(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136665
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】表示装置および光学モジュール
(51)【国際特許分類】
G09G 3/36 20060101AFI20240927BHJP
G02F 1/133 20060101ALI20240927BHJP
G02F 1/13357 20060101ALI20240927BHJP
G02B 26/12 20060101ALI20240927BHJP
G09G 3/34 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
G09G3/36
G02F1/133 535
G02F1/133 550
G02F1/13357
G02B26/12
G09G3/34 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047851
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】森田 晶
【テーマコード(参考)】
2H045
2H193
2H391
5C006
5C080
【Fターム(参考)】
2H045AA01
2H045AA03
2H193ZA02
2H193ZC24
2H193ZG03
2H193ZG05
2H193ZG11
2H193ZG14
2H193ZG16
2H193ZG46
2H193ZG57
2H193ZG58
2H193ZP16
2H193ZR02
2H391AA03
2H391AA22
2H391AB02
2H391AB04
2H391AB08
2H391AB21
2H391AB45
2H391AC32
2H391BA12
2H391BA13
2H391CB07
2H391CB52
2H391EA22
5C006AF69
5C006BB16
5C006BB28
5C006BC06
5C006EA01
5C006EC11
5C006FA11
5C006FA22
5C006FA23
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5C006FA33
5C006FA47
5C080AA10
5C080BB05
5C080DD05
5C080DD06
5C080DD08
5C080DD18
5C080DD26
5C080FF12
5C080JJ02
5C080JJ03
5C080JJ06
(57)【要約】
【課題】液晶の劣化やフリッカー等の発生を抑制し、動画の視認性を向上させる。
【解決手段】表示装置1は、水平走査および垂直走査によって画像を生成する液晶パネル100と、記水平走査の方向に拡がる帯状の光Beを液晶パネル100に、垂直走査の方向にスキャンして照射する光照射部60と、液晶パネル100および光照射部60を制御する制御部50と、を含む。制御部50は、光照射部60における光Beの照射位置を、液晶パネル100の水平走査の位置に重ならないように制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平走査および垂直走査によって画像を生成する液晶パネルと、
前記水平走査の方向に拡がる帯状の光を、前記垂直走査の方向にスキャンして前記液晶パネルに照射する光照射部と、
前記液晶パネルおよび前記光照射部を制御する制御部と、
を含み、
前記制御部は、
前記液晶パネルの水平走査および垂直走査を制御し、
前記光照射部における光の照射位置を、前記液晶パネルの水平走査の位置に重ねないで制御する
表示装置。
【請求項2】
前記光照射部は、
前記水平走査の方向に沿った軸を中心に回転し、前記軸から放射状に前記光を出射する1または2以上の光源体と、
前記光源体と前記液晶パネルとの間に配置され、前記光源体から出射した光を略平行化して前記液晶パネルに入射させる光学系と、
を有する請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記軸を中心にして回転する際に、
前記液晶パネルに光を照射できない期間では、当該光源体がオフにされる
請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記光源体と前記液晶パネルとの間に配置され、前記液晶パネルに照射される光量密度が、前記液晶パネルにおける前記垂直走査の方向の位置に応じて変化するのを補正する光学系、
を有する請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
