照明駆動部H-12は、照明部発光部H-14の照明架台H-2の位置を駆動する。
【0022】
以下に、第1の実施の形態の細隙灯顕微鏡の動作について説明する。
a.細隙灯顕微鏡の動作を表す第1のフローチャート
図6に、第1の実施の形態の細隙灯顕微鏡の動作を表す第1のフローチャートを示す。
図6(A)にメインルーチン、
図6(B)及び(C)にステップS203のサブルーチンを示す。
また、
図7に、座標系及び強膜間距離についての説明図を示す。
【0023】
以下に各ステップについて説明する。
・S201
眼科装置(細隙灯顕微鏡1)において、図示しない顔受け部に被検者の顔が固定された状態で、検者が操作部H-5に対して所定の操作を行うことで、眼科装置は、アライメントを実行する。アライメントは、例えば公知又は周知の適宜方法により行うことができる。アライメントにより、例えば、眼の位置、撮像部H-9の位置、架台駆動部H-11の位置、照明駆動部H-12の位置が設定される。
・S202
演算制御部H-8が照明発光部H-14にトリガーを送り、照明発光部H-14が点灯する。
・S203
演算制御部H-8は、撮像部H-9で取得した画像内に閾値以上の輝度値があるかどうかを判定し、スリット長駆動部H-13によりスリット長を調節する。ここで、S202にて照射されるスリット光の長さによって、サブルーチンが異なり、各処理の詳細はサブルーチンの説明で後述する。ここで、強膜間距離とは、
図7に示すように、上瞼と強膜の境界と下瞼と強膜の境界の間の距離をいう。また、
図7には、被検眼を撮影した画像のxy座標系を示す。x軸は左右方向、y軸は上下方向となっている。
・S204
演算制御部H-8が撮像部H-9にトリガーを送り、撮像部H-9が撮像する。なお、演算制御部H-8は、撮像された画像を記憶部H-7に記憶及び/又は表示部H-10に表示してもよい。このとき、被験者の識別情報や、日時、場所等の適宜の情報とともに記憶及び/又は表示してもよい。
【0024】
つぎに、ステップS203のサブルーチンは、例えば、瞳孔内に収まる長さ(第1の長さ)のスリット長を照射する場合(第1のサブルーチン処理)と、瞳孔内に収まらない長さ(第2の長さ)のスリット長を照射する場合(第2のサブルーチン処理)があり、以下に説明する。
(1)ステップS203の第1のサブルーチン処理(
図6(B))
第1のサブルーチン処理は、瞳孔内に収まる長さ(第1の長さ)のスリット長を照射する場合である。はじめのスリット長の長さは、例えば、「瞳孔の半径又は直径」又は「ステップ長」とする。
瞳孔内に収まる長さのスリット長を照射する場合、S203では、演算制御部H-8によりスリット長駆動部H-13がスリット長を長くしていき、取得する画像内に閾値以上の輝度値が発生したとき、一つ前の直前の状態(閾値以上の輝度値が無い状態・前回の状態・処理前の状態等)のスリット長の長さに駆動させる。
【0025】
各ステップについて以下に説明する。
・S211
演算制御部H-8は、現在のスリット長の長さを、記憶部H-7に記録する。
・S212
演算制御部H-8は、はじめのスリット長の長さを、予め定められた瞳孔内に収まる長さ(第1の長さ)のスリット長とする。例えば、1mmとする(瞳孔径は2~8mmくらい、最小値より小さい径を最初とする)ことができる。はじめのスリット長の長さは、「瞳孔の半径又は直径」又は「ステップ長」など任意でよい。演算制御部H-8は、スリット長駆動部H-13によりスリット長を予め定められた長さ(例えば、2mm)長くする。スリット長の刻み幅は何mmずつでもよいし、ステップごとに同じでなくてもよい(なお、遺伝子的アルゴリズムで決定してもよい。)。
・S213
演算制御部H-8が撮像部H-9にトリガーを送り、撮像部H-9が画像を取得する。
・S214
S213で取得した画像内に閾値以上の輝度値があるかどうか、演算制御部H-8が判定をする。閾値以上の輝度値がない場合は、S211の手順に戻る。閾値以上の輝度値がある場合は、演算制御部H-8により、輝度値が閾値以上に達した輝度値がある直前の状態(閾値以上の輝度が無い状態・前回の状態・処理前の状態等)のスリット長の長さになるようにスリット長駆動部H-13がスリット長を駆動させ、スリット長駆動を終了する。
