(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136730
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】遠隔制御装置および遠隔制御方法
(51)【国際特許分類】
E02F 9/22 20060101AFI20240927BHJP
E02F 9/26 20060101ALI20240927BHJP
E02F 9/24 20060101ALI20240927BHJP
G05D 1/43 20240101ALI20240927BHJP
G05D 1/00 20240101ALI20240927BHJP
【FI】
E02F9/22 E
E02F9/26 B
E02F9/24 H
G05D1/02 S
G05D1/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047941
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】509328928
【氏名又は名称】株式会社日立プラントコンストラクション
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 敬仁
(72)【発明者】
【氏名】和田 政臣
(72)【発明者】
【氏名】森口 亮
(72)【発明者】
【氏名】西村 圭介
【テーマコード(参考)】
2D003
2D015
5H301
【Fターム(参考)】
2D003AB03
2D003BA04
2D003BB11
2D003DA04
2D003DB05
2D003FA02
2D015GA03
2D015GB07
2D015HA03
5H301AA02
5H301AA03
5H301AA10
5H301BB02
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301DD06
5H301DD15
5H301GG07
5H301GG08
5H301GG17
5H301LL01
5H301LL08
5H301LL14
(57)【要約】
【課題】作業機械と障害物との接触を回避することを可能とする。
【解決手段】遠隔制御装置100は、作業現場で稼働する作業機械300を遠隔操作する遠隔操作部111と、作業機械300の位置および姿勢を取得する位置姿勢算出部112と、作業現場にある障害物の3次元空間上の位置情報(障害物データ140参照)を基に、作業機械300と障害物との距離を算出し、当該距離が所定値以下であれば、作業機械300を停止するように遠隔操作部111に指示する干渉解析部113と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業現場で稼働する作業機械を遠隔操作する遠隔操作部と、
前記作業機械の位置および姿勢を取得する位置姿勢算出部と、
前記作業現場にある障害物の3次元空間上の位置情報を基に、前記作業機械と前記障害物との距離を算出し、
当該距離が所定値以下であれば、前記作業機械を停止するように前記遠隔操作部に指示する干渉解析部と、を備える
遠隔制御装置。
【請求項2】
前記干渉解析部は、
前記距離が第2所定値以下であれば、前記作業機械の移動速度、および、前記作業機械の可動部の動作速度を、指定された速度より減速するように前記遠隔操作部に指示する
請求項1に記載の遠隔制御装置。
【請求項3】
前記干渉解析部は、
前記作業機械の中心位置と、前記障害物の3次元空間上の位置情報とを基に、前記距離を算出する
請求項1に記載の遠隔制御装置。
【請求項4】
前記干渉解析部は、
前記作業機械の移動体と前記障害物の位置情報とを基に算出された距離、および、前記作業機械の可動部と前記障害物の位置情報とを基に算出された距離の最小値を前記作業機械と前記障害物との距離とする
請求項1に記載の遠隔制御装置。
【請求項5】
前記干渉解析部は、
前記作業機械の移動体と前記障害物の位置情報とを基に算出された距離、前記作業機械の可動部と前記障害物の位置情報とを基に算出された距離、および、前記作業機械が把持する物体と前記障害物の位置情報とを基に算出された距離の最小値を前記作業機械と前記障害物との距離とする
請求項1に記載の遠隔制御装置。
【請求項6】
前記遠隔操作部は、
前記干渉解析部の指示により前記作業機械を停止した場合に、前記距離が小さくなる、当該作業機械の移動体に対する遠隔操作を受け付けない
請求項1に記載の遠隔制御装置。
【請求項7】
前記遠隔操作部は、
前記作業機械の可動部と前記障害物の位置情報とを基に算出された距離が前記所定値以下となり、前記干渉解析部の指示により前記作業機械を停止した場合に、当該距離が小さくなる、当該可動部に対する遠隔操作を受け付けない
請求項4に記載の遠隔制御装置。
【請求項8】
