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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013672
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】作業機
(51)【国際特許分類】
   B23D 51/16 20060101AFI20240125BHJP
   B27B 19/04 20060101ALI20240125BHJP
   B27B 19/09 20060101ALI20240125BHJP
   B25F 5/00 20060101ALI20240125BHJP
   B23D 49/14 20060101ALI20240125BHJP
   H02P 6/15 20160101ALI20240125BHJP
【FI】
B23D51/16
B27B19/04
B27B19/09
B25F5/00 C
B23D49/14
H02P6/15
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022115940
(22)【出願日】2022-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136375
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 弘実
(74)【代理人】
【識別番号】100079290
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 隆
(72)【発明者】
【氏名】小川 悟史
【テーマコード(参考)】
3C040
3C064
5H560
【Fターム(参考)】
3C040AA12
3C040DD07
3C040FF05
3C040LL18
3C064AA04
3C064AA06
3C064AB01
3C064AC03
3C064BA06
3C064BA12
3C064BA33
3C064BB01
3C064BB02
3C064CA03
3C064CA07
3C064CA25
3C064CA27
3C064CA72
3C064CA75
3C064CA78
3C064CA80
3C064CA82
3C064CA83
3C064CB06
3C064CB08
3C064CB17
3C064CB63
3C064CB71
3C064DA02
3C064DA23
3C064DA26
3C064DA28
3C064DA39
3C064DA59
3C064DA65
3C064DA78
5H560AA10
5H560BB04
5H560BB07
5H560BB12
5H560DA03
5H560DB20
5H560DC12
5H560EB01
5H560JJ06
5H560SS07
5H560UA05
5H560XA12
5H560XA15
(57)【要約】
【課題】素子の温度上昇を抑制可能な作業機を提供する。
【解決手段】作業機1は、モータ6と、鋸刃5が取り付け可能なプランジャ57であって、モータ6によって加工方向と前記加工方向と反対方向となる戻り方向に移動し、前記加工方向への移動時に鋸刃5によって被加工材に加工を施すプランジャ57と、を備え、プランジャ57が前記戻り方向へ移動する時に第1進角でモータ6を制御し、プランジャ57が前記加工方向へ移動する時に少なくともプランジャ57への負荷が大きい区間では、前記第1進角よりも小さい第2進角でモータ6を制御するように構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
先端工具が取り付け可能な出力部であって、前記モータによって加工方向と前記加工方向と反対方向となる戻り方向に移動し、前記加工方向への移動時に前記先端工具によって被加工材に加工を施す出力部と、
前記出力部が前記戻り方向へ移動する時に第1進角で前記モータを制御し、前記出力部が前記加工方向へ移動する時に少なくとも前記出力部への負荷が大きい区間では、前記第1進角よりも小さい第2進角で前記モータを制御するように構成される制御部と、を有する、作業機。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機であって、
前記制御部は、前記出力部が前記戻り方向へ移動する時に常に前記第1進角で前記モータを制御する、作業機。
【請求項3】
請求項1に記載の作業機であって、
前記制御部は、少なくとも前記出力部が前記加工方向へ移動して前記モータに流れる電流が最も大きくなる時に前記モータを前記第2進角で制御する、作業機。
