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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136642
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】基板および半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/36 20060101AFI20240927BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H01L23/36 D
H05K7/20 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047813
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】田頭 宣雄
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322FA06
5F136BB11
5F136BC05
5F136BC06
5F136FA02
5F136FA03
5F136GA40
(57)【要約】
【課題】基板における、金属部のパターン設計の自由度を向上する。
【解決手段】絶縁性を有するベース20板と、ベース板20に設けられていて一面に半導体素子が搭載される、少なくとも一つの金属部30と、を有し、少なくとも一つの金属部30は、一面に、第1面31および第2面32を有し、第1面31のベース板20からの距離は、第2面32のベース板20からの距離より小さく、第1面31および第2面32がベース板20に対してなす角度は、20°以下である、基板。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性を有するベース板と、
前記ベース板に設けられていて、一面に半導体素子が搭載される、少なくとも一つの金属部と、
を有し、
前記金属部は、
前記一面に、第1面および第2面を有し、前記第1面の前記ベース板からの距離は、前記第2面の前記ベース板からの距離より小さく、
前記第1面および前記第2面が前記ベース板に対してなす角度は、20°以下である、基板。
【請求項2】
前記第1面には、前記半導体素子が搭載される、
請求項1に記載の基板。
【請求項3】
前記第2面に搭載される前記半導体素子の一部が前記第1面と重なり、
前記第1面には、前記第2面に搭載される前記半導体素子を固定するための、固定材が配置される、
請求項1に記載の基板。
【請求項4】
前記金属部は、銅またはアルミの少なくとも一方を含む、
請求項1または2に記載の基板。
【請求項5】
前記第1面の前記ベース板からの距離は、100μm以上1000μm以下であり、
前記第2面の前記ベース板からの距離は、300μm以上1500μm以下である、
請求項1または2に記載の基板。
【請求項6】
前記第1面の前記ベース板からの距離をaとした場合、
前記第2面の前記ベース板からの距離は、1.2a以上15.0a以下である、
請求項1または2に記載の基板。
【請求項7】
前記金属部は、第3の面をさらに有し、
前記第2面の前記ベース板からの距離は、前記第3面の前記ベース板からの距離よりも小さい、
請求項1または2に記載の基板。
【請求項8】
前記第1面には、第1半導体素子が搭載され、
前記第2面には、第2半導体素子が搭載され、
前記第1半導体素子の高さは、前記第2半導体素子の高さよりも大きい、
請求項7に記載の基板。
【請求項9】
前記第1面の前記ベース板からの距離は、100μm以上800μm以下であり、
前記第2面の前記ベース板からの距離は、300μm以上1000μm以下であり、
前記第3面の前記ベース板からの距離は、500μm以上1500μm以下である、
請求項7に記載の基板。
【請求項10】
前記第1面の前記ベース板からの距離をaとした場合、
前記第2面の前記ベース板からの距離は、1.2a以上10.0a以下
前記第3面の前記ベース板からの距離は、1.5a以上15.0a以下である、
請求項7に記載の基板。
【請求項11】
絶縁性を有するベース板と、
前記ベース板に設けられていて、一面に半導体素子が搭載される、少なくとも一つの金属部と、
半導体素子と、
を有し、
前記金属部は、
前記一面に、第1面および第2面を有し、前記第1面の前記ベース板からの距離は、前記第2面の前記ベース板からの距離より小さく、
前記第1面および前記第2面が前記ベース板に対してなす角度は、20°以下であり、
前記第1面に前記半導体素子が載置されている、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板および半導体装置に関する。
【0002】
ベース板と、ベース板に設けられる金属部とを有し、金属部に半導体素子が搭載される基板が知られている。上記の基板は、金属部により載置された半導体素子を効率的に放熱させることができる。例えば、特許文献1には、セラミックス基板の一方の面に回路層が形成され、他方の面に金属層が形成された絶縁回路基板と、金属層のセラミックス基板とは反対側の面に配置され、一方の面に複数のフィンを有するヒートシンクとを備えたヒートシンク付き絶縁回路基板の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-13915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の基板には、金属部のパターン設計の自由度向上の観点で、改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、以下に示す基板および半導体装置が提供される。
