(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136720
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】遊技機検査システム
(51)【国際特許分類】
A63F 7/02 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
A63F7/02 330
A63F7/02 312C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047930
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】520071320
【氏名又は名称】株式会社アカギ
(74)【代理人】
【識別番号】100074169
【弁理士】
【氏名又は名称】広瀬 文彦
(72)【発明者】
【氏名】松岡 輝
【テーマコード(参考)】
2C088
【Fターム(参考)】
2C088DA21
(57)【要約】 (修正有)
【課題】撮影した画像を学習機能により画像データの補正うとともに学習結果の蓄積を行った上で、釘が正確な位置に打設されているかどうかや、釘の曲がり・歪みの有無について、正確に判断する事を可能とした遊技機検査システムを提供する。
【解決手段】遊技機の盤面を撮影する撮影手段と、盤面画像データを記憶保持する記憶手段と、学習済みモデルを用いて釘の打設位置を取得する打設位置取得手段と、釘の打設位置の正確性を判断する判定手段と、を備え、記憶手段は基準位置データを保持しており、打設位置取得手段は、検査対象の盤面画像データをAIが学習済みモデルを用いて補正することで打設位置データを取得し、判定手段は、打設位置データと基準位置データとを対比して釘の打設位置の正確性を判断し出力するものであり、学習済みモデルは、過去に撮影手段によって取得された複数の打設位置データの蓄積学習により構築されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊技機(10)に打設される釘(14)の打設位置の正確性や釘の曲がり・歪みの有無の検査および判定評価を行うための遊技機検査システム(1)が、
遊技機の盤面(12)を正面から撮影して動画または静止画からなる盤面画像データ(20)を取得する撮影手段(100)と、前記盤面画像データ(20)を記憶保持する記憶手段(200)と、学習済みモデル(M)を用いて、前記盤面画像データ(20)から釘の打設位置を打設位置データ(DT)として取得する打設位置取得手段(300)と、前記打設位置データ(DT)中の釘の打設位置の正確性を判断する判定手段(400)と、を備え、
前記記憶手段(200)は、前記盤面における釘の正確な打設位置を示す基準位置データ(DA)を保持しており、
前記打設位置取得手段(300)は、検査対象の前記盤面画像データ(20)を、AIが学習済みモデル(M)を用いて補正することで、検査対象である前記盤面画像データにおける釘の打設位置データ(DT)を取得し、
前記判定手段(400)は、前記打設位置取得手段(300)が取得した前記打設位置データ(DT)と、前記記憶手段(200)が保持する前記基準位置データ(DA)とを対比して、釘の打設位置の正確性を判断し、映像または画像上において打設位置が正確でない釘の頭位置を該画像上に出力するものであり、
前記学習済みモデル(M)は、過去に前記撮影手段(100)によって取得された複数の打設位置データ(DT)の蓄積学習により構築されていることを特徴とする遊技機検査システム。
【請求項2】
前記学習済みモデル(M)は、釘(14)の打設された盤面の画像のうち、光反射を受けた複数の盤面画像データ(20)を教師データとして用いて蓄積学習を行った学習済みモデルであり、教師データとして用いられる前記盤面画像データ(20)が、あらゆる方向からの光反射を含む盤面画像データからなることを特徴とする請求項1に記載の遊技機検査システム。
【請求項3】
前記基準位置データ(DA)は、釘の正確な打設位置を含む円形の打設許容領域(A)を示す情報からなり、
前記判定手段(400)は、前記打設位置データ(DT)から釘(14)の頭位置を検出するとともに、前記基準位置データ(DA)から釘(14)の打設許容領域(A)を抽出して、抽出した釘(14)の頭位置が抽出した打設許容領域(A)内にあるか否かを判断することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の遊技機検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パチンコ等の遊技機に打設される釘を検査・判定評価するためのシステムに関し、特に、ガラス面越しに撮影した画像を学習機能により画像データの補正を行った上で、釘が正確な位置に打設されているかどうかや、釘の曲がり・歪みの有無について、自動的に判断する事を可能とした遊技機検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、遊技機に打設される釘の正確性を検査するための装置が開発され、使用されている。パチンコ等の遊技機の釘は、打設位置や角度等に僅かなズレが生じるだけで出玉に影響を及ぼすことから、公正さを保つとともに不正を排除するために、正しい位置に正しい角度で打設することが要求されている。
