(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136688
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】緩衝器
(51)【国際特許分類】
F16F 9/32 20060101AFI20240927BHJP
F16F 9/19 20060101ALI20240927BHJP
B60G 13/08 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
F16F9/32 Z
F16F9/19
F16F9/32 N
B60G13/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047876
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 幹郎
【テーマコード(参考)】
3D301
3J069
【Fターム(参考)】
3D301AA01
3D301DA33
3D301DA38
3D301DB39
3J069AA52
3J069AA54
3J069AA66
3J069CC15
3J069CC40
3J069EE28
(57)【要約】
【課題】コスト増および大型化を抑制することが可能となる緩衝器を提供する。
【解決手段】シリンダ17内に挿入される挿入部51と、挿入部51の軸方向端部から突出しピストン45に挿入されて固定される固定部52と、を有するピストンロッド50と、ピストン45の移動により少なくとも第1室48からの作動流体の流れを抑制する第1減衰力発生機構61と、第1減衰力発生機構61と並列に設けられ、ピストン45の移動により少なくとも第2室49からの作動流体の流れを抑制する第2減衰力発生機構62と、気体が封入されたガス室118を内部に有すると共に、第1室48および第2室49の少なくとも一方に配置されて固定部52に固定されるアキュムレータ74,122と、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体が封入されるシリンダと、
前記シリンダ内に摺動可能に嵌装され、該シリンダ内を第1室と第2室の2つのシリンダ内室に区画するピストンと、
前記シリンダ内に挿入される挿入部と、前記挿入部の軸方向端部から突出し前記ピストンに挿入されて固定される固定部と、を有するピストンロッドと、
前記ピストンの移動により少なくとも前記第1室からの前記作動流体の流れを抑制する第1減衰力発生機構と、
第1減衰力発生機構と並列に設けられ、前記ピストンの移動により少なくとも前記第2室からの前記作動流体の流れを抑制する第2減衰力発生機構と、
気体が封入されたガス室を内部に有すると共に、前記第1室および前記第2室の少なくとも一方に配置されて前記固定部に固定されるアキュムレータと、
を有する緩衝器。
【請求項2】
請求項1に記載の緩衝器であって、
前記固定部の前記挿入部とは反対側の端部に設けられるナットを有し、
前記ピストンおよび前記アキュムレータは、前記ナットと前記挿入部の軸方向端面とに挟持され固定される緩衝器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の緩衝器であって、
前記アキュムレータは、径方向内側に前記固定部が挿入される挿入穴を有する複数の板材により形成され、前記複数の板材の径方向内周部同士と径方向外周部同士とが溶接されることで前記ガス室が密封される緩衝器。
【請求項4】
請求項3に記載の緩衝器であって、
前記アキュムレータの軸方向両側には、
前記複数の板材の径方向内周部の溶接部の少なくとも一部を覆う被覆部と、
前記アキュムレータの前記溶接部よりも径方向外側であって前記ガス室よりも径方向内側に当接する当接部と、
を有する部材を備える緩衝器。
【請求項5】
請求項1または2に記載の緩衝器であって、
前記第1減衰力発生機構または前記第2減衰力発生機構は、前記シリンダ内の圧力によってバルブが開弁または閉弁されることで前記作動流体の流れを抑制し、
前記アキュムレータは、前記シリンダ内の圧力によって前記バルブが開弁する前に前記ガス室が膨張または縮小する緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
緩衝器にアキュムレータを設けて高周波振動を抑制する構造が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の緩衝器は、シリンダの外側にアキュムレータを設けているため、シリンダにアキュムレータを取り付けるための構造部が必要となって、コスト増になってしまうと共に、サイズが大型化してしまう。
【0005】
したがって、本発明は、コスト増および大型化を抑制することが可能となる緩衝器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る緩衝器の一態様は、作動流体が封入されるシリンダと、前記シリンダ内に摺動可能に嵌装され、該シリンダ内を第1室と第2室の2つのシリンダ内室に区画するピストンと、前記シリンダ内に挿入される挿入部と、前記挿入部の軸方向端部から突出し前記ピストンに挿入されて固定される固定部と、を有するピストンロッドと、前記ピストンの移動により少なくとも前記第1室からの前記作動流体の流れを抑制する第1減衰力発生機構と、第1減衰力発生機構と並列に設けられ、前記ピストンの移動により少なくとも前記第2室からの前記作動流体の流れを抑制する第2減衰力発生機構と、気体が封入されたガス室を内部に有すると共に、前記第1室および前記第2室の少なくとも一方に配置されて前記固定部に固定されるアキュムレータと、を有する、構成とした。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、コスト増および大型化を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係る第1実施形態の緩衝器を示す断面図である。
【
図2】本発明に係る第1実施形態の緩衝器を示す要部の断面図である。
【
図3】本発明に係る第1実施形態の緩衝器のアキュムレータを示す断面図である。
【
図4】本発明に係る第1実施形態の緩衝器等のロッド加速度を示す特性線図である。
【
図5】本発明に係る第2実施形態の緩衝器を示す要部の断面図である。
【
図6】本発明に係る第3実施形態の緩衝器を示す要部の断面図である。
【
図7】本発明に係る第4実施形態の緩衝器のアキュムレータ周辺を示す片側断面図である。
【
図8】本発明に係る第5実施形態の緩衝器を示す要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1実施形態]
第1実施形態を
図1~
図4に基づいて説明する。
図1は、第1実施形態の緩衝器11を示すものである。この緩衝器11は、自動車や鉄道車両等の車両のサスペンション装置に用いられるものである。緩衝器11は、具体的には自動車のサスペンション装置に用いられるものである。緩衝器11は、内筒15と外筒16とを有するシリンダ17を備えた複筒式の緩衝器である。内筒15は円筒状である。外筒16は内筒15よりも大径の有底筒状である。外筒16は内筒15の径方向外側に、内筒15と同軸状に設けられている。外筒16と内筒15との間はリザーバ室18となっている。
【0010】
外筒16は、胴部材20と底部材21とを有している。胴部材20は段付きの円筒状である。底部材21は、胴部材20の軸方向の一方の端部に嵌合されて、この端部を閉塞している。胴部材20の底部材21とは反対側は開口部22となっている。外筒16の開口部22は、シリンダ17においても軸方向の一端に設けられる。外筒16の底部材21は、シリンダ17においても軸方向の他端に設けられる。
【0011】
緩衝器11は、バルブボディ25とロッドガイド26とを備えている。
【0012】
バルブボディ25は、円環状であり、内筒15および外筒16の軸方向の一端部に設けられている。バルブボディ25は、ベースバルブ30を構成するものであり、外周部に大径部31と小径部32とを有している。大径部31の外径は小径部32の外径よりも大径である。バルブボディ25は底部材21に載置されている。その際に、バルブボディ25は、大径部31において底部材21、すなわち外筒16に対し径方向に位置決めされる。
