(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136645
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】半導体装置及び半導体記憶装置
(51)【国際特許分類】
H10B 12/00 20230101AFI20240927BHJP
H01L 29/786 20060101ALI20240927BHJP
H01L 21/28 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H10B12/00 681B
H10B12/00 621
H10B12/00 621B
H10B12/00 671A
H10B12/00 681A
H01L29/78 626A
H01L29/78 618B
H01L21/28 301B
H01L21/28 301R
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047816
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100121843
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 賢郎
(72)【発明者】
【氏名】岡部 かすみ
(72)【発明者】
【氏名】側瀬 聡文
(72)【発明者】
【氏名】上遠野 一広
(72)【発明者】
【氏名】野田 光太郎
(72)【発明者】
【氏名】秋田 貴誉
(72)【発明者】
【氏名】藤井 隆弘
【テーマコード(参考)】
4M104
5F083
5F110
【Fターム(参考)】
4M104AA03
4M104BB18
4M104BB36
4M104CC01
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4M104HH08
5F083AD02
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5F110NN03
5F110NN23
5F110NN72
5F110NN74
5F110NN77
(57)【要約】
【課題】インジウム及びスズを含む金属酸化物に起因する不具合を抑制することが可能な半導体装置及び半導体記憶装置を提供する。
【解決手段】半導体装置は、第1電極と、前記第1電極に電気的に接続され、前記第1電極の上方に設けられた酸化物半導体層と、前記酸化物半導体層と絶縁膜を介して対向するゲート電極と、前記酸化物半導体層に電気的に接続され、前記酸化物半導体層の上方に設けられ、酸素、インジウム及びスズを含有する第1導電層を含む第2電極と、を備え、前記第2電極には、前記第1導電層に接し、前記第1導電層の上方に設けられ、酸素及び第1金属を含有する第2導電層と、前記第2導電層に接し、前記第2導電層の上方に設けられ、前記第1金属を含有する第3導電層と、がさらに含まれる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、
前記第1電極に電気的に接続され、前記第1電極の上方に設けられた酸化物半導体層と、
前記酸化物半導体層と絶縁膜を介して対向するゲート電極と、
前記酸化物半導体層に電気的に接続され、前記酸化物半導体層の上方に設けられ、酸素、インジウム及びスズを含有する第1導電層を含む第2電極と、を備え、
前記第2電極には、前記第1導電層に接し、前記第1導電層の上方に設けられ、酸素及び第1金属を含有する第2導電層と、
前記第2導電層に接し、前記第2導電層の上方に設けられ、前記第1金属を含有する第3導電層と、がさらに含まれる、
半導体装置。
【請求項2】
前記第1金属はチタンであり、
前記第2導電層は、酸化チタン又は酸窒化チタンから構成される層を有する、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1金属はチタンであり、
前記第2導電層は、
前記酸化物半導体層の上端からの距離が第1距離であり、第1チタン濃度のチタンを含有する第1部分と、
