(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136663
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】記録装置および記録方法
(51)【国際特許分類】
B41J 11/14 20060101AFI20240927BHJP
B41J 11/06 20060101ALI20240927BHJP
B41J 25/308 20060101ALI20240927BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B41J11/14
B41J11/06
B41J25/308 K
B41J2/01 451
B41J2/01 401
B41J2/01 303
B41J2/01 109
B41J2/01 305
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047849
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】森山 隆司
(72)【発明者】
【氏名】百瀬 嘉彦
(72)【発明者】
【氏名】尾▲崎▼ 千馬
【テーマコード(参考)】
2C056
2C058
2C064
【Fターム(参考)】
2C056EA20
2C056EA23
2C056EB11
2C056EB12
2C056EB13
2C056EB36
2C056EB46
2C056FA15
2C056FB03
2C056FB08
2C056FB09
2C056FB10
2C056HA12
2C056HA38
2C058AB08
2C058AB17
2C058AB22
2C058AC07
2C058AC11
2C058AD01
2C058AE02
2C058AF31
2C058DA11
2C058DA24
2C058DC09
2C058DC20
2C064CC04
2C064DD05
2C064DD09
2C064DD14
2C064EE05
(57)【要約】
【課題】装置の小型化と媒体の高さ検出の時間短縮とを両立させる記録装置および記録方法を提供すること。
【解決手段】記録装置1は、媒体支持部31m、記録部80、移動部70、高さ検出部20、および制御部90を備え、制御部90は、第1次検出と、第2次検出と、を高さ検出部20に実施させ、第1次検出では、接触部24aを第1方向へ移動させながら、変位検出部25は媒体Mとの接触および非接触を検出し、接触が検出されると、第1方向への移動が中断され、媒体支持部31mが移動部70に対して第1の距離離れてから、第1方向への移動が再開され、第2次検出では、接触部24aを第1方向と反対の第2方向へ移動させながら、変位検出部25は媒体Mとの接触および非接触を検出し、接触が検出されると、第2方向への移動が中断され、媒体支持部31mが移動部70に対して非接触が検出されるまで離れてから、第2方向への移動が再開される。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を支持する媒体支持部と、
前記媒体に記録を行う記録部と、
前記媒体支持部に対して、第1軸に沿って相対的に移動する移動部と、
前記移動部に取り付けられる検出部と、
制御部と、を備え、
前記検出部は、前記移動部に回動可能に連結された腕部と、前記腕部の一端に固定された接触部と、前記接触部と前記媒体との接触および非接触を検出する変位検出部と、を備え、
前記接触部は、前記第1軸と直交する第2軸において、前記媒体支持部と重ねられて配置され、
前記媒体支持部は、前記移動部に対して、前記第1軸および前記第2軸と直交する第3軸に沿って相対的に移動可能であり、
前記腕部は、前記移動部が移動する間に前記接触部が前記媒体と接触することによって、回動軸を中心として回動し、
前記変位検出部は、前記腕部の回動によって前記接触および前記非接触を検出し、
前記制御部は、第1次検出と、前記第1次検出に次ぐ第2次検出と、を前記検出部に実施させ、
前記第1次検出では、
前記接触部を前記第1軸に沿う第1方向へ移動させながら、前記変位検出部は前記接触および前記非接触を検出し、
前記接触が検出された場合には、前記第1方向への移動が中断され、前記媒体支持部が前記移動部に対して前記第3軸に沿って第1の距離離れてから、前記第1方向への移動が再開され、
前記第2次検出では、
前記接触部を前記第1方向と反対の第2方向へ移動させながら、前記変位検出部は前記接触および前記非接触を検出し、
前記接触が検出された場合には、前記第2方向への移動が中断され、前記媒体支持部が前記移動部に対して前記第3軸に沿って、前記非接触が検出されるまで離れてから、前記第2方向への移動が再開される、記録装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1次検出に先行する故障検出を、前記変位検出部に実施させ、
前記故障検出では、前記検出部の不具合を確認する、請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
報知部を備え、
前記制御部は、前記第1次検出および前記第2次検出の検出結果を、前記報知部を介して使用者に報知する、請求項1に記載の記録装置。
【請求項4】
前記第1次検出において、前記接触が検出されずに前記第1方向への移動が終了した場合には、前記制御部はエラー判定を行わずに前記第2次検出を実施させる、請求項1に記載の記録装置。
【請求項5】
前記第1次検出において、前記移動部は前記第1方向へ第1速度で移動し、
前記第2次検出において、前記移動部は前記第2方向へ第2速度で移動し、
前記第1速度は、前記第2速度よりも高速である、請求項1に記載の記録装置。
【請求項6】
媒体を支持する媒体支持部と、
前記媒体に記録を行う記録部と、
前記媒体支持部に対して、第1軸に沿って相対的に移動する移動部と、
前記移動部に取り付けられる検出部と、
制御部と、を備える記録装置を用いた記録方法であって、
前記検出部は、前記移動部に回動可能に連結された腕部と、前記腕部の一端に固定された接触部と、前記接触部と前記媒体との接触および非接触を検出する変位検出部と、を備え、
前記接触部は、前記第1軸と直交する第2軸において、前記媒体支持部と重ねられて配置され、
前記媒体支持部は、前記移動部に対して、前記第1軸および前記第2軸と直交する第3軸に沿って相対的に移動可能であり、
前記腕部は、前記移動部が移動する間に前記接触部が前記媒体と接触することによって、回動軸を中心として回動し、
前記変位検出部は、前記腕部の回動によって前記接触および前記非接触を検出し、
前記制御部は、第1次検出と、前記第1次検出に次ぐ第2次検出と、を前記変位検出部に実施させ、
前記第1次検出では、
前記接触部を前記第1軸に沿う第1方向へ移動させながら、前記変位検出部は前記接触および前記非接触を検出し、
前記接触が検出された場合には、前記第1方向への移動が中断され、前記媒体支持部が前記移動部に対して前記第3軸に沿って第1の距離離れてから、前記第1方向への移動が再開され、
前記第2次検出では、
前記接触部を前記第1方向と反対の第2方向へ移動させながら、前記変位検出部は前記接触および前記非接触を検出し、
前記接触が検出された場合には、前記第2方向への移動が中断され、前記媒体支持部が前記移動部に対して前記第3軸に沿って、前記非接触が検出されるまで離れてから、前記第2方向への移動が再開される、記録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置および記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷用の媒体と記録部との位置関係を調整する記録装置が知られていた。例えば、特許文献1には、印刷媒体とインクジェットヘッドとの上下方向の距離を調整するインクジェットプリンターが開示されている。該インクジェットプリンターは、上記の距離を調整するために、印刷媒体の上端の高さを検知する検知機構を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の装置では、装置を小型化することが難しいという課題があった。詳しくは、該装置は、所謂シリアル方式のプリンターであり、インクジェットヘッドを印刷媒体に対して走査させながら印刷を行う。検知部材は、インクジェットヘッドの走査範囲から外れた位置にて、保持部材の下方に取り付けられる。これにより、検知部材を、インクジェットヘッドの走査と干渉しないよう配置する必要がある。そのため、検知部材が保持部材の端部に突出して、装置を小型化することが難しくなっていた。
