(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136716
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】眼科装置
(51)【国際特許分類】
A61B 3/00 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
A61B3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047925
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 健治
(72)【発明者】
【氏名】吉村 勇人
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA13
4C316AB16
4C316FC01
(57)【要約】
【課題】表示部が通常位置(チルトダウン)と反転位置(チルトアップ)のそれぞれに対応可能な眼科装置において高重心化の抑制を図る眼科装置を提供する。
【解決手段】被検眼を検査するための眼科装置1であって、光学系を備え、被検眼を検査する検査部2と、検査部2における検査情報を表示する表示部100と、表示部100を検査部2に対して、垂直軸J1周りに回動可能に支持すると共に、水平軸J2周りに回動可能に支持する支持機構200を備え、支持機構200は、検査部2に対して垂直軸J1周りに回動可能に接続される境界面を水平方向に広げた境界水平面Hとしたときに、水平軸J2周りの回動中心が境界水平面Hよりも下方に位置する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼を検査するための眼科装置であって、
光学系を備え、前記被検眼を検査する検査部と、
前記検査部における検査情報を表示する表示部と、
前記表示部を前記検査部に対して、垂直軸周りに回動可能に支持すると共に、水平軸周りに回動可能に支持する支持機構を備え、
前記支持機構は、前記検査部に対して前記垂直軸周りに回動可能に接続される境界面を水平方向に広げた境界水平面としたときに、前記水平軸周りの回動中心が前記境界水平面よりも下方に位置する眼科装置。
【請求項2】
請求項1に記載の眼科装置であって、
前記支持機構は、
前記表示部を前記検査部に対して前記垂直軸周りに回動可能に支持する水平旋回機構と、
前記表示部を前記検査部に対して前記水平軸周りに回動可能に支持するチルト機構と、を備え、
前記水平旋回機構は、前記検査部上において前記垂直軸周りに回動可能に前記表示部を支持する支持部材を有し、
前記支持部材は、前記検査部を覆う外装の上部から前記外装の外周面よりも外方に張り出した位置まで延出することで前記チルト機構が前記支持部材を介して前記外装よりも外方の位置に構成されており、
前記支持部材は、前記境界水平面よりも下方に向かって延出する下方延出部を有し、
前記下方延出部の下端側に前記チルト機構における回動中心が設けられることで前記表示部が支持されている眼科装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の眼科装置であって、
前記水平軸周りの回動中心における前記境界水平面よりも下方の位置は、
前記表示部を前記水平軸周りに回動させて前記表示部の上下を反転させて表示エリアを反転表示させた状態において、前記表示エリアと前記支持機構が重ならないことにより前記表示エリア全体が視認可能な関係で配置構成されている眼科装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被検眼を検査するための眼科装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被検眼を検査するための眼科装置が知られている。ここで、「被検眼の検査」は、例えば被検眼の各種測定、被検眼の各種撮影などが含まれ得る。例えば、眼科装置としては、眼屈折力測定装置、角膜曲率測定装置、眼圧測定装置、眼底カメラ、OCT、SLO等が知られている。これらの装置は、本体に表示部を備え、検者は、表示部の表示を見ながら装置のアライメントおよび検査結果の確認等を行う。
【0003】
