(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136661
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】表示装置、光学モジュール及び電子機器
(51)【国際特許分類】
G09G 3/3233 20160101AFI20240927BHJP
G09G 3/20 20060101ALI20240927BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20240927BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20240927BHJP
H10K 59/35 20230101ALI20240927BHJP
H10K 50/858 20230101ALI20240927BHJP
G02B 27/02 20060101ALI20240927BHJP
H04N 5/64 20060101ALI20240927BHJP
H10K 71/70 20230101ALI20240927BHJP
H10K 59/95 20230101ALI20240927BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20240927BHJP
【FI】
G09G3/3233
G09G3/20 670L
G09G3/20 631V
G09G3/20 680A
G09G3/20 680C
G09F9/30 338
G09F9/00 360Z
G09F9/00 366Z
H10K59/35
H10K50/858
G02B27/02 Z
H04N5/64 511A
H10K71/70
H10K59/95
H10K59/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047847
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】西沢 和夫
【テーマコード(参考)】
2H199
3K107
5C080
5C094
5C380
5G435
【Fターム(参考)】
2H199CA04
2H199CA12
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(57)【要約】
【課題】温度センサー無しでパネルの温度を推定する。
【解決手段】表示装置は、複数の画素を有する表示パネルと、画像データに基づいて表示パネルを所定の駆動条件で制御する制御部と、を備え、制御部は、画像データに含まれる画素値に基づいて表示パネルの温度を示すパネル温度を算出し、パネル温度に基づいて駆動条件を補正する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素を有する表示パネルと、
画像データに基づいて前記表示パネルを所定の駆動条件で制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記画像データに含まれる画素値に基づいて前記表示パネルの温度を示すパネル温度を算出し、前記パネル温度に基づいて前記駆動条件を補正する、
表示装置。
【請求項2】
前記画素値と前記画素の1個当たりのパネル温度との関係を示す温度特性データを記憶する記憶部をさらに備え、
前記制御部は、前記画像データに含まれる前記画素値と、前記温度特性データとに基づいて前記パネル温度を算出する、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記複数の画素は、赤色画素と、緑色画素と、青色画素と、を含み、
前記温度特性データは、前記画素値と前記赤色画素の1個当たりのパネル温度との関係を示す第1データと、前記画素値と前記緑色画素の1個当たりのパネル温度との関係を示す第2データと、前記画素値と前記青色画素の1個当たりのパネル温度との関係を示す第3データと、を含み、
前記制御部は、演算式(1)に基づいて前記パネル温度を算出し、
Tpは、前記パネル温度を示し、
iは、前記画素値を示し、且つ0からnまでの整数であり、
SR(i)は前記画素値がiである前記赤色画素の総数を示し、
TR(i)は前記画素値がiである前記赤色画素の前記1個当たりのパネル温度を示し、
SG(i)は前記画素値がiである前記緑色画素の総数を示し、
TG(i)は前記画素値がiである前記緑色画素の前記1個当たりのパネル温度を示し、
SB(i)は前記画素値がiである前記青色画素の総数を示し、
TB(i)は前記画素値がiである前記青色画素の前記1個当たりのパネル温度を示す、
請求項2に記載の表示装置。
【数1】
【請求項4】
外気温を検出する第1温度センサーと、
前記外気温が第1温度の場合における前記画素値と前記画素の1個当たりのパネル温度との関係を示す第1温度特性データと、前記外気温が第2温度の場合における前記画素値と前記画素の1個当たりのパネル温度との関係を示す第2温度特性データと、を記憶する記憶部と、
をさらに備え、
前記制御部は、前記画像データに含まれる前記画素値と、前記第1温度センサーによって検出された前記外気温と、前記第1温度特性データと、前記第2温度特性データとに基づいて前記パネル温度を算出する、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
前記画素値と前記画素の1個当たりのパネル温度との関係を示す複数の温度特性データを記憶する記憶部をさらに備え、
前記制御部は、前記画像データに含まれる前記画素値と、前記複数の温度特性データのいずれか1つとに基づいて前記パネル温度を算出する、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項6】
前記表示パネルの駆動回路に配置された第2温度センサーをさらに備え、
前記制御部は、前記第2温度センサーによって検出された温度に基づいて前記パネル温度を補正する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項7】
前記制御部は、1フレームごとに前記画像データに含まれる前記画素値に基づいて前記パネル温度を算出する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項8】
請求項1から5のいずれか一項に記載の表示装置と、
前記表示装置の前記表示パネルから出射される画像光を投射する投射光学系と、
前記投射光学系から投射される前記画像光を所定の位置まで導き、前記所定の位置から虚像光として出射する導光装置と、
を備える光学モジュール。
【請求項9】
請求項1から5のいずれか一項に記載の表示装置を備える電子機器。
【請求項10】
請求項8に記載の光学モジュールを備える電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置、光学モジュール及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
OLED(Organic Light-Emitting Diode)パネルは、高い温度で点灯し続けると、各画素の劣化が早まり、発光輝度が低下する。この問題を解決するために、例えば、OLEDパネルの駆動回路に温度センサー又は電流センサーを設け、温度又は電流の検出値に基づいて、OLEDパネルの温度が下がるように駆動条件を補正する方法が知られている。
【0003】
特許文献1には、OLEDパネルのうち映像が表示される一面とは反対側の他面に、複数の外付けの温度センサーを配置し、各温度センサーの出力信号から算出された各画素の劣化量に基づいて、各画素の駆動条件を補正する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術では、OLEDパネルの温度を検出するために、OLEDパネルの駆動回路、またはOLEDパネルの裏面に温度センサーを配置する。その結果、駆動回路のサイズ拡大、又はOLEDパネルを搭載するディスプレイ装置等の電子機器のサイズ拡大を招く。そのため、温度センサー無しでパネル温度を推定する技術の開発が要望されていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの態様の表示装置は、複数の画素を有する表示パネルと、画像データに基づいて前記表示パネルを所定の駆動条件で制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記画像データに含まれる画素値に基づいて前記表示パネルの温度を示すパネル温度を算出し、前記パネル温度に基づいて前記駆動条件を補正する。
【0007】