前記光照射部は、
前記光を帯状に出射する光源体と、
前記水平走査の方向に沿った軸を中心に回転し、外周が反射性を有するポリゴンミラーと、
前記ポリゴンミラーと前記液晶パネルとの間に配置され、前記ポリゴンミラーで反射した光を略平行化して前記液晶パネルに入射させる光学系と、
を有する請求項1に記載の表示装置。
【請求項6】
前記光照射部は、
前記光を帯状に出射する光源体と、
前記水平走査の方向に沿った軸を中心に回転し、内部が中空であって内形または外形の少なくとも一方で、前記中空に設けられた前記光源体から出射された光を屈折させる回転体と、
を有する請求項1に記載の表示装置。
【請求項7】
水平走査および垂直走査によって画像を生成する液晶パネルと、
前記水平走査の方向に拡がる帯状の光を、前記垂直走査の方向にスキャンし、前記液晶パネルの水平走査の位置に対して重ねないで前記液晶パネルに照射する光照射部と、
を含む 光学モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置および光学モジュールに関する。
【0002】
液晶パネルを用いた表示装置は、一垂直走査期間にわたって画像が保持される。このため、次の垂直走査期間に移行しても、前の垂直走査期間における画像を視覚したときの記憶が残存するために、動きのある画像が、ぎくしゃくしたり、輪郭がぼやけたりして知覚される。
一方、CRTのように画像が瞬間的に表示されるインパルス型の表示装置では、前の垂直走査期間で表示された画像の記憶が、次の垂直装置期間に移行したときには、もはや残存していないので、動画ぼやけ感は発生しない。
そこで、液晶パネルを用いた表示装置において、インパルス型の表示態様に似せるべく、線順次的に映像に応じた電圧を画素回路に書き込んだ後、黒色画像を表示させる、いわゆる黒挿入の技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
動画ぼやけ感を、より確実に抑えるためには、黒色画像の表示期間を長くすれば良いが、このためには、動きのある画像が視認される期間を短くしなければならず、動きのある画像が暗く視認されてしまう。これを避けるためには、液晶パネルに入射させる光源の強度を高めればよいが、光源の強度を高めることに起因して、光の照射に起因する液晶の劣化やフリッカー等が発生してしまう、という課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る表示装置は、水平走査および垂直走査によって画像を生成する液晶パネルと、前記水平走査の方向に拡がる帯状の光を、前記垂直走査の方向にスキャンして前記液晶パネルに照射する光照射部と、前記液晶パネルおよび前記光照射部を制御する制御部と、を含み、前記制御部は、前記液晶パネルの水平走査および垂直走査を制御し、前記光照射部における光の照射位置を、前記液晶パネルの水平走査の位置に重ねないで制御する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態に係る表示装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】表示装置の液晶パネルにおける水平走査の位置と光照射の位置との関係を示す図である。
【
図3】液晶パネルの電気的な構成を示すブロック図である。
【
図4】液晶パネルにおける画素回路の構成を示す図である。
【
図6】光照射部における発光体の構成を示す図である。
【
図10】第2実施形態に係る表示装置の光照射部を示す図である。
【
図11】第2実施形態の変形例に係る表示装置の光照射部を示す図である。
【
図12】第2実施形態の光照射部におけるポリゴンミラーの別例を示す図である。
【
図13】第3実施形態に係る表示装置の光照射部を示す図である。
【
図14】第3実施形態の光照射部における回転体を示す図である。
【
図18】第3実施形態の光照射部における回転体の別例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態に係る表示装置について図面を参照して説明する。なお、各図において、各部の寸法および縮尺は、実際のものと適宜に異ならせてある。また、以下に述べる実施の形態は、好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本開示の範囲は、以下の説明において特に本開示を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0008】
