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特開2024-136636ラミネート紙、ラミネート紙の製造方法、及びラミネート紙のリサイクル方法
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  • 特開-ラミネート紙、ラミネート紙の製造方法、及びラミネート紙のリサイクル方法 図1
  • 特開-ラミネート紙、ラミネート紙の製造方法、及びラミネート紙のリサイクル方法 図2
  • 特開-ラミネート紙、ラミネート紙の製造方法、及びラミネート紙のリサイクル方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136636
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】ラミネート紙、ラミネート紙の製造方法、及びラミネート紙のリサイクル方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/10 20060101AFI20240927BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20240927BHJP
   B29C 48/15 20190101ALI20240927BHJP
   B29C 48/305 20190101ALI20240927BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240927BHJP
   D21H 27/30 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B32B27/10
B32B27/32 Z
B29C48/15
B29C48/305
B65D65/40 D
D21H27/30 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047800
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】加茂 雅康
(72)【発明者】
【氏名】中村 茜
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
4F207
4L055
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086BA04
3E086BA14
3E086BA15
3E086BB52
3E086BB62
4F100AK01A
4F100AK03A
4F100AK04A
4F100AK06A
4F100AK07A
4F100AK68A
4F100BA02
4F100DG10B
4F100EH23
4F100EJ50
4F100GB15
4F100JA06A
4F100JA13A
4F100JB16A
4F100JK06
4F100JL16
4F100YY00A
4F207AA03
4F207AD06
4F207AG01
4F207AG03
4F207AR06
4F207KA01
4F207KA17
4F207KB13
4F207KK64
4F207KL84
4F207KM15
4L055AG58
4L055AG59
4L055AG60
4L055AG86
4L055AJ02
4L055BE08
4L055BE13
4L055EA08
4L055EA14
4L055EA19
4L055GA43
(57)【要約】
【課題】溶媒を使用することがなくても、紙基材と、ポリオレフィンを含む熱可塑性樹脂層とを分離させることが可能であり、当該熱可塑性樹脂層に残留する紙基材の量が抑制されたラミネート紙を提供すること。
【解決手段】熱可塑性樹脂層30を備えるラミネート紙であって、紙基材10と、前記紙基材10の少なくとも一方の面に設けられ、前記紙基材10に擬似接着している熱可塑性樹脂層30と、を備え、前記熱可塑性樹脂層30が、ポリオレフィン樹脂を含み、前記紙基材10と前記熱可塑性樹脂層30との界面で剥離したときの擬似接着力が、150mN/50mm以上、1500mN/50mm以下である、ラミネート紙100。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂層を備えるラミネート紙であって、
紙基材と、
前記紙基材の少なくとも一方の面に設けられ、前記紙基材に擬似接着している熱可塑性樹脂層と、
を備え、
前記熱可塑性樹脂層が、ポリオレフィン樹脂を含み、
前記紙基材と前記熱可塑性樹脂層との界面で剥離したときの擬似接着力が、150mN/50mm以上、1500mN/50mm以下である、
ラミネート紙。
【請求項2】
請求項1に記載のラミネート紙において、
前記熱可塑性樹脂層の厚さが、13μm以上である、
ラミネート紙。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のラミネート紙において、
前記ポリオレフィン樹脂が、エチレンに由来する構成単位およびプロピレンに由来する構成単位の少なくとも一方を持つ、
ラミネート紙。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載のラミネート紙において、
前記ポリオレフィン樹脂のメルトフローレートが、3g/10分以上、45g/10分以下である、
ラミネート紙。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載のラミネート紙において、
前記ポリオレフィン樹脂が、酸変性されていない未変性ポリオレフィン樹脂である、
ラミネート紙。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載のラミネート紙において、
剥離紙又は包装紙である、
ラミネート紙。
【請求項7】
請求項1又は請求項2に記載のラミネート紙を製造する方法であって、
前記紙基材を準備する工程と、
前記ポリオレフィン樹脂を準備する工程と、
前記紙基材に対して易接着処理を施すことなく、前記紙基材上に、230℃以上、320℃以下の温度で溶融させた前記ポリオレフィン樹脂を溶融押出する工程と、
を有する、
ラミネート紙の製造方法。
【請求項8】
請求項1又は請求項2に記載のラミネート紙をリサイクルする方法であって、
前記ラミネート紙を、溶媒を使用せずに、前記紙基材と、前記熱可塑性樹脂層とに分離する工程と、
分離した前記紙基材および前記熱可塑性樹脂層を、それぞれ回収する工程と、
を有し、
前記紙基材と、前記熱可塑性樹脂層とに分離する工程において、前記紙基材と、前記熱可塑性樹脂層とを分離したとき、前記熱可塑性樹脂層に付着している残渣の残渣量が、下記数式(数1)で表され、
前記残渣量が、前記紙基材の全体の質量に対して、6質量%以下である、
ラミネート紙のリサイクル方法。
R=[{TP-((TP/10)×TPρ×L)}/{L-((TP/10)×TPρ×L)}]×100 ・・・(数1)
(前記数式(数1)中、Rは、残渣量(単位:質量%)、TPは、分離後の熱可塑性樹脂層の質量(単位:g)、TPは、熱可塑性樹脂層の厚さ(単位:μm)、TPρは、熱可塑性樹脂層の密度(単位:g/cm)、Lは、分離前のラミネート紙における熱可塑性樹脂層の面積(単位:cm)、Lは、分離前のラミネート紙の質量(単位:g)を表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラミネート紙、ラミネート紙の製造方法、及びラミネート紙のリサイクル方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂と、異種の材料とが積層された積層材料は、種々の用途で使用されている。紙基材に、熱可塑性樹脂が積層されたラミネート紙も種々の用途に適用されており、当該ラミネート紙の用途の一例として、剥離紙などが挙げられる。
