IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 西日本旅客鉄道株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社ジェイアール西日本テクノスの特許一覧

特開2024-136677鉄道車両工場における設備機械を用いた設備機械と鉄道車両の状態監視・管理システム
<>
  • 特開-鉄道車両工場における設備機械を用いた設備機械と鉄道車両の状態監視・管理システム 図1
  • 特開-鉄道車両工場における設備機械を用いた設備機械と鉄道車両の状態監視・管理システム 図2
  • 特開-鉄道車両工場における設備機械を用いた設備機械と鉄道車両の状態監視・管理システム 図3
  • 特開-鉄道車両工場における設備機械を用いた設備機械と鉄道車両の状態監視・管理システム 図4
  • 特開-鉄道車両工場における設備機械を用いた設備機械と鉄道車両の状態監視・管理システム 図5
  • 特開-鉄道車両工場における設備機械を用いた設備機械と鉄道車両の状態監視・管理システム 図6
  • 特開-鉄道車両工場における設備機械を用いた設備機械と鉄道車両の状態監視・管理システム 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136677
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】鉄道車両工場における設備機械を用いた設備機械と鉄道車両の状態監視・管理システム
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/08 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
G01M17/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047863
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000196587
【氏名又は名称】西日本旅客鉄道株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391039173
【氏名又は名称】株式会社JR西日本テクノス
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新原 正徳
(72)【発明者】
【氏名】上田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】谷 憲樹
(72)【発明者】
【氏名】上田 芳彰
(72)【発明者】
【氏名】重藤 謙弥
(57)【要約】
【課題】設備機械を用いて効率的に鉄道車両の保守を行うことのできる、設備機械と鉄道車両の状態監視・管理システムを提供する。
【解決手段】設備機械60と鉄道車両2の状態監視・管理システム10は、情報取得部40と、記憶部32と、監視部31と、通信部33と、を備える。情報取得部40は、鉄道車両工場における設備機械60から動作状態を取得する。記憶部32は、動作状態に基づく監視情報を管理する。監視部31は、監視情報に基づき設備機械を監視する。通信部33は、設備機械60により検修される鉄道車両2と通信する。情報取得部40は、動作状態を監視情報に変換する変換部41を含む。動作状態は、鉄道車両2の車輪径を示す情報を含む。通信部33は、鉄道車両2の車輪径を鉄道車両2に通知する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両工場における設備機械を用いた設備機械と鉄道車両の状態監視・管理システムであって、
前記鉄道車両工場における設備機械から動作状態を取得する情報取得部と、
前記動作状態に基づく監視情報を管理する記憶部と、
前記監視情報に基づき前記設備機械を監視する監視部と、
前記設備機械により検修される前記鉄道車両と通信する通信部と、
を備え、
前記情報取得部は、前記動作状態を前記監視情報に変換する変換部を含み、
前記動作状態は、前記鉄道車両の車輪径を示す情報を含み、
前記通信部は、前記鉄道車両の車輪径を前記鉄道車両に通知する、
状態監視・管理システム。
【請求項2】
鉄道車両工場における設備機械を用いた設備機械と鉄道車両の状態監視・管理システムであって、
前記鉄道車両工場における設備機械から動作状態を取得する情報取得部と、
前記動作状態に基づく監視情報を管理する記憶部と、
前記監視情報に基づき前記設備機械を監視する監視部と、
を備え、
前記設備機械は、
前記鉄道車両の車輪が外周部に平坦部を有するか否かを検出するフラット検出装置と、
前記鉄道車両の車輪を旋削する旋盤装置と、を含み、
前記監視部は、前記フラット検出装置が前記鉄道車両の前記車輪の前記平坦部を検出すると、前記情報取得部に、前記鉄道車両の前記車輪が前記平坦部を有することを前記旋盤装置に通知させる、
状態監視・管理システム。
【請求項3】
前記監視部は、前記フラット検出装置が前記鉄道車両の前記車輪の前記平坦部を検出すると、前記旋盤装置に、前記フラット検出装置が前記鉄道車両の前記車輪の前記平坦部を検出しない場合よりも前記車輪を旋削する量を増加させる、
請求項2に記載の状態監視・管理システム。
【請求項4】
前記旋盤装置は、前記鉄道車両に前記車輪を取り付けたまま前記車輪の旋削が可能な在姿車輪旋盤である、
請求項2又は3に記載の状態監視・管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、鉄道車両工場における設備機械を用いた設備機械と鉄道車両の状態監視・管理システムに関し、特に、鉄道車両の車輪の保守点検に係る設備機械の状態監視・管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、鉄道車両に搭載される機器の劣化の解析を行う診断システムが記載されている。特許文献1に記載の診断システムは、複数の日時のそれぞれに対応する鉄道車両に搭載される機器の劣化の度合いを示す劣化量を、複数の日時においてそれぞれ計測した計測データに基づき算出する。特許文献1に記載の診断システムは、鉄道車両の走行した路線を示す路線情報を更に用いて機器の劣化を解析する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2021/079438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、鉄道車両の車輪に係る保守点検では、旋盤による車輪の旋削が行われる場合がある。車輪は旋削されることで摩耗により劣化した部分を除去できるが、車輪の車輪径は旋削前の車輪の車輪径より小さくなる。車輪の車輪径は鉄道車両の加速及び減速の加速度や車両の高さに影響を及ぼす。したがって、鉄道車両の車輪に係る保守点検では、劣化の解析のみならず、車輪の車輪径を管理する必要がある。
【0005】
本開示は、設備機械を用いて効率的に鉄道車両の保守を行うことのできる、鉄道車両工場における設備機械を用いた設備機械と鉄道車両の状態監視・管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る状態監視・管理システムは、鉄道車両工場における設備機械を用いた設備機械と鉄道車両の状態監視・管理システムである。前記状態監視・管理システムは、情報取得部と、記憶部と、監視部と、通信部と、を備える。前記情報取得部は、前記鉄道車両工場における設備機械から動作状態を取得する。前記記憶部は、前記動作状態に基づく監視情報を管理する。前記監視部は、前記監視情報に基づき前記設備機械を監視する。前記通信部は、前記設備機械により検修される前記鉄道車両と通信する。前記情報取得部は、前記動作状態を前記監視情報に変換する変換部を含む。前記動作状態は、前記鉄道車両の車輪径を示す情報を含む。前記通信部は、前記鉄道車両の車輪径を前記鉄道車両に通知する。
【0007】