【0006】
[1]
絶縁性を有するベース板と、
前記ベース板に設けられていて、一面に半導体素子が搭載される、少なくとも一つの金属部と、
を有し、
前記金属部は、
前記一面に、第1面および第2面を有し、前記第1面の前記ベース板からの距離は、前記第2面の前記ベース板からの距離より小さく、
前記第1面および前記第2面が前記ベース板に対してなす角度は、20°以下である、基板。
[2]
前記第1面には、前記半導体素子が搭載される、
[1]に記載の基板。
[3]
前記第2面に搭載される前記半導体素子の一部が前記第1面と重なり、
前記第1面には、前記第2面に搭載される前記半導体素子を固定するための、固定材が配置される、
[1]に記載の基板。
[4]
前記金属部は、銅またはアルミの少なくとも一方を含む、
[1]から[3]のいずれかに記載の基板。
[5]
前記第1面の前記ベース板からの距離は、100μm以上1000μm以下であり、
前記第2面の前記ベース板からの距離は、300μm以上1500μm以下である、
[1]から[4]に記載の基板。
[6]
前記第1面の前記ベース板からの距離をaとした場合、
前記第2面の前記ベース板からの距離は、1.2a以上15.0a以下である、
[1]から[5]のいずれかに記載の基板。
[7]
前記金属部は、第3の面をさらに有し、
前記第2面の前記ベース板からの距離は、前記第3面の前記ベース板からの距離よりも小さい、
[1]から[6]のいずれかに記載の基板。
[8]
前記第1面には、第1半導体素子が搭載され、
前記第2面には、第2半導体素子が搭載され、
前記第1半導体素子の高さは、前記第2半導体素子の高さよりも大きい、
[7]に記載の基板。
[9]
前記第1面の前記ベース板からの距離は、100μm以上800μm以下であり、
前記第2面の前記ベース板からの距離は、300μm以上1000μm以下であり、
前記第3面の前記ベース板からの距離は、500μm以上1500μm以下である、
[7]または[8]に記載の基板。
[10]
前記第1面の前記ベース板からの距離をaとした場合、
前記第2面の前記ベース板からの距離は、1.2a以上10.0a以下
前記第3面の前記ベース板からの距離は、1.5a以上15.0a以下である、
[7]から[9]のいずれかに記載の基板。
[11]
絶縁性を有するベース板と、
前記ベース板に設けられていて、一面に半導体素子が搭載される、少なくとも一つの金属部と、
半導体素子と、
を有し、
前記金属部は、
前記一面に、第1面および第2面を有し、前記第1面の前記ベース板からの距離は、前記第2面の前記ベース板からの距離より小さく、
前記第1面および前記第2面が前記ベース板に対してなす角度は、20°以下であり、
前記第1面に前記半導体素子が載置されている、半導体装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、基板における、金属部のパターン設計の自由度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る基板の第1例を基板に対して直角な方向から見た図である。
図2図1におけるA-A´間の断面図である。
図3】ベース板が凸部を含む場合の基板のA-A´間の断面図である。
図4】ベース板がベース部と絶縁層とを含む場合の基板のA-A´間の断面図である。
図5】金属部を形成する工程の概要を示す図である。
図6】本実施形態に係る基板を用いた半導体装置の第一例を示す図である。
図7】本実施形態に係る基板を用いた半導体装置の第二例を示す図である。
図8】本実施形態に係る基板を用いた半導体装置の第三例を示す図である。
図9】本実施形態に係る基板の変形例を基板に対して直角な方向から見た図である。
図10図9におけるB-B´間の断面図である。
図11】変形例における基板に半導体素子を搭載してなる半導体装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。なお、図面はあくまで説明用のものである。図面中の各部材の形状や寸法比などは、必ずしも現実の物品と対応するものではない。
【0010】
本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、a以上b以下のことを表す。例えば、「1~5質量%」とは「1質量%以上5質量%以下」を意味する。
【0011】
[基板100]
図1は、本実施形態に係る基板100の第1例を基板100に対して直角な方向から見た図である。図1に示すように、基板100は、絶縁性を有するベース板20および半導体素子が搭載される、少なくとも一つの金属部30を有する。
【0012】
少なくとも一つの金属部30の一面には、半導体素子が搭載される。そして、金属部30は、半導体素子において発生した熱をベース板20に放出する機能を有する。
【0013】
