(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136733
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】電子鍵盤機器
(51)【国際特許分類】
G10H 1/32 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
G10H1/32 Z
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047946
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002022
【氏名又は名称】弁理士法人コスモ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤井 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】今村 尚人
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 裕樹
【テーマコード(参考)】
5D478
【Fターム(参考)】
5D478JJ02
(57)【要約】
【課題】構成部材の強度を保持しつつ、良好な音像を得ることが可能な電子鍵盤楽器を提供する。
【解決手段】電子鍵盤楽器は、本体ケース30と、本体ケース30から露出して設けられた複数の鍵22を有する鍵盤と、本体ケース30内に設けられたスピーカ80と、鍵盤とスピーカ80との間で複数の鍵22の少なくとも何れかに対応する位置に設けられた複数の第1リブ71及び第2リブ72と、を備え、複数の第1リブ71及び第2リブ72の間は支持部材開口部70Aが設けられることにより夫々開口しており、本体ケース30内に、スピーカ80から支持部材開口部を経由して複数の鍵22の夫々の鍵間に至る連通路Pを有する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体から露出して設けられた複数の鍵を有する鍵盤と、
前記筐体内に設けられた放音部材と、
前記鍵盤と前記放音部材との間で前記複数の鍵の少なくとも何れかに対応する位置に設けられた複数のリブと、を備え、
前記複数のリブの間は夫々開口しており、
前記筐体内に、前記放音部材から前記開口を経由して前記複数の鍵の夫々の鍵間に至る連通路を有する、
電子鍵盤楽器。
【請求項2】
前記連通路は、前記放音部材から前記開口に至る第1連通路と、前記開口から前記複数の鍵の鍵間に至る第2連通路と、を含む、
請求項1に記載の電子鍵盤楽器。
【請求項3】
前記複数の鍵の夫々に対応するハンマー部材を備え、
前記複数のリブは、夫々前記ハンマー部材と対応する位置に設けられている、
請求項1に記載の電子鍵盤楽器。
【請求項4】
前記鍵盤の下方に設けられて、前記鍵盤を支持する支持部材を備え、
前記複数のリブは、前記支持部材に設けられている、
請求項1に記載の電子鍵盤楽器。
【請求項5】
前記複数のリブの夫々は、前記複数の鍵の少なくとも何れかに対応する位置に略垂直に立設される、
請求項4に記載の電子楽器。
【請求項6】
前記連通路は、水平面から前記鍵間に向けて傾斜する傾斜面を含む、
請求項1~5のいずれか1項に記載の電子鍵盤楽器。
【請求項7】
前記傾斜面は、該傾斜面に反射される音の軌道上に前記鍵間が位置する傾斜角度とされている、
請求項6に記載の電子鍵盤楽器。
【請求項8】
前記放音部材と前記鍵間のうち前記鍵の鍵先側の部分とは、前記電子鍵盤楽器の断面視において互いに上下に重ならない位置に設けられている、
請求項7に記載の電子鍵盤楽器。
【請求項9】
前記筐体内に、前記放音部材から、前記鍵の鍵後側の部分よりも後方であり前記鍵盤の上面側へと連通する他の連通路を有する、