前記遠隔操作部により遠隔操作される作業機械の動作と連動した動作を行う前記作業機械のモデル、および、前記障害物のモデルとを含む仮想空間を表示する表示制御部を備える
請求項1に記載の遠隔制御装置。
【請求項9】
遠隔制御装置が、
作業現場で稼働する作業機械を遠隔操作するステップと、
前記作業機械の位置および姿勢を取得するステップと、
前記作業現場にある障害物の3次元空間上の位置情報を基に、前記作業機械と前記障害物との距離を算出し、
当該距離が所定値以下であれば、前記作業機械を停止するように指示するステップと、を実行する
遠隔制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械を遠隔操作する遠隔制御装置および遠隔制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建設現場での生産性向上の一環として、建設機械の遠隔操作への需要が増大している。遠隔操作ができれば建設機械を無人で運用できるため、落石など突発的な人災事故を防ぎ、熱中症や被爆といった長時間の運用が危険な作業現場でも安全な施行が可能となる。また労働環境の改善による、人手不足の解消も期待されている。
【0003】
建設機械の遠隔制御や自動運転において、建設現場で建設機械同士の接触を確実に回避する技術として特許文献1に記載の建設機械接触防止システムがある。この建設機械接触防止システムは、仮想空間内に建設現場の画像を描画する第一表示手段と、建設機械の位置情報を取得する位置情報取得手段と、位置情報に基づいて仮想空間内に建設機械の画像を描画する第二表示手段とを備える。また、第一距離を仮想空間内で計測する計測手段と、第一距離に基づいて建設機械の動作を制御する動作制御手段とを備える。動作制御手段は、第一距離が建設機械同士の接近を意味する第一接近距離となった場合に建設機械に警告を発する制御を行い、第一距離が、第一接近距離よりも小さく、建設機械同士の接触の可能性を意味する第一接触距離となった場合に建設機械の動作を変更する制御を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の建設機械接触防止システムによれば、建設現場での建設機械同士の接触を確実に回避することができる。しかしながら、建設機械以外の現場にある建物の柱や壁などの構造物、資材などを含む障害物との接触は考慮されていない。また、建設現場を2次元空間として捉えており、3次元的な接触が考慮されていない。他に建設機械(作業機械)本体に着目しており、本体とは異なる動きをする可動部であるショベルなどのマニピュレータやアームの接触回避が考慮されていない。
【0006】
本発明は、このような背景に鑑みてなされたものであり、作業機械と障害物との接触を回避する遠隔制御装置および遠隔制御方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するため、本発明に係る遠隔制御装置は、作業現場で稼働する作業機械を遠隔操作する遠隔操作部と、前記作業機械の位置および姿勢を取得する位置姿勢算出部と、前記作業現場にある障害物の3次元空間上の位置情報を基に、前記作業機械と前記障害物との距離を算出し、当該距離が所定値以下であれば、前記作業機械を停止するように前記遠隔操作部に指示する干渉解析部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、作業機械と障害物との接触を回避する遠隔制御装置および遠隔制御方法を提供することができる。上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る遠隔制御装置の機能ブロック図である。
【
図2】本実施形態に係る作業機械が稼働する作業現場の概要を示す図である。
【
図3】本実施形態に係る作業機械の機能ブロック図である。
【
図4】本実施形態に係る第1制限領域および第2制限領域を示す図である。
【
図5】本実施形態に係る遠隔操作画面の画面構成図である。
【
図6】本実施形態に係る遠隔操作装置が行う全体処理のフローチャートである。
【
図7】本実施形態に係る干渉フィードバック処理のフローチャートである。
【
図8】本実施形態の変形例に係るアームの第1制限領域および第2制限領域を示す図である。
【
図9】本実施形態の変形例に係る停止後における下部移動体の遠隔操作の制限を説明するための図である。
【
図10】本実施形態の変形例に係る停止後における下部移動体の遠隔操作の制限を説明するための図である。
【
図11】本実施形態の変形例に係る停止後における下部移動体の遠隔操作の制限を説明するための図である。
【
図12】本実施形態の変形例に係る停止後における下部移動体の遠隔操作の制限を説明するための図である。
【
図13】本実施形態の変形例に係るアームの位置を説明するための模式図である。
【