また、本実施形態に係る基板100は、図1に示すように、金属部30が、第1面31および第2面32を有する。
【0014】
図2は、図1におけるA-A´間の断面図である。図2に示すように、第1面31のベース板20からの距離aは、第2面32のベース板20からの距離bより小さい。
【0015】
以下、各構成の詳細について説明する。
【0016】
[ベース板20]
ベース板20は、金属部30を保持する。また、ベース板20は、金属部30の熱を外部に放出する機能を有する。また、ベース板20は、金属部30に通電される電気が、金属部30が設けられている面の反対側に漏れないよう絶縁する。
【0017】
ベース板20の厚みz(図2参照)は、用途に応じて適宜設定できるが、例えば、0.2~3.0mmであることが好ましい。また、ベース板20の厚みを、金属部30の厚みの0.3~3.0倍とすることで、基板100全体の反りを抑制できる。
【0018】
また、ベース板20は、金属部30が設けられている面と反対側の面に、放熱用の凸部を有してもよい。凸部を含むことにより、ベース板20の表面積を高め、放熱効率を高めることができる。
【0019】
図3に、ベース板20が凸部23を含む場合の基板100のA-A´間の断面図の一例を示す。
【0020】
ベース板20は、絶縁性を有する。例えば、ベース板20は、セラミックス板のような、絶縁性を有する材料からなるものでもよい。また、ベース板20は、ベース部21と絶縁層22とを含んでいてもよい。
【0021】
図4に、ベース板20がベース部21と絶縁層22とを含む場合の基板100のA-A´間の断面図の一例を示す。
【0022】
<ベース部21>
ベース部21は、銅およびアルミニウムの中から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、熱伝導性および加工性等を向上する観点からは銅であることがより好ましい。
【0023】
<絶縁層22>
絶縁層22は、金属部30とベース部21とを絶縁する。絶縁層22により、金属部30からベース部21に漏電することを防止できる。絶縁層22は、熱硬化性樹脂と、充填材とを含む材料から構成されることが好ましい。これにより、良好な熱伝導性、および絶縁性が得られる。
【0024】
上記の熱硬化性樹脂としては、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂、アダマンタン骨格を有するエポキシ樹脂、フェノールアラルキル骨格を有するエポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル骨格を有するエポキシ樹脂、ナフタレンアラルキル骨格を有するエポキシ樹脂、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂、メトキシナフタレンアラルキル骨格を有するエポキシ樹脂、およびシアネート樹脂から選択される一種または二種以上が挙げられる。これにより、充填材の分散性を向上させやすくなる。
【0025】
上記のシアネート樹脂としては、シアネートエステル樹脂を用いることができる。
シアネートエステル樹脂としては、具体的には、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート(オリゴ(3-メチレン-1,5-フェニレンシアネート))、4,4'-メチレンビス(2,6-ジメチルフェニルシアネート)、4,4'-エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2-ビス(4-シアネート)フェニルプロパン、1,1-ビス(4-シアネートフェニルメタン)、ビス(4-シアネート-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,3-ビス(4-シアネートフェニル-1-(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4-シアネートフェニル)チオエーテル、ビス(4-シアネートフェニル)エーテルなどの2官能シアネート樹脂;フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ジシクロペンタジエン構造含有フェノール樹脂などから誘導される多官能シアネート樹脂;上記例示したシアネートエステル樹脂の一部がトリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。
【0026】
絶縁層22の熱硬化性樹脂の含有量は、絶縁層22を構成する材料(固形分)全量に対して、1質量%以上30質量%以下の範囲が好ましく、5質量%以上28質量%以下の範囲がより好ましい。
【0027】
絶縁層22に含まれる充填材は、例えば窒化ホウ素粒子である。窒化ホウ素粒子は、一次粒子が凝集した凝集粒子であることが好ましい。窒化ホウ素粒子の一次粒子は、板状、鱗片状、または球状であり得、好ましくは鱗片状である。本実施形態で用いられる窒化ホウ素粒子は、鱗片状窒化ホウ素の凝集粒子であることが好ましい。これにより、窒化ホウ素粒子が配列し、熱伝導性が向上しやすくなる。
【0028】