図1は、実施形態に係る表示装置1の構成を示すブロック図である。
この図に示されるように表示装置1は、制御部50、光照射部60および液晶パネル100を含む。
【0009】
制御部50には、図示省略されたホストから、映像データVidおよび同期信号Syncが供給される。映像データVidは、ユーザーUに視認させる映像を示すデジタルのデータであり、同期信号Syncに含まれる垂直同期信号および水平同期信号に同期して制御部50に供給される。
【0010】
制御部50は、映像データVidおよび同期信号Syncに応じて光照射部60および液晶パネル100を制御する。詳細には、制御部50は、映像データVidをアナログのデータ信号Vadに変換して、制御信号Ctrとともに液晶パネル100に供給する。制御信号Ctrには、液晶パネル100の垂直走査および水平走査を制御する信号が含まれる。また、制御部50は、光照射部60に制御信号Ctr_Vを供給して、光照射部60による光照射を制御する。
【0011】
光照射部60は、液晶パネル100に、水平走査方向に延在するライン状の光Beを照射するものであり、当該光Beを液晶パネル100の垂直走査方向に、制御信号Ctr_Vにしたがってスキャンする。なお、光照射部60の詳細な構成については後述する。
【0012】
液晶パネル100は、例えば透過型であり、データ信号Vadに応じた画像を、制御信号Ctrにしたがって生成する。
液晶パネル100によって画像が生成されるが、当該画素のうち、ユーザーUに視認されるのは、光照射部60によって光Beが照射された部分である。換言すれば、光照射部60から出射した光Beが液晶パネル100によって透過率が変調され、当該変調された光がユーザーUによって視認される。
なお、液晶パネル100であれば、実際には、液晶パネル100において光Beの入射面と出射面とに偏光板が設けられるが、図において省略されている。
【0013】
図2は、液晶パネル100における走査と光照射部60によって照射される光Beのとの関係を示す図である。
なお、図においてX方向は、液晶パネル100の水平走査の方向であり、後述する走査線の延在方向である。また、Y方向は、液晶パネル100の垂直走査の方向であり、後述するデータ線の延在方向である。
【0014】
図において、液晶パネル100における水平走査の位置Wpは、すなわちデータ信号が供給される画素回路の行の位置は、上端から下端まで、垂直走査の方向であるY方向に移動する。そして、水平走査の位置Wpが下端に到達すると、走査帰線期間を経た後に、水平走査の位置Wpは、上端からY方向にむかって再度、移動を開始する。なお、液晶パネル100における水平走査の位置Wpの繰り返し周期は、例えば垂直走査期間に等しい。
【0015】
光照射部60によって照射される光Beの液晶パネル100への照射位置は、制御信号Ctr_Vによって制御される。
詳細には、水平走査が液晶パネル100の上端で開始した後、一垂直走査期間が経過する前に、光Beの照射位置は、液晶パネル100の上端からY方向に移動を開始する。また、水平走査が液晶パネル100の下端に達した後、一垂直走査期間が経過する前に、光Beの照射位置は、液晶パネル100の下端に到達する。すなわち、光Beの照射位置は、水平走査の位置Wpとは重ならないでY方向に移動する。
【0016】
図3は、液晶パネル100の電気的な構成を示すブロック図である。液晶パネル100には、表示領域10の周縁に、走査線駆動回路130およびデータ線駆動回路140が設けられる。
【0017】
液晶パネル100の表示領域10においては、画素回路110がマトリクス状に配列される。詳細には、表示領域10において、複数本の走査線12が図において横方向であるX方向に延在して設けられ、また、複数本のデータ線14が縦方向であるY方向に延在し、かつ、走査線12と互いに電気的な絶縁を保って設けられる。そして、複数本の走査線12と複数本のデータ線14との交差に対応して画素回路110がマトリクス状に設けられる。
なお、平面視でみれば、表示領域10は、液晶パネル100の一部になるので、厳密にいえば、液晶パネル100への光Beの照射位置と表示領域10への照射位置と同義ではない。ただし、本説明においては液晶パネル100への光Beの照射は、表示領域10への光Beの照射と同義とする。
【0018】
走査線12の本数をmとし、データ線14の本数をnとした場合、画素回路110は、縦m行×横n列でマトリクス状に配列する。m、nは、いずれも2以上の整数である。走査線12と画素回路110とにおいて、マトリクスの行を区別するために、図において上から順に1、2、3、…、(m-1)、m行と呼ぶ場合がある。同様にデータ線14および画素回路110において、マトリクスの列を区別するために、図において左から順に1、2、3、…、(n-1)、n列と呼ぶ場合がある。