従来、特許文献1のように被検眼を検査する検査部に対して表示部を水平軸周りに回動させて表示部の上下を反転させ、さらに表示部を垂直軸周りに回動させることによって、検査室のレイアウトに応じて表示部の位置を変更する眼科装置が知られている。ここで、眼科装置は、表示部を水平軸周りに下方に回動させて表示部を水平軸から垂下させて表示エリアを表示させた通常位置の状態(チルトダウン)にさせることができる。また、眼科装置は、表示部を水平軸周りに上方に回動させて表示部の上下を反転(検査部上方側に表示部が立設した状態)させて表示エリアを反転表示させた反転位置の状態(チルトアップ)にさせることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、表示部を通常位置の状態(チルトダウン)と反転位置の状態(チルトアップ)のそれぞれに対応する態様では、表示部を支持する支持部が装置全体において相対的に高い位置に配置される傾向となる。そのため、表示部が高い位置に配置されることで装置全体の重心位置が上方となることに伴い検査部のトラッキング時の揺れに影響を及ぼすことが懸念され、更なる改善が求められていた。
【0006】
本開示は、従来の問題点に鑑み、表示部が通常位置(チルトダウン)と反転位置(チルトアップ)のそれぞれに対応可能な眼科装置において高重心化の抑制を図る眼科装置を提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示は以下のような構成を備えることを特徴とする。
【0008】
上記課題を解決する眼科装置の一つの特徴は、被検眼を検査するための眼科装置であって、光学系を備え、前記被検眼を検査する検査部と、前記検査部における検査情報を表示する表示部と、前記表示部を前記検査部に対して、垂直軸周りに回動可能に支持すると共に、水平軸周りに回動可能に支持する支持機構を備え、前記支持機構は、前記検査部に対して前記垂直軸周りに回動可能に接続される境界面を水平方向に広げた境界水平面としたときに、前記水平軸周りの回動中心が前記境界水平面よりも下方に位置する。
【0009】
上記構成の一つの特徴及び利点として、支持機構が検査部に対して垂直軸周りに回動可能に接続される境界面を水平方向に広げた境界水平面としたときに、水平軸周りの回動中心が境界水平面よりも下方に位置する。そのため、表示部が通常位置(チルトダウン)と反転位置(チルトアップ)のそれぞれに対応可能な眼科装置において高重心化の抑制を図る眼科装置を提供することができる。
【0010】
上記眼科装置について、前記支持機構は、前記表示部を前記検査部に対して前記垂直軸周りに回動可能に支持する水平旋回機構と、前記表示部を前記検査部に対して前記水平軸周りに回動可能に支持するチルト機構と、を備え、前記水平旋回機構は、前記検査部上において前記垂直軸周りに回動可能に前記表示部を支持する支持部材を有し、前記支持部材は、前記検査部を覆う外装の上部から前記外装の外周面よりも外方に張り出した位置まで延出することで前記チルト機構が前記支持部材を介して前記外装よりも外方の位置に構成されており、前記支持部材は、前記境界水平面よりも下方に向かって延出する下方延出部を有し、前記下方延出部の下端側に前記チルト機構における回動中心が設けられることで前記表示部が支持されていてもよい。
【0011】
上記構成の一つの特徴及び利点として、複雑な機構を用いることなく、表示部が通常位置(チルトダウン)と反転位置(チルトアップ)のそれぞれに対応可能な眼科装置において高重心化の抑制を図る眼科装置を提供することができる。
【0012】
上記眼科装置について、前記水平軸周りの回動中心における前記境界水平面よりも下方の位置は、前記表示部を前記水平軸周りに回動させて前記表示部の上下を反転させて表示エリアを反転表示させた状態において、前記表示エリアと前記支持機構が重ならないことにより前記表示エリア全体が視認可能な関係で配置構成されていてもよい。
【0013】
上記構成の一つの特徴及び利点として、表示エリアを反転表示させた状態において、表示エリアと支持機構が重ならない関係により表示エリア全体が視認可能な構成であるため、表示部の機能を損なうことなく、表示部が通常位置(チルトダウン)と反転位置(チルトアップ)のそれぞれに対応可能な眼科装置において高重心化の抑制を図ることができるため好適である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】本実施例の光学系および制御系を示す図である。
【
図3】表示部をチルト機構によるチルト操作として下方(チルトダウン)に回動させて表示部の位置を通常位置とした装置全体を示した概略図である。
【
図4】表示部をチルト機構によるチルト操作として上方(チルトアップ)に回動させて表示部の位置を反転位置とした装置全体を示した概略図である。
【
図5】表示部を反転位置にしても表示エリアと支持機構が重ならない状態を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施形態>