なお、演算制御部H-8は、設定されたスリット長を記憶部H-7に記憶及び/又は表示部H-10に表示してもよい。このとき、被験者の識別情報や、日時、場所等の適宜の情報とともに記憶及び/又は表示してもよい。
【0026】
(2)ステップS203の第2のサブルーチン処理(
図6(C))
第2のサブルーチン処理は、瞳孔内に収まらない長さ(第2の長さ)のスリット長を照射する場合である。はじめのスリット長の長さは、例えば、「最大のスリット長」とすることができる。
瞳孔内に収まらない長さのスリット長を照射する場合、S203では、演算制御部H-8によりスリット長駆動部H-13がスリット長を短くしていき、閾値以上の輝度値がなくなったときのスリット長の長さに駆動させる。
各ステップについて以下に説明する。
・S221
演算制御部H-8は、はじめのスリット長の長さを、瞳孔内に収まらない長さ(第2の長さ)のスリット長、例えば予め定められた最大のスリット長とする。例えば、はじめのスリット長の長さは、「瞳孔の直径の3倍」など任意でよい。
演算制御部H-8は、スリット長駆動部H-13によりスリット長を予め定められた長さ(例えば、2mm)短くする。スリット長の刻み幅は何mmずつでもよいし、ステップごとに同じでなくてもよい(なお、遺伝子的アルゴリズムで決定してもよい。)。
・S222
演算制御部H-8は、現在のスリット長の長さを、記憶部H-7に記録する。
・S223
演算制御部H-8が撮像部H-9にトリガーを送り、撮像部H-9が画像を取得する。
・S224
S223で取得した画像内に閾値以上の輝度値があるかどうか、演算制御部H-8が判定をする。閾値以上の輝度値がある場合は、S221の手順に戻る。演算制御部H-8は、閾値以上の輝度値がない場合は、スリット長の駆動を終了する。
なお、各サブルーチン又はメインルーチンにおいて、演算制御部H-8は、設定されたスリット長を記憶部H-7に記憶及び/又は表示部H-10に表示してもよい。このとき、被験者の識別情報や、日時、場所等の適宜の情報とともに記憶及び/又は表示してもよい。
【0027】
b.細隙灯顕微鏡の動作を表す第2のフローチャート
図8に、第1の実施の形態の細隙灯顕微鏡の動作を表す第2のフローチャートを示す。
図8(A)にメインルーチン、
図8(B)にステップS303のサブルーチンを示す。
【0028】
以下に各ステップについて説明する。
・S301
眼科装置において、図示しない顔受け部に被検者の顔が固定された状態で、検者が操作部H-5に対して所定の操作を行うことで、眼科装置は、アライメントを実行する。アライメントは、例えば公知又は周知の適宜方法により行うことができる。アライメントにより、例えば、眼の位置、撮像部H-9の位置、架台駆動部H-11の位置、照明駆動部H-12の位置が設定される。
・S302
演算制御部H-8が照明発光部H-14にトリガーを送り、照明発光部H-14が点灯する。
・S303
撮像部H-9で撮影した画像を用いて、演算制御部H-8によって輝度値が閾値以上である箇所の長さを算出する。演算制御部H-8により、スリット長駆動部H-13がその長さ分スリット長を短く駆動させる。S303の処理の詳細はサブルーチンの説明で後述する。
・S304
演算制御部H-8が撮像部H-9にトリガーを送り、撮像部H-9が撮像する。
なお、演算制御部H-8は、撮像された画像を記憶部H-7に記憶及び/又は表示部H-10に表示してもよい。このとき、被験者の識別情報や、日時、場所等の適宜の情報とともに記憶及び/又は表示してもよい。
【0029】
つぎに、ステップS303のサブルーチンの各ステップについて以下に説明する。
・S311
演算制御部H-8は、はじめのスリット長の長さを、瞳孔内に収まらない長さ(第2の長さ)のスリット長、例えば予め定められた最大のスリット長とする。例えば、はじめのスリット長の長さは、「瞳孔の直径の3倍」など任意でよい。演算制御部H-8が撮像部H-9にトリガーを送り、撮像部H-9が画像を取得する。
・S312