【0019】
走査線駆動回路130は、制御回路20による制御にしたがって、走査線12を、Y方向に、1、2、3、…、(m-1)、m行目という順番で選択する。なお、走査線駆動回路130は、選択した走査線12への走査信号をHレベルとし、選択した走査線12以外の走査線12への走査信号をLレベルとする。
【0020】
データ線駆動回路140は、例えばデータ信号を1行分ラッチするとともに、走査線12への走査信号がHレベルとなった期間において、当該走査線12に位置する画素回路110に、データ線14を介して出力する。
【0021】
図4は、隣り合う2本の走査線12と、隣り合う2本のデータ線14との交差に対応する縦2行横2列の計4個の、画素回路110の等価回路を示す図である。
図に示されるように、画素回路110は、トランジスター116と液晶素子120とを含む。トランジスター116は、例えば、nチャネル型の薄膜トランジスターである。画素回路110において、トランジスター116のゲートノードは、走査線12に接続される一方、そのソース領域はデータ線14に接続され、そのドレイン領域は、平面視で正方形形状の画素電極118に接続される。
【0022】
画素電極118に対向するようにコモン電極108が全画素に対して共通に設けられる。コモン電極108には例えば電圧LCcomが印加される。そして、画素電極118とコモン電極108との間には周知のように液晶105が挟持される。したがって、画素回路110毎に、画素電極118およびコモン電極108によって液晶105を挟持した液晶素子120が構成される。
また、液晶素子120に対して並列に蓄積容量109が設けられる。蓄積容量109において、一端が画素電極118に接続され、他端が容量線107に接続されている。容量線107は、時間的に一定の電圧、例えばコモン電極108への印加電圧と同じ電圧LCcomが印加される。画素回路110は、走査線12の延在方向である横方向とデータ線14の延在方向である縦方向とにわたってマトリクス状に配列するので、画素回路110に含まれる画素電極118についてもX方向およびY方向にわたってマトリクス状に配列する。
【0023】
走査信号がHレベルとなった走査線12では、当該走査線12に対応して設けられる画素回路110のトランジスター116がオンする。トランジスター116のオンにより、データ線14と画素電極118とが電気的に接続された状態となるので、データ線14に供給されたデータ信号が、オンしたトランジスター116を介して画素電極118に到達する。走査線12がLレベルになると、トランジスター116はオフになるが、画素電極118に到達したデータ信号の電圧は、液晶素子120の容量性および蓄積容量109によって保持される。
【0024】
周知のように、液晶素子120では、画素電極118およびコモン電極108によって生じる電界に応じて液晶分子の配向が変化する。したがって、液晶素子120は、印加された電圧の実効値に応じた透過率となる。
こうして、走査信号がHレベルとなった走査線12に対応する1行分の画素回路110では、データ信号Vadの電圧に応じた透過率になる動作、すなわち、1行分の水平走査が実行される。
【0025】
なお、液晶素子120において画素として機能する領域、すなわち、電圧の実効値に応じた透過率となる領域は、液晶パネル100を平面視したときに、画素電極118とコモン電極108とが重なる領域である。画素電極118は、平面視で正方形であるので、液晶パネル100による画素の形状も正方形となる。
【0026】
液晶素子120の画素電極118にデータ信号を供給する動作が、一垂直走査期間において、Y方向に向かって1、2、3、…、m行目という順番で実行される。このような動作によってm行n列で配列する画素回路110の液晶素子120の各々にデータ信号に応じた電圧が保持されて、各液晶素子120が目的とする透過率となり、m行n列で配列する液晶素子120によって透過像が生成される。
【0027】
図5は、光照射部60の構成を説明するための図であり、
図6は、光照射部60における光源体610の一例を示す図である。
【0028】
図5に示されるように、光照射部60は、X方向と平行な軸Cを中心に図において時計回りに回転して、X方向に沿った帯状の光を出射する光源体610と、光源体610から出射した光を液晶パネル100に導く光学系630と、を含む。
軸Cは、液晶パネル100のX方向と一致し、かつ、液晶パネル100のXY平面に対する垂直平面であって、液晶パネル100(表示領域10)の中心を通過する垂直平面に含まれる。