本実施形態は、被検眼を検査するための眼科装置である。本実施形態の眼科装置は、検査部と、表示部と、支持機構を備える。検査部は、被検眼を検査する。検査部は、光学系を備える。表示部は、検査部における検査情報を表示する。支持機構は、表示部を検査部に対して、垂直軸周りに回動可能に支持すると共に、水平軸周りに回動可能に支持する。支持機構は、検査部に対して垂直軸周りに回動可能に接続される境界面を水平方向に広げた境界水平面としたときに、水平軸周りの回動中心が境界水平面よりも下方に位置する。支持機構は、水平旋回機構と、チルト機構と、を備える。水平旋回機構は、表示部を検査部に対して垂直軸周りに回動可能に支持する。チルト機構は、表示部を検査部に対して水平軸周りに回動可能に支持する。水平旋回機構は、検査部上において垂直軸周りに回動可能に表示部を支持する支持部材を有している。例えば、支持部材は、検査部を覆う外装の上部から外装の外周面よりも外方に張り出した位置まで延出することでチルト機構が支持部材を介して外装よりも外方の位置に構成されていてもよい、例えば、支持部材は、境界水平面よりも下方に向かって延出する下方延出部を有していてもよい。下方延出部の下端側にチルト機構における回動中心が設けられることで表示部が支持されていてもよい。例えば、水平軸周りの回動中心における境界水平面よりも下方の位置は、表示部を水平軸周りに回動させて表示部の上下を反転させて表示エリアを反転表示させた状態において、表示エリアと支持機構が重ならないことにより表示エリア全体が視認可能な関係で配置構成されていてもよい。これにより、表示部が通常位置(チルトダウン)と反転位置(チルトアップ)のそれぞれに対応可能な眼科装置において高重心化の抑制を図る眼科装置を提供することができる。
【0016】
<実施例>
以下、本開示に係る実施例について説明する。本実施例の眼科装置は、例えば、被検眼を検査する装置である。眼科装置としては、例えば、眼屈折力測定装置、角膜曲率測定装置、角膜形状測定装置、眼圧測定装置、眼軸長測定装置、眼底カメラ、OCT(optical coherence tomography)、SLO(Scanning Laser Ophthalmoscope)等が挙げられる。以下の説明では、一例として眼屈折力測定装置を説明する。
【0017】
本実施例の眼科装置は、例えば、被検眼の眼屈折力を他覚的に測定する。例えば、本実施例の眼科装置は、片眼毎に測定を行ってもよいし、両眼同時に(両眼視で)測定を行う装置であってもよい。眼科装置は、例えば、検査部と、表示部と、駆動部と、制御部等を備える。なお、以下の説明において、検査部2の光軸方向をZ軸方向(前後方向)、Z軸方向に垂直な水平方向をX軸方向(左右方向)、Z軸およびX軸に垂直な方向をY軸方向(上下方向)とする。
【0018】
<外観>
図1に基づいて、眼科装置の外観を説明する。
図1に示すように、本実施例の眼科装置1は、検査部2と、表示部100などを備える。検査部2は、被検眼を検査する。検査部2は、例えば、被検眼の眼屈折力、角膜曲率、眼圧等を測定する光学系を備えてもよい。また、検査部2は、被検眼の前眼部、眼底等を撮影するための光学系等を備えてもよい。本実施例では、屈折力を測定する検査部2を例に説明する。表示部100は、例えば、被検眼の観察画像および測定結果などの検査情報を表示させる。また表示部100は、表示画面に触れることで眼科装置1における各種操作を可能とするタッチパネルが構成されている。また、表示部100の表面には、タッチパネル以外の各種インターフェース(ボタン等)が装備されていてもよい。表示部100へのタッチ操作、インターフェースに対する入力操作をおこなうことで眼科装置1における各種操作を可能としている。
【0019】
さらに、本実施例の眼科装置1は、例えば、外装6、駆動部4、操作部8、顔支持部9等を備えてもよい。例えば、外装6は、検査部2、駆動部4等を覆う。駆動部4は、例えば、検査部2を基台5に対して上下左右前後方向(3次元方向)に移動させる。眼科装置1は、操作部8を備えてもよい。操作部8は、眼科装置1の各種設定、測定開始時の操作に用いられる。操作部8には、検者による各種操作指示が入力される。例えば、操作部8は、タッチパネル、ジョイスティック、マウス、キーボード、トラックボール、ボタン等の各種ヒューマンインターフェイスであってもよい。なお、表示部100としてタッチパネルが用いられる場合は、表示部100として操作部として兼用されてもよい。表示部100の表面には、タッチパネル以外の各種インターフェース(ボタン等)が装備されていてもよい。顔支持部9は、例えば、額当てと顎台を備えてもよい。例えば、顎台は、顎台駆動部の駆動によって上下方向に移動されてもよい。