【請求項4】
請求項1に記載の作業機であって、
前記制御部は、前記モータに流れる電流が上昇しているときに前記第1進角から前記第2進角に切り替えるように構成される、作業機。
【請求項5】
請求項1に記載の作業機であって、
前記制御部は、前記モータの回転数が所定以下の状態で前記第1進角から前記第2進角に切り替えるように構成される、作業機。
【請求項6】
請求項4に記載の作業機であって、
前記制御部は、前記電流の上昇率が所定以上の場合に前記第1進角から前記第2進角に切り替えるように構成される、作業機。
【請求項7】
請求項1に記載の作業機であって、
前記制御部は、前記モータに流れる電流が減少しているときに前記第2進角から前記第1進角に切り替えるように構成される、作業機。
【請求項8】
請求項1に記載の作業機であって、
前記モータを駆動する駆動回路を備え、
前記制御部は、前記出力部の移動方向によらず前記駆動回路を定デューティ制御するように構成される、作業機。
【請求項9】
請求項1に記載の作業機であって、
前記制御部は、前記出力部の移動方向による進角の変更を行わない制御も可能である、作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
鋸刃を往復動させて切断作業を行うセーバソー等の作業機が知られている。下記特許文献1及び2は、鋸刃を前後方向に往復動させる際に鋸刃を上下方向に揺動させるオービタル機構を有するセーバソーを開示する。このような作業機では、鋸刃の前進時は負荷が小さく電流も小さい一方で、鋸刃の後退時には負荷が増大して電流が大きくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2018/221105号
【特許文献2】国際公開第2020/137358号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1、2のような作業機では、鋸刃の後退時に電流がピークとなる。ピーク電流が大きいと、素子の温度上昇が大きくなる。
【0005】
本発明の目的は、素子の温度上昇を抑制可能な作業機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、作業機である。この作業機は、
モータと、
先端工具が取り付け可能な出力部であって、前記モータによって加工方向と前記加工方向と反対方向となる戻り方向に移動し、前記加工方向への移動時に前記先端工具によって被加工材に加工を施す出力部と、
前記出力部が前記戻り方向へ移動する時に第1進角で前記モータを制御し、前記出力部が前記加工方向へ移動する時に少なくとも前記出力部への負荷が大きい区間では、前記第1進角よりも小さい第2進角で前記モータを制御するように構成される制御部と、を有する。
【0007】
本発明は「電動作業機」や「電動工具」、「電気機器」等と表現されてもよく、そのように表現されたものも本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、素子の温度上昇を抑制可能な作業機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態に係る作業機1の揺動上死点位置における側断面図。
図2】作業機1の揺動下死点位置における側断面図。
図3】作業機1における鋸刃5の先端の前後、上下方向の軌跡を伝達機構50の偏心ピン53の回転角度と共に示した図。
図4】作業機1の回路ブロック図。
図5】作業機1のモータ6に流れる電流、モータ6の回転数、鋸刃5(ブレード)の往復状態の判別結果、及び進角設定値のタイムチャート。
図6】作業機1の制御フローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施の形態は、作業機1に関する。作業機1は、セーバソーである。図1及び図2により、作業機1の互いに直交する前後、上下方向を定義する。前後方向は、モータ6の回転軸と平行な方向である。作業機1の機械構成は特許文献2に開示されたものと同様であり、以下では簡単な説明に留める。
【0011】
作業機1は、例えば樹脂成形体からなるハウジング3及びフロントカバー4を備える。ハウジング3の前端部にフロントカバー4が接続固定される。ハウジング3は、モータ6を収容するモータ収容部3aと、作業者が把持可能なハンドル部3bと、を有する。
【0012】
モータ収容部3a内の、モータ6の後方には、制御基板7が設けられる。制御基板7には、図4に示す制御部80が設けられる。ハンドル部3bの上部には、作業者が操作してモータ6の駆動、停止を指示するためのトリガスイッチ8(操作スイッチ)が設けられる。ハンドル部3bの下端部からは、外部の交流電源81(図4)に接続するための電源コード9が延出する。作業機1は、電源コード9を介して供給される電力で動作する。