なお、光源体610の回転は、図示省略された駆動部によって制御信号Ctr_Vにしたがって、液晶パネル100における垂直走査と同期して制御される。
【0029】
光源体610は、1または2個以上の発光体612を有する。発光体612は、例えばLED、有機EL、レーザー、電球などが用いられる。なお、発光体612としては、光の出射方向に指向性を有するものが好ましい。
発光体612は、2個以上であれば、水平走査方向であるX方向に沿ってライン状に配置され、X方向に沿った帯状の光を出射する。発光体612の単体における輝度が十分であれば、光源体610を構成する発光体612は1個で足りる。
【0030】
光源体610が軸Cを中心に回転すると、光源体610から出射する光は、軸Cに垂直方向の径方向に出射する。液晶パネル100では、液晶素子120の透過率が、光の入射角によって変化する性質を有することがある。このため、回転する光源体610から出射する光をそのまま液晶パネルに入射させる構成では、光Beの照射位置によって液晶パネル100への入射角度が異なってしまう。
そこで、液晶パネル100と光源体610との間に、光学系630が設けられる。光学系630は、光源体610から角度θaの範囲で出力された光を、略平行化して液晶パネル100に入射させる。
【0031】
なお、角度θaは、光源体610が軸Cを中心に回転した場合に、液晶パネル100の上端から下端まで略平行化して照射することが可能な角度範囲をいう。なお、角度ゼロの基準は、光源体610による光Beの照射方向が、液晶パネル100のXY平面に対する垂直方向と一致する場合である。
また、本説明において略平行化とは、厳密な平行ではなく、±4度の差、好ましく±2度の差を許容する趣旨である。この程度の角度差があっても、角度依存による透過率の差がユーザーUに視認されにくいためである。
【0032】
光源体610が軸Cを中心に回転する場合、光源体610の角度θaの範囲内にあれば、オンして発光し、範囲外にあれば、オフして非発光に制御される。この制御によって、無駄な発光が抑制されて低消費電力化が図られる。
【0033】
また、軸Cを中心に回転する光源体610は、
図5に示されるように1個に限れず、複数個、例えば
図7に示されるように、軸Cに対して90度ずつ出射方向をずらした光源体610が4個設けられた構成としてもよい。このような構成では、角度θaの範囲内にある光源体610の発光体612だけがオンして発光し、他の光源体610の発光体612は、オフして非発光に制御される。
【0034】
周知のように液晶素子120における電気/光学応答性、すなわち液晶素子120に電圧を印加してから当該電圧に応じた透過率に到達するまでの応答時間は、他の素子に比較て遅い。
しかしながら、第1実施形態に係る表示装置1によれば、水平走査によって液晶素子120に電圧が印加されてから、ある程度の時間が経過して後に、当該液晶素子120に光Beが照射されてユーザーUに視認される。このため、電圧に応じた透過率に近い状態の画素をユーザーUに視認させることできる。
【0035】
また、表示装置1によれば、液晶パネル100に光Beが照射される期間が、バックライトや光源等によって光を表示領域10の全域において常に照射される構成と比較として、短縮される。このため、実施形態では、光の照射に起因する液晶の劣化やフリッカー等の発生が抑制される。
【0036】
液晶素子120のようなホールド型の素子で動画を表示させると、いわゆる「ぼやけ」が生じて、動画視認性が悪い。
これに対して、表示装置1では、ユーザーUが画素を視認する期間は、光照射部60によって光Beが照射される期間だけであるので、インパルス発光に近い挙動になる。このため、実施形態に係る表示装置1によれば、動画の視認性を改善することができる。
【0037】
ところで、光照射部60において光源体610が軸Cを中心に回転する構成では、液晶パネル100に照射される光Beの輝度が、すなわち単位時間当たりの照射光量が、液晶パネル100への照射位置に応じて異なってしまう。この点について
図8を参照して説明する。
【0038】
なお、
図8において、光源体610の角度について時計回りを正とする。
光源体610の回転角速度が一定の場合、軸Cを中心とする円Crcと、光源体610から出射する光方向との交点における周速度Vは円周方向に沿った方向であり、その大きさは一定である。