前記距離が前記第1距離より大きい第2距離であり、前記第1チタン濃度より大きい第2チタン濃度のチタンを含有する第2部分と、を含む、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2導電層は、
前記酸化物半導体層の上端からの距離が第3距離であり、第1インジウム濃度のインジウムを含有する第3部分と、
前記距離が前記第3距離より大きい第4距離であり、前記第1インジウム濃度より小さい第2インジウム濃度のインジウムを含有する第4部分と、を含む、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第2導電層は、酸素、インジウム、スズ、チタン及び窒素を合計した原子パーセントが80%以上に構成されている、
請求項3又は4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記半導体装置は、
前記第3導電層に電気的に接続され、前記第3導電層の上方に設けられ、第2金属を含有するパッドと、
前記パッドに電気的に接続され、前記パッドの上方に設けられる信号線と、をさらに備える、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第3導電層は、バリアメタルである、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項8】
請求項1に記載の前記半導体装置と、
前記第1電極に電気的に接続される第3電極と、
前記第3電極と対向する第4電極と、
前記第3電極と前記第4電極との間に設けられる誘電膜と、を備える、
半導体記憶装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、半導体装置及び半導体記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インジウム及び錫(スズ)を含む金属酸化物を電極として用いる半導体素子が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開US2022/0285350号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体素子の製造プロセスにおいて、インジウム(In)及びスズ(Sn)を含む金属酸化物に起因する不具合が発生することがある。
【0005】
本開示は、インジウム及びスズを含む金属酸化物に起因する不具合を抑制することが可能な半導体装置及び半導体記憶装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る半導体装置は、第1電極と、前記第1電極に電気的に接続され、前記第1電極の上方に設けられた酸化物半導体層と、前記酸化物半導体層と絶縁膜を介して対向するゲート電極と、前記酸化物半導体層に電気的に接続され、前記酸化物半導体層の上方に設けられ、酸素、インジウム及びスズを含有する第1導電層を含む第2電極と、を備え、前記第2電極には、前記第1導電層に接し、前記第1導電層の上方に設けられ、酸素及び第1金属を含有する第2導電層と、前記第2導電層に接し、前記第2導電層の上方に設けられ、前記第1金属を含有する第3導電層と、がさらに含まれる。
【0007】
本開示に係る半導体記憶装置は、前記半導体装置と、前記第1電極に電気的に接続される第3電極と、前記第3電極と対向する第4電極と、前記第3電極と前記第4電極との間に設けられる誘電膜と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る半導体記憶装置の回路構成例を示す回路図である。
【
図2】第1実施形態に係る半導体記憶装置の物理的構成例を示す断面模式図である。
【
図3】比較例に係る半導体記憶装置の要部を示す断面模式図である。
【
図4】第1実施形態に係る半導体記憶装置の要部を示す断面模式図である。
【
図5】第1実施形態に係るITO層とTiO層との密着性を説明するための図である。
【
図6】第2実施形態に係る半導体記憶装置の要部を示す断面模式図である。
【
図7】第2実施形態に係る中間導電層におけるインジウムの濃度及びチタンの濃度の酸化物半導体層の上端からの距離に対する変化を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略乃至簡略化する。