【0003】
特許文献1には、紙基材の少なくとも一方の面に、ポリオレフィン系樹脂層が押出ラミネート加工により形成された構成を有している剥離紙用ポリオレフィンラミネート紙が開示されている。特許文献1に開示されている剥離紙用ポリオレフィンラミネート紙は、ポリオレフィン系樹脂層が多層構造を有しており、且つ多層構造のポリオレフィン系樹脂層のうち、最も低密度のポリオレフィン系樹脂による層が、紙基材側に位置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-116718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、プラスチック廃棄物の処理に伴う環境影響を低減する観点から、リサイクルへの関心が高まっている。熱可塑性樹脂層を備えるラミネート紙にも紙基材と熱可塑性樹脂層とをそれぞれ回収して、リサイクルすることが求められている。ラミネート紙をリサイクルするに当たっては、通常、水などの溶媒を使用して、熱可塑性樹脂層と紙基材とが分離される。溶媒を使用して熱可塑性樹脂層と紙基材とを分離する場合、ラミネート紙を溶媒に浸漬して分離する等の処理工程を有するため、処理工程が増加する。また、ラミネート紙から、熱可塑性樹脂層と紙基材とを分離して、分離された紙基材と熱可塑性樹脂層とをそれぞれ回収する場合、熱可塑性樹脂層に残留している紙基材の量が少ないことが望ましい。
【0006】
紙基材上に積層された熱可塑性樹脂層を備えるラミネート紙は、通常、紙基材と、熱可塑性樹脂との密着性に優れることが求められる。例えば、特許文献1に記載される剥離紙用ポリオレフィンラミネート紙は、熱処理を施しても、紙基材とポリオレフィン系樹脂層との間での剥離を抑制又は防止することができるとされている。このように、特許文献1に記載される剥離紙用ポリオレフィンラミネート紙は、耐熱剥離を防止する技術であるため、紙基材とポリオレフィン系樹脂層との間で分離することは考慮されていない。また、特許文献1に記載される該剥離紙用ポリオレフィンラミネート紙は、紙基材とポリオレフィン系樹脂層との密着性に優れているため、特許文献1に記載される剥離紙用ポリオレフィンラミネート紙において、紙基材とポリオレフィン系樹脂層との間での分離を試みた場合でも、熱可塑性樹脂層に残留する紙基材の量が多い。このため、当該剥離紙用ポリオレフィンラミネート紙から、ポリオレフィン系樹脂層を分離して、分離されたポリオレフィン系樹脂層をリサイクルすることは困難であった。
【0007】
本発明の目的は、溶媒を使用することがなくても、紙基材と、ポリオレフィンを含む熱可塑性樹脂層とを分離させることが可能であり、当該熱可塑性樹脂層に残留する紙基材の量が抑制されたラミネート紙、当該ラミネート紙の製造方法、及び当該ラミネート紙のリサイクル方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1]
熱可塑性樹脂層を備えるラミネート紙であって、
紙基材と、
前記紙基材の少なくとも一方の面に設けられ、前記紙基材に擬似接着している熱可塑性樹脂層と、
を備え、
前記熱可塑性樹脂層が、ポリオレフィン樹脂を含み、
前記紙基材と前記熱可塑性樹脂層との界面で剥離したときの擬似接着力が、150mN/50mm以上、1500mN/50mm以下である、
ラミネート紙。
【0009】
[2]
[1]に記載のラミネート紙において、
前記熱可塑性樹脂層の厚さが、13μm以上である、
ラミネート紙。
【0010】
[3]
[1]又は[2]に記載のラミネート紙において、
前記ポリオレフィン樹脂が、エチレンに由来する構成単位およびプロピレンに由来する構成単位の少なくとも一方を持つ、
ラミネート紙。
【0011】
[4]
[1]から[3]のいずれか一項に記載のラミネート紙において、
前記ポリオレフィン樹脂のメルトフローレートが、3g/10分以上、45g/10分以下である、
ラミネート紙。
【0012】
[5]
[1]から[4]のいずれか一項に記載のラミネート紙において、
前記ポリオレフィン樹脂が、酸変性されていない未変性ポリオレフィン樹脂である、
ラミネート紙。
【0013】
[6]
[1]から[5]のいずれか一項に記載のラミネート紙において、
剥離紙又は包装紙である、
ラミネート紙。
【0014】
[7]
[1]から[6]のいずれか一項に記載のラミネート紙を製造する方法であって、
前記紙基材を準備する工程と、
前記ポリオレフィン樹脂を準備する工程と、
前記紙基材に対して易接着処理を施すことなく、前記紙基材上に、230℃以上、320℃以下の温度で溶融させた前記ポリオレフィン樹脂を溶融押出する工程と、
を有する、
ラミネート紙の製造方法。
【0015】
[8]
[1]から[6]のいずれか一項に記載のラミネート紙をリサイクルする方法であって、
前記ラミネート紙を、溶媒を使用せずに、前記紙基材と、前記熱可塑性樹脂層とに分離する工程と、
分離した前記紙基材および前記熱可塑性樹脂層を、それぞれ回収する工程と、
を有し、
前記紙基材と、前記熱可塑性樹脂層とに分離する工程において、前記紙基材と、前記熱可塑性樹脂層とを分離したとき、前記熱可塑性樹脂層に付着している残渣の残渣量が、下記数式(数1)で表され、
前記残渣量が、前記紙基材の全体の質量に対して、6質量%以下である、
ラミネート紙のリサイクル方法。
R=[{TP-((TP/10)×TPρ×L)}/{L-((TP/10)×TPρ×L)}]×100 ・・・(数1)
(前記数式(数1)中、Rは、残渣量(単位:質量%)、TPは、分離後の熱可塑性樹脂層の質量(単位:g)、TPは、熱可塑性樹脂層の厚さ(単位:μm)、TPρは、熱可塑性樹脂層の密度(単位:g/cm)、Lは、分離前のラミネート紙における熱可塑性樹脂層の面積(単位:cm)、Lは、分離前のラミネート紙の質量(単位:g)を表す。)
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様によれば、溶媒を使用することがなくても、紙基材と、ポリオレフィンを含む熱可塑性樹脂層とを分離させることが可能であり、当該熱可塑性樹脂層に残留する紙基材の量が抑制されたラミネート紙、当該ラミネート紙の製造方法、及び当該ラミネート紙のリサイクル方法が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態に係るラミネート紙の一例を示す概略断面図である。
図2】本実施形態に係るラミネート紙の製造方法の一例を示す概略図である。
図3】本実施形態に係るラミネート紙のリサイクル方法の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[ラミネート紙]
本実施形態に係るラミネート紙は、熱可塑性樹脂層を備える。本実施形態に係るラミネート紙は、紙基材と、前記紙基材の少なくとも一方の面に設けられ、前記紙基材に擬似接着している熱可塑性樹脂層と、を備え、前記熱可塑性樹脂層が、ポリオレフィン樹脂を含む。そして、前記紙基材と前記熱可塑性樹脂層との界面で剥離したときの擬似接着力が、150mN/50mm以上、1500mN/50mm以下である。
【0019】
本実施形態に係るラミネート紙は、上記構成を備えることにより、本実施形態に係るラミネート紙を使用するに当たって、紙基材に対する熱可塑性樹脂層の接着性は十分であるが、紙基材と熱可塑性樹脂層とを分離するときには、両者を容易に分離することが可能であるという適度な接着性を有している。このため、本実施形態に係るラミネート紙は、紙基材と、ポリオレフィンを含む熱可塑性樹脂層とを分離させるときに、溶媒を用いることなく、容易に分離させることが可能であり、当該熱可塑性樹脂層に残留する紙基材の量が抑制される(例えば、数式(数1)で表される残渣量が6質量%以下)。本実施形態に係るラミネート紙は、紙基材に対する熱可塑性樹脂層の接着性は十分であるため、種々の用途(例えば、剥離紙、包装紙、及びラベル表面基材などの用途など)に適用した場合の使用に耐え得る。
