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特開2024-13671情報処理装置、情報処理方法、食品検査装置および食品製造方法
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  • 特開-情報処理装置、情報処理方法、食品検査装置および食品製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013671
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、食品検査装置および食品製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/85 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
G01N21/85 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022115939
(22)【出願日】2022-07-20
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和元年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業「近赤外光とTHz波、偏光および画像処理を駆使した野菜中の虫検知技術の開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】304020292
【氏名又は名称】国立大学法人徳島大学
(71)【出願人】
【識別番号】505126610
【氏名又は名称】株式会社ニチレイフーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100118876
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 順生
(72)【発明者】
【氏名】山口 堅三
(72)【発明者】
【氏名】獅々堀 正幹
(72)【発明者】
【氏名】青木 仁史
(72)【発明者】
【氏名】石嵜 雄一
(72)【発明者】
【氏名】荒井 健太
(72)【発明者】
【氏名】原田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】塚本 真也
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA01
2G051AA05
2G051AB02
2G051BA11
2G051BB15
2G051CA04
2G051CB01
2G051CC07
2G051CC15
2G051EA12
2G051EB05
2G051EC02
2G051EC06
2G051EC10
2G051ED08
2G051ED14
(57)【要約】
【課題】食品に存在する異物を検出することができる情報処理装置、情報処理方法、食品検査装置および食品製造方法を提供する。
【解決手段】本開示の情報処理装置は、第3方向に偏光されて食品に照射された光の反射光を、前記第3方向と平行な第1方向に偏光させた第1光の撮像データと、前記反射光を前記第1方向と直交する第2方向に偏光させた第2光の撮像データとの差分に基づき、検査画像を生成する検査画像生成部と、前記検査画像と、機械学習モデルとに基づき、前記食品に存在する異物を検出する検出処理部とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第3方向に偏光されて食品に照射された光の反射光を、前記第3方向と平行な第1方向に偏光させた第1光の撮像データと、前記反射光を前記第1方向と直交する第2方向に偏光させた第2光の撮像データとの差分に基づき、検査画像を生成する検査画像生成部と、
前記検査画像と、機械学習モデルとに基づき、前記食品に存在する異物を検出する検出処理を行う検出処理部と
を備えた情報処理装置。
【請求項2】
前記検査画像に含まれる画素の画素値のうち第1の閾値および第2の閾値間外の画素値を所定の画素値に変換する変換部をさらに備え、
前記所定の画素値は、前記第1の閾値より小さい、または前記第2の閾値より大きく、
前記検出処理部は、前記変換部により変換された検査画像に基づき、前記検出処理を行う、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記所定の画素値は、前記検査画像が取り得る画素値の最小値または最大値である
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記変換部により変換された検査画像において前記第1の閾値と前記第2の閾値間に含まれる画素値を、前記第1の閾値と前記第2の閾値間よりも広い画素値範囲へ線形濃度変換する第1の線形濃度変換部をさらに備え、
前記検出処理部は、前記線形濃度変換された検査画像に基づき、前記検出処理を行う、請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記検査画像が取り得る画素値の最小値および最大値間に複数の第1画素値範囲を設定し、前記第1画素値範囲に属する画素に、前記画素が属する前記第1画素値範囲を識別する識別情報を設定する設定部をさらに備え、
前記検出処理部は、前記識別情報が設定された前記検査画像に基づき前記検出処理を行う、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記設定部は、前記検査画像に基づき画素値のヒストグラムを生成し、前記ヒストグラムに含まれる複数のピークに対応して前記複数の第1画素値範囲を設定する
請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記第1画素値範囲に含まれる画素値を前記第1画素値範囲よりも広い第2画素値範囲へ線形濃度変換する、第2の線形濃度変換部をさらに備え、
前記検出処理部は、前記線形濃度変換された前記検査画像に基づき、前記検出処理を行う、請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記検査画像のサイズを縮小し、縮小した画像の周囲に所定の画素値の画素を配置して、縮小前の前記検査画像のサイズと同じサイズの画像を生成する縮小部をさらに備え、
前記検出処理部は、前記縮小部により生成された前記画像に基づき、前記検出処理を行う、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記機械学習モデルは、前記検査画像の画素値を入力とし、前記異物の存在有無に関する値を出力するニューラルネットワークである
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記食品に照射される前記光は近赤外光である
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記食品は野菜である、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記野菜は、ブロッコリー、ほうれん草または枝豆のいずれかである、請求項11に記載の情報処理装置。
