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  • 特開-エレベーターのガイドレール装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136715
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】エレベーターのガイドレール装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 7/02 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
B66B7/02 F
B66B7/02 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047924
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003568
【氏名又は名称】弁理士法人加藤国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】府内 宣史
【テーマコード(参考)】
3F305
【Fターム(参考)】
3F305BD07
3F305BD08
3F305DA09
(57)【要約】
【課題】昇降路の構造が柔構造である場合も、継目板に作用するモーメントを抑制することができるエレベーターのガイドレール装置を得ることを目的とする。
【解決手段】複数の固定体14のうち、継目板13に最も近い固定体14を第1固定体、2番目に近い固定体14を第2固定体とし、鉛直方向における第1固定体の位置と第2固定体の位置との間隔をレール固定間隔Lとする。このとき、鉛直方向における第1固定体の位置から継目板13の位置までの距離は、レール固定間隔Lの1/3以下である。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路に設置されており、かつ複数のレール部材が上下方向に継ぎ合わされて構成されており、昇降体の昇降を案内するガイドレール本体、
前記複数のレール部材のうちの上下方向に隣り合う2本のレール部材を連結している継目板、及び
前記ガイドレール本体を建物に対して固定している複数の固定体
を備え、
前記昇降路の構造は、柔構造であり、
前記複数の固定体のうち、前記継目板に最も近い固定体を第1固定体、2番目に近い固定体を第2固定体とし、
鉛直方向における前記第1固定体の位置と前記第2固定体の位置との間隔をレール固定間隔としたとき、
鉛直方向における前記第1固定体の位置から前記継目板の位置までの距離は、前記レール固定間隔の1/3以下であるエレベーターのガイドレール装置。
【請求項2】
鉛直方向における前記第1固定体の位置から前記継目板の位置までの距離は、前記レール固定間隔の1/4である請求項1記載のエレベーターのガイドレール装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エレベーターのガイドレール装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のエレベーターでは、ガイドレールは、複数の単位レールを有している。上下に隣り合う2本の単位レールは、継目板によって連結されている。また、ガイドレールは、複数のレールブラケットを介して、昇降路壁に固定されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-188240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来のエレベーターにおいて、昇降路の構造が、鉄筋コンクリート造、鉄筋鉄骨コンクリート造等の剛構造である場合、鉛直方向の任意の位置にレールブラケットを設置することができる。このため、例えば、各単位レールの長さが5mであり、各単位レールが2箇所で昇降路壁に固定される場合、単位レールの端部から500mmの位置と、そこからさらに2500mmの位置とで単位レールが昇降路壁に固定されている。この場合、継目板が設置される位置は、レールブラケットから500mmの位置であり、発生するモーメントが比較的小さい位置である。
【0005】
これに対して、昇降路の構造が柔構造、即ち鉄骨造である場合、レールブラケットの設置位置は、各階床直下における建築梁の位置に限定される。このため、単位レールとして、5mレールのような定尺レールを用いると、継目板の位置が、最大モーメントが発生する位置、即ち2つのレールブラケットの中間位置となることもある。しかも、階間寸法が4000mm程度である場合もあり、その場合、レールブラケットの間隔も大きく、最大モーメントはかなり大きくなる。そのため、継目板を各単位レールに摩擦接合するために、特殊なボルトを用いたり、単位レールと継目板とのそれぞれの接合面に特殊な表面処理を施したりする必要がある。
