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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136734
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】苔の除去方法
(51)【国際特許分類】
   C11D 1/62 20060101AFI20240927BHJP
   C11D 1/52 20060101ALI20240927BHJP
   C11D 17/08 20060101ALI20240927BHJP
   B08B 3/08 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C11D1/62
C11D1/52
C11D17/08
B08B3/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047947
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】523107868
【氏名又は名称】R・コーポレーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160657
【弁理士】
【氏名又は名称】上吉原 宏
(72)【発明者】
【氏名】日向野 竜司
【テーマコード(参考)】
3B201
4H003
【Fターム(参考)】
3B201AA31
3B201AB52
3B201BB21
3B201BB90
3B201BB92
3B201BB94
3B201BB96
3B201CC01
4H003AC13
4H003AE04
4H003DB01
4H003DC02
4H003ED02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】外壁や屋根、塀などに発生した苔を効果的に除去し外壁等を痛めることなく、また、除去溶液の定着時間を長くして立面や傾斜面でもより効果的に除苔が出来、なお且つ低価格で行える苔の除去方法の提供を課題とするものである。
【解決手段】水と塩化ベンザルコニウムと合成洗剤を混合して除去溶液を得る混合工程と、該混合工程で得られた除去溶液を前記苔の発生個所に泡状で塗布する塗布工程と、所定の時間放置しておく浸け置き工程と、除去溶液を洗い流すすすぎ行程とから成り、前記除去溶液は前記水、前記塩化ベンザルコニウム、前記合成洗剤を混合したものであり、前記合成洗剤が脂肪酸アルカノールアミドによる界面活性剤を20~38%含有することから前記除却溶液を泡状にし、脂肪酸アルカノールアミドによる界面活性剤を20~38%含有する前記合成洗剤を混入することによって前記除却溶液を泡状にし、付着状態を保持する構成を採用する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外壁(G)、塀(H)、屋根(Y)に発生した苔(K)を除去する除去方法であって、
水(10)と塩化ベンザルコニウム(20)と合成洗剤(30)を混合して除去溶液を得る混合工程Aと、
該混合工程Aで得られた除去溶液(40)を前記苔(K)の発生個所に泡状で塗布する塗布工程B1と、
所定の時間放置しておく浸け置き工程Cと、
除去溶液(40)を洗い流すすすぎ行程Dとから成り、
前記除去溶液(40)は前記水(10)、前記塩化ベンザルコニウム(20)、前記合成洗剤(30)を混合したものであり、前記合成洗剤(30)が脂肪酸アルカノールアミド(21)による界面活性剤を20~38%含有することから前記除却溶液(40)を泡状にし、付着状態を保持することを特徴とする苔の除去方法(1)。
【請求項2】
外壁(G)、塀(H)、屋根(Y)に発生した苔(K)を除去する除去方法であって、
水(10)と塩化ベンザルコニウム(20)と合成洗剤(30)を混合して除去溶液(40)を得る混合工程Aと、
該混合工程Aで得られた前記除去溶液(40)を噴霧器(F)により苔(K)の発生個所に泡状で塗布する塗布工程B2と、
所定の時間放置しておく浸け置き工程Cと、
