(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136714
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】荷役装置、搬送装置及び搬送方法
(51)【国際特許分類】
B66C 1/24 20060101AFI20240927BHJP
B66C 1/28 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B66C1/24 B
B66C1/28 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047921
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(71)【出願人】
【識別番号】502263905
【氏名又は名称】ダイヤモンド機工株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000165424
【氏名又は名称】株式会社コンセック
(71)【出願人】
【識別番号】596105208
【氏名又は名称】第一カッター興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 立
(72)【発明者】
【氏名】向井 啓通
(72)【発明者】
【氏名】垣中 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】上條 宏明
(72)【発明者】
【氏名】平田 豪
(72)【発明者】
【氏名】神田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】綿川 文治
(72)【発明者】
【氏名】大下 貴史
(72)【発明者】
【氏名】眞野 敬英
【テーマコード(参考)】
3F004
【Fターム(参考)】
3F004AE03
3F004BA03
3F004BA08
3F004EA11
(57)【要約】
【課題】多様な形状の対象物を安定した姿勢に保ちながら搬送する。
【解決手段】荷役装置20は、支柱と、基端部30が支柱に回動可能に支持され、搬送対象物を支持する一対のフォーク25と、各フォーク25を初期位置に付勢する付勢部35と、を備え、各フォーク25は搬送対象物の側面を摺動することにより、付勢部35の付勢力に抗して、先端部が互いに離れる方向である外側方向に回動する。フォーク25は、外側面から内側面に向かって下方に向かう傾斜面を有する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部と、
基端部が前記支持部に回動可能に支持され、搬送対象物を支持する一対のフォークと、
前記各フォークを初期位置に付勢する付勢部と、を備え、
前記各フォークは前記搬送対象物の側面を摺動することにより、前記付勢部の付勢力に抗して、先端部が互いに離れる方向である外側方向に回動することを特徴とする荷役装置。
【請求項2】
前記フォークは、前記先端部に、当該フォークの外側面から内側面に向かって下方に向かう傾斜面を有する、請求項1に記載の荷役装置。
【請求項3】
前記搬送対象物のうち前記フォークの目標位置を示す光を射出する射出部と、
前記目標位置及び前記フォークを撮像する撮像部と、をさらに備える、請求項1又は2に記載の荷役装置。
【請求項4】
搬送対象物を支持する荷役装置と、
前記荷役装置の方向を制御する吊物旋回装置と、を備え、
前記荷役装置は、
支持部と、
基端部が前記支持部に回動可能に支持され、搬送対象物を支持する一対のフォークと、
前記各フォークを初期位置に付勢する付勢部と、を備え、
前記吊物旋回装置によって姿勢を制御されながら前記各フォークが前記搬送対象物の側面を摺動するように水平移動され、
前記各フォークは前記搬送対象物の側面を摺動することにより、前記付勢部の付勢力に抗して、先端部が互いに離れる方向である外側方向に回動することを特徴とする搬送装置。
【請求項5】
荷役装置を用いた搬送方法であって、
前記荷役装置は、
支持部と、
基端部が前記支持部に回動可能に支持され、搬送対象物を支持する一対のフォークと、
前記各フォークを初期位置に付勢する付勢部と、を備え、
円筒形状の構造物の径方向に延在する孔であって前記搬送対象物であるブロックの隅部を構成する1対の孔に、当該孔の開口部から前記各フォークを挿入し、
前記各フォークを前記孔の内側面に摺動させることにより、前記付勢部の付勢力に抗して、前記各フォークを回動させ、