【0003】
このような、遊技機の釘を検査するための技術として、例えば、特開2022-56090号公報が存在する。ここでは、検査画像に写る検査対象の点を囲むように仮想点を生成し、検査対象の点の位置情報と仮想点の位置情報に基づいて射影変換係数を算出し、射影変換係数を検査対象の点の位置情報に乗ずることで得られた検査対象の位置情報が基準に適合するか否かを検査することにより、遊技釘が弾球遊技機の盤面に不正に打ち込まれていないか検査する技術が開示されている。
【0004】
この構成とすることにより、確かに、検査画像に検査対象の点群が局部的に写っている場合であっても、位置の歪みの補正精度の低下を抑制した正確な検査を行うことが可能になるとも考えられるが、撮影環境により異なる検査画像にかかるノイズの強弱やクセに各々対応するのが困難であり、必ずしも正確な釘の位置の補正を行う事が可能になるとは言えないという問題点があった。
【0005】
そこで、スマートフォン等で撮影されるノイズ等を含む静止画・動画等を用いて、画像の補正処理を行うとともに、様々な画像を蓄積学習することで環境に応じて遊技機の釘の正確性を検査・判定することが可能な、遊技機の釘検査システムの開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題を解決するため、パチンコ等の遊技機に打設される釘を検査・判定評価するためのシステムであって、特に、撮影した画像を学習機能により画像データの補正うとともに学習結果の蓄積を行った上で、釘が正確な位置に打設されているかどうかや、釘の曲がり・歪みの有無について、正確に判断する事を可能とした遊技機検査システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために本発明に係る遊技機検査システムは、遊技機に打設される釘の打設位置の正確性や釘の曲がり・歪みの有無の検査および判定評価を行うための遊技機検査システムであって、遊技機の盤面を正面から撮影して動画または静止画からなる盤面画像データを取得する撮影手段と、前記盤面画像データを記憶保持する記憶手段と、学習済みモデルを用いて、前記盤面画像データから釘の打設位置を打設位置データとして取得する打設位置取得手段と、前記打設位置データ中の釘の打設位置の正確性を判断する判定手段と、を備え、前記記憶手段は、前記盤面における釘の正確な打設位置を示す基準位置データを保持しており、前記打設位置取得手段は、検査対象の前記盤面画像データを、AIが学習済みモデルを用いて補正することで、検査対象である盤面画像データにおける釘の打設位置データを取得し、前記判定手段は、前記打設位置取得手段が取得した前記打設位置データと、前記記憶手段が保持する前記基準位置データとを対比して、釘の打設位置の正確性を判断し、映像または画像上において打設位置が正確でない釘の頭位置を該画像上に出力するものであり、前記学習済みモデルは、過去に前記撮影手段によって取得された複数の打設位置データの蓄積学習により構築されている構成である。
【0009】
また、前記学習済みモデルは、釘の打設された盤面の画像のうち、光反射を受けた複数の盤面画像データを教師データとして用いて蓄積学習を行った学習済みモデルであり、教師データとして用いられる前記盤面画像データは、あらゆる方向からの光反射を含む盤面画像データからなる構成である。
【0010】
更に、前記基準位置データは、釘の正確な打設位置を含む円形の打設許容領域を示す情報からなり、前記判定手段は、前記打設位置データから釘の頭位置を検出するとともに、前記基準位置データから釘の打設許容領域を抽出して、抽出した釘の頭位置が抽出した打設許容領域内にあるか否かを判断する構成である。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、上記詳述した通りの構成であるので、以下のような効果がある。
1.撮影手段によって撮影した遊技機の盤面の画像または映像をもとに、打設位置取得手段が各釘の打設位置を取得する構成としたため、スマートフォンなどの機器を用いて撮影した静止画や動画を基に打設位置の検査および判定評価ができる。また、学習済みモデルを用いて釘の打設位置を取得する構成としたため、データの蓄積学習を行うことが可能となり、釘の打設位置や曲がり・歪みの有無について、より正確に判断する事が可能となる。
【0012】
2.盤面画像データを、あらゆる方向からの光反射を含む盤面画像データからなる構成としたため、反射等のノイズを多数含む盤面画像であっても、蓄積学習により、正確に釘の打設位置等について判断する事が可能となる。