前記除去溶液(40)を洗い流すすすぎ行程Dとから成り、
前記除去溶液(40)は前記水(10)、前記塩化ベンザルコニウム(20)、前記合成洗剤(30)をそれぞれが80:15:5で混合したものであり、前記合成洗剤(30)が脂肪酸アルカノールアミド(21)による界面活性剤を20~38%含有する前記合成洗剤(30)を混入することによって前記除却溶液(40)を泡状にし、付着状態を保持することを特徴とする苔の除去方法(2)。
【請求項3】
外壁(G)、塀(H)、屋根(Y)に発生した苔(K)を除去する除去方法であって、
塩化ベンザルコニウム(20)と合成洗剤(30)を混合して除去溶液(40)を得る混合工程Aと、
該混合工程Aで得られた前記除去溶液(40)を収容した洗剤容器(41)を備える吸い上げ式の高圧洗浄機(S)により前記苔(K)の発生個所に泡状で塗布する塗布工程B3と、
所定の時間放置しておく浸け置き工程Cと、
前記除去溶液(40)を洗い流すすすぎ行程Dとから成り、
前記除去溶液(40)の混合比率が水(10)、塩化ベンザルコニウム(20)、合成洗剤(30)をそれぞれが80:15:5で混合したものであり、前記合成洗剤(30)が脂肪酸アルカノールアミド(21)による界面活性剤を20~38%含有する前記合成洗剤(30)を混入することによって前記除却溶液(40)を泡状にし、付着状態を保持することを特徴とする苔の除去方法(3)。
【請求項4】
請求項1に記載の前記苔(K)の除去方法に用いられる前記除去溶液(40)であって、
前記除去溶液(40)の混合比率が前記水(10)、前記塩化ベンザルコニウム(20)、前記合成洗剤(30)それぞれが80:15:5であり、前記合成洗剤(30)が脂肪酸アルカノールアミドによる界面活性剤を20~38%含有するものであることを特徴とする苔の除去溶液(40)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の外壁や或いは塀や屋根に発生した苔を除去する技術に関し、詳しくは塩化ベンザルコニウムが苔を死滅させる効果があることに着目して、苔を効果的に除去する除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
苔は、落ち着いた色合いやしっとりとした趣、静かな存在感が魅力であり、従来から盆栽等に用いられ、近年では、苔のアクアリウムやテラリウム、又はアートに於いても利用されるようになっている。また、苔は、一般の植物と少々異なる特徴や効果があるため、観賞用だけでなく社会に役立つ植物としての活躍も期待できるものである。
【0003】
しかしながら、他方では、建物に付着する苔が美観を損ない、外壁などの劣化の原因となったり、日陰の駐車場などに発生した苔により、歩行者が滑って転倒してしまうなどの要因ともなり得る。壁や屋根を塗り替えるリフォームの際には、先に苔を落とす必要があり、現在では高圧洗浄機を用いて除去作業を行うことが多い。しかしながら、高圧洗浄器を使用すると僅かな隙間でも浸水し、却って木材等の劣化を促進させてしまったり、長い乾燥工程を経ないと塗装工程に入れず作業時間が延びるなどの弊害もある。最近、塩化ベンザルコニウムが苔を死滅させる効果があることが知られるようになり、係る塩化ベンザルコニウムを主成分とする苔専用の除去剤が市販されるようになってきている。しかし、これらは外壁や塀などの立面、屋根などの傾斜面では薬液が垂れてしまい、苔を死滅させるには付着性の問題を有しているのが明らかである。さらに、かかる薬液は専用薬剤としてコスト高になるという問題も残しているため、塗り替えの際の苔の除去作業において、より効率的で安価な手段の早期提供が求められている。
【0004】
