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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136675
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】液体噴射ヘッド及び液体噴射装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/16 20060101AFI20240927BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240927BHJP
   B41J 2/14 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B41J2/16 503
B41J2/01 129
B41J2/14 611
B41J2/16 305
B41J2/14 305
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047861
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 繁樹
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA21
2C056FA04
2C056FA10
2C056HA06
2C056HA16
2C056HA44
2C056HA52
2C057AF70
2C057AF93
2C057AN01
2C057AP25
2C057AR14
2C057BA04
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】紫外線硬化型インクのモノマーが液体噴射ヘッドのガスバリア性の低い流路接続用のシリコーン系接着剤を通過して液体噴射ヘッドの流路外に漏れ出ることで、液体噴射ヘッドが故障してしまう虞があった。
【解決手段】アクリル系の紫外線硬化型インクを噴射するためのノズルと、前記ノズルと連通するとともに前記紫外線硬化型インクが流れる流路である導入口44aと、を備え、前記紫外線硬化型インクに含まれるモノマーを吸収可能なアクリル系の紫外線硬化型接着剤である第1接着剤Aを備え、第1接着剤Aは、液体噴射ヘッドを構成する1つの部品であるケース部材40のみに接着されている。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系の紫外線硬化型インクを噴射するためのノズルと、前記ノズルと連通するとともに前記紫外線硬化型インクが流れる流路と、を備える液体噴射ヘッドであって、
前記紫外線硬化型インクに含まれるモノマーを吸収可能なアクリル系の紫外線硬化型接着剤である第1接着剤を備え、
前記第1接着剤は、前記液体噴射ヘッドを構成する1つの部品のみに接着されている、
ことを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項2】
前記流路を形成する流路部材の内部である収容空間に配置された配線部材を備え、
前記第1接着剤は、前記収容空間内に配置されている第1接着剤Aである、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項3】
前記流路部材は、前記ノズルが前記紫外線硬化型インクを噴射する噴射方向に凹む凹部を有し、
前記第1接着剤Aは、前記凹部内に配置されている、
ことを特徴とする請求項2に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項4】
前記流路部材は、前記流路の一部である第1流路を有する第1流路部材と、前記流路の一部である第2流路を有する第2流路部材とを有し、
前記第1流路と前記第2流路とは、ガスバリア性の低い流路接続用接着剤によって液密に接続されており、
前記第1接着剤Aは、前記流路接続用接着剤よりも前記配線部材の近くに配置されている、
ことを特徴とする請求項2に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項5】
前記配線部材と前記第1接着剤Aとの距離は、前記流路接続用接着剤と前記第1接着剤Aとの距離よりも長い、
ことを特徴とする請求項4に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項6】
前記流路部材は、前記流路の一部である第1流路を有する第1流路部材と、前記流路の一部である第2流路を有する第2流路部材とを有し、
前記第1流路と前記第2流路とは、ガスバリア性の低い流路接続用接着剤によって液密に接続されており、
前記配線部材と前記第1接着剤Aとの距離は、前記流路接続用接着剤と前記第1接着剤Aとの距離よりも長い、
ことを特徴とする請求項2記載の液体噴射ヘッド。
【請求項7】
前記液体噴射ヘッドを構成する2つの部品を接着するためのアクリル系の紫外線硬化型接着剤である第2接着剤と、
前記流路の一部である第1流路を有する第1流路部材と、
前記流路の一部である第2流路を有する第2流路部材と、
を備え、
前記第1流路と前記第2流路とは、ガスバリア性の低い流路接続用接着剤によって液密に接続されており、
前記第1接着剤は、前記流路接続用接着剤よりも前記第2接着剤の近くに配置された第1接着剤Bである、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項8】
前記第2接着剤と前記第1接着剤Bとの距離は、前記流路接続用接着剤と前記第1接着剤Bとの距離よりも長い、
ことを特徴とする請求項7に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項9】
前記液体噴射ヘッドを構成する2つの部品を接着するためのアクリル系の紫外線硬化型接着剤である第2接着剤と、
前記流路の一部である第1流路を有する第1流路部材と、
前記流路の一部である第2流路を有する第2流路部材と、
を備え、
前記第1流路と前記第2流路とは、ガスバリア性の低い流路接続用接着剤によって液密に接続されており、
前記第1接着剤は、前記第2接着剤に対する距離が、前記流路接続用接着剤に対する距離よりも長い位置に配置される第1接着剤Bである、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項10】
請求項1から請求項9の何れか一項に記載の液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドに供給するための前記紫外線硬化型インクを貯留する液体貯留部と、
を備えることを特徴とする液体噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を噴射する液体噴射ヘッド及び液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式のプリンターに代表される液体噴射装置は、一般に、インク等の液体を噴射する液体噴射ヘッドを有する。例えば、特許文献1には、液体の流路の一部を画定する流路部材同士を流路接続用のシリコーン系接着剤によって接着することにより、各流路部材に設けられた流路同士を接続するとともに、紫外線硬化型インク(以下、UVインクとも称する)を噴射する液体噴射ヘッドが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-25894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術の液体噴射ヘッドでは、UVインクのモノマーが液体噴射ヘッドのガスバリア性の低い部分、例えば流路接続用のシリコーン系接着剤を通過して液体噴射ヘッドの流路外に漏れ出ることで、液体噴射ヘッドが故障してしまう虞があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する本発明の態様は、アクリル系の紫外線硬化型インクを噴射するためのノズルと、前記ノズルと連通するとともに前記紫外線硬化型インクが流れる流路と、を備える液体噴射ヘッドであって、前記紫外線硬化型インクに含まれるモノマーを吸収可能なアクリル系の紫外線硬化型接着剤である第1接着剤を備え、前記第1接着剤は、前記液体噴射ヘッドを構成する1つの部品のみに接着されている、ことを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