【0020】
<制御系>
図2に示すように、眼科装置1は制御部70を備える。制御部70は、眼科装置1の各種制御を司る。制御部70は、例えば、一般的なCPU(Central Processing Unit)71、ROM72、RAM73等を備える。例えば、ROM72には、眼科装置を制御するための眼科装置制御プログラム、初期値等が記憶されている。例えば、RAMは、各種情報を一時的に記憶する。制御部70は、検査部2、駆動部4、表示部100、操作部8、記憶部(例えば、不揮発性メモリ)74等と接続されている。記憶部74は、例えば、電源の供給が遮断されても記憶内容を保持できる非一過性の記憶媒体である。例えば、ハードディスクドライブ、着脱可能なUSBフラッシュメモリ等を記憶部74として使用することができる。
【0021】
<検査部>
検査部2は、被検眼の検査を行う。ここで、「被検眼の検査」は、例えば被検眼の眼屈折力、角膜曲率、眼圧等の各種測定、被検眼の前眼部、眼底、網膜の断層画像等の各種撮影などが含まれる。検査部2は、例えば、被検眼の屈折力を測定する測定光学系を備えてもよい。例えば、
図2に示すように、検査部2は、測定光学系20と、固視標呈示光学系40と、指標投影光学系50と、観察光学系(撮像光学系)60と、を備えてもよい。
【0022】
測定光学系20は、投影光学系(投光光学系)20aと、受光光学系20bと、を有している。投影光学系20aは、被検眼の瞳孔を介して眼底Efに光束を投影する。また、受光光学系20bは、瞳孔周辺部を介して眼底Efからの反射光束(眼底反射光)をリング状に取り出し、主に屈折力の測定に用いるリング状の眼底反射像を撮像する。
【0023】
投影光学系20aは、測定光源21と、リレーレンズ22と、ホールミラー23と、対物レンズ24と、を光軸L1上に有している。光源21は、リレーレンズ22から対物レンズ24、および、瞳孔中心部を介して眼底Efにスポット状の光源像を投影する。光源21は、移動機構33によって光軸L1方向に移動される。ホールミラー23には、リレーレンズ22を介した光源21からの光束を通過させる開口が設けられている。ホールミラー23は、被検眼の瞳孔と光学的に共役な位置に配置されている。
【0024】
受光光学系20bは、ホールミラー23と、対物レンズ24と、を投影光学系20aと共用する。また、受光光学系20bは、リレーレンズ26と、全反射ミラー27と、を有している。更に、受光光学系20bは、受光絞り28と、コリメータレンズ29と、リングレンズ30と、撮像素子32と、をホールミラー23の反射方向の光軸L2上に有している。撮像素子32には、エリアCCD等の二次元受光素子を用いることができる。受光絞り28、コリメータレンズ29、リングレンズ30、及び撮像素子32は、移動機構33によって、投影光学系20aの測定光源21と一体的に光軸L2方向に移動される。移動機構33によって光源21が眼底Efと光学的に共役な位置に配置される場合、受光絞り28及び撮像素子32も、眼底Efと光学的に共役な位置に配置される。
【0025】
リングレンズ30は、対物レンズ24からコリメータレンズ29を介して導かれる眼底反射光を、リング状に整形するための光学素子である。リングレンズ30は、リング状のレンズ部と、遮光部と、を有している。また、受光絞り28及び撮像素子32が、眼底Efと光学的に共役な位置に配置される場合、リングレンズ30は、被検眼の瞳孔と光学的に共役な位置に配置される。撮像素子32では、リングレンズ30を介したリング状の眼底反射光(以下、リング像という)が受光される。撮像素子32は、受光したリング像の画像情報を、制御部70に出力する。その結果、制御部70では、表示部100でのリング像の表示、およびリング像に基づく屈折力の算出等が行われる。
【0026】
また、
図2に示すように、本実施例では、対物レンズ24と被検眼との間に、ダイクロイックミラー39が配置されている。ダイクロイックミラー39は、光源21から出射された光、および、光源21からの光に応じた眼底反射光を透過する。また、ダイクロイックミラー39は、後述の固視標呈示光学系40からの光束を被検眼に導く。更に、ダイクロイックミラー39は、後述の指標投影光学系50からの光の前眼部反射光を反射して、その前眼部反射光を観察光学系60に導く。
【0027】