【0013】
ロッドガイド26は、円環状であり、内筒15および外筒16の軸方向の他端部に設けられている。ロッドガイド26は、シリンダ17の開口部22側に設けられている。ロッドガイド26は、外周部に大径部35と小径部36とを有している。大径部35の外径は小径部36の外径よりも大径である。ロッドガイド26は、大径部35において、外筒16の胴部材20の開口部22側の内周部に嵌合し、これにより、外筒16に対し径方向に位置決めされる。
【0014】
内筒15は、軸方向の一端部が、バルブボディ25の小径部32に、軸方向において大径部31に当接するまで嵌合されている。内筒15は、軸方向の一端部が、このバルブボディ25を介して外筒16の底部材21に載置されている。また、内筒15は、軸方向の他端部が、ロッドガイド26の小径部36に、軸方向において大径部35に当接するまで嵌合されている。内筒15は、この他端部が、ロッドガイド26を介して外筒16の胴部材20に支持されている。この状態で、内筒15は、外筒16に対して軸方向および径方向に位置決めされる。ここで、バルブボディ25と底部材21との間は、バルブボディ25に形成された通路溝40を介して内筒15と外筒16との間に連通している。バルブボディ25と底部材21との間は、内筒15と外筒16との間と同様、リザーバ室18を構成している。
【0015】
緩衝器11は、円環状のロッドシール41を備えている。ロッドシール41は、シリンダ17の軸方向におけるロッドガイド26の底部材21とは反対側に設けられている。このロッドシール41も、ロッドガイド26と同様に胴部材20の内周部に嵌合されている。外筒16には、胴部材20の底部材21とは反対の端部に係止部43が形成されている。係止部43は、胴部材20をカール加工等の加締め加工によって径方向内方に塑性変形させて形成されている。ロッドシール41は、この係止部43とロッドガイド26とに挟持されている。ロッドシール41は、その際に、ロッドガイド26によって胴部材20の内周面に押し付けられる。これにより、ロッドシール41は、外筒16の開口部22を閉塞する。ロッドシール41は、具体的にはオイルシールである。
【0016】
緩衝器11は、円環状のピストン45を備えている。ピストン45は、シリンダ17の内筒15内に摺動可能に嵌装されている。ピストン45は、シリンダ17の内筒15内を第1室48と第2室49との2つのシリンダ内室に区画している。第1室48は、内筒15内のピストン45とロッドガイド26との間に設けられている。第2室49は、内筒15内のピストン45とバルブボディ25との間に設けられている。第2室49は、バルブボディ25によって、リザーバ室18と区画されている。シリンダ17内には、第1室48および第2室49に作動流体としての油液Lが封入されている。シリンダ17内には、リザーバ室18に作動流体としてのガスGと油液Lとが封入されている。
【0017】
緩衝器11は、ピストンロッド50を備えている。ピストンロッド50は、主軸部51(挿入部)と取付軸部52(固定部)とを有している。取付軸部52は、主軸部51と同軸をなして主軸部51の軸方向端部の軸方向端面53から突出している。取付軸部52は、その外径が主軸部51の外径よりも小径である。ピストンロッド50は、主軸部51がシリンダ17外からロッドシール41およびロッドガイド26に挿通されてシリンダ17内に挿入されている。ピストンロッド50は、取付軸部52がシリンダ17内に配置されている。ピストン45は、径方向の内側に取付軸部52が挿入されており、これにより、ピストンロッド50に径方向に位置決めされて支持されている。
【0018】
ピストンロッド50は、金属製であって、第1室48内を貫通している。ピストンロッド50は第2室49を貫通していない。よって、第1室48はピストンロッド50が貫通するロッド側室である。第2室49はシリンダ17の底部材21側のボトム側室である。緩衝器11は、外筒16が車両の車輪側に連結され、ピストンロッド50の主軸部51のシリンダ17から外部に延出する部分が車両の車体側に連結される。
【0019】
ロッドガイド26は、ピストンロッド50を摺動可能に支持する。ピストンロッド50は、主軸部51の外周面がロッドガイド26に案内される。ピストンロッド50は、シリンダ17に対して、ピストン45と一体に軸方向に移動する。ピストンロッド50がシリンダ17からの突出量を増やす緩衝器11の伸び行程において、ピストン45は第1室48側へ移動する。ピストンロッド50がシリンダ17からの突出量を減らす緩衝器11の縮み行程において、ピストン45は第2室49側へ移動する。
【0020】
ロッドシール41は、ロッドガイド26とによって、外筒16の胴部材20とピストンロッド50の主軸部51との間をシールして、内筒15内の油液Lと、リザーバ室18内のガスGおよび油液Lとが外部に漏出するのを規制する。
【0021】
ピストン45には、通路55および通路56が形成されている。通路55および通路56は、いずれもピストン45を軸方向に貫通している。通路55,56は、第1室48と第2室49とを連通可能である。
【0022】
緩衝器11は、ピストン45の軸方向の第2室49側、すなわち底部材21側に設けられる第1減衰力発生機構61と、ピストン45の軸方向の第1室48側、すなわち底部材21とは反対側に設けられる第2減衰力発生機構62と、を有している。
【0023】
図2に示すように、第1減衰力発生機構61は、ディスクバルブ63(バルブ)を備えている。ディスクバルブ63は、金属製の有孔の円形平板状のディスクが複数枚積層されて構成されている。ディスクバルブ63は、ピストン45の第2室49側に配置されている。ディスクバルブ63は、径方向の内側に、ピストンロッド50の取付軸部52が挿入されており、これにより、ピストンロッド50に径方向に位置決めされて支持されている。ディスクバルブ63は、ピストン45に当接することで通路55を閉塞する。
【0024】
ピストンロッド50が内筒15および外筒16からの突出量を増やす伸び側に移動しピストン45が第1室48を狭める方向に移動すると、第1室48の圧力が第2室49の圧力よりも高くなる。その差圧が所定値より大きくなると、第1減衰力発生機構61は、ディスクバルブ63が通路55を開いて第1室48の油液Lを第2室49に流すことになる。その際にディスクバルブ63は減衰力を発生させる。
【0025】
第1減衰力発生機構61は、ピストン45およびディスクバルブ63のうちの少なくとも一方に形成された図示略の固定オリフィスを有している。この固定オリフィスは、ディスクバルブ63が通路55を最も閉塞した状態でも通路55を介して第1室48と第2室49とを連通させる。このため、第1減衰力発生機構61は、その固定オリフィスが、伸び行程および縮み行程の両方において、通路55を介して第1室48と第2室49とを連通させる。
【0026】
第1減衰力発生機構61は、ピストン45の移動により少なくとも第1室48からの通路55を通る油液Lの流れを抑制する。また、第1減衰力発生機構61は、シリンダ17内の圧力によってディスクバルブ63が開弁または閉弁されることで油液Lの流れを抑制する。
【0027】
第2減衰力発生機構62は、ディスクバルブ64(バルブ)を備えている。ディスクバルブ64は、金属製の有孔の円形平板状のディスクが複数枚積層されて構成されている。ディスクバルブ64は、ピストン45の第1室48側に配置されている。ディスクバルブ64は、径方向の内側に、ピストンロッド50の取付軸部52が挿入されており、これにより、ピストンロッド50に径方向に位置決めされて支持されている。ディスクバルブ64は、ピストン45に当接することで通路56を閉塞する。
【0028】
ピストンロッド50が内筒15および外筒16内への進入量を増やす縮み側に移動しピストン45が第2室49を狭める方向に移動すると、第2室49の圧力が第1室48の圧力よりも高くなる。その差圧が所定値より大きくなると、第2減衰力発生機構62は、ディスクバルブ64が通路56を開いて第2室49の油液Lを第1室48に流すことになる。その際にディスクバルブ64は減衰力を発生させる。
【0029】