図14】本実施形態の変形例に係る停止後におけるアームの遠隔操作の制限を説明するための図である。
【
図15】本実施形態の変形例に係る停止後におけるアームの遠隔操作の制限を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明を実施するための形態(実施形態)における遠隔制御装置について説明する。遠隔制御装置は、建設作業他の作業現場にある建設機械などの作業機械を遠隔操作するための装置である。操作者は、遠隔制御装置に接続されたコントローラを操作することで、作業機械を遠隔操作する。遠隔制御装置は、作業機械本体の他にアームなどの可動部を含めた作業機械と、現場にある障害物との距離を測定し、距離が所定値以下であれば作業機械を停止する。
【0011】
このような遠隔制御装置によれば、障害物と接触することなく作業機械を操作することができる。既存技術と比較して遠隔制御装置は、平面上の距離だけではなく高さ方向の距離も考慮しており、例えば屋内施工における天井との接触を避けることができるようになる。また遠隔制御装置は、作業機械が把持した物体を作業機械の一部として距離を算出するので、例えば把持して運搬中の物体と障害物との接触も避けることができる。
【0012】
≪遠隔制御装置の構成≫
図1は、本実施形態に係る遠隔制御装置100の機能ブロック図である。遠隔制御装置100はコンピュータであり、制御部110、記憶部120、および入出力部180を備える。入出力部180には、ディスプレイ191やコントローラ192などのユーザインターフェイス機器が接続される。入出力部180は通信デバイスを備え、作業機械300やカメラ410とのデータ送受信が可能である。カメラ410は、作業現場400(後記する
図2参照)を俯瞰するように設置されて作業現場400全体を撮影する他に、作業機械300にも設置され作業機械300周辺を撮影し、撮影画像を遠隔制御装置100に送信する。
【0013】
≪作業現場≫
図2は、本実施形態に係る作業機械300が稼働する作業現場400の概要を示す図である。以下の説明では作業機械300は、例えば資材や瓦礫などを把持するマニピュレータを備えた動力機械や建設機械であるとする。遠隔制御装置100の利用者である操作者は、作業機械300(下部移動体381参照)の移動の他に、アーム384,385やマニピュレータ386の遠隔操作を行う。
作業現場400には資材が置かれている。資材は、把持して移動するなど、作業機械300が作業(操作)する対象であるが、障害物490でもある。直接の操作対象となっていない資材は障害物490であり、作業機械300との接触(干渉)を避けなければならない。
【0014】
≪作業機械の構成≫
図3は、本実施形態に係る作業機械300の機能ブロック図である。作業機械300は、車載制御部310、センサ371、測位アンテナ372、および通信アンテナ373を備える。
車載制御部310は、CPU(Central Processing Unit)を含んで構成され、遠隔制御装置100から受信した指令(指令値)に基づいて、作業機械300に備わる下部移動体381(
図2参照)や上部旋回体382、アーム384,385などのアタッチメントを含む作業機械300全体の動作を制御する。
【0015】
センサ371は、作業機械300の速度や姿勢(向き)を算出するための加速度センサや角速度センサを含む。またセンサ371は、作業機械300の上部旋回体382やアーム384,385の角度など可動部の動作量を計測するためのセンサを含む。センサ371(
図2参照)は、アーム384,385の動作量を計測する慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)である。
測位アンテナ372は、例えばGNSS(Global Navigation Satellite System)の受信アンテナであり、作業機械300の位置や姿勢を計測するための装置である。
通信アンテナ373は、作業機械300と遠隔制御装置100とのデータ通信のための送受信アンテナである。
【0016】
≪遠隔制御装置:記憶部≫
図1に戻って、遠隔制御装置100の記憶部120を説明する。記憶部120は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)、SSD(Solid State Drive)などの記憶機器を含んで構成される。記憶部120には、作業機械モデル130、障害物データ140、制限領域設定150、およびプログラム128が記憶される。プログラム128には、後記する
図6、
図7に示すような遠隔制御装置100が実行する処理の記述が含まれる。
【0017】
作業機械モデル130は、作業機械300の3次元モデルである。作業機械モデル130は、作業機械300が把持する、例えば建材などの物体の3次元モデルも含む。
