(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136690
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】脂質蓄積抑制用経口組成物、肥満抑制用経口組成物及び抗炎症用経口組成物、並びに機能性食品、サプリメント及び医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 33/105 20160101AFI20240927BHJP
A61K 36/54 20060101ALI20240927BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20240927BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20240927BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
A23L33/105
A61K36/54
A61P3/06
A61P3/04
A61P29/00
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047879
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】300032123
【氏名又は名称】公益財団法人 佐賀県産業振興機構
(71)【出願人】
【識別番号】504224153
【氏名又は名称】国立大学法人 宮崎大学
(71)【出願人】
【識別番号】505225197
【氏名又は名称】長崎県公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】100195327
【弁理士】
【氏名又は名称】森 博
(74)【代理人】
【識別番号】100229389
【弁理士】
【氏名又は名称】香田 淳也
(72)【発明者】
【氏名】大貝 茂希
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 楓
(72)【発明者】
【氏名】桂城 博行
(72)【発明者】
【氏名】永田 保夫
(72)【発明者】
【氏名】柳田 晃良
(72)【発明者】
【氏名】山崎 正夫
(72)【発明者】
【氏名】古場 一哲
【テーマコード(参考)】
4B018
4C088
【Fターム(参考)】
4B018LB05
4B018LB06
4B018LB08
4B018LB10
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4B018MF07
4C088AB33
4C088AC02
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4C088MA52
4C088NA14
4C088ZA70
4C088ZB11
4C088ZC33
(57)【要約】
【課題】優れた脂質蓄積抑制作用を有する経口組成物を提供する。
【解決手段】アオモジ葉抽出物及び/又は乾燥物を含有する脂質蓄積抑制用経口組成物。当該経口組成物は、優れた脂質蓄積抑制作用を有し、機能性食品、サプリメント、医薬組成物等へ好適に使用できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アオモジ葉抽出物及び/又は乾燥物を含有することを特徴とする脂質蓄積抑制用経口組成物。
【請求項2】
前記アオモジ葉抽出物が、アオモジ葉の溶媒抽出物である請求項1に記載の経口組成物。
【請求項3】
前記アオモジ葉の溶媒抽出物が、アオモジ葉の水及びエタノールの混合溶媒の抽出溶媒による溶媒抽出物である請求項2に記載の経口組成物。
【請求項4】
前記アオモジ葉の溶媒抽出物が、アオモジ葉の熱水抽出物である請求項2に記載の経口組成物。
【請求項5】
アオモジ葉抽出物及び/又は乾燥物を含有することを特徴とする肥満抑制用経口組成物。
【請求項6】
アオモジ葉抽出物及び/又は乾燥物を含有することを特徴とする抗炎症用経口組成物。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の経口組成物を含有することを特徴とする機能性食品。
【請求項8】
請求項1から6のいずれかに記載の経口組成物を含有することを特徴とするサプリメント。
【請求項9】
請求項1から6のいずれかに記載の経口組成物を含有することを特徴とする医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂質蓄積抑制用経口組成物、肥満抑制用経口組成物及び抗炎症用経口組成物、並びにその応用品に関する。
【背景技術】
【0002】
肥満は、一般的に、正常な状態に比べて体重が多いだけでなく、脂肪組織に過剰な脂質が蓄積された状態である。脂質の蓄積は、食事等から得られる摂取エネルギーと基礎代謝や身体活動等によって消費される消費エネルギーのバランスが維持されなくなることによって起こる。すなわち、基礎代謝等が低下することにより、体全体として摂取エネルギーが余剰となり、その分が脂肪(皮下脂肪や内臓脂肪)となり蓄積されることによって起こる。
