(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136673
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】三次元造形用データの生成方法、および、情報処理装置
(51)【国際特許分類】
B29C 64/386 20170101AFI20240927BHJP
B29C 64/118 20170101ALI20240927BHJP
B33Y 50/00 20150101ALI20240927BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240927BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20240927BHJP
【FI】
B29C64/386
B29C64/118
B33Y50/00
B33Y10/00
B33Y30/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047859
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】渡部 学
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AR07
4F213AR12
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL85
4F213WL92
(57)【要約】
【課題】造形用の材料にフィラーが含まれるか否かによらずに三次元造形物の反りを抑制する。
【解決手段】三次元造形用データの生成方法は、材料の種別に応じて予め定められた経路条件を取得する工程と、ノズルが可塑化材料を吐出しつつ移動する移動経路を複数の部分経路によって表した経路データを生成するデータ生成工程とを備える。経路データは、輪郭経路データとインフィル経路データとを含み、経路条件は、インフィル領域における部分経路の長さの上限に関する経路長条件を含む。データ生成工程は、輪郭経路データを生成する第1生成工程と、インフィル領域を複数の分割領域に分割し、各分割領域に経路パターンに従って移動経路を生成することによって、インフィル経路データを生成する第2生成工程とを有する。第2生成工程において、インフィル領域は、各分割領域に経路長条件を満たす移動経路が生成されるように分割される。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可塑化材料の層を積層することによって三次元造形物を造形するための三次元造形用データの生成方法であって、
複数の層にスライスされた前記三次元造形物の形状を表すスライスデータを取得する工程と、
前記三次元造形物の造形に用いられる材料に関する材料情報を取得する工程と、
前記材料情報に基づいて、材料の種別に応じて予め定められた経路条件を取得する工程と、
前記スライスデータに基づいて、ノズルが前記可塑化材料を吐出しつつ移動する移動経路を複数の部分経路によって表した経路データを生成するデータ生成工程と、を備え、
前記経路データは、前記三次元造形物の輪郭を含む輪郭領域を造形するための輪郭経路データと、前記輪郭領域の内側領域であるインフィル領域を造形するためのインフィル経路データと、を含み、
前記経路条件は、前記インフィル領域における前記部分経路の長さの上限に関する経路長条件を含み、
前記データ生成工程は、
前記輪郭領域に前記移動経路を生成することによって、前記輪郭経路データを生成する第1生成工程と、
前記インフィル領域を複数の分割領域に分割するとともに、各前記分割領域に、予め定められた経路パターンに従って前記移動経路を生成することによって、前記インフィル経路データを生成する第2生成工程と、を有し、
前記第2生成工程において、前記インフィル領域は、各前記分割領域に前記経路長条件を満たす前記移動経路が生成されるように分割される、三次元造形用データの生成方法。
【請求項2】
請求項1に記載の三次元造形用データの生成方法であって、
複数の前記分割領域は、第1分割領域と、前記第1分割領域に隣り合う第2分割領域と、を含み、
前記第2生成工程において、前記第1分割領域と前記第2分割領域とで、前記経路パターンの形状と向きとの少なくともいずれかが異なるように、前記インフィル経路データを生成する、三次元造形用データの生成方法。
【請求項3】
請求項2に記載の三次元造形用データの生成方法であって、
前記第2生成工程において、前記第1分割領域には、第1方向に折り返すつづら折り状の前記移動経路を生成し、前記第2分割領域には、前記第1方向と交差する第2方向に折り返すつづら折り状の前記移動経路を生成する、三次元造形用データの生成方法。
【請求項4】
請求項1に記載の三次元造形用データの生成方法であって、
前記経路データは、前記三次元造形物の最下層を含む下層領域を造形するための下層データと、前記三次元造形物の最上層を含む上層領域を造形するための上層データと、前記下層領域と前記上層領域との間の中層領域を、前記下層領域および前記上層領域よりも低密度に造形するための中層データと、を含み、
前記上層データと前記中層データと前記下層データとは、それぞれ、前記輪郭経路データと前記インフィル経路データとを含み、
前記下層領域と前記上層領域との少なくともいずれかは、第1の層と、前記第1の層と積層方向に連続する第2の層と、を含み、
前記第2生成工程において、前記積層方向に見たときに、前記第1の層における前記分割領域の境界と、前記第2の層における前記境界と、がずれるように、前記第1の層と前記第2の層との前記インフィル領域を分割する、三次元造形用データの生成方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の三次元造形用データの生成方法であって、
前記第2生成工程において、隣り合う2つの前記分割領域における前記移動経路の端同士を接続するように、前記インフィル経路データを生成する、三次元造形用データの生成方法。
【請求項6】
可塑化材料の層を積層することによって三次元造形物を造形するための三次元造形用データを生成する情報処理装置であって、
複数の層にスライスされた前記三次元造形物の形状を表すスライスデータを取得する第1取得部と、
前記三次元造形物の造形に用いられる材料に関する材料情報を取得する第2取得部と、
前記材料情報に基づいて、材料の種別に応じて予め定められた経路条件を取得する第3取得部と、
前記スライスデータに基づいて、ノズルが前記可塑化材料を吐出しつつ移動する移動経路を複数の部分経路によって表した経路データを生成するデータ生成部と、を備え、
前記経路データは、前記三次元造形物の輪郭を含む輪郭領域を造形するための輪郭経路データと、前記輪郭領域の内側領域であるインフィル領域を造形するためのインフィル経路データと、を含み、
前記経路条件は、前記インフィル領域における前記部分経路の長さの上限に関する経路長条件を含み、
前記データ生成部は、
前記輪郭領域に前記移動経路を生成することによって、前記輪郭経路データを生成する第1生成処理と、
前記インフィル領域を複数の分割領域に分割するとともに、各前記分割領域に、予め定められた経路パターンに従って前記移動経路を生成することによって、前記インフィル経路データを生成する第2生成処理と、を実行し、
前記第2生成処理において、前記インフィル領域は、各前記分割領域に前記経路長条件を満たす前記移動経路が生成されるように分割される、情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、三次元造形用データの生成方法、および、情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
三次元造形に関して、特許文献1には、フィラーを含有する材料で造形層を造形することが記載されている。このように、フィラーを含有する材料を造形に用いることで、造形物の反りを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