本発明の一つの態様の光学モジュールは、上記態様の表示装置と、前記表示装置の前記表示パネルから出射される画像光を投射する投射光学系と、前記投射光学系から投射される前記画像光を所定の位置まで導き、前記所定の位置から虚像光として出射する導光装置と、を備える。
【0008】
本発明の一つの態様の電子機器は、上記態様の表示装置を備える。
【0009】
本発明の一つの態様の電子機器は、上記態様の光学モジュールを備える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】ヘッドマウントディスプレイがユーザーに装着された状態を示す図である。
【
図2】ヘッドマウントディスプレイの斜視図である。
【
図3】第1光学モジュールの概略構成の一例を示す平面図である。
【
図4】第1実施形態における表示装置の概略構成の一例を示すブロック図である。
【
図5】表示パネルの概略構成の一例を示す平面図である。
【
図6】画素回路の概略構成の一例を示す等価回路図である。
【
図8】第2実施形態における表示装置の概略構成の一例を示すブロック図である。
【
図9】第1温度特性データ及び第2温度特性データの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照して説明する。ここで、以下の各図においては、各部材を認識可能な程度の大きさにするため、各部材の尺度を実際とは異ならせている場合がある。
【0012】
1.第1実施形態
まず、本開示の第1実施形態について説明する。
【0013】
1-1.電子機器
本実施形態では、本開示の電子機器として、映像と目前の景色との両方を見ることができるシースルー型のヘッドマウントディスプレイ100を例示する。以下の説明では、ヘッドマウントディスプレイ100を「HMD100」と略称する場合がある。
【0014】
図1は、HMD100がユーザーMに装着された状態を示す図である。
図1に示すように、HMD100は、眼鏡のようにユーザーMの頭部に装着される。HMD100は、通信ケーブル150を介して、不図示の映像供給装置と通信する。例えば、映像供給装置として、パーソナルコンピューター、DVD(Digital Versatile Disc)プレイヤー、スマートフォン、及びタブレット端末等が挙げられる。
【0015】
HMD100は、通信ケーブル150を介して、映像供給装置から映像信号を受信する。例えば、通信ケーブル150は、HDMI(High-Definition Multimedia Interface:登録商標)規格に従って映像信号を伝送するHDMIケーブルである。または、通信ケーブル150は、USB(Universal Serial Bus)Type-C規格に従って映像信号を伝送するUSBケーブルでもよい。上記のように、映像信号の伝送と共に直流電圧の給電が可能な通信ケーブル150を用いることにより、HMD100にバッテリーを内蔵する必要がないため、HMD100の軽量化を実現できる。
【0016】
HMD100は、映像供給装置から通信ケーブル150を介して供給される映像信号に基づいて、ユーザーMに映像として認識される虚像を形成する。また、HMD100は、外界光をユーザーMの眼球に導くことにより、ユーザーMに目前の景色も視認させる。
【0017】
図2は、HMD100の斜視図である。
図2に示すように、HMD100は、眼鏡のような形状を有するフレーム120と、フレーム120の内部に組み込まれる光学モジュール111と、を備える。光学モジュール111は、光学エンジンモジュールと呼ばれる場合がある。
【0018】
フレーム120は、ユーザーMの耳にHMD100を掛けるための一対のテンプル部122A及び122Bを備える。光学モジュール111は、左眼用の第1光学モジュール111Aと、右眼用の第2光学モジュール111Bと、を備える。通信ケーブル150は、第1光学モジュール111Aに接続される。第1光学モジュール111Aは、映像供給装置から通信ケーブル150を介して供給される映像信号に基づいて、ユーザーMに映像として認識される左眼用の虚像を形成する。
【0019】
例えば、第1光学モジュール111Aは、不図示のFPC(Flexible Printed Circuit)ケーブルを介して、第2光学モジュール111Bと通信可能に接続される。第1光学モジュール111Aは、左眼用の虚像と同期して右眼用の虚像が形成されるように、第2光学モジュール111Bに制御信号を送信する。第2光学モジュール111Bは、第1光学モジュール111Aから送信される制御信号に基づいて、ユーザーMに映像として認識される右眼用の虚像を形成する。
【0020】
第1光学モジュール111Aと第2光学モジュール111Bとは、ほぼ同じ構成を有しており、双方の各構成要素は左右対称に配置されている。そのため、以下では、第1光学モジュール111Aを代表的に用いて、光学モジュール111の構成について説明する。
【0021】
1-2.光学モジュール
図3は、第1光学モジュール111Aの概略構成の一例を示す平面図である。
図3において、相互に直交する座標軸としてXYZ軸を付し、軸に沿った各矢印が指す方向を+方向とし、+方向と反対の方向を-方向とする。
【0022】
X方向は、HMD100を装着するユーザーMの前後方向に相当する。Y方向は、ユーザーMの左右方向に相当する。Z方向は、ユーザーMの上下方向に相当する。本実施形態において、-Y方向を左側、+Y方向を右側、+X方向を前側、-X方向を後側ということがある。さらに、+Z方向から見ることを平面視あるいは平面的という。
【0023】
図3に示すように、第1光学モジュール111Aは、表示装置10と、投射光学系15と、導光装置20と、を備える。表示装置10は、映像供給装置から通信ケーブル150を介して供給される映像信号に基づいて画像を表示する。表示装置10は、画像に対応する画像光Gを投射光学系15に出射する。すなわち、画像を表示するとは、画像光Gを出射することである。表示装置10は、表示パネル11と、制御基板12と、を備える。
【0024】
例えば、表示パネル11は、不図示のFPCケーブルを介して制御基板12と電気的に接続される。また、制御基板12に配置された不図示のコネクターに通信ケーブル150が接続される。
図3において、制御基板12から表示パネル11に向かう矢印は、制御基板12から表示パネル11に出力される電気信号を表している。
【0025】
例えば、表示パネル11は、自発光型の電気光学装置である。自発光型の電気光学装置とは、バックライトなどの光源を必要とせずに、外部から与えられた電気的エネルギーによって自ら光を発生する装置である。一例として、表示パネル11は、OLEDを発光素子として備えるOLEDパネルである。
【0026】
詳細は後述するが、制御基板12は、映像供給装置から供給される映像信号に基づいて、表示パネル11に画像を表示させるのに必要な電気信号を生成して表示パネル11に出力する。表示パネル11は、制御基板12から供給される電気信号に基づいて画像を表示し、画像に対応する画像光Gを投射光学系15に出射する。
【0027】
なお、
図3において、表示パネル11及び制御基板12は、XY平面に対して直立する状態で配置されているが、この配置はあくまで一例であり、第1光学モジュール111Aにおいて表示パネル11及び制御基板12をどのように配置するかは、第1光学モジュール111Aの構造上の制約に応じて適宜決定され得る。表示装置10の詳細については後述する。
【0028】
投射光学系15は、表示パネル11から出射される画像光Gを導光装置20の入射部22に投射する。
図3では、1枚のレンズから構成される投射光学系15を例示しているが、投射光学系15は、レンズ及びミラー等の複数の光学素子から構成されてもよい。
【0029】
導光装置20は、投射光学系15から投射される画像光Gを所定の位置まで導き、所定の位置から虚像光として出射する。後述するように、例えば、所定の位置とは、光取出しユニット31が配置された位置である。導光装置20は、投射光学系15から投射される画像光Gを虚像光としてユーザーMの左眼MEに向けて出射するとともに、外界から入射される外界光SLを透過させる。導光装置20は、導光体21と、入射部22と、光取出しユニット31と、を備える。
【0030】
導光体21は、光透過性を有する板状の導光部材から構成される。入射部22は、光透過性を有する三角プリズム状の部材から構成される。例えば、導光体21及び入射部22は、ガラス又はプラスチック等から構成される。本実施形態において、導光体21及び入射部22の屈折率は、ほぼ等しい。
【0031】
入射部22は、投射光学系15から投射される画像光Gを取り込む光入射面22aと、取り込んだ画像光Gを反射して導光体21の内部に導く反射面22bと、を有する。例えば、反射面22bは、プリズム形状の表面にアルミ蒸着膜を形成したものであり、入射した画像光Gを反射し、その光路を導光体21の内部に向けて折り曲げる。これにより、画像光Gは、入射部22から導光体21へと入射する。