3.基準位置データを円形の打設許容領域を示す情報としたため、釘の打設位置の正確性の判断を迅速に行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る遊技機検査システムを、図面に示す実施例に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明に係る遊技機検査システムの概略図であり、
図2は、釘打設位置の判断処理を示す図である。
【0014】
本発明に係る遊技機検査システム1は、
図1に示すように、撮影手段100と、記憶手段200と、打設位置取得手段300と、判定手段400と、からなり、パチンコ等の遊技機10の盤面12に打設されている複数の釘14の詳細な位置を各々取得するとともに、各釘が正確な打設位置に打たれているかどうか、および釘の曲がり・歪みの有無の検査を行って判定評価を行うためのシステムである。
【0015】
撮影手段100は、遊技機10の盤面12を正面から撮影して動画または静止画からなる盤面画像データ20を取得するための手段であり、本実施例では、多数設置される各遊技機の釘の打設状況を迅速に検査する必要があるため、デジタルカメラや、スマートフォン・タブレット機器等に装備されるカメラなど、携帯可能な小型の撮影機器を用いる構成としているが、これらに限定されることはなく、盤面の撮影に特化した専用機器や高解像度による撮影が可能な撮影機器を用いる構成とすることも可能である。
【0016】
記憶手段200は、撮影手段100によって取得された盤面画像データ20を記憶保持するための手段である。本実施例では、記憶手段200は、スマートフォン・タブレット機器やコンピュータ等(図示せず)に装備されたメモリからなり、これらに装備された演算装置(図示せず)が指令を出すことにより、読み書きを行って情報を記憶保存・読み出しする構成であるが、この構成に限定されるものではなく、例えば、撮影手段100を備えるスマートフォン・タブレット機器と他のコンピュータ・サーバ機器(クラウドサービスを含む)とをネットワーク接続した上で、該コンピュータ・サーバ機器の記憶装置に対して読み書きを行って情報を記憶保存・読み出しする構成としてもよい。
【0017】
打設位置取得手段300は、撮影手段100によって取得された盤面画像データ20から、盤面12に打設されている釘14の各々の打設位置を取得する手段である。打設位置の取得には、学習済みモデルMが用いられ、学習済みモデルMを用いて補正された釘14の打設位置を打設位置データDTとして取得する構成である。
【0018】
本実施例では、打設位置取得手段300はソフトウェアからなり、実行ファイルがスマートフォン・タブレット機器や外部のコンピュータ等に装備された記憶手段200に記憶される構成である。演算装置が記憶手段200から実行ファイルを読み出した上で、学習済みモデルMを適用して盤面画像データ20の補正処理を行うことで、盤面12に打設されている釘14の各々の打設位置を正確に取得する構成である。
【0019】
判定手段400は、打設位置取得手段300によって取得された釘14の打設位置が基準と比較して正確な位置になっているかどうかを判断するための手段である。本実施例では、判定手段400はソフトウェアからなり、実行ファイルがスマートフォン・タブレット機器や外部のコンピュータに装備された記憶手段200に記憶される構成である。演算装置が記憶手段200から実行ファイルを読み出した上で、実行処理を行うことで、取得された各々の釘14の打設位置が正確な位置になっているかどうかを判断する構成である。
【0020】
釘14の打設位置の正確性を検査する処理の詳細について、以下説明する。
記憶手段200は、本実施例では、予め、その盤面12における釘14の正確な打設位置を示す基準位置データDAを保持する構成である。基準位置データDAは、遊技機ごとに作成される各釘の打設位置の基準となる規範を示すものであり、
画像情報として予め外部から入力して記憶保持する構成である。
【0021】
打設位置取得手段300は、撮影手段100によって取得された盤面画像データ20に対して、学習済みモデルMを適用して補正することで、検査対象である盤面画像データ20における釘14の打設位置データDTを取得する。学習済みモデルMを用いた補正処理には、本実施例では、人工知能(AI)が用いられ、人工知能による盤面画像データ20の蓄積学習を経てブラッシュアップされた補正処理が施されて正確な打設位置データDTが取得される構成である。
【0022】
判定手段400は、釘14の打設位置の正確性を判断する手段であり、本実施例では、打設位置取得手段300が取得した打設位置データDTと、記憶手段200が保持する基準位置データDAとを対比したうえで、釘14の打設位置の正確性を判断する構成である。釘14の打設位置の正確性を判断した後は、映像または画像上において、打設位置が正確でない釘の頭位置を該画像上に出力する。この構成とすることにより、画像データの対比処理のみで釘14の打設位置の正確性を判断することが可能となり、素早く正確な検査を実施することが可能となるとともに、正確でない位置に打設されている釘14が画像上で容易に把握することが可能となる。
【0023】