三次元造形では、ユーザーの利便性のために、より多様な材料を利用可能であることが好ましい。そのため、材料におけるフィラーの有無を問わずに造形物の反りを抑制できる技術が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1の形態によれば、可塑化材料の層を積層することによって三次元造形物を造形するための三次元造形用データの生成方法が提供される。この三次元造形用データの生成方法は、複数の層にスライスされた前記三次元造形物の形状を表すスライスデータを取得する工程と、前記三次元造形物の造形に用いられる材料に関する材料情報を取得する工程と、前記材料情報に基づいて、材料の種別に応じて予め定められた経路条件を取得する工程と、前記スライスデータに基づいて、ノズルが前記可塑化材料を吐出しつつ移動する移動経路を複数の部分経路によって表した経路データを生成するデータ生成工程と、を備える。前記経路データは、前記三次元造形物の輪郭を含む輪郭領域を造形するための輪郭経路データと、前記輪郭領域の内側領域であるインフィル領域を造形するためのインフィル経路データと、を含み、前記経路条件は、前記インフィル領域における前記部分経路の長さの上限に関する経路長条件を含む。前記データ生成工程は、前記輪郭領域に前記移動経路を生成することによって、前記輪郭経路データを生成する第1生成工程と、前記インフィル領域を複数の分割領域に分割するとともに、各前記分割領域に、予め定められた経路パターンに従って前記移動経路を生成することによって、前記インフィル経路データを生成する第2生成工程と、を有する。前記第2生成工程において、前記インフィル領域は、各前記分割領域に前記経路長条件を満たす前記移動経路が生成されるように分割される。
【0006】
本開示の第2の形態によれば、可塑化材料の層を積層することによって三次元造形物を造形するための三次元造形用データを生成する情報処理装置が提供される。この情報処理装置は、複数の層にスライスされた前記三次元造形物の形状を表すスライスデータを取得する第1取得部と、前記三次元造形物の造形に用いられる材料に関する材料情報を取得する第2取得部と、前記材料情報に基づいて、材料の種別に応じて予め定められた経路条件を取得する第3取得部と、前記スライスデータに基づいて、ノズルが前記可塑化材料を吐出しつつ移動する移動経路を複数の部分経路によって表した経路データを生成するデータ生成部と、を備える。前記経路データは、前記三次元造形物の輪郭を含む輪郭領域を造形するための輪郭経路データと、前記輪郭領域の内側領域であるインフィル領域を造形するためのインフィル経路データと、を含み、前記経路条件は、前記インフィル領域における前記部分経路の長さの上限に関する経路長条件を含む。前記データ生成部は、前記輪郭領域に前記移動経路を生成することによって、前記輪郭経路データを生成する第1生成処理と、前記インフィル領域を複数の分割領域に分割するとともに、各前記分割領域に、予め定められた経路パターンに従って前記移動経路を生成することによって、前記インフィル経路データを生成する第2生成処理と、を実行する。前記第2生成処理において、前記インフィル領域は、各前記分割領域に前記経路長条件を満たす前記移動経路が生成されるように分割される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】三次元造形システムの概略構成を示す説明図である。
【
図2】フラットスクリューの下面側の概略構成を示す斜視図である。
【
図4】三次元造形装置が造形物を造形する様子を模式的に示す説明図である。
【
図5】情報処理装置の概略構成を示す説明図である。
【
図9】インフィル領域が分割される様子の例を示す第1の図である。
【
図10】分割領域に移動経路が生成される様子の例を示す第1の図である。
【
図11】インフィル領域が分割される様子の例を示す第2の図である。
【
図12】インフィル領域が分割領域に分割される様子の例を示す第3の図である。
【
図13】分割領域に移動経路が生成される様子の例を示す第2の図である。
【
図14】分割領域に移動経路が生成される様子の例を示す第3の図である。
【
図15】他の形態におけるインフィル経路の例を示す第1の図である。
【
図16】他の形態におけるインフィル経路の例を示す第2の図である。
【
図17】他の形態におけるインフィル経路の例を示す第3の図である。
【
図18】他の実施形態で分割領域に移動経路が生成される様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
図1は、第1実施形態における三次元造形システム10の概略構成を示す説明図である。
図1には、互いに直交するX,Y,Z方向を示す矢印が示されている。X方向及びY方向は、水平面に平行な方向であり、Z方向は、鉛直上向きに沿った方向である。X,Y,Z方向を示す矢印は、他の図においても、図示の方向が
図1と対応するように適宜、図示してある。以下の説明において、方向の向きを特定する場合には、各図において矢印が指し示す方向を「+」、その反対の方向を「-」として、方向表記に正負の符合を併用する。以下では、+Z方向のことを「上」、-Z方向のことを「下」ともいう。また、X方向およびY方向に沿った平面のことを「XY平面」とも呼ぶ。
【0009】
三次元造形システム10は、三次元造形装置100と情報処理装置400とを備えている。三次元造形装置100は、材料押出方式によって三次元造形物を造形する装置である。以下では、三次元造形物のことを単に造形物とも呼ぶ。三次元造形装置100は、三次元造形装置100の各部を制御するための制御部300を備えている。制御部300と情報処理装置400とは、相互に通信可能に接続されている。
【0010】
三次元造形装置100は、可塑化材料を生成して吐出する造形部110と、造形物の基台となる造形用のステージ210と、可塑化材料の吐出位置を制御する移動機構230とを備える。
【0011】
造形部110は、制御部300の制御下において、固体状態の材料を可塑化させた可塑化材料をステージ210上に吐出する。造形部110は、可塑化材料に転化される前の原材料の供給源である材料供給部20と、原材料を可塑化材料へと転化させる可塑化部30と、可塑化材料を吐出する吐出部60とを備える。
【0012】
材料供給部20は、可塑化部30に原材料MRを供給する。材料供給部20は、例えば、原材料MRを収容するホッパーによって構成される。材料供給部20は、連通路22を介して可塑化部30に接続されている。原材料MRは、ペレットや粉末等の形態で材料供給部20に投入される。本実施形態では、ペレット状に形成された樹脂材料が用いられる。
【0013】
可塑化部30は、材料供給部20から供給された原材料MRを可塑化させて流動性を発現させたペースト状の可塑化材料を生成し、吐出部60へと導く。本実施形態において「可塑化」とは 、溶融を含む概念であり、固体から流動性を有する状態に変化させることである。具体的には、ガラス転移が起こる材料の場合、可塑化とは、材料の温度をガラス転移点以上にすることである。ガラス転移が起こらない材料の場合、可塑化とは、材料の温度を融点以上にすることである。
【0014】
可塑化部30は、スクリューケース31と、駆動モーター32と、フラットスクリュー40と、バレル50と、を有する。フラットスクリュー40は、ローターあるいはスクロールとも呼ばれる。バレル50は、スクリュー対面部とも呼ばれる。
【0015】
フラットスクリュー40は、スクリューケース31内に収納されている。フラットスクリュー40の上面47は駆動モーター32に連結されており、フラットスクリュー40は、駆動モーター32が発生させる回転駆動力によって、スクリューケース31内で回転する。駆動モーター32は、制御部300の制御下において駆動する。なお、フラットスクリュー40は、減速機を介して駆動モーター32によって駆動されてもよい。
【0016】
図2は、フラットスクリュー40の下面48側の概略構成を示す斜視図である。
図2に示したフラットスクリュー40は、
図1に示した上面47と下面48との位置関係を鉛直方向において逆向きとした状態で示されている。フラットスクリュー40は、その中心軸に沿った方向である軸線方向における長さが、軸線方向に垂直な方向における長さよりも小さい略円柱状を有する。フラットスクリュー40は、その回転中心となる回転軸RXがZ方向に平行になるように配置される。
【0017】
フラットスクリュー40の、回転軸RXと交差する面である下面48には、渦状の溝部42が形成されている。上述した材料供給部20の連通路22は、フラットスクリュー40の側面から、当該溝部42に連通する。本実施形態では、溝部42は、凸条部43によって隔てられて3本分形成されている。なお、溝部42の数は、3本に限られず、1本でもよいし、2本以上であってもよい。溝部42は、渦状に限らず、螺旋状あるいはインボリュート曲線状であってもよいし、中央部から外周に向かって弧を描くように延びる形状であってもよい。
【0018】
図1に示すように、フラットスクリュー40の下面48は、バレル50の上面52に対面しており、フラットスクリュー40の下面48の溝部42と、バレル50の上面52との間には空間が形成される。フラットスクリュー40とバレル50との間のこの空間には、材料供給部20から
図2に示した材料流入口44を通じて原材料MRが供給される。
【0019】
バレル50には、回転しているフラットスクリュー40の溝部42内に供給された原材料MRを加熱するためのバレルヒーター58が埋め込まれている。バレル50の中心には連通孔56が設けられている。
【0020】