【0032】
導光体21は、ユーザーMの左右方向、すなわちY方向に延びる。導光体21は、射出瞳SMの中心を通る光軸AXに対して傾斜するように配置されている。具体的には、導光体21の左側端部が、導光体21の右側端部よりも後側に位置するように、導光体21は傾斜している。言い換えれば、導光体21は、ユーザーMの左側に向かうに従ってユーザーMの顔に近づくように傾斜している。射出瞳SMの位置は、ユーザーMの左眼MEの位置に対応する。
【0033】
導光体21は、互いに平行な一対の第1面21a及び第2面21bを有する。第1面21a及び第2面21bは、互いに平行な平面であるため、外界光SLに関して拡大またはフォーカスズレを生じさせない。第1面21a及び第2面21bは、導光体21の内部を伝播する画像光Gを全反射させる全反射面として機能し、画像光Gを少ない損失で光取出しユニット31に導く。
【0034】
導光体21に入射した画像光Gは、第1面21aに入射することで全反射される。そして、画像光Gは、第2面21bに入射して全反射される。画像光Gは、第1面21aと第2面21bとの間で1回以上全反射されることにより、導光体21の内部において左側から右側に向かって伝播し、光取出しユニット31に到達する。
【0035】
光取出しユニット31は、導光体21の第1面21aに配置され、導光体21から画像光Gを射出瞳SMに向けて取り出す。光取出しユニット31は、導光体21の第1面21aに沿って延びる板状の部材から構成される。光取出しユニット31は、透明部材31aと、透明部材31aの内部に埋め込まれた複数のハーフミラー31bと、を有する。透明部材31aの屈折率は、導光体21の屈折率とほぼ等しい。これにより、光取出しユニット31と導光体21との境界面で画像光Gが反射されることが抑制される。
【0036】
各ハーフミラー31bは、Z方向に延び、透明部材31aの内部において所定のピッチで配置されている。各ハーフミラー31bは、光軸AXに対して傾斜するように配置されている。具体的には、ハーフミラー31bの後側端部31b1が、ハーフミラー31bの前側端部31b2よりも右側に位置するように、ハーフミラー31bは傾斜している。光取出しユニット31の両端に位置する第1エッジ33及び第2エッジ34は、ハーフミラー31bに対して平行となるように形成されている。
【0037】
導光体21の内部を伝播する画像光Gは、ハーフミラー31bによって所定の角度で反射されることにより、光取出しユニット31から射出瞳SMに向かう平行光束として出射される。光取出しユニット31から出射された画像光Gは、虚像光としてユーザーMの左眼MEに入射し、左眼MEの網膜で結像する。このように、画像光Gが左眼MEの網膜で結像することにより、第1光学モジュール111Aによって形成された虚像が、映像としてユーザーMに認識される。
【0038】
また、導光体21の第2面21bに入射した外界光SLは、導光体21の内部を通過し、導光体21の第1面21aから射出瞳SMに向かって出射される。導光体21の第1面21aから出射された外界光SLは、ユーザーMの左眼MEに入射し、左眼MEの網膜で結像する。このように、外界光SLが左眼MEの網膜で結像することにより、ユーザーMは、外界、すなわち目前の景色をシースルーで視認できる。
【0039】
以上のように、光学モジュール111を備えるHMD100を装着したユーザーMは、映像供給装置から供給される映像信号に基づく映像と、目前の景色との両方を見ることができる。なお、本実施形態で説明した導光装置20の構成は、あくまで一例であり、例えば、特開2015-72438号公報に記載された構成を導光装置20の構成として採用してもよい。
【0040】
1-3.表示装置
以下、
図4から
図7を参照しながら表示装置10について詳細に説明する。
図4は、表示装置10の概略構成の一例を示すブロック図である。
図4に示すように、表示装置10は、表示パネル11と、制御基板12と、を備える。既に説明したように、例えば、表示パネル11は、OLEDパネルであり、不図示のFPCケーブルを介して制御基板12と電気的に接続される。
【0041】
図5は、表示パネル11の概略構成の一例を示す平面図である。
図5に示すように、表示パネル11は、複数の画素40と、2つの駆動回路50と、複数の実装端子60と、を備える。画素40及び駆動回路50は、回路領域W1に配置され、実装端子60は、実装領域W2に配置される。
【0042】
複数の画素40は、回路領域W1に含まれる表示領域W3においてマトリクス状に配置される。複数の画素40は、赤色画素40Rと、緑色画素40Gと、青色画素40Bと、を含む。赤色画素40Rは、赤色の光を出射する。緑色画素40Gは、緑色の光を出射する。青色画素40Bは、青色の光を出射する。
【0043】
2つの駆動回路50は、回路領域W1において表示領域W3の外側に配置される。以下の説明では、2つの駆動回路50の一方を「第1駆動回路51」と呼称し、2つの駆動回路50の他方を「第2駆動回路52」と呼称する場合がある。第1駆動回路51は、表示領域W3の左側に配置される。第2駆動回路52は、表示領域W3の下側に配置される。
【0044】
回路領域W1には、表示パネル11の水平方向に延在する複数の走査線71と、各走査線71に対応して水平方向に延在する複数の制御線72と、表示パネル11の垂直方向に延在する複数のデータ線73と、が配置される。第1駆動回路51は、各走査線71及び各制御線72と電気的に接続される。第2駆動回路52は、各データ線73と電気的に接続される。
【0045】
各実装端子60は、不図示のFPCケーブルを介して制御基板12と電気的に接続される。制御基板12から出力される第1制御信号、第2制御信号、電源電圧、及びコモン電圧は、それぞれに対応する実装端子60を介して表示パネル11に入力される。第1制御信号は、第1駆動回路51の動作を制御するための信号である。第2制御信号は、第2駆動回路52の動作を制御するための信号である。電源電圧及びコモン電圧は、後述の発光素子44に駆動電流を流すために使用される電圧である。
【0046】
第1駆動回路51は、実装端子60を介して制御基板12から供給される第1制御信号に従って動作することにより、各走査線71及び各制御線72に所定のタイミングで所定の電圧を印加する。第2駆動回路52は、実装端子60を介して制御基板12から供給される第2制御信号に従って動作することにより、各データ線73に所定のタイミングで所定の電圧を印加する。
【0047】
図6は、赤色画素40Rが有する画素回路の概略構成の一例を示す等価回路図である。なお、緑色画素40G及び青色画素40Bが有する画素回路の構成は、
図6に示される回路構成と同じである。
【0048】
図6に示すように、赤色画素40Rの画素回路は、選択トランジスター41と、駆動トランジスター42と、発光制御トランジスター43と、発光素子44と、保持容量45と、を有する。例えば、選択トランジスター41、駆動トランジスター42及び発光制御トランジスター43は、それぞれ、Pチャネル型TFT(Thin Film Transistor)である。
【0049】
選択トランジスター41のゲート電極は、走査線71と電気的に接続される。駆動トランジスター42のゲート電極は、選択トランジスター41のソース領域及びドレイン領域を介して、データ線73と電気的に接続される。発光制御トランジスター43のゲート電極は、制御線72と電気的に接続される。
【0050】
発光素子44は、赤色の光を出射する発光素子である。例えば、発光素子44は、発光層がアノードとカソードとによって挟持される構成を有するOLEDである。緑色画素40Gの画素回路は、緑色の光を出射する発光素子44を有する。青色画素40Bの画素回路は、青色の光を出射する発光素子44を有する。
【0051】
発光素子44のアノードは、駆動トランジスター42のソース領域及びドレイン領域と、発光制御トランジスター43のソース領域及びドレイン領域とを介して、電源配線81と電気的に接続される。発光素子44のカソードは、コモン配線82と電気的に接続される。電源配線81には、実装端子60を介して制御基板12から供給される電源電圧が印加される。コモン配線82には、実装端子60を介して制御基板12から供給されるコモン電圧が印加される。
【0052】
保持容量45は、駆動トランジスター42のゲート電圧を保持するためのコンデンサーである。保持容量45の一方の電極は、駆動トランジスター42のゲート電極と電気的に接続される。保持容量45の他方の電極は、電源配線81と電気的に接続される。なお、保持容量45として、駆動トランジスター42のゲート電極に寄生する容量を用いてもよい。または、保持容量45として、表示パネル11を構成するシリコン基板において互いに異なる導電層で絶縁層を挟持することによって形成される容量を用いてもよい。