図2に示すように、被検眼の前方には、指標投影光学系50が配置されている。指標投影光学系50は、主に、被検眼に対する光学系の位置合わせ(アライメント)に用いられる指標を前眼部に投影する。この場合、指標投影光学系50は、被検眼に対する光学系のXY方向又はZ方向の少なくともいずれかに位置合わせ(アライメント)に用いられる指標を前眼部に投影する。なお、指標投影光学系50を用いず、前眼部画像における特徴部位を検出することによってアライメント検出を行うようにしてもよい。もちろん、指標検出と、特徴部位の検出とを併用して、アライメントを検出してもよい。
【0028】
指標投影光学系50は、例えば、リング指標投影部51と、指標投影部52と、を備える。リング指標投影部51は、被検者眼Eの角膜に拡散光を投影し、リング指標(いわゆるマイヤーリング)を投影する。リング指標投影部51は、本実施例の眼科装置1では、被検者眼Eの前眼部を照明する前眼部照明としても用いられる。指標投影部52は、被検眼の角膜に平行光を投影し、無限遠指標を投影する。
【0029】
視標呈示光学系40は、光源41、固視標42、リレーレンズ43、反射ミラー46の反射方向の光軸L4上に有している。固視標42は、他覚屈折力測定時に被検眼を固視させるために使用される。例えば、光源41によって固視標42が照明されることによって、被検眼に呈示される。
【0030】
光源41及び固視標42は、駆動機構48によって光軸L4の方向に一体的に移動される。光源41及び固視標42の移動によって、固視標の呈示位置(呈示距離)を変更してもよい。これによって、被検眼に雲霧をかけて屈折力測定を行うことができる。
【0031】
前眼撮影光学系60は、撮像レンズ61と、撮像素子62とを、ハーフミラー63の反射方向の光軸L3上に備える。撮像素子62は、被検眼の前眼部と光学的に共役な位置に配置される。撮像素子62は、リング指標投影部51によって照明される前眼部を撮像する。撮像素子62からの出力は、制御部70に入力される。その結果、撮像素子62によって撮像される被検眼の前眼部画像が、表示部100に表示される(
図2参照)。また、撮像素子62では、指標投影光学系50によって被検眼の角膜に形成されるアライメント指標像(本実施例では、リング指標および無限遠指標)が撮像される。その結果、制御部70は、撮像素子62の撮像結果に基づいてアライメント指標像を検出できる。これによって、制御部70は、アライメント状態の適否を、アライメント指標像が検出される位置に基づいて判定できる。
【0032】
<測定>
以下、眼科装置1の制御動作について説明する。眼科装置1は、例えば、被検眼を検査するために、検査部2と被検眼とのアライメントを全自動(フルオート)で行う。例えば、制御部70は、図示無き顔撮影部によって撮影された顔画像から被検者の眼を検出し、その方向に検査部2を移動させる。この間、制御部70は、前眼部観察光学系60によって撮影された被検眼の前眼部画像から、指標投影光学系50によって投影されたアライメント指標を検出してもよい。顔画像から検出された被検眼の情報に基づいて、粗アライメントが行われたところで、前眼部画像からアライメント指標を検出すると、制御部70は、アライメント指標による微アライメントを行う。例えば、制御部70は、アライメント指標の位置が所定位置となるように検査部2を移動させ、アライメントを完了させる。
【0033】
アライメント完了すると、制御部70は、測定光を被検眼の眼底に照射し、眼底によって反射された測定光の検出結果に基づいて、被検眼の眼屈折力を測定する。例えば、制御部は、撮像素子32によって受光したリング像の形状に基づいて屈折力の算出を行う。片眼の測定が完了すると、制御部70は測定対象眼を切り換える。例えば、制御部70は、検査が完了した眼からもう一方の眼に検査部2を移動させ、再度アライメントを行う。アライメントが完了すると、制御部70はもう一方の被検眼の検査を行う。
【0034】
<表示部の支持機構(水平旋回機構、チルト機構)>
図3は、表示部100をチルト機構260によるチルト操作として下方(チルトダウン)に回動させて表示部100の位置を通常位置100Aとした装置全体を示した概略図を示している。
図4は、表示部100をチルト機構260によるチルト操作として上方(チルトアップ)に回動させて表示部100の位置を反転位置100Bとした装置全体を示した概略図を示している。
【0035】
図1、3、4に示すように、眼科装置1は、表示部100の位置を移動させるための支持機構200を備える。支持機構200は、表示部100を検査部2に対して、垂直軸J1周りに回動可能に支持すると共に、水平軸J2周りに回動可能に支持する機構である。支持機構200は、検査部2に対して垂直軸J1周りで回動可能に接続される。ここで、支持機構200と検査部2が接続される境界面を水平方向に広げた面を境界水平面Hとする。眼科装置1における支持機構200は、水平旋回機構210と、チルト機構260を備える。