液晶パネル100に対し、光BeによるY方向の走査速度Vyは、周速度Vのうち、Y方向の成分である。角度が0度の場合に、走査速度Vyは最大になる。角度が絶対値よりも大きくなるにつれて、周速度VのうちY方向の成分が小さくなるので、走査速度Vyは遅くなる。例えば、角度が+45度または-45度である場合の走査速度Vyは、角度が0度である場合の走査速度Vyに対しての70.7%(=1/√2)になる。
【0039】
走査速度Vyが遅ければ、光Beが液晶パネル100に対してY方向に移動する速度が遅くなるので、単位時間当たりの光量密度が高くなる。すなわち、光Beの光量密度は、液晶パネル100(表示領域10)の上端および下端において最大になり、表示領域10の中心において最低になる。この光量密度の変化は、ユーザーUが視認する画面の明るさに差が生じることを意味する。
【0040】
そこで、
図9に示されるように、光源体610と液晶パネル100との間に、光学系630に代えて、光量密度の変化を小さくさせる光学系635を設けてもよい。
光学系635は、例えば曲面の中心が軸Cに向く凸メニスカスレンズ637と、同じく曲面の中心が軸Cに向く平凹レンズ639と、を、軸Cからみて順に配置する構成である。なお、光が出射する割合は、例えば凸メニスカスレンズ637における面Lの曲率で調整される。
【0041】
光照射部60は、光源体610を回転させる構成に限られず、種々の構成が考えられる。そこで、光照射部60の構成を変更した第2実施形態について説明する。
【0042】
図10は、第2実施形態に係る表示装置1のうち、光照射部60の構成を示す図である。この図に示されるように、第2実施形態では、光照射部60が、光源体610、ポリゴンミラー640および光学系632を含む。
第2実施形態において、光源体610は、回転せずに固定である。ポリゴンミラー640は、X方向に平行な軸Cを中心に、図において時計回りに回転する多角柱であって、表面が鏡面である。
【0043】
ポリゴンミラー640で反射した光が液晶パネル100に直接入射すると、液晶パネル100の照射位置に応じて入射角が変化する。このため、上述したように液晶パネル100の透過率が入射角に応じて変化してしまう。これを防止するために、ポリゴンミラー640と液晶パネル100との間に、光学系632が配置されて、ポリゴンミラー640の反射光を、液晶パネル100への入射角が垂直になるように補正する。
光学系632は、例えば、凸面が液晶パネル100に向く平凸レンズである。
【0044】
このような構成によって、光源体610から出射した光は、ポリゴンミラー640で反射し、液晶パネル100に垂直方向で入射して、Y方向に走査する。
なお、第2実施形態において、ポリゴンミラー640の回転角度によっては、液晶パネル100に光Beが照射不可能な期間が発生する。このため、第2実施形態では、第1実施形態と同様に、光Beが照射不可能な期間において、光源体610の発光体612(
図10において省略)がオフに制御される。
【0045】
第2実施形態に係る表示装置1によれば、第1実施形態と同様に、光の照射に起因する液晶の劣化やフリッカー等の発生が抑制され、また、動画の視認性が向上する。
【0046】
なお、第2実施形態において、光照射部60の光学系632に代えて、ポリゴンミラー640からの反射光を液晶パネル100に向けて再反射させる凹面鏡634を設けてもよい。凹面鏡634は、ポリゴンミラー640からの反射光を、略平行化して、液晶パネル100への入射角度が垂直になるように補正する。
【0047】
また、
図10における光学系632におけるレンズの機能や、
図11における凹面鏡634の機能を、ポリゴンミラー640に持たせてもよい。具体的には、ポリゴンミラー640の反射面を、
図12の左欄に示されるように反射面が凸鏡である回転体640aや、
図12の右欄に示されるように反射面が凹鏡である回転体640bとしてもよい。
なお、反射面が凸鏡であれば、反射角度は、回転体640a回転角度よりも小さくなり、反射面が凹鏡であれば、反射角度は、回転体640bの回転角度の2倍よりも大きくなる。
【0048】
図13は、第3実施形態に係る表示装置1のうち、光照射部60の構成を示す図であり、
図14は、光照射部60における回転体を示す斜視図である。
図13に示されるように、第3実施形態では、光照射部60が、光源体610、回転体650および光学系630を含む。
第3実施形態において、光源体610は、回転せずに固定である。なお、固定とは、液晶パネル100に対して位置が変化しない、という意味である。
回転体650は、X方向に平行な軸Cを中心に、図において時計回りに回転する多角柱である。回転体650は、ポリゴンミラー640とは異なり、表面が鏡面ではなく、アクリルやポリカーボネートなどの透明性を有し、軸Cの中心では、