【0005】
また、特許文献1に記載の装置では、印刷媒体の高さの検知に要する時間を短縮することが難しいという課題もあった。詳しくは、特許文献1の段落31に記載されているように、テーブルに載置された印刷媒体に検知部材の下端部が接触するようにテーブルの高さを調整する必要があった。換言すると、テーブルの高さ調整を手動で行わなければならなかった。また、検知精度を向上させるために検知動作を繰り返すと、さらに時間がかかる場合があった。すなわち、装置の小型化と、媒体の高さ検出の時間短縮と、を両立させる記録装置が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
記録装置は、媒体を支持する媒体支持部と、前記媒体に記録を行う記録部と、前記媒体支持部に対して、第1軸に沿って相対的に移動する移動部と、前記移動部に取り付けられる検出部と、制御部と、を備え、前記検出部は、前記移動部に回動可能に連結された腕部と、前記腕部の一端に固定された接触部と、前記接触部と前記媒体との接触および非接触を検出する変位検出部と、を備え、前記接触部は、前記第1軸と直交する第2軸において、前記媒体支持部と重ねられて配置され、前記媒体支持部は、前記移動部に対して、前記第1軸および前記第2軸と直交する第3軸に沿って相対的に移動可能であり、前記腕部は、前記移動部が移動する間に前記接触部が前記媒体と接触することによって、回動軸を中心として回動し、前記変位検出部は、前記腕部の回動によって前記接触および前記非接触を検出し、前記制御部は、第1次検出と、前記第1次検出に次ぐ第2次検出と、を前記検出部に実施させ、前記第1次検出では、前記接触部を前記第1軸に沿う第1方向へ移動させながら、前記変位検出部は前記接触および前記非接触を検出し、前記接触が検出された場合には、前記第1方向への移動が中断され、前記媒体支持部が前記移動部に対して前記第3軸に沿って第1の距離離れてから、前記第1方向への移動が再開され、前記第2次検出では、前記接触部を前記第1方向と反対の第2方向へ移動させながら、前記変位検出部は前記接触および前記非接触を検出し、前記接触が検出された場合には、前記第2方向への移動が中断され、前記媒体支持部が前記移動部に対して前記第3軸に沿って、前記非接触が検出されるまで離れてから、前記第2方向への移動が再開される。
【0007】
記録方法は、媒体を支持する媒体支持部と、前記媒体に記録を行う記録部と、前記媒体支持部に対して、第1軸に沿って相対的に移動する移動部と、前記移動部に取り付けられる検出部と、制御部と、を備える記録装置を用いた記録方法であって、前記検出部は、前記移動部に回動可能に連結された腕部と、前記腕部の一端に固定された接触部と、前記接触部と前記媒体との接触および非接触を検出する変位検出部と、を備え、前記接触部は、前記第1軸と直交する第2軸において、前記媒体支持部と重ねられて配置され、前記媒体支持部は、前記移動部に対して、前記第1軸および前記第2軸と直交する第3軸に沿って相対的に移動可能であり、前記腕部は、前記移動部が移動する間に前記接触部が前記媒体と接触することによって、回動軸を中心として回動し、前記変位検出部は、前記腕部の回動によって前記接触および前記非接触を検出し、前記制御部は、第1次検出と、前記第1次検出に次ぐ第2次検出と、を前記変位検出部に実施させ、前記第1次検出では、前記接触部を前記第1軸に沿う第1方向へ移動させながら、前記変位検出部は前記接触および前記非接触を検出し、前記接触が検出された場合には、前記第1方向への移動が中断され、前記媒体支持部が前記移動部に対して前記第3軸に沿って第1の距離離れてから、前記第1方向への移動が再開され、前記第2次検出では、前記接触部を前記第1方向と反対の第2方向へ移動させながら、前記変位検出部は前記接触および前記非接触を検出し、前記接触が検出された場合には、前記第2方向への移動が中断され、前記媒体支持部が前記移動部に対して前記第3軸に沿って、前記非接触が検出されるまで離れてから、前記第2方向への移動が再開される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図8】高さ検出部の検出状態における接触板の動きを示す説明図。
【
図10】移動部、キャリッジ、およびテーブルのホーム位置を示す模式平面図。
【
図11】テーブルに対する移動部および検出部の基準位置を示す模式側面図。
【
図12】故障検出および第1次検出の動作を示すフロー図。
【
図13】故障検出および第1次検出の動作を示すフロー図。
【
図14】故障検出および第1次検出の動作を示すフロー図。
【
図22】移動部、キャリッジ、およびテーブルの第2次検出開始位置を示す模式平面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に述べる実施の形態では、媒体に記録を実行する記録装置、および該記録装置を適用する記録方法を例示して、図面を参照して説明する。
【0010】
以下の各図においては、必要に応じて相互に直交する座標軸としてXYZ軸を付し、各矢印が指す方向を+方向とし、+方向と反対の方向を-方向とする。Y軸は記録装置の前後方向に沿い、記録装置の+Y方向を前方とする。X軸は記録装置の左右方向に沿い、記録装置の+X方向を右方とする。Z軸は鉛直方向に沿う仮想軸であって、記録装置における+Z方向を上方とし、-Z方向を下方とする。X軸に沿う方向が左右方向であり、Y軸に沿う方向が前後方向であり、Z軸に沿う方向が上下方向である。なお、Y軸が本発明の第1軸に相当し、X軸が本発明の第2軸に相当し、Z軸が本発明の第3軸に相当する。
【0011】
図1に示すように、本実施形態に係る記録装置1は、本体部10,媒体支持部31m、記録ヘッド89を含む記録部80、所謂ガントリー型の移動フレームである移動部70、検出部である高さ検出部20、図示しない制御部および報知部を備える。記録装置1はインクジェットプリンターであるが、本発明の記録装置はこれに限定されない。
【0012】
記録装置1では、媒体Mに対して記録ヘッド89から液体が吐出される。これにより、記録部80は媒体Mに記録を行う。媒体Mは、例えば、紙、樹脂などのシート、不織布、ニット、布帛などの布、および立体物などである。立体物としては、衣服や靴など、装飾品、日用品、機械部品、携帯電話のケース、ゴルフボールなどの各種物体が挙げられる。
【0013】
記録装置1が媒体Mに吐出する液体としては、色材を含むインクの他、処理液、コート液などが挙げられる。例えば、上記液体として、複数種のインクを媒体Mの表面に付着させることにより、媒体Mに画像などが形成される。この場合、媒体Mは印刷媒体に相当する。
【0014】
記録装置1はテーブル31を有する。テーブル31はX軸の方向およびY軸の方向には移動しない台である。テーブル31の上面が媒体支持部31mである。媒体支持部31mは、媒体Mを載置可能な平面であり、媒体Mを支持する。媒体Mの形状およびサイズは、媒体支持部31mからはみ出さない範囲において制限されない。また、媒体Mの端が媒体支持部31mからはみ出してもよい。媒体Mの高さは、+Z方向における媒体Mのサイズに相当する。媒体Mの高さは、後述するようにテーブル31が昇降可能な範囲内で任意のサイズとすることができる。
【0015】
記録装置1は、媒体支持部31mによって媒体Mを支持、固定する。記録装置1は、媒体支持部31mに支持された媒体Mの上方で記録ヘッド89を走査させて、記録ヘッド89から媒体Mに液体を吐出する。
【0016】
本体部10は、床などの記録装置1の設置面に固定される台座である。移動部70は、本体部10に対してY軸に沿って移動する。
【0017】
本体部10は、ベース部11、媒体支持機構30、および駆動機構50を備える。ベース部11は、記録装置1の設置面に固定され、記録装置1の各部を支持する。
図1では、Y軸に沿って一対の棒状のベース部11が並べて配置された例を示す。
【0018】
媒体支持機構30は、テーブル31、および高さ調整機構32を備える。テーブル31は、矩形の平板と、平板の四隅に配置された4本のテーブル脚部31nとを有する。上記平板の上面が媒体支持部31mである。高さ調整機構32により、テーブル31および媒体支持部31mは、移動部70に対してZ軸に沿って移動可能となっている。