【0010】
各図面には、X軸、Y軸及びZ軸を示すことがある。X軸、Y軸及びZ軸は、右手系の3次元の直交座標を形成する。以下、X軸の矢印方向をX軸+方向、矢印とは逆方向をX軸-方向と呼ぶことがあり、その他の軸についても同様である。なお、Z軸+方向及びZ軸-方向を、それぞれ「上方」及び「下方」と呼ぶこともある。また、X軸、Y軸又はZ軸にそれぞれ直交する面を、YZ面、ZX面又はXY面と呼ぶことがある。また、Z軸方向を「上下方向」と呼ぶことがある。「上方」、「下方」及び「上下方向」は、あくまで図面内での相対的位置関係を示す用語であり、鉛直方向を基準とした向きを定める用語ではない。
【0011】
また、特に具体的に説明されている場合を除き、各図面に示される構成要素の寸法等は、説明の理解を容易にするため、実際の寸法とは異ならせて示される場合がある。
【0012】
本明細書において「接続」とは物理的な接続だけでなく電気的な接続も含み、特に指定する場合を除き、直接的な接続だけでなく他の物を介して接続される間接的な接続も含む。
【0013】
本明細書において「上方に形成」とは、上方に接して形成される場合のみならず、特に指定する場合を除き、他の物を介して上方に形成される場合も含む。「下方に形成」などの場合も同様である。
【0014】
[第1実施形態]
第1実施形態は、OS-RAM(Oxide Semiconductor-Random Access Memory)から構成される複数のメモリセルが配列されたメモリセルアレイを備える半導体記憶装置101を開示する。
【0015】
[半導体記憶装置の回路構成]
図1は、本実施形態に係る半導体記憶装置101の回路構成例を示している。同図に示されるようにこの半導体記憶装置101は、複数のメモリセルMCから構成されるメモリセルアレイと、複数のワード線WLと、複数のビット線BLとを備える。同図には、複数のワード線WLの一例として、ワード線WL
n、ワード線WL
n+1及びワード線WL
n+2が示される(ここで、nは正の整数である)。また、複数のビット線BLの一例として、ビット線BL
m、ビット線BL
m+1及びビット線BL
m+2が示される(ここで、mは正の整数である)。
【0016】
複数のメモリセルMCは、例えばマトリクス状に配列されることにより、メモリセルアレイを形成する。メモリセルMCは、電界効果トランジスタ(FET)であるメモリトランジスタMTRと、メモリキャパシタMCPと、を含む。
【0017】
行方向に沿って設けられる複数のメモリセルMCは、自己の属する行(例えば第n行)に対応するワード線WL(例えばワード線WLn)に接続される。詳細には、メモリセルMCに含まれるメモリトランジスタMTRのゲートが、当該メモリセルMCの属する行に対応するワード線WLに接続される。
【0018】
列方向に沿って設けられる複数のメモリセルMCは、自己の属する列(例えば第m+2列)に対応するビット線BL(例えばビット線BLm+2)に接続される。詳細には、メモリトランジスタMTRのソース又はドレインの一方が、当該メモリセルMCの属する列に対応するビット線BLに接続される。一方、メモリトランジスタMTRのソース又はドレインの他方は、メモリセルMCに含まれるメモリキャパシタMCPの一方の電極に接続される。
【0019】
メモリキャパシタMCPは、電荷を保持することによってデータを保持可能に構成される。メモリキャパシタMCPは、メモリトランジスタMTRのソース又はドレインの他方と接続される一方のキャパシタ電極と、キャパシタ誘電膜と、キャパシタ誘電膜を介して一方のキャパシタ電極と対向する他方のキャパシタ電極とを備える。
【0020】
以上のような構成において、所定のワード線WLに電圧を印加することによりこのワード線WLに接続される所定の複数のメモリトランジスタMTRをスイッチングすると共に、電荷蓄積対象のメモリトランジスタMTRに接続されるビット線BLに電流を流すことにより、そのワード線WL及びそのビット線BLと接続する一のメモリトランジスタMTRを介して、そのメモリトランジスタMTRと接続しているメモリキャパシタMCPに電荷を蓄積することが可能となる。このため、メモリセルアレイの各メモリセルMCは、それぞれデータを保持可能に構成されている。