窒化ホウ素粒子の市販品として、具体的には、例えば、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製の「PT」シリーズ(例えば、「PT-110」など)、昭和電工社製の「ショービーエヌUHP」シリーズ(例えば、「ショービーエヌUHP-1」など)などが挙げられる。
【0029】
充填材の含有量は、絶縁層22を構成する材料(固形分)全量に対して、60質量%以上80質量%以下の量であり、より好ましくは、65質量%以上75質量%以下の量である。
また、充填材の体積基準の含有割合は、絶縁層22を構成する材料(固形分)の全積に対して、50~70体積%であることが好ましく、55~65体積%であることがより好ましい。
【0030】
絶縁層22を構成する材料としては、熱硬化性樹脂、充填材以外の成分をさらに含んでもよい。
【0031】
例えば、熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合、硬化剤を用いることが好ましい。硬化剤としては、硬化触媒またはフェノール系硬化剤を用いることが好ましい。
【0032】
硬化触媒としては、たとえばナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸スズ、オクチル酸コバルト、ビスアセチルアセトナートコバルト(II)、トリスアセチルアセトナートコバルト(III)等の有機金属塩;トリエチルアミン、トリブチルアミン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等の3級アミン類;2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2,4-ジエチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール類;トリフェニルホスフィン、トリ-p-トリルホスフィン、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィン・トリフェニルボラン、1,2-ビス-(ジフェニルホスフィノ)エタン等の有機リン化合物;フェノール、ビスフェノールA、ノニルフェノール等のフェノール化合物;酢酸、安息香酸、サリチル酸、p-トルエンスルホン酸等の有機酸;等、またはこの混合物が挙げられる。
【0033】
硬化触媒を用いる場合、その含有量は、絶縁層22を構成する材料(固形分)全量に対し、0.001質量部以上1質量部以下が好ましい。
【0034】
また、フェノール系硬化剤としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂、アミノトリアジンノボラック樹脂、ノボラック樹脂、トリスフェニルメタン型のフェノールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂等の変性フェノール樹脂;フェニレン骨格および/またはビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレン骨格および/またはビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール化合物;レゾール型フェノール樹脂等が挙げられ、これらは1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
フェノール系硬化剤の含有量は、絶縁層22を構成する材料(固形分)全量に対し、0.1質量%以上30質量%以下が好ましく、0.3質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0035】
絶縁層22を構成する材料は、さらに、レベリング剤、カップリング剤、酸化防止剤等を含んでもよい。
【0036】
レベリング剤としては、アクリル系共重合物等が挙げられる。レベリング剤は、絶縁層22を構成する材料(固形分)全量に対し、2質量%以下の量で使用することが好ましく、0.01質量%以上1.0質量%以下の量で使用することがより好ましい。
【0037】
カップリング剤としては、エポキシシランカップリング剤、カチオニックシランカップリング剤、アミノシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤およびシリコーンオイル型カップリング剤等が使用できる。
カップリング剤の配合量は、充填材100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下が好ましく、特に0.5質量部以上7質量部以下が好ましい。
【0038】
本実施形態の絶縁層22を構成する材料(固形分)は、上述した熱硬化性樹脂、充填材、その他の成分、および溶媒を上述の割合で配合し、溶媒を加えて公知の方法により撹拌混合することにより調製できる。
【0039】
溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトンなどケトン、酢酸エチルなどのエステル、N,N-ジメチルホルムアミドなどのアミドなどの有機溶媒が挙げられる。また、溶媒として、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどのアルコールなどの水系溶媒も挙げられる。
【0040】
[金属部30]