請求項8に記載の電子鍵盤楽器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子鍵盤機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ハンマー部材等の質量体を備えることで本物のピアノに近い打鍵感覚を得ることができる電子鍵盤楽器が知られている。例えば特許文献1には、鍵盤の鍵や質量体等を搭載した基板と、基板を鍵の下方で保持するフレームとを備える電子鍵盤楽器の鍵盤構造が開示されている。この鍵盤構造では、フレームは、フレーム自体を補強する複数の補強用リブを有している。複数の補強用リブは鍵盤の白鍵と白鍵との間に形成されており、揺動する質量体と補強用リブとが干渉することが防止されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示される電子鍵盤楽器のように、補強効果を高めるために鍵より低い位置かつ白鍵と白鍵との間に複数のリブが設けられた構成では、複数のリブが音抜けの妨げとなることがあり、筐体内(例えば、鍵盤よりも低い位置又は筐体の後方側)においてスピーカから鍵盤の鍵の間へ至る放音路を十分に確保することが困難であった。このため、良好な音像を得ることができない虞があった。
【0005】
本発明は、構成部材の強度を保持しつつ、良好な音像を得ることが可能な電子鍵盤楽器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電子鍵盤楽器は、筐体と、前記筐体から露出して設けられた複数の鍵を有する鍵盤と、前記筐体内に設けられた放音部材と、前記鍵盤と前記放音部材との間で前記複数の鍵の少なくとも何れかに対応する位置に設けられた複数のリブと、を備え、前記複数のリブの間は夫々開口しており、前記筐体内に、前記放音部材から前記開口を経由して前記複数の鍵の夫々の鍵間に至る連通路を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、構成部材の強度を保持しつつ、良好な音像を得ることが可能な電子鍵盤楽器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る電子鍵盤楽器を前方側から見た全体斜視図である。
【
図2】実施形態に係る電子鍵盤楽器の本体部の正面図である。
【
図3】実施形態に係る電子鍵盤楽器の本体部の一部斜視図である。
【
図4】実施形態に係る電子鍵盤楽器の本体部の断面図であって、
図2におけるIV-IV断面の断面図である。
【
図5】実施形態に係る電子鍵盤楽器の本体部の斜視断面図であって、
図4に対応する断面の斜視断面図である。
【
図6】実施形態に係る電子鍵盤楽器の本体部の内部を下側から見た斜視図である。
【
図7】実施形態に係る電子鍵盤楽器の支持部材の一部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1に示す電子鍵盤楽器1は、本体部10と、脚部100とを備えている。
図1及び
図2に示すように、本体部10は、白鍵22Wと黒鍵22Bといった複数の鍵22を有する鍵盤20と、鍵盤20を囲んで保持する本体ケース(筐体)30とを備えている。脚部100は、一対の側板部材110と、ペダルフレーム120と、ペダル装置130とを備えている。なお、以下では、鍵盤20の複数の鍵22の配列方向を左右方向(
図1及び
図2の左側を左方向とする)とし、各鍵22の延在方向を前後方向(
図1及び
図2の手前側を前方向とする)とし、電子鍵盤楽器1の上下方向を上下方向(
図1及び
図2の上側を上方向とする)として説明する。
【0010】
図1に示すように、一対の側板部材110は、両板面を左右方向に向けた姿勢で、電子鍵盤楽器1の左右両側で設置面上に立設される板状部材であり、本体ケース30を支持する。ペダルフレーム120は、各側板部材110の下側で各側板部材110の間を接続する。ペダル装置130は、ペダルフレーム120の左右方向略中央部に設けられている。以下、本体部10の構成について詳しく説明する。
【0011】
図1~
図4に示すように、本体ケース30は、上方から見て、左右方向を長手方向とする横長略矩形状であり、前面板32、後面板33、左側面板34、右側面板35、上面板36、及び下面板37の各厚板状部材を有しており、縦断面が略L字状とされている(
図4参照)。前面板32は、左右方向に長い略矩形状であり、本体部10の前方の下側部分に設けられて本体ケース30の前面を構成する。後面板33は、左右方向に長い略矩形状であり、本体部10の後方に設けられて本体ケース30の後面を構成する。
【0012】
左側面板34及び右側面板35は、前後方向に長い略矩形状であり、それぞれ本体部10の左側方、右側方に設けられて本体ケース30の左側面、右側面を構成する。上面板36は、左右方向に長い略矩形状であり、本体部10の上方の後側部分に設けられて本体ケース30の上面を構成する。
図1に示すように、上面板36の左右方向略中央部には、譜面立て36aが取り付けられている。なお、