【0036】
<水平旋回機構>
水平旋回機構210は、表示部100を検査部2に対して垂直軸J1周りに回動可能に支持する機構である。支持機構200は、支持部材220が検査部2に対して垂直軸J1周りで回動可能に接続される。ここで、垂直軸J1は、水平旋回機構210における回動中心である。水平旋回機構210は、外装6上において垂直軸J1周りに回動可能に表示部100を支持する支持部材220を有している。支持部材220は、金属製のプレートによって、略板状に形成されている。支持部材220は、水平面部222と、下方延出部224を有する。水平面部222は、検査部2を覆う外装6の上部から外装6の外周面よりも外方に張り出した位置まで延出する部位である。下方延出部224は、水平面部222の端部から屈曲して境界水平面Hよりも下方に向かって延出する部位である。水平面部222の一方端側には、検査部2に対して垂直軸J1周りで回動可能に接続される。水平面部222の他方端側には、水平面部222の端部から屈曲した下方延出部224が構成されている。ここで、支持部材220における垂直軸J1と下方延出部224までの長さは、検査部2を覆う外装6の上部から外装6の外周面よりも外方に張り出した位置まで延出する長さに設定されている。即ち、下方延出部224及び表示部100の位置が、外装6よりも外方の位置となる長さに設定されている。
【0037】
<チルト機構>
チルト機構260は、表示部100を検査部2に対して水平軸J2周りに回動可能に支持する機構である。水平軸J2は、チルト機構260における回動中心である。支持部材220における下方延出部224の下端224a側には、水平軸J2周りに回動可能に表示部100が取り付けられている。下方延出部224は、水平面部222の端部から離れる方向であって、下方に向かって屈曲して延びている。また、下方延出部224の長さは、その下端224aが境界水平面Hよりも下方の位置まで延出する長さで設定される。チルト機構260は、下方延出部224の下端224a側に回動中心である水平軸J2が設けられる。これにより、チルト機構260は、支持部材220を介して外装6よりも外方の位置に構成されている。また、チルト機構260の回動中心である水平軸J2は、境界水平面Hよりも下方の位置に構成されている。表示部100は、外装6よりも外方の位置であって、境界水平面Hよりも下方の位置においてチルト機構260に回動可能に支持される。さらに、回動中心である水平軸J2における境界水平面Hよりも下方の位置は、表示部100を水平軸J2周りに回動させて表示部100の上下を反転させて表示エリア102を反転表示させた状態において、表示エリア102と支持機構200が重ならないことにより表示エリア102全体が視認可能な関係で配置に構成される。すなわち、下方延出部224の長さは、表示部100を反転位置100Bにしても表示エリア102と支持機構200が重ならない長さに設定される。
【0038】
<水平旋回機構の移動動作>
本実施例の支持機構200における水平旋回機構210は、検者が被検者と対面する状態において、検者の正面および左右に表示部100を移動させることができる。すなわち、検者が被検者に対して眼科装置1の反対側、または眼科装置1の左側もしくは右側で検査を行う場合、それぞれの位置に表示部100を移動させることができる。例えば、表示部100が検者によって右方向に押されると、支持部材220が水平方向に回動することで表示部100が右方向に旋回する。表示部100を正面に戻す場合、または被検者の右側に移動させる場合には、検者が表示部100を左方向に押すと、支持部材220が水平方向に回動することで表示部100が左方向に旋回し、表示部100が眼科装置1の正面、さらには左側面に移動する。
【0039】
<チルト機構の移動動作>
図3に示すように、眼科装置1は、表示部100を水平軸J2周りに下方に回動させて表示部100を水平軸J2から垂下させて表示エリア102を表示させた通常位置100Aの状態にさせることができる(チルトダウン)。ここで、表示部100の表示エリア102は、通常位置100Aの状態において、水平軸J2が境界水平面Hよりも下方の位置の長さだけ下方に配置することができる。
図4に示すように、眼科装置1は、表示部100を水平軸J2周りに上方に回動させて表示部100の上下を反転(検査部上方側に表示部が立設した状態)させて表示エリア102を反転表示させた反転位置100Bの状態にさせることができる(チルトアップ)。ここで、表示部100の表示エリア102は、反転位置100Bの状態にしても表示エリア102と支持機構200が重ならない長さだけ下方に配置される。