肥満は、過食及び運動不足等の生活習慣が原因であり、摂取エネルギーが消費エネルギーより多いために余分なエネルギーが体脂肪として蓄積されることにある。肥満は、メタボリックシンドロームや生活習慣病の原因となり、糖尿病、動脈硬化、癌等のような慢性炎症疾患とも関連している。このような疾患を予防するためには、肥満を解消することが必要である。
【0003】
これまでに肥満を抑制するための様々な経口組成物が報告されている。例えば、防己黄耆湯エキスを含有する、脂肪の蓄積による肥満に対して用いられる肥満改善剤(特許文献1)、マメ科植物カワラケツメイから得られる抽出物と、クワ科植物クワから得られる抽出物を混合してなる肥満改善用の飲食組成物(特許文献2)、ツバキ科ツバキ属に属するツバキ(Camellia japonica)の実及び/又は種子の脱脂粕の水性成分を有効成分として含有してなる肥満予防改善剤(特許文献3)等が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-119126号公報
【特許文献2】特開平11-187843号公報
【特許文献3】特開2008-163002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、経口組成物の摂取による肥満抑制には、経口組成物が含有する成分によって脂肪組織に既に蓄積された脂質を分解する作用(脂質分解作用)に基づくものや、新たに脂質が脂肪組織に蓄積することを抑制する作用(脂肪蓄積抑制作用)に基づくものがある。ここで、脂肪蓄積抑制作用は体内へ脂質が蓄積されることを抑制するため、肥満の予防に寄与する。そのため、肥満の予防の観点からは脂質分解作用よりも、脂質蓄積抑制作用が特に重要である。そのため、優れた脂肪蓄積抑制作用を有する成分の探索されている。
【0006】
かかる状況下、本発明の目的は、脂質蓄積抑制に有用な経口組成物及びその応用品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、アオモジ葉抽出物及び乾燥物が脂質蓄積抑制作用を有することを見出し、本発明に至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
<1> アオモジ葉抽出物及び/又は乾燥物を含有する脂質蓄積抑制用経口組成物。
<2> 前記アオモジ葉抽出物が、アオモジ葉の溶媒抽出物である<1>に記載の経口組成物。
<3> 前記アオモジ葉の溶媒抽出物が、アオモジ葉の水及びエタノールの混合溶媒の抽出溶媒による溶媒抽出物である<2>に記載の経口組成物。
<4> 前記アオモジ葉の溶媒抽出物が、アオモジ葉の熱水抽出物である<2>に記載の経口組成物。
<5> アオモジ葉抽出物及び/又は乾燥物を含有する肥満抑制用経口組成物。
<6> アオモジ葉抽出物及び/又は乾燥物を含有する抗炎症用経口組成物。
<7> <1>から<6>のいずれかに記載の経口組成物を含有する機能性食品。
<8> <1>から<6>のいずれかに記載の経口組成物を含有するサプリメント。
<9> <1>から<6>のいずれかに記載の経口組成物を含有する医薬組成物。
【0009】
<1a> アオモジ葉と、水及びエタノールの混合溶媒の抽出溶媒とを接触させることにより、アオモジ葉抽出物を得る抽出工程を有する脂質蓄積抑制用経口組成物の製造方法。
<2a> アオモジ葉と、熱水とを接触させることにより、アオモジ葉抽出物を得る抽出工程を有する脂質蓄積抑制用経口組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、脂質蓄積抑制に有用な経口組成物及びその応用品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実験例1のアオモジ葉50%エタノール抽出物及び実験例2のアオモジ葉熱水抽出物の脂質蓄積への影響を示す図である((a):50%エタノール抽出物,(b):熱水抽出物)。
【
図2】アオモジ葉乾燥粉末含有アオモジ葉食のマウスの白色脂肪組織重量への影響を示す図である。
【
図3】実験例1のアオモジ葉50%エタノール抽出物及び実験例2のアオモジ葉熱水抽出物の炎症作用への影響を示す図である。
【
図4】試験1-Aにおいて評価を行った、実験例1のアオモジ葉50%エタノール抽出物の小腸上皮細胞における糖透過率の評価試験の結果を示すグラフである。
【
図5】試験1-Bにおいて評価を行った、実験例1のアオモジ葉50%エタノール抽出物の小腸上皮細胞における糖透過率の評価試験の結果を示すグラフである。
【
図6】試験2において評価を行った、実験例1aのアオモジ葉50%エタノール抽出物の肝臓細胞における糖取り込みの評価試験の結果を示すグラフである。
【
図7】試験2において評価を行った、実験例2のアオモジ葉熱水抽出物の肝臓細胞における糖取り込みの評価試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下の例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。なお、本明細書において、「~」とはその前後の数値又は物理量を含む表現として用いるものとする。また、本明細書において、「A及び/又はB」という表現には、「Aのみ」、「Bのみ」、「A及びBの双方」が含まれる。