【0006】
また、本発明の他の態様は、上記液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドに供給するための前記紫外線硬化型インクを貯留する液体貯留部と、を備えることを特徴とする液体噴射装置にある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態1に係る液体噴射装置の概略構成を示す図である。
図2】液体噴射ヘッドの分解斜視図である。
図3図2のA-A線断面図である。
図4図3の要部を拡大した断面図である。
図5】ヘッドチップの分解斜視図である。
図6】ヘッドチップの平面図である。
図7図6のB-B線断面図である。
図8】第2中継流路部材及びヘッドチップの平面図である。
図9】ヘッドチップの平面図である。
図10図8のC-C線断面図である。
図11図8のD-D線断面図である。
図12図11の一部を拡大した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。ただし、以下の説明は、本発明の一態様を示すものであって、本発明の範囲内で任意に変更可能である。
【0009】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。ただし、以下の説明は、本発明の一態様を示すものであって、本発明の範囲内で任意に変更可能である。各図において同じ符号を付したものは、同一の部材を示しており、適宜説明が省略されている。また、各図においてX、Y、Zは、互いに直交する3つの空間軸を表している。本明細書では、これらの軸に沿った方向をX方向、Y方向、及びZ方向とする。各図の矢印が向かう方向を正(+)方向、矢印の反対方向を負(-)方向として説明する。また、正方向及び負方向を限定しない3つの空間軸の方向については、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向として説明する。
【0010】
(実施形態1)
図1は、本発明の液体噴射装置1の概略構成を示す図である。液体噴射装置1は、インクをインク滴として印刷用紙等の媒体Sに噴射・着弾させて、当該媒体Sに形成されるドットの配列により画像等の印刷を行うインクジェット式記録装置である。なお、媒体Sとしては、記録用紙の他、樹脂フィルムや布等の任意の材質を用いることができる。
【0011】
液体噴射装置1は、液体噴射ヘッド2と、液体貯留部3と、制御部である制御ユニット4と、媒体Sを送り出す搬送機構5と、移動機構6と、を具備する。
【0012】
液体噴射ヘッド2は、液体貯留部3から供給されるインクを複数のノズルから媒体Sに噴射する。液体噴射ヘッド2の詳細な構成は後述する。
【0013】
液体貯留部3は、液体噴射ヘッド2から噴射されるインクを貯留する。液体貯留部3としては、例えば、液体噴射装置1に着脱可能なカートリッジ、可撓性のフィルムで形成された袋状のインクパック、インクを補充可能なインクタンクなどが挙げられる。なお、液体貯留部3には、特に図示していないが、例えば、色や成分等が異なる複数種類のインクが個別に貯留されている。
【0014】
液体噴射ヘッド2から噴射されるインクは、アクリル系の紫外線硬化型インクである。アクリル系の紫外線硬化型インクとは、顔料などを含む色材、光重合開始剤、モノマー(アクリレート/アクリル酸を反応させたモノマー)、重合禁止剤、硬度や粘度を調整する溶媒などを含むインクをいう。また紫外線硬化型インクは、光重合開始剤の開始反応を促進させるための増感剤、熱安定剤、酸化防止剤、防腐剤、消泡剤、浸透剤、樹脂バインダー、樹脂エマルジョン、還元防止剤、レベリング剤、pH調整剤、顔料誘導体、重合禁止剤、紫外線吸収剤および光安定剤などの各種添加剤を含んでいてもよい。以後に言及するインクは、アクリル系の紫外線硬化型インクを指すものとする。
【0015】
本実施形態では、液体貯留部3は、インクの種類毎にメインタンク3aとサブタンク3bとを有する。そして、サブタンク3bは、液体噴射ヘッド2に接続され、液体噴射ヘッド2からインク滴を噴射することで消費したインクをメインタンク3aからサブタンク3bに補充する。もちろん、液体貯留部3は、メインタンク3aのみで構成されていてもよい。
【0016】
液体噴射装置1は、液体噴射ヘッド2とサブタンク3bとの間でインクを循環させるための循環機構7を有する。
【0017】
循環機構7は、供給ポンプ7aと、循環ポンプ7bと、サブタンク3bと、回収チューブ7cと、供給チューブ7dと、を含んで構成される。
【0018】
供給ポンプ7aは、メインタンク3aに貯留されたインクをサブタンク3bに供給するポンプである。循環ポンプ7bは、サブタンク3bに貯留されたインクを液体噴射ヘッド2に供給、すなわち、圧送するためのポンプである。
【0019】
回収チューブ7cは、液体噴射ヘッド2で印刷に使用されず、サブタンク3bに回収されるインクの流路を備えている。供給チューブ7dは、サブタンク3bから液体噴射ヘッド2に供給されるインクの流路を備えている。
【0020】
サブタンク3bは、液体貯留部3から供給されるインクを一時的に貯留する容器である。また、サブタンク3bは、液体噴射ヘッド2で印刷に使用されず、回収チューブ7cを介して回収されたインクを一時的に貯留する。
【0021】
このような循環機構7は、循環ポンプ7bにより、サブタンク3bから供給チューブ7dを介して液体噴射ヘッド2へインクを供給し、液体噴射ヘッド2で使用されなかったインクを、回収チューブ7cを介してサブタンク3bに回収する。これにより液体噴射ヘッド2とサブタンク3bとの間でインクが循環する。また、サブタンク3bに貯留されたインクが一定量以下となると、供給ポンプ7aによりメインタンク3aからサブタンク3bへインクが供給される。
【0022】
制御ユニット4は、例えば、CPU(Central Processing Unit)またはFPGA(Field Programmable Gate Array)等の制御装置と、半導体メモリー等の記憶装置と、を備えている。制御ユニット4は、記憶装置に記憶されたプログラムを制御装置が実行することで液体噴射装置1の各要素、すなわち、液体噴射ヘッド2、搬送機構5、移動機構6等を統括的に制御する。
【0023】
搬送機構5は、媒体SをX軸方向に搬送するものであり、搬送ローラー5aを有する。すなわち搬送機構5は、搬送ローラー5aが回転することで媒体SをX軸方向に搬送する。なお、媒体Sを搬送する搬送機構5は、搬送ローラー5aを備えるものに限られず、例えば、ベルトやドラムによって媒体Sを搬送するものであってもよい。
【0024】
移動機構6は、搬送体6aと搬送ベルト6bとを具備する。搬送体6aは、液体噴射ヘッド2を収容する略箱形の構造体、所謂、キャリッジであり、搬送ベルト6bに固定される。搬送ベルト6bは、Y軸方向に沿って架設された無端ベルトである。搬送ベルト6bは、図示しない搬送モーターの駆動によって回転する。制御ユニット4は、搬送モーターの駆動を制御することで搬送ベルト6bを回転させて、液体噴射ヘッド2を搬送体6aと共にY軸方向に図示しないガイドレールに沿って往復移動する。なお、液体貯留部3のサブタンク3bは、液体噴射ヘッド2と共に搬送体6aに搭載することも可能である。
【0025】
液体噴射ヘッド2は、制御ユニット4による制御のもとで、液体貯留部3から供給されたインクを複数のノズル21(図7参照)のそれぞれからインク滴として+Z方向に噴射する噴射動作を実行する。この液体噴射ヘッド2によるインク滴の噴射動作が、搬送機構5による媒体Sの搬送や移動機構6による液体噴射ヘッド2の往復移動と並行して行われることにより、媒体Sの表面にインクによる画像が形成される、所謂、印刷動作が行われる。