図2以降では、譜面立て36aの図示を省略している。下面板37は、左右方向に長い略矩形状であり、本体部10の下方に設けられて本体ケース30の下面を構成する。
【0013】
図4及び
図5に示すように、下面板37の左右両側のやや後方部分には、上下方向に開口する略円形状の放音孔37aがそれぞれ設けられている。各放音孔37aは、下面板37の一部(以下、「分割部37b」という。)によって前後に略半円状に分割されており、前側の開口が第1放音孔37a1とされ、後側の開口が第2放音孔37a2とされる。第1放音孔37a1は、第2放音孔37a2に比べて開口の大きさがわずかに小さくされている。
【0014】
図3に示すように、本体ケース30は、前方上側が開口しており、この開口部分から鍵盤20における各鍵22の打面部分である上面及び前面の一部が外部に露出している。
図4に示すように、本体部10には、鍵盤20のうち外部に露出する部分を覆う蓋部38が設けられている。蓋部38は、厚板状の部材であり、左右方向に長い略矩形状の板状部材である第1蓋板部38aと第2蓋板部38bとからなっている。第1蓋板部38aと第2蓋板部38bは、2つ折り可能に連結されており、鍵盤20と上面板36との間に設けられた開口(以下、上方開口部30a(
図4参照)という。)から本体部10の内部に出し入れ自在に収容される。電子鍵盤楽器1では、電源がオフされると、蓋部38が本体部10の内部から引き出されて本体ケース30の開口が覆われることにより、鍵盤20の露出部分が覆われるようになっている。
【0015】
電子鍵盤楽器1では、外部に露出する本体部10の本体ケース30、及び脚部100の各側板部材110がそれぞれ木製とされており、質感に特徴を持たせている。なお、
図1に示すように、鍵盤20と右側面板35との間には、電源ボタン42a等が配置された電源パネル部42が設けられている。また、鍵盤20と左側面板34との間には、音量調整ボタン44a等が配置された設定パネル部44が設けられている。
【0016】
図3~
図5に示すように、本体ケース30の内部には、内部ケース50が設けられている。内部ケース50は、鍵盤の下側の略全域に亘って設けられており、鍵盤20と同様に横長の形状とされている。内部ケース50は、下方に開放された中空の部材とされる。内部ケース50の後側には、両板面を前後方向に向けた姿勢とされた略板状の板金部材46が設けられている。板金部材46と後面板33との間には、後方空間BSが設けられている。また、内部ケース50の内側であって内部ケース50と下面板37との間には、内部空間ISが設けられている。板金部材46は、下面板37の分割部37bの上側に設けられている。このため、放音孔37aのうち、第1放音孔37a1は内部空間ISと連通しており、第2放音孔37a2は後方空間BSと連通している。なお、上述した蓋部38は、後方空間BSに収容されるようになっている。
【0017】
内部ケース50の前端部は、上方側に向けて凸状に突出するケース側凸状部50aとされる。内部ケース50のうち各鍵22の黒鍵の下側に位置する部分は、上方側に向けて台状に隆起するケース側台状部50bとされる。ケース側凸状部50aとケース側台状部50bの間は、下方側に凹状に凹んでなるケース側凹状部50cとされる。ケース側台状部50bの上面の後側部分には、鍵盤20の各鍵22の後端部分を回動自在に支持する回動支点部50b1が設けられている。また、ケース側台状部50bの上面には、制御基板55が設けられている。制御基板55にはスイッチが設けられており、打鍵した鍵22に対応する音が発音されるようになっている。ケース側凹状部50cには、上下方向に開口する複数のケース側開口50c1が左右方向に並んで設けられている(
図5参照)。
【0018】
各鍵22のうち白鍵22Wには、その前端部から下側に向けて鉤状の白鍵規制部22W1が延びており、この白鍵規制部22W1がケース側凸状部50aの前側の上下にそれぞれ設けられている第1クッション51と干渉することにより、白鍵22Wの上限位置及び下限位置が規制されるようになっている。また、各鍵22のうち黒鍵22Bには、その前端部から下側に向けて黒鍵規制部22B1が延びており、この黒鍵規制部22B1がケース側台状部50bの前側の上下にそれぞれ設けられている第2クッション52と干渉することにより、黒鍵22Bの上限位置及び下限位置が規制されるようになっている。
【0019】
内部空間ISのうちケース側台状部50bの内側には、各鍵22と接続される複数のハンマー部材60が設けられている。また、