【0013】
<1.脂質蓄積抑制用組成物>
本発明は、アオモジ葉抽出物及び/又は乾燥物を含有する脂質蓄積抑制用経口組成物(以下、「本発明の脂質蓄積抑制用経口組成物」と記載する。)に関する。
なお、本明細書において、アオモジ葉抽出物及び/又は乾燥物を総称して、「アオモジ葉加工物」ということがある。
【0014】
アオモジ葉加工物は、後述の実施例で示す通り、脂質の蓄積を抑制する作用を有する。そのため、アオモジ葉加工物は、脂質蓄積抑制用経口組成物の有効成分として利用することができる。なお、これまでにアオモジ葉加工物に脂質蓄積抑制作用があることについては一切報告されていない。
【0015】
本明細書において、「脂質蓄積抑制作用」は、脂肪細胞における脂質の蓄積を抑制する作用を意味する。なお、脂質蓄積抑制作用は、脂肪細胞に既に蓄積された脂質を分解する作用(脂質分解作用)とは明確に区別できるものである。但し、本発明に係るアオモジ葉加工物が脂質分解作用を有することを否定するものではなく、本発明の脂質蓄積抑制用経口組成物は、脂質蓄積抑制作用と共に脂質分解作用を有していてもよい。
【0016】
脂質蓄積抑制作用は、脂肪細胞への脂質蓄積量やマウス生体内における臓器周辺の脂肪組織重量を評価することにより判断することができ、具体的には、後述する実施例の評価方法<3-1.細胞内における脂質蓄積に対する評価>や<3-2.マウス生体内における脂質蓄積に対する評価>によって評価することができる。
【0017】
本発明に係るアオモジ葉加工物は、脂質蓄積抑制作用を有するため、アオモジ葉加工物を含有する経口組成物は、肥満の抑制に有用である。そのため、アオモジ葉加工物を含有する組成物は、肥満抑制用経口組成物として用いることができる。
【0018】
ここで、本明細書において、「肥満抑制」とは、当該技術分野において使用される意味であれば特に限定されず、体内に過剰な脂質が蓄積された状態(肥満)を解消又は緩和すること(肥満の改善)及び、肥満の進行を抑制させること(肥満の予防)が含まれる。そのため、本発明の肥満抑制用経口組成物は、脂肪の蓄積による体重の増加を抑制させること、体重の増加を緩和させることだけでなく、正常な体重を維持することにも有用である。
【0019】
また、本発明に係る経口組成物は、上述した脂質蓄積抑制作用に加えて、小腸上皮細胞における糖の吸収抑制作用や肝臓細胞における糖取り込み促進作用も併せて有する。そのため、本発明に係る経口組成物は、脂質蓄積抑制及び糖の吸収抑制の双方から肥満を抑制する効果が期待できる。
ここで、本明細書において、「小腸上皮細胞における糖の吸収作用」とは、小腸上皮細胞に存在する糖輸送たんぱく質(SGLT1)を介して糖を吸収する作用を意味する。
「肝臓細胞における糖取り込み作用」とは、肝臓において食事後インスリンの働きにより糖を取り込む作用を意味する。
【0020】
本発明の脂質蓄積抑制用経口組成物(及び肥満抑制用経口組成物)は、経口摂取することによって、脂質蓄積抑制作用が発揮されるため、脂質蓄積抑制用(肥満抑制用)の医薬組成物として使用してもよく、脂質蓄積抑制用(肥満抑制用)の機能性食品やサプリメントとして使用してもよい。
本発明の脂質蓄積抑制用経口組成物は、体内に脂質が蓄積されることにより引き起こされる疾患や症状(神経変性疾患、循環器疾患、肥満等)の予防、治療、症状の改善の少なくとも一つに対して有用である。すなわち、「予防」には、当該疾患または症状の発症の抑制および遅延が含まれる。また、「治療」には、当該疾患または症状の病態の改善および寛解、並びに当該疾患または症状の進展の抑制が含まれる。
【0021】
以下、本発明の脂質蓄積抑制用組成物をさらに詳細に説明する。
【0022】
本発明の脂質蓄積抑制用組成物の原料として使用されるアオモジ(Litsea cubeba)は、クスノキ科ハマビワ属の植物であり、本発明のアオモジの使用部位は葉部である。原料として利用するアオモジ葉は、本発明の効果を損なわない限り、栽培期間中のいかなる時期でも原料として使用可能である。アオモジ葉は天然物であってもよく、人工的に栽培したものであってもよい。
本発明の脂質蓄積抑制用組成物は、アオモジ葉(アオモジの葉部)を含んでいればよく、本発明の効果を損なわなければ、他の部位を含んでいてもよい。
【0023】
アオモジ葉加工物は、上述の通り、アオモジ葉抽出物及び/又は乾燥物を総称したものである。
本発明において、「抽出物」とは、対象となる原料植物、又はこれを必要に応じて乾燥、細切したものを、圧搾又は溶媒抽出する等して、有効成分の含有量を高めた形態のものを総括した概念である。具体的にはアオモジ葉を抽出原料として得られる抽出液、該抽出液の希釈液若しくは濃縮液、又はこれらの粗精製物若しくは精製物のいずれもが含まれる。なお、抽出液を乾燥して得られる乾燥物も、抽出物に該当するものとする。
【0024】
また、本発明において、「乾燥物」とは原料植物を乾燥したものである。具体的にはアオモジ葉を、天日乾燥、加熱乾燥、フリーズドライ等の公知の乾燥方法で乾燥したものである。乾燥条件は、本発明の効果を損なわない限り、特に制限されるものではない。