【0026】
図2図4を用いて、液体噴射ヘッド2を説明する。図2は、液体噴射ヘッド2の分解斜視図である。図3は、図2のA-A線断面図である。図4は、図3の要部を拡大した断面図である。なお、液体噴射ヘッド2の各方向について、液体噴射装置1に搭載された際の方向、すなわち、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向に基づいて説明する。もちろん、液体噴射ヘッド2の液体噴射装置1内の位置は以下に示すものに限定されるものではない。
【0027】
液体噴射ヘッド2は、ヘッドチップ8と、供給流路400及び排出流路410を有する中継流路部材200と、中継基板210と、カバーヘッド220と、を具備する。
【0028】
中継流路部材200は、液体貯留部3から供給されたインクをヘッドチップ8に供給する供給流路400と、ヘッドチップ8のノズルから噴射されなかったインクを液体貯留部3に戻すための排出流路410と、を有する。
【0029】
中継流路部材200は、第1中継流路部材201と、第2中継流路部材202と、シール部材203と、を具備する。第1中継流路部材201と、シール部材203と、第2中継流路部材202とは、この順に+Z方向に積層されている。
【0030】
第1中継流路部材201は、第1供給流路401及び第1排出流路411が設けられた部材である。本実施形態の第1中継流路部材201は、3つの部材201a、201b、201cがZ軸方向に積層されて構成されている。第1中継流路部材201は、供給側流路接続部204a及び排出側流路接続部204bを有する。供給側流路接続部204aと排出側流路接続部204bとを区別しない場合は、流路接続部204と称する。本実施形態では、流路接続部204は、第1中継流路部材201の-Z方向の面に、-Z方向に筒状に突出した形状を有している。供給側流路接続部204aには供給チューブ7dが接続され、排出側流路接続部204bには回収チューブ7cが接続される。供給側流路接続部204aの内部には第1供給流路401が設けられ、排出側流路接続部204bの内部には第1排出流路411が設けられている。
【0031】
第1供給流路401は、Z軸方向に延びる流路や、積層された部材の積層界面に沿って延びる流路等で構成されている。第1供給流路401の途中には、他の領域よりも内径が広く拡幅されたフィルター室401aが設けられており、フィルター室401a内には、インクに含まれるゴミや気泡などの異物を捕捉するフィルター401bが設けられている。第1排出流路411は、第1供給流路401と同様にZ軸方向に延びる流路や、積層された部材の積層界面に沿って延びる流路等で構成されている。本実施形態では第1排出流路411には途中にフィルター室401aやフィルター401bが設けられていないが、もちろん、設けてもよい。また、第1供給流路401は、例えば、フィルター401bの下流で2個以上に分岐してもよい。
【0032】
シール部材203は、液体噴射ヘッド2に用いられるインク等の液体に対して耐液体性を有し、且つ弾性変形可能な材料、例えば、ゴムやエラストマー等を用いて形成されている。シール部材203には、Z軸方向に貫通する供給側接続流路403及び排出側接続流路413が設けられている。
【0033】
第2中継流路部材202は、Z軸方向に伸びる第2供給流路402及び第2排出流路412を有する。第1供給流路401と第2供給流路402とは、シール部材203の供給側接続流路403を介して液密に接続されている。同様に、第1排出流路411と第2排出流路412とは、シール部材203の排出側接続流路413を介して液密に接続されている。また、第2中継流路部材202の-Z方向を向く面には、内部に第2供給流路402又は第2排出流路412が設けられた突起部207が-Z方向に向かって突出して設けられている。
【0034】
このように、中継流路部材200は、第1供給流路401、供給側接続流路403、及び第2供給流路402を有する供給流路400と、第1排出流路411、排出側接続流路413、及び第2排出流路412を有する排出流路410とを備えている。本実施形態では、1つの第1中継流路部材201は、4個の供給流路400と、4個の排出流路410とを備えている。
【0035】
第2中継流路部材202の+Z方向を向く面には、ヘッドチップ8が保持されている。本実施形態の液体噴射ヘッド2には、複数、本実施形態では、一例として2個のヘッドチップ8が保持されている。もちろん、液体噴射ヘッド2が保持するヘッドチップ8の数は、特にこれに限定されず、1個であってもよく、2個以上の複数であってもよい。また、本実施形態では、2個のヘッドチップ8は、X軸方向に関して同じ位置となるように、Y軸方向に並設されている。もちろん、複数のヘッドチップ8の配置は、特にこれに限定されず、例えば、X軸方向に沿って千鳥状に配置されていてもよい。
【0036】
また、第2中継流路部材202の+Z方向を向く面には、2個のヘッドチップ8を収容可能な保持空間208(図7参照)が設けられている。本実施形態の保持空間208は、+Z方向側に開口し、+Z方向側を向いた保持面209を有している。第2供給流路402及び第2排出流路412は、保持面209に開口している。第2供給流路402にはヘッドチップ8の各導入口44aが連通し、第2排出流路412にはヘッドチップ8の導出口44bが連通する。
【0037】
第2中継流路部材202には、各ヘッドチップ8の配線部材110を挿通するための第3配線挿通孔205が設けられている。本実施形態では、2個のヘッドチップ8の夫々に対して2個の第3配線挿通孔205が設けられている。ヘッドチップ8の配線部材110は、第3配線挿通孔205を介して第2中継流路部材202の-Z方向を向く面側に導出される。
【0038】
Z軸方向において、第2中継流路部材202とシール部材203との間には、複数のヘッドチップ8の配線部材110が共通して接続される中継基板210が設けられている。中継基板210は、柔軟性のない硬質のリジット基板からなり、不図示の配線や電子部品等が実装されたものである。中継基板210には外部配線が接続されるコネクター211が設けられている。ヘッドチップ8を制御するための印刷信号等は、不図示の外部配線からコネクター211を介して中継基板210に入力され、中継基板210から各ヘッドチップ8に供給される。なお、中継流路部材200のコネクター211に対向する側壁には、コネクター211に接続される外部配線を挿通するための外部配線用開口部206が設けられている。外部配線は、外部配線用開口部206を介して中継流路部材200の内部に設けられた中継基板210のコネクター211に接続される。
【0039】
中継基板210には、ヘッドチップ8の配線部材110を-Z方向を向く面側に導出するための第4配線挿通孔212が設けられている。第4配線挿通孔212は、各ヘッドチップ8に対して1個、合計2個設けられている。
【0040】
中継基板210には、Z軸方向に貫通して設けられた突起部挿通孔213が設けられている。第2中継流路部材202の突起部207は、突起部挿通孔213を介して中継基板210の-Z方向側に挿通されて、供給側接続流路403又は排出側接続流路413に接続される。
【0041】
中継流路部材200の+Z方向を向く面には、カバーヘッド220が固定されている。カバーヘッド220は、本実施形態では、2個のヘッドチップ8を覆う大きさを有する。カバーヘッド220には、ヘッドチップ8のノズル21を+Z方向に向かって露出する露出開口部221がヘッドチップ8毎に独立して設けられている。露出開口部221から露出されたノズル21からインクが+Z方向に向かって噴射される。もちろん、露出開口部221は、複数のヘッドチップ8に共通して設けられていてもよい。
【0042】