図4では第1放音孔37a1、第1連通路P1等の説明の都合上、一部ハンマー部材60を省略している。ハンマー部材60は、略三角形状のウェイト部61と、ウェイト部61から前側に直線状に延びるアーム部62とを備えている。アーム部62は、ケース側台状部50bの内側の前側部分に設けられた軸支部材54に回動自在に支持されている。各鍵22を打鍵すると、ハンマー部材60のウェイト部61が上昇し、各鍵22の打鍵時に重みを付与することができる。これにより、本物のピアノに近い打鍵感覚を得ることができる。
【0020】
内部空間ISの前側部分には、下面板37上に配置された支持部材70が設けられている。支持部材70は、下面板にネジ止めされることにより、本体ケース30に取り付けられる。支持部材70により、木製とされた本体ケース30に対して、内部ケース50を介して鍵盤20が間接的に支持される。ハンマー部材60のアーム部62を支持する軸支部材54は、支持部材70上に設けられている。支持部材70の構成については、後で詳しく説明する。
【0021】
図2及び
図4に示すように、電子鍵盤楽器1は、本体ケース30の下部に2つのスピーカ(放音装置)80を備えている。各スピーカ80は、コーン80aの放音側を上方側に向けた姿勢で、下面板37に設けられた各放音孔37aに対応するように、下面板37の下側にネジ止めされて取り付けられている。また、各スピーカ80は、各鍵22の鍵間のうち各鍵22の鍵先側の部分と上下方向において重ならない位置に設けられている。コーン80aの大きさは各放音孔37aの大きさと略一致しており、各スピーカ80から放たれた音は、第1放音孔37a1を通って内部空間ISに伝わるとともに、第2放音孔37a2を通って後方空間BSに伝わるようになっている。
【0022】
上述したように内部空間ISには、鍵盤20、内部ケース50、制御基板55、ハンマー部材60、支持部材70等の様々な部材が設けられている。各スピーカ80から放たれた音のうち、内部空間ISに伝わった音は、支持部材70及び内部ケース50の間を通過して各鍵22の間の隙間から演奏者側に放音される。即ち、内部空間ISには、各スピーカ80から第1放音孔37a1を通過して各鍵22の間の隙間に至るように音が伝搬される連通路P(
図5参照)が設けられている。
【0023】
一方、各スピーカ80から放たれた音のうち、後方空間BSに伝わった音は、蓋部38が収容された後方空間BSを通過して上方開口部30aから演奏者側に放音される。即ち、後方空間BSには、各スピーカ80から第2放音孔37a2を通過して上方開口部30a(鍵盤20の上側)に至るように音が伝搬される後方連通路(他の連通路)BP(
図5参照)が設けられている。後方連通路BPは、上下方向において鍵盤20と重ならない位置に設けられている。なお、後方連通路BPは、第2放音孔37a2から板金部材46に設けられた半月状の切欠きを通過して上方へ抜ける経路も含んでいる。
【0024】
次に、内部空間ISに設けられている連通路Pについて詳しく説明する。
図5に示すように、本実施形態では、連通路Pは、第1放音孔37a1から各ハンマー部材60の下を抜けて下面板37と内部ケース50の間を通り、支持部材70の内部に設けられた複数の支持部材開口部(開口)70A(
図4参照)に至る第1連通路P1と、支持部材開口部70Aから支持部材70の上方側へ抜け、さらに内部ケース50の上方側へ抜けて各鍵22の間に至る第2連通路P2とを含んでいる。
【0025】
ここで、
図4~
図7を参照して支持部材70及び支持部材開口部70Aの構成について説明する。
図7に示すように、支持部材70は、横長形状とされ、内部ケース50の内側に設けられる。支持部材70は、下方に開放された中空の部材とされる。支持部材70の前端部は、上方側に向けて凸状に突出する支持側凸状部70aとされ、ケース側凸状部50aの下側に配置される。支持部材70の後端部は、上方側に向けて台状に隆起する支持側台状部70bとされ、ケース側台状部50bの下側の前方寄りの位置に配置される。支持側凸状部70aと支持側台状部70bの間は、下方側に凹状に凹んでなる支持側凹状部70cとされ、ケース側凹状部50cの下側に配置される。
【0026】
図6に示すように、支持側凸状部70aの下面側の略全域には、前後方向に沿って延びる補強用の複数の第1リブ(リブ)71が左右方向に略等間隔で設けられている。また、支持側凹状部70cの下面側の略全域には、前後方向に沿って延びる補強用の複数の第2リブ(リブ)72が左右方向に略等間隔で設けられている。各第1リブ71及び各第2リブ72は、それぞれ各鍵22と対応する位置、具体的には各鍵22の直下に略垂直に立設されている。このため、各第1リブ71及び各第2リブ72により、鍵盤20の略全域が内部ケース50を介して偏りなく支持される構成となっている。