【0021】
[半導体記憶装置の物理的構成]
図2は、本実施形態に係る半導体記憶装置101の物理的構成を示す断面模式図である。
図2に示すように、半導体記憶装置101は、半導体基板10と、論理回路11と、キャパシタ20と、半導体装置30と、導電体33と、絶縁層34、35、45及び63と、を備える。
【0022】
キャパシタ20は、
図1のメモリキャパシタMCPに相当し、導電体21と、導電体21に電気的に接続されるキャパシタ電極24(「第3電極」の一例)と、キャパシタ電極24に対向するキャパシタ電極25(「第4電極」の一例)と、キャパシタ電極24とキャパシタ電極25との間に設けられる絶縁膜22(「誘電膜」の一例)と、キャパシタ電極25に電気的に接続され、キャパシタ電極25に一定の電位(例えばグランド電位)を与えるための導電体23と、を備える。
【0023】
導電体21は、下部電極32の下端に当接する上端部を有し、当該上端部から下方に延伸して形成される。キャパシタ電極24は、下部電極32及び導電体21と電気的に接続して形成されており、本実施形態においては下部電極32の側面及び導電体21の側面を覆うように形成されている。絶縁膜22は、キャパシタ電極24の側面を覆うように形成される。キャパシタ電極25は、絶縁膜22の下方の側面及び底面を包囲し、導電体23の上方の端面と当接する下端を有する。
【0024】
導電体21は、アモルファスシリコンなどの材料から構成されてよい。絶縁膜22は、酸化ハフニウムなどの材料から構成されてよい。導電体23並びにキャパシタ電極24及び25は、タングステン(W)及び窒化チタン(TiN)などの材料から構成されてよい。
【0025】
本実施形態に係るキャパシタ20は、上下方向に延伸するピラー型キャパシタである。また、本実施形態に係る半導体装置30が備える電界効果トランジスタ40は、後述するように、上下方向に延伸するチャネルを備える縦型のトランジスタである。そして、
図2に示されるようにキャパシタ20は、電界効果トランジスタ40の下方に形成される。
【0026】
例えば、
図2に示される実施形態においては、キャパシタ20の上下方向に延びる中心軸を含む仮想的な直線は、電界効果トランジスタ40の上下方向に延伸するチャネルを貫通する。このため、メモリセルアレイの高密度化を図ることが可能となる。
【0027】
後述するように、本実施形態の半導体記憶装置101は、さらにキャパシタ20よりも下方に少なくとも一部の論理回路11を設けているから、さらなる半導体記憶装置の集積化が可能となる。ただし、半導体記憶装置101は、本実施形態に示される3次元キャパシタに替えて、電荷を蓄積可能な構成を備える他のキャパシタを備えてもよい。
【0028】
半導体装置30は、
図1のメモリトランジスタMTRに相当する電界効果トランジスタ40と、下部電極32(「第1電極」の一例)と、上部電極50(「第2電極」の一例)と、導電層51と、を備える。
【0029】
電界効果トランジスタ40は、下部電極32に電気的に接続され、下部電極32の上方に形成され、電界効果トランジスタ40のチャネルに相当する酸化物半導体層70と、酸化物半導体層70の側面を包囲するゲート絶縁膜43と、ゲート絶縁膜43を介して酸化物半導体層70に対向して設けられる導電層42(「ゲート電極」の一例)と、を含む。
【0030】
上部電極50は、酸化物半導体層70に電気的に接続され、酸化物半導体層70の上方に形成される。本実施形態において半導体装置30は、キャパシタ20の上方に形成されている。
【0031】
下部電極32は、上端において酸化物半導体層70の下端に接し、下端においてキャパシタ20の導電体21に接して設けられることにより、キャパシタ20に電荷を供給する。下部電極32は、例えば、インジウム-スズ-酸化物(ITO)などの金属酸化物を含むITO層から構成される。
【0032】
酸化物半導体層70は、電界効果トランジスタ40のドレインまたはソースの一方に相当する上端部と、ドレインまたはソースの他方に相当する下端部と、上端部と下端部の間に設けられ、チャネルに相当する中央部とを含む。酸化物半導体層70は、上下方向に延伸する柱状体に形成される。このため、電界効果トランジスタ40は、いわゆる縦型のトランジスタである。