ここで、液体噴射ヘッド2に搭載されるヘッドチップ8について、さらに図5図7を参照して説明する。図5は、本発明の一実施形態に係るヘッドチップ8の分解斜視図である。図6は、ヘッドチップ8の平面図である。図7は、図6のB-B線に準じたヘッドチップ8、中継流路部材200及びカバーヘッド220の断面図である。なお、ヘッドチップ8の各方向について、液体噴射ヘッド2に搭載された際の方向、すなわち、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向に基づいて説明する。
【0043】
ヘッドチップ8は、流路形成基板10を具備する。流路形成基板10は、例えば、シリコン基板、ガラス基板、SOI基板、各種セラミック基板からなる。
【0044】
流路形成基板10には、複数の圧力室12がX軸方向に沿って並んで配置されている。複数の圧力室12は、Y軸方向に関して同じ位置となるように、X軸方向に沿った直線上に配置されている。X軸方向で互いに隣り合う2つの圧力室12は、隔壁によって区画されている。また、本実施形態では、圧力室12がX軸方向に沿って並設された圧力室列が、Y軸方向に2列設けられている。もちろん、圧力室12の配置は特にこれに限定されず、例えば、複数の圧力室12は、X軸方向に沿って千鳥状に配置されていてもよい。
【0045】
流路形成基板10の+Z方向を向く面には、連通板15とノズルプレート20とが順次積層されている。
【0046】
連通板15は、流路形成基板10の+Z方向を向く面に接合された板状部材からなる。連通板15には、圧力室12とノズル21とを連通するノズル連通路16が設けられている。
【0047】
また、連通板15には、複数の圧力室12が共通して連通する共通液室となるマニホールド100の一部を構成する第1マニホールド部17と第2マニホールド部18とが設けられている。第1マニホールド部17は、連通板15をZ軸方向に貫通して設けられている。また、第2マニホールド部18は、連通板15をZ軸方向に貫通することなく、+Z方向を向く面に開口して設けられている。
【0048】
さらに、連通板15には、圧力室12のY軸方向の一端部に連通する供給連通路19が圧力室12の各々に独立して設けられている。供給連通路19は、第2マニホールド部18と圧力室12とを連通して、マニホールド100内のインクを圧力室12に供給する。
【0049】
このような連通板15としては、シリコン基板、ガラス基板、SOI基板、各種セラミック基板、ステンレス基板等の金属基板などを用いることができる。なお、連通板15は、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料を用いることが好ましい。このように流路形成基板10と連通板15とを熱膨張率が略同一の材料を用いることで、熱膨張率の違いによって熱により反りが発生するのを低減することができる。
【0050】
ノズルプレート20は、連通板15の流路形成基板10とは反対側、すなわち、+Z方向を向く面に接合されている。
【0051】
ノズルプレート20には、各圧力室12にノズル連通路16を介して連通するノズル21が形成されている。複数のノズル21は、X軸方向に沿って一列となるように並んで配置されている。また、ノズル21がX軸方向に沿って並設されたノズル列が、Y軸方向に離れて2列設けられている。Y軸方向に並設された2列のノズル列は、各列を構成するノズル21同士が互いにX軸方向に半ピッチずれた状態で配置されていてもよい。このようなノズルプレート20としては、シリコン基板、ガラス基板、SOI基板、各種セラミック基板、ステンレス基板等の金属基板、ポリイミド樹脂のような有機物などを用いることができる。なお、ノズルプレート20は、連通板15の熱膨張率と略同一の材料を用いることが好ましい。このようにノズルプレート20と連通板15とを熱膨張率が略同一の材料を用いることで、熱膨張率の違いによって熱により反りが発生するのを低減することができる。
【0052】
流路形成基板10の-Z方向を向く面には、振動板50と圧電素子300とが順次積層されている。
【0053】
振動板50は、本実施形態では、流路形成基板10側に設けられた酸化シリコンからなる弾性膜51と、弾性膜51の-Z方向を向く面上に設けられた酸化ジルコニウムからなる絶縁膜52と、を有する。なお、振動板50は、弾性膜51のみで構成されていてもよく、絶縁膜52のみで構成されていてもよく、弾性膜51と絶縁膜52とに加えて他の膜を有する構成であってもよい。
【0054】
圧電素子300は、振動板50上に-Z方向に向かって順次積層された第1電極60と圧電体層70と第2電極80とを具備する。圧電素子300が、圧力室12内のインクに圧力変化を生じさせる駆動素子となっている。このような圧電素子300は、圧電アクチュエーターとも言い、第1電極60と圧電体層70と第2電極80とを含む部分を言う。また、第1電極60と第2電極80との間に電圧を印加した際に、圧電体層70に圧電歪みが生じる部分を活性部310と称する。これに対して、圧電体層70に圧電歪みが生じない部分を非活性部と称する。すなわち、活性部310は、圧電体層70が第1電極60と第2電極80とで挟まれた部分を言う。本実施形態では、圧力室12毎に活性部310が形成されている。つまり、圧電素子300には複数の活性部310が形成されていることになる。そして、一般的には、活性部310の何れか一方の電極を活性部310毎に独立する個別電極とし、他方の電極を複数の活性部310に共通する共通電極として構成する。本実施形態では、第1電極60が個別電極を構成し、第2電極80が共通電極を構成している。もちろん、第1電極60が共通電極を構成し、第2電極80が個別電極を構成してもよい。
【0055】
第1電極60は、圧力室12毎に切り分けられて活性部310毎に独立する個別電極を構成する。第1電極60は、+X方向において、圧力室12の幅よりも狭い幅で形成されている。すなわち、+X方向において、第1電極60の端部は、圧力室12に対向する領域の内側に位置している。また、図7に示すように、第1電極60のY軸方向において、ノズル21側の端部は、圧力室12よりも外側に配置されている。この第1電極60のY軸方向において圧力室12よりも外側に配置された端部に、引き出し配線であるリード電極90が接続されている。
【0056】
圧電体層70は、+Y方向の幅が所定の幅で、+X方向に亘って連続して設けられている。圧電体層70のY軸方向の幅は、圧力室12のY軸方向の長さよりも長い。このため、圧力室12の+Y方向および-Y方向の両側では、圧電体層70は、圧力室12に対向する領域の外側まで延設されている。このような圧電体層70のY軸方向においてノズル21とは反対側の端部は、第1電極60の端部よりも外側に位置している。すなわち、第1電極60のノズル21とは反対側の端部は圧電体層70によって覆われている。また、圧電体層70のノズル21側の端部は、第1電極60の端部よりも内側に位置しており、第1電極60のノズル21側の端部は、圧電体層70に覆われていない。圧電体層70は、一般式ABO3で示されるペロブスカイト構造の複合酸化物からなる圧電材料を用いて構成されている。
【0057】
第2電極80は、図7に示すように、圧電体層70の第1電極60とは反対側である-Z方向側に連続して設けられており、複数の活性部310に共通する共通電極を構成する。第2電極80は、Y軸方向が所定の幅となるように、X軸方向に亘って連続して設けられている。
【0058】
第1電極60からは、引き出し配線であるリード電極90が引き出されている。そしてリード電極90の圧電素子300に接続された端部とは反対側の端部には、可撓性を有するフレキシブル基板からなる配線部材110が接続されている。配線部材110は、活性部310の夫々を駆動させるか否かを選択する複数のスイッチング素子を有する駆動信号選択回路111が実装されている。つまり、配線部材110は、COFからなる。なお、配線部材110には、駆動信号選択回路111を設けなくてもよい。つまり、配線部材110は、FFC、FPC等であってもよい。
【0059】