【請求項13】
前記異物は有機物である、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項14】
前記有機物は虫である、請求項13に記載の情報処理装置。
【請求項15】
第3方向に偏光されて食品に照射された光の反射光を、前記第3方向と平行な第1方向に偏光させた第1光の撮像データと、前記反射光を前記第1方向と異なる直交する第2方向に偏光させた第2光の撮像データとの差分に基づき、検査画像を生成し、
前記検査画像と、機械学習モデルとに基づき、前記食品に存在する異物を検出する
情報処理方法。
【請求項16】
光を照射する光源と、
前記光源から照射された前記光を第3方向に偏光させて第3光とし、前記第3光を食品へ透過させる第3の偏光子と、
前記食品における前記第3光の反射光を前記第3方向と平行な第1方向に偏光させる第1の偏光子と、
前記反射光を前記第3方向と直交する第2方向に偏光させる第2の偏光子と、
前記第1の偏光子を透過した第1光を撮像して第1撮像データを生成し、前記第2の偏光子を透過した第2光を撮像して第2撮像データを生成する撮像部と、
前記第1撮像データと前記第2撮像データの差分に基づき、検査画像を生成する検査画像生成部と、
前記検査画像と、機械学習モデルとに基づき、前記食品に存在する異物を検出する検出処理を行う検出処理部と
を備える、食品検査装置。
【請求項17】
光源から照射した光を第3の偏光子により第3方向に偏光させて第3光とし、前記第3光を搬送面で搬送される食品に照射し、
前記食品における前記第3光の反射光を、前記第3方向と平行な第1方向に第1の偏光子により偏光させて第1光とし、前記第1光を撮像して第1撮像データを生成し、
前記反射光を、前記第3方向と直交する第2方向に第2の偏光子により偏光させて第2光とし、前記第2光を撮像して第2撮像データを生成し、
前記第1撮像データと前記第2撮像データの差分に基づき、検査画像を生成し、
前記検査画像と、機械学習モデルとに基づき、前記食品に存在する異物を検出する
食品製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理装置、情報処理方法、食品検査装置および食品製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍食品等の加工食品を製造する際には、食品に存在する異物を検出して除去する必要がある。例えば、冷凍野菜を製造する際には、野菜の表面および内部に混入している虫等の異物を検出して除去する必要がある。特許文献1、2には、近赤外の検査光と偏光子とを組み合わせて撮像される複数の画像データから検査画像を生成し、生成した検査画像に基づいて、野菜の表面および内部に混入している異物を検出する技術が記載されている。
【0003】
特許文献1、2に記載の技術では、検査画像から異物を検出する工程は人間が目視により行っている。しかしながら、人間の目視では検出することのできない異物も存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6451980号公報
【特許文献2】特許第6454923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するためのものであり、食品に存在する異物を検出することができる情報処理装置、情報処理方法、食品検査装置および食品製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の情報処理装置は、第3方向に偏光されて食品に照射される光の反射光を、前記第3方向と平行な第1方向に偏光させた第1光の撮像データと、前記反射光を前記第1方向と直交する第2方向に偏光させた第2光の撮像データとの差分に基づき、検査画像を生成する検査画像生成部と、前記検査画像と、機械学習モデルとに基づき、前記食品に存在する異物を検出する検出処理を行う検出処理部とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施の形態に係る食品検査装置の構成を示す図である。
図2A】平行画像の一例を示す図である。
図2B】直交画像の一例を示す図である。
図3】実施の形態に係る食品検査装置における処理装置の機能的な構成を示すブロック図である。
図4A】実施の形態に係る食品検査装置における処理装置によって実行される処理の詳細を説明するフローチャートである。
図4B】実施の形態に係る食品検査装置における処理装置によって実行される処理の詳細を説明するフローチャートである。
図5】検査画像の一例を示す図である。
図6A】食品に異物が存在する検査画像の輝度値のヒストグラムの一例を示す図である。
図6B】食品に異物が存在しない検査画像の輝度値のヒストグラムの一例を示す図である。
図7】線形濃度変換が行われる前の輝度値と変換後の輝度値との間の関係を示す図である。
図8】線形濃度変換が行われた後の検査画像の一例を示す図である。
図9】実施の形態に係る性能評価実験の結果を示す図である。
図10】実施の形態の変形例1に係る食品検査装置における処理装置の一例を示すブロック図である。
図11】実施の形態の変形例1に係る食品検査装置における処理装置の他の例を示すブロック図である。
図12図1の食品検査装置と、食品除去装置とを備えた食品製造装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下では、図面を参照しながら、本開示の実施の形態について説明する。なお、以降の説明において、図面の同一または対応する要素には同じ参照符号を付して、詳細な説明は適宜省略する。
【0009】
図1は、本開示の実施の形態に係る食品検査装置100の構成を示す図である。食品検査装置100は、食品に存在する異物、より詳細には食品の表面および内部の少なくとも一方に存在する異物を検出する装置である。食品の具体例は、例えば、野菜または冷凍野菜、より具体的には、ブロッコリー、ほうれん草または枝豆等である。また、異物の具体例としては、例えば有機物であり、より具体的には、ヨトウガ類、メイガ類、アブラムシ類またはテントウムシ類等の幼虫および成虫である。
【0010】
食品検査装置100は、検査対象物である食品1が載置される平板2と、食品1に検査光11を照射する光源3と、食品1からの反射光12を撮像して画像データを生成する撮像装置4とを備えている。また、食品検査装置100は、偏光子5~7と、ガイドレール8と、処理装置9と、駆動装置10と、入力装置13と、出力装置14とを備えている。処理装置9は、食品1に存在する異物を検出する検出処理を行う情報処理部9aと、コントローラ9bとを備えている。また処理装置9は入力装置13および出力装置14に接続され、入力装置13および出力装置14との間で情報またはデータの入出力を行う。
【0011】