【0020】
本明細書において、上記の溶媒には、水、水を含む水溶液、水との親和性が高い液体、水および水との親和性が高い液体との混合物、並びに、水との親和性が低い液体などの種々の液体が含まれる。
【0021】
本実施形態に係るラミネート紙について、図面を参照して説明する。図面においては、説明を容易にするために、拡大または縮小して図示した部分がある。図1を参照すると、図1には、本実施形態に係るラミネート紙の一例が示されている。図1は、ラミネート紙100の概略断面図である。
【0022】
図1に示されるラミネート紙100は、紙基材10と、紙基材10の一方の面(第一紙基材面11)に設けられたポリオレフィン樹脂を含む熱可塑性樹脂層30とを備えている。熱可塑性樹脂層30は、紙基材10に、直接、接して積層されており、熱可塑性樹脂層30は、紙基材10に、擬似接着している。紙基材10と熱可塑性樹脂層30との界面は、擬似接着界面である。具体的には、ラミネート紙100においては、第一紙基材面11と、第二熱可塑性樹脂層面32との接触面が、擬似接着界面となる。紙基材10と熱可塑性樹脂層30との界面で剥離したときの擬似接着力は、150mN/50mm以上、1500mN/50mm以下の範囲である。ラミネート紙100において、紙基材10の第一紙基材面11とは反対側の面である第二紙基材面12には、熱可塑性樹脂層30が設けられておらず、第二紙基材面12が露出している。また、熱可塑性樹脂層30の第二熱可塑性樹脂層面32とは反対側の面である第一熱可塑性樹脂層面31も露出している。
【0023】
以上、図1を参照して、本実施形態に係るラミネート紙の一例を説明したが、本実施形態に係るラミネート紙は、これに限定されるものではない。本実施形態に係るラミネート紙は、上記構成を有していれば、種々の形態を採用し得る。例えば、ラミネート紙100は、紙基材10の第一紙基材面11側に、熱可塑性樹脂層30が設けられているが、第一紙基材面11側だけでなく、第二紙基材面12にも、熱可塑性樹脂層30が設けられてもよい。第二紙基材面12にも、熱可塑性樹脂層30が設けられる場合、第二紙基材面12に設けられる熱可塑性樹脂層30は、紙基材10に、直接、接しており、紙基材10に、擬似接着していることが好ましい。第二紙基材面12にも、熱可塑性樹脂層30が設けられる場合、熱可塑性樹脂層30、紙基材10、及び熱可塑性樹脂層30が、厚さ方向に、この順で順次積層されており、第二紙基材面12側に設けられた熱可塑性樹脂層30と紙基材10との界面および第一紙基材面11側に設けられた熱可塑性樹脂層30と紙基材10との界面が、いずれも擬似接着界面であることが好ましく、当該擬似接着界面における擬似接着力は、いずれも、150mN/50mm以上、1500mN/50mm以下であることが好ましい。
【0024】
また、ラミネート紙100を剥離紙の用途に適用する場合は、第一熱可塑性樹脂層面31に、剥離剤層(不図示)を設けてもよい。剥離剤層は、シリコーン系剥離剤を含むことが好ましい。
また、ラミネート紙100を包装紙の用途に適用する場合は、必要に応じて、第一熱可塑性樹脂層面31および第二紙基材面12の少なくとも一方の面に、印刷層等の装飾層(不図示)を設けてもよい。
【0025】
(紙基材)
紙基材としては、熱可塑性樹脂層を支持できれば、特に限定されるものではない。紙基材としては、例えば、クラフト紙、上質紙、グラシン紙、及びコート紙(例えば、アート紙、クレーコート紙、及びキャストコート紙など)などが挙げられる。
【0026】
本明細書において、コート紙は、パルプ繊維を主成分とする原紙と、原紙の上に設けられた顔料コート層とを備えている。原紙は、例えば、パルプ繊維を主成分として、目的とする添加剤が添加され、公知の方法で得られる。顔料コート層は、原紙の上に、公知の方法で設けられる。顔料コート層は、単層構造でもよく、多層構造でもよい。顔料コート層は、例えば、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、タルク、サチンホワイト、酸化チタン、及びプラスチックピグメントなどの一種又は二種以上の顔料100質量部に対して、例えば、水性樹脂などの接着剤を、2質量部以上、50質量部以下の範囲で含有する。本明細書において、水性樹脂とは、水に分散し得る樹脂、又は水に溶解し得る樹脂を指す。水性樹脂とは、水溶性の樹脂だけでなく、エマルション型、及びディスパージョン型のように、水に分散可能な樹脂も含む。
【0027】
紙基材の坪量は、特に限定されない。紙基材の坪量は、例えば、50g/m以上であることが好ましく、60g/m以上であることがより好ましい。
紙基材の坪量は、例えば、200g/m以下であることが好ましく、150g/m以下であることがより好ましい。
【0028】
紙基材の厚さは、特に限定されない。紙基材の厚さは、例えば、50μm以上であることが好ましく、60μm以上であることがより好ましい。
紙基材の厚さは、例えば、200μm以下であることが好ましく、150μm以下であることがより好ましい。
【0029】
(熱可塑性樹脂層)
熱可塑性樹脂層は、ポリオレフィン樹脂を含む。熱可塑性樹脂層は、紙基材に、直接、接して設けられることが好ましい。ポリオレフィン樹脂は、特に限定されない。ポリオレフィン樹脂は、例えば、炭素数2以上、18以下のオレフィンモノマーを含むモノマーから重合された重合体が挙げられる。
【0030】
ポリオレフィン樹脂は、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ヘキセン、オクテン、デセン、及び4-メチル-1-ペンテン等のオレフィンモノマーの単独重合体が挙げられる。ポリオレフィン樹脂は、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ヘキセン、オクテン、デセン、及び4-メチルペンテン等からなる群から選択されるオレフィンモノマーの共重合体も挙げられる。オレフィンモノマーの共重合体は、例えば、エチレンと、炭素数3以上、18以下のαオレフィン(例えば、プロピレン、ブテン、ヘキセン、オクテン、デセン、及び4-メチルペンテン等からなる群から選択される少なくとも一つのオレフィンモノマー)との共重合体も挙げられる。オレフィンモノマーの共重合体は、二種以上のオレフィンモノマーを併用してもよい。ポリオレフィン樹脂は、一種単独の樹脂でもよいし、二種以上の樹脂の組み合わせでもよい。リサイクルしやすくする観点から、ポリオレフィン樹脂は、一種単独の樹脂であることが好ましい。
【0031】
ポリオレフィン樹脂は、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ヘキセン、オクテン、及び4-メチル-1-ペンテン等のオレフィンモノマーの一種または二種以上と、水酸基、カルボキシ基、酢酸ビニル構造、及び酸無水物構造等を有するモノマーの一種または二種以上との共重合体も挙げられる。
【0032】
ポリオレフィン樹脂は、例えば、具体的には、ポリエチレン(低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、及び高密度ポリエチレン等)、ポリプロピレン、ポリ-1-ブテン、ポリ-2-ブテン、ポリ-1-ヘキセン、ポリ-1-オクテン、ポリ(4-メチル-1-ペンテン)、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、及びエチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体からなる群から選択される少なくとも一種であることが挙げられる。
【0033】