学習済みモデルMは、本実施例では、過去に撮影手段100によって取得された、盤面画像データ20を基とする複数の打設位置データDTの蓄積学習により構築される構成である。盤面画像データ20は、明るさや光の反射など、環境によって異なり、同じ場所であっても時間帯や設置場所によってはかなり撮れ方が異なる。場合によっては、釘14の位置が不明瞭で特定が困難な状態で撮影される可能性がある。
【0024】
本発明に係る遊技機検査システム1は、学習済みモデルMを用いて過去の盤面画像データ20およびこれを使用して得られた複数の打設位置データDTを学習して蓄積していく。これにより、打設位置取得手段300が盤面画像データ20中の釘14の位置を補正して明確にすることが可能となるため、画像上の釘14の打設位置を特定することができ、釘14の打設位置や曲がり・歪みの有無について、より正確に判断する事が可能となった。
【0025】
本発明に係る遊技機検査システム1は、打設位置取得手段300が人工知能(AI)システムを備える構成である。人工知能システムは、人間の知的能力をコンピュータ上で実現するための技術やソフトウェア等のことをいう。人工知能システムは、言語処理、画像処理などに多く用いられているが、過去のデータ等から学習を行ってデータの最適化を行うような処理にも適しており、本実施例では、学習済みモデルMを構成する事に用いられる。
【0026】
学習済みモデルMは、釘14の打設された盤面12の画像のうち、光反射を受けた複数の盤面画像データ20を教師データとして用いている。学習済みモデルMは、この複数からなる教師データを蓄積学習して構成した学習済みモデルである。また、この教師データとして用いられる盤面画像データ20は、本実施例では、あらゆる方向からの光反射を含む盤面画像データ20からなる構成である。
【0027】
盤面画像データ20は、より詳細には、ガラス越しに撮影された釘14を含む盤面12の画像データである。ガラス越しに遊技機10の盤面12の撮影を行うと、ガラスに天井からの照明等が写り込み画像ノイズとなる。このノイズを含んだ状態で、基準位置データDAと対比しても、正確な打設位置を特定することが困難な釘14を含むこととなり、釘14の正確な打設位置の検査を行うことは出来ない。
【0028】
本実施例に係る教師データとしての盤面画像データ20は、遊技機10が設置されているホールの照明やサイネージ等ガラス面への当り方が限定的であることを利用して、想定される光反射を含めた遊技機10の撮影画像をデータ化したものである。複数の盤面画像データ20を教師データとして、人工知能が蓄積学習することにより構成された学習済みモデルMを適用して、打設位置データDTを取得する。これにより、光の反射等によって正確な打設位置が把握し難い釘14が写る盤面画像データ20が適正に補正されて、釘14の正確な打設位置を表す打設位置データDTが取得可能となる。
【0029】
本実施例では、教師データとしての盤面画像データ20は、打設位置データDTを取得するために撮影された実データでもよいし、教師データを生成するために、予め撮影されたモデルとしての画像データでもよい。また、本実施例では、人工知能システムとしては、機械学習により盤面画像データ20を教師データとして学習を行う構成であるが、この構成に限定されることはなく、ディープラーニングによる学習としてもよい。
【0030】
学習済みモデルMを適用して打設位置データDTを取得することなく、盤面画像データ20をそのまま利用して、判定手段400が釘14の打設位置の正確性を判断した場合、実測では7%程度の釘の認識漏れがあり、検査装置としては利用できない状態であった。
本発明に係る学習済みモデルMを適用して、打設位置データDTを取得する構成とすることにより、釘の認識率を99.7%と大幅に向上させることができ、遊技機の盤面12のガラスを開けずに検査を行うことが可能となり、大幅な効率化を実現することが可能となった。
【0031】
基準位置データD
Aは、実施例では、
図2に示すように、釘14の正確な打設位置を打設許容領域Aとして保有する構成である。打設許容領域Aは、釘14の正確な打設位置を含む領域を示す情報からなり、本実施例では、円形の領域であって、この領域が許容領域として判断される。
【0032】
判定手段400は、まず、打設位置データDTから釘14の頭位置を検出する。また、基準位置データDAから釘14の打設許容領域Aを抽出する。その後、打設位置データDTと基準位置データDAとを対比し、打設位置データDTから抽出した釘14の頭位置が、基準位置データDAの打設許容領域A内にあるか否かを判断する構成である。この構成とすることにより、釘の打設位置の正確性の判断を迅速に行うことが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【符号の説明】
【0034】
1 遊技機検査システム
M 学習済みモデル
DA 基準位置データ
DT 打設位置データ
A 打設許容領域
10 遊技機
12 盤面
14 釘
20 盤面画像データ
100 撮影手段
200 記憶手段
300 打設位置取得手段
400 判定手段