このような第1電極60、圧電体層70および第2電極80を含む圧電素子300は、各層が成膜およびリソグラフィー法によって形成される。このため本実施形態の圧電素子300は、「薄膜圧電体」である圧電体層70を含む圧電薄膜となっている。ここで薄膜圧電体を含む圧電薄膜とは、第1電極60、圧電体層70および第2電極80を含む積層方向であるZ軸方向の厚さが10μm未満のものを言う。なお、圧電薄膜は、複数のノズル21を高密度に配置するために3μm以下であることが好ましい。
【0060】
流路形成基板10の-Z方向を向く面には、流路形成基板10と略同じ大きさを有する保護基板30が接合されている。保護基板30は、圧電素子300を保護する空間である保持部31を有する。保持部31は、X軸方向に並んで配置される圧電素子300の列毎に独立して設けられたものであり、Y軸方向に2つ並んで形成されている。また、保護基板30には、Y軸方向に並んで配置される2つの保持部31の間にZ軸方向に貫通する第1配線挿通孔32が設けられている。圧電素子300の電極から引き出されたリード電極90の端部は、この第1配線挿通孔32内に露出するように延設され、リード電極90と配線部材110とは、第1配線挿通孔32内で電気的に接続されている。
【0061】
このような保護基板30としては、例えば、流路形成基板10と同様にシリコン基板、ガラス基板、SOI基板、各種セラミック基板からなる。なお、保護基板30は、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料を用いることが好ましい。このように流路形成基板10と保護基板30とを熱膨張率が略同一の材料を用いることで、熱膨張率の違いによって熱による反りが発生するのを低減することができる。
【0062】
保護基板30上には、複数の圧力室12に連通するマニホールド100を流路形成基板10と共に画成するケース部材40が固定されている。ケース部材40は、平面視において上述した連通板15と略同一形状を有し、保護基板30に接合されると共に、上述した連通板15にも接合されている。
【0063】
このようなケース部材40は、保護基板30側に流路形成基板10および保護基板30が収容される深さの収容凹部41を有する。この収容凹部41は、保護基板30の流路形成基板10に接合された面よりも広い開口面積を有する。そして、収容凹部41に流路形成基板10および保護基板30が収容された状態で、収容凹部41のノズルプレート20側の開口面が連通板15によって封止されている。
【0064】
ケース部材40には、連通板15の第1マニホールド部17に連通する第3マニホールド部42が設けられている。そして、連通板15に設けられた第1マニホールド部17および第2マニホールド部18と、ケース部材40に設けられた第3マニホールド部42と、によって本実施形態のマニホールド100が構成されている。マニホールド100は、圧力室12の列毎に、つまり、合計2個設けられている。各マニホールド100は、圧力室12が並んで配置されるX軸方向に亘って連続して設けられており、各圧力室12とマニホールド100とを連通する供給連通路19は、X軸方向に並んで配置されている。また、ケース部材40には、マニホールド100に連通して各マニホールド100にインクを供給するための導入口44aが設けられている。また、ケース部材40には、保護基板30の第1配線挿通孔32に連通して配線部材110が挿通される第2配線挿通孔43が設けられており、配線部材110は、第2配線挿通孔43を介して液体噴射ヘッド2の-Z方向を向く面側に導出される。
【0065】
連通板15の第1マニホールド部17および第2マニホールド部18が開口する+Z方向側の面には、コンプライアンス基板45がエポキシ系の接着剤151(図10参照)を介して設けられている。このコンプライアンス基板45が、第1マニホールド部17と第2マニホールド部18の噴射面20a側の開口を封止している。このようなコンプライアンス基板45は、本実施形態では、可撓性を有する薄膜からなる封止膜46と、金属等の硬質の材料からなる固定基板47と、を具備する。固定基板47のマニホールド100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部48となっているため、マニホールド100の一方面は可撓性を有する封止膜46のみで封止された可撓部であるコンプライアンス部49となっている。
【0066】
このようなコンプライアンス基板45の+Z方向を向く面に、カバーヘッド220が接合される。つまり、カバーヘッド220は、開口部48を覆うように固定基板47に接合される。カバーヘッド220と封止膜46との間の空間は、大気開放させることで封止膜46のコンプライアンス部49をマニホールド100内のインクの圧力に応じて変形可能となっている。
【0067】
図8から図12を用いて、液体噴射ヘッド2の流路及び接着剤等について詳細に説明する。図8は第2中継流路部材202及びヘッドチップ8の平面図である。図9はヘッドチップ8の平面図である。図10図8のC-C線断面図である。図11図8のD-D線断面図である。図12図11の一部を拡大した断面図である。なお、図9には、ケース部材40と第2中継流路部材202との間の第1流路接続用接着剤121を図示している。
【0068】
ヘッドチップ8の第1配線挿通孔32及び第2配線挿通孔43と、第2中継流路部材202の第3配線挿通孔205とは連通しており、配線部材110が配置された収容空間130を構成している。第3配線挿通孔205は、Z軸方向をみる平面視において(図8参照)、後述する凹部140及び第2配線挿通孔43を内側に含む形状となっている。
【0069】
ヘッドチップ8には、ノズルがインクを噴射する噴射方向である+Z方向に凹む凹部140が設けられている。本実施形態では、ヘッドチップ8のケース部材40に、第2配線挿通孔43の-Z方向側の開口よりも+Z方向側に凹んだ2個の凹部140が設けられている。2個の凹部140は、X軸方向に延設された第2配線挿通孔43の両端よりも外側に一つずつ配置されている。第2配線挿通孔43よりも+X方向側に配置された凹部140は、2個の導入口44aの間に配置され、第2配線挿通孔43よりも-X方向側に配置された凹部140は、2個の導出口44bの間に配置されている。
【0070】
凹部140には、第1接着剤Aが配置されている。凹部140は、-Z方向側に開口して第3配線挿通孔205に連通している。第3配線挿通孔205は収容空間130の一部を形成しているので、凹部140に設けられた第1接着剤Aは収容空間130に配置されているとも言える。
【0071】
ここで、第1接着剤は、紫外線硬化型インクに含まれるモノマーを吸収可能なアクリル系の紫外線硬化型接着剤である。紫外線硬化型接着剤とは、光重合開始剤、アクリル系のポリマー、硬度や粘度を調整する溶媒などを含む接着剤である。第1接着剤Aは、第1接着剤であって、液体噴射ヘッド2を構成する一つの部品のみに接着されたものである。換言すれば、第1接着剤Aは、液体噴射ヘッド2を構成する2つ以上の部品に跨がって接着されていない。本実施形態では、第1接着剤Aはケース部材40の凹部140にのみ接着されている。
【0072】
第2中継流路部材202の保持空間208には上述したように2個のヘッドチップ8が収容されており、第2供給流路402の開口とヘッドチップ8の導入口44aとが液密に接続され、第2排出流路412の開口とヘッドチップ8の導出口44bとが液密に接続されている。具体的には、第2供給流路402の開口及び導入口44aの開口を囲うように第1流路接続用接着剤121が設けられた状態で第2供給流路402と導入口44aとが接続している。同様に、第2排出流路412の開口及び導出口44bの開口を囲うように第1流路接続用接着剤121が設けられた状態で第2排出流路412と導出口44bとが接続している。このように第1流路接続用接着剤121が設けられていることで、第2供給流路402と導入口44aとの接合部分、及び第2排出流路412と導出口44bの接合部分から、第2中継流路部材202とヘッドチップ8との間にインクが漏れ出ることが抑制されている。
【0073】
図9に示すように、本実施形態では、第1流路接続用接着剤121は、第2供給流路402、第2排出流路412、導入口44a及び導出口44bを液密に連通させるためにそれらの開口を囲むように、1つのヘッドチップ8に対して4か所、設けられている。