光源3は、検査光11を検査対象物である食品1に照射する。本実施の形態では、光源3は、基板上に発光ダイオード(LED)を複数配置したLEDパネルによって構成されている。光源3は、平板2と平行、すなわち図中のXY平面と平行に配置されている。また、光源3のLEDが配置された面は、食品1に検査光11を照射する方向、すなわち図中の-Z方向に向けられている。光源3の種類はLEDパネルに限定されず、単一のLEDランプでもよく、LED以外の光源(例えば白熱灯、蛍光灯、レーザ、スーパールミネッセントダイオード等)を用いることも排除されない。
【0012】
検査光11の波長は、検査対象物である食品1を透過しやすい波長であることが好ましい。例えば、食品1がブロッコリー、ほうれん草または枝豆等の野菜である場合には、検査光は、波長600nm~900nm程度の近赤外光であることが好ましい。このような波長領域は、一般的なCCDセンサーやCMOSセンサー等のSi系の撮像素子によって撮像可能な範囲内であるため、食品検査装置100を容易に構成することができる。ただし、検査光は近赤外光以外の光、例えば可視光または紫外線等を用いる場合も排除されない。また、適切な検知素子を選択すれば、中・遠赤外やテラヘルツ領域も排除されない。
【0013】
撮像装置4は、CCDセンサーまたはCMOSセンサー等のSi系の撮像素子を搭載した撮像部である。撮像装置4は、一例としてデジタルカメラ等のカメラによって構成されている。撮像装置4のレンズ4aは、食品1からの反射光12を撮像できる方向、すなわち図中の-Z方向に向けられている。撮像装置4の画素数は、検査対象物である食品1および検出したい異物の大きさ等に基づいて適宜選択されることが好ましい。また、撮像装置4の分解能は、256階調(8ビット)以上であることが好ましいが、256階調(8ビット)以上または未満の場合も可能である。本実施の形態では、一例として、撮像装置4の画素数は224×224であり、分解能は256階調である。
【0014】
光源3と食品1との間には、偏光子5が、光源3および平板2と平行、すなわち図中のXY平面と平行に配置されている。偏光子5は、光源3から食品1に向けて照射された検査光を、図中のX方向に直線偏光させる。
【0015】
また、食品1と撮像装置4との間には、偏光子6および偏光子7が、光源3および平板2と平行、すなわち図中のXY平面と平行に、異なる高さで配置されている。偏光子6および偏光子7は、Z方向において同じ高さに位置し、Y方向において一体に形成されている。偏光子6および偏光子7は、ガイドレール8に取り付けられた駆動装置10によって、ガイドレール8に沿って図中の+Y方向および-Y方向にスライド可能に構成されている。駆動装置10は、例えばステッピングモーター等のモーターを含む駆動部である。なお、このようなスライド機構に代えて、特許文献1、2に記載されているような回転機構を採用する場合には、偏光子6、7を1つにまとめることができる。また、駆動装置10に含まれるモーターは、必ずしもステッピングモーターである必要はなく、通常のDCモーターやACモーター等でもよい。さらに、駆動装置10を取り除いて、偏光子6、7のスライドを手動で行ってもよい。
【0016】
偏光子6が食品1と撮像装置4との間の光路上に配置されるとき、すなわち図1に示される状態のとき、偏光子6は、食品1からの反射光12を図中のX方向に直線偏光させる。偏光子5によって偏光された方向(X方向)と、偏光子6によって偏光された方向(X方向)とが平行である。つまり、照射光を偏光子5によって偏光させた光(第3光)の偏光方向を第3方向、反射光12を偏光子6によって偏光させた光(第1光)の偏光方向を第1方向としたとき、第3方向と第1方向は平行である。撮像装置4は、偏光子6を透過した反射光を撮像して画像データを生成する。これ以降、このような画像データを「平行画像P」と称することにする。図2Aは、平行画像Pの一例であり、サイズは224×224、濃淡は0~255の256階調である。
【0017】
一方、偏光子7が食品1と撮像装置4との間の光路上に配置されるとき、偏光子7は、食品1からの反射光12を図中のY方向に直線偏光させる。この際に生成される画像データは、偏光子5によって偏光された方向(X方向)と、偏光子7によって偏光された方向(Y方向)とが直交する。つまり、照射光を偏光子5によって偏光させた光(第3光)の偏光方向を第3方向、反射光12を偏光子7によって偏光させた光(第2光)の偏光方向を第2方向としたとき、第2方向は第3方向と直交する。撮像装置4は、偏光子7を透過した反射光を撮像して画像データを生成する。これ以降、このような画像データを「直交画像C」と称することにする。図2Bは、直交画像Cの一例であり、サイズは224×224、濃淡は0~255の256階調である。
【0018】
図1に示した構成では偏光子6、7が同じ高さで一体に配置されていたが、それぞれZ方向において異なる高さに配置され、それぞれ独立してY方向にスライド可能に構成されてもよい。
【0019】
上記の偏光子5~7には、例えば、ガラス板または熱可塑性樹脂フィルム等の基材に偏光フィルムを貼り付けた偏光板を用いることができる。なお、検査光11が近赤外光である場合には、可視光用の偏光フィルムでは十分な偏光性能が得られないため、ワイヤグリッド方式の偏光フィルム、例えば旭化成イーマテリアルズ製WGF(登録商標)等を用いることが好ましい。
【0020】
入力装置13は、処理装置9に対して食品検査装置100の操作者であるユーザにより、各種指示または情報を入力する入力部である。入力装置13は、例えば、マウス、キーボード、またはタッチパネルなどである。入力装置13は音声またはジェスチャにより入力を行う装置であってもよい。
【0021】
出力装置14は、ユーザに対してデータまたは情報を出力する出力装置である。出力装置14は、一例としてデータまたは情報を表示するディスプレイであり、一例として、液晶表示装置または有機EL(Electroluminescence)表示装置等である。あるいは、出力装置14は、ユーザが保持する端末装置に、データまたは情報を送信する通信装置であってもよい。本実施の形態においては出力装置14がディスプレイである場合を想定する。
【0022】
図3は、食品検査装置100の処理装置9のブロック図である。処理装置9は、例えばマイクロコンピュータまたはパーソナルコンピュータ等によって構成することができる。処理装置9の機能の一部または全部をコンピュータにプログラムを実行させることにより実現してもよい。
【0023】
処理装置9は、本実施の形態に係る情報処理装置に対応する情報処理部9aと、コントローラ9bとを備えている。情報処理部9aは、検査画像生成部91と、フィルタ処理部92(変換部)と、クラスタ化部93(設定部)と、第1の線形濃度変換部94aと、第2の線形濃度変換部94bと、検出処理部95と、第1の縮小部96aと、第2の縮小部96bと、判定部97とを備えている。検出処理部95は、第1の検出部95aと、第2の検出部95bとを備えている。コントローラ9bは、情報処理部9a、駆動装置10、光源3および撮像装置4を制御する。
【0024】