乾燥物は、使用性の観点から、通常、粉砕して粉末化され、乾燥粉砕物として使用される。粉砕方法は、特に限定はなく従来公知の粉砕器を使用すればよい。粉末の粒径は、その使用態様によって適宜決定される。
【0025】
アオモジ葉抽出物及びアオモジ葉乾燥物はそれぞれ単独で使用してもよいし、それぞれを任意の割合で混合して使用してもよい。
【0026】
本発明に係るアオモジ葉加工物の中でも溶媒抽出物が好ましい。
アオモジ葉の溶媒抽出物は、アオモジの葉部を常法に従って抽出して得ることができる。抽出方法は、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されず、目的に応じて適切な方法を任意に選択して用いることができる。
例えば、アオモジ葉をそのまま又はその破砕物、乾燥物、粉砕物の加工物等と、抽出溶媒とを接触させ、アオモジ葉に含有される成分を抽出する方法が好ましい。
【0027】
なお、抽出溶媒には、本発明の効果を損なわない範囲で添加剤を含んでいてもよい。例えば、pH調整剤、粘度調整剤等が挙げられる。
【0028】
アオモジ葉の溶媒抽出物の好適な一例は、アオモジ葉の水及びエタノールの混合溶媒の抽出溶媒による溶媒抽出物である。
当該溶媒抽出物は、安全に経口摂取可能であり、優れた脂質蓄積抑制作用を有する。混合溶媒における水とエタノールとの割合は、本発明の効果を奏する限り任意であるが、例えば、水及びエタノールの混合溶媒を100体積%とした時に、エタノールの割合が、0.1~95体積%である。
【0029】
アオモジ葉の溶媒抽出物の好適な一例は、アオモジ葉の水抽出物である。抽出に用いる水は、蒸留水、純水、滅菌水が挙げられ、例えば、水道水や不純物を含むものであってもよいが、アオモジ葉の抽出を妨げる成分を含まない水が好ましい。抽出溶媒としての水は、本発明の効果を損なわない限り、冷水、常温水、温水、熱水等を用いることができるが、優れた脂質蓄積抑制用組成物を有する成分を効率よく抽出できる点から、熱水が好ましい。アオモジ葉の熱水抽出物は、安全に経口摂取可能であり、優れた脂質蓄積抑制用組成物を有する。
【0030】
アオモジ葉から溶媒抽出物を抽出する方法は、アオモジ葉に含有される脂質蓄積抑制作用を発現する成分を抽出できる方法であればよい。
好適なアオモジ葉抽出物の製造方法を例示すると、アオモジ葉と、抽出溶媒とを接触させ、抽出溶媒中に、アオモジ葉から有効成分が十分に抽出されるまで一定時間撹拌する方法が挙げられる。
【0031】
抽出時間は、抽出溶媒の種類や、アオモジ葉と抽出溶媒との割合を考慮し適宜選択されるが、本発明の効果を損なわず、有効成分が抽出溶媒によって抽出できる時間であれば、特に限定されるものではない。また、得られた抽出液はそのまま利用してもよいが、常法に従って希釈、濃縮、乾燥、精製等の処理を施してもよい。また、必要に応じて減圧濃縮や凍結乾燥により溶媒除去してもよい。
【0032】
<2.経口組成物の応用>
本発明の脂質蓄積抑制用経口組成物は、本発明におけるアオモジ葉加工物をそのまま使用してもよいが、通常、本発明の効果を損なわないその他の成分を組み合わせて、アオモジ葉加工物を含有する経口組成物(以下、「本発明の経口組成物」と記載する場合がある。)として使用される。
その他の成分としては、ヒトが安全に摂取できる成分であればよく、後述する使用形態(例えば、後述するサプリメント、機能性食品等)を考慮して適宜決定される。
その他の成分の配合割合は、本発明の効果を損なわない限りその目的に応じて適宜選択して決定することができる。
【0033】
本発明に係るアオモジ葉加工物を含有する経口組成物は、上述する通り、脂質蓄積抑制作用や糖の吸収抑制作用によって肥満の予防や改善に対して優れた効果を奏する。そのため、本発明の経口組成物は、肥満抑制用経口組成物として使用できる他、脂質蓄積抑制用や糖の吸収抑制作用の経口組成物として個別に用いることができる。
【0034】
さらに、本発明に係るアオモジ葉加工物を含有する経口組成物は、後述する実施例で示す通り、抗炎症作用を有するため、「抗炎症用経口組成物」として用いることができる。
【0035】
本明細書において、「抗炎症作用」とは、体内の炎症を抑制する作用を意味する。炎症は、慢性化することにより、生体組織の損傷や免疫等の機能低下等を引き起こし、これらに起因する動脈硬化、糖尿病等の疾患の原因となることが知られているため、炎症を抑制することによって動脈硬化、糖尿病等の疾患の予防や治療に寄与する。
【0036】
抗炎症作用は、マクロファージ細胞における一酸化窒素(NO)の産生抑制作用を評価することにより判断することができ、具体的には、後述する実施例の評価方法<3-3.炎症作用に対する評価>によって評価することができる。
【0037】
後述する実施例の通り、アオモジ葉加工物を含有する経口組成物は、優れた抗炎症作用を有するため、抗炎症用経口組成物として使用することができる。
【0038】
本発明の経口組成物は、含有するアオモジ葉加工物に起因して一酸化窒素(NO)の産生抑制に対して優れた効果を奏するため、上述の通り、抗炎症用経口組成物として使用できる他、「一酸化窒素産生抑制用経口組成物」として個別に用いることができる。
【0039】
本発明の経口組成物は、優れた脂質蓄積抑制作用や抗炎症作用を有するため、脂質蓄積抑制用(肥満抑制用)及び/又は抗炎症用のサプリメント、機能性食品、医薬組成物等への使用が可能である。