これらの中でも、ポリオレフィン樹脂は、エチレンに由来する構成単位およびプロピレンに由来する構成単位の少なくとも一つを持つ樹脂であることが好ましい。ポリオレフィン樹脂は、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びエチレン-酢酸ビニル共重合体からなる群から選ばれる少なくとも一種であることがより好ましく、ポリエチレン及びポリプロピレンからなる群から選ばれる少なくとも一種であることがさらに好ましい。ポリオレフィン樹脂として、ポリエチレンを用いる場合、ポリオレフィン樹脂は、低密度ポリエチレン及び中密度ポリエチレンの少なくとも一種であることが好ましく、低密度ポリエチレン又は中密度ポリエチレンのいずれかであることがより好ましい。
【0034】
紙基材と熱可塑性樹脂層とを溶媒を使用することなく分離させることが可能であり、当該熱可塑性樹脂層に残留する紙基材の量を抑制しやすくする観点で、ポリオレフィン樹脂は、未変性のポリオレフィン樹脂であることが好ましく、酸変性されていない未変性ポリオレフィン樹脂であることがより好ましい。未変性のポリオレフィン樹脂は、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ヘキセン、オクテン、及び4-メチル-1-ペンテン等のオレフィンモノマーを含むモノマーを重合させることによって得られた重合体に、水酸基、カルボキシ基、酢酸ビニル構造、及び酸無水物構造等の一つ又は二つ以上の構造等の官能基が導入されていないポリオレフィン樹脂が含まれる。具体的には、例えば、オレフィンモノマーを含むモノマーを重合させた重合体に、不飽和カルボン酸化合物、又は、不飽和カルボン酸化合物の無水物により変性した酸変性重合体は、変性ポリオレフィン樹脂であり、酸変性されていない未変性のポリオレフィン樹脂ではない。
【0035】
未変性のポリオレフィン樹脂は、未変性のポリエチレン、未変性のポリプロピレン、及び未変性のエチレン-酢酸ビニル共重合体からなる群から選ばれる少なくとも一種であることが好ましく、未変性のポリエチレンおよび未変性のポリプロピレンからなる群から選ばれる少なくとも一種であることがより好ましい。
【0036】
ポリオレフィン樹脂の密度は、特に限定されず、例えば、0.85g/cm以上、0.97g/cm以下であることが好ましい。
ポリオレフィン樹脂がポリエチレンである場合、例えば、密度が0.91g/cm以上、0.93g/cm未満の低密度ポリエチレン、密度が0.93g/cm以上、0.942g/cm未満の中密度ポリエチレン、及び、密度が0.942g/cm以上、0.97g/cm以下の高密度ポリエチレンのいずれでもよい。
ポリオレフィン樹脂がポリプロピレンである場合、例えば、密度が0.90g/cm以上、0.91g/cm以下のポリプロピレンであることが好ましい。
ポリオレフィン樹脂がエチレン-酢酸ビニル共重合体である場合、0.92g/cm以上、0.95g/cm以下のエチレン-酢酸ビニル共重合体であることが好ましい。
ポリオレフィン樹脂の密度は、JIS K7112:1999に準拠して測定できる。
【0037】
ポリオレフィン樹脂のメルトフローレート(MFR)は、3g/10分以上、45g/10分/10分以下であることが好ましい。
ポリオレフィン樹脂のMFRは、3.5g/10分以上であることがより好ましく、7g/10分以上であることがさらに好ましい。ポリオレフィン樹脂のMFRは、42g/10分以下であることがより好ましい。
【0038】
ポリオレフィン樹脂のMFRは、例えば、以下のようにして測定できる。
ポリオレフィン樹脂が、例えば、ポリエチレンである場合、ポリエチレンのMFRは、温度190℃、荷重2.16kgにおけるMFRを表す。ポリエチレンのMFRは、JIS K6922-1、JIS K6922-2:2018、及びJIS K7210-1:2011に準拠して測定できる。
ポリオレフィン樹脂が、例えば、ポリプロピレンである場合、ポリプロピレンのMFRは、温度230℃、荷重2.16kgにおけるMFRを表す。ポリプロピレンのMFRは、JIS K6921-1:2018、JIS K6921-2:2018、及びJIS K7210-1:2011に準拠して測定できる。
ポリオレフィン樹脂が、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体である場合、エチレン-酢酸ビニル共重合体のMFRは、温度190℃、荷重2.16kgにおけるMFRを表す。エチレン-酢酸ビニル共重合体のMFRは、JIS K6924-1:1997、JIS K6924-2:1997、及びJIS K7210-1:2011に準拠して測定できる。
【0039】
熱可塑性樹脂層の厚さは、特に限定されない。熱可塑性樹脂層の回収のしやすさの観点で、熱可塑性樹脂層の厚さは、13μm以上であることが好ましい。熱可塑性樹脂層の厚さが13μm以上であれば、例えば、ロール状のラミネート紙から、紙基材と、熱可塑性樹脂層とに分離しやすくなり、分離された熱可塑性樹脂層は、ロール状の熱可塑性樹脂層として回収しやすくなりやすい。
熱可塑性樹脂層の厚さは、熱可塑性樹脂層をより回収しやすくする観点で、13μm以上であることがより好ましく、18μm以上であることがさらに好ましい。
熱可塑性樹脂層の厚さの上限は、特に限定されない。熱可塑性樹脂層の厚さは、例えば、50μm以下であってもよい。
【0040】
熱可塑性樹脂層中、ポリオレフィン樹脂の含有量は、熱可塑性樹脂層の全体量基準で、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、99質量%以上であることがさらに好ましく、100質量%であることがよりさら好ましい。
熱可塑性樹脂層のポリオレフィン樹脂の含有量が100質量%(すなわち、熱可塑性樹脂層が、ポリオレフィン樹脂のみからなる層)であれば、ポリオレフィン樹脂を含む熱可塑性樹脂層をリサイクルしやすくなる。
【0041】
熱可塑性樹脂層は、ポリオレフィン樹脂以外に、必要に応じて、添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、滑剤、紫外線吸収剤、着色剤、及びアンチブロッキング剤等が挙げられる。熱可塑性樹脂層が添加剤を含有する場合、添加剤は、一種単独で含有していてもよく、二種以上を含んでいてもよい。
【0042】
(擬似接着力)
本実施形態に係るラミネート紙において、紙基材と熱可塑性樹脂層の界面で剥離したときの擬似接着力が、150mN/50mm以上、1500mN/50mm以下である。
擬似接着力が、150mN/50mm以上、1500mN/50mm以下の範囲であれば、紙基材と熱可塑性樹脂層とが容易に分離することが可能であり、当該熱可塑性樹脂層に残留する紙基材の量を抑制しやすい。また、擬似接着力が、150mN/50mm以上であることで、使用に耐え得る強度が得られる。
より使用に耐え得る強度が得られる観点で、擬似接着力は、220mN/50mm以上であることが好ましく、250mN/50mm以上であることがより好ましい。
紙基材と熱可塑性樹脂層とがより容易に分離することが可能であり、当該熱可塑性樹脂層に残留する紙基材の量をより抑制しやすくする観点で、擬似接着力は、1300mN/50mm以下であることが好ましく、1000mN/50mm以下であることがより好ましい。紙基材と熱可塑性樹脂層の界面で剥離したときの擬似接着力は、後述する実施例に記載の方法により測定できる。
【0043】
(ラミネート紙の用途)
本実施形態に係るラミネート紙の用途は、特に限定されず、例えば、剥離紙および包装紙などが例示される。本実施形態に係るラミネート紙が剥離紙又は包装紙の用途に適用される場合、剥離紙又は包装紙は、本実施形態に係るラミネート紙を含む。剥離紙としては、一般的な剥離シートの用途に適用できる。剥離紙としては、例えば、剥離紙の剥離剤層の剥離面にシート状物を形成する工程において用いられる工程紙として使用可能である。剥離紙は、具体的には、各種樹脂シート、合成皮革、又は各種複合材料などを作製するときの各種工程紙として適用できる。