障害物データ140は、作業現場400にある構造物や資材などの障害物490(
図2参照)を示す3次元点群データであり、作業機械300が遠隔操作される前に取得される。作業現場400が屋内であるなど高さ方向に制限がある場合には、障害物データ140には天井や梁など3次元点群データも含まれる。なお障害物データ140は、3次元点群データに限らず3次元モデル(形状モデル)であってもよいし、これらが混在するデータであってもよい。
【0018】
制限領域設定150には、第1制限領域510(後記する
図4参照)および第2制限領域520を示すパラメータが含まれる。
図4は、本実施形態に係る第1制限領域510および第2制限領域520を示す図である。第1制限領域510および第2制限領域520は、作業機械300の周辺領域であり、第1制限領域510は第2制限領域520に含まれる。第1制限領域510は、作業機械300からの距離が所定値となる領域であり、例えば作業機械300の中心位置から所定値内となる円を底面とする円柱の領域である。障害物490が第1制限領域510内にあるときには、動作を停止するように遠隔制御装置100は作業機械300に指令する。
【0019】
第2制限領域520は、作業機械300から距離が第2所定値となる領域であり、例えば作業機械300の中心位置から第2所定値内となる円を底面とする円柱の領域である。障害物490が第1制限領域510外で第2制限領域520内にあるときには、動作速度を落とすように遠隔制御装置100は作業機械300に指令する。
【0020】
≪遠隔制御装置:制御部≫
図1に戻って、遠隔制御装置100の制御部110を説明する。制御部110は、CPUを含んで構成され、遠隔操作部111、位置姿勢算出部112、干渉解析部113、および表示制御部114が備わる。
【0021】
≪制御部:遠隔操作部≫
遠隔操作部111は、操作者によりコントローラ192(
図1参照)から入力された作業機械300に対する操作指示を指令値に変換して作業機械300に送信する。作業機械300は、当該指令値に従って動作する。
【0022】
≪制御部:位置姿勢算出部≫
位置姿勢算出部112は、作業機械300の位置や姿勢(向き)を算出する。例えば位置姿勢算出部112は、測位アンテナ372や、センサ371に含まれる加速度センサおよび角速度センサが出力する情報を基に作業機械300(下部移動体381)の中心の位置や姿勢を算出する。
【0023】
作業機械300が屋内にあって測位アンテナ372が航法衛星からの信号を受信できないといった場合には、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)という技術を用いて、同様に作業機械300(下部移動体381)の中心の位置や姿勢を算出するようにしてもよい。SLAMにおいては、作業機械300は
図2に示すようなLiDARセンサ376(Laser Imaging Detection and Ranging sensor)を搭載する必要があり、LiDARセンサ単独、または、LiDARセンサと加速度センサと角速度センサとの併用といった形式で、走行領域にあるオブジェクト(障害物)との相対距離を計測して自己位置を推定する。
【0024】
また位置姿勢算出部112は、センサ371に含まれる上部旋回体382やアーム384,385の角度などを基に、個々の可動部の位置や姿勢(角度)を算出する。位置姿勢算出部112は、マニピュレータ386が物体を把持した場合には、当該物体の位置や姿勢を算出する。
【0025】
≪制御部:干渉解析部≫
干渉解析部113は、作業機械300の位置や姿勢と、障害物490の位置(障害物データ140参照)とを基に、作業機械300と障害物490との距離を算出し、障害物490が第1制限領域510および第2制限領域520(
図4参照)内にあるか否かを判断する。第1制限領域510内に障害物490があるならば、干渉解析部113は動作を停止するように遠隔操作部111を介して作業機械300に指示(指令)する。
【0026】
第1制限領域510外かつ第2制限領域520内に障害物490(障害物データ140参照)があるならば、干渉解析部113は動作速度を落とすように遠隔操作部111を介して作業機械300に指示する。なお動作速度とは、作業機械300の移動速度の他に、作業機械300の可動部(上部旋回体382、アーム384,385、マニピュレータ386参照)の動作速度(角度の変化速度)を含む。
【0027】
干渉解析部113は、例えば操作者が指示した速度の所定比(例えば1/3)の速度で動作するように作業機械300に指示する。干渉解析部113は、動作速度の上限値が通常操作状態より低くなるように遠隔操作部111に指示し、遠隔操作部111は当該上限値を上限とする指令値を作業機械300に送信するようにしてもよい。
【0028】
≪制御部:表示制御部≫
表示制御部114は、遠隔操作画面610(後記する