第2減衰力発生機構62は、ピストン45およびディスクバルブ64のうちの少なくとも一方に形成された図示略の固定オリフィスを有している。この固定オリフィスは、ディスクバルブ64が通路56を最も閉塞した状態でも通路56を介して第1室48と第2室49とを連通させる。このため、第2減衰力発生機構62は、その固定オリフィスが、伸び行程および縮み行程の両方において、通路56を介して第1室48と第2室49とを連通させる。
【0030】
第2減衰力発生機構62は、ピストン45の移動により少なくとも第2室49からの通路56を通る油液Lの流れを抑制する。また、第2減衰力発生機構62は、シリンダ17内の圧力によってディスクバルブ64が開弁または閉弁されることで油液Lの流れを抑制する。
【0031】
第1減衰力発生機構61と、第2減衰力発生機構62とは、ピストン45に、並列で逆向きに設けられている。
【0032】
ピストンロッドの50の取付軸部52には、ピストンロッドの50の軸方向における主軸部51の軸方向端面53とディスクバルブ64との間に、主軸部51側から順に、ワシャ71と、ディスク72(ストッパ部)と、複数枚、具体的には2枚の小径ディスク73と、アキュムレータ74と、複数枚、具体的には2枚の小径ディスク75と、が設けられている。
【0033】
ワシャ71は、金属製であり、有孔の円板状である。ワシャ71は、径方向の内側に、ピストンロッド50の取付軸部52が挿入されており、これにより、ピストンロッド50に径方向に位置決めされて支持されている。ワシャ71は、主軸部51の軸方向端面53に当接している。ワシャ71は、基板部81と、段差状部82とを有している。基板部81は、有孔の円板状である。段差状部82は、基板部81の外周部に設けられた円環状であり、基板部81から基板部81の軸方向における一側に段差状に突出している。基板部81は、その外径が、主軸部51の外径よりも大径である。ワシャ71は、基板部81の径方向内側に取付軸部52が挿入されており、基板部81が、主軸部51の軸方向端面53に当接する。その際に、ワシャ71は、段差状部82が、基板部81から、基板部81の軸方向における主軸部51側に突出する向きとされる。
【0034】
ディスク72は、金属製であり、有孔の円形平板状である。ディスク72は、その外径が、ワシャ71の基板部81の外径よりも若干大径であり、ワシャ71の段差状部82の外径よりも小径である。ディスク72は、径方向の内側に、ピストンロッド50の取付軸部52が挿入されており、これにより、ピストンロッド50に径方向に位置決めされて支持されている。ディスク72は、ワシャ71の基板部81に当接している。
【0035】
小径ディスク73は、金属製であり、有孔の円形平板状である。小径ディスク73は、その外径が、ディスク72の外径よりも小径である。小径ディスク73は、径方向の内側に、ピストンロッド50の取付軸部52が挿入されており、これにより、ピストンロッド50に径方向に位置決めされて支持されている。
【0036】
アキュムレータ74は、
図3に示すように、複数具体的には2枚の金属製の板材90により形成されている。2枚の板材90は、同形状である。2枚の板材90は、いずれも平板からプレス成形によって形成されている。
【0037】
板材90は、径方向の内側に挿入穴91を有する有孔円板状であり、内周側板部92と、膨出板部93と、外周側板部94とを有している。
【0038】
内周側板部92は、径方向の内側に挿入穴91を有する有孔の円形平板状である。内周側板部92は、その外径が、
図2に示す小径ディスク73の外径よりも大径である。
【0039】
図3に示すように、膨出板部93は、内側傾斜板部101と、平板状部102と、外側傾斜板部103とを有している。
【0040】
内側傾斜板部101は、内周側板部92の外周縁部から内周側板部92の径方向における外方に広がりつつ内周側板部92の軸方向一側に広がっている。
【0041】
平板状部102は、内周側板部92の径方向における内側傾斜板部101の内周側板部92とは反対側の端縁部から内周側板部92の径方向における外方に広がっている。平板状部102は、円形平板状である。平板状部102は、内周側板部92の軸方向において内周側板部92から離れた位置に、内周側板部92と平行に広がっている。
【0042】
外側傾斜板部103は、平板状部102の外周縁部から平板状部102の径方向における外方に広がりつつ平板状部102の軸方向における内側傾斜板部101と同側に広がっている。
【0043】
外周側板部94は、平板状部102の径方向における外側傾斜板部103の平板状部102とは反対側の端縁部から平板状部102の径方向における外方に広がっている。外周側板部94は、円形平板状である。外周側板部94は、平板状部102と平行であり、内周側板部92と同一平面に配置されている。
【0044】
このような板材90が、一対、互いの膨出板部93を反対方向に膨出させる向きで、内周側板部92同士を径方向の位置を合わせて面接触させ、外周側板部94同士を径方向の位置を合わせて面接触させた状態とされる。そして、この状態で、一対の板材90が、径方向内周部同士、すなわち内周側板部92の径方向内周部同士が全周にわたって溶接されて内周溶接部105が形成され、径方向外周部同士、すなわち外周側板部94の径方向外周部同士が全周にわたって溶接されて外周溶接部106が形成されることで、アキュムレータ74が形成される。
【0045】
このようにして形成されたアキュムレータ74は、一対の板材90のそれぞれの内周側板部92が、互いに径方向の位置を合わせて軸方向に重なることで内周側板部112を構成する。内周側板部112は、有孔の円形平板状であり、その外径が、
図2に示す小径ディスク73の外径よりも大径である。内周側板部112は、内周溶接部105を含んでいる。
【0046】
また、アキュムレータ74は、
図3に示すように、一対の板材90のそれぞれの外周側板部94が、互いに径方向の位置を合わせて軸方向に重なることで外周側板部114を構成する。外周側板部114は、有孔の円形平板状であり、その外径が、
図2に示すワシャ71の外径よりも大径である。外周側板部114は、外周溶接部106を含んでいる。
【0047】
また、アキュムレータ74は、
図3に示すように、一対の板材90のそれぞれの膨出板部93が、互いに径方向の位置を合わせることで室形成部113を構成する。室形成部113は円環状である。
【0048】
また、アキュムレータ74は、一対の板材90のそれぞれの挿入穴91が、互いに径方向の位置を合わせて軸方向に重なることで挿入穴111を構成する。挿入穴111は、内周溶接部105によって形成されている。
【0049】
アキュムレータ74は、一対の膨出板部93で形成される室形成部113の内部が空気等の気体が封入されたガス室118となる。このガス室118は、一対の板材90が、径方向内周部同士が全周にわたって溶接され、径方向外周部同士が全周にわたって溶接されることで、密封されている。アキュムレータ74は、ドーナツ状のダイヤフラムである。アキュムレータ74は、それぞれが径方向内側に挿入穴91を有する複数の板材90により形成され、複数の板材90の径方向内周部同士と径方向外周部同士とが溶接されることでガス室118が密封される。
【0050】
アキュムレータ74は、
図2に示すように、径方向内側の挿入穴111に、ピストンロッド50の取付軸部52が挿入されており、これにより、ピストンロッド50に径方向に位置決めされて支持されている。アキュムレータ74は、内周側板部112の外径、すなわち室形成部113の内径が、小径ディスク73の外径よりも大径であり、ディスク72の外径よりも小径である。アキュムレータ74は、室形成部113の外径が、ディスク72の外径よりも大径であり、ディスクバルブ64の外径よりも大径である。
【0051】
小径ディスク75は、小径ディスク73と同形状の共通部品である。小径ディスク75は、径方向の内側に、ピストンロッド50の取付軸部52が挿入されており、これにより、ピストンロッド50に径方向に位置決めされて支持されている。アキュムレータ74は、内周側板部112の外径、すなわち室形成部113の内径が、小径ディスク75の外径よりも大径である。
【0052】