前記孔に前記各フォークを挿入した状態で前記荷役装置を上昇させることにより前記ブロックを搬送することを特徴とする搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フォークを有する荷役装置、搬送装置及び搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物等の対象物を解体する方法として、ワイヤソー切断装置を用いる方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載されたワイヤソー切断装置は、一対のスタンド部を有している。スタンド部の外周にはワイヤが巻回されている。ワイヤソー切断装置は、各スタンド部を予め形成された一対の孔にそれぞれ挿入するとともに、ワイヤを高速回転させて対象物に押し付ける。これによって対象物が切断される。対象物の切断により生成されたブロックは、フォークリフト等の搬送装置によって対象物の外部に搬送される。
【0003】
ところで解体の対象物の形状は直方体に限られない。例えば、対象物が円筒の形状を有するものである場合には、まず、穿孔装置が、一対の孔を、開口から奥に向かうにつれて間隔が広がるように形成する。ワイヤソー切断装置は、これらの孔にスタンド部を挿入する。そして、各孔の間に位置する扇形状(又は略台形状)の部分を切断する。これによって扇形状のブロックが対象物から切り出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記のような扇形状のブロックは、正面及び背面が曲面である。また、ブロックの正面及び背面の間に位置する各側面は平行ではない。このため、搬送装置は、直方体のブロックに比べて、扇形状のブロックを安定した姿勢で搬送しにくいといった課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための荷役装置は、支持部と、基端部が前記支持部に回動可能に支持され、搬送対象物を支持する一対のフォークと、前記各フォークを初期位置に付勢する付勢部と、を備え、前記各フォークは前記搬送対象物の側面を摺動することにより、付勢力に抗して、先端部が互いに離れる方向である外側方向に回動する。
【0007】
上記課題を解決するための搬送装置は、上記荷役装置と、前記荷役装置の方向を制御する旋回制御装置と、を備え、前記吊物旋回装置によって姿勢を制御されながら前記各フォークが前記搬送対象物の側面を摺動するように水平移動され、前記各フォークは前記搬送対象物の側面を摺動することにより、前記付勢部の付勢力に抗して、先端部が互いに離れる方向である外側方向に回動する。
【0008】
上記課題を解決する搬送方法は、上記荷役装置を用いた搬送方法であって、円筒形状の構造物の径方向に延在する孔であって前記搬送対象物であるブロックの隅部を構成する1対の孔に、当該孔の開口部から前記各フォークを挿入し、前記各フォークを前記孔の内側面に摺動させることにより、前記付勢部の付勢力に抗して、前記各フォークを回動させ、前記孔に前記各フォークを挿入した状態で前記荷役装置を上昇させることにより前記ブロックを搬送する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、多様な形状の対象物を安定した姿勢に保ちながら搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態における解体対象物の構成を説明する断面斜視図である。
【
図4】実施形態における荷役装置を支柱の位置で切断した上面図である。
【
図5】実施形態における荷役装置の動作を示す上面図である。
【
図6】実施形態における搬送装置の動作を示す背面図である。
【
図7】実施形態における荷役装置のフォーク先端を切断した状態の端面図である。
【
図8】実施形態における荷役装置の動作を示す上面図である。
【
図9】実施形態における搬送装置の動作を示す側面図である。
【
図10】実施形態における荷役装置の動作を示す上面図である。
【
図11】実施形態における搬送装置の動作を示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、
図1~
図11を参照して、搬送装置の一実施形態について説明する。搬送装置は、コンクリート構造物から切り出されたブロックの搬送に用いられる。本実施形態では、コンクリート構造物は、原子炉の内部コンクリートである。内部コンクリートは円筒形状を有する。内部コンクリートは、高耐震性を有するために高密度で太径(例えば直径30mm等)の鉄筋を用いた鉄筋コンクリートで構成されている。解体工事を管理する作業者は、解体システムを遠隔操作することにより、内部コンクリートを切断する。