【0040】
本発明の経口組成物を脂質蓄積抑制用として用いる場合、含有するアオモジ葉加工物の量は、脂質蓄積が関与する症状の種類及び程度、本発明の組成物の形態、使用方法を考慮して、必要量が摂取できるような範囲で適宜決定される。
【0041】
本発明の経口組成物を抗炎症用として用いる場合、含有するアオモジ葉加工物の量は、炎症が関与する症状の種類及び程度、本発明の組成物の形態、使用方法を考慮して、必要量が摂取できるような範囲で適宜決定される。
【0042】
本発明の経口組成物の摂取量は、本発明の効果を発揮できる量であれば、特に限定されず、本発明の経口用組成物の形態、摂取させる対象者の性別、体重、健康状態等に応じて適宜決定される。当該摂取量は、1回で摂取してもよく、1日数回に分けて摂取してもよい。また、本発明の経口用組成物の有する作用又は効能を得るために、本発明の経口組成物は、持続して摂取することが好ましい。
【0043】
以下、本発明の経口組成物の好適な形態であるサプリメント、機能性食品、食品添加物、医薬組成物について説明するが、本発明の経口組成物の用途はこれらに限定されるものではない。
【0044】
本発明の経口組成物(アオモジ葉加工物)は、日常的に経口摂取しやすいように、各種の食品、飲料と混ぜて機能性食品とすることで、長期的に摂取することも容易である。
ここでいう「機能性食品」とは、一般食品に加えて、健康の維持の目的で摂取する食品及び/又は飲料を意味し、保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品又は機能性表示食品)や、健康食品、栄養補助食品、栄養保険食品等を含む概念である。この中でも保健機能食品である特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品が好ましい機能性食品の態様である。なお、機能性食品として製品化する場合には、食品に用いられる様々な添加剤、具体的には、着色料、保存料、増粘安定剤、酸化防止剤漂白剤、防菌防黴剤、酸味料、調味料、乳化剤、強化剤、製造用剤、香料等を添加していてもよい。
【0045】
機能性食品の対象となる、食品、飲料は特に限定されるものではない。例えば、食品として、ソーセージ、ハム、魚介加工品、ゼリー、キャンディー、チューインガムなどの食品類が挙げられる。また、飲料としては、各種の茶類、青汁飲料、清涼飲料水、酒類、栄養ドリンクなどが挙げられる。
【0046】
アオモジ葉加工物を、機能性食品に配合する割合は任意であるが、脂質蓄積抑制作用や抗炎症作用に寄与できる範囲で配合割合が選択される。
【0047】
また、本発明の経口組成物(アオモジ葉加工物)は、サプリメントの形態として使用することも可能である。サプリメントの形態は、特に制限されず、錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、糖衣錠、フィルム剤、トローチ剤、チュアブル剤、溶液、乳濁液、懸濁液等の任意の形態でよい。
本発明のサプリメントは、本発明の組成物以外に、サプリメントとして通常使用される任意の成分を含んでいてもよい。そのような成分としては、例えば、アミノ酸、ペプチド;ビタミンE、ビタミンC、ビタミンA、ビタミンB、葉酸等のビタミン類;ミネラル類;糖類;無機塩類;クエン酸またはその塩;茶エキス;油脂;プロポリス、ローヤルゼリー、タウリン等の滋養強壮成分;ショウガエキス、高麗人参エキス等の生薬エキス;ハーブ類;コラーゲン等が挙げられる。
【0048】
アオモジ葉加工物を、サプリメントに配合する割合は任意であるが、脂質蓄積抑制作用や抗炎症作用に寄与できる範囲で配合割合が選択される。
【0049】
本発明の経口組成物を保健機能食品として用いる場合、製品において本発明に係るアオモジ葉加工物によりもたらされる作用又は効能が表示されていてもよい。例えば、本発明に係る製品の本体、包装、容器、パッケージ等の収納物、又はその広告等への表示が挙げられる。
【0050】
また、本発明の経口組成物(アオモジ葉加工物)は、それ自体又はこれに他の成分を添加して食品添加剤として使用することも可能である。他の成分は、飲食品添加剤として使用可能であるならば特に制限はない。食品添加剤の添加対象となる飲料、食品についても任意であり、特に制限はない。
【0051】
本発明の経口組成物を、食品添加剤に配合する割合は任意であるが、脂質蓄積抑制作用や抗炎症作用に寄与できる範囲で配合割合が選択される。
【0052】
本発明の経口組成物は、ヒト以外の動物に対して適用することもできる。そのため、ペットフード等の動物用の経口組成物とすることもできる。
【0053】
(医薬組成物)
本発明の経口組成物は、脂質蓄積抑制作用や抗炎症作用を有するため、本発明の経口組成物は、その有効量を薬学的に許容される基材とともに配合して医薬用の経口組成物(以下、「本発明の医薬組成物」と記載する場合がある。)とすることができる。
【0054】
本明細書において、「医薬組成物」とは、対象となる疾患の予防、治療、症状の改善の少なくとも一つに対して有用な薬剤を意味する。また、本明細書において、「医薬組成物」には、医薬品のみならず、医薬部外品も含む。
【0055】