【0044】
本実施形態に係るラミネート紙を剥離紙として適用する場合、本実施形態に係るラミネート紙自体を剥離紙として適用してもよく、剥離紙の基材として適用してもよい。本実施形態に係るラミネート紙を剥離紙の基材として適用する場合、本実施形態に係るラミネート紙における熱可塑性樹脂層の上に、剥離剤層を設けることが好ましい。例えば、剥離剤層は、本実施形態に係るラミネート紙における熱可塑性樹脂層に、直接、接するように積層されていてもよい。例えば、剥離剤層は、本実施形態に係るラミネート紙における熱可塑性樹脂層の上に、中間層を設け、当該中間層の上に、剥離剤層が積層されていてもよい。中間層としては、例えば、プライマー層等の易接着層などが挙げられる。
【0045】
剥離剤層に含まれる剥離剤は、特に限定されず、例えば、シリコーン樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、長鎖アルキル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、及びワックス等の公知の剥離剤が挙げられる。これらの中でも、剥離特性の観点で、剥離剤は、シリコーン樹脂を用いたシリコーン系剥離剤であることが好ましい。シリコーン系剥離剤は、特に限定されず、溶剤型、無溶剤型、又はエマルション型のいずれの形態でも用いることができる。
【0046】
シリコーン系剥離剤に用いられるシリコーン樹脂としては、ジメチルポリシロキサンを基本骨格とするシリコーン樹脂が挙げられる。シリコーン樹脂としては、付加反応型、縮合反応型、紫外線硬化型、及び電子線硬化型等が挙げられる。剥離剤として、付加反応型シリコーン樹脂を用いる場合、架橋剤、及び触媒を併用することが好ましい。架橋剤としては、例えば1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を有するオルガノポリシロキサンが挙げられる。触媒としては、白金、パラジウム、及びロジウム等の白金属の金属系化合物などが挙げられる。
【0047】
本実施形態に係るラミネート紙を剥離紙の用途に適用する場合、例えば、本実施形態に係るラミネート紙の少なくとも一方の面に、剥離剤組成物の塗布液を塗布して塗膜を形成する工程と、得られた塗膜を硬化させて剥離剤層を形成する工程とを備える製造方法によって得られる。剥離剤組成物の塗布方法としては、例えば、グラビアコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、及びダイコート法などの塗布方法が採用できる。塗膜の乾燥条件は、塗膜が乾燥できる条件を採用すればよい。
【0048】
シリコーン系剥離剤が溶剤型である場合、溶剤型のシリコーン系剥離剤を含む剥離剤組成物に、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、ヘキサン、及びヘプタン等の有機溶剤を混合した塗布液を調製し、当該塗布液を、公知の塗布方法によって、本実施形態に係るラミネート紙の熱可塑性樹脂層上に塗布して、乾燥、加熱することによって得られる。
【0049】
剥離剤を含む剥離剤組成物は、必要に応じて、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、無機又は有機のフィラー、帯電防止剤、及び界面活性剤等の各種添加剤を含ませてもよい。
【0050】
一般的に、従来から使用されている通常のラミネート紙は、紙基材と熱可塑性樹脂層との密着性に優れるように作製されており、紙基材と熱可塑性樹脂層とが剥がれないことを前提としている。このため、通常のラミネート紙が、例えば、剥離紙の用途に適用された場合、使用済みなどの廃棄物となる通常のラミネート紙から、紙基材と熱可塑性樹脂層とを分離することは考慮されていない。また、通常のラミネート紙から、紙基材と熱可塑性樹脂層とを分離した場合であっても、紙基材と熱可塑性樹脂層とを分離したときに、例えば、紙基材で破壊(いわゆる紙層破壊)が生じて、熱可塑性樹脂層に残留する紙基材の量が多くなる。このため、通常のラミネート紙において、紙基材と熱可塑性樹脂層と分離して、分離された紙基材を回収してリサイクルすることは考慮されたとしても、分離された熱可塑性樹脂層を回収してリサイクルすることについて考慮されていない。
【0051】
これに対し、本実施形態に係るラミネート紙は、紙基材に熱可塑性樹脂層が擬似接着しているため、紙基材と熱可塑性樹脂層とを分離した場合でも、当該熱可塑性樹脂層に残留する紙基材の量が抑制される(例えば、後述する残渣量が6質量%以下)。したがって、本実施形態に係るラミネート紙は、剥離紙の用途に適用された後に破棄することに至った場合でも、当該ラミネート紙から分離された熱可塑性樹脂層を回収して、リサイクルすることが可能である。
【0052】
本実施形態に係るラミネート紙を包装紙として適用する場合、例えば、本実施形態に係るラミネート紙自体を包装紙として適用してもよく、本実施形態に係るラミネート紙における紙基材の熱可塑性樹脂層側とは反対側の面(第二紙基材面)、及び、熱可塑性樹脂層の紙基材側とは反対側の面(第一熱可塑性樹脂層面)の少なくともいずれかの面に、印刷層等の装飾層を設けてもよい。装飾層としての印刷層を設けることにより、ラミネート紙に、被包装物の内容等に関する情報、その他の情報を印刷により表示することができる。
【0053】
なお、剥離紙および包装紙の用途に限らず、紙基材と熱可塑性樹脂層とを剥がさず、紙基材と熱可塑性樹脂層との密着性が求められる用途であって、本実施形態に係るラミネート紙が適用可能な用途に適用された場合でも、本実施形態に係るラミネート紙は、従来から使用されている通常のラミネート紙に比べ、ラミネート紙から分離された熱可塑性樹脂層を回収してリサイクルできる、という利点が得られる。
【0054】
(ラミネート紙の製造方法)
本実施形態に係るラミネート紙の好ましい製造方法の一例としては、以下の製造方法が挙げられる。本実施形態に係るラミネート紙の好ましい製造方法は、紙基材を準備する工程と、前記ポリオレフィン樹脂を準備する工程と、前記紙基材に対して易接着処理を施すことなく、前記紙基材上に、230℃以上、320℃以下の温度で溶融させた前記ポリオレフィン樹脂を溶融押出する工程とを備える。
【0055】
紙基材を準備する工程は、前述の紙基材で説明した紙基材を準備すればよい。紙基材は、公知の製造方法によって得られる。
【0056】
ポリオレフィン樹脂を準備する工程は、前述の熱可塑性樹脂層で説明したポリオレフィン樹脂を準備すればよい。ポリオレフィン樹脂は、公知の製造方法によって得られる。
【0057】
ポリオレフィン樹脂を溶融押出する工程において、紙基材の表面に対し、コロナ処理、プラズマ処理、及び火炎処理などの易接着処理は施されない。紙基材の表面に対して易接着処理が施されないことにより、紙基材と熱可塑性樹脂層との擬似接着性が得られやすくなり、紙基材と熱可塑性樹脂層との分離が容易になる。易接着処理が施されない紙基材上に、溶融させたポリオレフィン樹脂を溶融押出する方法としては、特に限定されず、例えば、Tダイを用いる方法が挙げられる。
【0058】
ポリオレフィン樹脂を溶融押出する工程において、溶融させたポリオレフィン樹脂の温度は、ポリオレフィン樹脂を溶融させて押出すときの押出樹脂温度である。すなわち、紙基材上に、溶融させたポリオレフィン樹脂を溶融押出するときのポリオレフィンの温度は、230℃以上、320℃以下の温度である。ポリオレフィン樹脂を溶融させて押出すときの温度(押出樹脂温度)は、ダイから押し出されるときの熱可塑性樹脂の温度であり、押出機のダイ内におけるポリオレフィン樹脂の温度として測定できる。
ポリオレフィン樹脂を溶融させて押出すときの温度は、240℃以上であることが好ましく、250℃以上であることがより好ましい。