【0019】
高さ調整機構32は、昇降モーター33、昇降ベルト37、および昇降機構39を備える。高さ調整機構32は、媒体支持部31mをZ軸に沿う方向に移動させる。昇降機構39は、4本のテーブル脚部31nの各々に設けられる。
【0020】
昇降機構39は、図示しない、Z軸に沿って配置されるボールねじ、ボールねじに螺合するナット、およびプーリーを有する。昇降機構39のボールねじは、ベース部11に回転可能に支持される。昇降機構39のナットは、テーブル脚部31nに固定される。昇降機構39のプーリーは、ボールねじの上部に固定される。昇降機構39のプーリーが回転すると、ボールねじが回転し、ボールねじの回転に伴いナットとともにテーブル脚部31nがZ軸に沿って移動する。
【0021】
昇降モーター33は、後述する制御部90の制御にしたがって回転するモーターである。制御部90は、昇降モーター33の回転方向、および回転量を制御する。昇降ベルト37は、昇降モーター33の出力軸、および4つの昇降機構39のプーリーに掛け渡される環状のベルトである。昇降モーター33が回転することによって昇降ベルト37が循環駆動される。昇降ベルト37は、昇降モーター33の回転を4つの昇降機構39のプーリーに伝達する。これにより、昇降機構39のボールねじが回転して、テーブル31がZ軸に沿って移動する。
【0022】
昇降モーター33の回転方向は、テーブル31を上方に移動させる正方向、およびテーブル31を下方に移動させる逆方向に切り替え可能である。記録装置1では、昇降モーター33を動作させることにより、テーブル31が上昇または下降する。
【0023】
駆動機構50は、第1ガイド軸51a、第2ガイド軸51b、およびフレーム駆動部60を有する。第1ガイド軸51aおよび第2ガイド軸51bは、一対のベース部11に掛け渡されてY軸に沿って配置される。第1ガイド軸51aはベース部11の左側の端部に固定され、第2ガイド軸51bはベース部11の右側の端部に固定される。
【0024】
移動部70は、メインフレーム71、第1脚部73a、第2脚部73b、および記録部80を含む。移動部70は、媒体支持部31mに対して、Y軸に沿って相対的に移動する。
【0025】
メインフレーム71は、X軸に沿う方向に長い板状の部材である。メインフレーム71の左右方向のサイズは、ベース部11よりも大きい。第1脚部73aは第1ガイド軸51aに嵌合し、第1ガイド軸51aに沿って移動可能である。第2脚部73bは第2ガイド軸51bに嵌合し、第2ガイド軸51bに沿って移動可能である。メインフレーム71は、第1脚部73a、および第2脚部73bの上に固定され、第1脚部73aおよび第2脚部73bによって下方から支持される。第1脚部73aはメインフレーム71の左端部に位置し、第2脚部73bはメインフレーム71の右端部に位置する。メインフレーム71は、第1脚部73aおよび第2脚部73bと共に、第1ガイド軸51aおよび第2ガイド軸51bにガイドされて、Y軸に沿って移動する。
【0026】
フレーム駆動部60は、フレーム移動モーター61、伝達ベルト63、変速機構65、および伝達ベルト67を備える。
【0027】
フレーム移動モーター61は、後述する制御部90の制御にしたって回転するモーターである。伝達ベルト63は、フレーム移動モーター61の出力軸と変速機構65との間に掛け渡される環状のベルトであり、フレーム移動モーター61の駆動力を変速機構65に伝達する。変速機構65は、第1のプーリーおよび第2のプーリーを有し、第1のプーリーには伝達ベルト63が巻き掛けられ、第2のプーリーには伝達ベルト67が巻き掛けられる。変速機構65は、伝達ベルト63から第1のプーリーに伝達される駆動力によって、第2のプーリーを回転させて伝達ベルト67を駆動する。変速機構65は、第1のプーリーと第2のプーリーとの径の比に対応する減速比にて、フレーム移動モーター61の駆動力を伝達ベルト67に伝達する。
【0028】
伝達ベルト67は、変速機構65と、ベース部11の-Y方向の端部に配置されるプーリー13と、に掛け渡される環状のベルトである。プーリー13は、ベース部11に対し回転自在に設置される。伝達ベルト67は、第1ガイド軸51aに沿って配置される。伝達ベルト67には、ベルト接続部79aを介して第1脚部73aが固定される。そのため、伝達ベルト67が循環駆動されることにより、第1脚部73aに対して、第1脚部73aをY軸に沿って移動させる動力が作用する。これにより、移動部70はY軸に沿って移動する。
【0029】
フレーム移動モーター61の回転方向は、メインフレーム71を+Y方向に移動させる正方向、およびメインフレーム71を-Y方向に移動させる逆方向に切り替え可能である。記録装置1では、フレーム移動モーター61を動作させることにより、メインフレーム71が前方および後方に移動する。
【0030】
移動部70の第2脚部73bの移動は、第2ガイド軸51bによってガイドされる。そのため、メインフレーム71は、第1ガイド軸51aおよび第2ガイド軸51bに沿って、+Y方向および-Y方向に平行移動する。+Y方向が本発明の第1方向に対応し、-Y方向が本発明の第1方向と反対の第2方向に対応する。なお、本発明においては、第1方向を-Y方向とし、且つ第2方向を+Y方向としてもよい。
【0031】
メインフレーム71には、キャリッジ支持フレーム81、伝達機構82、キャリッジガイド軸83、およびキャリッジ駆動モーター87が設置される。記録部80は、キャリッジ88および記録ヘッド89を含む。
【0032】
キャリッジ支持フレーム81は、X軸に沿う方向に長い板状の部材である。キャリッジ支持フレーム81には、X軸に沿ってキャリッジガイド軸83が固定される。キャリッジ88は、キャリッジ支持フレーム81およびキャリッジガイド軸83によって支持され、キャリッジガイド軸83に沿って移動可能である。キャリッジ88がX軸に沿って移動する範囲において、左端の位置をホームポジションとする。ホームポジションには、記録ヘッド89のフラッシングやクリーニングなどのメンテナンスを行うための機構が配置されている。
図1では、キャリッジ88のホームポジションを破線で示している。
【0033】
キャリッジ駆動ベルト85は、キャリッジ支持フレーム81の左端部に配置された伝達機構82と、キャリッジ支持フレーム81の右端部に配置された不図示のプーリーと、に掛け渡された環状のベルトである。キャリッジ駆動ベルト85は、キャリッジガイド軸83に沿って配置される。
【0034】
キャリッジ駆動モーター87は、図示しない制御部90の制御にしたがって回転するモーターである。伝達機構82は、プーリー82a、2段プーリー82b、およびベルト82cを有する。
【0035】
プーリー82aは、キャリッジ駆動モーター87の出力軸に固定される。ベルト82cは、プーリー82aと2段プーリー82bとに掛け渡される環状のベルトである。2段プーリー82bは、小プーリーと、小プーリーより径が大きい大プーリーとを有する。大プーリーにはベルト82cが巻き掛けられ、小プーリーにはキャリッジ駆動ベルト85が巻き掛けられる。ベルト82cは、キャリッジ駆動モーター87の回転に伴い循環駆動して、2段プーリー82bの大プーリーを回転させる。2段プーリー82bの小プーリーは、大プーリーとともに回転し、キャリッジ駆動ベルト85を循環駆動させる。これらにより、キャリッジ駆動モーター87の回転は、2段プーリー82bにおける大プーリーと小プーリーとの径の比に相当する減速比にて、キャリッジ駆動ベルト85に伝達される。
【0036】
キャリッジ駆動ベルト85にはキャリッジ88が連結される。そのため、キャリッジ駆動ベルト85が循環駆動されると、キャリッジ88はX軸に沿って移動する。キャリッジ88には、記録ヘッド89が搭載される。キャリッジ88がX軸に沿って移動すると、記録ヘッド89は、左右方向、すなわちX軸に沿う方向に移動する。また、メインフレーム71がY軸に沿って移動すると、記録ヘッド89は前後方向、すなわちY軸に沿う方向に移動する。したがって、記録装置1では、テーブル31に対して、記録ヘッド89を前後方向および左右方向に移動させることが可能となる。そのため、テーブル31に支持される媒体Mに対して、インクなどの液体を吐出し、所望の位置に付着させることができる。