図3は、バレル50の上面52側を示す概略平面図である。バレル50の上面52には、連通孔56に接続され、連通孔56から外周に向かって渦状に延びている複数の案内溝54が形成されている。なお、案内溝54の一端は、連通孔56に接続されていなくてもよい。また、案内溝54が省略されてもよい。
【0021】
フラットスクリュー40の溝部42内に供給された原材料MRは、溝部42内において可塑化されながら、フラットスクリュー40の回転によって溝部42に沿って流動し、可塑化材料としてフラットスクリュー40の中央部46へと導かれる。中央部46に流入した流動性を発現しているペースト状の可塑化材料は、バレル50の中心に設けられた連通孔56を介して吐出部60に供給される。なお、可塑化材料では、可塑化材料を構成する全ての種類の物質が可塑化していなくてもよい。可塑化材料は、可塑化材料を構成する物質のうちの少なくとも一部の種類の物質が可塑化することによって、全体として流動性を有する状態に転化されていればよい。
【0022】
図1に示すように、吐出部60は、可塑化材料を吐出するノズル61と、フラットスクリュー40とノズル開口62との間に設けられた可塑化材料の流路65と、可塑化材料の吐出を制御する吐出制御部77とを備える。
【0023】
ノズル61は、流路65を通じて、バレル50の連通孔56に接続されている。ノズル61は、可塑化部30において生成された可塑化材料を、先端のノズル開口62からステージ210に向かって吐出する。
【0024】
吐出制御部77は、流路65を開閉する吐出調整部70と、可塑化材料を吸引して一時的に貯留する吸引部75とを備える。
【0025】
吐出調整部70は、流路65内に設けられており、流路65内で回転することにより流路65の開度を変化させる。本実施形態において、吐出調整部70は、バタフライバルブによって構成されている。吐出調整部70は、制御部300による制御下において、第1駆動部74によって駆動される。第1駆動部74は、例えば、ステッピングモーターによって構成される。制御部300は、第1駆動部74を用いて、バタフライバルブの回転角度を制御することによって、可塑化部30からノズル61に流れる可塑化材料の流量、つまり、ノズル61から吐出される可塑化材料の吐出量を調整することができる。吐出調整部70は、可塑化材料の吐出量を調整可能であると共に、可塑化材料の流出のオン/オフを制御可能である。
【0026】
吸引部75は、流路65において吐出調整部70とノズル開口62との間に接続されている。吸引部75は、ノズル61からの可塑化材料の吐出停止時に、流路65中の可塑化材料を一時的に吸引することによって、可塑化材料がノズル開口62から糸を引くように垂れる尾引き現象を抑制する。本実施形態において、吸引部75は、プランジャーにより構成されている。吸引部75は、制御部300による制御下において、第2駆動部76によって駆動される。第2駆動部76は、例えば、ステッピングモーターや、ステッピングモーターの回転力をプランジャーの並進運動に変換するラックアンドピニオン機構等によって構成される。
【0027】
ステージ210は、ノズル61のノズル開口62に対向する位置に配置されている。本実施形態では、ノズル61のノズル開口62に対向するステージ210の造形面211は、X,Y方向、すなわち水平方向に平行となるように配置される。ステージ210には、ステージ210上に吐出された可塑化材料が急激に冷却することを抑制するためのステージヒーター212が備えられている。ステージヒーター212は制御部300によって制御される。
【0028】
移動機構230は、制御部300の制御下において、ステージ210とノズル61との相対位置を変化させる。本実施形態では、ノズル61の位置が固定されており、移動機構230は、ステージ210を移動させる。移動機構230は、3つのモーターの駆動力によって、ステージ210をX,Y,Z方向の3軸方向に移動させる3軸ポジショナーによって構成される。本明細書において、特に断らない限り、ノズル61の移動とは、ノズル61や吐出部60をステージ210に対して相対的に移動させることを意味する。
【0029】
なお、他の実施形態では、移動機構230によってステージ210を移動させる構成の代わりに、ステージ210の位置が固定された状態で、移動機構230がステージ210に対してノズル61を移動させる構成が採用されてもよい。また、移動機構230によってステージ210をZ方向に移動させ、ノズル61をX,Y方向に移動させる構成や、移動機構230によってステージ210をX,Y方向に移動させ、ノズル61をZ方向に移動させる構成が採用されてもよい。これらの構成であっても、ノズル61とステージ210との相対的な位置関係が変更可能である。
【0030】
制御部300は、三次元造形装置100全体の動作を制御する制御装置である。制御部300は、1つ、又は、複数のプロセッサー310と、主記憶装置や補助記憶装置からなる記憶装置320と、外部との信号の入出力を行う入出力インターフェイスとを備えるコンピューターによって構成される。プロセッサー310は、記憶装置320に記憶されたプログラムを実行することによって、情報処理装置400から取得された造形データに従い、造形部110及び移動機構230を制御して、ステージ210上に造形物の造形を行う。なお、制御部300は、コンピューターによって構成される代わりに、回路を組み合わせた構成により実現されてもよい。
【0031】
図4は、三次元造形装置100が造形物を造形する様子を模式的に示す説明図である。三次元造形装置100では、上述したように、固体状態の原材料MRが可塑化されて可塑化材料MMが生成される。制御部300は、ステージ210の造形面211とノズル61との距離を保持したまま、ステージ210の造形面211に沿った方向に、ステージ210に対するノズル61の位置を変えながら、ノズル61から可塑化材料MMを吐出させる。ノズル61から吐出された可塑化材料MMは、ノズル61の移動方向に連続して堆積されていく。
【0032】
制御部300は、ノズル61の移動を繰り返して層MLを形成する。制御部300は、1つの層MLを形成した後、ステージ210に対するノズル61の位置を、Z方向に相対移動させる。そして、これまでに形成された層MLの上に、さらに層MLを積み重ねることによって造形物を造形していく。
【0033】
制御部300は、例えば、一層分の層MLを完了した場合のノズル61のZ方向への移動や、各層で独立する複数の造形領域がある場合には、ノズル61からの可塑化材料の吐出を一時的に中断させることがある。この場合、吐出調整部70によって流路65を閉塞させて、ノズル開口62からの可塑化材料MMの吐出を停止させ、吸引部75によって、ノズル61内の可塑化材料を一時的に吸引する。制御部300は、ノズル61の位置を変更した後、吸引部75内の可塑化材料を排出しつつ吐出調整部70によって流路65を開くことによって、変更後のノズル61の位置から可塑化材料MMの堆積を再開させる。
【0034】
図5は、情報処理装置400の概略構成を示す説明図である。情報処理装置400は、CPU410と記憶部430と通信インターフェイス440と入出力インターフェイス450とがバス460によって相互に接続されたコンピューターとして構成されている。入出力インターフェイス450には、キーボードやマウスなどの入力装置470と、液晶ディスプレイなどの表示装置480とが接続されている。情報処理装置400は、通信インターフェイス440を介して、三次元造形装置100の制御部300に接続される。本実施形態では、記憶部430には、後述するデータ生成プログラム431および条件データベース432が記憶されている。
【0035】
CPU410は、記憶部430に記憶されたデータ生成プログラム431を実行することによって、情報処理装置400に、取得部411およびデータ生成部415としての機能を実現させる。後述するように、データ生成部415は、後述する三次元造形用データを生成する。取得部411は、三次元造形用データを生成するのに用いられる種々の情報を取得する。取得部411は、第1取得部412と第2取得部413と第3取得部414とを有する。
【0036】
第1取得部412は、スライスデータを取得する。スライスデータとは、複数の層にスライスされた三次元造形物の形状を表すデータである。スライスデータは、例えば、三次元造形物の形状を表す形状データに基づいて、三次元造形物の形状をXY平面に沿って複数の層にスライスすることによって生成される。形状データは、例えば、三次元CADソフトや三次元CGソフト等を用いて作成される三次元形状データであり、STL形式やAMF形式等のデータである。
【0037】
第2取得部413は、材料情報を取得する。材料情報とは、造形を所望する三次元造形物の造形に用いられる材料に関する情報である。材料情報は、例えば、形状データに関連付けられていてもよい。例えば、上述した形状データやスライスデータに、その形状データが表す三次元造形物を造形するための材料を指定するための識別情報が含まれていてもよい。この場合、第2取得部413は、その識別情報を材料情報として取得してもよい。