検査画像生成部91は、偏光子6を透過した反射光を撮像装置4によって撮像して得られる平行画像Pと、偏光子7を透過した反射光を撮像装置4によって撮像して得られる直交画像Cとに基づき、検査画像を生成する。例えば、平行画像Pと直交画像Cとを重み付け和により検査画像を生成する。具体例として、平行画像Pの重みを1、直交画像Cの重みを-1とすることで、平行画像Pから直交画像Cとの差分に基づき、検査画像を生成する。検査画像における各画素値(輝度値)が一定の範囲を超える場合、一定の範囲を超えた画素値を、一定の範囲の最小値に切り上げ、または一定の範囲の最大値に切り下げてもよい。一定の範囲は一例として最小輝度に対応する0以上、最大輝度に対応する255以下である。ただし、画素値の範囲はこの範囲に限定されず、他の範囲でもよい。
【0025】
フィルタ処理部92は、検査画像生成部91によって生成された検査画像において第1の閾値と第2の閾値との間の輝度値以外の輝度値を、所定の輝度値(所定の画素値)に変換するフィルタ処理を行う。つまり、検査画像において第1の閾値と第2の閾値との間の輝度値は変換せずに、その他の輝度値を当該範囲外の同じ輝度値に変換する。変換先となる同じ輝度値は、第1の閾値より小さい値、または第2の閾値より大きい値であり、一例として最小輝度値または最大輝度値である。フィルタ処理部92は、第1の閾値および第2の閾値間外の輝度値を、第1の閾値より小さいまたは第2の閾値より大きい、所定の輝度値に変換する変換部に対応する。第1の閾値と第2の閾値は処理装置9または処理装置9からアクセス可能な記憶部に予め格納されていてもよいし、入力装置13からユーザが調整可能なパラメータとして入力してもよい。この場合、ユーザは、本実施の形態に係る検査を行うアプリケーションの画面からパラメータを入力することができる。
【0026】
一例として、第1の閾値未満の輝度値および第2の閾値より大きい輝度値をすべて0または255に変換する。他の例として、第1の閾値未満の輝度値を最小輝度に対応する0に変換し、第2の閾値より大きい輝度値を最大輝度に対応する255に変換してもよい。第1の閾値は最小輝度より大きい値であり、第2の閾値は最大輝度より小さい値である。第1の閾値未満の輝度値は主として撮影対象の背景に由来し、第2の閾値より大きい輝度値は主に食品1自体に由来する輝度値であり、異物との相関が低い輝度値であると考えられる。よって、検査画像をグレースケール画像と見なした場合に、第1の閾値と第2の閾値との間に含まれない輝度値を、この範囲外の所定の輝度値(例えば最小輝度値)に変換することで、第1の閾値と第2の閾値との輝度範囲(白と黒との間のグレー領域のうちの特定のグレー領域)に着目した画像が得られる。このように特定のグレー領域に着目した画像を得ることで、検査画像から異物との相関が低い情報量を削減することができるため異物の検出精度を高められる。以下では、変換後の画像をフィルタ処理された検査画像と呼ぶことがある。
【0027】
第1の線形濃度変換部94aは、フィルタ処理された検査画像に対して、第1の閾値と第2の閾値との間の輝度値を、第1の閾値および第2の閾値間よりも広い輝度範囲(画素値範囲)へ変換する線形濃度変換を行う。輝度範囲は、第1の閾値および第2の閾値間を含む。これにより第1の閾値と第2の閾値との間の輝度値を正規化する。例えば、第1の閾値と第2の閾値との間の輝度値を、0以上255以下の範囲の輝度値に変換する。あるいは、第1の閾値と第2の閾値との間の輝度値を、0より大きく255より小さい範囲の輝度値に変換してもよい。
【0028】
第1の検出部95aは、第1の機械学習モデルMaを用いて、フィルタ処理および線形濃度変換された検査画像に基づき、食品1に存在する異物を検出する。第1の機械学習モデルMaとして、例えば、学習済みの回帰モデルを用いることができる。回帰モデルの例として、ニューラルネットワークがある。例えば、事前学習済みの16層の畳み込みニューラルネットワーク(CNN:Convolutional Neural Network)として知られる“VGG16”の全結合層をファインチューニングしたモデルを用いてもよい。すなわち、フィルタ処理および線形濃度変換された検査画像から、食品1に表面および内部など、食品1に存在する異物を検出するようにVGG16を訓練したモデルを用いることができる。ニューラルネットワークの場合、線形濃度変換された検査画像の各画素値が入力される入力ノードと、異物の存在有無に関する値を判別結果として出力する出力ノードとを有する構成を用いることができる。異物が検出された場合には1を出力ノードから出力する構成を用いることができる。例えば、判定結果として、異物が検出された場合には1を出力ノードから出力し、異物が検出されなかった場合には0を出力ノードから出力してもよい。あるいは判定結果として、異物が存在する確率を示す値を出力ノードから出力してもよい。回帰モデルの例は、ニューラルネットワークに限定されず、線形回帰モデル、ロジスティック回帰モデル、または重回帰モデルなど他のモデルを用いてもよい。
【0029】
クラスタ化部93は、検査画像生成部91によって生成された検査画像に対して複数の輝度値の範囲(第1輝度範囲または第1画素値範囲)を設定し、設定した輝度範囲に属する画素に、画素が属する当該輝度範囲を識別する識別情報(輝度範囲識別情報)を付与する。これにより検査画像において各輝度範囲に属する画素値群としてのクラスタを生成する。クラスタ化部93は、複数の輝度範囲を設定し、各輝度範囲に対応する画素値群(クラスタ)を生成する設定部に対応する。検査画像に輝度範囲に対応するクラスタを生成することを、検査画像をクラスタ化すると呼ぶ。識別情報は各クラスタを識別できる限り、任意の値でよい。識別情報の例として、R、G、B等のカラーを表す情報(カラー情報)を用いてもよいし、CL1、CL2、CL3等の記号を用いてもよい。輝度範囲識別情報は、画素値の一部として扱ってもよい。例えば画素値は、輝度値と輝度範囲識別情報とを含んでもよい。以下の説明では、輝度範囲識別情報として主としてカラー情報を用いる場合を想定する。また、輝度範囲識別情報が付与された検査画像を、クラスタ化された検査画像と呼ぶ。複数の輝度範囲を設定する方法についての詳細は、後述する。
【0030】
第2の線形濃度変換部94bは、クラスタ化された検査画像に対して、輝度範囲ごとに、輝度範囲に含まれる輝度値を正規化する線形濃度変換を行う。すなわち、第2の線形濃度変換部94bは、クラスタ化された検査画像の各輝度範囲に属する画素の輝度値に対して、線形濃度変換をそれぞれ行う。詳細には、第2の線形濃度変換部94bは、輝度範囲ごとに、第1の閾値および第2の閾値を設定し、第1の線形濃度変換部94aと同様の方法で、輝度範囲に含まれる輝度値を線形濃度変換する。これにより、各輝度範囲に属する輝度値を、各輝度範囲より広い輝度範囲(第2輝度範囲または第2画素値範囲)へ変換(正規化)する。例えば、各輝度範囲に属する画素の輝度値を、例えば0~255の範囲の輝度値に変換する。第2の線形濃度変換部94bは、いずれの輝度範囲にも属さない画素の輝度値を、所定の輝度値(例えばゼロ)に変換する。
【0031】