また、本開示の他の一態様に係る状態監視・管理システムは、鉄道車両工場における設備機械を用いた設備機械と鉄道車両の状態監視・管理システムである。前記状態監視・管理システムは、情報取得部と、記憶部と、監視部と、を備える。前記情報取得部は、前記鉄道車両工場における設備機械から動作状態を取得する。前記記憶部は、前記動作状態に基づく監視情報を管理する。前記監視部は、前記監視情報に基づき前記設備機械を監視する。前記設備機械は、フラット検出装置と、旋盤装置と、を含む。前記フラット検出装置は、前記鉄道車両の車輪が外周部に平坦部を有するか否かを検出する。前記旋盤装置は、前記鉄道車両の車輪を旋削する。前記監視部は、前記フラット検出装置が前記鉄道車両の前記車輪の前記平坦部を検出すると、前記情報取得部に、前記鉄道車両の前記車輪が前記平坦部を有することを前記旋盤装置に通知させる。
【発明の効果】
【0008】
上記態様に係る鉄道車両工場における設備機械を用いた設備機械と鉄道車両の状態監視・管理システムによれば、設備機械を用いて効率的に鉄道車両の保守を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係る状態監視管理システムを含む鉄道車両監視システムの概要を示す機能ブロック図である。
図2図2は、同上の鉄道車両監視システムにおける鉄道車両の概要を示す機能ブロック図である。
図3図3は、同上の鉄道車両監視システムにおける設備機械の概要を示す機能ブロック図である。
図4図4は、同上の鉄道車両監視システムの車輪径情報の自動入力動作を示すフローチャートである。
図5図5は、同上の鉄道車両監視システムの車輪の平坦部情報出力動作を示すフローチャートである。
図6図6は、同上の鉄道車両監視システムの在姿車輪旋盤の故障予知動作を示すフローチャートである。
図7図7は、同上の鉄道車両監視システムの鉄道車両の故障予知動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて本開示の一態様に係る状態監視管理システム10について説明する。本実施形態において、状態監視管理システム10は、鉄道車両工場における設備機械を用いた設備機械と鉄道車両の状態監視・管理システムに対応する。
【0011】
1.鉄道車両監視システムの全体構成
図1は、実施形態に係る状態監視管理システム10を含む鉄道車両監視システム100の概要を示す機能ブロック図である。
【0012】
図1に示すように、鉄道車両監視システム100は、状態監視管理システム10と、複数(図示例では2つ)の設備機械60とを含む。鉄道車両監視システム100は、検修システム1と、複数(図示例では2つ)の鉄道車両2とを更に含む。なお、鉄道車両監視システム100が複数の鉄道車両2を含むとは、鉄道車両監視システム100が鉄道車両2の複数の編成を含むことを言う。編成は、複数の車両の組み合わせ又は1つの車両であり、1つの列車として運用される。
【0013】
設備機械60は、鉄道車両2の運用に必要な保守作業を行うための装置設備である。設備機械60は、在姿車輪旋盤610と、フラット検出装置620とを含む。なお、図1では、在姿車輪旋盤610及びフラット検出装置620を1つずつ記載しているが、設備機械60は、在姿車輪旋盤610を複数含んでもよいし、フラット検出装置620を複数含んでもよい。なお、設備機械60に含まれる在姿車輪旋盤610の数とフラット検出装置620の数とは同じである必要はない。在姿車輪旋盤610は、鉄道車両2に車輪を取り付けたまま車輪の旋削が可能な旋盤である。また、フラット検出装置620は、鉄道車両2に車輪を取り付けたまま車輪の平坦部を検出する装置である。ここで、車輪の平坦部とは、車輪の外周面(走行面)に摩耗によって生じる非曲面の部分をいう。より詳細には、車輪の平坦部は、車輪がレール上を滑った状態で鉄道車両2が走行することで生じる、車輪が平面状に摩耗した部分である。ここで、車輪がレール上を滑った状態とは、空転と滑走とを含む。空転とは、車輪が回転しているが鉄道車両2が移動していないなど、鉄道車両2の移動速度に対して車輪が過剰に回転している状態である。滑走とは、車輪が回転していないが鉄道車両2が移動しているなど、車輪の回転に対して鉄道車両2が過剰な速度で移動している状態である。
【0014】
状態監視管理システム10は、設備機械60の各々から動作状態を取得し、動作状態に基づく監視情報を管理する。状態監視管理システム10は、監視情報に基づいて設備機械60を監視する。また、状態監視管理システム10は、検修システム1に対し、監視情報に基づく鉄道車両2の検査結果を出力する。また、状態監視管理システム10は、鉄道車両2から車両状態を取得する。車両状態は、例えば、鉄道車両2の台車の状態である。さらに、状態監視管理システム10は、検修システム1及び鉄道車両2に対して保守作業結果及び設備機械60の状態を通知する。保守作業結果は、例えば、車輪径を含む。
【0015】
2.鉄道車両監視システムの各構成要素
(1)検修システム
検修システム1は、鉄道車両2の運用に必要な検査及び補修を管理するシステムである。より詳細には、検修システム1は、鉄道車両2の運用に必要な定期検査の実施日及び検査結果を記録し管理する。また、検修システム1は、定期検査の結果について、所定のフォーマットを用いて出力する。検修システム1は、制御部11と、記憶部12と、通信部13と、入力部14と、出力部15とを含む。
【0016】
制御部11は、鉄道車両2の検査結果を状態監視管理システム10から通信部13を介して受信する。制御部11は、状態監視管理システム10から受信した鉄道車両2の検査結果を記憶部12に保存する。鉄道車両2の検査結果は、例えば、鉄道車両2の台車に取り付けられた車輪のよび径(車輪径)を含む。より詳細には、車輪のよび径は、車輪の走行面における直径を言う。なお、車輪の走行面は一般に円筒形ではなく直径は単一の値ではないため、車輪のよび径は、車輪の複数の位置に対応する複数の直径の組み合わせである。なお、車輪のよび径は、例えば、車輪の特定の位置における直径を示す単一の値であってもよい。制御部11は、状態監視管理システム10から取得した鉄道車両2の検査結果で鉄道車両2の定期検査の結果を代替する。また、制御部11は、定期検査の結果を所定のフォーマットを用いて出力部15から出力する。
【0017】
なお、制御部11は、鉄道車両2の定期検査の結果を入力部14から取得して記憶部12に保存する。より詳細には、制御部11は、鉄道車両2の検修担当者から、鉄道車両2の定期検査の結果を取得する。
【0018】
記憶部12は、鉄道車両2の定期検査の結果、及び、定期検査の結果の代替としての鉄道車両2の車両状態を保持するデータベースである。
【0019】
通信部13は、状態監視管理システム10と通信するインターフェースを含む。通信部13は、例えば、イーサネットに接続可能なインターフェースを含む。
【0020】
入力部14は、鉄道車両2の検修担当者からの入力を受け付ける入力デバイスであり、例えば、キーボード及びマウスである。
【0021】
出力部15は、定期検査の結果について、所定のフォーマットを用いて出力するデバイスであり、例えば、ディスプレイ及びプリンタである。
【0022】
検修システム1は、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における検修システム1としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1ないし複数の電子回路で構成される。ここでいうIC又はLSI等の集積回路は、集積の度合いによって呼び方が異なっており、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又はULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれる集積回路を含む。さらに、LSIの製造後にプログラムされる、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はLSI内部の接合関係の再構成若しくはLSI内部の回路区画の再構成が可能な論理デバイスについても、プロセッサとして採用することができる。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。ここでいうコンピュータシステムは、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するマイクロコントローラを含む。したがって、マイクロコントローラについても、半導体集積回路又は大規模集積回路を含む1ないし複数の電子回路で構成される。