【0053】
上記のように構成された画素回路において、走査線71に印加される電圧がハイレベルのとき、選択トランジスター41はオフ状態である。一方、走査線71に印加される電圧がローレベルのとき、選択トランジスター41はオン状態となる。選択トランジスター41がオン状態にあるとき、データ線73と電源配線81との間の電位差によって保持容量45が充電される。
【0054】
制御線72に印加される電圧がハイレベルのとき、発光制御トランジスター43はオフ状態である。発光制御トランジスター43がオフ状態にあるとき、発光素子44のアノードは、駆動トランジスター42と電気的に切断された状態にあるため、発光素子44に駆動電流は流れない。すなわち、発光制御トランジスター43がオフ状態にあるとき、発光素子44は発光しない。
【0055】
一方、制御線72に印加される電圧がローレベルのとき、発光制御トランジスター43はオン状態となる。発光制御トランジスター43がオン状態にあるとき、駆動トランジスター42を介して発光素子44に駆動電流が流れるため、発光素子44は発光する。発光素子44が発光することにより、赤色画素40Rが発光し、赤色画素40Rから赤色の光が出射される。
【0056】
発光素子44に流れる駆動電流は、駆動トランジスター42のゲート電圧に依存する。駆動トランジスター42のゲート電圧は、保持容量45によって保持される電圧と等しい。従って、保持容量45によって保持される電圧に応じた電流値を有する駆動電流が、発光素子44に流れる。
【0057】
発光素子44の発光輝度は、駆動電流の値と、発光素子44の発光期間とに依存する。駆動電流の値は、データ線73に印加される電圧を調整することによって制御できる。発光素子44の発光期間は、発光制御トランジスター43がオン状態である期間、すなわち制御線72に印加される電圧がローレベルである期間を調整することによって制御できる。言い換えれば、赤色画素40Rの明るさは、データ線73に印加される電圧と、制御線72に印加される電圧がローレベルである期間とを調整することによって制御できる。緑色画素40G及び青色画素40Bの明るさについても同様である。
【0058】
以下、
図4に戻って説明を続ける。
図4に示すように、制御基板12は、制御部200と、記憶部300と、を備える。制御部200は、例えば、制御基板12に実装されたCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサーによって実現される機能である。記憶部300は、例えば、制御基板12に実装されたフラッシュメモリー等の不揮発性メモリーによって実現される機能である。
【0059】
制御部200の機能の一部または全部は、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)、及びFPGA(Field Programmable Gate Array)等の回路によって構成されてもよい。
【0060】
制御基板12に供給される映像信号は、制御部200に入力される。制御部200は、映像信号に含まれる画像データに基づいて、表示パネル11を所定の駆動条件で制御する。画像データは、赤色画素40R、緑色画素40G及び青色画素40Bのそれぞれの明るさを指定する画素値を含む。例えば、画素値が8ビットのデジタルデータで伝送される場合、画素値は、0から255までの整数で表される。画素値は、階調値と呼ばれる場合もある。
【0061】
既に説明したように、赤色画素40R、緑色画素40G及び青色画素40Bの明るさは、データ線73に印加される電圧と、制御線72に印加される電圧がローレベルである期間とを調整することによって制御できる。制御部200は、1フレーム分の画像データに含まれる画素値によって指定された明るさで、赤色画素40R、緑色画素40G及び青色画素40Bのそれぞれが発光するように駆動条件を決定する。駆動条件は、少なくとも、データ線73に印加される電圧の値と、制御線72に印加される電圧がローレベルである期間の長さと、を含む。
【0062】
制御部200は、決定した駆動条件が達成される第1制御信号及び第2制御信号を生成して表示パネル11に出力する。既に述べたように、表示パネル11の第1駆動回路51は、第1制御信号に従って、各走査線71及び各制御線72に所定のタイミングで所定の電圧を印加する。また、表示パネル11の第2駆動回路52は、第2制御信号に従って、各データ線73に所定のタイミングで所定の電圧を印加する。その結果、1フレーム分の画像データに含まれる画素値によって指定された明るさで、赤色画素40R、緑色画素40G及び青色画素40Bのそれぞれが発光し、1フレーム分の画像が表示パネル11に表示される。これにより、1フレーム分の画像に対応する画像光Gが、表示パネル11から出射される。
【0063】
以上が、制御部200が、画像データに基づいて表示パネル11を所定の駆動条件で制御することの一例である。なお、
図4では図示していないが、制御部200は、通信ケーブル150を介して給電される直流電圧から電源電圧及びコモン電圧を生成して表示パネル11に出力する機能も有する。
【0064】
さらに、制御部200は、画像データに含まれる画素値に基づいて表示パネル11の温度を示すパネル温度を算出し、パネル温度に基づいて駆動条件を補正する機能を有する。より具体的には、記憶部300は、画素値と画素40の1個当たりのパネル温度との関係を示す温度特性データ400を予め記憶しており、制御部200は、画像データに含まれる画素値と、上記の温度特性データ400とに基づいてパネル温度を算出する。例えば、制御部200は、1フレームごとに画像データに含まれる画素値に基づいてパネル温度を算出する。
【0065】
以下では、まず、
図7を参照しながら温度特性データ400について説明した後に、画素値に基づいてパネル温度を算出する機能と、パネル温度に基づいて駆動条件を補正する機能とについて詳細に説明する。
【0066】
図7は、温度特性データ400の一例を示す図である。
図7に示すように、温度特性データ400は、第1データ410と、第2データ420と、第3データ430と、を含む。第1データ410は、画素値iと赤色画素40Rの1個当たりのパネル温度TRとの関係を示す。第2データ420は、画素値iと緑色画素40Gの1個当たりのパネル温度TGとの関係を示す。第3データ430は、画素値iと青色画素40Bの1個当たりのパネル温度TBとの関係を示す。iは、画素値を示し、且つ0からnまでの整数である。nは、画素値の最大値である。一例として、nは、255である。
【0067】
温度特性データ400は、テーブルデータとして記憶部300に記憶されてもよいし、数式データとして記憶部300に記憶されてもよい。
図7に示される温度特性データ400は、あくまで一例であり、実際に得られる温度特性データは、
図7に示される温度特性データ400と異なる場合があり得る。
【0068】
例えば、上記のような温度特性データ400は、HMD100の製造工程において、HMD100が完成した状態、すなわちHMD100に表示装置10が組み込まれた状態で測定される。具体的には、表示パネル11に温度センサーを配置した状態で、制御部200に与えられる画素値のうち、1個の赤色画素40Rの明るさを指定する1個の画素値を0から255まで1ずつ増やしながら、その1個の赤色画素40Rを発光させると共に、温度センサーによって検出された温度を、赤色画素40Rの1個当たりのパネル温度TRとして取得する。このような方法により、第1データ410を取得することができる。
【0069】
或いは、表示パネル11に温度センサーを配置した状態で、制御部200に与えられる画素値のうち、全ての赤色画素40Rの明るさを指定する全ての画素値を0から255まで1ずつ増やしながら、全ての赤色画素40Rを発光させると共に、温度センサーによって検出された温度を取得する。そして、各画素値に対応して得られた温度を、赤色画素40Rの総数で除算することにより、赤色画素40Rの1個当たりのパネル温度TRを算出する。このような方法によっても、第1データ410を取得することができる。
【0070】
なお、どちらの方法が採用されても、第1データ410が測定される期間において、制御部200に与えられる画素値のうち、発光させるべき赤色画素40R以外の画素40の明るさを指定する画素値は、0に設定される。上記と同じ方法により、第2データ420及び第3データ430も取得することができる。また、上記のような温度特性データ400を実際に測定する方法ではなく、シミュレーション等の数値計算を行うことにより、温度特性データ400を取得してもよい。温度特性データ400の取得方法は、特に限定されない。