ポリオレフィン樹脂を溶融させて押出すときの温度は、310℃以下であることが好ましく、300℃以下であることがより好ましい。
【0059】
ポリオレフィン樹脂を溶融押出する工程は、溶融押出したポリオレフィン樹脂を冷却する工程(冷却工程)も含む。
冷却工程においては、加熱溶融されたポリオレフィン樹脂を冷却ロール等の冷却手段に接触させて、ポリオレフィン樹脂を含む熱可塑性樹脂層が形成される。冷却ロールは、外周面が金属製の筒体を有する。冷却ロールは、筒体の内部に冷却水等が通されることで冷却機能を有する。冷却手段として冷却ロールを用いる場合、紙基材の上に溶融押出されたポリオレフィン樹脂を冷却ロールの外周面に、直接、接触させて冷却してもよく、紙基材を冷却ロールの外周面に、直接、接触させて、ポリオレフィン樹脂を間接的に冷却してもよい。また、冷却工程においては、溶融押出したポリオレフィン樹脂を空冷によって冷却してもよい。
【0060】
ポリオレフィン樹脂の冷却温度は、15℃以上、40℃以下であることが好ましく、20℃以上、35℃以下であることがより好ましい。なお、冷却手段として冷却ロールを使用する場合、冷却温度は、冷却ロールに通水する冷却水の温度である。また、空冷によってポリオレフィン樹脂を冷却する場合、冷却温度は、溶融押出しされたポリオレフィン樹脂が置かれる雰囲気温度であり、温調された空気を強制的にポリオレフィン樹脂に吹き付ける場合は、冷却温度は、その空気の温度である。
【0061】
冷却手段として冷却ロールを用いる場合、溶融したポリオレフィン樹脂を冷却ロールの外周面に直接または間接的に接触させる時間(冷却時間)は、紙基材とポリオレフィン樹脂とが積層されたラミネート紙を搬送する速度によって制御できる。搬送する速度は、例えば、40m/min以上、180m/min以下であることが好ましく、50m/min以上、160m/min以下であることがより好ましい。
【0062】
以上の工程を経て、本実施形態に係るラミネート紙を得ることができる。
【0063】
ここで、本実施形態に係るラミネート紙の製造方法の一例について、図面を参照して説明する。図面においては、説明を容易にするために、拡大または縮小して図示した部分がある。図2を参照すると、図2には、ラミネート装置200を使用して、ロール状の紙基材10Aから繰り出された紙基材10の上に、溶融させたポリオレフィン樹脂を溶融押出して、紙基材10の上に熱可塑性樹脂層30を設ける工程の要部が模式的に示されている。
【0064】
ラミネート装置200は、Tダイ204を備える押出機202と、冷却ロール208と、冷却ロール208に間隔をおいて隣接されるタッチロール206と、繰り出しロール210と、巻き取りロール212とを備える。ロール状の紙基材10Aは、熱可塑性樹脂層30が設けられる予定の面が巻芯側、その反対側の面が外周面側になるように、巻き取られている。
【0065】
紙基材10は、繰り出しロール210によって、ロール状の紙基材10Aから繰り出される。繰り出された紙基材10は、図示しないガイドロールを通過して、冷却ロール208とタッチロール206との隙間に到達する。冷却ロール208とタッチロール206との隙間に到達した紙基材10は、コロナ処理等の易接着処理が施されない。紙基材10が、冷却ロール208とタッチロール206との隙間に到達した後、紙基材10に向かって、Tダイ204から溶融したポリオレフィン樹脂がフィルム状に押し出される。Tダイ204から押し出されるときのポリオレフィンの温度は、230℃以上、320℃以下である。押し出された熱可塑性樹脂は、紙基材10と接触して、冷却ロール208とタッチロール206との間隙において、紙基材10の上に、フィルム状に供給された熱可塑性樹脂が圧着される。これにより、紙基材10に、熱可塑性樹脂層30が積層されたラミネート紙100が形成される。ラミネート紙100において、熱可塑性樹脂層30は、紙基材10に擬似接着している。紙基材10と熱可塑性樹脂層30との界面で剥離したときの擬似接着力は、150mN/50mm以上、1500mN/50mm以下である。紙基材10の上に熱可塑性樹脂層30が積層されたラミネート紙100は、図示しないガイドロールを通過して、巻き取りロール212で巻き取られ、ロール状のラミネート紙100Aが形成される。ロール状のラミネート紙100Aは、紙基材10が巻芯側、熱可塑性樹脂層30が外周面側になるように巻き取られる。
【0066】
冷却ロール208による冷却温度は、前述したポリオレフィン樹脂の冷却温度の範囲であることが好ましい。ラミネート紙100の巻き取り速度は、前述したラミネート紙を搬送する速度の範囲であることが好ましい。冷却ロール208とタッチロール206との間隙は、例えば、熱可塑性樹脂層30が予め定められた厚さになるように調整することが可能である。
【0067】
以上、図2を参照して、本実施形態に係るラミネート紙の製造方法の一例を説明したが、本実施形態に係るラミネート紙の製造方法は、これに限定されるものではない。例えば、ロール状の紙基材10Aは、熱可塑性樹脂層30が設けられる予定の面が外周面側、その反対側の面が巻芯側になるように、巻き取られていてもよい。ロール状のラミネート紙100Aは、紙基材10が外周面側、熱可塑性樹脂層30が巻芯側になるように巻き取られてもよい。本実施形態に係るラミネート紙の製造方法は、熱可塑性樹脂層30が紙基材10に擬似接着することが可能であり、紙基材10と熱可塑性樹脂層30との界面で剥離したときの擬似接着力が、上記の特定の範囲となるように、紙基材10上に熱可塑性樹脂層30が積層できれば、種々の形態を採用し得る。
【0068】
(ラミネート紙のリサイクル方法)
本実施形態に係るラミネート紙をリサイクルする好ましい方法の一例としては、以下の方法が挙げられる。本実施形態に係るラミネート紙をリサイクルする好ましい方法は、本実施形態に係るラミネート紙を、溶媒を使用せずに、前記紙基材と、前記熱可塑性樹脂層とを分離する工程と、分離した前記紙基材および前記熱可塑性樹脂層を、それぞれ回収する工程と、を有する。そして、前記紙基材と、前記熱可塑性樹脂層とに分離する工程において、前記紙基材と、前記熱可塑性樹脂層とを分離したとき、前記熱可塑性樹脂層に付着している残渣の残渣量が、前記紙基材の全体の質量に対して、6質量%以下である。前記残渣量は、下記数式(数1)で表される。
【0069】
R=[{TP-((TP/10)×TPρ×L)}/{L-((TP/10)×TPρ×L)}]×100 ・・・(数1)
(前記数式(数1)中、Rは、残渣量(単位:質量%)、TPは、分離後の熱可塑性樹脂層の質量(単位:g)、TPは、熱可塑性樹脂層の厚さ(単位:μm)、TPρは、熱可塑性樹脂層の密度(単位:g/cm)、Lは、分離前のラミネート紙における熱可塑性樹脂層の面積(単位:cm)、Lは、分離前のラミネート紙の質量(単位:g)を表す。)
【0070】
前記数式(数1)において、熱可塑性樹脂層がポリオレフィン樹脂の単層であるときの密度は、JIS K7112:1999に準拠して測定すればよい。種類が異なるポリオレフィン樹脂が積層されているときの密度は、JIS K7112:1999に準拠して測定し、それぞれの密度の平均値とすればよい。
【0071】
本実施形態に係るラミネート紙をリサイクルする好ましい方法は、本実施形態に係るラミネート紙を準備する工程も含む。ラミネート紙は、例えば、前述のラミネート紙の好ましい製造方法によって得ることができる。準備するラミネート紙は、廃棄物となるラミネート紙が挙げられる。具体的には、準備するラミネート紙の一例としては、(1)使用済みのラミネート紙の態様、(2)他の一例としては、本実施形態に係るラミネート紙を製造するときに製品ロスとなったラミネート紙の態様、(3)さらに他の一例としては、本実施形態に係るラミネート紙の在庫処分品の態様が挙げられる。準備するラミネート紙は、ロール状に巻き取られた長尺状のラミネート紙でもよく、折り畳まれた長尺状のラミネート紙でもよく、所定の寸法にカットされた枚葉状のラミネート紙でもよい。