【0012】
図1に示すように、内部コンクリートである円筒壁100は、切断前において円筒の形状を有する。円筒壁100は、水平面における断面が環状の形状を有する。円筒壁100の切断が進むに伴い、円筒壁100の水平方向の断面は、半円状や扇形(又は略台形)の形状となる。円筒壁100は、中央に空間101が設けられている。円筒壁100は、内側から、放射能レベルに応じて各層L1~L4に分けられている。例えば解体システムは、円筒壁100における第1層L1及び第2層L2を含む領域を、遠隔操作により分割しながら解体する。この場合、解体システムは、円筒壁100を、円筒壁100の上方であって空間101側から、ブロック110に分割しながら解体する。ブロック110は、上面からみて扇形又は略台形状の形状を有している。ブロック110は搬送対象物である。
【0013】
図2は、解体システムに含まれる搬送装置11を示す。搬送装置11は、荷役装置20、吊物旋回装置14及び制御盤13を備えている。制御盤13は、吊物旋回装置14等を制御する。吊物旋回装置14は、例えばスカイジャスター(登録商標)である。この吊物旋回装置14は、ジンバル枠15に、フライホイール16を回転且つ傾動可能に支持する。そして、吊物旋回装置14は、回転するフライホイール16を傾動させることにより生じるジャイロ効果を利用して、吊り荷の方向を制御する。
【0014】
荷役装置20について詳述する。荷役装置20は、支持部21及び1対のフォーク25を備えている。支持部21は、フレーム22、一対の支柱23及び連結部24(
図3参照)を備えている。フレーム22は、上面からみて四角枠状の形状を有している。フレーム22の上部には締結部22Aが設けられている。締結部22Aは、ジンバル枠15に固定されている。
【0015】
図3に示すように、各支柱23の一端は、フレーム22に連結されている。各支柱23は、フレーム22に対して垂直な方向に延在している。
各フォーク25は、各支柱23に対して片持ち梁式に取り付けられている。フォーク25の先端部26は、側面からみて先細りの形状をなす。より具体的には、先端部26は、先端に向かうにつれて下面28(
図2参照)が上面27に近づくように傾斜することにより、先細りの形状をなしている。
【0016】
支柱23の他端部には外側に張り出したフォーク支持部29が設けられている。フォーク25の基端部30は、フォーク支持部29に回転軸31を介して回動可能に支持されている。
【0017】
左側のフォーク25及び右側のフォーク25は、左右対称の形状を有している。各フォーク25の先端部26は、上面の一部に傾斜面32を有している。各フォーク25のうち、他方のフォーク25に向き合う側面を内側面、その反対側を外側面とするとき、傾斜面32は、内側面に向かって下がるように傾斜している。
【0018】
連結部24は、各支柱23の間に設けられている。各フォーク25及び連結部24との間には付勢部35がそれぞれ設けられている。付勢部35は、例えばコイルばねである。付勢部35の一端は、連結部24に設けられた固定部36に固定されている。また、付勢部35の他端は、各フォーク25に固定されている。例えば、付勢部35は、他端に設けられたフックが、各フォーク25に設けられた固定部34に掛止されている。
【0019】
付勢部35は、各フォーク25を初期位置に付勢する。初期位置は、各フォーク25が平行又は略平行となる位置である。なお、付勢部35は、フォーク25を初期位置に付勢できる位置であれば、フォーク25と支柱23との間等、他の位置に設けられていてもよい。
【0020】
フォーク25に対して、付勢部35の付勢力を上回る大きさの力であって外側に回動させる外力が加わると、フォーク25は、付勢力に抗して、外側方向D1に回動する。外側方向とは、各フォーク25の先端が互いに離れていく方向である。この状態において外力の付加が解除されると、フォーク25は付勢力により初期位置に戻る。
【0021】
連結部24には、位置決め部37が設けられている。位置決め部37は、取付部38と、位置決めボルト39とを有する。位置決めボルト39は、取付部38に固定されている。荷役装置20が円筒壁100に向かって移動する際、位置決めボルト39が円筒壁100に当接することにより、円筒壁100に対して荷役装置20が位置決めされる。
【0022】