【0027】
支持側凸状部70aの後側には、支持側台状部70bの下側に設けられた各ハンマー部材60が設けられている。各第1リブ71及び各第2リブ72は、各ハンマー部材60と対応する位置に設けられている。具体的には、各第1リブ71及び各第2リブ72は、各ハンマー部材60と前後方向おいて同一直線上に設けられており、各ハンマー部材60の左右方向の中心位置が各第1リブ71及び各第2リブ72と一致している。
【0028】
上述した複数の支持部材開口部70Aは、支持部材70の内部に設けられた連通路であり、支持部材70の後端部70dから各第1リブ71の間を通過して支持側凹状部70cの上方側へ抜けている。具体的には、
図4及び
図6に示すように、支持部材70の後端部70d(支持側台状部70bの後端部)における各第1リブ71の間には、前後方向に開口する略アーチ形状の複数の第1開口70b1がそれぞれ設けられている。また、支持側台状部70bの前端部における各第1リブ71の間には、前後方向に開口する略四角形状の複数の第2開口70b2がそれぞれ設けられている。各第1開口70b1と各第2開口70b2は、下面板37に沿った同一直線上に位置している。
【0029】
一方、支持側凹状部70cにおける支持側台状部70b寄りの位置のうち各第2リブ72の間には、上下方向に開口する略四角形状の複数の第3開口70c1が設けられている。各第3開口70c1は、上下方向において各ケース側開口50c1と対応する位置、即ち上下方向において各ケース側開口50c1と重なる位置に設けられている。
【0030】
各第3開口70c1の下側には、各第2開口70b2から各第3開口70c1にかけて傾斜する傾斜面70c2がそれぞれ設けられている。各傾斜面70c2は、水平面である下面板37の上面から各鍵22の間、即ち演奏者側に向けて音が反射されるようにそれぞれ傾斜している。換言すれば、傾斜面70c2は、傾斜面70c2に反射される音の軌道を示す仮想線L上に各鍵22の間が位置するような傾斜角度とされている。具体的には、傾斜面70c2の傾斜角度は、45°~60°程度であることが好ましい。傾斜面70c2がこのような傾斜角度とされていることにより、傾斜面70c2で反射された音が他の部材と干渉することなく各鍵22の間に到達するようになっている。
【0031】
以上のように、各支持部材開口部70Aは、第1開口70b1から支持側台状部70bの内部を通過し、第2開口70b2を抜け、傾斜面70c2を経由して第3開口70c1に至る連通路となっている。従って、各支持部材開口部70Aは、支持部材70を内部空間IS側から複数の鍵22の下側の空間側に貫通する通路となっている。
【0032】
連通路Pの構成に戻り、第2連通路P2は、支持部材開口部70Aの第3開口70c1を抜けた後、ケース側開口50c1を抜けて内部ケース50の上方側へ連通し、各鍵22の間に至る経路とされる。このように、第1連通路P1と第2連通路P2とを含む連通路Pは、途中に音を遮るような壁面等が設けられておらず、第1放音孔37a1から各鍵22の間に向けて連通する一連の通路となっており、音が効果的に伝搬される経路となっている。
【0033】
以上説明したように、本実施形態に係る電子鍵盤楽器1は、本体ケース30と、本体ケース30から露出して設けられた複数の鍵22を有する鍵盤20と、本体ケース30内に設けられたスピーカ80と、鍵盤20とスピーカ80との間で複数の鍵22の少なくとも何れかに対応する位置に設けられた複数の第1リブ71及び第2リブ72と、を備え、複数の第1リブ71及び第2リブ72の間は支持部材開口部70Aが設けられることにより夫々開口しており、本体ケース30内に、スピーカ80から支持部材開口部70Aを経由して複数の鍵22の夫々の鍵間に至る連通路Pを有する。
【0034】
上記のような構成とされた本実施形態の電子鍵盤楽器1では、スピーカ80から支持部材開口部70A側に放たれた音が、壁面等に邪魔されることなく、各第1リブ71と各第2リブ72の間に設けられた支持部材開口部70Aを経由して連通路Pを通り、複数の鍵22の鍵間、即ち演奏者側に伝搬される。このため、複数の鍵22の各々と対応する位置に設けられた各第1リブ71と各第2リブ72により鍵盤20を偏りなく支持する構成を実現しながら、スピーカ80から演奏者側に向けて放音経路を確保することができ、効率良く音抜け構造を確保することができる。これにより、本実施形態の電子鍵盤楽器1では、構成部材の強度を保持しつつ、良好な音像を得ることができる。