本発明の医薬組成物は、アオモジ葉加工物以外にもその効能を損なわない範囲で他の薬剤や薬理学的に許容される任意の成分を含んでもよい。
【0056】
本発明の医薬組成物は、脂質蓄積や炎症が関与する疾患の予防、治療、症状の改善の少なくとも一つに対して有用である。すなわち、「予防」には、当該疾患または症状の発症の抑制および遅延が含まれる。また、「治療」には、当該疾患または症状の病態の改善および寛解、並びに当該疾患または症状の進展の抑制が含まれる。
【0057】
本発明の医薬組成物の対象となる疾患又は症状には制限はないが、具体例として例えば、脂質異常症、高血圧、高脂血症、肝疾患、動脈硬化性疾患(脳卒中や心筋梗塞)、神経変性疾患(アルツハイマー病やパーキンソン病)、癌、糖尿病、炎症性疾患、関節リウマチ等が挙げられる。
【0058】
本発明の医薬組成物は、アオモジ葉加工物を含有していればよく、どのような形態の薬剤であっても構わない。本発明の医薬組成物の形態としては、錠剤、丸剤、顆粒剤、散剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤、又はカプセル剤等の剤型がある。本発明の医薬組成物の形態は、固体又は液体同士でもよいし、固体と液体でも良いし、特に限定されない。本発明の医薬組成物の好適な態様としては、経口剤が挙げられる。
【0059】
本発明の医薬組成物は、ヒト以外の動物に対して適用することもできる。そのため、動物用の医薬組成物とすることもできる。
【0060】
本発明の医薬組成物の摂取量は、本発明の効果を発揮できる量であれば、特に限定されず、摂取させる対象者の性別、体重、健康状態等に応じて適宜決定される。当該摂取量は、1回で摂取してもよく、1日数回に分けて摂取してもよい。また、対象となる疾患の予防、治療、症状の改善の観点から、本発明の医薬組成物は、持続して摂取することが好ましい。
【実施例0061】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
また、実施例の混合溶媒において示す「%」は、特に明示しない限り「体積%」を示す。また、抽出溶媒が混合溶媒の場合、バランスである水は省略して記載する。例えば、「50%エタノール」と記載した場合、50体積%エタノールと50体積%水との混合溶媒を意味する。
【0062】
<1.アオモジ葉乾燥物の調整>
採取したアオモジ葉は水道水で洗浄後、スチームコンベクションオーブン(湿度100%、温度100℃)を用いて5分間ブランチングを行った。次いで、乾燥機(乾球65℃、湿球35℃)を用いて、20時間乾燥を行った。乾燥させたアオモジ葉は0.4mmのメッシュを通過するように粉砕することにより、アオモジ葉乾燥粉砕物を得た。
【0063】
<2.アオモジ葉抽出物の調整>
(実験例1)アオモジ葉乾燥物からの50%エタノールによる抽出1
アオモジ葉乾燥粉砕物4gに50%エタノール溶液400mLを加え、室温で3時間撹拌抽出を行った後、遠心分離機(10,000×g、30分、4℃)により抽出液を得た。さらに抽出残渣に対し、再び50%エタノール溶液400mLを加え、室温で3時間撹拌抽出を行った後、遠心分離機(10,000×g、30分、4℃)により抽出液を得た。得られた抽出液を混ぜ合わせ、次いで、ロータリーエバポレーター、遠心濃縮機及び凍結乾燥機を用いて乾燥させ、乾燥粉末状の実験例1のアオモジ葉抽出物を得た。
【0064】
(実験例1a)アオモジ葉乾燥物からの50%エタノールによる抽出2
実験例1と同様のアオモジ葉乾燥粉砕物を用いた。アオモジ葉乾燥粉砕物0.5gを50%エタノール溶液10mLに浸漬し、1時間振盪抽出(1,500rpm)を行った後、遠心分離機(10,000×g、30分、4℃)により、実験例1aのアオモジ葉抽出物を得た。
【0065】
(実験例2)アオモジ葉乾燥物からの熱水による抽出
実験例1と同様のアオモジ葉乾燥粉砕物を用いた。アオモジ葉乾燥粉砕物0.5gを85℃に温めた純水35mLに浸漬し、5分間静置して、浸漬抽出(85℃)を行った後、定性濾紙No.2を用いた濾過により、実験例2のアオモジ葉抽出物を得た。
【0066】
<3-1.細胞内における脂質蓄積に対する評価>
マウス前駆脂肪細胞株3T3-L1細胞はヒューマンサイエンス振興財団 研究資源バンク(細胞番号JCRB9014)より入手し、培養用培地(D-ビオチン3.2μM、パントテン酸カルシウム16μM、仔ウシ血清10%含有低グルコースDulbecco’s Modified Eagle Medium(D-MEM))を用いて、37℃、5%CO2の条件下で培養した。細胞は2.0×104cells/cm2の密度で24ウェルプレートに播種し、2日後に分化用培地(D-ビオチン3.2μM、パントテン酸カルシウム16μM、3-イソブチル-1-メチルキサンチン(IBMX)0.5mM、デキサメタゾン(DEX)0.25μM、インスリン10μM、ウシ胎児血清(fetal bovine serum,FBS)10%含有高グルコースD-MEM)に交換して分化誘導を行った。分化誘導2日後、成熟用培地(D-ビオチン3.2μM、パントテン酸カルシウム16μM、インスリン10μM、FBS10%含有高グルコースD-MEM)に交換した。成熟の期間中は1日おきに培地交換を行った。アオモジ葉抽出液(実験例1又は実験例2)は終濃度が0,25,50,100及び200μg/mLとなるように培地に混合した。成熟開始8日後に培養を終了とした。