また、支柱23の間には、位置検出部40が設けられている。本実施形態では、位置検出部40は、連結部24に固定された支持部材41に支持されている。位置検出部40は、円筒壁100に基準線を投影する墨出し装置である。位置検出部40は、射出部42を備えている(
図3参照)。射出部42は、円筒壁100に対して、レーザ光等の光を射出することにより基準線を投影する。例えば、射出部42は、水平方向の基準線と垂直方向の基準線とを十字状となるように投影することで、フォーク25の目標位置を示す。目標位置は、水平方向の基準線及び垂直方向の基準線が交差する位置である。
撮像部43は、フレーム22に支持されている(
図3参照)。撮像部43は、円筒壁100のうち光が照射された位置を撮像する。そして、撮像データを、作業者が用いる制御部45(
図5参照)に送信する。制御部45は、作業者が視認するモニター(図示略)に撮像データを出力する。作業者は、モニターの画面を確認しながら、各基準線の交差位置が、コア孔Hの中心となるように搬送装置11を移動させる。
【0023】
図4に示すように、連結部24には、フォーク25毎に、1対の規制部46が設けられている。詳細には、正面側に位置する規制部46と、背面側に位置する規制部46とが設けられている。正面側に位置する規制部46は、
図4中実線で示す初期位置のフォーク25の基端部30に当接する。この規制部46は、初期位置にあるフォーク25の内側方向への回転を規制する。内側方向とは、各フォーク25が回動する方向のうち先端が互いに接近していく方向である。このとき背面側に位置する規制部46とフォーク25の他端33とは当接していない。
【0024】
また、背面側に位置する規制部46は、各フォーク25がなす相対角度が最大回動角度θAとなったとき、各フォーク25の他端33と当接する。相対角度は、フォーク25の中心軸X1がなす角度である。この規制部46は、フォーク25がさらに外側方向D1に回転することを規制する。付勢部35の付勢力が調整されることにより最大回動角度θAは調整することができる。本実施形態では、各フォーク25の最大回動角度θAは、18°である。
【0025】
<動作>
図5~
図11を参照して、搬送装置11の動作及び搬送対象物の搬送方法について説明する。
【0026】
図5は、荷役装置20を支柱23の位置で切断した上面図である。円筒壁100にはコア孔Hが形成されている。一対のコア孔Hは、円筒壁100の高さ方向において同じ位置に形成されるとともに円筒壁100の径方向に延在している。具体的には各コア孔Hは、中心軸X2が相対角度θBをなすように延在している。相対角度θBは、各フォーク25が回動可能な最大回動角度θA以下であることが好ましい。また、円筒壁100には、コア孔Hを形成する途中で生じる円柱状のコア(図示略)を取り出しのための垂直孔103が形成されている。
【0027】
ワイヤソー切断装置(図示略)は、各コア孔Hの間のコンクリートを水平に切断する。ワイヤソー切断装置は、ワイヤを巻回した一対のアーム部材を各コア孔Hにそれぞれ挿入する。そして、各アーム部材の間に水平に掛け渡されたワイヤを高速で回転させることによりコンクリートを水平に切断する。こうしてブロック110の下面が形成されると、同一又は別のワイヤソー切断装置が、ブロック110の側面を切り出す。このワイヤソー切断装置は、一方のアーム部材をコア孔Hに挿入し、他方のアーム部材を円筒壁100の上面に位置させる。各アーム部材の間に垂直に掛け渡されたワイヤを高速で回転させることによりコンクリートを垂直に切断する。さらにブロック110の背面を切断するための穿孔処理を行う。この穿孔処理により、端部が重複した複数の垂直孔104が形成される。垂直孔104は、ブロック110の背面を形成できる位置であれば、
図5以外の位置に形成されていてもよい。又は穿孔処理ではなく、ワイヤソー切断装置によりブロック110の背面を形成してもよい。こうして、ブロック110の各側面及び背面が形成されることにより、ブロック110が円筒壁100から切り出される。
【0028】
次にブロック110を搬送装置11によって搬送する。作業者は、揚重装置50(