そこで、従来からも、種々の技術提案がなされてきた。例えば、発明の名称を「有色カビの除去方法」とする技術が開示されている(特許文献1参照)。具体的には、「建築物における内外装の天板や壁面等に菌糸成長した真菌、特にカビ(黴)胞子内で産生された色素による汚れを、布等による通例の清拭や高圧水洗浄等の簡易な方法によって完全除去し、原状復帰させることを可能にする。」ことを課題とし、解決手段としては「pH緩衝性を持たせたpH=5~6及び有効塩素濃度100~1000mg/Lの次亜塩素酸水溶液をカビが発生した建築物の内外装及び調度品・備品の表面に噴霧して風乾した後、pH=7~8及び有効塩素濃度100~1000mg/Lのモノクロラミン水溶液を再度噴霧して風乾する、建築物内外装面の有色カビ汚れの剥離方法。又、建築物内外装面の抗カビ処理状況に応じて該2液処理を繰り返し、最終的に該次亜塩素酸水溶液を浸み込ませた布又はペーパータオルで浮き出た有色のカビ残渣を清拭する。」というものである。しかしながら、特許文献1に記載の発明は、次亜塩素酸水溶液を噴霧した後に風乾し、これを繰り返し行うため、工程が多く作業時間がかかるという問題を残している。
【0005】
また、発明の名称を「衣料、建築物内外装材用漂白剤の高濃度安定化方法及び処理方法」とする技術が開示されている(特許文献2参照)。具体的には、「白物衣料の及び建築物における内外装の天板や壁面等に生えてしまったカビによる汚れを、素材を損傷することなく漂白する薬剤および原状回復方法。」ことを課題とし、解決手段を「pH=8.0~10.4に調節し、且つ、錯結合形成物質の添加により有効塩素濃度2,001mg/L以上の高濃度で安定化させたモノクロラミンを有効成分とする一次漂白剤を対象物の深部まで失活することなく浸透させ、有効塩素濃度500~30,000mg/Lの塩素化イソシアヌル酸水溶液、又は、使用の直前にpH=5.0~7.0に調節した有効塩素濃度500~30,000mg/Lの次亜塩素酸塩水溶液で引き続き処理して、一次漂白剤成分と二次漂白剤成分とが反応する過程で塩素化とジクロラミンの自然分解を起こさせると共に深部に再生する次亜塩素酸の強い酸化力によって漂白速度を顕著に速める一次及び二次漂白剤の調製方法及び液中の化学反応進行を応用した原状回復方法。」である。しかしながら、特許文献2に記載の技術は、特許文献1と同様次亜塩素酸を持ちるもので、外壁の縦面や屋根の傾斜面等の定着性については工夫が何らなされておらず、薬剤が垂れてしまうことについて課題を残しているといえる。
【0006】
また、発明の名称を「建物外壁の洗浄方法」とする技術が開示されている(特許文献3参照)。具体的には、「建物外壁表面の風合いを損なうことなく、外壁洗浄作業の作業性を向上させることのできる洗浄方法を提供すること。」を課題とし、解決手段としては「本発明の建物外壁の洗浄方法は、透明なゲル状洗浄材料を建物の外壁表面の汚れ部分に直接塗布する工程と、汚れ部分を水洗することによりゲル状洗浄材料を取り除く工程とを有するものである。透明なゲル状洗浄材料を建物外壁の汚れ部分に直接塗布するようにしたことで、洗浄の進捗状況を直接目視で確認することができるため、作業性を向上させることができる。」というものである。しかしながら、特許文献3に記載の技術は、洗浄剤が汚れた部分に付着しやすいようにするという点で本発明と共通する。しかしながら、特許文献3の技術では増粘剤を用いてゲル状洗浄剤としていることから、増粘剤の入手の容易性やコストといった問題を解決することができていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2018-16550号
【特許文献2】特開2019-196578号
【特許文献3】特開2009-256434号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、外壁や屋根、塀などに発生した苔を効果的に除去し、外壁等を痛めることなく、また、除去溶液の定着時間を長くして立面や傾斜面でもより効果的に除苔ができ、なお且つ低コストで行える苔の除去方法の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、外壁、塀、屋根に発生した苔を除去する除去方法であって、水と塩化ベンザルコニウムと合成洗剤を混合して除去溶液を得る混合工程と、該混合工程で得られた除去溶液を前記苔の発生個所に泡状で塗布する塗布工程と、所定の時間放置しておく浸け置き工程と、除去溶液を洗い流すすすぎ行程とから成り、前記除去溶液は前記水、前記塩化ベンザルコニウム、前記合成洗剤を混合したものであり、前記合成洗剤が脂肪酸アルカノールアミドによる界面活性剤を20~38%含有することから前記除却溶液を泡状にし、付着状態を保持する構成を採用した。