ここで、複数枚、具体的には2枚の小径ディスク73の2枚合わせた軸方向の厚さは、アキュムレータ74の軸方向における内周側板部92からの膨出板部93の突出量よりも大きい。よって、アキュムレータ74は、ディスク72から軸方向に離れている。ディスク72は、アキュムレータ74が変形する際に、アキュムレータ74に当接すると、その過度な変形を抑制する。
【0053】
また、複数枚、具体的には2枚の小径ディスク75の2枚合わせた軸方向の厚さは、アキュムレータ74の軸方向における内周側板部92からの膨出板部93の突出量よりも大きい。よって、アキュムレータ74は、ディスクバルブ64から軸方向に離れている。ディスクバルブ64は、アキュムレータ74が変形する際に、アキュムレータ74に当接すると、その過度な変形を抑制する。
【0054】
ピストンロッドの50の取付軸部52には、ピストンロッドの50の軸方向におけるディスクバルブ63のピストン45とは反対側に、ディスクバルブ63側から順に、複数枚、具体的には3枚の小径ディスク121と、アキュムレータ122と、複数枚、具体的には2枚の小径ディスク123と、ディスク124(ストッパ部)と、ワシャ125とが設けられている。
【0055】
小径ディスク121は、小径ディスク73と同形状の共通部品である。小径ディスク121は、径方向の内側に、ピストンロッド50の取付軸部52が挿入されており、これにより、ピストンロッド50に径方向に位置決めされて支持されている。
【0056】
アキュムレータ122は、アキュムレータ74と同形状の共通部品である。アキュムレータ74は、径方向内側の挿入穴111に、ピストンロッド50の取付軸部52が挿入されており、これにより、ピストンロッド50に径方向に位置決めされて支持されている。
【0057】
小径ディスク123は、小径ディスク73と同形状の共通部品である。小径ディスク123は、径方向の内側に、ピストンロッド50の取付軸部52が挿入されており、これにより、ピストンロッド50に径方向に位置決めされて支持されている。アキュムレータ122は、内周側板部112の外径、すなわち室形成部113の内径が、小径ディスク121,123の外径よりも大径である。
【0058】
ディスク124は、金属製であり、有孔の円形平板状である。ディスク124は、その外径が、小径ディスク123の外径よりも大径である。ディスク124は、径方向の内側に、ピストンロッド50の取付軸部52が挿入されており、これにより、ピストンロッド50に径方向に位置決めされて支持されている。
【0059】
ワシャ125は、金属製であり、有孔の円板状である。ワシャ125は、径方向の内側に、ピストンロッド50の取付軸部52が挿入されており、これにより、ピストンロッド50に径方向に位置決めされて支持されている。ワシャ125は、その外径が、小径ディスク121,123の外径よりも大径であり、ディスク124の外径よりも小径である。
【0060】
アキュムレータ122は、内周側板部112の外径が、ディスク124の外径よりも小径である。アキュムレータ122は、室形成部113の内径がディスク124の外径よりも小径であり、室形成部113の外径がディスク124の外径よりも大径である。アキュムレータ122は、室形成部113の外径がディスクバルブ63の外径よりも大径である。
【0061】
ここで、複数枚、具体的には3枚の小径ディスク121の3枚合わせた軸方向の厚さは、アキュムレータ122の軸方向における内周側板部92からの膨出板部93の突出量よりも大きい。よって、アキュムレータ122は、ディスクバルブ63から軸方向に離れている。ディスクバルブ63は、アキュムレータ122が変形する際に、アキュムレータ122に当接すると、その過度な変形を抑制する。
【0062】
また、複数枚、具体的には2枚の小径ディスク123の2枚合わせた軸方向の厚さは、アキュムレータ122の軸方向における内周側板部92からの膨出板部93の突出量よりも大きい。よって、アキュムレータ122は、ディスク124から軸方向に離れている。ディスク124は、アキュムレータ122が変形する際に、アキュムレータ122に当接すると、その過度な変形を抑制する。
【0063】
ピストンロッド50には、主軸部51の軸方向端面53に、ワシャ71、ディスク72、複数枚の小径ディスク73、アキュムレータ74、複数枚の小径ディスク75、ディスクバルブ64、ピストン45、ディスクバルブ63、複数枚の小径ディスク121、アキュムレータ122、複数枚の小径ディスク123、ディスク124、ワシャ125が、この順番で、それぞれの径方向内側に取付軸部52を挿通させながら、載置される。この状態で、取付軸部52は、軸方向の主軸部51とは反対側の端部が、ワシャ125から突出する。取付軸部52には、この主軸部51とは反対側の端部の外周部にオネジ131が形成されている。このオネジ131にナット132が螺合されて締め付けられる。
【0064】
これにより、ワシャ71、ディスク72、複数枚の小径ディスク73、アキュムレータ74、複数枚の小径ディスク75、ディスクバルブ64、ピストン45、ディスクバルブ63、複数枚の小径ディスク121、アキュムレータ122、複数枚の小径ディスク123、ディスク124およびワシャ125は、少なくとも内周側が、主軸部51の軸方向端面53とナット132とで軸方向に挟持されて、ピストンロッド50の取付軸部52に固定される。その際に、アキュムレータ74は、平板状の内周側板部112が、小径ディスク73と小径ディスク75とに挟持され、アキュムレータ122は、平板状の内周側板部112が、小径ディスク121と小径ディスク123とに挟持される。
【0065】
言い換えれば、ピストンロッド50の取付軸部52が、ワシャ71、ディスク72、複数枚の小径ディスク73、アキュムレータ74、複数枚の小径ディスク75、ディスクバルブ64、ピストン45、ディスクバルブ63、複数枚の小径ディスク121、アキュムレータ122、複数枚の小径ディスク123、ディスク124およびワシャ125に挿入されて固定される。
【0066】
アキュムレータ74は、第1室48に配置されており、アキュムレータ122は、第2室49に配置されている。
【0067】
ワシャ71の軸方向におけるピストン45とは反対側には、緩衝部材141が載置されている。緩衝部材141は、ゴム等の弾性材料からなっており、円環状である。緩衝部材141は、径方向の内側に、ピストンロッド50の主軸部51が挿入されており、これにより、ピストンロッド50に径方向に位置決めされて支持されている。緩衝部材141は、ピストンロッド50が伸び切り位置に位置すると、
図1に示すロッドガイド26に当接して、その衝撃を緩和する。
【0068】
バルブボディ25には、液通路161および液通路162が形成されている。液通路161および液通路162は、いずれもバルブボディ25を軸方向に貫通している。液通路161,162は、いずれも第2室49とリザーバ室18とを連通可能である。
【0069】
ベースバルブ30は、ディスクバルブ165およびディスクバルブ166を備えている。ディスクバルブ165は、バルブボディ25の軸方向における底部材21側に設けられている。ディスクバルブ165は、バルブボディ25に当接することで液通路161を閉塞する。ディスクバルブ166は、バルブボディ25の軸方向における底部材21とは反対側に設けられている。ディスクバルブ166は、バルブボディ25に当接することで液通路162を閉塞する。ベースバルブ30は、ピン168を有している。このピン168がディスクバルブ165,166をバルブボディ25に取り付けている。バルブボディ25、ディスクバルブ165,166およびピン168等がベースバルブ30を構成している。
【0070】
ピストンロッド50が縮み側に移動しピストン45が第2室49を狭める方向に移動すると第2室49の圧力がリザーバ室18の圧力よりも高くなる。ベースバルブ30は、その差圧が所定値より大きくなると、ディスクバルブ165が液通路161を開いて、第2室49の油液Lをリザーバ室18に流す。その際にディスクバルブ165が減衰力を発生させる。ピストンロッド50が伸び側に移動しピストン45が第1室48側に移動すると第2室49の圧力がリザーバ室18の圧力より低下する。その差圧が所定値より大きくなると、ベースバルブ30は、ディスクバルブ166が液通路162を開いて、リザーバ室18の油液Lを第2室49に流す。ディスクバルブ166は、その際にリザーバ室18から第2室49内に実質的に減衰力を発生させずに油液Lを流すサクションバルブである。なお、ディスクバルブ166で減衰力を発生させても良い。