【0037】
記録ヘッド89は、液体を吐出する図示しない複数のノズルを有する。これらのノズルは、記録ヘッド89の下端面において開口している。記録ヘッド89がノズルから液体を吐出すると、吐出された液体は、記録ヘッド89の下端面と、テーブル31に載置された媒体Mとの間を飛行し、媒体Mに着弾する。
【0038】
ここで、記録ヘッド89の下端と媒体Mとの間の距離を、記録ギャップと呼ぶ。媒体Mに対して高品質な記録を行うため、記録装置1は、記録ギャップの大きさを調整する機能を有する。詳しくは、記録装置1は、昇降モーター33を動作させてテーブル31、すなわち媒体支持部31mを上昇または下降させることにより、記録ギャップが適切な大きさになるよう調整を行う。上記の調整は、後述する制御部によって自動で実施されてもよく、使用者の指示に応じて実施されてもよい。
【0039】
高さ検出部20は移動部70に取り付けられる。高さ検出部20は、テーブル31に載置された媒体Mの高さを検出する。媒体Mの高さとは、Z軸に沿う方向における媒体Mの上端の位置をいう。記録装置1では、媒体Mの高さを検出して上記記録ギャップを調整する。
【0040】
高さ検出部20は、メインフレーム71の下端から下方に突出して配置される接触板24を有する。接触板24は、X軸に沿う方向に長い板状の部材であり、後述するように、メインフレーム71に対して変位可能に取り付けられる。高さ検出部20は接触板24の変位を検出する。
【0041】
接触板24、詳しくは後述する接触部24aは、Y軸と直交するX軸において、媒体支持部31mと重ねられて配置される。すなわち、X軸において媒体支持部31mが位置する範囲Wと、接触板24とが重なっている。そのため、接触板24を利用して、媒体支持部31mに載置された媒体Mの全体に対し、記録ヘッド89に対する相対的な位置を検知できる。
【0042】
図2は、高さ検出部20の斜視図である。
図3は高さ検出部20の要部の拡大斜視図であり、高さ検出部20の左端部ELを拡大して示している。
図4は、高さ検出部20の要部の拡大斜視図であり、高さ検出部20の右端部ERを拡大して示している。
図5は、高さ検出部20の側面図である。
【0043】
高さ検出部20は、支持部21、支持部22、回動軸23、接触部24aを含む接触板24、および変位検出部25を備える。支持部21は、高さ検出部20の左端部ELにおいて、接触板24を支持する。支持部22は、高さ検出部20の右端部ERにおいて、接触板24を支持する。
【0044】
支持部21は、ブラケット21aおよび連結部21bを有する。ブラケット21aは、メインフレーム71の下端部に固定される。連結部21bは、ブラケット21aから-Y方向に延びる板状部である。接触板24の左側の端部は、回動軸23によって連結部21bに取り付けられる。
【0045】
支持部22は、ブラケット22a、連結部22b、および突起22cを有する。ブラケット22aは、メインフレーム71の下端に固定される。連結部22bは、ブラケット22aから-Y方向に延びる板状部である。接触板24の右側の端部は、回動軸23によって連結部22bに取り付けられる。突起22cは、連結部22bの後端部に設けられる突起部である。
【0046】
左端部ELにおいて、回動軸23は、連結部21bに対して接触板24を回動自在に支持する。右端部ERにおいても同様に、回動軸23は、連結部22bに対して接触板24を回動自在に支持する。これにより、接触板24は、一対の回動軸23において、回動自在にメインフレーム71に取り付けられる。接触板24の下端部は、+Y方向に折り曲げられる。この部分が接触部24aである。
【0047】
変位検出部25は、高さ検出部20の左端部ELに設けられる。変位検出部25は、アーム26および変位センサー27を含む。アーム26は、接触板24に連結されて、接触板24から-Y方向に延在する。アーム26は本発明の腕部の一例である。アーム26は接触板24と一体に形成されてもよい。高さ検出部20は、アーム26と、アーム26の一端に固定または連結された接触板24および接触部24aと、を備える。アーム26は、移動部70に回動可能に連結される。接触部24aは、接触板24の略下方の端に設けられる。
【0048】
変位センサー27は、連結部21bに取り付けられる。アーム26の先端であるアーム先端部26aは、変位センサー27に向けて折り曲げられる。
【0049】
メインフレーム71が前方または後方に移動する間に、接触板24が媒体Mまたはテーブル31に接触すると、接触板24は回動軸23を中心として回動する。このとき、アーム26は、接触板24の回動に伴って変位する。変位センサー27は、アーム26の変位を検出する。
【0050】
ここで、
図3および
図4では、媒体Mおよびテーブル31に対して、接触板24が接触していない状態を示している。この状態を通常状態という。通常状態における接触板24およびアーム26の位置を、非接触時位置とする。
【0051】
図4に示すように、右端部ERにおいて、接触板24にはばね支持部28が設けられる。ばね支持部28は、接触板24に連結され、接触板24から-Y方向に延びる部材である。ばね支持部28は接触板24と一体であってもよい。ばね支持部28には穴が穿設され、この穴と突起22cとの間に、ばね29が取り付けられる。ばね29は、引っ張りコイルばねであり、ばね支持部28に対して突起22cに向けて張力を与える。
【0052】
ばね29は、ばね支持部28に対して記録装置1の後方に向けて張力を与える弾性部材の一例である。ばね29を、ゴム等の弾性部材によって代替してもよい。
【0053】
ばね29は、ばね支持部28に対して突起22cに近づくように張力を付与する。ばね支持部28が突起22cに最も近づくのは、接触板24が媒体Mおよびテーブル31に接触していない通常状態であり、非接触時位置である。接触板24が非接触時位置から回動すると、ばね29の張力は、接触板24を通常状態に復帰させる方向に作用する。このように、ばね29は、接触板24を非接触時位置に維持する作用と、接触板24が回動した場合に接触板24を非接触時位置に復帰させる作用と、を有する。
【0054】
変位検出部25の変位センサー27は、接触部24aと、媒体Mまたはテーブル31との接触および非接触を検出する。変位センサー27は、アーム26が非接触時位置から変位したことを検知可能なセンサーであればよい。変位センサー27としては、例えば、磁気センサー、反射型の光センサー、透過型の光センサーなどが挙げられる。
【0055】
なお、レーザーを用いるセンサーは、コストアップに成り易いため、それ以外のセンサーを用いることが好ましい。また、従来技術では、回動量を検知する変位センサーが適用されている。該変位センサーはロータリースケールおよび検出器を含む構成となる。ロータリースケールは、コストが嵩み易くなることに加えて、塵埃やインクミストの付着による検出不具合の発生も懸念される。これに対して、変位検出部25では、簡易な構成でコストが低減され、良好な検出性能が維持される。
【0056】
図3および
図5に示すように、本実施形態では、変位センサー27として透過型の光センサーを適用している。変位センサー27は、発光部27aおよび受光部27bを有する。発光部27aは、LED(light Emitting Diode)などの光源を有し、受光部27bに向けて光を発する。受光部27bは、受光素子を有し、発光部27aが発する光を受光して、受光した光量に対応する検出値を出力する。ここで、発光部27aが発する光の経路を光経路Lとする。
【0057】
発光部27aと受光部27bとの間には、アーム先端部26aが出入り可能な空間が設けられる。非接触時位置において、アーム先端部26aは、発光部27aと受光部27bとの間に位置して光経路Lを遮る。接触板24が、例えば媒体Mまたはテーブル31に接触して回動すると、接触板24と共にアーム26が回動する。そして、アーム26が回動することによってアーム先端部26aが光経路Lから逸脱すると、受光部27bが受光する光量が増大する。
【0058】
接触板24、アーム26、およびばね支持部28は一体となって、回動軸23を中心として回動する。Y軸に沿う方向において、接触板24、アーム26、およびばね支持部28の重量は、通常状態で水平となるように調整されていることが好ましい。詳しくは、