【0006】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、昇降路の構造が柔構造である場合も、継目板に作用するモーメントを抑制することができるエレベーターのガイドレール装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係るエレベーターのガイドレール装置は、昇降路に設置されており、かつ複数のレール部材が上下方向に継ぎ合わされて構成されており、昇降体の昇降を案内するガイドレール本体、複数のレール部材のうちの上下方向に隣り合う2本のレール部材を連結している継目板、及びガイドレール本体を建物に対して固定している複数の固定体を備え、昇降路の構造は、柔構造であり、複数の固定体のうち、継目板に最も近い固定体を第1固定体、2番目に近い固定体を第2固定体とし、鉛直方向における第1固定体の位置と第2固定体の位置との間隔をレール固定間隔としたとき、鉛直方向における第1固定体の位置から継目板の位置までの距離は、レール固定間隔の1/3以下である。
【発明の効果】
【0008】
本開示のエレベーターのガイドレール装置によれば、昇降路の構造が柔構造である場合も、継目板に作用するモーメントを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1によるエレベーターを示す概略の構成図である。
図2図1のガイドレール本体の一部を拡大して示す側面図である。
図3図2の要部を示す正面図である。
図4】実施の形態1によるガイドレール装置に発生するモーメントを示す説明図である。
図5】継目板位置比率kと係数C(k)との関係を示すグラフである。
図6】実施の形態1における継目板の位置の好適な範囲を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1によるエレベーターを示す概略の構成図である。図1において、昇降路1の上には、機械室2が設けられている。機械室2には、エレベータ巻上機3及びそらせ車6が設置されている。
【0011】
エレベータ巻上機3は、巻上機本体4と、駆動シーブ5とを有している。巻上機本体4は、巻上機モータと、巻上機ブレーキとを有している。巻上機モータは、駆動シーブ5を回転させる。巻上機ブレーキは、駆動シーブ5の静止状態を保持する。また、巻上機ブレーキは、駆動シーブ5の回転を制動する。
【0012】
駆動シーブ5及びそらせ車6には、懸架体7が巻き掛けられている。懸架体7としては、複数本のロープ又は複数本のベルトが用いられている。懸架体7の第1端部には、昇降体としてのかご8が接続されている。懸架体7の第2端部には、昇降体としての釣合おもり9が接続されている。
【0013】
かご8及び釣合おもり9は、懸架体7によって昇降路1内に吊り下げられている。また、かご8及び釣合おもり9は、駆動シーブ5を回転させることによって、昇降路1内を昇降する。
【0014】
昇降路1内には、ガイドレール装置10が設けられている。ガイドレール装置10は、複数本のガイドレール本体11を有している。複数本のガイドレール本体11には、一対のかごガイドレール本体と、一対の釣合おもりガイドレール本体とが含まれている。
【0015】
一対のかごガイドレール本体は、かご8の昇降を案内する。一対の釣合おもりガイドレール本体は、釣合おもり9の昇降を案内する。
【0016】
かご8には、複数のかごガイドシュー8aが設けられている。各かごガイドシュー8aは、かご8の昇降時に、対応するかごガイドレール本体に接しながら移動する。
【0017】
釣合おもり9には、複数の釣合おもりガイドシュー9aが設けられている。各釣合おもりガイドシュー9aは、釣合おもり9の昇降時に、対応する釣合おもりガイドレール本体に接しながら移動する。
【0018】
図2は、図1のガイドレール本体11の一部を拡大して示す側面図である。図3は、図2の要部を示す正面図である。各ガイドレール本体11は、複数のレール部材12が上下方向に継ぎ合わされて構成されている。
【0019】
図1では省略したが、ガイドレール装置10は、複数本のガイドレール本体11に加えて、複数の継目板13と、複数の固定体14とをさらに有している。
【0020】
各継目板13は、複数のレール部材12のうちの上下方向に隣り合う2本のレール部材12を連結している。各継目板13は、図示しない複数のボルトによって2本のレール部材12に固定されている。
【0021】
各固定体14は、ガイドレール本体11を建物に対して固定している。即ち、各ガイドレール本体11は、複数の固定体14を介して、昇降路1に設置されている。
【0022】
実施の形態1の昇降路1の構造は、柔構造である。このため、各固定体14は、対応する建築梁20に固定されている。
【0023】