図5参照)をディスプレイ191(
図1参照)に出力する。
図5は、本実施形態に係る遠隔操作画面610の画面構成図である。遠隔操作画面610の上側および右側には画面621~627が配置される。表示制御部114は、カメラ410が撮影した作業機械300の前方、左方、右方および後方の周辺の画像や作業現場400を俯瞰する画像を画面621~627に表示する。なお表示制御部114は、画面621~627の1つに、作業機械300の位置や進行方向を含む作業現場400全体の地図を表示してもよい。
【0029】
画面628はメインとなる画面である。表示制御部114は、作業現場400を示す仮想空間を画面628に表示する。仮想空間には、障害物490を示す3次元点群データ618(
図1記載の障害物データ140参照)が配置される。また位置姿勢算出部112が算出した作業機械300の位置や姿勢、上部旋回体382の向き(角度)、アーム384,385の角度などを基に作業機械300の3次元モデル611(
図1記載の作業機械モデル130参照)が生成されて仮想空間に配置される。なお画面628は、操作者の指示により画面621~627と切り替え可能である。
【0030】
例えば、作業現場400内の作業機械300(下部移動体381)が前進(または後退)した場合、位置姿勢算出部112の位置や姿勢(向き)の算出結果に基づき、仮想空間内の3次元モデル611も前進(または後退)する。同様に、上部旋回体382、アーム384,385、マニピュレータ386の位置や姿勢(角度)が変わった場合、仮想空間内の3次元モデル611内の対応する各オブジェクトの位置や姿勢(角度)が連動して変化する。このように表示制御部114は、遠隔操作される作業機械300と動作が連動する3次元モデル611、および3次元点群データ618を含む作業現場400の仮想空間を表示する。なお、仮想空間における表示画角(作業機械300の上方、前方、後方、左側方または右側方)は任意に切り替え可能である。このように表示画角を切り替えることにより操作者は、作業機械300と障害物490との位置関係が把握可能となる。
【0031】
画面628の上部にある領域629には、各種情報が表示される領域である。表示制御部114は、例えば第1制限領域510(
図4参照)内に障害物490があり作業機械300が停止したことや、第2制限領域520に障害物490があり作業機械300の動作速度が制限されていることを領域629に表示する。
【0032】
以上に説明したように遠隔制御装置100は、作業現場400で稼働する作業機械300を遠隔操作する遠隔操作部111を備える。
遠隔制御装置100は、作業機械300の位置および姿勢を取得する位置姿勢算出部112を備える。
【0033】
遠隔制御装置100は、作業現場400にある障害物490の3次元空間上の位置情報(障害物データ140参照)を基に、作業機械300と障害物490との距離を算出し、当該距離が所定値以下であれば、作業機械300を停止するように遠隔操作部111に指示する干渉解析部113を備える。
また干渉解析部113は、距離が第2所定値以下であれば、作業機械300の移動速度、および、作業機械300の可動部(上部旋回体382、アーム384,385、マニピュレータ386参照)の動作速度を、指定された速度より減速するように遠隔操作部111に指示する。
干渉解析部113は、作業機械300の中心位置と、障害物490の3次元空間上の位置情報とを基に、前記距離を算出する。
【0034】
遠隔制御装置100は、遠隔操作部111により遠隔操作される作業機械300の動作と連動した動作を行う作業機械300のモデル(3次元モデル611参照)、および、障害物490のモデル(3次元点群データ618参照)とを含む仮想空間を表示する表示制御部114を備える。
【0035】
≪全体処理≫
図6は、本実施形態に係る遠隔制御装置100が行う全体処理のフローチャートである。全体処理は、同時並行に実行される遠隔操作処理S11、干渉フィードバック処理S12、および表示処理S13を含む。
遠隔操作処理S11においては遠隔操作部111が、操作者により入力された作業機械300に対する操作指示を指令値に変換して作業機械300に送信する。干渉フィードバック処理S12については、
図7を参照して後記する。表示処理S13において表示制御部114が遠隔操作画面610(
図5参照)を出力する。この処理の実行中は、作業現場内の作業機械300と仮想空間内の3次元モデル611(
図5参照)は連動している。
【0036】
≪干渉フィードバック処理≫
図7は、本実施形態に係る干渉フィードバック処理S12(
図6参照)のフローチャートである。
ステップS21において干渉解析部113は、遠隔操作処理S11(
図6参照)が停止するまでステップS22~S27を繰り返す処理を開始する。
【0037】
ステップS22において位置姿勢算出部112は、作業機械300の位置や姿勢を算出する。