【0010】
また、本発明は、外壁、塀、屋根に発生した苔を除去する除去方法であって、水と塩化ベンザルコニウムと合成洗剤を混合して除去溶液を得る混合工程と、該混合工程で得られた前記除去溶液を噴霧器Fにより苔の発生個所に泡状で塗布する塗布工程と、所定の時間放置しておく浸け置き工程と、除去溶液を洗い流すすすぎ行程とから成り、前記除去溶液は前記水、前記塩化ベンザルコニウム、前記合成洗剤をそれぞれが80:15:5で混合したものであり、前記合成洗剤が脂肪酸アルカノールアミドによる界面活性剤を20~38%含有する前記合成洗剤を混入することによって前記除却溶液を泡状にし、付着状態を保持する構成を採用することもできる。
【0011】
また、本発明は、外壁、塀、屋根に発生した苔を除去する除去方法であって、塩化ベンザルコニウムと合成洗剤を混合して除去溶液を得る混合工程と、該混合工程で得られた前記除去溶液を収容した洗剤容器を備える吸い上げ式の高圧洗浄機により前記苔の発生個所に泡状で塗布する塗布工程と、所定の時間放置しておく浸け置き工程と、前記除去溶液を洗い流すすすぎ行程とから成り、前記除去溶液の混合比率が水、塩化ベンザルコニウム、合成洗剤をそれぞれが80:15:5で混合したものであり、前記合成洗剤が脂肪酸アルカノールアミドによる界面活性剤を20~38%含有する前記合成洗剤を混入することによって前記除却溶液を泡状にし、付着状態を保持する構成を採用することもできる。
【0012】
また、請求項1に記載の前記苔Kの除去方法に用いられる前記除去溶液であって、前記除去溶液の混合比率が前記水、前記塩化ベンザルコニウム、前記合成洗剤それぞれが80:15:5であり、前記合成洗剤が脂肪酸アルカノールアミドによる界面活性剤を20~38%含有する構成を採用することもできる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る苔の除去方法によれば、専用の除苔剤を購入する必要がなく、低コストで苔を除去することが可能となるという優れた効果を発揮する。
【0014】
また、本発明に係る苔の除去方法によれば、塩化ベンザルコニウムの殺菌作用により環境を破壊することなく極めて安全性が高いもので苔を除去できるという優れた効果を発揮する。
【0015】
また、本発明に係る苔の除去方法によれば、外壁や屋根、塀などの立面に発生した苔、及び屋根の斜面に発生した苔についても泡付き性の良いことから付着時間が長く殺菌効果が得られるという優れた効果を発揮する。
【0016】
また、本発明に係る苔の除去方法によれば、界面活性剤に含まれる洗剤を用いることで泡の耐久性が大きく殺菌効果が保持されやすいということから頑固な苔も除去できるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る苔の除去方法を説明するフローチャートである。
図2】本発明に係る苔の除去方法において高圧洗浄機を利用する実施例説明図である。
図3】本発明に係る苔の除去方法において噴霧器を利用する実施例説明図である。
図4】本発明に係る苔の除去状態を示す実施状態説明図である。
図5】本発明に係る苔の除去状態を示す別の実施状態説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る苔の除去方法とこれを利用した苔の除去方法1は、外壁、塀、屋根に発生した苔を除去する除去方法であって、水と塩化ベンザルコニウムと合成洗剤を混合して除去溶液を得る混合工程と、該混合工程で得られた除去溶液を前記苔の発生個所に泡状で塗布する塗布工程と、所定の時間放置しておく浸け置き工程と、除去溶液を洗い流すすすぎ行程とから成り、前記除去溶液は前記水、前記塩化ベンザルコニウム、前記合成洗剤を混合したものであり、前記合成洗剤が脂肪酸アルカノールアミドによる界面活性剤を20~38%含有することから前記除却溶液を泡状にし、付着状態を保持する構成を採用したことを最大の特徴とするものである。以下、図面に基づいて説明する。但し、係る図面に記載された形状や構成に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の創作として発揮する効果の得られる範囲内で変更可能である。