【0033】
酸化物半導体層70は、酸素欠損がドナーとなる半導体であり、金属元素として、インジウム(In)と、亜鉛(Zn)と、ガリウム(Ga)と、を含む。詳細には、酸化物半導体層70は、インジウム、ガリウム及び亜鉛の酸化物すなわちIGZO(InGaZnO)であり、例えば、アモルファス構造を有する。ただし、酸化物半導体層70は他の種類の酸化物半導体であってもよい。
【0034】
ゲート絶縁膜43は、例えばシリコンと窒素とを含有するシリコン窒化膜(Si3N4)で構成される。
【0035】
導電層42は、電界効果トランジスタ40のゲート電極に相当し、酸化物半導体層70の上端と下端との間の中央部と、ゲート絶縁膜43を介して対向して設けられる。導電層42は、例えばタングステン(W)から構成される。
【0036】
上部電極50は、金属酸化物層50a(「第1導電層」の一例)と、中間導電層50b(「第2導電層」の一例)と、バリアメタル層50c(「第3導電層」の一例)と、金属膜50d(「パッド」の一例)と、を含む。
【0037】
上部電極50は、酸化物半導体層70の上端に接して、酸化物半導体層70の上方に設けられる。
図2に示されるように、上部電極50における金属酸化物層50aは、酸素、インジウム及びスズを含有する金属酸化物から構成される。具体的には、金属酸化物層50aは、インジウム-スズ-酸化物(ITO)の電極(ITO電極)を構成する。金属酸化物層50aは、例えば、1~10nmの厚みを有する。
【0038】
中間導電層50bは、金属酸化物層50aに電気的に接続され、金属酸化物層50aの上方に金属酸化物層50aと接して形成される。中間導電層50bは、酸素と、バリアメタル層50cが含有する第1金属と、を含有する。
【0039】
本実施形態では、中間導電層50bは、チタン(Ti)(「第1金属」の一例)の酸化物言い換えると酸化チタン(TiO)から構成される。中間導電層50bは、例えば、1~10nmの厚みを有する。
【0040】
バリアメタル層50cは、中間導電層50bに電気的に接続され、中間導電層50bの上方に中間導電層50bと接して形成される。バリアメタル層50cは、中間導電層50bが含有する第1金属を含有する。
【0041】
本実施形態では、バリアメタル層50cは、バリアメタルであり、例えば窒化チタン(TiN)から構成される。バリアメタル層50cは、例えば、1~10nmの厚みを有する。
【0042】
金属膜50dは、バリアメタル層50cに電気的に接続され、バリアメタル層50cの上方に形成される。金属膜50dは、タングステン(W)(「第2金属」の一例)から構成される。金属膜50dは、例えば、10~50nmの厚みを有する。
【0043】
上部電極50は、ビット線BL(
図1)に相当する導電層51(「信号線」の一例)と電界効果トランジスタ40とを電気的に接続する。導電層51は、例えば、上部電極50の上方において上部電極50の上端である金属膜50dと接して設けられる。
【0044】
論理回路11は、半導体記憶装置101が備える複数のメモリセルMCから1または複数のメモリセルMCを選択するためのデコーダ、ビット線BLに接続されるセンスアンプ、及びSRAMから構成されるレジスタなどの周辺回路を含む。
【0045】
論理回路11は、CMOSプロセスで形成されたPチャネル型電界効果トランジスタ(Pch-FET)及びNチャネル型電界効果トランジスタ(Nch-FET)の電界効果トランジスタを有するCMOS回路から実現されてよい。
【0046】
論理回路11の電界効果トランジスタは、例えば単結晶シリコン基板などの半導体基板10を用いて形成可能である。Pch-FET及びNch-FETは、半導体基板10にチャネル領域とソース領域とドレイン領域とを有し、半導体基板10の表面に近接した領域において半導体基板10の表面と略平行なX軸方向又はY軸方向にキャリアを流すためのチャネルを有する、いわゆる、横型(平面型)の電界効果トランジスタである。
図2は、このような論理回路11に含まれる横型の電界効果トランジスタの一例を図示する。
【0047】