図5に示すように、回動軸23の中心から+Y方向の部分MS1の質量と、回動軸23の中心から-Y方向の部分MS2の質量と、がほぼ同一であることが好ましい。
【0059】
この場合、接触板24が媒体Mおよびテーブル31のいずれにも接触していないときに、接触板24およびアーム26が非接触時位置で安定するという利点がある。また、接触板24が媒体Mおよびテーブル31のいずれかに接触した場合に、接触板24がアーム26と共に非接触時位置から容易に回動するという利点もある。
【0060】
図6および
図7は、高さ検出部20の検出状態の説明図である。
図8は、高さ検出部20の検出状態における接触板24の動きを示す説明図である。
図6および
図7では、移動部70が移動する間に接触板24が媒体Mに接触したときの状態を示している。
図6では、移動部70の移動方向をD1方向としている。D1方向は+Y方向に相当する。
図7では、移動部70の移動方向をD2方向としている。D2方向は-Y方向に相当する。
【0061】
図6に示す状態では、接触部24aが媒体Mの後方から媒体Mに接触する。
図6の状態から移動部70がD1方向に移動すると、接触部24aが媒体Mに接触することにより、接触板24は、回動軸23を中心として回転方向R1へ回動する。回転方向R1は、接触板24の下方かつ後方である。
【0062】
図7に示す状態では、接触部24aが媒体Mの前方から媒体Mに接触する。
図7の状態から移動部70がD2方向に移動すると、接触部24aが媒体Mに接触することにより、接触板24は、回動軸23を中心として回転方向R2へ回動する。回転方向R2は、接触板24の上方かつ前方である。
【0063】
図6および
図7のいずれの状態においても、移動部70が移動を継続することによって、アーム26が変位して光経路Lから逸脱する。これにより、接触板24が回動したことを変位センサー27が検知する。すなわち、変位検出部25は、アーム26の回動によって、接触部24aと媒体Mまたはテーブル31との接触および非接触を検出する。Z軸に沿う方向において、媒体Mの位置は、接触部24aが媒体Mに接触した際の媒体支持部31mの位置から算出される。媒体支持部31mの上記位置は、後述するテーブル位置センサーによって検出され、制御部にて媒体MのZ軸に沿う位置が計算される。これにより、媒体MのZ軸に沿う方向の位置である高さが測定されて、記録ギャップが調整可能となる。
【0064】
ここで、接触部24aと媒体Mとの接触が軽微である場合には、アーム26の変位も軽微となる。この場合にはアーム26は光経路Lから逸脱せず、変位検出部25では接触が検出されない。この光経路Lが遮られない程度の軽微な接触、換言すれば軽微な接触がある場合の光経路Lの遮光状態は、後述する第2次検出にて利用される。なお、本明細書では、変位検出部25において、接触が検出されない程度の接触を軽微な接触とし、接触が検出される接触を単に接触として区別する。
【0065】
図6に示すように、移動部70がD1方向に移動する間に接触板24が媒体Mに接触すると、接触板24の回動に伴って接触部24aが下降する。この下降量について
図8を参照して説明する。
【0066】
図8では、回動軸23の軸中心を回転中心23cとしている。回転中心23cは接触板24の回動の中心である。ここで、Z軸に沿う方向において、接触部24aの下端の位置を位置P1,P2としている。位置P1は、通常状態における接触部24aの位置であり、非接触時位置である。位置P2は、接触部24aの回動範囲において最も低い位置である。位置P1と位置P2との差を高さHとする。高さHの大きさは、
図8に符号RRで示す接触部24aの先端の回転半径に対応して定まる。
【0067】
移動部70がD1方向に移動する間に、接触部24aは、媒体Mまたはテーブル31と接触することによって、回動軸23を中心として回動する。これにより、接触部24aは高さHの分だけ下降する。このとき、接触部24aとテーブル31とが近接している場合、接触部24aが回動することによって、接触部24aがテーブル31または媒体Mに接触する可能性がある。この状態から、さらに移動部70がD1方向に移動すると、接触部24aがテーブル31の上面または媒体Mに引っかかる可能性がある。
【0068】
そこで、記録装置1は、後述するように移動部70がD1方向に移動する場合に、接触部24aとテーブル31との間に、高さHと同じか、高さHより大きいギャップを確保する。これにより、接触部24aがテーブル31の上面や媒体Mに引っかかる事態を回避できる。
【0069】
図9は、記録装置1の制御系の機能的構成を示すブロック図である。制御部90は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)などのプロセッサー、および記憶部を備える。制御部90の記憶部は、揮発性のメモリーおよび不揮発性記憶部を有する。揮発性のメモリーは、例えば、RAM(Random Access Memory)である。不揮発性記憶部は、ROM(Read Only Memory)、ハードディスク、フラッシュメモリーなどで構成される。制御部90は、記憶部が記憶するプログラムを実行することにより、記録装置1の各部を統合的に制御する。
【0070】
制御部90にはインターフェイス(I/F)91が接続される。インターフェイス91は、ケーブルを利用する有線通信、または無線通信回線を利用する無線通信を実行する通信装置である。インターフェイス91は、図示しないホストコンピューターと通信を実行して記録データを受信する。記録データは、記録装置1が媒体Mに記録する画像や文字などのデータ、記録装置1の稼働を指示するコマンド、およびその他のデータを含む。
【0071】
制御部90には、昇降モーター33、フレーム移動モーター61、キャリッジ駆動モーター87、および記録ヘッド89が電気的に接続される。制御部90には、フレーム位置センサー92、テーブル位置センサー93、キャリッジ位置センサー94、および変位センサー27も電気的に接続される。
【0072】
フレーム位置センサー92は、Y軸に沿う方向におけるメインフレーム71の位置を検出する。例えば、フレーム位置センサー92は、第1ガイド軸51aに沿って配置されるリニアエンコーダーである。
【0073】
テーブル位置センサー93は、Z軸におけるテーブル31の位置を検出する。テーブル位置センサー93は、例えば、昇降モーター33の回転量を検出するロータリーエンコーダー、あるいは昇降機構39のボールねじの回転量を検出するロータリーエンコーダーである。
【0074】
キャリッジ位置センサー94は、X軸に沿う方向におけるキャリッジ88の位置を検出する。例えば、キャリッジ位置センサー94は、キャリッジガイド軸83に沿って配置されるリニアエンコーダーである。
【0075】
制御部90は、フレーム位置センサー92、テーブル位置センサー93、およびキャリッジ位置センサー94の検出値に基づいて、メインフレーム71の位置、テーブル31の位置、およびキャリッジ88の位置を特定する。
【0076】
制御部90は、インターフェイス91が受信した記録データに基づいて、各モーターを動作させる。詳しくは、制御部90は、フレーム移動モーター61の回転方向の切り替え、およびフレーム移動モーター61の回転の開始と停止とを制御して、移動部70をY軸に沿って移動させる。制御部90は、昇降モーター33の回転方向の切り替え、および昇降モーター33の回転の開始および停止を制御して、テーブル31をZ軸に沿って移動させる。制御部90は、キャリッジ駆動モーター87の切り替え、およびキャリッジ駆動モーター87の回転の開始および停止を制御して、キャリッジ88をX軸に沿って移動させる。これらの制御において、制御部90は、フレーム位置センサー92、テーブル位置センサー93、およびキャリッジ位置センサー94の検出値を利用する。
【0077】
制御部90は、インターフェイス91が受信した記録データに基づいて、記録ヘッド89を動作させることにより、液体を吐出させる。
【0078】
制御部90は、テーブル31に媒体Mが載置された状態で、記録ギャップの調整を行う。制御部90は、フレーム移動モーター61を動作させてメインフレーム71をD1方向またはD2方向に移動させる。制御部90は、変位センサー27の検出値に基づいて、アーム26が変位したか否かを判定することによって、接触板24が媒体Mまたはテーブル31に接触したか否かを判定する。制御部90は、接触板24が媒体Mまたはテーブル31に接触したと判定した場合に、昇降モーター33を動作させて、テーブル31を下降させる。