S311で取得した画像内に閾値以上の輝度値があるかどうか、演算制御部H-8が判定をする。演算制御部H-8は、閾値以上の輝度値がある場合は、S313の処理に移行する。演算制御部H-8は、閾値以上の輝度値がない場合は、スリット長駆動を終了する(スリット長駆動部H-13を制御せずにそのまま撮影される)。
・S313
S311で撮影した画像に対して、演算制御部H-8がラベリング処理を実施する。ここでは、例えば、演算制御部H-8によって輝度値が閾値以上である箇所している箇所の特定し、上下のy座標の距離をもとめ加算することで輝度値が閾値以上である箇所の長さを求めることができる。もしくは、演算制御部H-8によって輝度値が閾値以上である箇所を特定する。そして、演算制御部H-8は、その部分の面積を求め、スリット幅で除算することで輝度値が閾値以上である箇所の長さを求めることができる。演算制御部H-8は、輝度値が閾値以上である箇所のラベルは瞳孔の近さや2つのラベリングの座標の拘束条件から特定することができる。
・S314
演算制御部H-8は、S313で算出した長さ分、スリット長駆動部H-13によりスリット長を駆動させる。
【0030】
c.細隙灯顕微鏡の動作を表す第3のフローチャート
図9に、第1の実施の形態の細隙灯顕微鏡の動作を表す第3のフローチャートを示す。
図9(A)にメインルーチン、
図9(B)及び(C)にステップS404のサブルーチンを示す。
以下に各ステップについて説明する。
・S401
眼科装置において、図示しない顔受け部に被検者の顔が固定された状態で、検者が操作部H-5に対して所定の操作を行うことで、眼科装置は、アライメントを実行する。アライメントは、例えば公知又は周知の適宜方法により行うことができる。アライメントにより、例えば、眼の位置、撮像部H-9の位置、架台駆動部H-11の位置、照明駆動部H-12の位置が設定される。
・S402
演算制御部H-8が撮像部H-9にトリガーを送り、撮像部H-9が撮像する。
・S403
演算制御部H-8が照明発光部H-14にトリガーを送り、照明発光部H-14が点灯する。
・S404
演算制御部H-8によりスリット光照射前後の画像を撮像部H-9が撮影し、演算制御部H-8がその差分を算出し、差分が0又は予め定められた閾値以下になるようにスリット長駆動部H-13がスリット長を駆動する。演算制御部H-8により、S203又はS303と同様の処理でスリット長駆動部H-13が駆動する。ここで、スリット長をステップ長ごとに短くするか、輝度値が閾値以上である箇所の長さを算出して短くするか等でサブルーチンが異なり、各処理の詳細はサブルーチンの説明で後述する。
・S405
演算制御部H-8が撮像部H-9にトリガーを送り、撮像部H-9が撮像する。
なお、演算制御部H-8は、撮像された画像を記憶部H-7に記憶及び/又は表示部H-10に表示してもよい。このとき、被験者の識別情報や、日時、場所等の適宜の情報とともに記憶及び/又は表示してもよい。
【0031】
つぎに、ステップS404のサブルーチンは、例えば、ステップ長ごとに長さを調整する場合(第1のサブルーチン処理)と、輝度値が閾値以上である箇所の長さを算出して調整する場合(第2のサブルーチン処理)があり、以下に説明する。
(1)ステップS404の第1のサブルーチン処理(
図9(B))
以下に各ステップについて説明する。
・S411
ステップ長ごとに長さを調整する場合、演算制御部H-8は、スリット長駆動部H-13により、はじめのスリット長の長さを、瞳孔内に収まらない長さ(第2の長さ)のスリット長、例えば最大のスリット長とする。はじめのスリット長の長さは、「瞳孔の直径の3倍」など任意でよい。演算制御部H-8は、スリット長駆動部H-13によりスリット長を予め定められた長さ(例えば、2mm)短くする。スリット長の刻み幅は何mmずつでもよいし、ステップごとに同じでなくてもよい(なお、遺伝子的アルゴリズムで決定してよい。)。
・S412
演算制御部H-8は、現在のスリット長を記憶部H-7に設定する。
・S413
演算制御部H-8が撮像部H-9にトリガーを送り、撮像部H-9が画像を取得する。
・S414