【0013】
モータ6は、ハウジング3のモータ収容部3a内に保持される。モータ6は例えばブラシレスモータである。モータ6の動力は、伝達機構50により、先端工具としての鋸刃5に伝達される。伝達機構50は、伝達機構収容部としての下側ギヤカバー10及び上側ギヤカバー20によって形成される内部空間(以下「ギヤ収容空間」)に収容保持される。
【0014】
伝達機構50は、出力部としてのプランジャ57を有する。プランジャ57は、前端部に鋸刃5を取り付け可能である。伝達機構50は、モータ6の回転をプランジャ57の前後方向への往復動(鋸刃5の前後方向への往復動)に変換する変換機構と、モータ6の回転を利用してプランジャ57を上下方向に揺動させて鋸刃5を上下方向に揺動させる揺動機構と、を有する。
【0015】
プランジャ57及び鋸刃5の移動方向に関し、後方向は加工方向の例示であり、前方向は戻り方向の例示である。
【0016】
以下、プランジャ57の上下方向の揺動により鋸刃5を上下方向に揺動させながら切断することを「オービタル切断」と表記する。オービタル切断は、しゃくり切断とも称される。オービタル切断を行うオービタルモードの有効、無効は、チェンジシャフト66により切り替え可能である。
【0017】
下側ギヤカバー10及び上側ギヤカバー20は、アルミ等の金属製であり、互いに組み合わされてネジ止め等により固定一体化される。下側ギヤカバー10及び上側ギヤカバー20は、全体的に外面がフロントカバー4に覆われる。ギヤ収容空間内に、前側グリス受け部材30及び後側グリス受け部材40が設けられる。
【0018】
図3は、オービタル切断における鋸刃5の先端の前後、上下方向の軌跡を伝達機構50の偏心ピン53の回転角度と共に示した図である。図3に示すように、オービタル切断において鋸刃5の先端の軌跡は楕円状となる。図3において、偏心ピン53及びプランジャ57が最も後退した位置にあるときの偏心ピン53の回転角度を0°、偏心ピン53及びプランジャ57が最も前進した位置にあるときの偏心ピン53の回転角度を180°としている。
【0019】
オービタル切断の場合、偏心ピン53の回転角度が270°付近の時は、プランジャ57の後退速度、すなわち鋸刃5の後退速度が最大になると共に、鋸刃5が被加工材に食い込むように動作しながら被加工材に加工を施すため、プランジャ57への負荷が最大となり、モータ6に流れる電流(以下「モータ電流」)も最大となる。なお、オービタル切断でなくても、鋸刃5が後退時に主に被加工材を切断する形状であれば、程度は小さいが同様の傾向となる。
【0020】
図4は、作業機1の回路ブロック図である。交流電源81には、ノイズ対策用のフィルタ回路82を介してダイオードブリッジ92が接続される。ダイオードブリッジ92の出力端子には、力率改善回路83を介してインバータ回路93が接続される。
【0021】
力率改善回路83は、例えばMOSFETからなるトランジスタTrと、トランジスタTrのゲートにPWM制御信号を出力するゲートドライバIC83aと、電解コンデンサ83bと、を含み、インバータ回路93の各スイッチング素子で発生する高調波電流を制限値以下に抑えるよう機能する。
【0022】
インバータ回路93は、例えばMOSFETからなるスイッチング素子Tr1~Tr6を三相ブリッジ接続したものであり、制御部80の制御に従いモータ6に駆動電流を供給してモータ6を駆動する駆動回路である。検出抵抗Rsは、モータ電流の経路に設けられ、モータ電流を電圧に変換する。
【0023】
スイッチ操作検出回路85は、トリガスイッチ8の操作を検出し、スイッチ操作検出信号をコントローラ84(演算部)に送信する。モータ電流検出回路86は、検出抵抗Rsの端子電圧に基づいてモータ電流を特定し、モータ電流検出信号をコントローラ84に送信する。制御信号出力回路87は、例えばゲートドライバICであり、コントローラ84の制御に従い、インバータ回路93を構成する各スイッチング素子のゲート(制御端子)にPWM信号を印加する。
【0024】
回転子位置検出回路88は、ホールIC95の出力信号に基づいてモータ6の回転子(以下「回転子」)の回転位置を検出し、回転子位置検出信号をコントローラ84及びモータ回転数検出回路89に送信する。モータ回転数検出回路89は、回転子位置検出回路88からの回転子位置検出信号に基づいてモータ6の回転数(以下「モータ回転数」)を検出し、モータ回転数検出信号をコントローラ84に送信する。
【0025】