図6参照)を制御(操縦)して、荷役装置20を、コア孔Hの位置まで下降(又は上昇)させる。また、作業者は、荷役装置20を円筒壁100に対して接近させる。このとき、射出部42はコア孔Hの開口部周辺に対して墨出しのための光Lを照射する。射出部42は制御部45によって光Lの照射を制御されてもよい。撮像部43は、光Lが照射された内側面102及びフォーク25の先端を撮像している。撮像部43は、撮像データを制御部45に送信する。作業者は、光Lの照射部分とフォーク25との相対位置をモニターで確認しながら、フォーク25の先端部26をコア孔Hに進入させる。フォーク25の先端部26は先細り形状であるため、先端部26はコア孔Hに進入しやすい。各コア孔Hは、それらの間隔が初期位置の各フォーク25の先端部26の間隔とほぼ同じとなるように形成されている。このため、各フォーク25は、コア孔Hの内側面であって、ブロック110の側面112に接する。
【0029】
図6は、フォーク25をコア孔Hに挿入したときの荷役装置20の背面を示す。例えば、作業者は、フォーク25をコア孔Hに挿入した後、揚重装置50を操縦してフォーク25をコア孔Hの内側面に当接させる。フォーク25は、コア孔Hの内側面のうち上側であって、ブロック110の隅部115(
図7参照)に当接する。
【0030】
図7は、コア孔Hに挿入されたフォーク25の先端部26を切断した状態の端面を示す。フォーク25の幅W1は、断面円形のコア孔Hの半径よりも小さい。ここで幅W1がコア孔Hの半径よりも大きいと、フォーク25がブロック110を下面から持ち上げても、フォーク25がブロック110の隅部115に引っ掛かり、ブロック110を上方にスライドさせることができない。フォーク25の幅W1がコア孔Hの半径よりも小さく、且つフォーク25が隅部115の下に位置することにより、フォーク25をコア孔Hの内側面113に引っ掛けずにブロック110を上方にスライドさせることができる。また、フォーク25の先端部26に傾斜面32を設けることで、コア孔Hの内側面113との接触面積を増やすことができる。
【0031】
図8に示すように、作業者は、揚重装置50を制御して、フォーク25をコア孔Hにさらに進入させる。ブロック110は、コア孔Hの開口部から奥に向かうに伴い幅W2が広くなることから、側面112に当接するフォーク25の先端部26には、外側方向D1への力が加わる。フォーク25は、フォーク25の内側面をブロック110の側面112に摺動させながら、付勢部35の付勢力に抗して基端部30を中心に外側方向D1に回転する。これにより、フォーク25の先端部26の間隔(相対角度)は、フォーク25がコア孔Hに進入するに伴い大きくなる。
【0032】
図9に示すように、フォーク25の先端部26がコア孔Hの所定の位置に到達すると、位置決めボルト39が円筒壁100の内側面102に当接する。これにより、フォーク25がさらにコア孔Hに挿入されることが規制される。なお、コア孔Hに対するフォーク25の進入量はブロック110の大きさに応じて異なるため、位置決めボルト39と内側面102とが当接する前に荷役装置20の水平移動を停止するようにしてもよい。
図9に示す例では、フォーク25は、ブロック110の下方の隅部115を支持している。作業者は荷役装置20の水平移動を停止するとともに、荷役装置20を上昇させる。
【0033】
図10は、
図9に示す荷役装置20を支柱23の位置で切断した部分を上方から見た図である。フォーク25の長さは、ブロック110の側面112の長さとほぼ同じである。フォーク25は、側面112に沿って外側方向D1に回転しているため、ブロック110の各側面112が平行でない場合であってもその奥行き方向(コア孔Hの延在方向と平行な方向)の全体を支持することができる。なお、
図10に示す各フォーク25の相対角度は最大回動角度θA(
図4参照)未満である。
【0034】
これに対し、従来の荷役装置の場合、一対のフォーク25は回動せず、互いに平行に延在した状態を維持する。一方、一対のコア孔Hは平行ではないため、フォーク25は、コア孔Hの終端部まで到達する前に、ブロック110の側面112によって進入を阻まれてしまう。フォーク25の進入が阻まれると、フォーク25はブロック110の手前しか支持することができないため、ブロック110がフォーク25上で不安定な姿勢となる可能性がある。本実施形態では、フォーク25はブロック110の隅部115の全体を支持するため、ブロック110を安定した姿勢で持ち上げることができる。
【0035】
図11に示すように、フォーク25の先端部26がコア孔Hの所定の位置に到達した後、作業者が揚重装置50を操縦することにより、ブロック110がフォーク25によって持ち上げられる。このように荷役装置20は、扇形状のブロック110であっても安定して支持することができる。また、フォーク25は、例えば直方体のブロックや、三角形のブロック等、対象物の形状に合わせて回動するので、荷役装置20は、多様な形状の搬送対象物を安定した姿勢を保ちながら搬送することができる。