第2の検出部95bは、第2の機械学習モデルMbを用いて、クラスタ化および線形濃度変換された検査画像に基づき、食品1に存在する異物を検出する。第2の機械学習モデルMbの例として、第1の機械学習モデルMaと同様、ニューラルネットワーク等の回帰モデルなどを用いることができる。例えば、VGG16の全結合層をファインチューニングすることによって、クラスタ化および線形濃度変換された検査画像から、食品1に存在する異物を検出するように訓練されたモデルを用いることができる。第2の機械学習モデルMbがニューラルネットワークの場合、クラスタ化および線形濃度変換された検査画像の各画素値(輝度値およびカラー情報)が入力される入力ノードと、異物の存在有無に関する値を判別結果として出力する出力ノードとを有する構成を用いることができる。例えば、判定結果として、異物が検出された場合には1を出力ノードから出力し、異物が検出されなかった場合には0を出力ノードから出力してもよい。あるいは判定結果として、異物が存在する確率を示す値を出力ノードから出力してもよい。
【0032】
判定部97は、第1の検出部95aおよび第2の検出部95bによる異物の検出結果に基づいて、食品1に異物が存在するか否かを判定する。一例として、判定部97は、第1の検出部95aおよび第2の検出部95bの少なくとも一方により異物が存在することが検出された場合は、食品1に異物が存在することを決定する。第1の検出部95aおよび第2の検出部95bにおいて異物が存在する確率を出力する場合は、両確率のうちの少なくとも一方または平均が閾値以上の場合に、食品1に異物が存在することを決定してもよい。判定部97は、第1の検出部95aおよび第2の検出部95bのいずれによっても異物が存在することが検出されなかった場合は、食品1に異物が存在しないことを決定する。判定部97は、異物の検出結果を示す情報を表示装置(出力装置14)に出力して、表示装置に異物検出の判定結果を表示してもよい。また、異物検出の判定結果とともに、食品1の撮像画像(平行画像P、直交画像Cのうちの少なくとも1つ)、検査画像、または、これらの両方を表示してもよい。異物が存在することが決定された場合に、検査画像において異物の箇所を示す情報を表示してもよい。
【0033】
次に、本実施の形態に係る食品検査装置100の処理装置9によって実行される、食品1に異物が存在するか否かを判定する処理の詳細について、図4のフローチャートを参照して説明する。
【0034】
図4のステップS101において、検査画像生成部91は、偏光子6を透過した反射光を撮像装置4によって撮像して得られる平行画像P(図2A)と、偏光子7を透過した反射光を撮像装置4によって撮像して得られる直交画像C(図2B)との差分から、検査画像を生成する。
【0035】
詳細には、例えば、検査画像生成部91は、平行画像Pの各画素の輝度値から、直交画像Cの対応する各画素の輝度値を減算することによって、検査画像を生成する。この際、減算結果がマイナスになる輝度値については、輝度値を所定の輝度値(本例ではゼロ)に設定する。また、検査画像のサイズおよび濃淡(輝度)の範囲は任意に選択することができる。本実施の形態では、一例として、検査画像のサイズは224×224、濃淡は0~255の256階調(8ビット)である。図5は、本実施の形態に係る検査画像の一例であり、ヨトウガ類の幼虫であるヨトウムシが混入しているブロッコリーの検査画像である。検査画像中に含まれるノイズは、例えばブロッコリーの花蕾の影等に由来するものであると推察される。
【0036】
ステップS102において、フィルタ処理部92は、上記のステップS101で生成された検査画像において、第1の閾値T1と第2の閾値T2との間の輝度値以外の輝度値を所定の輝度値に変換した、フィルタ処理された検査画像を生成する。本実施の形態では、一例として、第1の閾値T1=30、第2の閾値T2=225、所定の輝度値はゼロと255である。この場合、フィルタ処理部92は、図5の検査画像において、30~225の間の輝度値はそのままにして、0~29のおよび226~255の輝度値をすべてゼロに設定する。
【0037】
上記のフィルタ処理は、ヒストグラム上で考察すると図6Aおよび図6Bに示されるようになる。図6Aおよび図6Bにおいて、横軸は輝度値、縦軸は頻度である。図6Aは、ブロッコリーにヨトウムシが混入している場合の検査画像のヒストグラムの一例である。図6Bは、ブロッコリーにヨトウムシが混入していない場合の検査画像のヒストグラムの一例である。
【0038】
図6A図6Bとを比較すると、ヨトウムシが混入している図6Aの場合には、約30~225の範囲の輝度値を有する画素が現れている。これに対して、ヨトウムシが混入していない図6Bの場合には、そのような輝度値を有する画素はほとんど現れていない。すなわち、図6Aの30~255の範囲の輝度値は、ブロッコリーに混入しているヨトウムシの成長成分、模様および水分等に由来するものであると推察される。この範囲外の輝度値は、撮影対象となるブロッコリーの背景およびブロッコリー本体自体に由来するものが支配的であると考えられる。なお図6における輝度値の範囲D1~D3については後述する。
【0039】
したがって、フィルタ処理部92は、第1の閾値T1=30、第2の閾値T2=225と設定することにより、上記のステップS101で生成された検査画像を、ブロッコリーに混入しているヨトウムシに由来する輝度値を主に含む検査画像に変換することができる。
【0040】
なお、上記はブロッコリーに混入しているヨトウムシの場合であったが、他の野菜に混入している他の虫の場合でも、第1の閾値T1と第2の閾値T2とを適切に設定することにより、同様に虫に由来する輝度値を主に含む検査画像に変換することができる。さらに一般に、食品に混入している有機物等の異物を検出する場合にも、上記と同様にフィルタ処理を適用することができる。
【0041】
ステップS103において、第1の線形濃度変換部94aは、上記のステップ102で得られた、フィルタ処理された検査画像の各画素に対して、以下の式(1)によって定義される線形濃度変換を適用する。
【0042】
【数1】
・・・(1)
【0043】
ただし、上式において、Xinは画素の変換前の輝度値、Xoutは画素の変換後の輝度値、M1は検査画像の変換後の最小輝度値(0)、M2は検査画像の変換後の最大輝度値(255)、T1は上記の第1の閾値、T2は上記の第2の閾値である。
【0044】
図7は、線形濃度変換における変換前の輝度値Xinと変換後の輝度値Xoutとの間の関係を図式的に示したものである。図7から見て取れるように、線形濃度変換を適用することによって、第1の閾値T1と第2の閾値T2との間の輝度値が最小輝度値M1=0と最大輝度値M2=255との間で正規化されることにより、検査画像のT1~T2の間の輝度値の濃淡が強調される。なお、第1の閾値T1と第2の閾値T2との間の輝度値以外の輝度値は、上述のフィルタ処理により事前に所定の輝度値である最小輝度値(=0)に変換されている。図8は、線形濃度変換が適用された後の検査画像の一例である。画像中央の異物(ヨトウムシ)の濃淡が強調されるとともに、ブロッコリーの花蕾の影等に由来するノイズが除去されているのが分かる。
【0045】
ステップS104において、第1の検出部95aは、第1の機械学習モデルMaを用いて、上記のステップS103で線形濃度変換が行われた検査画像に基づき食品1に含まれる異物を検出する検出処理を行う。第1の機械学習モデルMaは、検査画像の各画素値が入力される入力ノードと、判別結果を出力する出力ノードとを有する。一例として異物が検出された場合には1を出力ノードから出力し、異物が検出されなかった場合には0を出力ノードから出力する。