【0072】
ラミネート紙を分離する工程は、溶媒を用いずに、紙基材と、熱可塑性樹脂層とを分離する。本実施形態に係るラミネート紙は、紙基材と、熱可塑性樹脂層とが擬似接着しているため、使用時には、紙基材と熱可塑性樹脂層との密着性は十分である。一方で、本実施形態に係るラミネート紙から、紙基材と熱可塑性樹脂層とに分離するときには、紙基材と熱可塑性樹脂層とを容易に剥がすことが可能であり、化学的な分離処理によらず、物理的な分離処理が可能になる。例えば、本実施形態に係るラミネート紙が廃棄物となった場合に、本実施形態に係るラミネート紙は、紙基材と、熱可塑性樹脂層とを、人の手または機械によって分離することができる。
【0073】
ラミネート紙を分離する工程において、紙基材と、熱可塑性樹脂層とを分離したとき、前記熱可塑性樹脂層に付着している残渣の残渣量は、紙基材の全体の質量に対して、6質量%以下である。当該残渣量は、3質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0(ゼロ)質量%であることがさらに好ましい。当該残渣量は、0質量%以上、6質量%以下であることが好ましい。当該残渣量は、前述の数式(数1)で表される。
【0074】
ラミネート紙を分離する工程で分離した熱可塑性樹脂層の破断強度は、2.0MPa以上であることが好ましい。当該破断強度が2.0MPa以上であれば、ロール状のラミネート紙から、紙基材と、熱可塑性樹脂層とに分離して、ロール状の紙基材と、ロール状の熱可塑性樹脂層として、それぞれ回収しやすくなる。
ラミネート紙を分離する工程で分離した熱可塑性樹脂層の破断強度の上限値は、特に限定されず、例えば、20MPa以下であってもよい。
【0075】
分離した紙基材および熱可塑性樹脂層を回収する工程では、ラミネート紙を分離する工程で分離された紙基材および熱可塑性樹脂層を、それぞれ回収する。例えば、ロール状のラミネート紙から、紙基材と、熱可塑性樹脂層とに分離した場合、紙基材と、熱可塑性樹脂層とは、それぞれ、ロール状の紙基材と、ロール状の熱可塑性樹脂層として回収することができる。ロール状ではない折り畳まれたラミネート紙から、紙基材と、熱可塑性樹脂層とに分離した場合も、それぞれ、ロール状の紙基材と、ロール状の熱可塑性樹脂層として回収することができる。また、例えば、枚葉状のラミネート紙から、紙基材と、熱可塑性樹脂層とに分離した場合、紙基材と、熱可塑性樹脂層とは、それぞれ、枚葉状の紙基材と、枚葉状の熱可塑性樹脂層として回収することができる。回収した紙基材および熱可塑性樹脂層は、いずれも、リサイクルすることが可能である。特に、本実施形態に係るラミネート紙から分離した熱可塑性樹脂層には、残留する紙基材の残渣量が6質量%以下に抑制されるため、回収した熱可塑性樹脂層をリサイクルしやすい。
【0076】
本実施形態に係るラミネート紙の回収方法の一例について、図面を参照して説明する。図面においては、説明を容易にするために、拡大または縮小して図示した部分がある。図3を参照すると、図3には、ラミネート紙の分離装置300を使用して、ロール状のラミネート紙100Bから、紙基材10と、熱可塑性樹脂層30とを分離して、それぞれ、ロール状の紙基材10Bと、ロール状の熱可塑性樹脂層30Bとして回収する工程の要部が模式的に示されている。
【0077】
分離装置300は、繰り出しロール310と、分離した紙基材10を巻き取る巻き取りロール301と、分離した熱可塑性樹脂層30を巻き取るための巻き取りロール303とを備える。ロール状のラミネート紙100Bは、廃棄することに至ったラミネート紙であり、ラミネート紙の廃棄物である。ロール状のラミネート紙100Bは、熱可塑性樹脂層30が巻芯側、紙基材10が外周面側になるように、巻き取られている。ロール状のラミネート紙100Bから、紙基材10と、熱可塑性樹脂層30とが分離されると、熱可塑性樹脂層30は、図示しないガイドロールを通過して、熱可塑性樹脂層30を巻き取るための巻き取りロール303によって巻き取られ、紙基材10は、図示しないガイドロールを通過して、紙基材10を巻き取るための巻き取りロール301によって巻き取られる。巻き取られたロール状の熱可塑性樹脂層30B、及び、巻き取られたロール状の紙基材10Bは、それぞれ、回収される。回収されたロール状の熱可塑性樹脂層30Bおよびロール状の紙基材10Bは、ぞれぞれ、リサイクルされる。
【0078】
以上、図3を参照して、本実施形態に係るラミネート紙の回収方法の一例を説明したが、本実施形態に係るラミネート紙の回収方法は、これに限定されるものではない。ラミネート紙100Bは、熱可塑性樹脂層30が巻芯側、紙基材10が外周面側になるように、巻き取られているが、これに限定されず、紙基材10が巻芯側、熱可塑性樹脂層30が外周面側になるように、巻き取られていてもよい。また、図3を参照して、ロール状のラミネート紙100Bを例に挙げて、本実施形態に係るラミネート紙の回収方法の一例を説明したが、これに限定されない。例えば、折り畳まれた長尺状のラミネート紙から、紙基材と熱可塑性樹脂層とを分離できる分離装置を使用して、紙基材と、熱可塑性樹脂層とを分離してもよい。例えば、枚葉状のラミネート紙から、紙基材と熱可塑性樹脂層とを分離できる分離装置を使用して、紙基材と、熱可塑性樹脂層とを分離してもよい。紙基材と熱可塑性樹脂層との分離は、例えば、機械で行ってもよく、人の手で行ってもよく、両者に組み合わせでもよい。本実施形態に係るラミネート紙の回収方法は、溶媒を使用しないで、紙基材と、熱可塑性樹脂層とに分離できれば、種々の形態を採用し得る。
【0079】
本発明は、前記実施形態に限定されない。本発明は、本発明の目的を達成できる範囲での変形及び改良などを含むことができる。
【実施例0080】
以下に実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されない。
【0081】
各実施例及び各比較例のラミネート紙を作製するための原材料として、下記の原材料を準備した。
【0082】
(紙基材)
「P-1」:上質紙(日本製紙株式会社製、「WMシール64.0G」、坪量64g/m
「P-2」:グラシン紙(リンテック株式会社製グラシン、坪量73g/m
【0083】
(熱可塑性樹脂層)
「PE-1」:低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン株式会社製、「LC8001」、MFR:20g/10分、密度:0.917g/cm
「PE-2」:低密度ポリエチレン(住友化学株式会社製、「L405」、MFR:3.7g/10分、密度:0.924g/cm
「PE-3」:低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン株式会社製、「LC605Y」、MFR:7.3g/10分、密度:0.918g/cm
「PE-4」:低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン株式会社製、「LC621」、MFR:5.5g/10分、密度:0.923g/cm
「PE-5」:中密度ポリエチレン(住友化学株式会社製、「L5721」、MFR:7.5g/10分、密度:0.937g/cm
「PP-1」:ポリプロピレン(サンアロマー株式会社製、「PHA03A」、MFR:42g/10分、密度:0.90g/cm
「PP-2」:ポリプロピレン(日本ポリプロ株式会社製、「OX0167」、MFR:15g/10分、密度:0.910g/cm
「EVA-1」:エチレン-酢酸ビニル共重合体(東ソー株式会社製、「ウルトラセン537」、MFR:8.5g/10分、密度::0.925g/cm
【0084】
<実施例1>