ステップS23において干渉解析部113は、ステップS22で算出された作業機械300の位置や姿勢を基に障害物490との距離を算出する。詳しく説明すると干渉解析部113は、作業機械300の位置および障害物データ140に示される障害物490の位置とを基に、作業機械300に最も近い障害物490と作業機械300との距離を算出する。
【0038】
ステップS24において干渉解析部113は、ステップS23で算出した距離が所定値以下ならば(ステップS24→YES)ステップS25に進み、所定値超ならば(ステップS24→NO)ステップS26に進む。
ステップS25において干渉解析部113は、遠隔操作部111を介して作業機械300の停止を指示する。
【0039】
ステップS26において干渉解析部113は、ステップS23で算出した距離が第2所定値以下ならば(ステップS26→YES)ステップS27に進み、所定値超ならば(ステップS26→NO)ステップS22に戻る。
ステップS27において干渉解析部113は、遠隔操作部111を介して作業機械300の動作速度を減速するように指示する。
【0040】
≪遠隔制御装置の特徴≫
遠隔制御装置100は、操作者により入力された作業機械300に対する操作指示を指令値に変換して作業機械300に送信することで、作業機械300を遠隔操作する。遠隔制御装置100は、作業機械300と障害物490との距離が所定値以下(第1制限領域510に障害物490がある)ならば、作業機械300に停止するように指示する。また遠隔制御装置100は、作業機械300と障害物490との距離が第2所定値以下(第1制限領域510外かつ第2制限領域520内に障害物490がある)ならば、作業機械300の動作速度を低速度にするように指示する。
【0041】
このような遠隔制御装置100によれば、操作者は障害物490との干渉(衝突、接触)を避けながら作業機械300を遠隔操作できるようになる。先行技術と比較して遠隔制御装置100は、3次元空間上の障害物490を考慮しており、例えば天井との接触も回避することができる。
【0042】
≪変形例:距離算出の精密化≫
上記した実施形態では、軸が作業機械300(下部移動体381)の中心位置を通る第1制限領域510(
図4参照)および第2制限領域520に、障害物490があるか否かで作業機械300の動作を制限している。干渉解析部113は、作業機械300の中心位置からの距離ではなく、作業機械モデル130に含まれる下部移動体381や上部旋回体382、アーム384,385、マニピュレータ386などの各可動部に設定された第1制限領域510A(後記する
図8参照)および第2制限領域520Aに障害物490があるか否かで可動部それぞれの動作を制限してもよい。
【0043】
図8は、本実施形態の変形例に係るアーム384,385の第1制限領域510Aおよび第2制限領域520Aを示す図である。第1制限領域510Aは、アーム384,385の軸から所定値内の領域である。第2制限領域520Aは、アーム384,385の軸から第2所定値内の領域である。この所定値および第2所定値は、第1制限領域510および第2制限領域520(
図4参照)と異なってもよい。
【0044】
第1制限領域510A内に障害物490があるならば、干渉解析部113はアーム384,385を停止するように遠隔操作部111を介して作業機械300に指示(指令)する。また第1制限領域510A外かつ第2制限領域520A内に障害物490があるならば、干渉解析部113はアーム384,385の動作速度を落とすように遠隔操作部111を介して作業機械300に指示する。
【0045】
換言すれば3次元モデル611(
図5参照)を構成する可動部のモデル(オブジェクト)と、障害物490を示す3次元点群データ618との距離のなかで最短の距離を、障害物490と作業機械300との距離として算出し(
図7のステップS23参照)作業機械300の動作を制限する(ステップS25,S27参照)ようにしてもよい。さらに干渉解析部113は、マニピュレータ386が把持する物体(図示なし)を含めて作業機械300と障害物490との距離として算出してもよい。また(アーム385などの)モデル(可動部)ごとに所定値(
図8参照)および第2所定値が異なってもよい。
【0046】
このようにすることで遠隔制御装置100は、上部旋回体382の旋回角度、アーム384,385の角度、マニピュレータ386が把持する物体の大きさなどを考慮した障害物490との距離に応じた作業機械300の動作制限を行うことができる。延いては、作業機械300の精密な遠隔制御が可能となる。例えばマニピュレータ386が把持する物体の所定値を0にすることで、把持した建材を既設の構造体に接触する位置まで運ぶことができるようになり、建設作業における作業効率の向上が期待できる。
【0047】
≪変形例:動的な障害物≫