【0079】
制御部90には、報知部99が電気的に接続される。報知部99は、例えば、記録装置1の外装筐体などに設置される表示パネルである。報知部99では、記録装置1に係わる様々な情報が表示されて使用者に報知される。特に、制御部90は、報知部99を介して、高さ検出部20によって実施される、媒体Mの高さの検出結果を使用者に報知する。これにより、使用者の利便性が向上する。なお、報知部99は表示パネルに限定されず、音声などによって上記検出結果を報知するものであってもよい。
【0080】
以下、
図10から
図30を参照して、媒体Mの高さ検出の詳細について説明する。制御部90は、故障検出と、高さ検出としての第1次検出および第1次検出に次ぐ第2次検出と、を高さ検出部20に実施させる。第1次検出では、媒体支持部31m上の媒体Mの大まかな高さが検出される。第2次検出では、媒体支持部31m上の媒体Mの詳細な高さが検出される。
【0081】
ここで、本実施形態の記録装置1による記録方法は、故障検出および高さ検出に特徴を有する。故障検出および高さ検出以外のその他の記録方法には、公知の記録方法が適用可能であり、その他の記録方法に関する説明は省略する。なお、以下に述べる検出のフローは一例であって、これに限定されるものではない。
【0082】
ここで、
図10から
図30のうちの模式平面図および模式側面図では、要部のみを図示して、その他の構成は図示を省略している。上記模式側面図の説明では、特に断りがない限り、-X方向から側面視した状態を述べることとする。また、上記模式側面図では、Z軸に沿う方向において、接触部24aの下端の位置を破線にて示している。ここで、接触部24aの下端は、媒体Mやテーブル31との接触によりZ軸に沿う方向の位置が変わる場合がある。そのため、図示した接触部24aの下端と破線とは必ずしも重ならない。さらに、
図10から
図30のうちのフロー図では、上述した記録ギャップを「PG」とし、接触部24aを「センサー」としている。
【0083】
故障検出は、高さ検出部20の不具合を確認するために、高さ検出の第1次検出に先行して実施されることが好ましい。高さ検出部20の不具合としては、アーム26の変形や変位センサー27の異常などが挙げられる。これにより、高さ検出部20の故障が事前に把握可能となるため、使用者の利便性を向上させることができる。
【0084】
制御部90は、テーブル位置センサー93の検出値に基づいて昇降モーター33を動作させることによって、テーブル31の位置を基準位置に調整する。テーブル31の基準位置は、予め設定された高さであり、例えば、媒体Mがシートである場合に適切な記録ギャップが確保される場合のテーブル31のZ軸における位置である。
【0085】
故障検出について述べる。故障検出は、以下の基準位置かつホーム位置から開始される。
図10に示すように、制御部90は、上記基準位置へテーブル31の高さを調整すると共に、移動部70の-Y方向への移動と、キャリッジ88を-X方向へ移動させる。+Z方向からの平面視にて、
図10に示す移動部70およびキャリッジ88の位置がホーム(Home)位置である。
【0086】
図11は、基準位置およびホーム位置におけるテーブル31と高さ検出部20との配置を示している。このとき、-Y方向からの側面視にて、接触部24aとテーブル31とは近接しているが重なってはいない。なお、故障検出は、後述する第2次検出開始位置から開始されてもよい。
【0087】
故障検出に先立ち、故障検出および高さ検出の準備が実施される。具体的には、
図12に示すように、工程S101から工程S110を実施して高さ検出の開始位置を調整する。
【0088】
先ず、使用者がテーブル31に媒体Mをセットした後に、工程S101が実施される。工程S101では、キャリッジ88がホーム位置にあるか否かが確認される。キャリッジ88がホーム位置にある場合には、工程S105へ進む。キャリッジ88がホーム位置にない、つまりホーム外にある場合には、工程S102へ進む。なお、工程S101は、使用者の記録開始の指示に応じて自動的に開始されてもよく、記録開始前に使用者の指示により開始されてもよい。
【0089】
工程S102では、キャリッジ88のホーム位置への移動可否が使用者に対して確認される。工程S102は、テーブル31の媒体支持部31m上の媒体Mと、キャリッジ88と共に移動する接触部24aとの接触による媒体Mの損傷を防ぐために実施される。使用者が移動可と判断してその旨を記録装置1に入力した場合(YES)には、工程S103へ進む。使用者が移動不可と判断してその旨を記録装置1に入力した場合(NO)には、工程S104へ進む。
【0090】
工程S103では、移動部70の移動によって、キャリッジ88がホーム位置へ移動する。この移動は、センサー監視付き移動とする。センサー監視付き移動とは、高さ検出部20による媒体Mと接触部24aとの接触を監視しながら移動部70を移動させることをいう。そして、工程S101の前段へ戻る。
【0091】
工程S104では、キャリッジ88の位置不良により、使用者に対して媒体Mの再セットが要求される。この場合、使用者に対して、媒体Mのテーブル31へのセットし直しが要求される。記録装置1は待機状態となり、工程は一旦終了となる。
【0092】
媒体Mの再セットが要求された場合には、使用者はテーブル31のカバーを開放してから、媒体Mをテーブル31から取り出す。その後、記録装置1のリセット動作を実施してから、媒体Mをテーブル31に再びセットする。そして、工程S101の前段から工程を再度実施させる。ここで、工程S101にてキャリッジ88がホーム外にある場合に、工程S102へ進まずに、直接的に工程S104に進むフローであってもよい。
【0093】
工程S105では、移動部70がホーム位置にあるか否かが確認される。移動部70がホーム位置にある場合には、工程S109へ進む。移動部70がホーム位置にない、すなわちホーム外にある場合には、工程S106へ進む。
【0094】
工程S106では、移動部70のホーム位置への移動可否が使用者に対して確認される。工程S106は、工程S102と同様にして、テーブル31上の媒体Mと、キャリッジ88と共に移動する接触部24aとの接触による媒体Mの損傷を防ぐために実施される。使用者が移動可と判断してその旨を記録装置1に入力した場合(YES)には、工程S107へ進む。使用者が移動不可と判断してその旨を記録装置1に入力した場合(NO)には、工程S108へ進む。
【0095】
工程S107では、移動部70がホーム位置へ移動する。この移動は、センサー監視付き移動とする。そして、工程S101の後段かつ工程S105の前段へ戻る。
【0096】
工程S108では、移動部70の位置不良により、使用者に対して媒体Mの再セットが要求される。この場合、使用者に対して、媒体Mのテーブル31へのセットし直しが要求される。記録装置1は待機状態となり、工程は一旦終了となる。
【0097】
媒体Mの再セットが要求された場合には、使用者はテーブル31のカバーを開放してから、媒体Mをテーブル31から取り出す。その後、記録装置1のリセット動作を実施してから、媒体Mをテーブル31に再びセットする。そして、工程S105の前段から工程S105を再度実施させる。ここで、工程S105にて移動部70がホーム外にある場合には、工程S106へ進まずに、直接的に工程S108に進むフローとしてもよい。
【0098】
工程S109では、テーブル31がホーム位置にあるか否かが確認される。テーブル31がホーム位置にある場合には、
図13に示す工程S111へ進む。テーブル31がホーム位置にない、すなわちホーム外にある場合には、工程S110へ進む。
【0099】
工程S110では、テーブル31を上昇させてホーム位置へ移動させる。この移動はセンサー監視付き移動とする。ここで、工程S110におけるテーブル31の移動は、Z軸に沿う移動であり、上述した移動部70の移動は、Y軸に沿う移動である。そして、工程S105の後段かつ工程S109の前段へ戻る。
【0100】
次に故障検出が実施される。具体的には、
図13示すように、工程S111から工程S117により故障検出を実施する。
【0101】
工程S111では、テーブル31を故障確認位置まで上昇させる。この状態を