【0046】
上記のステップS104で異物が検出されなかった場合(ステップS105=NO)には、ステップS106において、第1の縮小部96aは、異物が検出されなかった検査画像に対して、縮小処理を行う。縮小処理では、検査画像のサイズを所定の割合で縮小し、周囲をゼロ値で埋めることにより、元のサイズと同じサイズの画像に戻す。本実施の形態では、一例として、サイズ224×224の検査画像を90パーセントに縮小してサイズ201×201にした後に、周囲をゼロ値の画素で埋めて元のサイズと同じサイズ224×224に戻す。
【0047】
このような縮小処理を行うことにより、検査画像内の端部に異物が写っているにもかかわらず、第1の機械学習モデルMaによって異物が検出されなかった場合に、当該異物が検査画像の中央側に近づくことにより、異物が検出されやすくなる可能性がある。
【0048】
ステップS107において、第1の検出部95aは、上記のステップS106で縮小処理が行われた検査画像に基づき、異物を検出する検出処理を再度行う。第1の機械学習モデルMaからは、異物が検出された場合には1が出力され、異物が検出されなかった場合には0を出力される。
【0049】
ステップS108において、クラスタ化部93は、上記のステップ101で生成された検査画像をクラスタ化する。一例として、検査画像のヒストグラムが図6Aに示すものであったとすると、クラスタ化部93は、図6Aのヒストグラムにおける3つのピークに対応する3つの輝度範囲を設定する。本例では、図6Aのヒストグラムの左端のピークを含む輝度値30~94の範囲D1にRを示すカラー情報(輝度範囲識別情報)を対応付ける。同様に、中央のピークを含む輝度値95~159の範囲D2にGを示すカラー情報(輝度範囲識別情報)を対応付ける。同様に、右端のピークを含む輝度値160~225の範囲D3にBを示すカラー情報(輝度範囲識別情報)を対応付ける。同じカラー情報(輝度範囲識別情報)が付与された画素値群は同じクラスタに対応する。本例では範囲D1に対応するクラスタと、範囲D2に対応するクラスタと、範囲D3に対応するクラスタが生成される。R、G、Bのいずれのカラー情報も関連付けられない画素には、予め定めたカラー情報(例えば黒を示すカラー情報)を関連付けてもよいし、カラー情報をヌル値としてもよい。
【0050】
なお、図6Aのように3つのピークが明確に現れない場合でも、またピークの個数が3でない場合も、適切な輝度値の範囲を実験的に調べることにより、ステップ101で生成された検査画像を、上記と同様にクラスタ化された検査画像に変換することができる。
【0051】
ステップS109において、第2の線形濃度変換部94bは、上記のステップ108でクラスタ化された検査画像の各輝度範囲D1~D3に対して、線形濃度変換をそれぞれ行う。詳細には、第2の線形濃度変換部94bは、図6Aの左端のピークに対応するRの輝度範囲の画素データに対して、第1の閾値T1=30、第2の閾値T2=94と設定して上述の式(1)により線形濃度変換を行う。これにより、輝度範囲D1に属する画素の輝度値は、0~255の範囲の輝度値に変換される。
【0052】
同様に、第2の線形濃度変換部94bは、中央のピークに対応する輝度範囲D2の画素データに対して、第1の閾値T1=95、第2の閾値T2=159と設定して、上述の式(1)により線形濃度変換を行う。これにより、輝度範囲D2に属する画素の輝度値は、0~255の範囲の輝度値に変換される。
【0053】
同様に、第2の線形濃度変換部94bは、右端のピークに対応する輝度範囲D3の画素データに対して、第1の閾値T1=160、第2の閾値T2=225と設定して、上述の式(1)により線形濃度変換を行う。これにより、輝度範囲D3に属する画素の輝度値は、0~255の範囲の輝度値に変換される。
【0054】
第2の線形濃度変換部94bは、輝度範囲D1~D3に属さない画素の輝度値を、所定の輝度値(例えばゼロ)に変換する。
【0055】
ステップS110において、第2の検出部95bは、第2の機械学習モデルMbを用いて、上記のステップS109で線形濃度変換が行われた検査画像に基づき、食品1に含まれる異物を検出する検出処理を行う。第2の機械学習モデルMbは、線形濃度変換が行われた検査画像の各画素値(輝度値およびカラー情報)が入力される入力ノードと、判別結果を出力する出力ノードとを有する。一例として異物が検出された場合には1を出力ノードから出力し、異物が検出されなかった場合には0を出力ノードから出力する。
【0056】
上記のステップS110で異物が検出されなかった場合(ステップS111=NO)には、ステップS111において、第2の縮小部96bは、異物が検出されなかった検査画像に対して、縮小処理を行う。縮小処理では、検査画像のサイズを所定の割合で縮小し、周囲をゼロ値で埋めることにより、元のサイズと同じサイズの画像に戻す。本実施の形態では、一例として、サイズ224×224の検査画像を90パーセントに縮小してサイズ201×201にした後に、周囲をゼロ値で埋めて元のサイズと同じサイズ224×224に戻す。
【0057】
このような縮小処理を行うことにより、検査画像内の端部に異物が写っているにもかかわらず、第2の機械学習モデルMbによって異物が検出されなかった場合に、当該異物が検査画像の中央側に近づくことにより、異物が検出されやすくなる可能性がある。
【0058】
ステップS113において、第2の検出部95bは、上記のステップS113で縮小処理が行われた検査画像に基づき、異物を検出する検出処理を再度行う。第2の機械学習モデルMbからは、異物が検出された場合には1が出力し、異物が検出されなかった場合には0が出力される。
【0059】
ステップS114において、判定部97は、上記のステップS104、S107、S110およびS113の少なくとも一方の検出結果に基づいて、食品1に異物が存在するか否かを判定する。詳細には、判定部97は、これらのステップの少なくともいずれかにおいて異物が検出された場合には、食品1の表面または内部等に異物が存在すると判定する。
【0060】
図4AのフローチャートではステップS106で縮小処理を1回行ったが、ステップS107の検出処理で異物が検出されるまで、ステップS106を1回以上繰り返してもよい。ステップS106を所定回数繰り返しても異物が検出されない場合は、ステップS108に進んでもよい。同様に、図4BのフローチャートではステップS112で縮小処理を1回行ったが、ステップS113の検出処理で異物が検出されるまで、ステップS112を1回以上繰り返してもよい。ステップS112を所定回数繰り返しても異物が検出されない場合は、ステップS114に進んでもよい。
【0061】
また図4Aおよび図4BのフローチャートではステップS107、S113で異物が検出されない場合に縮小処理を行ったが、縮小処理をステップS101とS102の間で行ってもよい。例えば、異物が存在する可能性の高い箇所が予め検査画像の端部であることが分かっている場合には、縮小処理を事前に行っておくことで、異物の検知精度を高めることができる。