【0074】
ヘッドチップ8は、第2中継流路部材202の保持空間208に収容された状態で、+Z方向側の面がカバーヘッド220に接着されている。具体的には、コンプライアンス基板45の+Z方向側の面がカバーヘッド220の-Z方向側の面に第2接着剤C及び固定用接着剤150で接着されている。
【0075】
第2接着剤Cは、液体噴射ヘッド2を構成する2つの部品であるコンプライアンス基板45とカバーヘッド220とを接着するためのアクリル系の紫外線硬化型接着剤である。固定用接着剤150は、エポキシ系の接着剤であるが、特に限定はない。第2接着剤Cは、特に図示しないが、ヘッドチップ8を-Z方向にみて、コンプライアンス基板45の外縁部分に枠状に設けられている。固定用接着剤150は、コンプライアンス基板45の+Z方向側の面のうち、第2接着剤Cよりも内側に設けられている。第2接着剤Cは、固定用接着剤150が硬化する前に、コンプライアンス基板45とカバーヘッド220とを仮固定するために用いられている。
【0076】
また、ヘッドチップ8は、ケース部材40の+Z方向側の面と、連通板15の-Z方向側の面とが第2流路接続用接着剤122で接着されている。このように接着されることで、ケース部材40の第3マニホールド部42と、連通板15の第1マニホールド部17とが液密に接続されている。このように第2流路接続用接着剤122が設けられていることで、第3マニホールド部42と第1マニホールド部17との接合部分から、ヘッドチップ8の外側にインクが漏れ出ることが抑制されている。
【0077】
また、ヘッドチップ8の連通板15の側面には第1接着剤Bが設けられている。第1接着剤Bは、第1接着剤であって、液体噴射ヘッド2を構成する一つの部品のみに接着されたものである。換言すれば、第1接着剤Bは、液体噴射ヘッド2を構成する2つ以上の部品に跨がって接着されていない。本実施形態では、第1接着剤Bは連通板15にのみ接着され、ヘッドチップ8の側面を囲うように環状に設けられている。
【0078】
第1接着剤Aと配線部材110との距離をL1とし、第1流路接続用接着剤121と第1接着剤Aとの距離をL2とし、第1流路接続用接着剤121と配線部材110との距離をL3とする。第2供給流路402と導入口44aとが液密に連通した流路が2個、第2排出流路412と導出口44bとが液密に連通した流路が2個、計4個の流路のうち、第2供給流路402と導入口44aとが液密に連通した流路の1個について、距離L1、距離L2及び距離L3を図示して説明する。他の流路についても同様に距離L1、距離L2、距離L3を定義できる。
【0079】
距離L1は、収容空間130の内部を通り、第1接着剤Aと配線部材110とを結ぶ仮想的な最短の直線の距離である。直線は一本の直線のみからなるものではなく、複数の直線を連結したものであってもよい。直線が収容空間130の内部を通るとは、直線が液体噴射ヘッド2を構成する任意の部材を通らないことをいう。本実施形態では、図9及び図11に示すように、第1接着剤Aから凹部140、第3配線挿通孔205を経由して配線部材110に至る仮想的な複数の直線を組み合わせた全体の長さが距離L1となる。
【0080】
距離L2は、導入口44aと第2供給流路402との接合部分から第1接着剤Aとを結ぶ仮想的な最短の直線のうち、第1接着剤Aから当該接合部分を囲う第1流路接続用接着剤121までに至る部分の直線の距離である。本実施形態では、図9及び図10に示すように、第1接着剤Aから凹部140を経由して導入口44aと第2供給流路402の接合部分に至る仮想的な最短の直線のうち、第1接着剤Aから第1流路接続用接着剤121までの部分の長さが距離L2となる。
【0081】
距離L3は、収容空間130の内部を通り、導入口44aと第2供給流路402との接合部分から配線部材110を結ぶ仮想的な最短の直線のうち、配線部材から当該接合部分を囲う第1流路接続用接着剤121までに至る部分の直線の距離である。本実施形態では、図9及び図10に示すように、配線部材110から導入口44aと第2供給流路402との接合部分に至る仮想的な最短の直線のうち、配線部材110から第1流路接続用接着剤121までの部分の長さが距離L3となる。
【0082】
これらの距離L1、距離L2、距離L3は次の関係にある。すなわち、距離L1は距離L3より短い(L1<L3)。換言すれば、第1接着剤Aは、第1流路接続用接着剤121よりも配線部材110の近くに配置されている。また、距離L1は距離L2よりも長い(L2<L1)。
【0083】
第1接着剤Bと第2接着剤Cとの距離をM1とし、第2流路接続用接着剤122と第1接着剤Bとの距離をM2とし、第2流路接続用接着剤122と第2接着剤Cとの距離をM3とする。
【0084】
距離M1は、液体噴射ヘッド2を構成する部材を通らず、第1接着剤Bと第2接着剤Cとを結ぶ仮想的な最短の直線の距離である。本実施形態では、図12に示すように、液体噴射ヘッド2を構成する部材を通らず、すなわち保持空間208の内部を通り、第1接着剤Bから第2接着剤Cに至る仮想的な直線の長さが距離M1となる。
【0085】
距離M2は、液体噴射ヘッド2を構成する部材を通らず、第2流路接続用接着剤122と第1接着剤Bとを結ぶ仮想的な最短の直線の距離である。本実施形態では、図12に示すように、液体噴射ヘッド2を構成する部材を通らず、すなわち保持空間208の内部を通り、第2流路接続用接着剤122から第1接着剤Bに至る仮想的な直線の長さが距離M2となる。
【0086】
距離M3は、液体噴射ヘッド2を構成する部材を通らず、第2流路接続用接着剤122と第2接着剤Cとを結ぶ仮想的な最短の直線の距離である。本実施形態では、図12に示すように、液体噴射ヘッド2を構成する部材を通らず、すなわち保持空間208の内部を通り、第2流路接続用接着剤122から第2接着剤Cに至る仮想的な直線の長さが距離M3となる。
【0087】
これらの距離M1、距離M2、距離M3は次の関係にある。すなわち、距離M1は距離M3より短い(M1<M3)。換言すれば、第1接着剤Bは、第2流路接続用接着剤122よりも第2接着剤Cの近くに配置されている。また、距離M1は距離M2よりも長い(M2<M1)。
【0088】
第1流路接続用接着剤121及び第2流路接続用接着剤122は、ガスバリア性が低い接着剤である。ガスバリア性が低いとは、酸素の気体透過係数が1.00×10-5cc mm/(mm・day・atm)以上(ガスバリア性の低い樹脂ケースなども含む)である材料で構成されていることを指す。酸素の気体透過係数が1000×10-5cc mm/(mm・day・atm)以上(シリコーン系接着剤)である接着剤はガスバリア性が特に低いので、本発明を適用することが好適である。なお、気体透過係数の単位は、例えば、cc 20μm/(m・24hrs・atm)がある。この単位は、フィルムの厚さを20μmに換算して、フィルム面積を1m、圧力を1atm(1気圧)のもとで、24時間あたりに透過する気体の量を表す。
【0089】
また、中継流路部材200やケース部材40は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)を含まない樹脂材料や、フィラーの含有率が低い樹脂材料で形成されている。一般にこのような樹脂材料はガスバリア性が低い。
【0090】
このように中継流路部材200、ケース部材40、及び第1流路接続用接着剤121は、ガスバリア性が低い。このため、インクの流路である第2供給流路402、第2排出流路412、導入口44a、導出口44bに流れる紫外線硬化型インクに含まれるモノマーは、中継流路部材200、ケース部材40、第1流路接続用接着剤121を透過し、当該流路の外へ漏れ出る虞がある。流路外から漏れ出したモノマーは、液体噴射ヘッド2の金属配線に付着して腐食させる虞がある。
【0091】