【0071】
以下、
図4に戻って説明を続ける。
図4に示すように、制御部200は、パネル制御部210と、画像解析部220と、パネル温度算出部230と、を備える。
【0072】
パネル制御部210は、映像信号に含まれる画像データに基づいて、表示パネル11を所定の駆動条件で制御する。すなわち、基本的には、パネル制御部210は、1フレーム分の画像データに含まれる画素値によって指定された明るさで、赤色画素40R、緑色画素40G及び青色画素40Bのそれぞれが発光するように駆動条件を決定し、決定した駆動条件が達成される第1制御信号及び第2制御信号を生成して表示パネル11に出力する。また、パネル制御部210は、後述のパネル温度算出部230によって算出されたパネル温度に基づいて駆動条件を補正する機能も有する。この機能については後述する。
【0073】
画像解析部220は、映像信号に含まれる1フレーム分の画像データを解析することにより、画素値がiである赤色画素40Rの総数SR(i)と、画素値がiである緑色画素40Gの総数SG(i)と、画素値がiである青色画素40Bの総数SB(i)と、を算出する。画素値がiである赤色画素40Rとは、画素値iによって明るさが指定される赤色画素40Rである。画素値がiである緑色画素40Gとは、画素値iによって明るさが指定される緑色画素40Gである。画素値がiである青色画素40Bとは、画素値iによって明るさが指定される青色画素40Bである。
【0074】
以下の説明では、画素値がiである赤色画素40Rの総数SR(i)を、赤色画素数SR(i)と呼称し、画素値がiである緑色画素40Gの総数SG(i)を、緑色画素数SG(i)と呼称し、画素値がiである青色画素40Bの総数SB(i)を、青色画素数SB(i)と呼称する場合がある。
【0075】
画像解析部220は、0から255までの各画素値iについて、赤色画素数SR(i)、緑色画素数SG(i)、及び青色画素数SB(i)を算出する。これにより、画像解析部220は、赤色画素数SR(0)から赤色画素数SR(255)までの計256個の赤色画素数SR(i)を取得する。256個の赤色画素数SR(i)のうち、値が0となる赤色画素数SR(i)が1つ以上存在する場合もあり得る。例えば、画素値iが255である赤色画素40Rが存在しない場合、赤色画素数SR(255)の値は0となる。
【0076】
同様に、画像解析部220は、緑色画素数SG(0)から緑色画素数SG(255)までの計256個の緑色画素数SG(i)を取得する。また、画像解析部220は、青色画素数SB(0)から青色画素数SB(255)までの計256個の青色画素数SB(i)を取得する。画像解析部220は、画像データの解析結果をパネル温度算出部230に出力する。すなわち、画像解析部220は、256個の赤色画素数SR(i)と、256個の緑色画素数SG(i)と、256個の青色画素数SB(i)とをパネル温度算出部230に出力する。
【0077】
パネル温度算出部230は、画像解析部220から得られる画像データの解析結果と、記憶部300に記憶された温度特性データ400とに基づいて、パネル温度を算出する。例えば、パネル温度算出部230は、下記演算式(1)に基づいてパネル温度を算出する。
【0078】
【0079】
演算式(1)において、Tpは、パネル温度を示す。演算式(1)において、SR(i)は、画像解析部220から得られる赤色画素数SR(i)であり、TR(i)は、画素値がiである赤色画素40Rの1個当たりのパネル温度TRである。パネル温度算出部230は、温度特性データ400に含まれる第1データ410から、画素値iに対応するパネル温度TRを、画素値がiである赤色画素40Rの1個当たりのパネル温度TR(i)として取得する。以下の説明では、画素値がiである赤色画素40Rの1個当たりのパネル温度TR(i)を、赤色パネル温度TR(i)と呼称する場合がある。
【0080】
演算式(1)において、SG(i)は、画像解析部220から得られる緑色画素数SG(i)であり、TG(i)は、画素値がiである緑色画素40Gの1個当たりのパネル温度TGである。パネル温度算出部230は、温度特性データ400に含まれる第2データ420から、画素値iに対応するパネル温度TGを、画素値がiである緑色画素40Gの1個当たりのパネル温度TG(i)として取得する。以下の説明では、画素値がiである緑色画素40Gの1個当たりのパネル温度TG(i)を、緑色パネル温度TG(i)と呼称する場合がある。
【0081】
演算式(1)において、SB(i)は、画像解析部220から得られる青色画素数SB(i)であり、TB(i)は、画素値がiである青色画素40Bの1個当たりのパネル温度TBである。パネル温度算出部230は、温度特性データ400に含まれる第3データ430から、画素値iに対応するパネル温度TBを、画素値がiである青色画素40Bの1個当たりのパネル温度TB(i)として取得する。以下の説明では、画素値がiである青色画素40Bの1個当たりのパネル温度TB(i)を、青色パネル温度TB(i)と呼称する場合がある。
【0082】
演算式(1)の右辺第1項に示すように、パネル温度算出部230は、0から255までの各画素値iについて、赤色画素数SR(i)に赤色パネル温度TR(i)を乗算する処理を行い、各計算結果の和を算出する。演算式(1)の右辺第1項に示される計算が行われることにより、赤色画素40Rの発光に起因するパネル温度が算出される。
【0083】
演算式(1)の右辺第2項に示すように、パネル温度算出部230は、0から255までの各画素値iについて、緑色画素数SG(i)に緑色パネル温度TG(i)を乗算する処理を行い、各計算結果の和を算出する。演算式(1)の右辺第2項に示される計算が行われることにより、緑色画素40Gの発光に起因するパネル温度が算出される。
【0084】
演算式(1)の右辺第3項に示すように、パネル温度算出部230は、0から255までの各画素値iについて、青色画素数SB(i)に青色パネル温度TB(i)を乗算する処理を行い、各計算結果の和を算出する。演算式(1)の右辺第3項に示される計算が行われることにより、青色画素40Bの発光に起因するパネル温度が算出される。
【0085】
演算式(1)に示されるように、パネル温度算出部230は、赤色画素40Rの発光に起因するパネル温度と、緑色画素40Gの発光に起因するパネル温度と、青色画素40Bの発光に起因するパネル温度との和を、パネル温度Tpとして算出する。パネル温度算出部230は、算出したパネル温度Tpをパネル制御部210に出力する。
【0086】
既に説明したように、基本的には、パネル制御部210は、1フレーム分の画像データに含まれる画素値によって指定された明るさで、赤色画素40R、緑色画素40G及び青色画素40Bのそれぞれが発光するように駆動条件を決定する。パネル制御部210は、パネル温度算出部230から得られるパネル温度Tpに基づいて駆動条件を補正する。例えば、パネル制御部210は、パネル温度Tpが所定の閾値を越えた場合に、表示パネル11の実温度が低下するように駆動条件を補正する。
【0087】
具体的には、例えば、パネル制御部210は、1フレーム分の画像データに含まれる画素値によって指定された明るさの80%で、赤色画素40R、緑色画素40G及び青色画素40Bのそれぞれが発光するように駆動条件を補正する。すなわち、パネル制御部210は、1フレーム分の画像データに含まれる画素値によって指定された明るさの80%で、赤色画素40R、緑色画素40G及び青色画素40Bのそれぞれが発光するように、データ線73に印加される電圧の値と、制御線72に印加される電圧がローレベルである期間の長さとの少なくとも一方を補正する。
【0088】
パネル制御部210は、補正した駆動条件が達成される第1制御信号及び第2制御信号を生成して表示パネル11に出力する。表示パネル11の第1駆動回路51は、第1制御信号に従って、各走査線71及び各制御線72に所定のタイミングで所定の電圧を印加する。また、表示パネル11の第2駆動回路52は、第2制御信号に従って、各データ線73に所定のタイミングで所定の電圧を印加する。その結果、1フレーム分の画像データに含まれる画素値によって指定された明るさの80%で、赤色画素40R、緑色画素40G及び青色画素40Bのそれぞれが発光し、1フレーム分の画像が表示パネル11に表示される。
【0089】
例えば、パネル制御部210は、奇数フレーム及び偶数フレームの一方だけで、赤色画素40R、緑色画素40G及び青色画素40Bのそれぞれが発光するように駆動条件を補正してもよい。この場合、奇数フレーム及び偶数フレームの一方では、1フレーム分の画像データに含まれる画素値に関係なく、赤色画素40R、緑色画素40G及び青色画素40Bの全てが発光しないように駆動条件が補正される。また、奇数フレーム及び偶数フレームの他方では、通常通り、1フレーム分の画像データに含まれる画素値によって指定された明るさで、赤色画素40R、緑色画素40G及び青色画素40Bのそれぞれが発光するように駆動条件が決定される。