金属部30は、ベース板20上に配置され、回路を形成する。金属部30は、ベース板20上に複数配置されてもよい。金属部30は、銅またはアルミニウムの少なくとも一方を含むことが好ましく、熱伝導性・加工性等を向上する観点からは銅を含むことがより好ましい。
【0041】
また、金属部30は、第1面31および第2面32を有する。そして、第1面31のベース板20からの距離は、第2面32のベース板20からの距離より小さい。
【0042】
第1面31のベース板20からの距離は、100μm以上であることが好ましく、150μm以上であることがより好ましい。これにより、金属部30の導電性および熱容量が得られる。また、第1面31のベース板20からの距離は、1000μm以下であることが好ましく、800μm以下であることがより好ましい。これにより、金属部30上面の高低差は小さくなる。
【0043】
また、第2面32のベース板20からの距離は、300μm以上であることが好ましく、400μm以上であることがより好ましい。これにより、金属部30の導電性および熱容量が得られる。また、第2面32のベース板20からの距離は、1500μm以下であることが好ましく、1200μm以下であることがより好ましい。これにより、金属部30の厚さを小さくすることができる。
【0044】
また、第1面31のベース板20からの距離をaとした場合、第2面32のベース板20からの距離bは、1.2a以上15.0a以下であることが好ましく、1.5a以上3.0a以下であることがより好ましく、1.6a以上2.8a以下であることがさらにより好ましい。
【0045】
また、第1面31,および第2面32は、ベース板20に対してほぼ平行であることが好ましい。具体的には、第1面31,および第2面32がベース板20に対してなす角度は、それぞれ20°以下であることが好ましく、10°以下であることがより好ましく、5°以下であることがさらにより好ましく、1°以下であることが最もより好ましい。
【0046】
また、第1面31の面積は、第1面31に搭載される半導体素子に従って決まるが、例えば、図1に示した方向から見た場合、第1面31の面積は、当該第1面31を有する金属部30の面積に対して、1%以上60%以下であることが好ましく、10%以上50%以下であることがより好ましい。また、第1面31の大きさは、半導体素子の短絡を防止する観点から、半導体素子が搭載される領域の面積の1.2~1.5倍であることが好ましい。
【0047】
また、第1面31の形状は、搭載される半導体素子に従って決まるが、形成が容易である観点から矩形状であることが好ましい。
【0048】
また、第1面31と第2面32との間の側面34(図2参照)は、第1面31に対してなす角度が、70°~110°であることが好ましく、80°~100°であることがより好ましく、85°~95°であることがさらにより好ましい。
【0049】
金属部300を上記の構成にすることで得られる、様々な効果については後述する。
【0050】
[基板100の製造方法]
本実施形態の基板100の製造方法は、絶縁性を有するベース板20を準備する工程と、ベース板20上に金属部30を形成する工程と、を含む。以下、各工程について説明する。
【0051】
<ベース板20を準備する工程>
ベース板20としては、上述したものを用いることができる。ベース板20がベース部21と絶縁層22を含む場合、ベース部21に絶縁層22を積層する工程をさらに含んでいてもよいし、ベース部21と絶縁層22が予め積層されたベース板20を準備してもよい。
【0052】
<金属部30を形成する工程>
図5に金属部30を形成する工程の概要を示す。図5(a)に示すように、まず、ベース板20上に金属層50が形成される。金属層50は、例えば塗工方法を用いて形成されてもよい。また、金属層50は、ベース板20の平面形状に合わせて予め成形された金属箔をベース板20に貼り付けることにより、形成されてもよい。
【0053】
次に、図5(b)に示すように、金属層50の一部の領域をルータで切削して、金属部30が存在しない領域に空隙51aが形成され、第1面31の領域に空隙51bが形成される。このとき、空隙51aには金属層50の一部が薄く残る。また、空隙51bにも金属層50の一部が薄く残るが、その厚さは、空隙51aに残る部分よりも厚い。
【0054】
そして、図5(c)に示すように、金属層50を、溶液を用いてエッチングすることで、金属層50のうち空隙51aに残されていた部分は除かれ、金属部30のパターンが形成される。また、空隙51bは、エッチングにより深くなり、さらに表面の凹凸が除かれ、第1面31が形成される。
【0055】
[半導体装置200]
図6は、本実施形態に係る基板100を用いた半導体装置200の第一例を示す図である。図6に示す第一例において、半導体素子1は基板100の第1面31に搭載される。
【0056】
図7は、本実施形態に係る基板100を用いた半導体装置200の第二例を示す図である。図7に示すように、半導体素子1は、少なくとも一部が基板100の第1面31に重なるように第2面32上に搭載され、第1面31上に配置される固定材2により固定される。固定材2は、例えば金属ペーストなどの導電性の接着剤である。
【0057】
図8は、本実施形態に係る基板100を用いた半導体装置200の第三例を示す図である。図8に示すように半導体装置200は、基板100の第1面31に搭載された半導体素子1と、半導体素子1を覆う封止体40と、を備える。また、半導体素子1は、他の金属部30とワイヤ3を介して接続されている。