ポリオレフィン樹脂として、ポリエチレン(PE-1)を加熱溶融し、溶融したポリエチレンをTダイから、280℃の押出樹脂温度で押し出すことで、紙基材(P-1:上質紙)の片面に、厚さ25μmの熱可塑性樹脂層を形成した。このようにして、紙基材に、直接、接して積層された熱可塑性樹脂層を備える実施例1のラミネート紙を得た。
熱可塑性樹脂層の厚さは、押出機のスクリューの背圧を調整することにより制御した。水温が23℃に調節された冷却水を水冷ロールに通水させ、当該水冷ロールの表面に、基材の上の熱可塑性樹脂層を接触させることにより、溶融した熱可塑性樹脂層を冷却して、固化させた。ポリエチレン(PE-1)を積層するときの紙基材(P-1)の搬送速度は、150m/minとした。
【0085】
<実施例2~実施例6>
表1にしたがって、紙基材の種類、及び熱可塑性樹脂層を形成するポリオレフィン樹脂の種類、熱可塑性樹脂の厚さ、及び押出樹脂温度のうちの少なくともいずれかの条件を変更した以外は、実施例1と同様にして、各実施例のラミネート紙を得た。
【0086】
<比較例1>
表1にしたがって、熱可塑性樹脂層を形成するポリオレフィン樹脂の種類、熱可塑性樹脂層の厚さ、及び押出樹脂温度の条件を変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例1のラミネート紙を得た。
【0087】
<比較例2~比較例7>
比較例2~比較例5については、表1にしたがって、熱可塑性樹脂層を形成するポリオレフィン樹脂の種類、熱可塑性樹脂層の厚さ、及び押出樹脂温度の条件を変更し、さらに、紙基材の片面に、溶融した熱可塑性樹脂を押し出す前に、紙基材の熱可塑性樹脂層を設ける面に対し、コロナ処理を施した以外は、実施例1と同様にして、各比較例のラミネート紙を得た。比較例6及び比較例7については、押出樹脂温度の条件を変更した以外は、実施例1と同様にして、各比較例のラミネート紙を得た。
【0088】
<擬似接着力の評価>
擬似接着力は、JIS Z0237:2009に規定される180°引き剥がし粘着力測定に準じて測定した。具体的には、まず、各例で作製したラミネート紙の熱可塑性樹脂層側を、両面テープを使用してステンレス板に固定した。その後、ラミネート紙の紙基材を、剥離速度:300mm/min、剥離角度:180°の条件で、熱可塑性樹脂層から剥離した。この剥離で必要とされた力(引き剥がし力)の大きさを測定し、測定された引き剥がし力を擬似接着力(単位:mN/50mm)とした。
なお、紙基材と熱可塑性樹脂層とが紙層破壊が生じるなどにより、擬似接着力の測定が不可であった場合は、Fと表記した。
【0089】
<熱可塑性樹脂層の破断強度>
各例で作製したラミネート紙を、長さ150mm(MD方向)、幅15mm(TD方向)の寸法にカットした試験片を採取した。採取した試験片から、紙基材と熱可塑性樹脂層とを分離し、分離された熱可塑性樹脂を万能試験機(株式会社島津製作所製、オートグラフAG-IS 500N)のチャックで挟み、JIS K7127:1999に準拠し、チャック間距離:100mm、引張速度:200mm/minの条件で、熱可塑性樹脂層のMD方向における破断強度(単位:MPa)を測定した。熱可塑性樹脂層に付着する残渣が6質量%を超える場合は、分離された熱可塑性樹脂の破断強度として適切ではないため、測定不可(表2中、Fと表記)とした。
【0090】
<残渣量評価>
各例で得られたラミネート紙を、100mm×100mmの寸法にカットして、紙基材の残渣量を評価するための残渣量評価用試料を採取した。採取した残渣量評価用試料の重さを測定した。その後、残渣量評価用試料を、手で剥がし、熱可塑性樹脂層の重さを測定した。手で剥がす前に測定した残渣量評価用試料の質量(数式(数1)中のLに相当)と、手で剥がした後に測定した熱可塑性樹脂層の質量(数式(数1)中のTPに相当)から、前述の数式(数1)にしたがって、熱可塑性樹脂層に付着した残渣の残渣量を算出した。
数式(数1)中のTPρに代入する値は、熱可塑性樹脂層に用いたポリオレフィン樹脂の密度を採用した。また、数式(数1)中のTPに代入する値として、残渣量評価用試料から分離した後の熱可塑性樹脂層の厚さを測定した。
また、数式(数1)中のTPに代入する値として、残渣量評価用試料から分離した後の熱可塑性樹脂層の厚さを測定した。当該熱可塑性樹脂層の厚さは、残渣が存在する部分を避けて、当該熱可塑性樹脂層の4隅付近と中央付近1箇所の合計5カ所を測定し、その平均値とした。熱可塑性樹脂層に付着する残渣が多い場合は、当該熱可塑性樹脂層の厚さは、前述のTダイから押出して形成した熱可塑性樹脂層の厚さを採用した。残渣量は、以下の評価基準で評価を行った。
【0091】
(評価基準)
「5」:残渣量が6質量%以下。
「4」:残渣量が6質量%超、30質量%以下。
「3」:残渣量が30質量%超、50質量%以下。
「2」:残渣量が50質量%超、70質量%以下。
「1」:残渣量が70質量%超、99質量%以下。
【0092】
<剥離剤硬化性評価>
(剥離紙の作製)
各例で得られたラミネート紙の熱可塑性樹脂層の表面に、シリコーン系剥離剤(信越化学工業株式会社製、KS-847)を含む剥離剤組成物を、アプリケータを用いて、シリコーン系剥離剤を乾燥後の重さで0.5g/mになるように塗布および乾燥して、剥離剤層を設けることにより、剥離紙を作製した。
(剥離剤層の硬化性評価)
上記で作製した剥離紙について、剥離剤層の表面を、指で10回擦り、曇り(スミア)および剥離剤層の脱落(ラブオフ)の有無を目視にて確認し、以下の判断基準により、剥離剤層の硬化性を評価した。
「A」:スミアおよびラブオフの両方とも確認されなかった。
「F」:スミアおよびラブオフの少なくとも一方が確認された。
【0093】
<浮き及び剥がれの評価>
各例で得られたラミネート紙を300mm×300mmの寸法に断裁した。次いで、断裁したラミネート紙に対して、抜き加工(内径30mmの円形状)を施した。断裁後及び抜き加工後のラミネート紙について、紙基材と熱可塑性樹脂との間で浮き及び剥がれの有無について、目視にて確認し、以下の判断基準により評価した。
「A」:断裁後及び抜き加工後において、いずれも浮き及び剥がれが確認されなかった。
「F」:断裁後及び抜き加工後の少なくともいずれかにおいて、浮き及び剥がれが確認された。
【0094】
【表1】
【0095】
【表2】
【0096】
各実施例では、擬似接着性が得られていた。このため、紙基材と熱可塑性樹脂層とを手で剥がすことが可能であり、紙基材と熱可塑性樹脂層との界面で剥がすことができた。
一方、比較例1から比較例5では、紙基材と熱可塑性樹脂層とが強固に接着していた。このため、紙基材と熱可塑性樹脂層とを手で剥がすと、熱可塑性樹脂層に残留する紙基材が多量であった。
したがって、各実施例は、比較例1から比較例5に比べ、残渣量の評価が優れており、紙基材および熱可塑性樹脂層のいずれもリサイクル可能であることが分かる。
一方、比較例6は、擬似接着力が弱すぎて、浮き及び剥がれの評価結果がFであり、使用に耐えない。比較例7は、擬似接着力の測定は可能であったが、擬似接着力が強すぎて、熱可塑性樹脂層に残留する紙基材が6質量%を超えており、残渣量が多くなった。
以上の結果から、本実施形態に係るラミネート紙は、溶媒を使用することがなくても、紙基材と、ポリオレフィンを含む熱可塑性樹脂層とを分離させることが可能であり、当該熱可塑性樹脂層に残留する紙基材の量が抑制されていることが分かる。
【符号の説明】
【0097】
10,10A,10B…紙基材、11…第一紙基材面、12…第二紙基材面、30,30A,30B…熱可塑性樹脂層、31…第一熱可塑性樹脂層面、32…第二熱可塑性樹脂層面、100,100A,100B…ラミネート紙、200…ラミネート装置、202…押出機、204…Tダイ、206…タッチロール、208…冷却ロール、210,310…繰り出しロール、212,301,303…巻き取りロール、300…分離装置。
図1
図2
図3