【0023】
また、検修システム1における複数の機能が、1つの筐体内に集約されていることは検修システム1に必須の構成ではなく、検修システム1の構成要素は、複数の筐体に分散して設けられていてもよい。さらに、検修システム1の少なくとも一部の機能、例えば、記憶部12の一部の機能がクラウド(クラウドコンピューティング)等によって実現されてもよい。
【0024】
(2)鉄道車両
鉄道車両2は、検修システム1によって検修され、設備機械60によって保守されて運用される車両である。
【0025】
鉄道車両2は、例えば、架線から受電し、台車に設けられたモータで走行する電車である。鉄道車両2は、図2に示すように、制御部21と、駆動部22と、通信部23と、入出力部24とを備える。
【0026】
駆動部22は、台車と、モータと、駆動回路と、制動装置とを含む。台車は、車体に取り付けられる。台車は、車軸と、車輪とを含む。また、モータは、台車に取り付けられ、車輪の動力源として動作する。モータは、例えば、誘導モータである。制動装置は、車輪の回転速度を減少させて鉄道車両2を減速及び停止させる装置である。制動装置は、例えば、ブレーキパッドと、ブレーキパッドを車輪に押圧させる駆動装置を含む。
【0027】
制御部21は、駆動部22を制御して鉄道車両2を走行させる。制御部21は、コンピュータシステムと、駆動回路とを含む。駆動回路は、モータに駆動させて鉄道車両2に加速又は減速の加速度を生じさせる回路である。より詳細には、駆動回路は、モータに供給する電力の電圧及び周波数を制御する回路であり、例えば、インバータである。制御部21は、運転席のマスコンが運転士により操作されると、マスコン操作に基づき、鉄道車両2に所定の加速度を発生させる。より詳細には、マスコン操作が加速指示である場合、制御部21は、加速指示のノッチごとに設定された加速度が鉄道車両2に生じるように、駆動回路からモータに電力を給電する。また、マスコン操作が制動指示である場合、制御部21は、制動指示のノッチごとに設定された加速度で鉄道車両2が減速するように、駆動回路が動作し、又は制動装置を動作させる。
【0028】
ここで、制御部21は、車輪の各々のよび径(車輪径)の情報を保持している。その理由としては、車輪のよび径に依存して制御部21の動作の態様が変化しうるためである。例えば、モータから車輪に伝わる回転モーメントが同一であっても、車輪のよび径が異なれば鉄道車両2に生じる加速度が異なる。同様に、ブレーキパッドが車輪を押圧する力が同一であっても、車輪のよび径が異なれば鉄道車両2に生じる加速度が異なる。したがって、制御部21は、車輪のよび径に応じて駆動回路の出力する電力の電圧及び周波数を変化させ、また、制動装置の動作を変化させる。また、制御部21が車軸の角速度に基づいて鉄道車両2の走行速度を取得している場合、実際の車輪のよび径と制御部21が保持している車輪のよび径の情報が一致しない場合、制御部が鉄道車両2の走行速度を正確に取得できない。したがって、制御部21は、正確な車輪のよび径の情報を保持している必要がある。なお、鉄道車両2が気動車、ハイブリッドディーゼル車、電気機関車、ディーゼル機関車である場合も同様に、鉄道車両2の制御部21は、正確な車輪のよび径の情報を保持している必要がある。
【0029】
通信部23は、状態監視管理システム10及び検修システム1と通信し、車輪径を示すデータを取得する。また、通信部23は、状態監視管理システム10に、走行ログを出力する。走行ログは、例えば、モータの消費電流を含む。通信部23は、例えば、第4世代移動通信システム(4G)や第5世代移動通信システム(5G)等の公衆通信網、無線又は有線のLAN(Local Area Network)等に接続するためのインターフェースを有する。なお、通信部23は複数のインターフェースを有してもよく、例えば、5G対応のインターフェースと、Wi-Fi(登録商標)対応のインターフェースを有していてもよい。
【0030】
入出力部24は、運転士、車掌等の乗務員、及び鉄道車両2の保守作業担当者に情報を提示し、また、情報の入力を受け付ける入出力デバイスであり、例えば、入出力兼用装置であるタッチパネルを含む。なお、入出力部24は、入出力兼用装置に替えて、キーボード等の入力装置と、モニター等の出力装置とを含んでもよい。また、入出力部24は、マスコン、ブレーキレバー、スイッチ、ボタン類を含む。
【0031】
(3)設備機械
設備機械60は、鉄道車両2の運用に必要な保守作業を行うための装置設備である。設備機械60は、鉄道車両工場に設けられている。設備機械60は、例えば、車輪を旋削する旋盤装置、車体を釣り上げて移動させる天井クレーンを含む。実施形態に係る鉄道車両監視システムにおいて、設備機械60は、在姿車輪旋盤610と、フラット検出装置620とを含む。
【0032】
(3.1)在姿車輪旋盤
在姿車輪旋盤610は、鉄道車両2に車輪を取り付けたまま車輪の旋削が可能な旋盤装置である。在姿車輪旋盤610は、図3に示すように、制御部611と、動作部612と、通信部613と、入出力部614とを含む。
【0033】
動作部612は、可動式レールと、車輪保持部と、旋削装置とを含む。可動式レールは、鉄道車両2の1つの台車を保持し、例えば、1対のレールを含む。なお、動作部612は、例えば、複数対のレールを含んでもよい。可動式レールには誘導用レールが接続されており、鉄道車両2が誘導用レール上を走行することで、台車を可動式レール上に誘導できる。車輪保持部は、旋削対象の車輪が可動式レールから離れた状態において、台車を保持する。車輪保持部は、旋削対象の車輪を回転可能な状態に保持する。車輪保持部は、車輪の回転を制御するローラーを有する。旋削装置は、車輪を旋削するためのバイトと、バイトを車輪に押し付ける可動部とを含む。可動部は、例えば、サーボモータを含む。
【0034】
制御部611は、動作部612を動作させて車輪径の目標値に基づいて動作部612を制御し、鉄道車両2の車輪を旋削する。車輪径の目標値は、例えば、鉄道車両2の保守作業担当者が決定し、在姿車輪旋盤610に入力する。また、制御部611は、在姿車輪旋盤610の動作ログを通信部613に出力する。動作ログは、例えば、鉄道車両2を特定する情報、旋削の対象となる車輪を有する台車を特定する情報を含む。また、動作ログは、例えば、保守作業担当者が設定した車輪径の目標値を含む。また、動作ログは、例えば、車輪径の測定値を含む。なお、車輪はフランジに近い位置ほど直径が大きく、フランジから遠い位置ほど直径が小さい。したがって、動作ログは、例えば、車輪径として測定位置の異なる複数の直径を含む。より詳細には、動作ログは、例えば、車軸の延伸方向に互いに離間した7つの位置の各々に対応する、7つの直径を車輪径(車輪のよび径)として含む。制御部611は、例えば、コンピュータシステムを含む。
【0035】
通信部613は、状態監視管理システム10に動作ログを出力する。より詳細には、通信部613は、状態監視管理システム10に含まれる情報取得装置40の第1通信部42に、在姿車輪旋盤610の動作ログを出力する。動作ログは、鉄道車両2の車輪のよび径を含む。通信部613は、情報取得装置40の第1通信部42と通信可能なインターフェースを含む。通信部613は、例えば、情報取得装置40の第1通信部42と、TCP/IP上でシリアル通信を行うModbus TCPで通信する。なお、通信部613のインターフェースは、例えば、Modbus RTUであってもよく、それら以外のシリアル通信、パラレル通信、パケット通信など他のインターフェースであってもよい。