導電体33は、論理回路11と半導体装置30とを電気的に接続する配線を含んでいる。導電体33は、上下方向に延伸するビア配線と、水平方向に延伸する配線を含んでよく、例えば
図2に示されるようにZ軸方向に延伸し、ワード線WLと半導体基板10上に設けられる論理回路11とを接続するビア配線を有してよい。導電体33は、例えば銅から構成されてよい。
【0048】
絶縁層34は、複数のキャパシタ20同士を絶縁するように、キャパシタ20間に形成される。絶縁層35は、絶縁層34の上方に設けられる。絶縁層45は、複数の酸化物半導体層70同士を絶縁するように、酸化物半導体層70間に形成される。絶縁層63は、複数の上部電極50同士及び複数の導電層51同士を絶縁するように、上部電極50間、導電層51間及び導電層51の上方に形成される。
【0049】
絶縁層34及び45は、例えばシリコンと酸素とを含有するシリコン酸化膜から構成される。絶縁層35は、保護層としても機能させるために、例えばシリコンと窒素とを含有するシリコン窒化膜から構成される。絶縁層63は、例えばシリコンと水素とを含有するシラン膜から構成される。
【0050】
以上の構成を備える半導体記憶装置101によれば、情報の書き込み時においては、論理回路11により選択されるワード線WLに電圧を印加してこのワード線WLに接続される電界効果トランジスタ40を導通させると共に、論理回路11により選択されるビット線BLに電圧をかけることにより、そのビット線BLから、電界効果トランジスタ40のチャネルを介してメモリキャパシタMCPに電荷を蓄積して情報を記録することが可能となる。また情報の読み出し時においては、論理回路11により選択されるワード線WLに電圧を印加してこのワード線WLに接続される電界効果トランジスタ40を導通させたときに、論理回路11により選択されるビット線BLにおける、メモリキャパシタMCPが蓄積する電荷の有無に応じて変動する電圧をセンスすることに基づいて、情報を読み出すことが可能となる。
【0051】
図3は、比較例に係る半導体記憶装置901の要部拡大図を示す。
図4は、第1実施形態に係る半導体記憶装置101の要部拡大図を示す。
図3に示される半導体記憶装置901は、
図2に示す半導体記憶装置101と同等の構成を備えているため、同等の符号を付して詳細な説明を省略する。ただし、
図4は、導電層42の延伸方向に垂直なZX面と平行な平面で半導体記憶装置を切断した断面図に相当する。
【0052】
比較例に係る半導体記憶装置901の上部電極90は、ITO電極を構成する金属酸化物層90a、バリアメタル層90c及び金属膜90dが積層されている点で半導体記憶装置101の上部電極50と共通し、中間導電層50bに相当する層を有さない点で半導体記憶装置101の上部電極50と相違する。
【0053】
本出願の発明者らは、半導体記憶装置901において、インジウム-スズ-酸化物(ITO)から構成される金属酸化物層90aと、窒化チタン(TiN)から構成されるバリアメタル層90cとの界面において、剥がれが生じるという課題に直面した。
【0054】
そして、金属酸化物層90a上にバリアメタル層90cを成膜した時点ではこの界面の密着性が良好であり、剥がれが生じない一方で、その後の例えばタングステン等から構成される金属膜90d及び例えばシラン(SiH4)等から構成される絶縁層63を成膜した後に、この界面の剥がれが生じる点に着目した。発明者らは、剥がれが生じる原因の一つが高温のプロセスに起因すると推測して、本実施形態に係る半導体記憶装置101に想到した。
【0055】
すなわち、金属酸化物層90a上のバリアメタル層90cは、例えば摂氏100度以下の室温で成膜可能であることが知られている。金属膜90d及び絶縁層63は、摂氏300度以上の高温で成膜可能であることが知られている。例えば、タングステンの成膜については摂氏350度であり、シランの成膜については摂氏400度である。。また、ITOにおけるインジウムと酸素との結合解離エネルギーは、一般に小さいことが知られている。
【0056】
発明者らは、ITO層における酸素の割合を低下させた場合、当該ITO層と接する膜の密着性が悪化することを新たに発見した。そして、発明者らは、相対的に低温のバリアメタル層90cの成膜時にはインジウムと酸素とが解離しないものの、相対的に高温の金属膜90dの成膜時及び絶縁層63の成膜時に金属酸化物層90aにおけるインジウムと酸素とが解離し、解離した酸素がバリアメタル層90cに拡散する可能性に着眼した。