【0038】
第3取得部414は、第2取得部413によって取得される材料情報に基づいて、経路条件を取得する。経路条件は、後述する移動経路に関する条件であり、材料の種別に応じて予め定められる。経路条件の詳細については後述する。
【0039】
データ生成部415は、スライスデータと経路条件とに基づいて、三次元造形用データを生成する。以下では、三次元造形用データのことを単に造形用データとも呼ぶ。造形用データは、経路データと、経路データに関連付けられる吐出量情報とを含む。経路データは、ノズル61が可塑化材料を吐出しつつ移動する経路である移動経路を複数の部分経路によって表したデータである。部分経路は、線状の経路であり、例えば、その部分経路の開始点と終了点とを用いて表される。吐出量情報は、各部分経路における可塑化材料の吐出量を表す情報である。
【0040】
経路データは、輪郭経路データと、インフィル経路データとを含む。輪郭経路データは、三次元造形物の輪郭領域を造形するための移動経路を表すデータである。輪郭領域とは、三次元造形物の輪郭を含む領域のことを指す。インフィル経路データは、三次元造形物のインフィル領域を造形するための移動経路を表すデータである。インフィル領域とは、輪郭領域の内側領域のことを指す。以下では、輪郭領域を造形するための移動経路のことを輪郭経路とも呼び、インフィル領域を造形するための移動経路のことをインフィル経路とも呼ぶ。
【0041】
上述した経路条件は、インフィル経路に関する各種条件を含む。インフィル経路に関する条件には、経路長条件が含まれる。経路長条件は、インフィル領域における部分経路の長さの上限に関する条件である。
【0042】
情報処理装置400は、データ生成部415によって生成される造形データを、三次元造形装置100の制御部300に送信する。制御部300は、受信した造形データに従って、吐出部60及び移動機構230を制御して、ステージ210に可塑化材料を吐出し、ステージ210上で、可塑化材料を固化させつつ、可塑化材料の層を積層方向に積層することで、造形物を造形する。本実施形態では、積層方向は、Z方向である。なお、可塑化材料の固化とは、吐出された可塑化材料が流動性を失うことを指す。可塑化材料は、温度が低下することによって、熱収縮するとともに可塑性を失って固化する。以下では、吐出部60および移動機構230によって積層される可塑化材料の層のことを、造形層とも呼ぶ。
【0043】
図6は、三次元造形システム10において実行される造形処理のフローチャートである。本実施形態における造形処理は、データ生成処理と、積層処理とを含む。データ生成処理は、造形用データを生成するための処理であり、本実施形態における造形用データの生成方法を実現する。積層処理は、吐出部60および移動機構230によって造形層を積層する処理である。
図6に示した造形処理は、例えば、制御部300に対してユーザーによる所定の開始操作が行われた場合に実行される。ステップS105からS140の処理は、情報処理装置400において実行され、ステップS145およびステップS150の処理は、三次元造形装置100において実行される。
【0044】
ステップS105にて、取得部411は、他のコンピューター、記録媒体、あるいは、記憶部430から形状データを取得する。ステップS110にて、第1取得部412は、スライスデータを取得する。本実施形態における第1取得部412は、ステップS105で取得された形状データに基づいてスライスデータを生成することによって、スライスデータを取得する。
【0045】
図7は、形状データやスライスデータによって表される三次元造形物OBの形状の例を示す図である。三次元造形物OBは、下層領域LAと、上層領域UAと、中層領域MAとを有している。下層領域LAは、三次元造形物OBの最下層Btを含む領域である。下層領域LAは、最下層Btのみによって構成されてもよいし、最下層Btを含み積層方向に連続する複数の層によって構成されてもよい。本実施形態では、下層領域LAは、最下層Btを含む連続する5つの層によって構成されている。上層領域UAは、三次元造形物OBの最上層Tpを含む領域である。上層領域UAは、最上層Tpのみによって構成されてもよいし、最上層Tpを含み積層方向に連続する複数の層によって構成されてもよい。本実施形態では、上層領域UAは、最上層Tpのみによって構成されている。中層領域MAは、上層領域UAと下層領域LAとの間の領域である。中層領域MAは、1層のみによって構成されてもよいし、積層方向に連続する複数の層によって構成されてもよい。後述するように、中層領域MAは、上層領域UAおよび下層領域LAよりも低密度に造形される。上層領域UAや下層領域LAを構成する数の層を増加させることによって、上層領域UAや下層領域LAをより高強度に造形できるが、造形時間の短縮の観点から、上層領域UAや下層領域LAの層数は、例えば、5以下であると好ましい。
【0046】
上述した経路データは、下層領域LAを造形するための下層データと、上層領域UAを造形するための上層データと、中層領域MAを造形するための中層データとを含む。下層データと、上層データと、中層データとは、それぞれ、輪郭経路データとインフィル経路データとを含む。
【0047】
図7に示した三次元造形物OBは、全体として直方体状を有している。三次元造形物OBには、それぞれ積層方向に延びる第1孔部HL1と第2孔部HL2とが形成されている。第1孔部HL1と第2孔部HL2とは、最上層Tpにおいて上方に開口しており、最上層Tpから下方に向かって中層領域MAの下端まで延びる。従って、
図7の例では、上層領域UAと中層領域MAとには、それぞれ、第1孔部HL1と第2孔部HL2との一部が形成され、下層領域LAには、第1孔部HL1および第2孔部HL2が形成されない。
【0048】
ステップ
図6のS115にて、第2取得部413は、材料情報を取得する。本実施形態におけるステップS115では、第2取得部413は、ステップS105で取得された形状データに関連付けられた材料情報を取得する。
【0049】
ステップS120にて、第3取得部414は、ステップS115で取得された材料情報に基づいて、経路条件を取得する。本実施形態におけるステップS120では、第3取得部414は、材料情報に基づいて、記憶部430に記憶された条件データベース432を参照することによって、経路長条件を含む経路条件を取得する。
【0050】
図8は、条件データベース432の例を説明する図である。条件データベース432には、材料の種別を表す種別情報と、経路条件とが関連付けて記憶されている。
【0051】
図8に示すように、本実施形態における条件データベース432には、経路条件として、上層領域UAおよび下層領域LAにおけるインフィル経路に関する第1経路条件PC1と、中層領域MAにおけるインフィル経路に関する第2経路条件PC2とが、材料の種別ごとに定められている。本実施形態における経路条件は、経路パターンの形状の種類を決定するパターン形状条件と、パターンのX寸法を決定するX寸法条件と、パターンのY寸法を決定するY寸法条件と、インフィル領域における造形密度を決定する密度条件とを含む。造形密度は、移動経路に沿って吐出された可塑化材料がインフィル領域内を占める面積の割合として定義される。
【0052】
例えば、条件データベース432において、材料の種別がPOMである場合の第1経路条件PC1は、つづら折り状の移動経路であるつづら折り経路を、X方向において寸法X1以上かつ寸法X2以下、かつ、Y方向において寸法Y1以上かつ寸法Y2以下、かつ、密度範囲D1の造形密度で生成するための条件として定義されている。また、同様に、材料の種別がPOMである場合の第2経路条件PC2は、対角線パターンの移動経路である対角線経路を、X方向において寸法X1以上かつ寸法X2以下、かつ、Y方向において寸法Y1以上かつ寸法Y2以下、かつ、密度範囲D2の造形密度で生成するための条件として定義されている。密度範囲D2は、密度範囲D1よりも小さい値の密度範囲である。つづら折り経路、および、対角線経路の詳細については後述する。また、後述するように、X寸法条件およびY寸法条件は、部分経路の最大経路長を定める条件であり、上述した経路長条件に相当する。
【0053】