【0035】
また、本実施形態に係る電子鍵盤楽器1では、連通路Pは、スピーカ80から支持部材開口部70Aに至る第1連通路P1と、支持部材開口部70Aから複数の鍵22の鍵間に至る第2連通路P2と、を含む。この構成によれば、例えばスピーカ80から鍵盤20の下側の空間を通って支持部材開口部70Aに至る経路を第1連通路P1とし、各第1リブ71と各第2リブ72が設けられた部材の内部を通って複数の鍵22の鍵間に至る経路を第2連通路P2とすることができる。このように連通路Pについての具体的な構成を提供することができる。
【0036】
また、本実施形態に係る電子鍵盤楽器1は、複数の鍵22の夫々に対応するハンマー部材60を備え、各第1リブ71及び各第2リブ72は、夫々ハンマー部材60と対応する位置に設けられている。これにより、連通路Pの一部を各ハンマー部材60の間を通り抜ける経路とすることができ、連通路Pについて壁面等に邪魔されることがない具体的な構成を提供することができる。さらに、各第1リブ71及び各第2リブ72が各ハンマー部材60と対応することにより、鍵盤20の各鍵22の補強構造を均一化することができる。また、各鍵22の打鍵される状況に合わせて、各鍵22に対応した第1リブ71及び第2リブ72を調整することにより、鍵22毎に補強構造を調整することができる。
【0037】
また、本実施形態に係る電子鍵盤楽器1は、鍵盤20の下方に設けられて、鍵盤20を支持する支持部材70を備え、各第1リブ71と各第2リブ72は、支持部材70に設けられている。これにより、各第1リブ71と各第2リブ72により支持部材70を補強することができ、支持部材70により鍵盤20を効果的に支持する構成を実現することができる。
【0038】
また、本実施形態に係る電子鍵盤楽器1では、複数の第1リブ71及び第2リブ72の夫々は、複数の鍵22の少なくとも何れかに対応する位置に略垂直に立設される。これにより、連通路Pを通る音を直線状に伝搬させることができ、一層効率が良い音抜け構造を確保することができる。
【0039】
また、本実施形態に係る電子鍵盤楽器1では、連通路Pは、水平面とされた下面板37の板面から複数の鍵22の鍵間に向けて傾斜する傾斜面70c2を含む。このように連通路Pの一部に傾斜面70c2を設けることにより、本体ケース30の下側に設けられたスピーカ80から演奏者側、即ち本体ケース30の上方側に至る連通路Pを実現するための具体的な構成を提供することができる。さらに、このような傾斜面70c2を設けることにより、略垂直に曲がる連通路を設ける場合と比べて、音の反射が少なくなり、音が効率良く伝搬される連通路Pを実現することができる。
【0040】
また、本実施形態に係る電子鍵盤楽器1では、傾斜面70c2は、傾斜面70c2に沿った仮想線L上に複数の鍵22の鍵間が位置する傾斜角度とされている。これにより、スピーカ80から演奏者側に向かう連通路Pを実現するための傾斜面70c2の具体的な傾斜角度を提供することができる。
【0041】
また、本実施形態に係る電子鍵盤楽器1では、スピーカ80と複数の鍵22の鍵間のうち仮想線L上に位置する部分は、電子鍵盤楽器1の断面視において上下に重ならない位置に設けられている。この構成によれば、各鍵22に重みを付与するためのハンマー部材60が設けられる空間をスピーカ80の上側に設けることができ、本体ケース30の内部において、スピーカ80から各鍵22の鍵間に至る連通路Pを効率的に設けることができる。
【0042】
また、本実施形態に係る電子鍵盤楽器1では、本体ケース30内に、スピーカ80から電子鍵盤楽器1の断面視において鍵盤20と上下に重ならない通路を経由して鍵盤20の上側に至る後方連通路BPを有する。この構成によれば、連通路Pを経由して演奏者側に音が伝搬されるたけでなく、スピーカ80からさらに後方連通路BPを経由して演奏者側に音が伝搬されるため、鍵盤20の上下両側から音が放音され、スピーカ80からの音が演奏者側に効果的に伝搬される電子鍵盤楽器1を実現することができる。さらに、鍵盤20の上下両側から音が放音されることにより、音が伝搬される経路が連通路Pと後方連通路BPのいずれか一方である構成と比べて、演奏者の座高に関わらず演奏者に伝わる音の音圧を高めることができる。さらに、電子鍵盤楽器1の全体から音が鳴っているかのような感覚を演奏者に与えることができる。