【0067】
細胞内の脂質蓄積量をオイルレッドO染色によって測定した。オイルレッドOは、0.5mg/mLになるように2-プロパノールで溶解し、水を3:2の比率で混合してオイルレッドO染色液を調製した。培養終了後、4%パラホルムアルデヒド・リン酸緩衝液を添加して室温で1時間静置し、細胞を固定した。4%パラホルムアルデヒド・リン酸緩衝液を除去後、オイルレッドO染色液を添加し、室温で15分間静置した。オイルレッドO染色液を除去し、細胞を洗浄した後、2-プロパノールで色素を溶出させた。色素溶出液を100μLずつ96ウェルプレートに移し、マイクロプレートリーダー(Molecular Devices,LLC,CA,USA)で540nmにおける吸光度を測定し、細胞内脂質蓄積量を評価した。
【0068】
アオモジ葉抽出液(50%エタノール抽出又は熱水抽出)無添加群(0μg/mL)の脂質蓄積量を1として、アオモジ葉抽出液(50%エタノール抽出又は熱水抽出)を添加した脂質蓄積量の相対値を算出した。結果を
図1(a)及び
図1(b)に示す。なお、図中の値は平均値±標準誤差を表し、
図1において、有意差検定はアオモジ葉抽出液無添加群に対して行い、*はp<0.05、***はp<0.005(いずれもダネット検定による)を示す。
【0069】
図1(a)及び
図1(b)に示すように、アオモジ葉は、熱水抽出あるいは50%エタノール抽出にかかわらず、脂肪細胞への脂質蓄積を投与量依存的に阻害した。熱水抽出物は50μg/mL以上、50%エタノール抽出物は25μg/mL以上では、有意な脂肪細胞への脂質蓄積抑制効果を示した。
【0070】
<3-2.マウス生体内における脂質蓄積に対する評価>
食餌組成を表1に示す。実験に用いる2種類の食餌(対照食、アオモジ食)はAIN-93G組成に準拠して調製した(表1)。タンパク質源として、カゼイン(乳製カゼイン、和光純薬工業(株)、大阪)を20%、脂肪源として大豆油(オリエンタル酵母(株)、東京)を7%、スクロース(大日本明治製糖(株)、東京)30%を含む食餌を調製し、対照食とした。対照食の2%の重量分をアオモジ葉乾燥粉末で置き換えた食餌をアオモジ食とした。その際、タンパク質、脂質、食物繊維および糖質の量をカゼイン、大豆油、セルロースおよびコーンスターチでそれぞれ調整した。
【0071】
実験動物として、4週齢の雄性KK-Ayマウス(日本クレア(株)、東京)を使用した。
マウスに対照食を摂食させ、5日間の予備飼育をした後、体重に群間で差が出ないように1群6匹ずつ2群に分けた。各群のマウスに2種類の食餌(対照食、アオモジ食)を5週間自由摂食させた。なお、飼育環境は室温22~23℃、12時間(8:00~20:00点灯)のライトサイクルとした。
【0072】
飼育期間終了後、マウスを6時間絶食させ、イソフルラン麻酔下でEDTA-2Na(1.86mg/mL)を25μL含むシリンジで、腹部大静脈より1mL採血した。採血した血液を遠心分離して、上層の血漿を採取し、また下層から赤血球サンプルを調製した。血漿は分析に使用するまで-80℃で保存した。
睾丸周辺脂肪、腸間膜脂肪、及び腎臓周辺脂肪を摘出し、それらの白色脂肪組織の重量測定を行った。
【0073】
【0074】
結果を
図2に示す。なお、図中の値は平均値±標準誤差(n=6)を表し、
図2において、有意差検定は対照食を摂食した群に対して行い、*はp<0.05(スチューデントT検定による)を示す。
なお、図示していないが、6週間飼育後のマウスの体重、肝機能の指標であるALT値、AST値の測定を行った。各測定において、マウス群間で差異が認められず、アオモジ葉粉末を含む飼料がマウスに対して影響を与えない(毒性を示さない)ことを確認した。
【0075】
図2に示すように、アオモジ葉の摂取は対照に比べて腸管膜脂肪組織重量を有意に低下させた(p=0.035)。睾丸周辺脂肪組織重量もアオモジ葉の摂取により低下傾向(p=0.087)を示した。
【0076】
<3-3.炎症作用に対する評価>
マウスマクロファージ様細胞株RAW264.7細胞は理化学研究所バイオリソース研究センターより(細胞番号RCB0535)入手し、FBS10%含有高グルコースD-MEMを用いて、37℃、5%CO2の条件下で培養した。RAW264.7細胞を1.0×105cells/cm2となるように96ウェルプレートに播種し、24時間前培養を行った。24時間培養後、培地をフェノールレッド不含培地に変更するとともに、種々のアオモジ葉抽出液(実験例1又は実験例2)を終濃度が0,25,50,100及び200μg/mLとなるように培地に混合し、さらに24時間培養した。24時間培養後に上清を除去し、control群にはフェノールレッド不含培地を添加、その他の群には炎症を惹起させるために100ng/mLのLPS(Salmonella enterica serotype typhimurium,L6511,Merck)を50μLを添加し、24時間培養した。培養終了後、培養上清を96ウェルプレートに50μL移し、一酸化窒素(NO)濃度をGriess法で測定した。