ある種別の材料に関する経路長条件は、例えば、その種別の材料を用いて三次元造形物を造形する場合に三次元造形物の反りを抑制できる条件として定められる。三次元造形物の反りは、一般に、可塑化材料の固化時における熱収縮によって生じる。そのため、経路長条件は、例えば、各種別の材料が可塑化温度から固化時の温度まで冷却された場合の熱収縮量を実験やシミュレーションによって測定した結果に基づいて定められてもよい。また、三次元造形物の反りは、一般に、材料の可塑化温度が高いほど生じやすい。これは、材料が可塑化された際と固化した際との温度差が大きくなり、材料の固化時における熱収縮量が大きくなるからである。また、例えば、三次元造形物の反りは、材料の熱膨張係数が大きいほど生じやすい。そのため、経路長条件は、例えば、材料の可塑化温度や熱膨張係数に基づいて定められてもよい。この場合、例えば、材料の可塑化温度が大きいほど、部分経路の最大経路長がより短くなるように経路長条件を定めてもよい。なお、可塑化温度の判断では、ガラス転移が起こる材料については、その材料のガラス転移点が高いほど、その可塑化温度が高いと判断すればよい。また、ガラス転移が起こらない材料については、その材料の融点が高いほど、その可塑化温度が高いと判断すればよい。
【0054】
ステップS125にて、データ生成部415は、ステップS110で取得されたスライスデータに基づいて、輪郭経路データを生成する。より詳細には、データ生成部415は、予め定められた周数の輪郭経路を輪郭領域に生成することによって、輪郭経路データを生成する。この周数は、1周であってもよいし、2周以上であってもよい。本実施形態では、データ生成部415は、ステップS125において、1周分の輪郭経路を輪郭領域に生成する。ステップS125のように輪郭経路データを生成する工程のことを、第1生成工程とも呼ぶ。また、第1生成工程を実行する処理のことを、第1生成処理とも呼ぶ。
【0055】
ステップS130にて、データ生成部415は、ステップS110で取得されたスライスデータと、ステップS120で決定された経路条件とに基づいて、インフィル領域を複数の分割領域に分割する。ステップS130では、データ生成部415は、次のステップS135で各分割領域に経路長条件を満たす移動経路が生成されるように、インフィル領域を複数の分割領域に分割する。ステップS135にて、データ生成部415は、ステップS130で生成された各分割領域に、予め定められた経路パターンに従って移動経路を生成することによって、インフィル経路を生成する。本実施形態におけるステップS135では、データ生成部415は、経路条件に含まれるパターン条件によって定められる経路パターンに従って、各分割領域に移動経路を生成する。ステップS130およびS135のように、インフィル領域を複数の分割領域に分割するとともに、各分割領域に経路パターンに従って移動経路を生成することによってインフィル経路データを生成する工程のことを、第2生成工程とも呼ぶ。また、第2生成工程を実行する処理のことを、第2生成処理とも呼ぶ。また、第2生成工程のうち、ステップS130のように、インフィル領域を分割する工程のことを第1工程とも呼び、ステップS135のように、各分割領域に移動経路を生成する工程のことを第2工程とも呼ぶ。
【0056】
なお、第2生成工程では、例えば、第1工程と第2工程とを交互に繰り返し実行することによって、インフィル経路を生成してもよい。この場合、例えば、第1工程において暫定的にインフィル領域を分割した後に、第2工程において直前の各分割領域に移動経路を生成し、再度の第1工程において直前の移動経路の生成結果を加味して再度の分割を実行し、再度の第2工程において直前の各分割領域に移動経路を生成してもよい。
【0057】
ステップS140にて、データ生成部415は、全ての層について移動経路が生成されたか否かを判定する。データ生成部415は、ステップS140で経路データが生成されていない層があると判定した場合、ステップS125に処理を戻す。データ生成部415は、ステップS140で全ての層について移動経路が生成されたと判定した場合、経路データの生成を完了させる。ステップS125からステップS140のように、スライスデータに基づいて経路データを生成する工程のことを、データ生成工程とも呼ぶ。つまり、データ生成工程は、第1生成工程と第2生成工程とを有する。上述したように、データ生成工程によって生成される経路データには、吐出量情報が関連付けられる。その後、ステップS145にて、三次元造形装置100の制御部300は、生成された造形データを情報処理装置400から取得する。ステップS150にて、制御部300は、ステップS145で取得された造形データに従って、造形層を積層する。
【0058】
図9は、ステップS130でインフィル領域が分割される様子の例を示す第1の図である。
図10は、ステップS135で分割領域に移動経路が生成される様子の例を示す第1の図である。
図9は、第1番目の層L1のインフィル領域IA1が複数の分割領域PA1に分割される様子を示している。
図10は、各分割領域PA1に移動経路が生成される様子を示している。「第n番目の層」とは、積層方向におけるステージ210により近い層から数えてn番目の層のことを指す。つまり、層L1は、上述した最下層Btに相当する。インフィル領域IA1は、層L1の外周部分を構成する輪郭領域CA1の内側領域である。
図9では、輪郭領域CA1に右上がりのハッチングが付され、インフィル領域IA1に右下がりのハッチングが付されている。
図10では、輪郭領域CA1に生成される輪郭経路CP1に右上がりのハッチングが付され、インフィル領域IA1に生成される移動経路に点模様のハッチングが付されている。
【0059】
本実施形態におけるステップS130では、データ生成部415は、インフィル領域IA1を、少なくとも以下の分割条件に従って、複数の分割領域PA1に分割する。すなわち、分割条件は、各分割領域PA1が同じ面積を有する矩形状であること、各分割領域PA1のX寸法がX寸法条件を満たすこと、各分割領域PA1のY寸法がY寸法条件を満たすこと、各分割領域PA1にパターン条件に従う経路パターンの移動経路を生成可能であること、である。この結果、
図9の例では、インフィル領域IA1は、21個の分割領域PA1に分割されている。
図9では、分割領域PA1同士の境界である分割境界Br1が破線によって示されている。分割領域PA1のX方向における寸法Xp1は、寸法X1以上かつ寸法X2以下であり、Y方向における寸法Yp1は、寸法Y1以上かつ寸法Y2以下である。なお、本実施形態では、第3番目の層および第5番目の層のインフィル領域もまた、それぞれ、
図9と同様に分割される。つまり、本実施形態では、下層領域LAを構成する奇数番目の各層のインフィル領域が、それぞれ、上述したように21個の分割領域に分割される。また、本実施形態では、下層領域LAを構成する奇数番目の各層のインフィル領域には、
図10と同様に移動経路が生成される。
【0060】
図10の例では、層L1のインフィル領域IA1には、始点St1から終点Ed1へと向かう連続したインフィル経路IP1が生成されている。インフィル経路IP1は、各分割領域PA1に生成されるつづら折り経路によって構成されている。つづら折り経路とは、そのつづら折り経路の生成対象となる領域内を主方向に沿って移動するとともに、主方向に折り返しつつ主方向と垂直な副方向に沿って進行していく移動経路を指す。より詳細には、つづら折り経路は、それぞれ交互に配置される、主方向における一方側から他方側に進む部分経路、および、主方向における他方側から一方側に進む部分経路と、こうして交互に配置される部分経路の端と端とを接続する副方向に沿った部分経路とを含む。
【0061】
本実施形態では、つづら折り経路は、X方向とY方向とのいずれか一方を主方向とし、他方を副方向として生成される。以下では、X方向を主方向とするつづら折り経路、つまり、X方向に折り返すつづら折り経路のことを、第1つづら折り経路とも呼ぶ。また、Y方向に折り返すつづら折り経路のことを、第2つづら折り経路とも呼ぶ。例えば、第1つづら折り経路を構成する部分経路の最大経路長は、その第1つづら折り経路の生成対象となる分割領域のX方向における寸法によって定まる。そのため、上述したように、分割領域PA1のX方向における寸法がX寸法条件を満たすことで、分割領域PA1に生成される第1つづら折り経路を構成する部分経路の最大経路長もまた、X寸法条件を満たす。同様に、分割領域PA1のY方向における寸法がY寸法条件を満たすことで、分割領域PA1に生成される第2つづら折り経路を構成する部分経路の最大経路長もまた、Y寸法条件を満たす。つまり、本実施形態では、ステップS130でX寸法条件やY寸法条件に従ってインフィル領域IA1が分割されるので、ステップS135でインフィル領域IA1に生成される部分経路の長さの上限は、
図8に示した寸法X2と寸法Y2とのうちいずれか長い寸法として定まる。このように、X寸法条件とY寸法条件とは、経路長条件に相当する。
【0062】
図10の例では、互いに隣り合う分割領域である第1分割領域PA1aと第2分割領域PA1bとで、それぞれ、経路パターンの向きが異なるように移動経路が生成されている。より詳細には、本実施形態では、第1分割領域PA1aには、第1方向に折り返すつづら折り経路が生成され、第2分割領域PA1bには、第1方向と交差する第2方向に折り返すつづら折り経路が生成されている。より詳細には、第1分割領域PA1aには、第1つづら折り経路が生成され、第2分割領域PA1bには、第2つづら折り経路が生成されている。なお、