【0071】
次に、緩衝器11の主な作動について説明する。
【0072】
{伸び行程において、ピストン周波数が低周波数であり、ピストン速度が第1所定値v1よりも遅い低周波微低速域x1}
この低周波微低速域x1では、第1減衰力発生機構61のディスクバルブ63は開弁しない。この低周波微低速域x1では、第1室48の圧力が高くなり、第2室49の圧力が低くなる。ここで、アキュムレータ74は、第1室48の圧力がディスクバルブ63を開弁するよりも低い圧力でガス室118が縮小するように設定されており、アキュムレータ122は、第2室49の圧力がディスクバルブ63を開弁するよりも絶対値が低い圧力でガス室118が膨張するように設定されている。言い換えれば、アキュムレータ74は、第1室48の圧力によってディスクバルブ63が開弁する前にガス室118が縮小し、アキュムレータ122は、第2室49の圧力によってディスクバルブ63が開弁する前にガス室118が膨張する。
【0073】
このため、ディスクバルブ63が開弁する前に、第1室48の圧力によってアキュムレータ74の室形成部113が潰れるように変形してガス室118の体積を縮小させると共に、第2室49の圧力によってアキュムレータ122の室形成部113が膨らむように変形してガス室118の体積を膨張させる。ここで、この低周波微低速域x1では、ピストン周波数が低周波数であってピストン45が大きくストロークするため、ストロークの初期に、アキュムレータ74の室形成部113が潰れた状態になって、その後はその状態が維持され、ストロークの初期に、アキュムレータ122の室形成部113が膨らんだ状態になって、その後は、その状態が維持される。
【0074】
この低周波微低速域x1では、第1室48からの油液Lは、第1減衰力発生機構61および第2減衰力発生機構62の固定オリフィスを介して第2室49に流れる。よって、低周波微低速域x1では、オリフィス特性(減衰力がピストン速度の2乗にほぼ比例する)の減衰力が発生する。このため、低周波微低速域x1では、ピストン速度の上昇に対する減衰力の上昇率が比較的高くなる。
【0075】
{伸び行程において、ピストン周波数が低周波数であり、ピストン速度が第1所定値v1以上の低周波低中高速域x2}
この低周波低中高速域x2では、低周波微低速域x1と同様に、ストロークの初期に、アキュムレータ74の室形成部113が潰れた状態になって、その後はその状態が維持され、ストロークの初期に、アキュムレータ122の室形成部113が膨らんだ状態になって、その後は、その状態が維持される。この低周波低中高速域x2では、第1室48からの油液Lは、第1減衰力発生機構61のディスクバルブ63を開弁させ通路55を介して、第2室49に流れる。よって、低周波低中高速域x2では、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する)の減衰力が発生する。このため、低周波低中高速域x2では、ピストン速度の増加に対する減衰力の上昇率が低周波微低速域x1よりも低くなる。
【0076】
{伸び行程において、ピストン周波数が上記の低周波数よりも高周波数であり、ピストン速度が第2所定値v2よりも遅い高周波微低速域x3}
この高周波微低速域x3でも、第1減衰力発生機構61のディスクバルブ63は開弁しない。この高周波微低速域x3でも、第1室48からの油液Lは、低周波微低速域x1と同様に、第1減衰力発生機構61および第2減衰力発生機構62の固定オリフィスを介して第2室49に流れる。この高周波微低速域x3でも、第1室48の圧力が高くなり、第2室49の圧力が低くなるため、第1室48の圧力によってアキュムレータ74の室形成部113が潰れるように変形してガス室118の体積を縮小させると共に、第2室49の圧力によってアキュムレータ122の室形成部113が膨らむように変形してガス室118の体積を膨張させる。ここで、この高周波微低速域x3では、ピストン周波数が高周波であってピストン45のストロークが小さい。このため、アキュムレータ74の室形成部113は低周波よりも潰れた状態にはならず、アキュムレータ122の室形成部113も低周波よりも膨らんだ状態にはならない。ボリューム変化が小さいので、その結果、第1室48の圧力上昇をアキュムレータ74の室形成部113が潰れることで吸収でき、第2室49の圧力低下をアキュムレータ122の室形成部113が膨らむことで吸収できる。よって、高周波微低速域x3では、ピストン速度の増加に対する減衰力の上昇率が高くなるものの、同じピストン速度における減衰力が、低周波微低速域x1よりも低くなり、ソフトな特性になる。
【0077】
{伸び行程において、ピストン周波数が上記の低周波数よりも高周波数であり、ピストン速度が第2所定値v2以上の高周波低中高速域x4}
この高周波低中高速域x4では、第1室48からの油液Lは、低周波低中高速域x2と同様、第1減衰力発生機構61のディスクバルブ63を開弁させ通路55を介して、第2室49に流れる。高周波低中高速域x4でも、第1室48の圧力によってアキュムレータ74の室形成部113が潰れるように変形してガス室118の体積を縮小させると共に、第2室49の圧力によってアキュムレータ122の室形成部113が膨らむように変形してガス室118の体積を膨張させる。ここで、この高周波低中高速域x4では、ピストン周波数が高周波であってピストン45のストロークが小さい。このため、アキュムレータ74の室形成部113は低周波より潰れた状態にはならず、アキュムレータ122の室形成部113も低周波より膨らんだ状態にはならない。その結果、第1室48の圧力上昇をアキュムレータ74の室形成部113が潰れることで吸収でき、第2室49の圧力低下をアキュムレータ122の室形成部113が膨らむことで吸収できる。よって、高周波低中高速域x4ではピストン速度の増加に対する減衰力の上昇率が高周波微低速域x3よりも低くなる。また、高周波低中高速域x4では、同じピストン速度における減衰力が、低周波低中高速域x2よりも低くなり、ソフトな特性になる。
【0078】
{縮み行程において、ピストン周波数が低周波数であり、ピストン速度が第3所定値v3よりも遅い低周波微低速域y1}
この低周波微低速域y1では、第2減衰力発生機構62のディスクバルブ64は開弁しない。この低周波微低速域y1では、第2室49の圧力が高くなり、第1室48の圧力が低くなる。ここで、アキュムレータ122は、第2室49の圧力がディスクバルブ64を開弁するよりも低い圧力でガス室118が縮小するように設定されており、アキュムレータ74は、第1室48の圧力がディスクバルブ64を開弁するよりも絶対値が低い圧力でガス室118が膨張するように設定されている。言い換えれば、アキュムレータ122は、第2室49の圧力によってディスクバルブ64が開弁する前にガス室118が縮小し、アキュムレータ74は、第1室48の圧力によってディスクバルブ64が開弁する前にガス室118が膨張する。
【0079】
このため、ディスクバルブ64が開弁する前に、第2室49の圧力によってアキュムレータ122の室形成部113が潰れるように変形してガス室118の体積を縮小させると共に、第1室48の圧力によってアキュムレータ74の室形成部113が膨らむように変形してガス室118の体積を膨張させる。ここで、この低周波微低速域y1では、ピストン周波数が低周波数であってピストン45が大きくストロークするため、ストロークの初期に、アキュムレータ122の室形成部113が潰れた状態になって、その後はその状態が維持され、ストロークの初期に、アキュムレータ74の室形成部113が膨らんだ状態になる。
【0080】
この低周波微低速域y1では、第2室49からの油液Lは、第1減衰力発生機構61および第2減衰力発生機構62の固定オリフィスを介して第1室48に流れる。よって、低周波微低速域y1では、オリフィス特性の減衰力が発生する。このため、低周波微低速域y1では、ピストン速度の上昇に対する減衰力の上昇率が比較的高くなる。
【0081】
{縮み行程において、ピストン周波数が低周波数であり、ピストン速度が第3所定値v3以上の低周波低中高速域y2}