図15に示す。故障確認位置とは、Z軸に沿う方向の位置であり、-Y方向からの側面視にて、接触部24aとテーブル31の側面とが重なる位置である。故障確認位置は、制御部90の記憶部に予め記憶されている。そして工程S112へ進む。
【0102】
工程S112では、移動部70をセンサー監視付き移動にて、テーブル31と接触部24aとが接触するように+Y方向へ移動させる。工程S112における移動部70の+Y方向への移動は、テーブル31の-Y方向の側面と接触部24aとが接触する位置に対して、さらに+αmmだけ+Y方向へ進む位置までとする。ここでいう、+αmmとは、例えば0.1mmから5.0mmである。そして工程S113へ進む。
【0103】
工程S113では、接触部24aとテーブル31との接触が検出されたか否かが確認される。
図16に示すように、接触が検出できた場合には、制御部90はその位置を把握する。そして、制御部90は、両者が接触した際に、ホーム位置からの移動部70の移動距離が、予め記憶された移動量以内であるか否かを確認する。所定の移動量内である場合には、高さ検出部20に問題はないと判定される。この判定結果は、上述した報知部99を介して使用者に報知される。これにより、故障検出が終了して、
図14に示す工程S118へ進む。
【0104】
所定の移動量を超える場合、あるいは接触が検出できない場合には、高さ検出部20などの故障や不具合、テーブル31のホーム位置への移動の不備、移動部70の移動の動作不良、および接触部24aにおけるチャタリングの発生などが想定される。接触部24aとテーブル31の側面との接触が検出できない場合には、工程S114へ進む。
【0105】
工程S114では、故障検出のリトライの可否が確認される。接触部24aとテーブル31との接触が検出されない要因は、上述したように複数想定される。そのため、即座にエラーと判定するのではなく、故障検出のリトライを実施する。リトライの実施が可能である場合には、工程S115へ進む。リトライの実施が不可能である場合には、工程S117へ進む。
【0106】
工程S115では、移動部70を-Y方向のホーム側へ移動させる。これにより、接触部24aとテーブル31とがより離間する。そして工程S116へ進む。
【0107】
工程S116では、テーブル31をホーム位置へ移動させる。この移動はセンサー監視付き移動とする。そして工程S110の後段かつ工程S111の前段に戻る。なお、工程S116から戻る故障検出のリトライのフローでは、工程S111に続く工程S112において、移動部70の+Y方向への移動速度を初回の移動速度よりも低速とすることが好ましい。
【0108】
工程S117では、接触検出故障エラー、すなわち故障検出にて不具合の発生が認識される。この場合、報知部99を介して使用者に故障の懸念が報知されて記録装置1は待機状態となり一旦終了となる。以上により故障検出が終了する。
【0109】
第1次検出について述べる。故障検出に次いで第1次検出が実施される。第1次検出では、接触部24aをY軸に沿う+Y方向へ移動させながら、変位検出部25が接触部24aと媒体Mとの接触および非接触を検出する。上記接触が確認された場合には、+Y方向への移動が中断される。そして、テーブル31の媒体支持部31mが、移動部70に対してZ軸に沿って第1の距離離れてから、+Y方向への移動部70の移動が再開される。具体的には、
図14に示すように、第1次検出として工程S118から工程S127が実施される。
【0110】
第1次検出のセンサー監視付き移動において、移動部70は+Y方向へ第1速度で移動する。また、後述する第2次検出のセンサー監視付き移動において、移動部70は-Y方向へ第2速度で移動する。第1速度は第2速度よりも高速である。特に限定されないが、例えば第1速度は2インチ/秒であり、第2速度は1インチ/秒である。
【0111】
第1次検出では媒体Mの大まかな高さを検出すればよいため、比較的に高速な第1速度を適用する。これにより、第1次検出に要する時間をさらに短縮することができる。第2次検出では媒体Mの詳細な高さを検出するため、比較的に低速な第2速度を適用する。これにより、第2次検出の検出精度を向上させることができる。
【0112】
工程S118および続く工程S119では、第1次検出を実施するためにテーブル31を下降させる。具体的には、工程S118として、
図17に示すようにテーブル31を第1次検出の開始位置まで下降させる。第1次検出開始位置とは、媒体支持部31mと接触部24aであるセンサーとの隙間が0.5mmとなる位置である。次に、工程S119として、
図18に示すように媒体Mの高さがゼロとなる位置まで、さらにテーブル31を下降させる。工程S119は、薄手の媒体Mに対応するための工程である。そして工程S120へ進む。
【0113】
工程S120では、第1次検出が開始される。具体的には、移動部70をセンサー監視付き移動にて+Y方向へ移動させる。図示を省略するが、移動部70の移動は、+Z方向からの平面視にて、移動部70がテーブル31の媒体支持部31mよりも+Y方向へ外れる位置までとする。そして工程S121へ進む。
【0114】
工程S121では、工程S120のセンサー監視付き移動にて、高さ検出部20により媒体Mと接触部24aとの接触が検出されたか否かが確認される。
図19に示すように、接触が検出できた場合には工程S122へ進む。+Z方向からの平面視にて、媒体Mの全範囲を移動部70が通過しても接触が検出できなかった場合には、工程S124へ進む。
【0115】
工程S122では、移動部70の移動を停止して、テーブル31を
図20に示すように下降させる。このとき、第1の距離だけテーブル31を下降させる。第1の距離は、例えば2mmである。このとき、媒体Mとの接触によって接触部24aでのチャタリングの発生を防ぐため、工S122でのテーブル31の移動はセンサー監視付き移動としない。そして工程S123へ進む。
【0116】
工程S123では、制御部90の記憶部は、テーブル31の移動実績に第1の距離分、ここでは2mm分を加算して記憶する。そして工程S120に戻り、再び第1次検出が実施される。このフローは、工程S121にて接触部24aと媒体Mとの接触が検出されなくなり、+Z方向からの平面視にて媒体Mの全範囲を移動部70が通過するまで繰り返し行われる。
【0117】
工程S124では、
図21に示すように、移動部70が第1次検出の終了位置まで移動を完了したことを検出する。上記終了位置とは、Y軸に沿う方向において、テーブル31よりも接触部24aが+Y方向にある位置である。そして工程S125へ進む。
【0118】
工程S125では、高さ検出の実績が確認される。具体的には、工程S121の高さ検出において接触部24aと媒体Mとの接触が検出されたか否かが確認される。接触の検出実績がある場合には工程S127へ進み、接触の検出実績がない場合には工程S126へ進む。
【0119】
工程S126では、媒体Mが、厚さ0.5mm以下の薄手であると判定される。詳しくは、第1次検出において、接触部24aと媒体Mとの接触が検出されずに移動部70の+Y方向への移動が終了した場合には、制御部90はエラー判定を行わずに第2次検出を実施させる。これにより、媒体Mが薄手であると判定されて、工程S127へ進む。
【0120】
ここで、公知の技術では、記録ギャップの調整に時間および労力を要していた。特に、媒体Mが薄手である場合には、媒体Mの高さ設定が難しく、使用者のミスによる不具合発生の懸念もあった。これに対して、本実施形態の記録装置1およびその記録方法では、第1次検出にて媒体Mが薄手であるか否かが判定され、さらに続く第2次検出にて精密に高さが検出される。これらの工程が自動で進行するめ、使用者によるミスが発生し難く、使用者の負担が軽減される。
【0121】
工程S127では、媒体Mの概高さが算出される。詳しくは、高さ検出部20が接触を検出した際の、テーブル31の媒体支持部31mのZ軸に沿う位置、すなわち制御部90が記憶するテーブル移動実績から、媒体Mの上端の大まかな高さが計算される。制御部90は、第1次検出の検出結果を、上述した報知部99を介して使用者に報知する。以上により、第1次検出が完了する。
【0122】