【0090】
例えば、パネル制御部210は、表示領域W3よりも小さい矩形領域に含まれる赤色画素40R、緑色画素40G及び青色画素40Bのみが、1フレーム分の画像データに含まれる画素値によって指定された明るさで発光するように駆動条件を補正してもよい。この場合、矩形領域の外側に位置する赤色画素40R、緑色画素40G及び青色画素40Bが発光しないように駆動条件が補正される。
【0091】
上記のように、パネル温度Tpが所定の閾値を越えた場合に、表示パネル11の実温度が低下するように駆動条件が補正されることにより、表示装置10が映像信号に基づく画像を表示する期間において、表示パネル11の実温度は比較的低い温度に抑制される。その結果、表示パネル11に配置された各画素40の劣化が抑制される。
【0092】
(第1実施形態の効果)
以上説明したように、本実施形態の表示装置10は、複数の画素40を有する表示パネル11と、画像データに基づいて表示パネル11を所定の駆動条件で制御する制御部200と、を備え、制御部200は、画像データに含まれる画素値に基づいて表示パネル11の温度を示すパネル温度Tpを算出し、パネル温度Tpに基づいて駆動条件を補正する。
【0093】
本実施形態によれば、画像データに含まれる画素値に基づいてパネル温度Tpを算出するため、表示パネル11の温度を検出するための温度センサーが不要となる。従って、本実施形態によれば、表示パネル11の駆動回路50、または表示パネル11の裏面などに温度センサーを配置する必要がないため、駆動回路50のサイズ、及び表示装置10を搭載するHMD100等の電子機器のサイズを小型化できる。また、本実施形態によれば、算出したパネル温度Tpに基づいて駆動条件を補正することにより、各画素40の劣化が抑制されるため、表示パネル11の寿命を延ばすことができる。
【0094】
また、本実施形態の表示装置10は、画素値と画素40の1個当たりのパネル温度との関係を示す温度特性データ400を記憶する記憶部300をさらに備え、制御部200は、画像データに含まれる画素値と、上記の温度特性データ400とに基づいてパネル温度Tpを算出する。
【0095】
画素値と画素40の1個当たりのパネル温度との間には相関関係がある。従って、本実施形態によれば、画像データに含まれる画素値と、記憶部300に記憶された温度特性データ400とに基づいてパネル温度Tpを算出することにより、パネル温度Tpの演算精度を向上させることができる。
【0096】
また、本実施形態の表示装置10において、複数の画素40は、赤色画素40Rと、緑色画素40Gと、青色画素40Bと、を含み、温度特性データ400は、画素値iと赤色画素40Rの1個当たりのパネル温度TRとの関係を示す第1データ410と、画素値iと緑色画素40Gの1個当たりのパネル温度TGとの関係を示す第2データ420と、画素値iと青色画素40Bの1個当たりのパネル温度TBとの関係を示す第3データ430と、を含み、制御部200は、演算式(1)に基づいてパネル温度Tpを算出する。
【0097】
画素値と画素40の1個当たりのパネル温度との間にある相関関係は、赤色画素40R、緑色画素40G及び青色画素40Bのそれぞれで異なる場合がある。従って、本実施形態によれば、第1データ410、第2データ420及び第3データ430を含む温度特性データ400を用意し、演算式(1)に基づいてパネル温度Tpを算出することにより、パネル温度Tpの演算精度をより向上させることができる。
【0098】
また、本実施形態の表示装置10において、制御部200は、1フレームごとに画像データに含まれる画素値に基づいてパネル温度Tpを算出する。
【0099】
このように、本実施形態によれば、1フレームごとに画像データに含まれる画素値に基づいてパネル温度Tpを算出することにより、全フレームに亘ってパネル温度Tpが監視されるため、駆動条件を補正すべきタイミングが見逃されることを防止できる。
【0100】
本実施形態の光学モジュール111は、表示装置10と、表示装置10の表示パネル11から出射される画像光Gを投射する投射光学系15と、投射光学系15から投射される画像光Gを所定の位置まで導き、所定の位置から虚像光として出射する導光装置20と、を備える。
上記のように、本実施形態の光学モジュール111は、寿命の長い表示パネル11を備える。つまり、本実施形態によれば、表示パネル11の交換サイクルが長いため、メンテナンス性に優れた光学モジュール111を提供できる。
【0101】
本実施形態の電子機器の一例であるHMD100は、光学モジュール111を備える。
上記のように、光学モジュール111は、メンテナンス性に優れる。従って、本実施形態によれば、メンテナンス性に優れたHMD100を提供できる。
【0102】
2.第2実施形態
次に、本開示の第2実施形態について説明する。
第2実施形態では、表示装置10の別の形態である表示装置10Aについて説明する。以下に例示する第2実施形態において、第1実施形態と共通の構成については、第1実施形態で使用した符号と同じ符号を付し、詳細な説明を適宜省略する。
【0103】
図8は、表示装置10Aの概略構成の一例を示すブロック図である。
図8に示すように、表示装置10Aは、表示パネル11と、制御基板12と、第1温度センサー13と、を備える。第1温度センサー13は、外気温を検出する温度センサーである。例えば、第1温度センサー13は、サーミスターである。
【0104】
外気温とは、表示装置10Aが組み込まれる筐体の外側の温度である。例えば、表示装置10AがHMD100のフレーム120に組み込まれる場合、第1温度センサー13は、フレーム120の外側の温度を検出する。この場合、例えば、第1温度センサー13の少なくとも一部がフレーム120から露出するように、第1温度センサー13はフレーム120に配置される。第1温度センサー13は、外気温の検出結果を示す電気信号を制御基板12に出力する。
【0105】
制御基板12は、制御部200Aと、記憶部300Aと、を備える。第1実施形態と同様に、制御部200Aは、例えば、制御基板12に実装されたプロセッサーによって実現される機能である。記憶部300Aは、例えば、制御基板12に実装された不揮発性メモリーによって実現される機能である。制御部200Aの機能の一部または全部は、DSP、ASIC、PLD、及びFPGA等の回路によって構成されてもよい。
【0106】
制御基板12に供給される映像信号は、制御部200Aに入力される。制御部200Aは、映像信号に含まれる画像データに基づいて、表示パネル11を所定の駆動条件で制御する。すなわち、第1実施形態と同様に、基本的には、制御部200Aは、1フレーム分の画像データに含まれる画素値によって指定された明るさで、赤色画素40R、緑色画素40G及び青色画素40Bのそれぞれが発光するように駆動条件を決定し、決定した駆動条件が達成される第1制御信号及び第2制御信号を生成して表示パネル11に出力する。
【0107】
なお、
図8では図示していないが、第1実施形態と同様に、制御部200Aは、通信ケーブル150を介して給電される直流電圧から電源電圧及びコモン電圧を生成して表示パネル11に出力する機能も有する。
【0108】
第1温度センサー13から制御基板12に出力される電気信号は、制御部200Aに入力される。記憶部300Aは、外気温が第1温度の場合における画素値と画素40の1個当たりのパネル温度との関係を示す第1温度特性データ500と、外気温が第2温度の場合における画素値と画素40の1個当たりのパネル温度との関係を示す第2温度特性データ600と、を予め記憶する。例えば、第2温度は、第1温度よりも高い。
【0109】
制御部200Aは、画像データに含まれる画素値に基づいてパネル温度Tpを算出し、算出したパネル温度Tpに基づいて駆動条件を補正する機能を有する点で、第1実施形態の制御部200と同じである。ただし、制御部200Aは、画像データに含まれる画素値と、第1温度センサー13によって検出された外気温と、第1温度特性データ500と、第2温度特性データ600とに基づいてパネル温度Tpを算出する。例えば、制御部200Aは、1フレームごとに画像データに含まれる画素値に基づいてパネル温度Tpを算出する。
【0110】
図9は、第1温度特性データ500及び第2温度特性データ600の一例を示す図である。第1温度特性データ500は、第1データ510と、第2データ520と、第3データ530と、を含む。第1データ510は、外気温が第1温度の場合における画素値iと赤色画素40Rの1個当たりのパネル温度TRとの関係を示す。第2データ520は、外気温が第1温度の場合における画素値iと緑色画素40Gの1個当たりのパネル温度TGとの関係を示す。第3データ530は、外気温が第1温度の場合における画素値iと青色画素40Bの1個当たりのパネル温度TBとの関係を示す。