図5に示すように、表示部100を反転位置100Bにしても表示エリア102と支持機構200が重ならない。これにより、眼科装置1の重心位置が上方となることを抑制できるため、検査部2のトラッキング時の揺れに影響を及ぼすことを抑制し得る。
【0040】
このように実施形態に係る実施例としての眼科装置1によれば、つぎのような作用効果を有する。
【0041】
本開示における眼科装置1は、支持機構200が検査部2に対して垂直軸J1周りに回動可能に接続される境界面を水平方向に広げた境界水平面Hとしたときに、水平軸J2周りの回動中心が境界水平面Hよりも下方に位置する。そのため、表示部100が通常位置100A(チルトダウン)と反転位置100B(チルトアップ)のそれぞれに対応可能な眼科装置1において高重心化の抑制を図ることができる。また、装置全体の重心位置が上方となることを抑制し得るため、検査部2のトラッキング時の揺れに影響を及ぼすことが抑制し得る。
【0042】
また近年、検査部2の高機能化に伴い、検査部2のサイズが大きくなることも想定されている。ここで、検査部2が大きくなる分、表示部100の位置が高くなる傾向にある。ここで、通常位置100Aにおける表示部100の位置が高くなると検者の顔と近くなって視認性、操作性に影響がある。そのため、通常位置100Aにおける表示部100の位置を低く設定することが望まれている。ところが、従来の表示部の支持構造では、通常位置100Aにおける表示部100の位置を低くすると、反転位置100Bに切り替え表示した状態において、表示部100の位置が相対的に上方に上がってしまう。このように、検査部2が大きくなることを要因として、装置全体の重心位置が上方となることに伴い検査部2のトラッキング時の揺れに影響を及ぼすことも懸念されている。しかしながら、本開示における眼科装置1は、通常位置100Aにおける表示部100の位置を低く設定しつつ、反転位置100Bにおける表示部100の位置を低く設定することができ、高重心化の抑制を図ることができる眼科装置を提供することができる。
【0043】
本開示における眼科装置1は、支持部材220が、境界水平面Hよりも下方に向かって延出する下方延出部を有し、この下方延出部の下端側にチルト機構260における水平軸J2(回動中心)が設けられることで表示部が支持される。そのため、複雑な機構を用いることなく、表示部100が通常位置100A(チルトダウン)と反転位置100B(チルトアップ)のそれぞれに対応可能な眼科装置1において高重心化の抑制を図ることができる。
【0044】
本開示における眼科装置1は、表示エリア102を反転表示させた状態において、表示エリア102と支持機構200が重ならない関係により表示エリア102全体が視認可能な構成である。そのため、表示部100の機能を損なうことなく、表示部100が通常位置100A(チルトダウン)と反転位置100B(チルトアップ)のそれぞれに対応可能な眼科装置1において高重心化の抑制を図ることができる。
【0045】
<変容例>
本開示における眼科装置の例示として、眼屈折力測定装置を用いて説明したがこれに限られない。すなわち、被検眼を検査する装置であれば、眼屈折力測定装置の他に、角膜曲率測定装置、角膜形状測定装置、眼圧測定装置、眼軸長測定装置、眼底カメラ、OCT(optical coherence tomography)、SLO(Scanning Laser Ophthalmoscope)等の種々の装置に適用できる。
【0046】
本開示における眼科装置の例示として、眼科装置1は、支持機構200が検査部2に対して垂直軸J1周りに回動可能水平旋回機構210の態様について示した。しかしながら、本開示における眼科装置における水平旋回機構は、垂直軸J1の1つの軸を中心とした円周起動で旋回するものに限られず、垂直軸J1の周りを楕円的な軌道で旋回するものであってもよい。
【0047】
また、
図6に示すように、眼科装置1における検査部2の外装6が支持部材220を覆うカバー部材7を設けたものであってもよい(
図6の図示では、カバー部材7を断面図で図示している)。
【符号の説明】
【0048】
1 眼科装置
2 検査部
4 駆動部
5 基台
6 外装
7 カバー部材
8 操作部
9 顔支持部
70 制御部
71 CPU
72 ROM
73 RAM
100 表示部
100A 通常位置
100B 反転位置
102 表示エリア
200 支持機構
210 水平旋回機構
220 支持部材
222 水平面部
224 下方延出部
224a 下方延出部の下端
260 チルト機構
H 境界水平面
J1 垂直軸
J2 水平軸