【0036】
入出力部614は、保守作業担当者に情報を提示し、また、保守作業担当者から情報を受け付ける入出力デバイスであり、例えば、入出力兼用装置であるタッチパネルを含む。入出力部614は、例えば、保守作業担当者から車輪径の目標値の入力を受け付ける。また、入出力部614は、例えば、保守作業担当者に対し、車輪の旋削作業の結果を表示する。車輪の旋削作業の結果は、例えば、車輪径の測定値、サーボモータの消費電力等を含む。なお、入出力部24は、入出力兼用装置に替えて、キーボード等の入力装置と、モニター等の出力装置とを含んでもよい。
【0037】
在姿車輪旋盤610は、鉄道車両2が誘導用レール上を走行し、可動式レール上に1つの台車を載せた状態で停止すると、可動式レール上の台車に取り付けられている車輪を旋削する。在姿車輪旋盤610は、車輪保持部によって車輪を保持した後、車輪から離間するよう可動式レールを移動させる。次に、在姿車輪旋盤610は、車輪保持部のローラーを回転させ、旋削装置を動作させてバイトを車輪に押圧することで車輪を旋削する。在姿車輪旋盤610は、旋削が完了すると、可動式レールを元の位置に移動させ、車輪から離間するよう車輪保持部を移動させる。これにより、鉄道車両2は、誘導用レール上を走行し、車輪の旋削が終了した台車を誘導レール上に移動させることができる。すなわち、在姿車輪旋盤610は、鉄道車両2の台車を分解せずレール上を走行可能な状態を維持したまま、鉄道車両2の車輪の旋削を行う。
【0038】
(3.2)フラット検出装置
フラット検出装置620は、鉄道車両2に車輪を取り付けたまま車輪の平坦部を検出する装置である。フラット検出装置620は、図3に示すように、制御部621と、検出部622と、通信部623とを備える。
【0039】
検出部622は、例えば、車両検出センサと、振動検出センサとを含む。車両検出センサは走行用レールに設けられ、走行用レール上の鉄道車両2の位置を検出する。振動検出センサは走行用レールに設けられ、走行用レール上の車輪の平坦部を検出する。上述したように、車輪の平坦部とは、摩耗によって車輪の走行面に生じる非曲面の部分である。すなわち、平坦部を有する車輪は、平坦部において直径が急激に変化する。したがって、車輪が平坦部を有する鉄道車両2が走行用レールを走行すると、平坦部が走行用レールに接触して離れる際に、車輪の平坦部以外の部分が走行用レールに接触している場合とは異なる振動及び音が発生する。また、平坦部を有する車輪が走行用レールを走行すると、車輪が一周するごとに平坦部が走行用レールに接触するため、振動及び音は周期的に発生する。
【0040】
制御部621は、検出部622の検出結果に基づいて、鉄道車両2の各車輪について、平坦部が存在するかを検出する。制御部621は、例えば、車両検出センサによる鉄道車両2の位置検出に基づいて車輪の位置を検出し、振動検出センサによる振動検出結果に基づいて車輪の平坦部の有無判定を行う。
【0041】
通信部623は、状態監視管理システム10を介して在姿車輪旋盤610に鉄道車両2の各車輪について平坦部を有するか否かの情報を出力する。より詳細には、通信部623は、状態監視管理システム10に含まれる監視サーバ30の通信部33に、鉄道車両2の各車輪が平坦部を有するか否かの情報を出力する。
【0042】
なお、フラット検出装置620の走行用レールが、在姿車輪旋盤610の誘導用レールに繋がっていてもよい。この配置によれば、在姿車輪旋盤610で鉄道車両2の車輪を旋削する直前に車輪の平坦部の有無を検知できるため、在姿車輪旋盤610の旋削量を適切に設定することが可能となる。
【0043】
(4)状態監視管理システム
状態監視管理システム10は、設備機械60の各々から動作状態を取得し、動作状態に基づく監視情報を管理する。状態監視管理システム10は、監視情報に基づいて設備機械60を監視する。また、状態監視管理システム10は、検修システム1に対し、監視情報に基づく鉄道車両2の検査結果を出力する。また、状態監視管理システム10は、鉄道車両2から車両状態を取得する。さらに、状態監視管理システム10は、鉄道車両2に対して保守作業結果を通知する。保守作業結果は、例えば、車輪径の情報を含む。
【0044】
状態監視管理システム10は、図1に示すように、監視サーバ30と、情報取得装置40と、端末装置50を含む。
【0045】
監視サーバ30は、設備機械60の動作状態に基づく監視情報を管理し、異常検知及び故障予測を行う。また、監視サーバ30は、設備機械60から取得した鉄道車両2の検査結果を管理することで、鉄道車両2の保守作業を効率化し、鉄道車両2の検修の省力化を図る。
【0046】
情報取得装置40は、設備機械60から動作情報を取得し、監視サーバ30が管理する監視情報に変換する。また、情報取得装置40は、監視サーバ30を介して、監視サーバ30に保存されている鉄道車両2の保守作業結果を鉄道車両2に通知する。
【0047】
端末装置50は、鉄道車両2の保守作業担当者が設備機械60の監視情報及び監視情報に基づく設備機械60の保守情報を確認するための端末である。設備機械60の保守情報は、例えば、設備機械60の故障予測情報である。また、端末装置50は、鉄道車両2の保守作業担当者が鉄道車両2の検査結果を入力するための端末である。
【0048】
(4.1)情報取得装置
情報取得装置40は、設備機械60から動作状態を取得し、監視情報に変換して監視サーバ30に送信する情報変換装置である。本実施形態において、情報取得装置40は、情報取得部に対応する。情報取得装置40は、図1に示すように、制御部41と、第1通信部42と、第2通信部43とを備える。
【0049】
第1通信部42は、設備機械60の在姿車輪旋盤610から動作情報を取得する。動作情報は、在姿車輪旋盤610の動作ログである。第1通信部42は、在姿車輪旋盤610の通信部53と通信可能なインターフェースを含む。インターフェースは、例えば、イーサネット上で動作するModbus TCPである。
【0050】
制御部41は、第1通信部42が取得した在姿車輪旋盤610の動作情報を監視サーバ30が管理する監視情報に変換する。より詳細には、制御部41は、在姿車輪旋盤610の動作ログを解析し、監視情報の1つのレコードにフォーマットを変換する。本実施形態において、制御部41は、変換部に対応する。
【0051】
監視情報の1つのレコードは、例えば、設備機械60を特定する情報と、レコードの取得時刻とを含む。また、監視情報の1つのレコードは、設備機械60の動作状態と、鉄道車両2の保守情報のうち少なくとも一方を含む。設備機械60の動作状態は、例えば、在姿車輪旋盤610において車輪を回転させるモータの電圧値と電流値である。また、鉄道車両2の保守情報は、例えば、鉄道車両2の車輪のよび径の情報と、鉄道車両2を特定する情報及び車輪の位置を特定する情報である。
【0052】
第2通信部43は、在姿車輪旋盤610の動作ログに基づく監視情報を監視サーバ30の通信部33に送信する。第2通信部43は、例えば、一定の間隔で、制御部41が作成した監視情報のレコードをcsv(comma separated value)ファイルとして、4G回線を用いてftp(file transfer protocol)で通信部33にアップロードする。一定の間隔は、例えば、5分毎である。第2通信部43は、例えば、4G、5Gなどの公衆通信網に接続可能なインターフェースを含む。
【0053】
なお、第2通信部43は、例えば、制御部41が監視情報の1レコードを生成するごとに、監視情報を監視サーバ30の通信部33に送信する、としてもよい。なお、監視情報を監視サーバ30の通信部33に送信するデータ形式はcsvファイルに限られず、タブ区切りテキスト、又はこれらを圧縮した形式でもよい。また、監視情報を監視サーバ30の通信部33にデータを送信する方法はftpに限られず、例えば、httpなどを用いてもよい。
【0054】