コントローラ84は、スイッチ操作検出信号、モータ電流検出信号、回転子位置検出信号、及びモータ回転数検出信号、並びにモード設定ダイヤル97により設定されたモードに応じて、制御信号出力回路87を介してインバータ回路93を構成する各スイッチング素子をPWM制御し、モータ6を回転駆動する。
【0026】
コントローラ84は、スイッチング素子Tr1~Tr6の制御端子に印加するPWM信号のデューティ比(以下「デューティ比」)、及びモータ6への印加電圧(U、V、Wの各相のステータコイルへの印加電圧)の進角(以下「進角」)を制御することで、モータ6の駆動を制御できる。
【0027】
所定の角度範囲内において、進角を高くすると、モータ回転数は高くなり、モータ電流は大きくなる。進角を低くすると、モータ回転数は低くなり、モータ電流は小さくなる。
【0028】
コントローラ84は、後述のように鋸刃5が前進中であるか後退中であるかに応じて進角を変更する進角制御機能を有する。ユーザは、進角制御機能の有効、無効をモード設定ダイヤル97の操作により切り替えられる。
【0029】
図5は、進角制御機能が有効な場合におけるモータ電流、モータ回転数、鋸刃5(ブレード)の往復状態の判別結果、及び進角設定値のタイムチャートである。前述のように、鋸刃5の後退時(加工方向への移動時)は負荷が大きく、鋸刃5の前進時(戻り方向への移動時)は負荷が低い。このため、モータ電流は、鋸刃5の後退時には大きく、鋸刃5の前進時には低くなる。また、モータ回転数は、鋸刃5の後退時には低く、鋸刃5の前進時には高くなる。
【0030】
コントローラ84は、モータ電流が閾値以上かつモータ回転数が閾値以下の場合は、鋸刃5が後退中であると判断し、進角設定値を低値とする。コントローラ84は、モータ電流が閾値以下かつモータ回転数が閾値以上の場合は、鋸刃5が前進中であると判断し、進角設定値を通常値(通常値>低値)とする。
【0031】
なお、鋸刃5が後退する期間(以下「鋸刃後退期間」)に常に進角設定値を低値としてもよいが、鋸刃後退期間のうちのプランジャ57への負荷が大きい期間、例えば図3における偏心ピン53の回転角度270°を含む所定角度範囲に対応する期間に限定して進角設定値を低値にとしてもよい。
【0032】
通常値は、第1進角に対応し、例えば30°である。低値は、第2進角に対応し、例えば10°である。なお、通常値と低値は、いずれも一つの値である必要はなく、それぞれ所定範囲内で変動する進角値あってもよい。すなわち、鋸刃5が前進中であると判断している間、及び鋸刃5が後退中であると判断している間において、いずれも進角値は一定である必要はなく、通常値としての所定範囲内、及び低値としての所定範囲内でそれぞれ変動してもよい。
【0033】
図6は、作業機1の制御フローチャートである。このフローチャートは、コントローラ84の起動により開始する。コントローラ84は、設定ダイヤル97により設定されたモードを確認する(S1)。コントローラ84は、設定されたモードがモード1の場合、すなわち進角制御機能が有効なモードの場合(S1のYES)、S3に進む。
【0034】
コントローラ84は、トリガスイッチ8がオンになるまで待機する(S3のNO)。コントローラ84は、トリガスイッチ8がオンになると(S3のYES)、モータ6の駆動を開始し(S5)、デューティ比の目標値を例えば31%とする定デューティ制御を行う(S7)。コントローラ84は、S7においてソフトスタート制御を行い、デューティ比を31%に向けて緩やかに高めていく。このとき、進角は0°とする。
【0035】
コントローラ84は、回転子(ロータ)が360度回転し、かつデューティ比が閾値以上になると(S9のYES)、進角を通常値に設定する(S11)。S9での確認は、モータ6の回転が安定してから進角を高めていくための確認である。S29での確認も同様である。
【0036】
コントローラ84は、鋸刃後退判断条件、すなわち、モータ電流が閾値以上、モータ電流の増加率が閾値以上、モータ回転数が閾値以下、という三条件が満たされない場合(S13のNO)、進角を通常値に維持する(S11)。コントローラ84は、鋸刃後退判断条件が満たされると(S13のYES)、進角を低値に設定する(S15)。
【0037】
コントローラ84は、鋸刃前進判断条件、すなわち、モータ電流が閾値以下、電流増加率が閾値以下、モータ回転数が閾値以上という三条件が満たされない場合(S17のNO)、進角を低値に維持する。コントローラ84は、鋸刃前進判断条件が満たされると(S17のYES)、進角値を通常値に設定する(S11)。
【0038】