S402で取得した画像とS413で取得した画像の差分を演算制御部H-8が算出する。差分を計算する際は、例えば、それぞれ強膜以外の部分をマスク処理する。眼は動的に動くため単純に差分をもとめるのではなく、瞳孔を対象にレジストレーション(位置合わせ)する必要がある。なお、S402で撮影した画像はスリット光が照射していないならばどんな画像でも問題ない(例えば、アライメント前の画像でも問題はない。)。
・S415
S414で得られた差分画像内に閾値以上の輝度値があるかどうか、演算制御部H-8が判断する。閾値以上の輝度値がある場合は、S411に戻る。演算制御部H-8は、閾値以上の輝度値がない場合は、スリット長駆動を終了する(スリット長駆動部H-13を制御せずにそのまま撮影される)。
なお、演算制御部H-8は、設定されたスリット長を記憶部H-7に記憶及び/又は表示部H-10に表示してもよい。このとき、被験者の識別情報や、日時、場所等の適宜の情報とともに記憶及び/又は表示してもよい。
【0032】
(2)ステップS404の第2のサブルーチン処理(
図9(C))
以下に各ステップについて説明する。
・S421
輝度値が閾値以上である箇所の長さを算出して調整する場合、演算制御部H-8が撮像部H-9にトリガーを送り、撮像部H-9が画像を取得する。演算制御部H-8は、スリット長駆動部H-13により、はじめのスリット長の長さを、瞳孔内に収まらない長さ(第2の長さ)のスリット長、例えば最大のスリット長とする。はじめのスリット長の長さは、「瞳孔の直径の3倍」など任意でよい。
・S422
S421で取得した画像とS413で取得した画像の差分を演算制御部H-8が算出する。この処理は、S414と同処理である。
・S423
S422で得られた差分画像内に閾値以上の輝度値があるかどうか、演算制御部H-8が判断する。閾値以上の輝度値がない場合は、スリット長駆動を終了する(スリット長駆動部H-13を制御せずにそのまま撮影される)。閾値以上の輝度値がある場合は、S424の処理に進む。
・S424
S423で得られた差分画像の輝度値が閾値以上である箇所の長さを演算制御部H-8が算出する。この処理は、S313と同処理である。
・S425
S424で算出した長さ分、演算制御部H-8により、スリット長駆動部H-13がスリット長を駆動させる。
なお、演算制御部H-8は、設定されたスリット長を記憶部H-7に記憶及び/又は表示部H-10に表示してもよい。このとき、被験者の識別情報や、日時、場所等の適宜の情報とともに記憶及び/又は表示してもよい。
【0033】
d.細隙灯顕微鏡の動作を表す第4のフローチャート
図10に、第1の実施の形態の細隙灯顕微鏡の動作を表す第4のフローチャートを示す。
図10(A’)にメインルーチン、
図10(B’)にステップS404’のサブルーチンを示す。このサブルーチンのように、スリット長を長くしていく方法としてもよい。
以下に各ステップについて説明する。
図10(A’)メインルーチンでは、S404’以外は
図10のフローチャートと同様の処理が行われる。
図10(B’)にステップS404’のサブルーチンを示す。
【0034】
各ステップについて以下に説明する。
・S411’
S212と同様に、演算制御部H-8は、はじめのスリット長の長さを、予め定められた瞳孔内に収まる長さ(第1の長さ)のスリット長とする。例えば、1mmとする(瞳孔径は2~8mmくらい、最小値より小さい径を最初とする)ことができる。はじめのスリット長の長さは、「瞳孔の半径又は直径」又は「ステップ長」など任意でよい。演算制御部H-8は、スリット長駆動部H-13によりスリット長を予め定められた長さ(例えば、2mm)長くする。スリット長の刻み幅は何mmずつでもよいし、ステップごとに同じでなくてもよい(なお、遺伝子的アルゴリズムで決定してもよい。)。
・S412’
演算制御部H-8は、現在のスリット長を記憶部H-7に設定する。
・S413’
演算制御部H-8が撮像部H-9にトリガーを送り、撮像部H-9が画像を取得する。
・S414’
S402で取得した画像とS413’で取得した画像の差分を演算制御部H-8が算出する。差分を計算する際は、例えば、それぞれ強膜以外の部分をマスク処理する。眼は動的に動くため単純に差分をもとめるのではなく、瞳孔を対象にレジストレーション(位置合わせ)する必要がある。なお、S402で撮影した画像はスリット光が照射していないならばどんな画像でも問題ない(例えば、アライメント前の画像でも問題はない。)。