また、第2通信部43は、監視サーバ30の通信部33から在姿車輪旋盤610宛のメッセージを受信すると、第1通信部42から在姿車輪旋盤610が受信可能な形式で送信させる。在姿車輪旋盤610宛のメッセージは、例えば、鉄道車両2の車輪が平坦部を有するか否かを示す情報である。
【0055】
(4.2)監視サーバ
監視サーバ30は、図1に示すように、制御部31と、記憶部32と、通信部33とを備える。
【0056】
記憶部32は、設備機械60の動作情報に基づく動作情報を保持しているデータベースである。記憶部32は、監視情報を、1つの設備機械60における1つの動作情報に対応するレコードの単位で保持している。また、記憶部32は、設備機械60の動作情報に基づく鉄道車両2の情報及び鉄道車両2から取得される情報を保持しているデータベースである。
【0057】
制御部31は、設備機械60の動作状態に基づく監視情報を管理し、異常検知及び故障予測を行う。本実施形態において、制御部31は、監視部に対応する。より詳細には、制御部31は、通信部33が情報取得装置40又は端末装置50から受信した監視情報を記憶部32に保持する。また、制御部31は、監視情報が設備機械60の異常を示す情報である場合、設備機械60の異常を端末装置50に通知することで保守作業担当者に知らせる。
【0058】
また、制御部31は、監視情報に基づいて設備機械60の状態を監視し、故障を予測する。例えば、在姿車輪旋盤610において車輪を回転させるモータの電流値が計時変化(時間の経過に依存して上昇又は下降)している場合、動作部612のうち車輪保持部に配置されている部分に故障が発生する可能性があると予測できる。また、制御部31は、設備機械60において定期的に部品交換等の保守が必要な個所について、監視情報に基づいて保守作業の必要な時期を予測する。例えば、制御部31は、在姿車輪旋盤610の車輪を回転させるローラーの軸受けについて、車輪を回転させるモータの電流値の計時変化(上昇幅又は下降幅)が基準変化量より大きいと交換が必要である場合に、車輪を回転させるモータの電流値の経時変化に基づいて、軸受けの交換が必要となる時期を予測する。
【0059】
さらに、制御部31は、設備機械60の動作状態に基づく監視情報及び鉄道車両2から取得された情報に基づいて、鉄道車両2の点検保守に必要なデータを管理する。鉄道車両2の点検保守に必要なデータは、例えば、鉄道車両2の車輪径の情報である。制御部31は、例えば、在姿車輪旋盤610による旋削後の鉄道車両2の車輪径の情報を、検修システム1に出力する。これにより、検修システム1は、例えば、定期検査における鉄道車両2の車輪径の検査に替えて、在姿車輪旋盤610が出力した旋削後の鉄道車両2の車輪径の情報を用いることができる。また、制御部31は、例えば、在姿車輪旋盤610による旋削後の鉄道車両2の車輪径の情報を、鉄道車両2に出力する。また、制御部31は、例えば、鉄道車両2の情報に基づいて、鉄道車両2の状態を監視し、故障を予測する。例えば、制御部31は、鉄道車両2が一定の加速度を得るために必要なモータの電圧、電圧周波数、電流等が経時変化(上昇又は下降)している場合に、車軸の軸受が劣化していると判断し、交換が必要な時期を予測する。
【0060】
通信部33は、設備機械60又は情報取得装置40、端末装置50、検修システム1及び鉄道車両2と通信可能なインターフェースを含む。通信部33は、例えば、4G、5G等の公衆通信網と接続可能なインターフェースを含む。通信部33は、設備機械60から動作状態を取得し、又は情報取得装置40から設備機械60の動作状態に基づく監視情報を取得する。また、通信部33は、鉄道車両2の点検保守に必要なデータを検修システム1に出力する。また、通信部33は、鉄道車両2から走行ログを取得し、鉄道車両2に車輪のよび径の情報を出力する。
【0061】
監視サーバ30は、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における監視サーバ30としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路又は大規模集積回路を含む1ないし複数の電子回路で構成される。さらに、LSIの製造後にプログラムされる、FPGA、又はLSI内部の接合関係の再構成若しくはLSI内部の回路区画の再構成が可能な論理デバイスについても、プロセッサとして採用することができる。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。ここでいうコンピュータシステムは、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するマイクロコントローラを含む。したがって、マイクロコントローラについても、半導体集積回路又は大規模集積回路を含む1ないし複数の電子回路で構成される。
【0062】
また、監視サーバ30における複数の機能が、1つの筐体内に集約されていることは監視サーバ30に必須の構成ではなく、監視サーバ30の構成要素は、複数の筐体に分散して設けられていてもよい。さらに、監視サーバ30の少なくとも一部の機能、例えば、記憶部32の一部の機能がクラウド(クラウドコンピューティング)等によって実現されてもよい。
【0063】
反対に、実施形態において、複数の装置に分散されている状態監視管理システム10の少なくとも一部の機能が、1つの筐体内に集約されていてもよい。例えば、監視サーバ30と情報取得装置40とに分散されている状態監視管理システム10の一部の機能が、1つの筐体内に集約されていてもよい。
【0064】
(4.3)端末装置
端末装置50は、鉄道車両2の保守作業担当者が状態監視管理システム10を利用するためのインターフェースであり、例えば、ノート型コンピュータ、タブレット端末、又は、スマートフォンである。端末装置50は、制御部51と、入出力部52と、通信部53とを備える。入出力部52は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等の表示装置と、キーボード、スライドパッドなどの入力装置とを含む。また、入出力部52は、例えば、表示装置と入力装置とを兼ねるタッチパネルであってもよい。
【0065】
制御部51は、監視サーバ30の制御部31から設備機械60に係る監視情報を取得し、入出力部52に表示する。制御部51は、例えば、入出力部52から在姿車輪旋盤610に係る監視情報を取得し、一覧表を入出力部52に表示する。また、制御部51は、例えば、監視サーバ30から設備機械60の異常を示す監視情報を通知されると、入出力部52に表示して保守作業担当者に知らせる。また、制御部51は、鉄道車両2の保守作業担当者が入出力部52から入力した鉄道車両2の検査結果及び設備機械60の検査結果を監視サーバ30に送信する。鉄道車両2の検査結果は、例えば、目視点検の結果、打音検査の結果など設備機械60を用いずに行う検査の結果である。設備機械60の検査結果は、例えば、目視点検の結果など、設備機械60の動作情報に含まれない設備機械60の検査の結果である。
【0066】
通信部53は、監視サーバ30の通信部33と通信するインターフェースである。通信部53は、例えば、4G、5G等の公衆通信網と接続可能なインターフェースを含む。
【0067】
3.状態監視管理システムの動作
(1)車輪径情報の自動入力
状態監視管理システム10において、在姿車輪旋盤610から取得した車輪径情報を検修システム1及び鉄道車両2に自動入力する場合の動作について説明する。図4は、状態監視管理システム10の動作を示すフローチャートである。
【0068】
最初に、情報取得装置40の第1通信部42は、在姿車輪旋盤610から動作状態を取得する(ステップS11)。動作状態は在姿車輪旋盤610の動作ログである。在姿車輪旋盤610の動作ログは、鉄道車両2を特定する情報である車両番号、台車の位置を示す台車番号、車輪の旋削における車輪径の目標値、旋削後の車輪径の情報を含む。
【0069】