各固定体14は、ベースプレート15と、レールブラケット16と、一対のレールクリップ17とを有している。
【0024】
ベースプレート15は、例えば溶接により建築梁20に固定されている。レールブラケット16は、例えば溶接によりベースプレート15に固定されている。
【0025】
ガイドレール本体11は、各固定体14において、一対のレールクリップ17とレールブラケット16との間にを挟み込まれている。即ち、各固定体14において、ガイドレール本体11は、一対のレールクリップ17によって、レールブラケット16に固定されている。
【0026】
図4は、実施の形態1によるガイドレール装置10に発生するモーメントを示す説明図である。図4では、ガイドレール装置10のモデルが上段に示されており、モーメントが下段に示されている。また、図4では、左右方向が鉛直方向である。
【0027】
ガイドレール装置10のモデルにおいて、ガイドレール本体11は、直線により示されている。また、各継目板13の位置、即ち隣り合う2本のレール部材12の境界は、ガイドレール本体11に直交する直線により示されている。また、各固定体14の位置、即ち各固定体14によるガイドレール本体11の固定位置は、三角形により示されている。
【0028】
図4の下段では、鉛直方向におけるガイドレール本体11の中央に大きさPの外力が作用した場合におけるモーメントの大きさが示されている。また、横軸は鉛直方向における位置xを示し、縦軸はモーメントの大きさMを示している。
【0029】
ここで、複数の継目板13のうちの1つを対象継目板としたとき、対象継目板に最も近い固定体14を第1固定体とし、対象継目板に2番目に近い固定体14を第2固定体とする。また、鉛直方向における第1固定体の位置と第2固定体の位置との間隔をレール固定間隔Lとする。
【0030】
また、第1固定体の位置から対象継目板までの距離をaとする。また、レール固定間隔Lに対する距離aの比率を継目板位置比率kとする。即ち、k=a/Lである。
【0031】
このとき、モーメントの大きさMは、M=C(k)×PLと表すことができる。但し、係数C(k)は、kの関数であり、無次元数である。PLは、エレベーターの仕様によって一意に定まるため、これ以上低く抑えることはできない。しかし、係数C(k)を可能な限り低くすれば、モーメントの大きさMを抑制することができる。
【0032】
継目板位置比率kの定義域は、0.1≦k≦0.5であるため、C(k)をグラフ化すると図5のようになる。図5から、継目板位置比率k≒1/4=0.25の場合に、C(k)が最小に抑えられることが分かる。
【0033】
なお、あらゆるレール固定間隔Lにおいて、継目板位置比率kを1/4に設定すると、ガイドレール本体11の据付作業性、レール部材12の長さの自由度等が損なわれる。このため、実用面を考慮し、図6に示すように、継目板位置比率k≦1/3とすることが好適である。
【0034】
以上から、実施の形態1によるガイドレール装置10においては、鉛直方向における第1固定体の位置から対象継目板の位置までの距離は、レール固定間隔Lの1/3以下に設定されている。言い換えると、継目板位置比率k≦1/3となるように、各レール部材12の長さが設定されている。
【0035】
このため、昇降路1の構造が柔構造である場合も、各継目板13に作用するモーメントを抑制することができる。これにより、外力による各継目板13のずれが抑制され、エレベーターの乗り心地性能を維持することができる。
【0036】
また、各継目板13を各レール部材12に摩擦接合するために、特殊なボルトを用いたり、レール部材12と継目板13とのそれぞれの接合面に特殊な表面処理を施したりする必要がなく、材料コスト、製造コスト、及び据付コストを低く抑えることができる。
【0037】
また、鉛直方向における第1固定体の位置から対象継目板の位置までの距離を、レール固定間隔Lの1/4とすることにより、各継目板13に作用するモーメントをより確実に抑制することができる。
【0038】
なお、各ガイドレール本体11に対する継目板13の数及び固定体14の数は、エレベーターによって適宜変更可能である。
【0039】
また、エレベーターのタイプは、図1のタイプに限定されるものではなく、例えば2:1ローピング方式であってもよい。
【0040】
また、エレベーターは、機械室レスエレベーター、ダブルデッキエレベーター、ワンシャフトマルチカー方式のエレベーター等であってもよい。ワンシャフトマルチカー方式は、上かごと、上かごの真下に配置された下かごとが、それぞれ独立して共通の昇降路を昇降する方式である。
【符号の説明】
【0041】
1 昇降路、8 かご(昇降体)、9 釣合おもり(昇降体)、10 ガイドレール装置、11 ガイドレール本体、12 レール部材、13 継目板、14 固定体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6