図14に示されるように、当該軸Cを中心とした円筒状で中空になっている。この中空を、便宜的に中空部652とする。
光源体610は、中空部652において、光源体610からの出射する光の方向が軸Cと垂直になるように、かつ、液晶パネル100の垂直方向に一致するように設けられる。また、回転体650の底面における外形は、図では正六角形であるが、辺数は3以上であればよい。
【0049】
第3実施形態において、回転体650が回転しても、回転体650への入射角はゼロで一定であるが、出射角が
図15、
図16および
図17に示されるように変化する。
このため、光学系630は、回転体650から出射した光を、略平行化して、液晶パネル100への入射角度が垂直になるように補正する。
したがって、第3実施形態では、光Beが、液晶パネル100にほぼ垂直方向に入射するとともに、液晶パネル100をY方向にスキャンする。このため、第3実施形態に係る表示装置1によれば、第1および第2実施形態と同様に、光の照射に起因する液晶の劣化やフリッカー等の発生が抑制され、かつ、動画の視認性が向上する。
【0050】
第3実施形態において、回転体650は
図16に示される構成に限られず、
図18に示されるように種々想定される。
【0051】
図18は、回転体650として代用可能ないくつかの回転体を、軸Cに垂直な平面に沿って破断して示す断面図である。
まず、回転体650に代えて、
図18の左上欄に示されるような、筒状の回転体650aを用いてもよい。回転体650aでは、断面の外形および内形が多角形である。回転体650aの外形における多角形の辺数と内形におけるの多角形の辺数とは同じである。また、外形における多角形の角と内形における多角形の角とは、回転中心の軸Cを始点として共通の放射線上で通過する。
なお、回転体650aは、多角形の辺数を「12」とした場合の例である。また、放射線のうち、1つの放射線をRa1とし、当該放射線Ra1に対し時計回りに30度回転した放射線をRa2とする。回転体650aの底面を放射線Ra1、Ra2で切り取った断面は、図においてハッチングで示されるように、短辺と長辺とが平行であり、短辺が、長辺よりも軸Cに近い台形Trdである。
【0052】
回転体650に代えて、
図18の右上欄に示されるような、筒状の回転体650bを用いてもよい。回転体650bでは、断面の外形が円であり、内形が多角形である。回転体650bは、内形における多角形の辺数を「12」とした場合の例である。
また、内形における多角形の12角のうち、軸Cから1つの角を通過する放射線Ra1と、当該放射線Ra1に対し時計回りに30度回転した放射線Ra2と、で回転体650bを切り取った断面は、図においてハッチングで示される通りとなる。すなわち、右上蘭に示される台形Trdのうち、長辺を、軸Cに対して凹となる円弧に置き換えた形状になる。
【0053】
回転体650に代えて、
図18の左下欄に示されるような、筒状の回転体650cを用いてもよい。回転体650cでは、断面の外形が、
図12に示される回転体640aと同様に、外側に向かって凸の円弧になっている。回転体650cの内形は、外形の円弧の曲率よりも大きな円弧であって、外側に向かって凸の円弧になっている。
なお、回転体650cでは、外形における円弧の接続部分を結んだ形状、および、回転体650cの内形における円弧の接続部分を結んだ形状は、いずれも正多角形になっている。回転体650cは、上記正多角形の辺数を「12」とした場合の例である。
外形における上記正多角形の角と内形における正多角形の角とは、回転中心の軸Cを始点とする共通の放射線を通過する。
また、外形における多角形の12角のうち、軸Cから1つの角を通過する放射線Ra1と、当該放射線Ra1に対し時計回りに30度回転した放射線Ra2と、で回転体650cを切り取った断面は、図においてハッチングで示される通りとなる。すなわち、左上蘭に示される台形Trdのうち、短辺と長辺とを、外側に向かって凸になる円弧に置き換えた形状になる。
【0054】
なお、
図18の右下欄に示されるような回転体650dは、
図13に示される回転体650と同様に、断面の内形が円であり、外形が多角形の例であるが、多角形の辺数を「12」に変更した例である。
また、外形における多角形の12角のうち、軸Cから1つの角を通過する放射線Ra1と、当該放射線Ra1に対し時計回りに30度回転した放射線Ra2と、で回転体650dを切り取った断面は、図においてハッチングで示される通りとなる。すなわち、右上蘭に示される台形Trdのうち、短辺を、軸Cに対して凹となる円弧に置き換えた形状になる。
【0055】