図10の例では、第1分割領域PA1aおよび第2分割領域PA1bのみならず、隣り合う分割領域同士で、同様に経路パターンの向きが異なっている。
【0063】
図10に示すように、本実施形態におけるステップS135では、データ生成部415は、隣り合う分割領域PA1における移動経路の端同士が接続されるように、各分割領域PAに経路を生成する。例えば、
図10の例では、インフィル経路IP1は、第1分割領域PA1aにおける移動経路の終端Edaと、第2分割領域PA1bにおける移動経路の始端Stbとが接続されるように生成されている。このようにすることで、造形時に、ノズル61は、第1分割領域PA1aにおいて、可塑化材料を吐出しつつ始端Staから終端Edaに向かって移動した後、可塑化材料の吐出を継続したまま、白抜き矢印で示すように、終端Edaから始端Stbに向かって移動できる。そのため、例えば、第1分割領域PA1aにおける造形と、第2分割領域PA1bにおける造形とを、可塑化材料の吐出を停止することなく連続して実行できる。なお、第2分割領域PA1bにおける経路の終端Edbは、同様に、第2分割領域PA1bの-Y方向に位置する分割領域における経路の始端に接続される。
【0064】
図11は、インフィル領域が分割される様子の例を示す第2の図である。
図11は、第2番目の層L2の輪郭領域CA2の内側のインフィル領域IA2が複数の分割領域PA2に分割される様子を、
図9と略同様に示している。
図11の例では、インフィル領域IA2は、上述した分割条件に従って、かつ、積層方向に沿って見たときに、分割領域PA2同士の境界である分割境界Br2と上述した分割境界Br1とがずれるように、複数の分割領域PA2に分割されている。この結果、インフィル領域IA2は、8個の分割領域PA2に分割されている。
図11では、分割境界Br2が破線によって示され、分割境界Br1が一点鎖線によって示されている。分割領域PA2のX方向における寸法Xp2は、寸法Xp1よりも大きく、かつ、寸法X1以上かつ寸法X2以下である。分割領域PA2のY方向における寸法Yp2は、寸法Yp1よりも大きく、かつ、寸法Y1以上かつ寸法Y2以下である。なお、本実施形態では、第4番目の層もまた、層L2と同様に分割される。つまり、本実施形態では、下層領域LAを構成する偶数番目の各層のインフィル領域が、それぞれ、上述したように8個の分割領域に分割される。また、図示は省略するが、下層領域LAを構成する偶数番目の各層においても、層L1と略同様に移動経路が生成される。
【0065】
上記のように、本実施形態では、第1の層の分割境界と、第1の層と積層方向に連続する第2の層の分割境界とがずれるように、第1の層と第2の層とのインフィル領域が分割される。なお、「ある層と他の層との分割境界がずれる」とは、積層方向に沿って見たときに、両層のインフィル領域同士が重なる重複領域において、両層の分割境界同士が少なくとも一部において重ならない状態を意味する。第1の層の分割境界と第2の層の分割境界との重なり度合いは、50%以下であると好ましい。この重なり度合いは、積層方向に沿って見たときに、両層の分割境界のうち、重複領域における全長がより短い分割境界に対して、重複領域における全長がより長い分割境界が平行に重なる長さの割合として算出できる。
図9および
図11の例では、重なり度合いは、0%である。
【0066】
図12は、ステップS130でインフィル領域が分割領域に分割される様子の例を示す第3の図である。
図13は、ステップS135で分割領域に移動経路が生成される様子の例を示す第2の図である。
図12は、最上層Tpのインフィル領域IAtが複数の分割領域PAtに分割される様子を、
図9と略同様に示している。
図13は、各分割領域PAtに経路が生成される様子を、
図10と略同様に示している。インフィル領域IAtは、最上層Tpの外周部分を構成する輪郭領域CAt1と、第1孔部HL1の周囲を囲む輪郭領域CAt2と、第2孔部HL2の周囲を囲む輪郭領域CAt3との内側領域である。
【0067】
図12の例では、インフィル領域IAtが上述した分割条件に従って分割された結果、17個の分割領域PAtが生成されている。
図12では、分割領域PAtの境界である分割境界Brtが破線によって示されている。分割領域PAtの寸法は、分割領域PA1の寸法と同様である。なお、本実施形態では、中層領域MAを構成する各層のインフィル領域は、
図12に示したインフィル領域IAtと略同様に17個の分割領域に分割される。
【0068】
図13の例では、輪郭領域CAt1、CAt2、CAt3には、それぞれ、輪郭経路CP2と、輪郭経路CP3と、輪郭経路CP4とが生成されている。また、インフィル領域IAtには、始点St2から終点Ed2へと向かうインフィル経路IP2と、始点St3から終点Ed3へと向かうインフィル経路IP3とが生成されている。インフィル経路IP2は、
図10に示したインフィル経路IP1と略同様に、隣り合う分割領域PAtにおける移動経路の端同士が接続されるように生成されている。例えば、
図13では、第3分割領域PA3に生成される移動経路の終端Edcと、第3分割領域PA3と隣り合う第4分割領域PA4に生成される移動経路の始端Stdとが接続されている。インフィル経路IP3は、インフィル領域IAtのうち、インフィル経路IP2が生成されない領域に生成されている。インフィル経路IP2およびインフィル経路IP3は、
図10に示したインフィル経路IP1と略同様に、各分割領域PAtに生成されるつづら折り経路によって構成されている。また、
図13の例では、
図12の例と同様に、隣り合う分割領域PAt同士で経路パターンの向きが異なっている。
【0069】
図14は、ステップS135で分割領域に移動経路が生成される様子の例を示す第3の図である。
図14は、中層領域MAを構成する層LMの各分割領域PAmに移動経路が生成される様子を示している。
図14の例では、分割領域PAmは、層LMのインフィル領域IAmが分割されることで生成される。インフィル領域IAmは、層LMの外周部分を構成する輪郭領域CAm1と、第1孔部HL1の周囲を囲む輪郭領域CAm2と、第2孔部HL2の周囲を囲む輪郭領域CAm3との内側領域である。
図14では、分割領域PAm同士の境界である分割境界Brmが破線によって示されている。
【0070】
図14の例では、輪郭領域CAm1、CAm2、CAm3には、それぞれ、輪郭経路CP5と、輪郭経路CP6と、輪郭経路CP7とが生成されている。
図14では、各輪郭経路には、右上がりのハッチング付されている。また、インフィル領域IAmには、始点St4から終点Ed4へと向かうインフィル経路IP4と、始点St5から終点Ed5へと向かうインフィル経路IP5と、始点St6から終点Ed6へと向かうインフィル経路IP6とが生成されている。
図14では、各インフィル経路は、それぞれ、点模様のハッチングと太線とによって示されている。インフィル経路IP4は、
図10に示したインフィル経路IP1と略同様に、隣り合う分割領域PAmにおける経路の端同士が接続されるように生成されている。例えば、インフィル経路IP4では、第5分割領域PA5に生成される移動経路の終端Edeと、第5分割領域PA5と隣り合う第6分割領域PA6に生成される移動経路の始端Stfとが接続されている。また、インフィル経路IP5は、インフィル領域IAmのうち、インフィル経路IP4が生成されない領域において、隣り合う分割領域PAmにおける経路の端同士が接続されるように生成されている。インフィル経路IP6は、インフィル領域IAmのうち、インフィル経路IP4とインフィル経路IP5とが生成されない領域に生成されている。
【0071】
図14に示すように、インフィル経路IP4、IP5、IP6は、それぞれ、上述した対角線経路である。対角線経路とは、その対角線経路の生成対象となる矩形状の領域において、その領域の対角線に沿って生成される移動経路を指す。対角線経路を構成する部分経路の最大経路長は、X寸法条件およびY寸法条件によって定まる。また、
図14の例では、
図10と同様に、隣り合う分割領域PAm同士で経路パターンの向きが異なっている。
【0072】
以上で説明した本実施形態における造形データの生成方法によれば、インフィル領域を複数の分割領域に分割するとともに、各分割領域に予め定められた経路パターンに従って移動経路を生成することによって、インフィル経路データを生成する第2生成工程を有する。第2生成工程では、インフィル領域は、各分割領域に経路長条件を満たす移動経路が生成されるように分割される。
【0073】
図15から
図17は、それぞれ、他の形態におけるインフィル経路の例を示す図である。
図15から
図17は、それぞれ、
図7と同様の三次元造形物OBを生成するためのインフィル経路を、本実施形態とは違って、インフィル領域を分割することなく生成した場合の例を示している。
図15には、第1番目の層L1のインフィル領域IA1を