【0057】
発明者らは、金属酸化物層90aとバリアメタル層90cとの界面の近傍において、金属酸化物層90aにおける酸素割合が低下し、当該界面の密着性が悪化することが剥がれの原因であることを突き止め、本実施形態に係る半導体記憶装置101の上部電極50の構成に想到した。
【0058】
すなわち、本実施形態に係る半導体記憶装置101の上部電極50は、金属酸化物層50aとバリアメタル層50cとの間に、バリアメタル層50cを構成する金属と同一の金属と、酸素とを含有する中間導電層50bを含む。
【0059】
このような中間導電層50bは、バリアメタル層50cを構成する金属の酸化物層として構成されてもよい。このような構成によれば、
図5に示すように、中間導電層50bでは金属(例えばチタン)が酸化し、また、酸素が豊富にあるので、金属酸化物層50aにおける酸素が中間導電層50bにおける金属(例えばチタン)によって引き抜かれることが抑制される。
【0060】
このため、金属酸化物層50aと中間導電層50bとの界面の近傍において、金属酸化物層50aにおける酸素割合の低下が抑制される。これにより、金属酸化物層50aにおいて、中間導電層50bとの界面付近の酸素は、金属酸化物層50aに含有されるインジウムと結合すると共に、中間導電層50bに含有される金属(例えばチタン)と結合することが可能となる。
【0061】
このため、バリアメタル層50cの成膜後に、摂氏300度以上の高温で金属膜50d及び絶縁層63を成膜しても、金属酸化物層50aにおけるインジウムと酸素との結合が解離して酸素がバリアメタル層50c内に拡散し、剥がれが促進されることを抑制することが可能となる。
【0062】
また、中間導電層50bとバリアメタル層50cとは、同一の金属を含有するので、中間導電層50bとバリアメタル層50cとの剥がれを抑制することも可能となる。
【0063】
なお、中間導電層50bは、例えば、酸素と、中間導電層50bの上方に接する層が含有する金属と同一の金属と、窒素とを含有してもよい。したがって、中間導電層50bは、酸窒化チタン(TiON)言い換えるとチタンの酸窒化物から構成されてもよい。
【0064】
半導体記憶装置901と、半導体記憶装置101とを対象にJIS規格等に規定されるテープテストを実施した結果、半導体記憶装置901では、金属酸化物層90aとバリアメタル層90cとの界面での剥がれが観察された。
【0065】
一方、半導体記憶装置101では、金属酸化物層50aと中間導電層50bとの界面及び中間導電層50bとバリアメタル層50cとの界面で剥がれは観察されなかった。つまり、金属酸化物層50aとバリアメタル層50cとの間に中間導電層50bを設ける構成により、ITOに起因する剥がれを抑制することができる。
【0066】
[第2実施形態]
第2実施形態に係る半導体装置130について説明する。第2実施形態以降では第1実施形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については実施形態毎には逐次言及しない。
【0067】
図6に示すように、第2実施形態に係る半導体装置130は、
図4に示す第1実施形態に係る半導体装置30と比べて、上部電極50の代わりに上部電極150を含む点で第1実施形態に係る半導体装置30と異なる。
【0068】
上部電極150は、
図4に示す上部電極50と比べて、中間導電層50bの代わりに中間導電層150bを含む。
【0069】
図7は、中間導電層150bにおけるインジウムの濃度及びチタンの濃度の酸化物半導体層70の上端70aからの距離に対する変化を説明するための図である。
【0070】
図7には、中間導電層150bにおけるインジウムの濃度及びチタンの濃度の酸化物半導体層70の上端70aからの距離dに対する変化を表すグラフが示される。
【0071】
なお、グラフの横軸は、インジウム又はチタンの濃度を示し、縦軸は、酸化物半導体層70の上端70aからの距離dを示す。C[In}及びC[Ti]は、インジウム及びチタンの濃度の距離dに対する変化をそれぞれ示す。