・S415’
S414’で得られた差分画像内に閾値以上の輝度値があるかどうか、演算制御部H-8が判断する。閾値以上の輝度値がない場合は、S411’に戻る。演算制御部H-8は、閾値以上の輝度値がある場合は、演算制御部H-8により、閾値以上の輝度値がある直前の状態(閾値以上の輝度値が無い状態・前回の状態・処理前の状態等)のスリット長の長さになるようにスリット長駆動部H-13がスリット長を駆動させ、スリット長の駆動を終了する。
なお、各サブルーチン又はメインルーチンにおいて、演算制御部H-8は、設定されたスリット長を記憶部H-7に記憶及び/又は表示部H-10に表示してもよい。このとき、被験者の識別情報や、日時、場所等の適宜の情報とともに記憶及び/又は表示してもよい。
【0035】
C.第2の実施の形態の細隙灯顕微鏡
第2の本実施の形態の細隙灯顕微鏡は、特に、センサーH-6を配置して、肌・被検眼からのスリット光の反射を検知し、検知している間はスリット長を調節するようにしたものである。なお、第1の実施の形態で説明した
図3(A)及び
図4及びそれらの説明箇所については、第2の実施の形態でも同様である。
図11に、第2の実施の形態の細隙灯顕微鏡の概略構成図を示す。
図12に、センサーによる検出画像の説明図を示す。
図11のようには、
図3の概略構成に加え、センサーを備えるものである。第2の実施の形態の細隙灯顕微鏡の制御系のブロック構成は、第1の実施の形態の細隙灯顕微鏡と同様である。センサーとしては、たとえばPD(Photo detector)、PSD(Position sensitive detector)などが用いられる。PDはアレイ状にならべて使用してもよい。
センサーが2次元の場合または2次元に配置した場合、スリット光の反射光により、第1の実施の形態において撮像部で撮影した画像の閾値以上の輝度値に相当する領域を検出することができる。センサーが1次元の場合または1次元に配置する場合は、例えばスリット光の照射向きに合わせて鉛直方向に設けることで、第1の実施の形態において撮像部で撮影した画像の閾値以上の輝度値に相当する領域を検出することができる。閾値としては、センサー出力の最大値、もしくはセンサー出力の90%などと設定することができる。
第2の実施の形態の細隙灯顕微鏡では、例えば、被検眼(前眼部、角膜等)を撮像部(カメラ、対物レンズ等を備える。)で撮影し、さらに、センサーが被検眼からの反射光を検出し、反射光データとして演算制御部(演算回路等を備える。)に出力する。演算制御部では、反射光データに基づき画像処理を行い、スリット長を求める。そして、画像処理の結果をスリット長駆動部(スリット長開閉機構等を備える。)にフィードバックし、照明発光部(スリット光源部等を備える。)によるスリット光の範囲を変化させる。
【0036】
a.細隙灯顕微鏡の動作を表す第1のフローチャート
図13に、第2の実施の形態の細隙灯顕微鏡の動作を表す第1のフローチャートを示す。
図13(A)にメインルーチン、
図13(B)にステップS503のサブルーチンを示す。
以下に各ステップについて説明する。
・S501
眼科装置(細隙灯顕微鏡1)において、図示しない顔受け部に被検者の顔が固定された状態で、検者が操作部H-5に対して所定の操作を行うことで、眼科装置は、アライメントを実行する。アライメントは、例えば公知又は周知の適宜方法により行うことができる。アライメントにより、例えば、眼の位置、撮像部H-9の位置、架台駆動部H-11の位置、照明駆動部H-12の位置が設定される。
・S502
演算制御部H-8が照明発光部H-14にトリガーを送り、照明発光部H-14が点灯する。
・S503
演算制御部H-8は、センサーH-6が取得した値が閾値以上かどうかを判定し、スリット長駆動部H-13によりスリット長を短く駆動させる。S503の処理の詳細はサブルーチンの説明で後述する。
・S504
演算制御部H-8が撮像部H-9にトリガーを送り、撮像部H-9が撮像する。