図10と同程度の造形密度で造形するためのインフィル経路IP7が示されている。
図16には、最上層Tpのインフィル領域IAtを
図13と同程度の造形密度で造形するためのインフィル経路IP8とインフィル経路IP9とが示されている。
図17には、層MLのインフィル領域IAmを
図14と同程度の造形密度で造形するためのインフィル経路IP10とインフィル経路IP11とが示されている。インフィル経路IP7は、第1つづら折り経路であり、インフィル経路IP8からインフィル経路IP11は、それぞれ、第2つづら折り経路である。
【0074】
図15から
図17の例のように、分割されていないインフィル領域全体に対して経路を生成する場合、本実施形態と比較して、インフィル経路に生成される部分経路の1本あたりの経路長が長くなりやすい。例えば、
図15の例では、インフィル領域IA1のX方向における一端から他端に亘って延びる複数の部分経路が生成され、
図16および
図17の例では、インフィル領域IAtやインフィル領域IAmのY方向における一端から他端に亘って延びる複数の部分経路が生成されている。これに対して、本実施形態では、各分割領域内で経路長条件を満たす移動経路が生成されるようにインフィル領域を複数の分割領域に分割した上で、各分割領域に移動経路を生成するので、部分経路の経路長が長くなることを抑制できる。そのため、上記のように生成される造形用データに従って三次元造形物OBを造形することで、造形用の材料にフィラーが含まれるか否かによらずに三次元造形物の反りを抑制できる可能性が高まる。
【0075】
また、本実施形態では、互いに隣り合う第1分割領域PA1aと第2分割領域PA1bとで経路パターンの向きが異なるように、インフィル経路データを生成する。そのため、例えば、第1分割領域PA1aと第2分割領域PA1bとにおいて、向きが同じ経路パターンを用いて移動経路を生成する場合と比較して、三次元造形物の反りを抑制できる可能性がより高まる。
【0076】
図18は、他の実施形態におけるステップS135で分割領域に移動経路が生成される様子を示す図である。
図18は、層L1のインフィル領域IA1に移動経路が生成される様子を、
図10と略同様に示している。
図18の例では、本実施形態とは異なり、第1分割領域PA1aと第2分割領域PA1bとで経路パターンの形状が異なるように、インフィル経路データを生成している。より詳細には、第1分割領域PA1aには、
図10と同様に第1つづら折り経路が生成され、第2分割領域PA1bには、
図10とは違って、渦状の移動経路である渦経路が生成されている。渦経路とは、その渦経路の生成対象となる領域内を、その領域の外周部から中心部に向かって、あるいは、中心部から外周部に向かって渦状を描きながら進む移動経路のことを指す。このように、第1分割領域PA1aと第2分割領域PA1bとで経路パターンの形状が異なるようにインフィル経路データを生成することによっても、三次元造形物の反りを抑制できる可能性がより高まる。
【0077】
また、本実施形態では、第1分割領域PA1aには、X方向に折り返すつづら折り経路を生成し、第2分割領域PA1bには、Y方向に折り返すつづら折り経路を生成する。そのため、第1分割領域PA1aと第2分割領域PA1bとに簡易なパターンの経路を生成することによって、三次元造形物の反りを効果的に抑制できる。
【0078】
また、本実施形態では、積層方向に見たときに、それぞれ下層領域LAに含まれる第1の層と第2の層とで、分割境界Br1と分割境界Br2とがずれるように、第1の層と第2の層とのインフィル領域を分割する。そのため、下層領域LAの強度をより高めることができ、三次元造形物の強度をより高めることができる。なお、他の実施形態では、上層領域UAに含まれる第1の層と第2の層とで互いの分割境界がずれるように、第1の層と第2の層とのインフィル領域を分割してもよい。この場合、上層領域UAの強度を高めることができる。また、このように第1の層と第2の層との分割境界をずらすことで、三次元造形物の外側から分割境界を介して中層領域MAの形状が視認されることを抑制できるので、三次元造形物の美観をより向上できる。また、例えば、下層領域LAと上層領域UAとの両方に、上記の第1の層および第2の層に相当する層が含まれていてもよい。つまり、下層領域LAと上層領域UAとの両方で、積層方向に連続する2つの層で互いの分割境界がずれるように、インフィル領域を分割してもよい。また、例えば、中層領域MAに、上記の第1の層および第2の層に相当する層が含まれていてもよい。
【0079】
また、本実施形態では、隣り合う2つの分割領域PAにおける移動経路の端同士を接続するように、インフィル経路データを生成する。そのため、より効率的に三次元造形物を造形できる。
【0080】
B.他の実施形態:
(B-1)上記実施形態では、第1取得部412は、形状データに基づいてスライスデータを生成することによってスライスデータを取得しているが、このようにスライスデータを取得しなくてもよい。例えば、第1取得部412は、他のコンピューターや、記録媒体、記憶部430から、造形を所望する造形物に関するスライスデータを取得してもよい。
【0081】
(B-2)上記実施形態では、第2生成工程において、第1分割領域PA1aと第2分割領域PA1bとで、経路パターンの形状と向きとの少なくともいずれかが異なるように、インフィル経路データを生成している。これに対して、第1分割領域PA1aと第2分割領域PA1bとで、形状および向きが同じ経路パターンを用いて移動経路を生成してもよい。
【0082】
(B-3)上記実施形態では、例えば、上層領域UAや下層領域LAに含まれる第1の層と第2の層とで、互いに形状や向きが異なる経路パターンを用いてインフィル経路を生成してもよい。このようにすれば、第1の層と第2の層とで、それぞれの部分経路に沿って吐出される線状の可塑化材料同士の隙間がずれるので、この隙間を介して三次元造形物の外側から中層領域MAの形状が視認されることを抑制できる。また、例えば、下層領域LAに含まれる一の層におけるインフィル経路を
図10と同様に生成し、下層領域LAに含まれる他の層におけるインフィル経路を
図15と同様に生成することによっても、可塑化材料同士の隙間をずらすことができ、三次元造形物の外側から隙間を介して中層領域MAの形状が視認されることを抑制できる。また、例えば、上層領域UAに含まれる一の層におけるインフィル経路を
図13と同様に生成し、上層領域UAに含まれる他の層におけるインフィル経路を
図16と同様に生成することによっても、同様に、三次元造形物の外側から中層領域MAの形状が視認されることを抑制できる。
【0083】
(B-4)上記実施形態では、上層領域UAと下層領域LAとの少なくともいずれかにおいて、積層方向に連続する第1の層と第2の層との分割境界が互いにずれるように、第1の層と第2の層とのインフィル領域を分割している。これに対して、第1の層と第2の層との分割境界がずれるように、第1の層と第2の層とのインフィル領域を分割しなくてもよい。また、上記実施形態では、中層領域MAは、下層領域LAおよび上層領域UAよりも低密度に造形されているが、下層領域LAや上層領域UAと同様の造形密度で造形されてもよいし、下層領域LAや上層領域UAよりも高密度に造形されてもよい。
【0084】
(B-5)上記実施形態では、第2生成工程において、隣り合う2つの分割領域における経路の端同士を接続するように、インフィル経路データを生成している。これに対して、第2生成工程において、隣り合う2つの分割領域における移動経路の端同士を接続しなくてもよい。
【0085】
(B-6)上記実施形態において、可塑化部30は、フラットスクリューによって材料を可塑化している。これに対して可塑化部30は、例えば、インラインスクリューを回転させることによって材料を可塑化するものであってもよい。また、可塑化部30は、フィラメント状の材料をヒーターで可塑化するものであってもよい。
【0086】
(B-7)上記実施形態において、経路条件は、例えば、
図8に示した条件以外の条件を含んでいてもよい。また、経路条件は、例えば、パターン条件や密度条件を含んでいなくてもよい。この場合、経路パターンや造形密度は、材料の種別によらず定められてもよい。この場合、データ生成部415は、例えば、入力装置470を介して、経路パターンや造形密度の指定をユーザーから受け付けてもよい。また、上記実施形態では、各分割領域は、それぞれ同じ面積を有する矩形状の領域であるが、各分割領域内に経路長条件を満たす移動経路が生成可能であれば、このような領域でなくてもよい。例えば、分割領域同士がそれぞれ異なる面積を有していてもよいし、分割領域が、矩形状ではなく、三角形状や五角形状等の他の多角形状を有していてもよい。
【0087】