【0062】
[性能評価結果]
本実施の形態に係る食品検査装置100の性能評価を行うために、ブロッコリーの表面または内部にヨトウムシが混入している画像を含む、性能評価用の検査画像を209枚作成した。性能評価用の検査画像209枚のうち、108枚は実際にヨトウムシが混入している画像であり、残りの101枚は何も混入していない画像である。
【0063】
図9は、上記の性能評価実験の結果を示すテーブルである。この図から見て取れるように、実際に虫が混入しているにもかからず検出に失敗した検査画像は2枚のみであり、残りの106枚では虫の検出に成功している。また、虫が混入していないにもかかわらず誤検出してしまう事例は0件であった。結果として、判定成功率は98パーセントであった。
【0064】
以上説明したように、本実施の形態によれば、第1方向へ反射光を偏光させる偏光子(第1偏光子)を透過した光の撮像データと、第1方向と異なる第2方向へ反射光を偏光させる偏光子(第2偏光子)を透過した光の撮像データとに基づき、検査画像を生成する。生成した検査画像に基づき異物の検出処理を行うことにより、食品1に存在する異物を検出することができる。
【0065】
本実施の形態によれば、第1方向と第2方向とを直交する関係にすることで、より高精度に異物検出を可能とする検査画像を生成し得る。詳細には、まず食品1に照射する検査光を、第1方向と平行の関係にある方向(第3方向)に偏光させる偏光子(第3偏光子)に透過させ、第3偏光子を透過した光を食品1に照射する。次に、食品1からの反射光を、第3方向と平行の関係にある方向(第1方向)に偏光させる偏光子6(第1偏光子)に透過させることで、撮像画像として平行画像Pが取得される。同様に、食品1からの反射光を、第3方向と直交の関係にある方向(第2方向)に偏光させる偏光子7(第2偏光子)に透過させることで、撮像画像として直交画像Cが取得される。これにより、より高精度に異物検出を可能とする検査画像を生成することができる。
【0066】
本実施の形態によれば、検査画像において第1の閾値および第2の閾値間外の画素値(輝度値)を、第1の閾値より小さいまたは第2の輝度値より大きい所定の輝度値に変換する。これにより第1の閾値および第2の閾値間外の輝度値に基づく情報、すなわち、異物に由来する可能性が低い情報を検査画像から低減または削減することができるため、高い精度で異物の検出を行うことが可能となる。
【0067】
本実施の形態によれば、検査画像が取り得る画素値(輝度値)の範囲に複数の輝度範囲を設定し、複数の輝度範囲に属する画素に、当該画素が属する範囲を識別する情報(輝度範囲識別情報)を設定することで、検査画像のクラスタ化を行う。クラスタ化された検査画像を用いることで、機械学習モデルMbにおいてより高精度に異物の検出を行うことが可能となる。つまり、同じ輝度範囲に属する画素は同じ異物または異物の同じ部分に由来する可能性が高いと考えられる。したがって、同じ異物または異物の同じ部分に由来する可能性が高い画素に同じ輝度範囲識別情報を設定して同じクラスタに属させることで、同じ異物または異物の同じ部分に由来する可能性が高い画素であるとの付加的な情報を機械学習モデルMbに反映させることができ、これにより高い精度での異物検出が期待できる。
【0068】
本実施の形態によれば、検査画像に基づき輝度値(画素値)のヒストグラムを生成し、ヒストグラムに含まれる複数のピークに対応して上述の複数の輝度範囲(画素値範囲)を決定する。これにより、検査対象となる食品に存在する異物に応じて輝度範囲が変動し得る場合にも、高い精度での異物検出が可能になる。
【0069】
本実施の形態によれば、検査画像(フィルタ処理された検査画像、クラスタ化された検査画像)に対して、異物に由来すると考えられる輝度範囲に属する輝度値をより広い範囲に変換する線形濃度変換を行う。これにより、輝度範囲に対する機械学習モデルMa、Mbの感度を高め、より高精度に異物の検出を行うことが可能となる。
【0070】
本実施の形態によれば、検査画像の縮小処理を行うことで、検査画像の端に異物が写っている場合であっても、異物の位置をより中央側に近づけることができる。これにより機械学習モデルMa、Mbが端の異物を検出しにくい構成であった場合でも、異物を検出する精度を高めることができる。
【0071】
(変形例1)
図3に示した処理装置9の構成のうち一部の要素が省略されてもよい。
【0072】
例えば、処理装置9からクラスタ化部93、第2の線形濃度変換部94b、第2の検出部95b、第2の縮小部96bが省略されてもよい。この場合の構成例を図10に示す。図10の構成例の場合、図4BのステップS108~S113を省略することができる。
【0073】
また、処理装置9からフィルタ処理部92、第1の線形濃度変換部94a、第1の検出部95a、第1の縮小部96aが省略されてもよい。この場合の構成例を図11に示す。図11の構成例の場合、図4AのステップS102~S107を省略することができる。
【0074】
また、図3または図10の構成において、フィルタ処理部92および第1の線形濃度変換部94aが省略されてもよい。この場合、図4AのステップS102~S104の処理を省略することができる。また、第1の縮小部96aが省略されてもよい。この場合、図4AのステップS105~S107の処理を省略することができる。
【0075】
また、図3または図11の構成において、クラスタ化部93および第2の線形濃度変換部94bが省略されてもよい。この場合、図4BのステップS108~S110の処理も省略することができる。また、第2の縮小部96bが省略されてもよい。この場合、図4BのステップS111~S113の処理を省略することができる。
【0076】
(変形例2)
図12は、図1の食品検査装置100と、食品除去装置220とを備えた食品製造装置200を示す。食品製造装置200は、複数の加工工程を経て加工される食品の加工工程間で、食品に含まれる異物の検出処理を行い、検出した異物の除去を行う。食品製造装置200は、任意の加工工程間で食品を搬送する搬送装置210(例えばベルトコンベア)により搬送面S上を搬送される食品1を対象に、異物の検出処理および異物の除去処理を行う。食品検査装置100は、上流の加工工程から搬送面Sで搬送される食品1に対して光を照射し、異物検出を行う。異物検出の手法は、前述した実施形態と同様である。食品検査装置100は食品1から異物1aを検出すると、食品1における異物1aの位置情報を異物除去装置220に送信する。異物除去装置220は、食品検査装置100から通知された異物1aの位置情報に基づき、X、Y、Z軸方向に移動可能なロボットハンド230を制御して、搬送面Sを搬送される食品1から異物1aを除去する。異物除去装置220は、ロボットハンド230を制御して、除去した異物1aを図示しない回収ボックスに回収する。異物1aを除去された食品1は、搬送装置210によって次の加工工程へ搬送される。食品検査装置100は、異物1aの位置情報の代わりに、異物1aが検出されたことを示す情報を異物除去装置220に送信してもよい。この場合、異物除去装置220は、食品1を撮像するカメラ等のセンサーを用いて異物1aの位置を特定し、食品1から異物1aの除去を行ってもよい。本変形例2によれば、食品検査装置100により高精度に異物を検出可能であるため、異物が混入しない食品の製造の歩留まりを高めることができ、異物混入した食品が食に供されずに廃棄されるフードロスの削減につなげられる。