【0111】
第2温度特性データ600は、第1データ610と、第2データ620と、第3データ630と、を含む。第1データ610は、外気温が第2温度の場合における画素値iと赤色画素40Rの1個当たりのパネル温度TRとの関係を示す。第2データ620は、外気温が第2温度の場合における画素値iと緑色画素40Gの1個当たりのパネル温度TGとの関係を示す。第3データ630は、外気温が第2温度の場合における画素値iと青色画素40Bの1個当たりのパネル温度TBとの関係を示す。
【0112】
第1温度特性データ500及び第2温度特性データ600は、テーブルデータとして記憶部300Aに記憶されてもよいし、数式データとして記憶部300Aに記憶されてもよい。
図9に示される第1温度特性データ500及び第2温度特性データ600は、あくまで一例であり、実際に得られる第1温度特性データ及び第2温度特性データは、
図9に示される第1温度特性データ500及び第2温度特性データ600と異なる場合があり得る。
【0113】
第1実施形態で説明した温度特性データ400の測定方法を、第1温度特性データ500及び第2温度特性データ600の測定方法として適用することができる。ただし、第1温度特性データ500を測定する場合には、外気温を第1温度に保持した状態で、温度特性データ400の測定方法を適用する。同様に、第2温度特性データ600を測定する場合には、外気温を第2温度に保持した状態で、温度特性データ400の測定方法を適用する。
【0114】
以下、
図8に戻って説明を続ける。
図8に示すように、制御部200Aは、パネル制御部210と、画像解析部220と、パネル温度算出部230Aと、外気温算出部240と、を備える。パネル制御部210及び画像解析部220の機能は第1実施形態と同様であるので、以下では、主に、パネル温度算出部230A及び外気温算出部240について説明する。
【0115】
外気温算出部240は、第1温度センサー13の出力信号に基づいて外気温を算出する。外気温算出部240は、算出した外気温をパネル温度算出部230Aに出力する。パネル温度算出部230Aは、画像解析部220から得られる画像データの解析結果と、外気温算出部240から得られる外気温と、記憶部300Aに記憶された第1温度特性データ500及び第2温度特性データ600とに基づいて、パネル温度Tpを算出する。
【0116】
例えば、パネル温度算出部230Aは、外気温算出部240から得られる外気温が第1温度と等しい場合、画像データの解析結果と、第1温度特性データ500と、演算式(1)とに基づいて、パネル温度Tpを算出する。例えば、パネル温度算出部230Aは、外気温算出部240から得られる外気温が第2温度と等しい場合、画像データの解析結果と、第2温度特性データ600と、演算式(1)とに基づいて、パネル温度Tpを算出する。
【0117】
例えば、パネル温度算出部230Aは、外気温算出部240から得られる外気温が第1温度及び第2温度のいずれとも異なる第3温度である場合、画像データの解析結果と、第1温度特性データ500と、第2温度特性データ600と、演算式(1)とに基づいて、パネル温度Tpを算出する。
【0118】
具体的には、例えば、パネル温度算出部230Aは、外気温が第3温度である場合、第1温度特性データ500に含まれる第1データ510から得られた赤色パネル温度TR(i)と、第2温度特性データ600に含まれる第1データ610から得られた赤色パネル温度TR(i)とを用いて線形補間を行うことにより、第3温度における赤色パネル温度TR(i)を算出する。緑色パネル温度TG(i)及び青色パネル温度TB(i)の算出方法についても同様である。
【0119】
パネル温度算出部230Aは、上記のように算出したパネル温度Tpをパネル制御部210に出力する。演算式(1)を用いてパネル温度Tpを算出する方法は第1実施形態で説明したので、ここでの説明は省略する。第1実施形態と同様に、例えば、パネル制御部210は、パネル温度算出部230Aから得られるパネル温度Tpが閾値を越えた場合に、表示パネル11の実温度が低下するように駆動条件を補正する。
【0120】
(第2実施形態の効果)
以上説明したように、第2実施形態の表示装置10Aは、複数の画素40を有する表示パネル11と、画像データに基づいて表示パネル11を所定の駆動条件で制御する制御部200Aと、を備え、制御部200Aは、画像データに含まれる画素値に基づいて表示パネル11の温度を示すパネル温度Tpを算出し、パネル温度Tpに基づいて駆動条件を補正する。表示装置10Aは、外気温を検出する第1温度センサー13と、外気温が第1温度の場合における画素値と画素40の1個当たりのパネル温度との関係を示す第1温度特性データ500と、外気温が第2温度の場合における画素値と画素40の1個当たりのパネル温度との関係を示す第2温度特性データ600と、を記憶する記憶部300Aと、をさらに備え、制御部200Aは、画像データに含まれる画素値と、第1温度センサー13によって検出された外気温と、第1温度特性データ500と、第2温度特性データ600とに基づいてパネル温度Tpを算出する。
【0121】
表示パネル11の実温度は、外気温の影響を受ける。第2実施形態によれば、画像データに含まれる画素値と、第1温度センサー13によって検出された外気温と、第1温度の外気温に対応する第1温度特性データ500と、第2温度の外気温に対応する第2温度特性データ600とに基づいてパネル温度Tpを算出するため、外気温の変化に応じて精度の高いパネル温度Tpを算出することができる。
【0122】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、以下のような変形例が考えられる。
【0123】
(1)例えば、第1実施形態では、記憶部300が1つの温度特性データ400を記憶する形態を例示したが、記憶部300は複数の温度特性データを記憶してもよい。この場合、制御部200は、画像データに含まれる画素値と、記憶部300に記憶された複数の温度特性データのいずれか1つとに基づいてパネル温度Tpを算出する。
【0124】
例えば、光学モジュール111が単体で顧客に提供される場合もあり得る。この場合、顧客によってデザインされたフレームに光学モジュール111が組み込まれることにより、顧客ブランドのHMDが完成する。そこで、例えば、顧客Aによってデザインされたフレームに光学モジュール111が組み込まれた状態で、温度特性データAを測定する。また、顧客Bによってデザインされたフレームに光学モジュール111が組み込まれた状態で、温度特性データBを測定する。
【0125】
そして、温度特性データA及び温度特性データBを予め記憶部300に記憶しておき、光学モジュール111が組み込まれるフレームに応じて温度特性データA及び温度特性データBのいずれか1つを選択する機能を制御部200に持たせる。これにより、例えば、顧客Aのフレームに光学モジュール111が組み込まれた場合、制御部200は、温度特性データAに基づいてパネル温度Tpを算出する。一方、例えば、顧客Bのフレームに光学モジュール111が組み込まれた場合、制御部200は、温度特性データBに基づいてパネル温度Tpを算出する。このような変形例によれば、顧客ごとに光学モジュール111の仕様、すなわち表示装置10の仕様を変更することなく、様々な顧客デザインのフレームに、表示装置10を含む光学モジュール111を組み込むことができる。
【0126】
(2)例えば、第1実施形態の表示装置10は、表示パネル11の駆動回路50に配置された第2温度センサーをさらに備えてもよい。第2温度センサーによって検出される温度は、表示パネル11の実温度に近い。この変形例において、制御部200は、第2温度センサーによって検出された温度に基づいてパネル温度Tpを補正する。
【0127】
具体的には、例えば、制御部200は、第2温度センサーによって検出された温度と、パネル温度算出部230によって算出されたパネル温度Tpとの平均値を、新たなパネル温度Tpとして算出する。または、制御部200は、第2温度センサーによって検出された温度と、パネル温度算出部230によって算出されたパネル温度Tpとの差分が閾値を越えた状態が所定期間継続した場合、その差分をパネル温度Tpに加算する。このような変形例によれば、画素値に基づいて算出されたパネル温度Tpの精度をさらに向上できる。なお、この変形例は、第2実施形態の表示装置10Aに適用してもよい。
【0128】