上記した実施形態において障害物データ140は、作業機械300の遠隔操作前に取得済みであるとしている。これに限らず、障害物データ140が時間経過によって変化してもよい。例えば、作業機械300がLiDARセンサなどの3次元点群データ取得する装置を搭載し、3次元点群データを遠隔制御装置100に送信して、遠隔操作の間に障害物データ140を更新するようにしてもよい。
このような構成によれば、作業現場400で稼働する他の作業機械との接触や作業現場400にいる作業員との接触を避けることができるようになる。
【0048】
以上に説明したように干渉解析部113は、作業機械300の移動体(下部移動体381参照)と障害物490の位置情報(障害物データ140参照)とを基に算出された距離、および、作業機械300の可動部(上部旋回体382、アーム384,385、マニピュレータ386参照)と障害物490の位置情報とを基に算出された距離の最小値を作業機械300と障害物490との距離とする。
また干渉解析部113は、作業機械300の移動体と障害物490の位置情報とを基に算出された距離、作業機械300の可動部と障害物490の位置情報とを基に算出された距離、および、作業機械が把持する物体と障害物490の位置情報とを基に算出された距離の最小値を作業機械300と障害物490との距離とする。
【0049】
≪変形例:停止後の遠隔操作≫
上記した実施形態では、第1制限領域510(
図4参照)内に障害物490があると干渉解析部113は、動作を停止するように遠隔操作部111を介して作業機械300に指示する。停止後に遠隔操作部111は、作業機械300が障害物490から遠ざかる遠隔操作のみを受け付け、障害物490に近づく遠隔操作を受け付けないよいようにしてもよい。換言すれば遠隔操作部111は、障害物との距離が大きくなる遠隔操作のみを受け付け、距離が小さくなる遠隔操作を受け付けない。
【0050】
図9は、本実施形態の変形例に係る停止後における下部移動体381の遠隔操作の制限を説明するための図である。第1制限領域510(
図4参照)の底面は、領域711~714に区切られ、それぞれは作業機械300の右前、左前、左後、右後となる領域である。障害物721が作業機械300の前方である領域711,712にある場合に遠隔操作部111は、下部移動体381に対する操作者からの操作について、後退する操作のみを受け付け、旋回や前進などの操作は受け付けない(指示された操作に対応する指令値を作業機械300に送らない)。また障害物(不図示)が作業機械300の後方である領域713,714にある場合に遠隔操作部111は、下部移動体381に対する操作者からの操作について、前進する操作のみを受け付け、他の操作は受け付けない。
【0051】
図10は、本実施形態の変形例に係る停止後における下部移動体381の遠隔操作の制限を説明するための図である。障害物722が作業機械300の右前である領域711にある場合に遠隔操作部111は、下部移動体381に対する操作者からの操作について、後退または左旋回する操作のみを受け付け、他の操作は受け付けない。
【0052】
また障害物(不図示)が作業機械300の左前である領域712にある場合に遠隔操作部111は、下部移動体381に対する操作者からの操作について、後退または右旋回する操作のみを受け付け、他の操作は受け付けない。障害物(不図示)が作業機械300の左後である領域713にある場合に遠隔操作部111は、下部移動体381に対する操作者からの操作について、前進または右旋回する操作のみを受け付け、他の操作は受け付けない。障害物(不図示)が作業機械300の右後である領域714にある場合に遠隔操作部111は、下部移動体381に対する操作者からの操作について、前進または左旋回する操作のみを受け付け、他の操作は受け付けない。
【0053】
図11および
図12は、本実施形態の変形例に係る停止後における下部移動体381の遠隔操作の制限を説明するための図である。障害物723,725が作業機械300の前方である領域711,712にあり、さらに障害物724,726が作業機械300の後方である領域713,714にある場合に遠隔操作部111は、下部移動体381に対する操作者からの操作を受け付けない。このような場合に操作者は、上記した遠隔操作部111の操作を制限する機能を停止する。操作を制限する機能が停止した遠隔操作部111は、操作者の操作どおりの指令値を作業機械300に送信する。
【0054】
可動部である上部旋回体382(
図2参照)、アーム384,385、マニピュレータ386についても同様であり、停止後に遠隔操作部111は、作業機械300が障害物490から遠ざかる遠隔操作のみに受け付けるようにしてもよい。換言すれば遠隔操作部111は、障害物との距離が大きくなる遠隔操作のみを受け付け、距離が小さくなる遠隔操作を受け付けない。以下に説明する。
【0055】