標準物質としてNaNO2を用いて検量線を作成した。培養上清あるいは検量線作成溶液50μLにGriess試薬を50μL添加し発色させた。マイクロプレートリーダー(Molecular Devices,LLC,CA,USA)を用いて550nmで吸光度を測定し、検量線からNO濃度を算出した。
【0077】
結果を
図3に示す。なお、図中の値は平均値±標準誤差を表し、
図3において、有意差検定はLPS処理のみ群に対して行い、*はp<0.05(ダネット検定による)を示す。
【0078】
図3に示すように、アオモジ葉は、熱水抽出あるいは50%エタノール抽出にかかわらず、マクロファージ細胞においてNO産生を抑制し、濃度依存的に抗炎症作用を示した。特に、アオモジ葉50%エタノール抽出物では、50μg/mL以上で優れた抗炎症効果が確認された。
【0079】
<4.糖の吸収性評価>
(試験1:小腸上皮細胞における糖透過率の評価)
実験例1のアオモジ葉抽出物(50%エタノール抽出物)について小腸上皮様細胞膜に対する糖透過率を測定した。なお、後述する評価方法における<試験1-A>は食事前にアオモジ葉抽出物を摂取することを想定し、<試験1-B>は食事中にアオモジ葉抽出物を摂取することを想定した。
【0080】
(評価方法)
<試験1-A>
小腸上皮細胞モデルとして用いられるヒト結腸癌由来細胞株であるCaco-2細胞を24-ウェルtranswellに播種密度2.5×105cellsになるように播種し、CO2インキュベータ内で約3週間培養した。
細胞のTEER値(経上皮電気抵抗値)を測定し、300Ω/cm2になった後に、管腔側に実験例1のアオモジ葉50%エタノール抽出物を500μL添加した。添加したアオモジ葉抽出物の濃度は100μg/mL及び200μg/mLとした。
添加後、CO2インキュベータ内(5%CO2、37℃)で24時間培養した。24時間後、細胞を2回洗浄し、CO2インキュベータ内で30分間予備培養した。次に、25mMグルコース溶液を管腔側に添加後、CO2インキュベータ内で1時間培養した。1時間後、基底膜側の溶液を回収し、グルコース濃度の測定を行った。
グルコース濃度の測定はGlucose Assay Kit-WST(株式会社同仁化学研究所製品)を用いた。
得られた測定結果は、比較例としたアオモジ葉抽出物無添加のグルコース濃度を100として算出した。
【0081】
<試験1-B>
100μg/mLに調整した実験例1のアオモジ葉50%エタノール抽出物を25mMグルコース溶液を添加する時に同時に添加した以外は上記<試験1-A>と同じ方法で行った。
【0082】
(結果)
結果を
図4及び
図5に示す。
図4に示すように、実験例1のアオモジ葉50%エタノール抽出物を添加後にグルコースを添加した<試験1-A>における糖透過率はアオモジ葉抽出物100μg/mL添加した場合は5.1%抑制されており、200μg/mL添加した場合は10.3%抑制されていた。
また、
図5に示すように、実験例1のアオモジ葉50%エタノール抽出物をグルコースと同時に添加した<試験1-B>における糖透過率はアオモジ葉50%エタノール抽出物100μg/mL添加した場合では、21.9%抑制されていた。
【0083】
以上のことから、アオモジ葉50%エタノール抽出物をグルコース添加前に添加してもグルコース添加と同時に添加しても、小腸における糖の吸収抑制に対して効果があることが示された。
【0084】
(試験2:肝臓細胞における糖取り込みの評価)
実験例1a(50%エタノール抽出物)及び実験例2(熱水抽出物)のアオモジ葉抽出物について肝臓における糖取り込みを想定し、肝臓由来細胞の糖取り込み量を評価した。
【0085】
(評価方法)
ヒト肝臓由来細胞株であるHepG2細胞を96ウェルプレートに播種密度9.0×104cells/cm2に播種し、CO2インキュベータ内で24時間培養した後、1%BSA-DMEMを添加し、さらに、CO2インキュベータ内で24時間培養した。その後、1%BSA-DMEMを除去し、50μg/mLに調整した実験例1aのアオモジ葉50%エタノール抽出物または35μg/mLに調整した実験例2のアオモジ葉熱水抽出物を添加した。添加後、CO2インキュベータ内で24時間培養後、洗浄を行った。
糖取り込みの測定は、Glucose Uptake Assay Kit-Green(株式会社同仁化学研究所製品)を用いた。洗浄後の細胞に蛍光標識グルコース誘導体を添加し、CO2インキュベータ内で15分間培養した後、洗浄し、励起波長/蛍光波長=488nm/520nmで蛍光強度を測定した。
【0086】
(結果)
結果を
図6及び
図7に示す。
図6に示すように、アオモジ葉50%エタノール抽出物を添加した場合、アオモジ葉抽出物無添加の場合より糖取り込み量が1.25倍増加し、
図7に示すように、アオモジ葉熱水抽出物を添加した場合、アオモジ葉抽出物無添加の場合より糖取り込み量が1.14倍増加した。
【0087】
以上のことから、アオモジ葉50%エタノール抽出物及びアオモジ葉熱水抽出物には、肝臓における糖取り込みに対する優れた効果があることが示された。
本発明のアオモジ葉抽出物及び/又は乾燥物を含有する経口組成物は、脂質蓄積抑制や抗炎症に対して優れた効果を有し、機能性食品、サプリメント、医薬用組成物等に配合して用いることができる。