次に、情報取得装置40の制御部41は、ステップS11で在姿車輪旋盤610から取得した動作状態を監視情報に変換する(ステップS12)。制御部41は、在姿車輪旋盤610の動作ログを、時刻ごとのレコードである監視情報に変換する。監視情報のレコードは、動作ログの取得時刻を含む。また、監視情報のレコードは、レコードが旋削動作結果を示す場合、鉄道車両2を特定する情報である車両番号と、台車の位置を示す台車番号、車輪の旋削における車輪径の目標値、旋削後の車輪径の情報を含む。制御部41は、監視情報をファイルとして保持する。監視情報を含むファイルは、例えばcsvファイルである。制御部41は、監視情報の1レコードを1行とし、1レコードに含まれる情報項目をカンマで区切ってなるファイルを保持する。
【0070】
次に、情報取得装置40の第2通信部43は、ステップS12で制御部41が生成した監視情報を監視サーバ30に送信する(ステップS13)。第2通信部43は、ステップS12で制御部41が生成して保持しているファイルを監視サーバ30に送信する。第2通信部43は、例えば、公衆通信網を介して監視サーバ30の通信部33にftpにより制御部41が保持しているファイルを送信する。
【0071】
次に、監視サーバ30の制御部31は、情報取得装置40から取得した監視情報を記憶部32に保持する(ステップS14)。制御部31は、ステップS13によって通信部33が受信したファイルに含まれる監視情報のレコードを、データベースである記憶部32にレコードとして保存する。
【0072】
次に、監視サーバ30の制御部31は、監視情報に含まれる鉄道車両2の検査結果を検修システム1に送信する(ステップS15)。鉄道車両2の検査結果は、在姿車輪旋盤610による旋削後の車輪径の情報を含む。監視サーバ30の制御部31は、在姿車輪旋盤610による旋削後の車輪径の情報を、検修システム1に送信する。
【0073】
次に、監視サーバ30の制御部31は、鉄道車両2に保守作業結果を送信する(ステップS16)。保守作業結果は、在姿車輪旋盤610による旋削後の車輪径の情報を含む。監視サーバ30の制御部31は、在姿車輪旋盤610による旋削後の車輪径の情報を、鉄道車両2に送信する。これにより、鉄道車両2は、旋削後の車輪径の情報に基づいて速度計の表示変更、加速制御及び減速制御を行う。
【0074】
上記動作により、鉄道車両2には在姿車輪旋盤610により測定された旋削後の車輪径の情報が保持される。また、検修システム1には車輪の旋削を行った記録と、検査結果である旋削後の車輪径の情報とが保持される。したがって、実施形態に係る状態監視管理システム10によれば、在姿車輪旋盤610を用いた保守作業の記録と、保守作業の結果の鉄道車両2への反映作業を省力化することができる。これにより、例えば、検修システム1に在姿車輪旋盤610を用いた保守作業の記録を入力した上で、さらに鉄道車両2に旋削後の車輪径を入力する作業が必要ない。具体的には、在姿車輪旋盤610、検修システム1、鉄道車両2が互いに接続されていなければ、在姿車輪旋盤610を用いて鉄道車両2の車輪を旋削した場合に、保守作業員が定期検査として車輪径を測定し、その結果を検修システム1に入力する必要がある。また、他の作業員が検修システム1から出力される定期検査結果に基づき、鉄道車両2に車輪径を入力する必要がある。これに対し、実施形態に係る状態監視管理システム10によれば、これらの作業が必要ない。
【0075】
(2)車輪の平坦部情報出力
状態監視管理システム10において、フラット検出装置620から取得した車輪の平坦部情報を在姿車輪旋盤610に出力する場合の動作について説明する。図5は、状態監視管理システム10の動作を示すフローチャートである。
【0076】
最初に、監視サーバ30の制御部31は、通信部33を介して、フラット検出装置620から車輪の平坦部情報を取得する(ステップS21)。フラット検出装置620は、鉄道車両2にフラット検出装置620を走行させることで車輪の平坦部の有無を検出する。フラット検出装置620は、通信部623から車輪の平坦部情報を監視サーバ30に出力する。車輪の平坦部情報は、鉄道車両2を特定する情報である車両番号、台車の位置を示す台車番号、台車内の車輪の位置を示す情報、車輪の平坦部の有無を含む。
【0077】
次に、監視サーバ30の制御部31は、通信部33を介して、車輪の平坦部情報を在姿車輪旋盤610に出力する(ステップS22)。より詳細には、監視サーバ30の制御部31は、通信部33を介して、情報取得装置40の第2通信部43に車輪の平坦部情報を送信する。情報取得装置40は、第1通信部42から、車輪の平坦部情報を在姿車輪旋盤610に出力する。
【0078】
上記動作により、在姿車輪旋盤610は、フラット検出装置620から鉄道車両2について、車輪の平坦部の有無の情報を取得できる。したがって、在姿車輪旋盤610は、平坦部を有する車輪について旋削量を予め増加させることができる。これにより、在姿車輪旋盤610において、旋削量の不足により旋削後の車輪に平坦部が残存する場合を低減できる。
【0079】
なお、ステップS22において、監視サーバ30の制御部31は、在姿車輪旋盤610に対し、平坦部を有する車輪の旋削量が平坦部のない車輪の旋削量より大きくなるように、各車輪の車輪径の目標値を出力してもよい。これにより、保守作業担当者の負担を低減することができる。
【0080】
(3)在姿車輪旋盤の故障予知
状態監視管理システム10において、在姿車輪旋盤610の動作状態に基づき、在姿車輪旋盤610の故障予測を行う動作について説明する。図6は、状態監視管理システム10の動作を示すフローチャートである。
【0081】
最初に、情報取得装置40の第1通信部42は、在姿車輪旋盤610から動作状態を取得する(ステップS11)。動作状態は在姿車輪旋盤610の動作ログである。在姿車輪旋盤610の動作ログは、例えば、在姿車輪旋盤610の動作部612に含まれるモータの各々について、モータへの印加電圧と通過電流とを含む。
【0082】
次に、情報取得装置40の制御部41は、ステップS11で在姿車輪旋盤610から取得した動作状態を監視情報に変換する(ステップS12)。制御部41は、在姿車輪旋盤610の動作ログを、時刻ごとのレコードである監視情報に変換する。監視情報のレコードは、例えば、動作ログの取得時刻を含む。また、監視情報のレコードは、レコードが在姿車輪旋盤610の動作状態を示す場合、モータを特定する情報と、モータへの印加電圧と、モータの通過電流と、車輪径の目標値とを含む。制御部41は、監視情報をファイルとして保持する。監視情報を含むファイルは、例えばcsvファイルである。制御部41は、監視情報の1レコードを1行とし、1レコードに含まれる情報項目をカンマで区切ってなるファイルを保持する。
【0083】
次に、情報取得装置40の第2通信部43は、ステップS12で制御部41が生成した監視情報を監視サーバ30に送信する(ステップS13)。第2通信部43は、ステップS12で制御部41が生成して保持しているファイルを監視サーバ30に送信する。第2通信部43は、例えば、公衆通信網を介して監視サーバ30の通信部33にftpにより制御部41が保持しているファイルを送信する。
【0084】
次に、監視サーバ30の制御部31は、情報取得装置40から取得した監視情報を記憶部32に保持する(ステップS14)。制御部31は、ステップS13によって通信部33が受信したファイルに含まれる監視情報のレコードを、データベースである記憶部32にレコードとして保存する。
【0085】
次に、監視サーバ30の制御部31は、監視情報に基づいて、在姿車輪旋盤610の動作部612の故障予測を行う(ステップS31)。制御部31は、例えば、モータ出力と負荷(例えば、切込み量、回転数)との関係を中長期的に学習する。そして、制御部31は、例えば、モータ出力と、負荷から予測されるモータ出力との差が大きい場合、端末装置50に警告メッセージを送信する。また、制御部31は、例えば、モータ出力と、負荷から予測されるモータ出力との差が経時的に拡大している場合、モータ出力と、負荷から予測されるモータ出力との差が閾値以上となる日を予測して、端末装置50に送信する。なお、モータ出力と負荷との関係は故障予測の一例であり、例えば、動作部612の部品の動作状況を示す指標と、動作部612が行うべき作業の負荷を示す指標とを組み合わせて同様に学習を行うことで、モータ以外の任意の部品について故障予測を行うことができる。