例えば、本実施形態の液体噴射ヘッド2では、インクに含まれるモノマーが第2供給流路402と導入口44aとの接合部分から第1流路接続用接着剤121を透過し、収容空間130へ漏れ出る虞がある。同様に、インクに含まれるモノマーが第2排出流路412と導出口44bとの接合部分から第1流路接続用接着剤121を透過し、収容空間130へ漏れ出る虞がある。流路外から収容空間130に漏れ出したモノマーは、液体噴射ヘッド2の配線部材110に形成された配線や駆動信号選択回路111、収容空間130の内部に露出したリード電極90など各種の金属配線を腐食させる虞がある。
【0092】
このような課題に対し、本実施形態の液体噴射ヘッド2は、紫外線硬化型インクに含まれるモノマーを吸収可能なアクリル系の紫外線硬化型接着剤である第1接着剤Aを備え、第1接着剤Aは液体噴射ヘッド2を構成するケース部材40のみに接着されている。
【0093】
このような液体噴射ヘッド2によれば、液体噴射ヘッド2の流路である第2供給流路402、導入口44a、第2排出流路412、導出口44bから漏れ出たインク由来のモノマーを第1接着剤Aに吸収することができる。このように第1接着剤Aにモノマーを吸収させるので、モノマーによって液体噴射ヘッド2の金属配線が腐食することや、液体噴射ヘッド2の故障を防止することができる。さらに、第1接着剤Aはケース部材40のみに設けられており、流路を構成する第2中継流路部材202やケース部材40などの部品同士の接着に使用されていない。このため、第1接着剤Aがモノマーを吸収して膨潤するものの、それらの部品同士が剥離したり、位置ずれしてしまうことを防止することができる。
【0094】
なお、中継流路部材200に形成された供給流路400及び排出流路410、ヘッドチップ8に形成されたマニホールド100、圧力室12、ノズル連通路16、供給連通路19は紫外線硬化型インクが流れる流路に相当する。
【0095】
また、本実施形態の液体噴射ヘッド2は、第1接着剤Aが収容空間130内に配置されている。このような液体噴射ヘッド2によれば、収容空間130内に流出したモノマーを第1接着剤Aで吸収できるため、配線部材110の金属配線の腐食を防止することができる。
【0096】
なお、前記流路を形成する中継流路部材200、ケース部材40、連通板15、流路形成基板10、コンプライアンス基板45は流路部材に相当する。
【0097】
また、本実施形態の液体噴射ヘッド2は、ケース部材40に凹部140が設けられ、第1接着剤Aは噴射方向である+Z方向に凹む凹部140内に配置されている。このような液体噴射ヘッド2によれば、第1接着剤Aに吸収されたモノマーの液溜まりを凹部140に保持することができる。このため、液溜まりが配線部材110などに接触することによる腐食や液体噴射ヘッド2の故障を防止することができる。また、万が一、液溜まりが凹部140から溢れ出て液体噴射ヘッド2を故障させてしまうとしても、凹部140に液溜まりが充満するまで相当な時間を要するので液体噴射ヘッド2を長寿命化しやすい。
【0098】
また、本実施形態の液体噴射ヘッド2は、第2供給流路402及び第2排出流路412を有する第2中継流路部材202と、導入口44a及び導出口44bを有するケース部材40とを有し、第2供給流路402と導入口44aとはガスバリア性の低い第1流路接続用接着剤121によって液密に接続され、第2排出流路412と導出口44bとはガスバリア性の低い第1流路接続用接着剤121によって液密に接続され、第1接着剤Aは、第1流路接続用接着剤121よりも配線部材110の近くに配置されている。すなわち、配線部材110と第1流路接続用接着剤121との距離L3は、第1接着剤Aと配線部材110との距離L1よりも長い。このような液体噴射ヘッド2によれば、金属配線を有する配線部材110にインク由来のモノマーが到達する前に第1接着剤Aでモノマーを吸収することができる。
【0099】
なお、第2中継流路部材202は第1流路部材に相当し、第2供給流路402及び第2排出流路412は第1流路に相当し、ケース部材40は第2流路部材に相当し、導入口44a及び導出口44bは第2流路に相当し、第1流路接続用接着剤は流路接続用接着剤に相当する。
【0100】
また、本実施形態の液体噴射ヘッド2は、配線部材110と第1接着剤Aとの距離L1は、第1流路接続用接着剤121と第1接着剤Aとの距離L2よりも長い。このような液体噴射ヘッド2によれば、液溜まりが配線部材110に到達しにくいので液体噴射ヘッド2の寿命を延ばすことができる。
【0101】
また、上述したように、第2流路接続用接着剤122は、ガスバリア性が低い。このため、インクの流路である第1マニホールド部17及び第3マニホールド部42に流れる紫外線硬化型インクに含まれるモノマーは、第2流路接続用接着剤122を透過し、当該流路の外、すなわちヘッドチップ8の外側へ漏れ出る虞がある。ヘッドチップ8の外側に漏れ出したモノマーは、液体噴射ヘッド2を構成する部品であるコンプライアンス基板45とカバーヘッド220とを接着する第2接着剤Cに接触する虞がある。第2接着剤Cは、アクリル系の紫外線硬化型接着剤であるので、モノマーを吸収することで膨潤し、コンプライアンス基板45とカバーヘッド220を剥離させたり、位置ずれさせる虞がある。
【0102】
このような課題に対し、本実施形態の液体噴射ヘッド2は、液体噴射ヘッド2を構成する2つの部品であるコンプライアンス基板45とカバーヘッド220を接着するためのアクリル系の紫外線硬化型接着剤である第2接着剤Cと、第3マニホールド部42を有するケース部材40と、第1マニホールド部17を有する連通板15と、を備え、第3マニホールド部42と第1マニホールド部17とは、第2流路接続用接着剤122によって液密に接続されており、第2流路接続用接着剤122よりも第2接着剤Cの近くに配置された第1接着剤Bを備えている。
【0103】
このような液体噴射ヘッド2によれば、連通板15の側面に設けられた第1接着剤Bは紫外線硬化型インクに含まれるモノマーを吸収可能であるため、ヘッドチップ8の外側に漏れ出たインク由来のモノマーは第1接着剤Bに吸収され、第2接着剤Cがモノマーで膨潤することを防ぐことができる。したがって、第2接着剤Cが膨潤することによるコンプライアンス基板45とカバーヘッド220との剥離や位置ずれを防止することができる。
【0104】
なお、カバーヘッド220及びコンプライアンス基板45は、液体噴射ヘッド2を構成する2つの部品に相当する。第1マニホールド部17は第1流路に相当し、第3マニホールド部42は第2流路に相当する。ケース部材40は第1流路部材に相当し、連通板15は第2流路部材に相当する。第2流路接続用接着剤122は流路接続用接着剤に相当する。
【0105】
また、本実施形態の液体噴射ヘッド2は、第2接着剤Cと第1接着剤Bとの距離M1は、第2流路接続用接着剤122と第1接着剤Bとの距離M2よりも長い。このような液体噴射ヘッド2によれば、コンプライアンス基板45とカバーヘッド220とを接着する第2接着剤Cにインク由来のモノマーが到達する前に第1接着剤Bでモノマーを吸収することができる。
【0106】
〈他の実施形態)
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明の基本的な構成は上述したものに限定されるものではない。
【0107】
上述した実施形態では、第1接着剤Aは凹部140に設けられていたが、このような態様に限定されない。すなわち第1接着剤Aは液体噴射ヘッド2の収容空間130の内部に設けられていればよい。また、凹部140はケース部材40に形成されていたが、このような態様に限定されない。すなわち凹部140は、収容空間130を形成する任意の部材に設けられていればよい。第1接着剤Bは、連通板15に設けられていたがこのような態様に限定されず、液体噴射ヘッド2の任意の部材に設けられていればよい。
【0108】
上述した液体噴射ヘッド2は、第1接着剤A及び第1接着剤Bを備えていたが、このような態様に限定されない。すなわち、液体噴射ヘッド2は第1接着剤Aのみ又は第1接着剤Bのみを備える態様としてもよい。
【0109】