【0036】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態によれば、フォーク25は基端部30が支持部21に回動可能に支持されている。このため、フォーク25は、付勢部35の付勢力に抗して、搬送対象物であるブロック110の側面112を摺動しながら外側方向D1に回動することができる。このため、例えば扇形のブロック110であっても安定して支持することができる。また、扇形のブロック110に限らず、搬送対象物の側面にフォーク25を差し込むことによってフォーク25を搬送対象物の形状に合わせて回動させることができる。このため、荷役装置20は、多様な搬送対象物を搬送することができる。
【0037】
(2)上記実施形態によれば、フォーク25の先端部26は、外側から内側に向かって下方に向かう傾斜面32を有する。このため、ブロック110のうちコア孔Hを区画していた隅部115との接触面積を増やすことができる。このため、ブロック110を安定した姿勢に保ちながら搬送することが可能となる。
【0038】
(3)上記実施形態によれば、荷役装置20は作業者によって遠隔操作される。射出部42は、フォーク25の目標位置を示すレーザ光等の光Lを円筒壁100に射出する。撮像部43は、目標位置及びフォーク25を撮像する。このため、作業者は、フォーク25と目標位置とを間近で視認しなくても、撮像部43が撮像した画像を確認しながらフォーク25をコア孔Hにスムーズに進入させることができる。
【0039】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
<フォーク>
・上記実施形態では、フォーク25は先端部26に傾斜面32を有する形状であるが、フォーク25はこれ以外の形状であってもよい。例えば、フォーク25は、ブロック110に形成された凹部(又は突部)に嵌合する突部又は凹部を備えていてもよい。又は、フォーク25の上面27全体が平坦であってもよい。
【0040】
・上記実施形態では、フォーク25を初期位置に付勢する付勢部35を一対のフォーク25の内側に設けた。これに代えて若しくは加えて付勢部35をフォーク25の外側に設けるようにしてもよい。この付勢部35は、フォーク25が外側方向D1に回転したときに縮むことにより、フォーク25を初期位置に付勢する。
【0041】
<支持部>
・位置決め部37は、円筒壁100に当接する部材として位置決めボルト39を備えたが、位置決めボルト39以外の部材を有していてもよい。例えば、取付部38にエラストマーからなる当接部を設けてもよい。そして、当接部を円筒壁100に当接させることで、荷役装置20の移動を規制するようにしてもよい。
【0042】
<位置検出部>
・上記実施形態では、荷役装置20は射出部42及び撮像部43を備えたが、これらのうち少なくとも一方を省略してもよい。例えば、荷役装置20を撮像する外部撮像部を荷役装置20以外に設けた場合には、撮像部43を省略してもよい。また、撮像部43又は外部撮像部を設けた場合には、射出部42を省略してもよい。
【0043】
<搬送装置>
・上記実施形態では、搬送装置11は、吊物旋回装置14及び制御盤13を備えるものとしたが、これらを省略してもよい。
【0044】
・上記実施形態では、搬送装置11は対象物を解体する解体システムを構成するものとしたが、必ずしも解体システムを構成しなくてもよい。搬送装置11は、単に搬送対象物を搬送するものであってもよい。
【0045】
<解体システム>
・上記実施形態では、搬送装置11の搬送の対象物を、原子炉の内部コンクリートに例示して説明したが、これに限定されない。また、対象物は円筒壁100に限定されない。また、コンクリート構造体に限らず、鉄製等、他の材料からなる構造体であってもよい。
【符号の説明】
【0046】
H…コア孔、L…光、θA:フォークの最大回動角度、θB:コア孔の相対角度、11…搬送装置、13…制御盤、14…吊物旋回装置、20…荷役装置、21…支持部、22…フレーム、22A…締結部、23…支柱、24…連結部、25…フォーク、26…先端部、27…上面、28…下面、29…フォーク支持部、30…基端部、31…回転軸、32…傾斜面、33…他端、34…固定部、35…付勢部、36…固定部、37…位置決め部、38…取付部、39…位置決めボルト、40…位置検出部、41…支持部材、42…射出部、43…撮像部、45…制御部、46…規制部、50…揚重装置、100…円筒壁、110…ブロック、112…側面、115…隅部。