【0072】
図7に示すように、中間導電層150bは、部分161(「第1部分」及び「第3部分」の一例)と、部分162(「第2部分」及び「第4部分」の一例)と、を含む。
【0073】
部分161及び162は、例えば、中間導電層150bに含まれる仮想的な直方体である。なお、部分161及び162は、球体あるいは立方体などの任意の形状を有してもよい。
【0074】
部分161の中心は、例えば、酸化物半導体層70の上端70aからの距離dがd1(「第1距離」及び「第3距離」の一例)の位置にある。部分162の中心は、例えば、酸化物半導体層70の上端70aからの距離dがd1より大きいd2(「第2距離」及び「第4距離」の一例)の位置にある。
【0075】
部分161は、その内部に例えば平均として濃度Ct1(「第1チタン濃度」の一例)のチタンを含有する。部分162は、内部に例えば平均として濃度Ct2(「第2チタン濃度」の一例)のチタンを含有する。濃度Ct2は、濃度Ct1より大きい。
【0076】
また、部分161は、内部に例えば平均として濃度Ci1(「第1インジウム濃度」の一例)のインジウムを含有する。部分162は、内部に例えば平均として濃度Ci2(「第2インジウム濃度」の一例)のインジウムを含有する。濃度Ci2は、濃度Ci1より小さい。
【0077】
また、中間導電層150bは、酸素、インジウム、スズ、チタン及び窒素を合計した原子パーセントが80%以上に構成されている。
【0078】
中間導電層150bは、例えば、同一のチャンバ内でガス濃度を連続して変更しながら供給することによって成膜される。
【0079】
つまり、中間導電層150bは、金属酸化物層50aとバリアメタル層50cとがミキシングした層といえる。中間導電層150bの内部では、金属酸化物層50aに近いほど金属酸化物層50aに近い性質を示す。
【0080】
つまり、中間導電層150bにおいて、金属酸化物層50aとの界面付近では、チタンも存在するが、インジウムが豊富にある。このため、金属酸化物層50aと中間導電層150bとの界面の近傍において、金属酸化物層50aにおける酸素割合の低下が抑制される。
【0081】
そして、金属酸化物層50aにおいて、中間導電層150bとの界面付近の酸素は、金属酸化物層50aに含有されるインジウムと結合すると共に、中間導電層150bにおける豊富なインジウム又はチタンと結合することができるので、金属酸化物層50a及び中間導電層150bの剥がれを効果的に抑制することができる。
【0082】
また、中間導電層150bの内部では、バリアメタル層50cに近いほどバリアメタル層50cに近い性質を示す。つまり、中間導電層150bにおいて、バリアメタル層50cとの界面付近では、インジウムも存在するが、チタンが豊富にある。中間導電層150b及びバリアメタル層50cの界面の近傍では、同一の金属すなわちチタンが中間導電層150b及びバリアメタル層50cの両方に豊富に含まれるので、中間導電層150bとバリアメタル層50cとの剥がれを抑制することも可能となる。
【0083】
なお、第1部分及び第3部分がともに部分161である構成について説明したが、これに限定するものではない。第1部分及び第3部分は、別個の部分であってもよい。
【0084】
また、第2部分及び第4部分がともに部分162である構成について説明したが、これに限定するものではない。第2部分及び第4部分は、別個の部分であってもよい。
【0085】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0086】
10…半導体基板
11…論理回路
20…キャパシタ
21、23、33…導電体
22…絶縁膜
24、25…キャパシタ電極
30…半導体装置
32…下部電極
34、35、45…絶縁層
40…電界効果トランジスタ
42…導電層
43…ゲート絶縁膜
50…上部電極
50a…金属酸化物層(「第1導電層」の一例)
50b…中間導電層(「第2導電層」の一例)
50c…バリアメタル層(「第3導電層」の一例)
50d…金属膜
51…導電層
63、66…絶縁層
70…酸化物半導体層
70a…上端
101…半導体記憶装置
130…半導体装置
150…上部電極
150b…中間導電層
161、162…部分