ここで、第1接着剤Aと配線部材110との距離L1は、第1流路接続用接着剤121と配線部材110との距離L3より短い関係を位置関係Aと称する。距離L1は第1流路接続用接着剤121と第1接着剤Aとの距離L2よりも長い関係を位置関係Bと称する。位置関係A及び位置関係Bを満たした態様を位置関係Cと称する。上述した液体噴射ヘッド2は、位置関係Cを満たした態様であったが、このような態様に限定されない。例えば位置関係Aのみを満たすように第1接着剤Aを配置し、又は位置関係Bのみを満たすように第1接着剤Aを配置した液体噴射ヘッド2としてもよい。
【0110】
また、第1接着剤Bと第2接着剤Cとの距離M1は、第2流路接続用接着剤122と第2接着剤Cとの距離M3より短い関係を位置関係Dと称する。距離M1は第2流路接続用接着剤122と第1接着剤Bとの距離M2よりも長い関係を位置関係Eと称する。位置関係D及び位置関係Eを満たした態様を位置関係Fと称する。上述した液体噴射ヘッド2は、位置関係Fを満たした態様であったが、このような態様に限定されない。例えば位置関係Dのみを満たすように第1接着剤Bを配置し、又は位置関係Eのみを満たすように第1接着剤Bを配置した液体噴射ヘッド2としてもよい。
【0111】
また、流路としては第2供給流路402、第2排出流路412、導入口44a、導出口44b、第1マニホールド部17、第3マニホールド部42を例に挙げたが、これらに限定されない。また、これらの流路を形成する部材として第2中継流路部材202、ケース部材40、連通板15を例に挙げたが、これらに限定されない。
【0112】
(付記)
以上に例示した形態から、例えば以下の構成が把握される。
【0113】
好適な態様である態様1に係る液体噴射ヘッドは、アクリル系の紫外線硬化型インクを噴射するためのノズルと、前記ノズルと連通するとともに前記紫外線硬化型インクが流れる流路と、を備える液体噴射ヘッドであって、前記紫外線硬化型インクに含まれるモノマーを吸収可能なアクリル系の紫外線硬化型接着剤である第1接着剤を備え、前記第1接着剤は、前記液体噴射ヘッドを構成する1つの部品のみに接着されている。
【0114】
このような液体噴射ヘッドによれば、液体噴射ヘッドの流路から漏れ出たインク由来のモノマーを第1接着剤に吸収することができる。このように第1接着剤にモノマーを吸収させるので、モノマーによって液体噴射ヘッドの金属配線が腐食することや、液体噴射ヘッドの故障を防止することができる。さらに、第1接着剤は一つの部材のみに設けられており、流路を構成する部材同士の接着に使用されていない。このため、第1接着剤がモノマーを吸収して膨潤するものの、それらの部品同士が剥離したり、位置ずれしてしまうことを防止することができる。
【0115】
態様1の具体例である態様2において、前記流路を形成する流路部材の内部である収容空間に配置された配線部材を備え、前記第1接着剤は、前記収容空間内に配置されている第1接着剤Aである。これによれば、収容空間内に流出したモノマーを第1接着剤Aで吸収できるため、配線部材の金属配線の腐食を防止することができる。
【0116】
態様2の具体例である態様3において、前記流路部材は、前記ノズルが前記紫外線硬化型インクを噴射する噴射方向に凹む凹部を有し、前記第1接着剤Aは、前記凹部内に配置されている。これによれば、第1接着剤Aに吸収されたモノマーの液溜まりを凹部に保持することができる。このため、液溜まりが配線部材などに接触することによる腐食や液体噴射ヘッドの故障を防止することができる。また、万が一、液溜まりが凹部から溢れ出て液体噴射ヘッドを故障させてしまうとしても、凹部に液溜まりが充満するまで相当な時間を要するので液体噴射ヘッドを長寿命化しやすい。
【0117】
態様2の具体例である態様4において、前記流路部材は、前記流路の一部である第1流路を有する第1流路部材と、前記流路の一部である第2流路を有する第2流路部材とを有し、前記第1流路と前記第2流路とは、ガスバリア性の低い流路接続用接着剤によって液密に接続されており、前記第1接着剤Aは、前記流路接続用接着剤よりも前記配線部材の近くに配置されている。これによれば、金属配線を有する配線基板にインク由来のモノマーが到達する前に第1接着剤Aでモノマーを吸収することができる。
【0118】
態様4の具体例である態様5において、前記配線部材と前記第1接着剤Aとの距離は、前記流路接続用接着剤と前記第1接着剤Aとの距離よりも長い。これによれば、液溜まりが配線部材に到達しにくいので液体噴射ヘッドの寿命を延ばすことができる。
【0119】
態様2の具体例である態様6において、前記流路部材は、前記流路の一部である第1流路を有する第1流路部材と、前記流路の一部である第2流路を有する第2流路部材とを有し、前記第1流路と前記第2流路とは、ガスバリア性の低い流路接続用接着剤によって液密に接続されており、前記配線部材と前記第1接着剤Aとの距離は、前記流路接続用接着剤と前記第1接着剤Aとの距離よりも長い。
【0120】
態様1の具体例である態様7において、前記液体噴射ヘッドを構成する2つの部品を接着するためのアクリル系の紫外線硬化型接着剤である第2接着剤と、前記流路の一部である第1流路を有する第1流路部材と、前記流路の一部である第2流路を有する第2流路部材と、を備え、前記第1流路と前記第2流路とは、ガスバリア性の低い流路接続用接着剤によって液密に接続されており、前記第1接着剤は、前記流路接続用接着剤よりも前記第2接着剤の近くに配置された第1接着剤Bである。これによれば、第1接着剤Bは紫外線硬化型インクに含まれるモノマーを吸収可能であるため、液体噴射ヘッドの外側に漏れ出たインク由来のモノマーは第1接着剤Bに吸収され、第2接着剤がモノマーで膨潤することを防ぐことができる。したがって、第2接着剤が膨潤することによる、液体噴射ヘッドを構成する2つの部品の剥離や位置ずれを防止することができる。
【0121】
態様7の具体例である態様8において、前記第2接着剤と前記第1接着剤Bとの距離は、前記流路接続用接着剤と前記第1接着剤Bとの距離よりも長い。これによれば、液体噴射ヘッドを構成する2つの部品を接着する第2接着剤にインク由来のモノマーが到達する前に第1接着剤Bでモノマーを吸収することができる。
【0122】
態様1の具体例である態様9において、前記液体噴射ヘッドを構成する2つの部品を接着するためのアクリル系の紫外線硬化型接着剤である第2接着剤と、前記流路の一部である第1流路を有する第1流路部材と、前記流路の一部である第2流路を有する第2流路部材と、を備え、前記第1流路と前記第2流路とは、ガスバリア性の低い流路接続用接着剤によって液密に接続されており、前記第1接着剤は、前記第2接着剤に対する距離が、前記流路接続用接着剤に対する距離よりも長い位置に配置される第1接着剤Bである。
【0123】
好適な態様である態様10に係る液体噴射装置は、態様1から態様9の何れか一項に記載の液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドに供給するための前記紫外線硬化型インクを貯留する液体貯留部と、を備える。これによれば、紫外線硬化型インクのモノマーが液体噴射ヘッドのガスバリア性の低い部分、例えば流路接続用のシリコーン系接着剤を通過して液体噴射ヘッドの流路外に漏れ出ても第1接着剤によって吸収するので液体噴射ヘッドの故障を抑制して信頼性が向上した液体噴射装置が提供される。
【符号の説明】
【0124】
A…第1接着剤、B…第1接着剤、C…第2接着剤、1…液体噴射装置、2…液体噴射ヘッド、3…液体貯留部、8…ヘッドチップ、10…流路形成基板、12…圧力室、15…連通板、17…第1マニホールド部、18…第2マニホールド部、19…供給連通路、20…ノズルプレート、21…ノズル、30…保護基板、40…ケース部材、44a…導入口、44b…導出口、45…コンプライアンス基板、100…マニホールド、110…配線部材、130…収容空間、140…凹部、150…固定用接着剤、200…中継流路部材、220…カバーヘッド、300…圧電素子、400…供給流路、401…第1供給流路、402…第2供給流路、403…供給側接続流路、410…排出流路、411…第1排出流路、412…第2排出流路、413…排出側接続流路
図1
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