なお、演算制御部H-8は、撮像された画像を記憶部H-7に被験者の識別情報や日時、場所等の適宜の情報とともに記憶すること及び/又は表示部H-10に表示してもよい。
【0037】
各ステップについて以下に説明する。
・S511
演算制御部H-8は、はじめのスリット長の長さは、瞳孔内に収まらない長さ(第2の長さ)のスリット長、例えばスリット長の最大スリット長とする。はじめのスリット長の長さは、例えば「瞳孔の直径の3倍」など任意でよい。
・S512
スリット長駆動部H-13がスリット長を予め定められた長さ(例えば、2mm)短くする。スリット長の刻み幅は何mmずつでもよいし、ステップごとに同じでなくてもよい(遺伝子的アルゴリズムで決定してもよい。)。
・S513
演算制御部H-8がセンサーH-6にトリガーを送り、センサーH-6の値(反射光データ)を取得する。
・S514
S513で取得したセンサーH-6による値(反射光データ)が予め定められた閾値を超えたかどうか(又は、閾値以上かどうか)、演算制御部H-8が判定をする。閾値より小さい場合は、演算制御部H-8は、スリット長駆動を終了する(スリット長駆動部H-13を制御せずにそのまま撮影される)。閾値以上である場合は、S511の処理に実施する。
なお、演算制御部H-8は、設定されたスリット長を記憶部H-7に記憶及び/又は表示部H-10に表示してもよい。このとき、被験者の識別情報や、日時、場所等の適宜の情報とともに記憶及び/又は表示してもよい。
【0038】
b.細隙灯顕微鏡の動作を表す第2のフローチャート
図14に、第2の実施の形態の細隙灯顕微鏡の動作を表す第2のフローチャートを示す。
図14(A’)にメインルーチン、
図14(B’)にステップS503’のサブルーチンを示す。
以下に各ステップについて説明する。
図14(A’)メインルーチンでは、S503以外は
図14のフローチャートと同様の処理が行われる。
図14(B’)にステップS503’のサブルーチンを示す。
【0039】
ステップS503’のサブルーチンの各ステップについて以下に説明する。
各ステップについて以下に説明する。
・S511’
演算制御部H-8は、現在のスリット長の長さを、記憶部H-7に記録する。
・S512’
演算制御部H-8は、初めのスリット長の長さを、予め定められた瞳孔内に収まる長さ(第1の長さ)のスリット長とする。例えば、1mmとする(瞳孔径は2~8mmくらい、最小値より小さい径を最初とする)ことができる。初めのスリット長の長さは、「瞳孔の半径又は直径」又は「ステップ長」など任意でよい。演算制御部H-8は、スリット長駆動部H-13によりスリット長を予め定められた長さ(例えば、2mm)長くする。スリット長の刻み幅は何mmずつでもよいし、ステップごとに同じでなくてもよい。
・S513’
演算制御部H-8がセンサーH-6にトリガーを送り、センサーH-6がセンサーの値(反射光データ)を取得する。
・S514’
S513’で取得したセンサーの値(反射光データ)内に閾値以上の値があるかどうか、演算制御部H-8が判定をする。閾値以上の値がない場合は、S511’の手順に戻る。閾値以上の値がある場合は、演算制御部H-8により、閾値以上の輝度値がある直前の状態(閾値以上の輝度値が無い状態・前回の状態・処理前の状態等)のスリット長の長さになるようにスリット長駆動部H-13がスリット長を駆動させ、スリット長駆動を終了する。
なお、演算制御部H-8は、設定されたスリット長を記憶部H-7に記憶及び/又は表示部H-10に表示してもよい。このとき、被験者の識別情報や、日時、場所等の適宜の情報とともに記憶及び/又は表示してもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 細隙灯顕微鏡
H-1 架台
H-11、3a、3a1、3a2、3b、3b1、3b2、3c 架台駆動部(移動機構部)
H-9、5a、5b、5c、5d、5e、5d 撮像部(撮像系)
H-14、6a、6b、6c、6d、6e、6f 照明発光部(照明系)
7 固定柱
8 支持部
9、9a、9b 平行投影光光源
10 顎受け台
H-8 演算制御部(CPU、コンピュータ)
200、200a 携帯端末装置
E 被検眼