【0058】
[半導体装置200の製造方法]
半導体装置200の製造方法は、基板100を用い、金属部30上に、半導体素子1を搭載する工程を含む。また、半導体素子1を封止樹脂により封止し、封止体40を形成する工程をさらに含んでもよい。半導体素子1を搭載する工程および封止体40を形成する工程はいずれも公知の方法を用いることができる。
【0059】
[発明の効果]
本実施形態に係る基板100を用いた半導体装置200は、以下の効果を有する。
【0060】
<第1の効果>
図6に示した半導体装置200の第一例によれば、従来の半導体装置と比較して、金属部30および半導体素子1の上面の高低差は小さくなる。
【0061】
また、本実施形態に係る基板100は、半導体素子1を搭載する第1面31のみ、ベース板20からの距離が小さいため、金属部30の全体を薄くした場合と比較して、金属部30の体積の減少量は少ない。従って、金属部30の熱容量を維持できる。
【0062】
<第2の効果>
図7に示した半導体装置200の第二例によれば、固定材2が第1面31に配置されることにより、従来の半導体装置と比較して、固定材2が半導体素子1の外側に漏れ出すことを抑制できる。また、これにより半導体素子1の基板100への密着性を高くできる。
【0063】
<その他の効果>
また、第1面31は、アライメントマーク等のマークとしての役割を果たすことも出来る。このアライメントマークは、例えば、半導体素子1を金属部30に固定するとき、半導体素子1の位置を決める際の基準となる。
【0064】
[変形例]
図9は、本実施形態に係る基板100の変形例を基板に対して直角な方向から見た図である。本図に示す基板100は、金属部30が、第1面31および第2面32に加えて、第3面33をさらに有する点を除いて、実施形態に係る基板100と同様の構成を有している。
【0065】
図10は、図9におけるB-B´間の断面図である。図に示すように、第1面31のベース板20からの距離は、第2面32のベース板20からの距離より小さく、第2面32のベース板20からの距離は、第3面33のベース板20からの距離よりも小さい。
【0066】
変形例の基板100においては、第1面31のベース板20からの距離は、100μm以上であることが好ましく、150μm以上であることがより好ましい。これにより、金属部30の導電性および熱容量が得られる。また、第1面31のベース板20からの距離は、800μm以下であることが好ましく、700μm以下であることがより好ましい。これにより、金属部30上面の高低差は小さくなる。
【0067】
また、第2面32のベース板20からの距離は、300μm以上であることが好ましく、400μm以上であることがより好ましい。これにより、金属部30の導電性および熱容量が得られる。また、第2面32のベース板20からの距離は、1000μm以下であることが好ましく、900μm以下であることがより好ましい。これにより、金属部30上面の高低差は小さくなる。
【0068】
また、第3面33のベース板20からの距離は、500μm以上であることが好ましく、600μm以上であることがより好ましい。これにより、金属部30の導電性および熱容量が得られる。また、第3面33のベース板20からの距離は、1500μm以下であることが好ましく、1400μm以下であることがより好ましい。これにより、金属部30の厚さを小さくすることができる。
【0069】
また、第1面31のベース板20からの距離をaとした場合、第2面32のベース板20からの距離bは、1.2a以上10.0a以下であることが好ましい。また、第3面33のベース板20からの距離cは、1.5a以上15.0a以下であることがより好ましい。
【0070】
図9に示した方向から見た場合、基板100の変形例において、第1面31の面積は、当該第1面31を有する金属部30の面積の1%以上20%以下であることが好ましく、第2面32の面積は、当該第2面32を有する金属部30の面積の5%以上45%以下であることが好ましく、第3面33の面積は、当該第3面33を有する金属部30の面積の50%以上95%以下であることが好ましい。
【0071】
金属部30が、上記の構成を有することにより、以下に説明する効果がさらに得られる。
【0072】
図11は、変形例における基板100に半導体素子1を搭載してなる半導体装置200を示す図である。図11に示すように、第2面32のベース板20からの距離は、第3面33のベース板20からの距離よりも小さい。そのため、高さが互いに異なる半導体素子1aおよび半導体素子1bを搭載する場合に、高さの大きい半導体素子1aを第1面31に搭載し、高さの小さい半導体素子1bを第2面32に搭載することで、金属部30の上面の高低差は小さくなる。
【0073】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0074】
100 基板
200 半導体装置
20 ベース板
21 ベース部
22 絶縁層
23 凸部
30 金属部
31 第1面
32 第2面
33 第3面
40 封止体
50 金属層
51 空隙
1 半導体素子
2 固定材
3 ワイヤ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11