第2次検出について述べる。第1次検出に次いで第2次検出が実施される。第2次検出では、接触部24aをY軸に沿う-Y方向へ移動させながら、変位検出部25が接触部24aと媒体Mとの接触および非接触を検出する。上記接触が確認された場合には、-Y方向への移動が中断される。そして、テーブル31の媒体支持部31mが、移動部70に対してZ軸に沿って接触が検出されなくなるまで、すなわち非接触が検出されるまで離れてから、-Y方向への移動部70の移動が再開される。なお、ここでいう検出される非接触には、上述した軽微な接触も含まれる。
【0123】
第2次検出は、
図22に示す配置である第2次検出開始位置から開始される。上記配置は、+Z方向からの平面視にて、第1次検出の工程S127が終了した際の配置でもある。これにより、第1次検出の終了後に移動部70をホーム位置へ戻す時間を省くことができる。なお、第1次検出を
図22に示した位置から開始して、第2次検出をホーム位置から開始してもよい。この場合には、移動部70がY軸に沿って移動する方向は、正負が逆となる。
【0124】
第2次検出では、
図23および
図24に示すように、工程S201から工程S220が実施される。
【0125】
工程S201では、第1次検出の検出結果が取得される。このとき、高さ検出部20およびテーブル31は、第2次検出開始位置にあり、-X方向からの側面視では
図25に示す位置関係にある。そして工程S202へ進む。
【0126】
工程S202では、テーブル31を接触部24aと媒体Mとが接触する推定位置まで上昇させる。このとき、上記推定位置は、第1次検出の検出結果である大まかな媒体Mの高さに基づく位置であり、接触部24aと媒体Mとが必ず接触する位置である。テーブル31の移動量は、例えば2mmである。そして工程S203へ進む。
【0127】
工程S203では、移動部70をセンサー監視付き移動にて-Y方向へ移動させて、媒体Mの高さ検出を行う。移動部70の移動は、第1速度よりも低速な第2速度とする。このとき、接触部24aは、媒体Mと軽微に接触していてもよい。特に、フィルム状などの薄手の媒体Mでは、軽微な接触とすることが好ましい。そして工程S204へ進む。
【0128】
工程S204では、工程S203の移動部70の移動にて、高さ検出部20における高さ検出、すなわち接触部24aと媒体Mとの接触が検出されたか否かが確認される。接触が検出されない場合(NO)には、工程S205へ進む。
図26に示すように、接触が検出された場合(YES)には、工程S206へ進む。
【0129】
工程S205では、高さ検出部20に故障が発生したと判定される。工程S204は、必ず接触が検出される状態で実施されることから、接触が検出されない場合には故障などの不具合の発生が想定される。そして、使用者に故障発生の懸念があることが報知される。記録装置1は待機状態となり、工程は一旦終了となる。
【0130】
工程S206では、移動部70の移動を減速させてから停止させる。このとき、チャタリングの発生を抑えるために、停止の前に移動を減速させる。そして工程S207へ進む。
【0131】
工程S207では、テーブル31を
図27に示すように下降させる。このとき、テーブル31の下降は、高さ検出部20にて接触が検出されない位置、換言すれば非接触が検出される位置までとし、媒体Mと接触部24aとが軽微に接触した状態とする。第2次検出にて軽微な接触のまま工程S203を進行させる場合には、接触部24aにてチャタリングが発生し易くなる。特に、接触が検出された際に媒体Mに対して接触部24aを離間させると、チャタリングが発生する可能性が高い。そのため、上述した様に、テーブル31の下降させる際に、軽微な接触の状態を維持することが好ましい。そして工程S208へ進む。
【0132】
工程S208では、テーブル31がホーム位置にあるか否かが確認される。テーブル31がホーム位置にある場合(YES)には、工程S209へ進む。テーブル31がホーム位置にない場合(NO)には、
図28に示すように、移動部70のセンサー監視付き移動が再開されて工程S210へ進む。このとき、センサー監視付き移動は、軽微な接触を維持したままとする。
【0133】
工程S09では、媒体Mの保証外エラーと判定される。そして、使用者に保証外エラーが報知されて、記録装置1は待機状態となり工程は一旦終了となる。
【0134】
工程S210では、再開された移動部70の移動にて、高さ検出部20における媒体検出、すなわち接触部24aと媒体Mとの接触が未検出であるか否かが確認される。接触が未検出でない場合(NO)には工程S211へ進む。接触が未検出である場合(YES)には工程S212へ進む。
【0135】
工程S211では、高さ検出部20に故障が発生したと判定される。そして、使用者に故障発生の懸念があることが報知される。記録装置1は待機状態となり、工程は一旦終了となる。
【0136】
工程S212では、テーブル31の移動を減速させてから停止させる。そして
図24の工程S213へ進む。
【0137】
工程S213では、
図29に示すように移動部70をセンサー監視付き移動にて、さらに-Y方向へ移動させる。そして工程S214へ進む。
【0138】
工程S214では、移動部70が-Y方向へ移動して、+Z方向からの平面視にてテーブル31の外である-Y方向に達したか否かが確認される。移動部70がテーブル31の内側、すなわち上記平面視にてテーブル31と重なる場合には、
図23の工程S203の後段かつ工程S204の前段に戻る。移動部70がテーブル31の外側、すなわち上記平面視にてテーブル31よりも-Y方向にある場合には、工程S215へ進む。
【0139】
工程S215では、移動部70をホーム位置に移動させる。そして工程S216へ進む。
【0140】
工程S216では、制御部90にて、テーブル31の高さ、すなわち媒体支持部31mのZ軸に沿う位置から、媒体Mの高さが算出される。そして工程S217へ進む。制御部90は、第2次検出の検出結果を、上述した報知部99を介して使用者に報知する。
【0141】
工程S217では、媒体Mの高さから設定すべき記録ギャップが取得される。そして工程S218へ進む。
【0142】
工程S218では、取得された設定すべき記録ギャップの設定の可否が確認される。設定が可能である場合(YES)には、工程S220へ進む。設定が不可能である場合(NO)には、工程S219へ進む。
【0143】
工程S219では、媒体Mの保証外エラーまたは記録ギャップエラーと判定される。そして、使用者にその旨が報知される。記録装置1は待機状態となり、工程は一旦終了となる。
【0144】
工程S220では、
図30に示すようにテーブル31を下降させて、記録ヘッド89の下端と媒体Mとの間の距離を、上記記録ギャップの設定値に合わせる。以上により、故障検出および高さ検出が完了して、適切な記録ギャップが設定され、媒体Mへの記録動作が可能となる。
【0145】
本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0146】
記録装置1の小型化と媒体Mの高さ検出の時間短縮とを両立させることができる。詳しくは、接触部24aは、X軸に沿う方向において媒体支持部31mと重なる位置にある。そのため、例えば、X軸に沿う方向において移動部70から突出する位置に高さ検出部20を設ける必要がない。これにより、媒体支持部31mの周囲に突出する部材を配置せずに、媒体Mの高さ検出が可能となる。
【0147】
第1次検出により媒体Mのおおよその高さが検出されるため、従来技術では手動で行っていた高さ調整が省略される。そして、第2次検出により媒体Mの詳細な高さが検出される。第1次検出と第2次検出とは制御部90によって自動で実施されるため、使用者の利便性も向上する。また、第1次検出と第2次検出とでは、接触部24aの移動方向が逆方向である。そのため、第1次検出の終了後に、第1次検出を開始した位置に移動部70および接触部24aを戻すことなく、第2次検出が開始される。これにより、媒体Mの高さ検出の時間を短縮することが可能となる。
【0148】
さらには、第1次検出および第2次検出を行うことから、高さ検出の時間を短縮した上で、高さ検出の精度を向上させることが可能となる。以上から、小型化と媒体Mの高さ検出の時間短縮とを両立させ、高さ検出の精度を向上させる記録装置1、および記録方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0149】
1…記録装置、20…検出部としての高さ検出部、24a…接触部、25…変位検出部、26…腕部としてのアーム、31m…媒体支持部、70…移動部、80…記録部、90…制御部、99…報知部、M…媒体。