【0077】
本開示の幾つかの実施の形態を説明したが、これらの実施の形態は例として提示したものであり、開示の範囲を限定することは意図していない、これらの実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、開示の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施の形態やその変形は、開示の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された開示とその均等の範囲に含まれるものである。
【0078】
また、本明細書に記載された本開示の効果は例示に過ぎず、その他の効果があってもよい。
【0079】
なお、本開示は以下のような構成を取ることもできる。
[項目1]
第3方向に偏光されて食品に照射された光の反射光を、前記第3方向と平行な第1方向に偏光させた第1光の撮像データと、前記反射光を前記第1方向と直交する第2方向に偏光させた第2光の撮像データとの差分に基づき、検査画像を生成する検査画像生成部と、
前記検査画像と、機械学習モデルとに基づき、前記食品に存在する異物を検出する検出処理を行う検出処理部と
を備えた情報処理装置。
[項目2]
前記検査画像に含まれる画素の画素値のうち第1の閾値および第2の閾値間外の画素値を所定の画素値に変換する変換部をさらに備え、
前記所定の画素値は、前記第1の閾値より小さい、または前記第2の閾値より大きく、
前記検出処理部は、前記変換部により変換された検査画像に基づき、前記検出処理を行う、項目1に記載の情報処理装置。
[項目3]
前記所定の画素値は、前記検査画像が取り得る画素値の最小値または最大値である
項目2に記載の情報処理装置。
[項目4]
前記変換部により変換された検査画像において前記第1の閾値と前記第2の閾値間に含まれる画素値を、前記第1の閾値と前記第2の閾値間よりも広い画素値範囲へ線形濃度変換する第1の線形濃度変換部をさらに備え、
前記検出処理部は、前記線形濃度変換された検査画像に基づき、前記検出処理を行う、項目2または3に記載の情報処理装置。
[項目5]
前記検査画像が取り得る画素値の最小値および最大値間に複数の第1画素値範囲を設定し、前記第1画素値範囲に属する画素に、前記画素が属する前記第1画素値範囲を識別する識別情報を設定する設定部をさらに備え、
前記検出処理部は、前記識別情報が設定された前記検査画像に基づき前記検出処理を行う、項目1~4のいずれか一項に記載の情報処理装置。
[項目6]
前記設定部は、前記検査画像に基づき画素値のヒストグラムを生成し、前記ヒストグラムに含まれる複数のピークに対応して前記複数の第1画素値範囲を設定する
項目5に記載の情報処理装置。
[項目7]
前記第1画素値範囲に含まれる画素値を前記第1画素値範囲よりも広い第2画素値範囲へ線形濃度変換する、第2の線形濃度変換部をさらに備え、
前記検出処理部は、前記線形濃度変換された前記検査画像に基づき、前記検出処理を行う、項目5または6に記載の情報処理装置。
[項目8]
前記検査画像のサイズを縮小し、縮小した画像の周囲に所定の画素値の画素を配置して、縮小前の前記検査画像のサイズと同じサイズの画像を生成する縮小部をさらに備え、
前記検出処理部は、前記縮小部により生成された前記画像に基づき、前記検出処理を行う、項目1~7のいずれか一項に記載の情報処理装置。
[項目9]
前記機械学習モデルは、前記検査画像の画素値を入力とし、前記異物の存在有無に関する値を出力するニューラルネットワークである
項目1~8のいずれか一項に記載の情報処理装置。
[項目10]
前記食品に照射される前記光は近赤外光である
項目1~9のいずれか一項に記載の情報処理装置。
[項目11]
前記食品は野菜である、項目1~10のいずれか一項に記載の情報処理装置。
[項目12]
前記野菜は、ブロッコリー、ほうれん草または枝豆のいずれかである、項目11に記載の情報処理装置。
[項目13]
前記異物は有機物である、項目1~12のいずれか一項に記載の情報処理装置。
[項目14]
前記有機物は虫である、項目13に記載の情報処理装置。
[項目15]
第3方向に偏光されて食品に照射された光の反射光を、前記第3方向と平行な第1方向に偏光させた第1光の撮像データと、前記反射光を前記第1方向と直交する第2方向に偏光させた第2光の撮像データとの差分に基づき、検査画像を生成し、
前記検査画像と、機械学習モデルとに基づき、前記食品に存在する異物を検出する
情報処理方法。
[項目16]
光を照射する光源と、
前記光源から照射された前記光を第3方向に偏光させ、偏光させた光を食品へ透過させる第3の偏光子と、
前記食品の反射光を前記第3方向と平行な第1方向に偏光させる第1の偏光子と、
前記反射光を前記第3方向と直交する第2方向に偏光させる第2の偏光子と、
前記第1の偏光子を透過した第1光を撮像して第1撮像データを生成し、前記第2の偏光子を透過した第2光を撮像して第2撮像データを生成する撮像部と、
前記第1撮像データと前記第2撮像データとの差分に基づき、検査画像を生成する検査画像生成部と、
前記検査画像と、機械学習モデルとに基づき、前記食品に存在する異物を検出する検出処理を行う検出処理部と
を備える、食品検査装置。
[項目17]
光源から照射した光を第3の偏光子により第3方向に偏光させて第3光とし、前記第3光を搬送面で搬送される食品に照射し、
前記食品における前記第3光の反射光を、前記第3方向と平行な第1方向に第1の偏光子により偏光させて第1光とし、前記第1光を撮像して第1撮像データを生成し、
前記反射光を、前記第3方向と直交する第2方向に第2の偏光子により偏光させて第2光とし、前記第2光を撮像して第2撮像データを生成し、
前記第1撮像データと前記第2撮像データの差分に基づき、検査画像を生成し、
前記検査画像と、機械学習モデルとに基づき、前記食品に存在する異物を検出する
食品製造方法。
【符号の説明】
【0080】
1 食品
1a 異物
2 平板
3 光源
4 撮像装置(撮像部)
4a レンズ
5 偏光子(第3の偏光子)
6 偏光子(第1の偏光子)
7 偏光子(第2の偏光子)
8 ガイドレール
9 処理装置
9a 情報処理部(情報処理装置)
9b コントローラ
10 駆動装置(駆動部)
11 検査光
12 反射光
13 入力装置(入力部)
14 出力装置(出力部)
91 検査画像生成部
92 フィルタ処理部(変換部)
93 クラスタ化部(設定部)
94a 第1の線形濃度変換部
94b 第2の線形濃度変換部
95 検出処理部
95a 第1の検出部
95b 第2の検出部
96a 第1の縮小部(縮小部)
96b 第2の縮小部(縮小部)
97 判定部
C 直交画像
P 平行画像
100 食品検査装置
200 食品製造装置
210 搬送装置
220 異物除去装置
230 ロボットハンド
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12