(3)第2実施形態では、異なる外気温で測定された温度特性データとして、第1温度特性データ500と第2温度特性データ600との2つの温度特性データを用いる形態を例示した。本開示はこれに限定されず、異なる外気温で測定された温度特性データとして、3つ以上の温度特性データを用いてもよい。
【0129】
(4)第1実施形態では、1枚の表示パネル11を備える表示装置10を例示した。本開示はこれに限定されず、複数の表示パネルを備える表示装置を、光学モジュール111の表示装置として採用してもよい。この場合、例えば、表示装置は、赤色画素のみを有する第1表示パネルと、緑色画素のみを有する第2表示パネルと、青色画素のみを有する第3表示パネルとの3つの表示パネルを備える。また、この場合、表示装置は、第1表示パネルから出射される赤色の画像光と、第2表示パネルから出射される緑色の画像光と、第3表示パネルから出射される青色の画像光とを合成して、カラーの画像光を生成するダイクロイックプリズムを備える。ダイクロイックプリズムから出射されるカラーの画像光が、投射光学系15に入射される。
【0130】
(5)第1実施形態では、光学モジュール111が、左眼用の第1光学モジュール111Aと、右眼用の第2光学モジュール111Bと、を備える形態を例示した。本開示はこれに限定されず、光学モジュール111は、第1光学モジュール111Aと第2光学モジュール111Bとのいずれか一方のみを備えてもよい。
【0131】
(6)第1実施形態では、光学モジュール111を備える電子機器、すなわち表示装置10を備える電子機器として、HMD100を例示した。本開示はこれに限定されず、表示装置10を備える電子機器として、パーソナルコンピューター用のディスプレイ装置、プロジェクター、スマートフォン、及びタブレット端末などが挙げられる。
【0132】
〔本開示のまとめ〕
以下、本開示のまとめを付記する。
【0133】
(付記1)複数の画素を有する表示パネルと、画像データに基づいて前記表示パネルを所定の駆動条件で制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記画像データに含まれる画素値に基づいて前記表示パネルの温度を示すパネル温度を算出し、前記パネル温度に基づいて前記駆動条件を補正する、表示装置。
【0134】
付記1に記載の表示装置によれば、画像データに含まれる画素値に基づいてパネル温度を算出するため、表示パネルの温度を検出するための温度センサーが不要となる。従って、付記1に記載の表示装置によれば、表示パネルの駆動回路、または表示パネルの裏面などに温度センサーを配置する必要がないため、駆動回路のサイズ、及び表示装置を搭載する電子機器のサイズを小型化できる。また、付記1に記載の表示装置によれば、算出したパネル温度に基づいて駆動条件を補正することにより、各画素の劣化が抑制されるため、表示パネルの寿命を延ばすことができる。
【0135】
(付記2)前記画素値と前記画素の1個当たりのパネル温度との関係を示す温度特性データを記憶する記憶部をさらに備え、前記制御部は、前記画像データに含まれる前記画素値と、前記温度特性データとに基づいて前記パネル温度を算出する、付記1に記載の表示装置。
【0136】
画素値と画素の1個当たりのパネル温度との間には相関関係がある。従って、付記2に記載の表示装置によれば、画像データに含まれる画素値と、記憶部に記憶された温度特性データとに基づいてパネル温度を算出することにより、パネル温度の演算精度を向上させることができる。
【0137】
(付記3)前記複数の画素は、赤色画素と、緑色画素と、青色画素と、を含み、前記温度特性データは、前記画素値と前記赤色画素の1個当たりのパネル温度との関係を示す第1データと、前記画素値と前記緑色画素の1個当たりのパネル温度との関係を示す第2データと、前記画素値と前記青色画素の1個当たりのパネル温度との関係を示す第3データと、を含み、前記制御部は、演算式(1)に基づいて前記パネル温度を算出する、付記2に記載の表示装置。
【0138】
画素値と画素の1個当たりのパネル温度との間にある相関関係は、赤色画素、緑色画素及び青色画素のそれぞれで異なる場合がある。従って、付記3に記載の表示装置によれば、第1データ、第2データ及び第3データを含む温度特性データを用意し、演算式(1)に基づいてパネル温度を算出することにより、パネル温度の演算精度をより向上させることができる。
【0139】
(付記4)外気温を検出する第1温度センサーと、前記外気温が第1温度の場合における前記画素値と前記画素の1個当たりのパネル温度との関係を示す第1温度特性データと、前記外気温が第2温度の場合における前記画素値と前記画素の1個当たりのパネル温度との関係を示す第2温度特性データと、を記憶する記憶部と、をさらに備え、前記制御部は、前記画像データに含まれる前記画素値と、前記第1温度センサーによって検出された前記外気温と、前記第1温度特性データと、前記第2温度特性データとに基づいて前記パネル温度を算出する、付記1に記載の表示装置。
【0140】
表示パネルの実温度は、外気温の影響を受ける。付記4に記載の表示装置によれば、画像データに含まれる画素値と、第1温度センサーによって検出された外気温と、第1温度の外気温に対応する第1温度特性データと、第2温度の外気温に対応する第2温度特性データとに基づいてパネル温度を算出するため、外気温の変化に応じて精度の高いパネル温度を算出することができる。
【0141】
(付記5)前記画素値と前記画素の1個当たりのパネル温度との関係を示す複数の温度特性データを記憶する記憶部をさらに備え、前記制御部は、前記画像データに含まれる前記画素値と、前記複数の温度特性データのいずれか1つとに基づいて前記パネル温度を算出する、付記1に記載の表示装置。
【0142】
付記5に記載の表示装置によれば、画像データに含まれる画素値と、複数の温度特性データのいずれか1つとに基づいてパネル温度を算出するため、表示装置の仕様を変更することなく、様々なデザインの筐体に表示装置を組み込むことができる。
【0143】
(付記6)前記表示パネルの駆動回路に配置された第2温度センサーをさらに備え、前記制御部は、前記第2温度センサーによって検出された温度に基づいて前記パネル温度を補正する、付記1から5のいずれか一項に記載の表示装置。
【0144】
表示パネルの駆動回路に配置された第2温度センサーによって検出される温度は、表示パネルの実温度に近い。従って、付記6に記載の表示装置によれば、第2温度センサーによって検出された温度に基づいてパネル温度を補正することにより、画素値に基づいて算出されたパネル温度の精度をさらに向上できる。
【0145】
(付記7)前記制御部は、1フレームごとに前記画像データに含まれる前記画素値に基づいて前記パネル温度を算出する、付記1から6のいずれか一項に記載の表示装置。
【0146】
付記7に記載の表示装置によれば、1フレームごとに画像データに含まれる画素値に基づいてパネル温度を算出することにより、全フレームに亘ってパネル温度が監視されるため、駆動条件を補正すべきタイミングが見逃されることを防止できる。
【0147】
(付記8)付記1から7のいずれか一項に記載の表示装置と、前記表示装置の前記表示パネルから出射される画像光を投射する投射光学系と、前記投射光学系から投射される前記画像光を所定の位置まで導き、前記所定の位置から虚像光として出射する導光装置と、を備える光学モジュール。
【0148】
付記8に記載の光学モジュールは、寿命の長い表示パネルを備える。つまり、付記8に記載の光学モジュールによれば、表示パネルの交換サイクルが長いため、メンテナンス性に優れた光学モジュールを提供できる。
【0149】
(付記9)付記1から7のいずれか一項に記載の表示装置を備える電子機器。
【0150】
付記9に記載の電子機器は、寿命の長い表示パネルを備える。つまり、付記9に記載の電子機器によれば、表示パネルの交換サイクルが長いため、メンテナンス性に優れた電子機器を提供できる。
【0151】
(付記10)付記8に記載の光学モジュールを備える電子機器。
【0152】
付記10に記載の電子機器は、メンテナンス性に優れた光学モジュールを備える。従って、付記10に記載の電子機器によれば、メンテナンス性に優れた電子機器を提供できる。
【符号の説明】
【0153】
100…ヘッドマウントディスプレイ(電子機器)、111…光学モジュール、111A…第1光学モジュール、111B…第2光学モジュール、120…フレーム、10、10A…表示装置、11…表示パネル、12…制御基板、13…第1温度センサー、15…投射光学系、20…導光装置、40…画素、40R…赤色画素、40G…緑色画素、40B…青色画素、200、200A…制御部、210…パネル制御部、220…画像解析部、230、230A…パネル温度算出部、240…外気温算出部、300、300A…記憶部、150…通信ケーブル、M…ユーザー