(B-8)上記実施形態では、材料供給部20に供給される原材料として、ペレット状に形成された樹脂材料が用いられる。これに限らず、三次元造形装置100は、種々の材料を用いて三次元造形物を造形できる。例えば、三次元造形装置100は、熱可塑性を有する種々の材料を主材料として用いて、三次元造形物を造形できる。ここで、「主材料」とは、三次元造形物の形状を形作っている中心となる材料を意味し、三次元造形物において50重量%以上の含有率を占める材料を意味する。上述した可塑化材料には、主材料を単体で溶融したものや、主材料とともに含有される成分の一部や全部が溶融してペースト状にされたものが含まれる。熱可塑性を有する材料には、顔料や、金属、セラミック、その他に、ワックス、難燃剤、酸化防止剤、熱安定剤などの添加剤等が混入されていてもよい。
【0088】
熱可塑性を有する材料としては、例えば、下記の熱可塑性樹脂材料を用いることができる。
<熱可塑性樹脂材料の例>
ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリアセタール樹脂(POM)、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリアミド樹脂(PA)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)、ポリ乳酸樹脂(PLA)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートなどの汎用エンジニアリングプラスチック、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトンなどのエンジニアリングプラスチック。
【0089】
C.他の形態:
本開示は、上述した実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実現することができる。例えば、本開示は、以下の形態によっても実現可能である。以下に記載した各形態中の技術的特徴に対応する上記実施形態中の技術的特徴は、本開示の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、本開示の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0090】
(1)本開示の第1の形態によれば、可塑化材料の層を積層することによって三次元造形物を造形するための三次元造形用データの生成方法が提供される。この三次元造形用データの生成方法は、複数の層にスライスされた前記三次元造形物の形状を表すスライスデータを取得する工程と、前記三次元造形物の造形に用いられる材料に関する材料情報を取得する工程と、前記材料情報に基づいて、材料の種別に応じて予め定められた経路条件を取得する工程と、前記スライスデータに基づいて、ノズルが前記可塑化材料を吐出しつつ移動する移動経路を複数の部分経路によって表した経路データを生成するデータ生成工程と、を備える。前記経路データは、前記三次元造形物の輪郭を含む輪郭領域を造形するための輪郭経路データと、前記輪郭領域の内側領域であるインフィル領域を造形するためのインフィル経路データと、を含み、前記経路条件は、前記インフィル領域における前記部分経路の長さの上限に関する経路長条件を含む。前記データ生成工程は、前記輪郭領域に前記移動経路を生成することによって、前記輪郭経路データを生成する第1生成工程と、前記インフィル領域を複数の分割領域に分割するとともに、各前記分割領域に、予め定められた経路パターンに従って前記移動経路を生成することによって、前記インフィル経路データを生成する第2生成工程と、を有する。前記第2生成工程において、前記インフィル領域は、各前記分割領域に前記経路長条件を満たす前記移動経路が生成されるように分割される。
このような形態によれば、各分割領域内で経路長条件を満たす移動経路が生成されるようにインフィル領域を複数の分割領域に分割した上で、各分割領域に移動経路を生成できる。そのため、例えば、インフィル領域を分割せずにインフィル領域に移動経路を生成する場合と比較して、部分経路の経路長が長くなることを抑制できる。従って、造形用の材料にフィラーが含まれるか否かによらずに三次元造形物の反りを抑制できる可能性が高まる。
【0091】
(2)上記形態では、複数の前記分割領域は、第1分割領域と、前記第1分割領域に隣り合う第2分割領域と、を含み、前記第2生成工程において、前記第1分割領域と前記第2分割領域とで、前記経路パターンの形状と向きとの少なくともいずれかが異なるように、前記インフィル経路データを生成してもよい。このような形態によれば、互いに隣り合う分割領域同士において、形状や向きが異なる経路パターン用いて移動経路を生成できるので、三次元造形物の反りを抑制できる可能性がより高まる。
【0092】
(3)上記形態では、前記第2生成工程において、前記第1分割領域には、第1方向に折り返すつづら折り状の前記移動経路を生成し、前記第2分割領域には、前記第1方向と交差する第2方向に折り返すつづら折り状の前記移動経路を生成してもよい。このような形態によれば、簡易な経路パターンによって、三次元造形物の反りを効果的に抑制できる。
【0093】
(4)上記形態では、前記経路データは、前記三次元造形物の最下層を含む下層領域を造形するための下層データと、前記三次元造形物の最上層を含む上層領域を造形するための上層データと、前記下層領域と前記上層領域との間の中層領域を、前記下層領域および前記上層領域よりも低密度に造形するための中層データと、を含み、前記上層データと前記中層データと前記下層データとは、それぞれ、前記輪郭経路データと前記インフィル経路データとを含み、前記下層領域と前記上層領域との少なくともいずれかは、第1の層と、前記第1の層と積層方向に連続する第2の層と、を含み、前記第2生成工程において、前記積層方向に見たときに、前記第1の層における前記分割領域の境界と、前記第2の層における前記境界と、がずれるように、前記第1の層と前記第2の層との前記インフィル領域を分割してもよい。このような形態によれば、下層領域や上層領域の強度をより高めることができ、三次元造形物の強度をより高めることができる。
【0094】
(5)上記形態では、前記第2生成工程において、隣り合う2つの前記分割領域における前記移動経路の端同士を接続するように、前記インフィル経路データを生成してもよい。このような形態によれば、より効率的に三次元造形物を造形できる。
【0095】
(6)本開示の第2の形態によれば、可塑化材料の層を積層することによって三次元造形物を造形するための三次元造形用データを生成する情報処理装置が提供される。この情報処理装置は、複数の層にスライスされた前記三次元造形物の形状を表すスライスデータを取得する第1取得部と、前記三次元造形物の造形に用いられる材料に関する材料情報を取得する第2取得部と、前記材料情報に基づいて、材料の種別に応じて予め定められた経路条件を取得する第3取得部と、前記スライスデータに基づいて、ノズルが前記可塑化材料を吐出しつつ移動する移動経路を複数の部分経路によって表した経路データを生成するデータ生成部と、を備える。前記経路データは、前記三次元造形物の輪郭を含む輪郭領域を造形するための輪郭経路データと、前記輪郭領域の内側領域であるインフィル領域を造形するためのインフィル経路データと、を含み、前記経路条件は、前記インフィル領域における前記部分経路の長さの上限に関する経路長条件を含む。前記データ生成部は、前記輪郭領域に前記移動経路を生成することによって、前記輪郭経路データを生成する第1生成処理と、前記インフィル領域を複数の分割領域に分割するとともに、各前記分割領域に、予め定められた経路パターンに従って前記移動経路を生成することによって、前記インフィル経路データを生成する第2生成処理と、を実行する。前記第2生成処理において、前記インフィル領域は、各前記分割領域に前記経路長条件を満たす前記移動経路が生成されるように分割される。
【符号の説明】
【0096】
10…三次元造形システム、20…材料供給部、22…連通路、30…可塑化部、31…スクリューケース、32…駆動モーター、40…フラットスクリュー、42…溝部、43…凸条部、44…材料流入口、46…中央部、47…上面、48…下面、50…バレル、52…上面、54…案内溝、56…連通孔、58…バレルヒーター、60…吐出部、61…ノズル、62…ノズル開口、65…流路、70…吐出調整部、74…第1駆動部、75…吸引部、76…第2駆動部、77…吐出制御部、100…三次元造形装置、110…造形部、210…ステージ、211…造形面、212…ステージヒーター、230…移動機構、300…制御部、310…プロセッサー、320…記憶装置、400…情報処理装置、410…CPU、411…取得部、412…第1取得部、413…第2取得部、414…第3取得部、415…データ生成部、430…記憶部、431…データ生成プログラム、432…条件データベース、440…通信インターフェイス、450…入出力インターフェイス、460…バス、470…入力装置、480…表示装置