【0086】
上記動作により、保守作業担当者は、在姿車輪旋盤610の動作部612について状態を把握し、必要に応じて直ちに保守作業を行うか、保守作業を計画することができる。
【0087】
(4)鉄道車両の故障予知
状態監視管理システム10において、在姿車輪旋盤610の動作状態及び鉄道車両2の情報に基づき、鉄道車両2の故障予測を行う動作について説明する。図7は、状態監視管理システム10の動作を示すフローチャートである。
【0088】
最初に、情報取得装置40の第1通信部42は、在姿車輪旋盤610から動作状態を取得する(ステップS11)。動作状態は在姿車輪旋盤610の動作ログである。在姿車輪旋盤610の動作ログは、例えば、鉄道車両2を特定する情報である車両番号、台車の位置を示す台車番号、車輪の旋削における車輪径の目標値、旋削後の車輪径の情報を含む。
【0089】
次に、情報取得装置40の制御部41は、ステップS11で在姿車輪旋盤610から取得した動作状態を監視情報に変換する(ステップS12)。制御部41は、在姿車輪旋盤610の動作ログを、時刻ごとのレコードである監視情報に変換する。監視情報のレコードは、動作ログの取得時刻を含む。監視情報のレコードは、レコードが旋削動作結果を示す場合、鉄道車両2を特定する情報である車両番号と、台車の位置を示す台車番号、車輪の旋削における車輪径の目標値、旋削後の車輪径の情報を含む。制御部41は、監視情報をファイルとして保持する。監視情報を含むファイルは、例えばcsvファイルである。制御部41は、監視情報の1レコードを1行とし、1レコードに含まれる情報項目をカンマで区切ってなるファイルを保持する。
【0090】
次に、情報取得装置40の第2通信部43は、ステップS12で制御部41が生成した監視情報を監視サーバ30に送信する(ステップS13)。第2通信部43は、ステップS12で制御部41が生成して保持しているファイルを監視サーバ30に送信する。第2通信部43は、例えば、公衆通信網を介して監視サーバ30の通信部33にftpにより制御部41が保持しているファイルを送信する。
【0091】
次に、鉄道車両2の通信部23は、走行ログを監視サーバ30に送信する(ステップS41)。走行ログは、例えば、鉄道車両2を特定する情報である車両番号、鉄道車両2の時刻ごとの速度、運転席のマスコンからの入力、モータへの印加電圧、モータの通過電流、制動装置の動作記録である。
【0092】
次に、監視サーバ30の制御部31は、情報取得装置40から取得した監視情報及び鉄道車両2から取得した走行ログを記憶部32に保持する(ステップS42)。制御部31は、監視情報及び走行ログのレコードを、データベースである記憶部32にレコードとして保存する。
【0093】
次に、監視サーバ30の制御部31は、監視情報及び走行ログに基づいて、鉄道車両2の故障予測を行う(ステップS43)。制御部31は、例えば、モータの電流値、又は電圧値、電圧周波数の経時変化が大きい場合、車輪の軸受が劣化していると判定し、端末装置50から出力する。
【0094】
上記動作により、保守作業担当者は、鉄道車両2について状態を把握し、必要に応じて直ちに保守作業を行うか、保守作業を計画することができる。
【0095】
4.効果
実施形態に係る状態監視管理システム10は、情報取得装置40と、記憶部32と、制御部31と、通信部33とを備える。情報取得装置40は、鉄道車両工場における設備機械60から動作状態を取得する。記憶部32は、動作状態に基づく監視情報を管理する。制御部31は、監視情報に基づき設備機械60を監視する。通信部33は、設備機械60により検修される鉄道車両2と通信する。情報取得装置40は、動作状態を監視情報に変換する制御部41を含む。動作状態は、鉄道車両2の車輪径を示す情報を含む。通信部33は、鉄道車両の車輪径の情報を鉄道車両2に通知する。これにより、鉄道車両2の車輪径を示す情報を、状態監視管理システム10が鉄道車両2を検修する設備機械60から取得して鉄道車両2に通知する。すなわち、鉄道車両2の運用に際し鉄道車両2が必要とする情報が、効率的に鉄道車両2に通知される。したがって、鉄道車両2の保守の効率を向上させることができる。具体的には、在姿車輪旋盤610、検修システム1、鉄道車両2が互いに接続されていなければ、在姿車輪旋盤610を用いて鉄道車両2の車輪を旋削した場合に、保守作業員が定期検査として車輪径を測定し、その結果を検修システム1に入力する必要がある。また、他の作業員が検修システム1から出力される定期検査結果に基づき、鉄道車両2に車輪径を入力する必要がある。これに対し、実施形態に係る状態監視管理システム10によれば、これらの作業が必要ない。
【0096】
また、実施形態に係る状態監視管理システム10では、設備機械60は、フラット検出装置620と、在姿車輪旋盤610と、を含む。フラット検出装置620は、鉄道車両2の車輪が外周部に平坦部を有するか否かを検出する。在姿車輪旋盤610は、鉄道車両2の車輪を旋削する。制御部31は、フラット検出装置620が鉄道車両2の車輪の平坦部を検出すると、情報取得装置40に、鉄道車両2の車輪が平坦部を有することを在姿車輪旋盤610に通知させる。これにより、在姿車輪旋盤610は、鉄道車両2の車輪が平坦部を有する場合に、旋削量を増加させることができる。したがって、鉄道車両2の車輪の保守の手順を効率化することが可能となる。
【0097】
また、実施形態に係る状態監視管理システム10では、制御部41は、フラット検出装置620が鉄道車両2の車輪の平坦部を検出すると、在姿車輪旋盤610に、フラット検出装置620が鉄道車両2の車輪の平坦部を検出しない場合よりも車輪を旋削する量を増加させる。これにより、在姿車輪旋盤610は、車輪が平坦部を有する場合と車輪が平坦部を有さない場合の各々の場合に適した旋削量を用いることができる。したがって、鉄道車両2の車輪の保守の手順をさらに効率化することが可能となる。
【0098】
また、実施形態に係る状態監視管理システム10では、在姿車輪旋盤610は、鉄道車両2に車輪を取り付けたまま車輪の旋削が可能である。したがって、鉄道車両2の台車を車輪の旋削の都度分解する必要がなく、鉄道車両2の保守の効率を向上させることができる。また、実施形態に係る状態監視管理システム10では、在姿車輪旋盤610による鉄道車両2の車輪の旋削量を適切に設定できるため、鉄道車両2の車輪の保守の手順をさらに効率化することが可能となる。
【0099】
また、実施形態に係る状態監視管理システム10では、制御部41は、設備機械60から取得した動作状態に基づく監視情報を用いて、設備機械60の故障予測を行う。したがって、設備機械60の保守を効率化することができる。
【0100】
また、実施形態に係る状態監視管理システム10では、端末装置50は、設備機械60から取得した動作状態に基づく監視情報を表示することができる。したがって、鉄道車両2の保守作業、並びに設備機械60の保守作業について、人の移動時間を削減して作業を効率化することが可能となる。
【0101】
また、実施形態に係る状態監視管理システム10では、制御部41は、設備機械60から取得した動作状態に基づく鉄道車両2の情報を検修システム1に出力する。したがって、検修システム1が、設備機械60から取得した動作状態に基づく鉄道車両2の情報を、鉄道車両2の定期検査の代替として使用可能である。これにより、鉄道車両2の定期検査において、実施済みの鉄道車両2の保守作業と重複した検査を省略することができ、鉄道車両2の検査の効率化を図ることができる。
【0102】
また、実施形態に係る状態監視管理システム10では、制御部41は、設備機械60から取得した動作状態に基づく監視情報を用いて、鉄道車両2の故障予測を行う。したがって、鉄道車両2の保守を効率化することができる。
【0103】