この低周波低中高速域y2では、低周波微低速域y1と同様に、ストロークの初期に、アキュムレータ122の室形成部113が潰れた状態になって、その後はその状態が維持され、ストロークの初期に、アキュムレータ74の室形成部113が膨らんだ状態になる。この低周波低中高速域y2では、第2室49からの油液Lは、第2減衰力発生機構62のディスクバルブ64を開弁させ通路56を介して、第1室48に流れる。よって、低周波低中高速域y2では、バルブ特性の減衰力が発生する。このため、低周波低中高速域y2では、ピストン速度の増加に対する減衰力の上昇率が低周波微低速域y1よりも低くなる。
【0082】
{縮み行程において、ピストン周波数が上記の低周波数よりも高周波数であり、ピストン速度が第4所定値v4よりも遅い高周波微低速域y3}
この高周波微低速域y3でも、第2減衰力発生機構62のディスクバルブ64は開弁しない。この高周波微低速域y3でも、第2室49からの油液Lは、低周波微低速域y1と同様に、第1減衰力発生機構61および第2減衰力発生機構62の固定オリフィスを介して第1室48に流れる。この高周波微低速域y3でも、第2室49の圧力が高くなり、第1室48の圧力が低くなるため、第2室49の圧力によってアキュムレータ122の室形成部113が潰れるように変形してガス室118の体積を縮小させると共に、第1室48の圧力によってアキュムレータ74の室形成部113が膨らむように変形してガス室118の体積を膨張させる。ここで、この高周波微低速域y3では、ピストン周波数が高周波であってピストン45のストロークが小さい。このため、アキュムレータ122の室形成部113は限界近くまで潰れた状態にはならず、アキュムレータ74の室形成部113も限界近くまで膨らんだ状態にはならない。その結果、第2室49の圧力上昇をアキュムレータ122の室形成部113が潰れることで吸収でき、第1室48の圧力低下をアキュムレータ74の室形成部113が膨らむことで吸収できる。よって、高周波微低速域y3では、ピストン速度の増加に対する減衰力の上昇率が高くなるものの、同じピストン速度における減衰力が、低周波微低速域y1よりも低くなり、ソフトな特性になる。
【0083】
{縮み行程において、ピストン周波数が上記の低周波数よりも高周波数であり、ピストン速度が第4所定値v4以上の高周波低中高速域y4}
この高周波低中高速域y4では、第2室49からの油液Lは、低周波低中高速域y2と同様、第2減衰力発生機構62のディスクバルブ64を開弁させ通路56を介して、第1室48に流れる。高周波低中高速域y4でも、第2室49の圧力によってアキュムレータ122の室形成部113が潰れるように変形してガス室118の体積を縮小させると共に、第1室48の圧力によってアキュムレータ74の室形成部113が膨らむように変形してガス室118の体積を膨張させる。ここで、この高周波低中高速域y4では、ピストン周波数が高周波であってピストン45のストロークが小さい。このため、アキュムレータ122の室形成部113は低周波より潰れた状態にはならず、アキュムレータ74の室形成部113も低周波より膨らんだ状態にはならない。その結果、第2室49の圧力上昇をアキュムレータ122の室形成部113が潰れることで吸収でき、第1室48の圧力低下をアキュムレータ74の室形成部113が膨らむことで吸収できる。よって、高周波低中高速域y4ではピストン速度の増加に対する減衰力の上昇率が高周波微低速域y3よりも低くなる。また、高周波低中高速域y4では、同じピストン速度における減衰力が、低周波低中高速域y2よりも低くなり、ソフトな特性になる。
【0084】
なお、緩衝器11は、縮み行程においては、ベースバルブ30のディスクバルブ165による減衰力特性も合わせた特性となる。
【0085】
上記した特許文献1には、緩衝器にアキュムレータを設けて高周波振動を抑制する構造が開示されている。この緩衝器は、シリンダの外側にアキュムレータを設けているため、シリンダにアキュムレータを取り付けるための構造部が必要となって、コスト増になってしまうと共に、サイズが大型化してしまう。
【0086】
第1実施形態の緩衝器11は、気体が封入されたガス室118を内部に有するアキュムレータ74が、シリンダ内室である第1室48に配置されてピストンロッド50の取付軸部52に固定されており、気体が封入されたガス室118を内部に有するアキュムレータ122が、シリンダ内室である第2室49に配置されてピストンロッド50の取付軸部52に固定されている。アキュムレータ74,122によって、第1減衰力発生機構61のディスクバルブ63および第2減衰力発生機構62のディスクバルブ64の開弁時の油圧の急変を緩和することができ、高周波振動を抑制することができる。加えて、アキュムレータ122によって、ベースバルブ30のディスクバルブ165,166の開弁時の油圧の急変を緩和することができる。したがって、車室内異音の抑制(ロッド加速度低減)、乗り心地改善(ハーシュネス、質感、滑らかさ)への効果がある。ここで、ロッド加速度についてシミュレーションを行った結果、
図4に破線X1で示すアキュムレータ74,122が設けられていない比較例の緩衝器のロッド加速度の大きさa1,a2に比べて、アキュムレータ74,122が設けられている第1実施形態の緩衝器11は、実線X2で示すように、ロッド加速度の大きさb1,b2を低減できていることがわかった。
【0087】
緩衝器11は、アキュムレータ74が、シリンダ内室である第1室48に配置されてピストンロッド50の取付軸部52に固定されており、アキュムレータ122が、シリンダ内室である第2室49に配置されてピストンロッド50の取付軸部52に固定されている。よって、シリンダ17にアキュムレータを取り付けるための特別な構造部が不要となるため、コスト増を抑制することができる。しかも、アキュムレータ74,122をピストンロッド50の取付軸部52に取り付けるため、既存の緩衝器にも適用可能である。また、アキュムレータがシリンダの外側に設けられる場合と比べて大型化を抑制することができる。
【0088】
緩衝器11は、取付軸部52の主軸部51とは反対側の端部に設けられるナット132を有しており、ピストン45およびアキュムレータ74,122は、ナット132と主軸部51の軸方向端面53とに挟持され固定される。このため、ピストン45と共にアキュムレータ74,122を取り付けることができるため、コスト増をさらに抑制することができる。
【0089】
緩衝器11は、アキュムレータ74,122が、径方向内側に取付軸部52が挿入される挿入穴91を有する複数の板材90により形成され、複数の板材90の径方向内周部同士と径方向外周部同士とが溶接されることでガス室118が密封されている。このため、アキュムレータ74,122を容易に形成することができるため、コスト増をさらに抑制することができる。
【0090】
緩衝器11は、第1減衰力発生機構61または第2減衰力発生機構62が、シリンダ17内の圧力によってディスクバルブ63,64が開弁または閉弁されることで油液Lの流れを抑制することになるが、アキュムレータ74,122は、シリンダ17内の圧力によってディスクバルブ63,64が開弁する前にガス室118が膨張または縮小する。このため、ディスクバルブ63,64,165,166の開弁時の油圧の急変を効果的に緩和することができ、高周波振動を効果的に抑制することができる。
【0091】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態を主に
図5に基づいて第1実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
【0092】
第2実施形態の緩衝器11Aにおいては、緩衝器11に対して、第2室49にアキュムレータ122が設けられていない点が相違する。それに伴い、3枚の小径ディスク121および2枚の小径ディスク123のうち、1枚の小径ディスク121のみが、ディスクバルブ63とディスク124との間に設けられている。
【0093】
このような構成の緩衝器11Aは、アキュムレータ74が緩衝器11のアキュムレータ74と同様に作動する。緩衝器11Aは、アキュムレータ122がないため、ベースバルブ30(
図1参照)のディスクバルブ165,166(