図13は、本実施形態の変形例に係るアーム384,385(
図2参照)の位置を説明するための模式図である。x軸、y軸、z軸は、それぞれ作業機械300の右方、前方、上方に対応する。ジョイント741は、上部旋回体382に対応し、z軸を軸としてアーム384を回転する。回転の角度は、x軸からの角度θ
0である。またジョイント741は、xy平面上の直線を軸としてアーム384を回転する。回転の角度は、xy平面からの角度θ
1である。
【0056】
ジョイント742は、アーム384,385間のジョイントである。ジョイント743は、アーム385とマニピュレータ386間のジョイントである。点746,747は、それぞれジョイント741,742、ジョイント742,743の中点であり、それぞれアーム384,385の位置を示す。ジョイント742の回転の角度は、xy平面からの角度θ2である。するとアーム384,385の位置を示す点である点746,747の座標は、それぞれ式(1)、式(2)を用いて算出される。
【0057】
【0058】
図14は、本実施形態の変形例に係る停止後におけるアーム384の遠隔操作の制限を説明するための図である。領域715,716は、それぞれアーム384の左側と右側の領域である。障害物727がアーム384の左側である領域715にある場合に遠隔操作部111は、下部移動体381に備わるジョイント741に対する操作者からの操作について、右旋回する操作のみを受け付け、左旋回する操作は受け付けない。
【0059】
図15は、本実施形態の変形例に係る停止後におけるアーム384の遠隔操作の制限を説明するための図である。領域717,718は、それぞれアーム384の上側と下側の領域である。障害物728がアーム384の上側である領域717にある場合に遠隔操作部111は、下部移動体381に備わるジョイント741に対する操作者からの操作について、アーム384を下す操作のみを受け付け、上げる操作は受け付けない。
【0060】
遠隔操作部111は、式(1)を用いることでアーム384の位置を示す点746と障害物との位置関係または距離を算出して、ジョイント741の角度θ0,θ1の増減(旋回または回転の方向)の何れを受け付けるかを判断する。
アーム385、マニピュレータ386についても同様であり、遠隔操作部111は、ジョイント742,743に対する操作者からの操作について、アーム385、マニピュレータ386が障害物から遠ざかる操作のみを受け付け、近づける操作は受け付けない。
【0061】
以上に説明したように遠隔操作部111は、干渉解析部113の指示により作業機械300を停止した場合に、距離が小さくなる(障害物に近づける)、当該作業機械300の移動体(下部移動体381参照)に対する遠隔操作を受け付けない。
また遠隔操作部111は、作業機械300の可動部(上部旋回体382、アーム384,385、マニピュレータ386参照)と障害物の位置情報とを基に算出された距離が所定値以下となり、干渉解析部113の指示により作業機械300を停止した場合に、当該距離が小さくなる(障害物に近づける)、当該可動部に対する遠隔操作を受け付けない。
【0062】
≪その他の変形例≫
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、これらの実施形態は、例示に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。例えば作業機械300の測位の手法はGNSSに限らず、例えば近距離無線を用いた手法であってもよいし、LiDARを用いたSLAMによる手法を取ってもよい。また、カメラ410の画像を解析して作業機械300の位置を算出する手法であってもよい。
【0063】
本発明はその他の様々な実施形態を取ることが可能であり、さらに、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、省略や置換等種々の変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、本明細書等に記載された発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0064】
100 遠隔制御装置
111 遠隔操作部
112 位置姿勢算出部
113 干渉解析部
114 表示制御部
128 プログラム
130 作業機械モデル
140 障害物データ(障害物の3次元空間上の位置情報)
150 制限領域設定
300 作業機械
381 下部移動体(移動体)
382 上部旋回体(可動部)
384,385 アーム(可動部)
386 マニピュレータ(可動部)
400 作業現場
490 障害物
510,510A 第1制限領域
520,520A 第2制限領域
611 3次元モデル(作業機械のモデル)
618 3次元点群データ(障害物のモデル)