(実施形態に係るその他の変形例)
(1)実施形態では、フラット検出装置620は監視サーバ30と情報取得装置40とを介して在姿車輪旋盤610に車輪の平坦部情報を送信している。しかしながら、例えば、監視サーバ30は情報取得装置40を介さずに在姿車輪旋盤610に直接車輪の平坦部情報を送信してもよい。また、例えば、フラット検出装置620は、監視サーバ30と在姿車輪旋盤610の各々に車輪の平坦部情報を送信し、監視サーバ30は在姿車輪旋盤610に車輪の平坦部情報を送信しない、としてもよい。つまり、フラット検出装置620は在姿車輪旋盤610に車輪の平坦部情報を送信していれば、その通信の態様は任意の構成でよい。
【0104】
(2)実施形態では、在姿車輪旋盤610はフラット検出装置620から車輪の平坦部情報を受信している。しかしながら、例えば、在姿車輪旋盤610の近傍に端末装置50を設け、端末装置50は車輪の平坦部情報を受信して表示するとしてもよい。このような構成であっても、在姿車輪旋盤610に車輪径の目標値を入力する保守作業担当者に鉄道車両2の車輪に平坦部があるか否かを通知できる。したがって、保守作業担当者が在姿車輪旋盤610に車輪径の目標値を適切に設定することができる。
【0105】
(3)実施形態では、車輪に平坦部が有するか否かをフラット検出装置620が検出している。しかしながら、例えば、鉄道車両2の制御部21がフラット検出機能を有していてもよい。より詳細には、例えば、鉄道車両2は、台車の車軸に上下動を検出するセンサを備える。車輪が平坦部を有する場合、車輪の平坦部がレールに接触するごとに、車輪が取り付けられている車軸が上下に振動する。ここで、車軸の上下動は車軸の回転速度に依存した周期で定期的に発生する。したがって、鉄道車両2の制御部21は、車軸の回転速度に依存した周期で車軸が定期的に上下動する場合、車軸に取り付けられた車輪に平坦部があると検出できる。この場合、フラット検出装置620に替わって鉄道車両2の制御部21が監視サーバ30に車輪の平坦部情報を送信する。なお、鉄道車両は、上下動を検出するセンサに替えて、音を検知するセンサを備えてもよい。センサは、車輪の平坦部がレールに接触するごとに周期的に発生する音を検知する。
【0106】
(4)実施形態では、設備機械60の例として在姿車輪旋盤610とフラット検出装置620とを挙げているが、設備機械60はトラバーサなどその他の設備を含んでいてもよい。この場合において、設備機械60は情報取得装置40を介して監視サーバ30と通信してもよいし、設備機械60は監視サーバ30と直接通信してもよい。情報取得装置40を介する場合、監視サーバ30と設備機械60とは直接通信できなくてもよいため、設備機械60の制御部の構成に関わらず、監視サーバ30が設備機械60の動作情報を取得することが容易となる。なお、監視サーバ30が設備機械60の動作情報を直接取得できる場合には、設備機械60が監視サーバ30と直接通信することで、情報取得装置40を使用する必要がなくなり、状態監視管理システム10の構成を単純化できる。
【0107】
(態様)
本開示の第1の態様に係る状態監視・管理システム(状態監視管理システム10)は、鉄道車両工場における設備機械(60)を用いた設備機械(60)と鉄道車両(2)の状態監視・管理システムである。状態監視・管理システム(状態監視管理システム10)は、情報取得部(情報取得装置40)と、記憶部(32)と、監視部(制御部31)と、通信部(33)と、を備える。情報取得部(情報取得装置40)は、鉄道車両工場における設備機械(60)から動作状態を取得する。記憶部(32)は、動作状態に基づく監視情報を管理する。監視部(制御部31)は、監視情報に基づき設備機械(60)を監視する。通信部(33)は、設備機械(60)により検修される鉄道車両(2)と通信する。情報取得部(情報取得装置40)は、動作状態を監視応対に変換する変換部(制御部41)を含む。動作状態は、鉄道車両(2)の車輪径を示す情報を含む。通信部(33)は、鉄道車両(2)の車輪径を鉄道車両(2)に通知する。
【0108】
上記態様に係る状態監視・管理システム(状態監視管理システム10)によれば、鉄道車両(2)の車輪径を示す情報を、状態監視・管理システム(状態監視管理システム10)が鉄道車両(2)を検修する設備機械(60)から取得して鉄道車両(2)に通知する。すなわち、鉄道車両(2)の運用に際し鉄道車両(2)が必要とする情報が、効率的に鉄道車両(2)に通知される。したがって、鉄道車両(2)の保守の効率を向上させることができる。
【0109】
本開示の第2の態様に係る状態監視・管理システム(状態監視管理システム10)は、鉄道車両工場における設備機械(60)を用いた設備機械(60)と鉄道車両(2)の状態監視・管理システムである。状態監視・管理システム(状態監視管理システム10)は、情報取得部(情報取得装置40)と、記憶部(32)と、監視部(制御部31)と、を備える。情報取得部(情報取得装置40)は、鉄道車両工場における設備機械(60)から動作状態を取得する。記憶部(32)は、動作状態に基づく監視情報を管理する。監視部(制御部31)は、監視情報に基づき設備機械(60)を監視する。設備機械(60)は、フラット検出装置(620)と、旋盤装置(在姿車輪旋盤610)と、を含む。フラット検出装置(620)は、鉄道車両(2)の車輪が外周部に平坦部を有するか否かを検出する。旋盤装置(在姿車輪旋盤610)は、鉄道車両(2)の車輪を旋削する。監視部(制御部31)は、フラット検出装置(620)が鉄道車両(2)の車輪の平坦部を検出すると、情報取得部(情報取得装置40)に、鉄道車両(2)の車輪が平坦部を有することを旋盤装置(在姿車輪旋盤610)に通知させる。
【0110】
上記態様に係る状態監視・管理システム(状態監視管理システム10)によれば、旋盤装置(在姿車輪旋盤610)は、鉄道車両(2)の車輪が平坦部を有する場合に、旋削量を増加させることができる。したがって、鉄道車両(2)の車輪の保守の手順を効率化することが可能となる。
【0111】
本開示の第3の態様に係る状態監視・管理システム(状態監視管理システム10)では、第2の態様において、監視部(制御部41)は、フラット検出装置(620)が鉄道車両(2)の車輪の平坦部を検出すると、旋盤装置(在姿車輪旋盤610)に、フラット検出装置(620)が鉄道車両(2)の車輪の平坦部を検出しない場合よりも車輪を旋削する量を増加させる。
【0112】
上記態様に係る状態監視・管理システム(状態監視管理システム10)によれば、旋盤装置(在姿車輪旋盤610)は、車輪が平坦部を有する場合と車輪が平坦部を有さない場合の各々の場合に適した旋削量を用いることができる。したがって、鉄道車両(2)の車輪の保守の手順をさらに効率化することが可能となる。
【0113】
本開示の第4の態様に係る状態監視・管理システム(状態監視管理システム10)では、第2又は第3の態様において、旋盤装置(在姿車輪旋盤610)は、鉄道車両(2)に車輪を取り付けたまま車輪の旋削が可能な旋盤装置(在姿車輪旋盤610)である。
【0114】
上記態様に係る状態監視・管理システム(状態監視管理システム10)によれば、鉄道車両(2)の台車を車輪の旋削の都度分解する必要がなく、鉄道車両(2)の保守の効率を向上させることができる。また、上記態様に係る状態監視・管理システム(状態監視管理システム10)では、旋盤装置(在姿車輪旋盤610)による鉄道車両(2)の車輪の旋削量を適切に設定できるため、鉄道車両2の車輪の保守の手順をさらに効率化することが可能となる。
【符号の説明】
【0115】
10 状態監視管理システム(鉄道車両工場における設備機械を用いた設備機械と鉄道車両の状態監視・管理システム)
31 制御部(監視部)
32 記憶部
33 通信部
40 情報取得装置(情報取得部)
41 制御部(変換部)
60 設備機械
610 在姿車輪旋盤(旋盤装置)
620 フラット検出装置
2 鉄道車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7