【0043】
なお、以上説明した実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0044】
1 電子鍵盤楽器 10 本体部
20 鍵盤 22 鍵
22B 黒鍵 22B1 黒鍵規制部
22W 白鍵 22W1 白鍵規制部
30 本体ケース 30a 上方開口部
32 前面板 33 後面板
34 左側面板 35 右側面板
36 上面板 36a 譜面立て
37 下面板 37a 放音孔
37a1 第1放音孔 37a2 第2放音孔
37b 分割部 38 蓋部
38a 第1蓋板部 38b 第2蓋板部
42 電源パネル部 42a 電源ボタン
44 設定パネル部 44a 音量設定ボタン
46 板金部材 50 内部ケース
50a ケース側凸状部 50b ケース側台状部
50b1 回動支点部 50c ケース側凹状部
50c1 ケース側開口 51 第1クッション
52 第2クッション 54 軸支部材
55 制御基板 60 ハンマー部材
61 ウェイト部 62 アーム部
70 支持部材 70A 支持部材開口部
70a 支持側凸状部 70b 支持側台状部
70b1 第1開口 70b2 第2開口
70c 支持側凹状部 70c1 第3開口
70c2 傾斜面 70d 後端部
71 第1リブ 72 第2リブ
80 スピーカ 80a コーン
100 脚部 110 側板部材
120 ペダルフレーム 130 ペダル装置
BP 後方連通路 BS 後方空間
IS 内部空間 L 仮想線
P 連通路 P1 第1連通路
P2 第2連通路
【手続補正書】
【提出日】2024-04-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体から露出して設けられた複数の鍵を有する鍵盤と、
前記筐体内に設けられた放音部材と、
前記鍵盤と前記放音部材との間で前記複数の鍵の少なくとも何れかに対応する位置に設けられた複数のリブと、を備え、
前記複数のリブの間の少なくとも一部は開口しており、
前記筐体には、前記放音部材から前記開口を経由して前記複数の鍵の夫々の鍵間に至る連通路が形成される、
電子鍵盤楽器。
【請求項2】
前記連通路は、前記放音部材から前記開口に至る第1連通路と、前記開口から前記複数の鍵の鍵間に至る第2連通路と、を含む、
請求項1に記載の電子鍵盤楽器。
【請求項3】
前記複数の鍵の夫々に対応するハンマー部材を備え、
前記複数のリブは、夫々前記ハンマー部材の少なくとも何れかに対応する位置に設けられている、
請求項1に記載の電子鍵盤楽器。
【請求項4】
前記鍵盤の下方に設けられて、前記鍵盤を支持する支持部材を備え、
前記複数のリブは、前記支持部材に設けられている、
請求項1に記載の電子鍵盤楽器。
【請求項5】
前記複数のリブの夫々は、前記支持部材のうち、前記複数の鍵の少なくとも何れかに対応する位置に略垂直に立設される、
請求項4に記載の電子楽器。
【請求項6】
前記筐体において、上面に前記支持部材を配置する下面板を備え、
前記連通路は、前記下面板とのなす角度が仰角であり、かつ、前記筐体の後方から前記筐体の前方へと傾斜する傾斜面を含む、
請求項4に記載の電子鍵盤楽器。
【請求項7】
前記傾斜面の傾斜角度は、該傾斜面に反射される音の少なくとも一部の軌道上に前記鍵間が位置する角度に設定される、
請求項6に記載の電子鍵盤楽器。
【請求項8】
前記傾斜面は、前記支持部材に設けられ、かつ、前記複数のリブの夫々の間に設けられている、
請求項6に記載の電子鍵盤楽器。
【請求項9】
前記放音部材と前記鍵間のうち前記鍵の鍵先側の部分とは、前記電子鍵盤楽器の断面視において互いに上下に重ならない位置に設けられている、
請求項1に記載の電子鍵盤楽器。
【請求項10】
前記筐体には、前記放音部材から、前記鍵の鍵後側の部分よりも後方であり前記鍵盤の上面側へと連通する他の連通路が形成される、
請求項9に記載の電子鍵盤楽器。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本発明の電子鍵盤楽器は、筐体と、前記筐体から露出して設けられた複数の鍵を有する鍵盤と、前記筐体内に設けられた放音部材と、前記鍵盤と前記放音部材との間で前記複数の鍵の少なくとも何れかに対応する位置に設けられた複数のリブと、を備え、前記複数のリブの間の少なくとも一部は開口しており、前記筐体には、前記放音部材から前記開口を経由して前記複数の鍵の夫々の鍵間に至る連通路が形成される。