コントローラ84は、設定されたモードがモード1でない場合、すなわち進角制御機能が有効でないモードの場合(S1のNO)、S23に進む。進角制御機能が有効でないモードでは、プランジャ57の移動方向による進角の変更は行わない。
【0039】
コントローラ84は、トリガスイッチ8がオンになるまで待機する(S23のNO)。コントローラ84は、トリガスイッチ8がオンになると(S23のYES)、モータ6の駆動を開始し(S25)、モータ回転数の目標値をモードに応じた回転数とする定速度制御を行う(S27)。コントローラ84は、S27においてソフトスタート制御を行い、モータ回転数を目標値に向けて緩やかに高めていく。このとき、進角は0°とする。
【0040】
コントローラ84は、回転子(ロータ)が360度回転し、かつデューティ比が閾値以上になると(S29のYES)、進角を通常値に設定する(S31)。
【0041】
本実施の形態によれば、下記の効果を奏することができる。
【0042】
(1) コントローラ84は、プランジャ57が前進する時に進角を通常値としてモータ6を制御し、プランジャ57が後退する時に進角を低値としてモータ6を制御するように構成される。すなわち、コントローラ84は、プランジャ57が後退する時の進角をプランジャ57が前進する時の進角よりも小さくする。このため、負荷が大きくなるプランジャ57の後退時のモータ電流を抑制してピーク電流を抑制し、素子の温度上昇を抑制できる。特にデューティ比を低くしてモータ6を制御する場合、インバータ回路93を構成するスイッチング素子Tr1~Tr6のスイッチング損失が大きく、また電解コンデンサ83bに流れるリプル電流が大きいため、スイッチング素子Tr1~Tr6及び電解コンデンサ83bの温度上昇が大きくなるが、本実施の形態ではそのような場合のスイッチング素子Tr1~Tr6及び電解コンデンサ83bの温度上昇を好適に抑制できる。
【0043】
(2) コントローラ84は、プランジャ57が前進するときの進角をプランジャ57が後退する時の進角よりも大きくする。このため、負荷が小さくなるプランジャ57の前進時にモータ回転数を高めることができ、鋸刃5の速度を回復させて切断作業効率を高めることができる。
【0044】
(3) コントローラ84は、鋸刃後退判断条件、すなわち、モータ電流が閾値以上、モータ電流の増加率が閾値以上、モータ回転数が閾値以下、という三条件が満たされると、鋸刃5が後退していると判断する。また、コントローラ84は、鋸刃前進判断条件、すなわち、モータ電流が閾値以下、電流増加率が閾値以下、モータ回転数が閾値以上という三条件が満たされると、鋸刃5が前進していると判断する。すなわち、コントローラ84は、モータ6の通常制御でも検出が必要なモータ電流とモータ回転数により鋸刃5の前進、後退を判断する。このため、鋸刃5の前進、後退の判断のために別途センサ等を追加する必要がなく、部品点数及びコストの増大を抑制できる。なお、鋸刃後退判断条件は、上記三条件のうちの一つ又は二つのみとしてもよい。同様に鋸刃前進判断条件は、上記三条件のうちの一つ又は二つのみとしてもよい。この場合、判断の正確性は低下するものの、制御はシンプルになる。
【0045】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、実施の形態の各構成要素や各処理プロセスには請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。以下、変形例について触れる。
【0046】
本発明の作業機は、実施の形態で例示したセーバソーに限定されず、ジグソーやハンマドリル等の他の種類のものであってもよい。実施の形態で具体的な数値として例示した進角やモータ回転数、デューティ比、角度等は、発明の範囲を何ら限定するものではなく、要求される仕様に合わせて任意に変更できる。
【符号の説明】
【0047】
1…作業機、3…ハウジング、3a…モータ収容部、3b…ハンドル部、4…フロントカバー、5…鋸刃(先端工具)、6…モータ、7…制御基板、8…トリガスイッチ、9…電源コード、10…下側ギヤカバー、20…上側ギヤカバー、30…前側グリス受け部材、40…後側グリス受け部材、50…伝達機構、53…偏心ピン、57…プランジャ(出力部)、66…チェンジシャフト、80…制御部、81…交流電源、82…フィルタ回路、83…力率改善回路、83a…ゲートドライバIC、84…コントローラ(演算部)、85…スイッチ操作検出回路、86…モータ電流検出回路、87…制御信号出力回路(ゲートドライバIC)、88…回転子位置検出回路、89…モータ回転数検出回路、92…ダイオードブリッジ、93…インバータ回路、95…ホールIC(磁気センサ)、97…速度設定ダイヤル。
図1
図2
図3
図4
図5
図6