なお、
図18に示される回転体650b、650c、650dでは、台形Trdに短辺または長辺の少なくとも一方、もしくは、双方が円弧である。円弧の曲率によって、光Beの回転体650b、650c、650dからの出射角が定まる。好ましくは、液晶パネル100に対する光BeのY方向のスキャン速度が一定になるように円弧の曲率が設定される。このような設定では、光Beが液晶パネル100に入射する角度を一定にできない場合がある。この場合、例えば、回転体650b、650cまたは650dと、液晶パネル100との間に、入射角調整用のレンズまたはプリズムを設ける構成(図示省略)が好ましい。
【0056】
上述した第1乃至第3実施形態(以下「実施形態等」と称呼する)では、以下のように種々の変形または応用が可能である。
【0057】
実施形態等では、液晶パネル100を透過型としたが、反射型でも適用可能である。液晶パネル100が反射型であれば、ユーザーUは、液晶パネル100によって反射されたスキャン光を視認する構成になる。
液晶パネル100によって透過または反射した光をユーザーUが直視する構成としてもよいし、拡大レンズによってスクリーンに投射する構成としてもよい。
液晶パネル100によって透過または反射した光の光路をシフトさせて、擬似的に解像度を高める構成としてもよい。
【0058】
また、実施形態等において、表示装置1から制御部50を除いた構成、すなわち光照射部60と液晶パネル100とを組合せた構成は、光学モジュールとして概念することができる。
【0059】
<付記>
以上に例示した形態から、例えば以下の態様が把握される。
【0060】
ひとつの態様(態様1)に係る表示装置は、水平走査および垂直走査によって画像を生成する液晶パネルと、前記水平走査の方向に拡がる帯状の光を、前記垂直走査の方向にスキャンして前記液晶パネルに照射する光照射部と、前記液晶パネルおよび前記光照射部を制御する制御部と、を含み、前記制御部は、前記液晶パネルの水平走査および垂直走査を制御し、前記光照射部における光の照射位置を、前記液晶パネルの水平走査の位置に重ねないで制御する。
態様1によれば、光の照射に起因する液晶の劣化やフリッカー等の発生が抑制され、また、動画の視認性が向上する。
【0061】
態様1の具体的な態様(態様2)では、前記光照射部は、前記水平走査の方向に沿った軸を中心に回転し、前記軸から放射状に前記光を出射する1または2以上の光源体と、前記光源体と前記液晶パネルとの間に配置され、前記光源体から出射した光を略平行化して前記液晶パネルに入射させる光学系と、を有する。態様2によれば、照射位置が変化しても、液晶パネルへの光の入射角度を揃えることができる。
【0062】
態様2の具体的な態様(態様3)では、前記軸を中心にして回転する際に、前記液晶パネルに光を照射できない期間では、当該光源体がオフにされる。態様3によれば、無駄な発光が抑制されて低消費電力化を図ることができる。
【0063】
態様1の具体的な態様(態様4)では、前記光源体と前記液晶パネルとの間に配置され、前記液晶パネルに照射される光量密度が、前記液晶パネルにおける前記垂直走査の方向の位置に応じて変化するのを補正する光学系、を有する。照射位置によって光量密度が変化するのを抑制することができる。
【0064】
態様1の具体的な態様(態様5)では、前記光照射部は、前記光を帯状に出射する光源体と、前記水平走査の方向に沿った軸を中心に回転し、外周が反射性を有するポリゴンミラーと、前記ポリゴンミラーと前記液晶パネルとの間に配置され、前記ポリゴンミラーで反射した光を略平行化して前記液晶パネルに入射させる光学系と、を有する。態様5によれば、照射位置が変化しても、液晶パネルへの光の入射角度を揃えることができる。
【0065】
態様1の具体的な態様(態様6)では、前記光照射部は、前記光を帯状に出射する光源体と、前記水平走査の方向に沿った軸を中心に回転し、内部が中空であって内形または外形の少なくとも一方で、前記中空に設けられた前記光源体から出射された光を屈折させる回転体と、を有する。
【0066】
態様7に係る光学モジュールは、水平走査および垂直走査によって画像を生成する液晶パネルと、前記水平走査の方向に拡がる帯状の光を、前記垂直走査の方向にスキャンし、前記液晶パネルの水平走査の位置に対して重ねないで前記液晶パネルに照射する光照射部と、を含む。
【符号の説明】
【0067】
1…表示装置、50…制御部、60…光照射部、100…液晶パネル、610…光源体、612…発光体、630、640…光学系、640、640a、640b…ポリゴンミラー、650、650a、650b、650c、650d…回転体。