図1参照)の開弁時の油圧の急変を緩和することはできないが、それ以外は、緩衝器11とほぼ同様の効果を奏する。加えて、緩衝器11Aは、部品点数を低減できるため、低コスト化、軽量化が図れる。
【0094】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態を主に
図6に基づいて第1実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
【0095】
第3実施形態の緩衝器11Bにおいては、緩衝器11に対して、第1室48にアキュムレータ74が設けられていない点が相違する。それに伴い、2枚の小径ディスク73および2枚の小径ディスク75のうち、1枚の小径ディスク73のみが、ディスク72とディスクバルブ64との間に設けられている。
【0096】
このような構成の緩衝器11Bは、アキュムレータ122が緩衝器11のアキュムレータ122と同様に作動する。緩衝器11Bは、ピストン45のディスクバルブ63,64の開弁時およびベースバルブ30(
図1参照)のディスクバルブ165,166(
図1参照)の開弁時の油圧の急変を緩和する等、緩衝器11とほぼ同様の効果を奏することができる。加えて、緩衝器11Bは、部品点数を低減できるため、低コスト化、軽量化が図れる。
【0097】
[第4実施形態]
次に、第4実施形態を主に
図7に基づいて第3実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第3実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
【0098】
第4実施形態の緩衝器11Cにおいては、緩衝器11Bに対して、3枚の小径ディスク121のうちの2枚にかえて、1枚の小径ディスク121C(部材)が設けられており、2枚の小径ディスク123とディスク124とワシャ125とにかえて、1枚の小径ディスク123C(部材)が設けられている。
【0099】
小径ディスク121Cは、金属製であり、有孔の円板状である。小径ディスク121Cは、径方向の内側に、ピストンロッド50の取付軸部52が挿入されており、これにより、ピストンロッド50に径方向に位置決めされて支持されている。
【0100】
小径ディスク121Cは、主板部201と、当接部202とを有している。
主板部201は、有孔の円板状である。
【0101】
当接部202は、円環状であり、主板部201の径方向の中間位置から、主板部201の軸方向における一側に突出している。当接部202は、その内径が主板部201の内径よりも大径であり、その外径が主板部201の外径よりも小径である。主板部201は、その径方向における当接部202よりも内側部分が被覆部203となっており、その径方向における当接部202よりも外側部分がワシャ204となっている。
【0102】
小径ディスク121Cは、当接部202の内径、すなわち被覆部203の外径が、アキュムレータ122の内周溶接部105の外径よりも大径であり、当接部202の外径、すなわちワシャ204の内径が、アキュムレータ122の内周側板部112の外径、すなわち室形成部113の内径よりも小径である。また、小径ディスク121Cは、当接部202の主板部201からの軸方向の突出高さが、アキュムレータ122の内周溶接部105が仮に内周側板部112から軸方向に突出していたとしても、その突出高さよりも長くなるように設定されている。また、小径ディスク121Cは、ワシャ204の外径が、アキュムレータ122の室形成部113の内径よりも大径であり、アキュムレータ122の室形成部113の外径よりも小径である。
【0103】
小径ディスク123Cは、金属製であり、有孔の円板状である。小径ディスク123Cは、径方向の内側に、ピストンロッド50の取付軸部52が挿入されており、これにより、ピストンロッド50に径方向に位置決めされて支持されている。
【0104】
小径ディスク123Cは、主板部211と、当接部212とを有している。
主板部211は、有孔の円板状である。
当接部212は、円環状であり、主板部211の径方向の中間位置から、主板部211の軸方向における一側に突出している。当接部212は、その内径が主板部211の内径よりも大径であり、その外径が主板部211の外径よりも小径である。主板部211は、その径方向における当接部212よりも内側部分が被覆部213となっており、その径方向における当接部212よりも外側部分がワシャ214となっている。
【0105】
小径ディスク123Cは、当接部212の内径、すなわち被覆部213の外径が、アキュムレータ122の内周溶接部105の外径よりも大径であり、当接部212の外径、すなわちワシャ214の内径が、アキュムレータ122の内周側板部112の外径、すなわち室形成部113の内径よりも小径である。また、小径ディスク123Cは、当接部212の主板部211からの軸方向の突出高さが、アキュムレータ122の内周溶接部105が仮に内周側板部112から軸方向に突出していたとしても、その突出高さよりも長くなるように設定されている。また、小径ディスク123Cは、ワシャ214の外径が、アキュムレータ122の室形成部113の内径よりも大径であり、アキュムレータ122の室形成部113の外径よりも小径である。
【0106】
小径ディスク123Cは、当接部212の内径が小径ディスク121Cの当接部202の内径と同等であり、当接部212の外径が小径ディスク121Cの当接部202の外径と同等であり、ワシャ214の外径が小径ディスク121Cのワシャ204の外径と同等である。
【0107】
緩衝器11Cにおいて、3枚の小径ディスク121のうちの2枚にかえて小径ディスク121Cを設ける際に、小径ディスク121Cは、当接部202をアキュムレータ122の内周側板部112に当接させる向きとされる。また、2枚の小径ディスク123とディスク124とワシャ125とにかえて小径ディスク123Cを設ける際に、小径ディスク123Cは、当接部212をアキュムレータ122の内周側板部112に当接させる向きとされる。
【0108】
これにより、小径ディスク121Cが、当接部202を、アキュムレータ122の内周側板部112の、内周溶接部105よりも径方向外側であってガス室118を含む室形成部113よりも径方向内側の部分に当接させる。また、小径ディスク123Cが、当接部212を、アキュムレータ122の内周側板部112の、内周溶接部105よりも径方向外側であってガス室118を含む室形成部113よりも径方向内側の部分に当接させる。そして、小径ディスク121C,123Cが、当接部202,212で内周側板部112の、内周溶接部105よりも径方向外側であって室形成部113よりも径方向内側の部分を軸方向に挟持する。また、小径ディスク121Cの被覆部203が、アキュムレータ122の内周溶接部105を軸方向一側で覆い、小径ディスク123Cの被覆部213が、アキュムレータ122の内周溶接部105を軸方向他側で覆う。また、小径ディスク121Cのワシャ204が、アキュムレータ122の室形成部113を軸方向一側で覆い、小径ディスク123Cのワシャ214が、アキュムレータ122の室形成部113を軸方向他側で覆う。
【0109】
なお、小径ディスク121C,123Cの被覆部203,213を、周方向に断続的に設けてもようにしても良い。よって、小径ディスク121Cの被覆部203は、アキュムレータ122の内周溶接部105の少なくとも一部を軸方向一側で覆い、小径ディスク123Cの被覆部213は、アキュムレータ122の内周溶接部105の少なくとも一部を軸方向他側で覆う。
【0110】
緩衝器11Cは、緩衝器11Bと同様の効果を奏することができる。
【0111】
その上で、緩衝器11Cは、アキュムレータ122の内周溶接部105の少なくとも一部を小径ディスク121Cの被覆部203によって軸方向一側で覆い、アキュムレータ122の内周溶接部105の少なくとも一部を小径ディスク123Cの被覆部213によって軸方向他側で覆う。そして、アキュムレータ122の内周側板部112の、内周溶接部105よりも径方向外側であってガス室118も径方向内側の部分に小径ディスク121Cの当接部202を軸方向一側から当接させ、アキュムレータ122の内周側板部112の、内周溶接部105よりも径方向外側であってガス室118よりも径方向内側の部分に小径ディスク123Cの当接部212を軸方向他側から当接させる。よって、アキュムレータ122の内周溶接部105が仮に内周側板部112から軸方向に突出していたとしても、アキュムレータ122の内周側板部112の内周溶接部105よりも径方向外側部分を当接部202,212で押さえることができる。したがって、内周溶接部105の内周側板部112から軸方向に突出する部分を除去しなくても、ナット132による、ディスクバルブ63,64の締結軸力が安定し、ディスクバルブ63,64が発生させる減衰力のばらつきを抑制することができる。
【0112】
緩衝器11Cは、シリンダ17の第2室49内の圧力によってアキュムレータ122のガス室118が膨張すると、ワシャ204,214がアキュムレータ122に当接する。これにより、アキュムレータ122の過度な変形が抑制される。よって、アキュムレータ74,122の耐久性を向上させることができる。
【0113】
なお、第4実施形態においては、第3実施形態の緩衝器11Bの2枚の小径ディスク121にかえて、小径ディスク121Cを設け、2枚の小径ディスク123とディスク124とワシャ125とにかえて小径ディスク123Cを設ける場合を例にとり説明したが、第1実施形態の緩衝器11の2枚の小径ディスク121にかえて、小径ディスク121Cを設け、2枚の小径ディスク123とディスク124とワシャ125とにかえて小径ディスク123Cを設けることも可能である。また、第1,第2実施形態のワシャ71とディスク72と小径ディスク73とにかえて小径ディスク123Cを設け、第1,第2実施形態の小径ディスク75の1枚にかえて小径ディスク121Cを設けて、小径ディスク121C,123Cの当接部202,212を、アキュムレータ74の内周側板部112の内周溶接部105よりも径方向外側部分に当接させて、当接部202,212でアキュムレータ74の内周側板部112の内周溶接部105よりも径方向外側部分を挟持するようにしても良い。
【0114】
[第5実施形態]
次に、第5実施形態を主に
図8に基づいて第3実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第3実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
【0115】
第5実施形態の緩衝器11Dにおいては、緩衝器11Bに対して、アキュムレータ122とは一部異なるアキュムレータ122Dがアキュムレータ122にかえて設けられている。
【0116】
アキュムレータ122Dは、板材90とは一部異なる金属製の複数枚具体的には2枚の板材90Dにより形成されている。2枚の板材90Dは、同形状である。2枚の板材90Dは、いずれも平板からプレス成形によって形成されている。
【0117】
板材90Dは、板材90に対して膨出板部93とは一部異なる膨出板部93Dを膨出板部93にかえて有している。膨出板部93Dは、平板状部102とは異なる波板状部102Dを平板状部102にかえて有している。
【0118】
波板状部102Dは、内周側板部92の径方向における内側傾斜板部101の内周側板部92とは反対側の端縁部から内周側板部92の径方向における外方に広がっている。波板状部102Dは、外周側板部94の径方向における外側傾斜板部103の外周側板部94とは反対側の端部から外周側板部94の径方向における内方に広がっている。
【0119】
波板状部102Dは、内周側板部92および外周側板部94の軸方向において内周側板部92および外周側板部94から離れる方向に凸状をなす凸状部221と、内周側板部92および外周側板部94の軸方向において内周側板部92および外周側板部94に近づく方向に凹状をなす凹状部222とが、波板状部102Dの径方向において交互に複数ずつ配置された形状である。凸状部221は、波板状部102Dの全周にわたって連続する円環状であり、凹状部222も、波板状部102Dの全周にわたって連続する円環状である。
【0120】
このような板材90Dが、一対、互いの膨出板部93Dを反対方向に膨出させる向きで、内周側板部92同士を径方向の位置を合わせて面接触させ、外周側板部94同士を径方向の位置を合わせて面接触させた状態とされる。そして、この状態で、一対の板材90Dが、径方向内周部同士、すなわち内周側板部92の径方向内周部同士が全周にわたって溶接されて内周溶接部105が形成され、径方向外周部同士、すなわち外周側板部94の径方向外周部同士が全周にわたって溶接されて外周溶接部106が形成されることで、アキュムレータ122Dが形成される。
【0121】
このようにして形成されたアキュムレータ122Dは、一対の板材90Dのそれぞれの膨出板部93Dが、互いに径方向の位置を合わせることで室形成部113Dを構成する。室形成部113Dは円環状である。室形成部113Dの内部が空気等の気体が封入されたガス室118となる。アキュムレータ122Dは、それぞれが径方向内側に挿入穴91を有する複数の板材90Dにより形成され、複数の板材90Dの径方向内周部同士と径方向外周部同士とが溶接されることでガス室118が密封される。
【0122】
緩衝器11Dは、緩衝器11Bと同様の効果を奏することができる。
しかも、緩衝器11Dは、アキュムレータ122Dの室形成部113Dが波板状部102Dを有しているため、室形成部113Dの変形時の応力集中を緩和することができ、アキュムレータ122Dの信頼性を向上させることができる。
【0123】
加えて、緩衝器11Dは、アキュムレータ122Dの室形成部113Dが波板状部102Dを有しているため、アキュムレータ122Dの剛性を変化させることができる。よって、アキュムレータ122Dのボリュームの変化を抑制または促進することで変化のバランス設定自由度、言い換えれば、特性(圧力に対するボリュームの変化(P-ΔV)と応力)の設定自由度を拡大することができる。
【0124】
第1,第4実施形態のアキュムレータ122をアキュムレータ122Dとしたり、第1,第2実施形態のアキュムレータ74をアキュムレータ122Dと同形状のものに変更したりすることも可能である。
【0125】
第1,第2実施形態のいずれにおいても、緩和したい急変油圧が異なる場合、アキュムレータ74の剛性やボリュームを変更して特性を変えたり、アキュムレータ74を第1室48に複数設けたりすることができ、第1,第3,第4,第5実施形態のいずれにおいても、アキュムレータ122の剛性やボリュームを変更して特性を変えたり、アキュムレータ122を第2室49に複数設けたりして対応することができる。
【0126】
また、第1~第4実施形態において、アキュムレータ74,122の特性(圧力に対するボリュームの変化(P-ΔV)と応力)の調整のため、高圧負荷で膨出板部93および膨出板部93の接触部位がフラットになる形状とすることも可能である。
【0127】
第1~第5実施形態では、本発明をコンベンショナルな緩衝器に適用する場合を例にとり説明したが、内蔵セミアクティブ式の緩衝器や、シャッタの開閉で減衰力を調整する緩衝器等、減衰力調整式の緩衝器に適用することも可能であり、極微低速バルブを有する緩衝器や、周波数感応機構を有する緩衝器に適用することも可能である。
【0128】
第1~第5実施形態では、本発明を複筒式すなわちツインチューブタイプの緩衝器に適用する場合を例にとり説明したが、単筒式すなわちモノチューブタイプの緩衝器に適用することも可能であり、3重管式で外付けのアクチュエータを有するセミアクティブ式の緩衝器に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0129】
11,11A~11C…緩衝器、17…シリンダ、45…ピストン、48…第1室、49…第2室、50…ピストンロッド、51…主軸部(挿入部)、52…取付軸部(固定部)、53…軸方向端面、61…第1減衰力発生機構、62…第2減衰力発生機構、63,64…ディスクバルブ(バルブ)、72,124…ディスク(ストッパ部)、74,122…アキュムレータ、90…板材、91…挿入穴、118…ガス室、121C,123C…小径ディスク(部材)、132…ナット、202,212…当接部、203,213…被覆部、204,214…ワシャ。