【0019】
図1は、本発明に係る苔の除去方法を説明するフローチャートであり、図1(a)は、混合工程と、塗布工程と、浸け置き工程と、すすぎ工程から成ることを示し、図1(b)は、混合工程において水と塩化ベンザルコニウムと合成洗剤を混合する際に噴霧器又は高圧洗浄機を用いる工程のフローチャートを示している。次に、苔の除去方法の各構成について説明する。
【0020】
苔の除去方法1は、外壁G、塀H、屋根Yに発生した苔Kを除去する除去方法であって、水10と塩化ベンザルコニウム20と合成洗剤30を混合して除去溶液40を得る混合工程Aと、該混合工程Aで得られた除去溶液40を前記苔Kの発生個所に泡状で塗布する塗布工程B1と、所定の時間放置しておく浸け置き工程Cと、除去溶液40を洗い流すすすぎ行程Dとから成り、前記除去溶液40は前記水10、前記塩化ベンザルコニウム20、前記合成洗剤30を混合したものであり、前記合成洗剤30が脂肪酸アルカノールアミド21による界面活性剤を20~38%含有することから前記除却溶液40を泡状にし、付着状態を保持するというものである。
【0021】
苔の除去方法2は、外壁G、塀H、屋根Yに発生した苔Kを除去する除去方法であって、水10と塩化ベンザルコニウム20と合成洗剤30を混合して除去溶液40を得る混合工程Aと、該混合工程Aで得られた前記除去溶液40を噴霧器Fにより苔Kの発生個所に泡状で塗布する塗布工程B2と、所定の時間放置しておく浸け置き工程Cと、除去溶液40を洗い流すすすぎ行程Dとから成り、前記除去溶液40は前記水10、前記塩化ベンザルコニウム20、前記合成洗剤30をそれぞれが80:15:5で混合したものであり、前記合成洗剤30が脂肪酸アルカノールアミドによる界面活性剤を20~38%含有する前記合成洗剤30を混入することによって前記除却溶液40を泡状にし、付着状態を保持するものである。
【0022】
苔の除去方法3は、外壁G、塀H、屋根Yに発生した苔Kを除去する除去方法であって、塩化ベンザルコニウム20と合成洗剤30を混合して除去溶液40を得る混合工程Aと、該混合工程Aで得られた前記除去溶液40を収容した洗剤容器41を備える吸い上げ式の高圧洗浄機Sにより前記苔Kの発生個所に泡状で塗布する塗布工程B3と、所定の時間放置しておく浸け置き工程Cと、前記除去溶液40を洗い流すすすぎ行程Dとから成り、前記除去溶液40の混合比率が水10、塩化ベンザルコニウム20、合成洗剤30をそれぞれが80:15:5で混合したものであり、前記合成洗剤30が脂肪酸アルカノールアミド21による界面活性剤を20~38%含有する前記合成洗剤30を混入することによって前記除却溶液40を泡状にし、付着状態を保持するものである。
【0023】
外壁Gは、室内と外界との境にある壁を言い、建物の四方を囲うもののことである。また、外壁Gは風雨に晒される場所であるため、耐火性や断熱性、耐水性、防火性、そして地震が多い日本では耐震性など、あらゆる特性が求められる部分といえる。外壁Gにおける技術開発が進んでいるので、外壁工事の際には、場所や環境などを考慮して、高性能で、かつデザイン性に優れた素材の中で、最も適切な物を選ぶことが可能となっており、外壁材には、安価で工事が簡単というメリットのある「サイディングボード」がよく用いられており、その種類は、大きく分けると金属系や木質系、窯業系の3つに分けられ、金属系は耐久性、木質系は断熱性、窯業系は耐火性に優れているなどそれぞれに特徴を有している。
【0024】
苔自身も湿度を保ち続ける性質があるため、一旦発生してしまうと外壁Gに水分が付着し続けた状態になる。係る水分が多い状態が続くと、金属系サイディングでは錆につながり、窯業系サイディングの場合もコーキング材の劣化へと繋がってしまう。外壁材やコーキングの劣化が進むと、外壁内の内側に湿気が入り込み、躯体の腐食などに繋がり、住まいにダメージを与えてしまう。また、外壁Gには、サイディングボード以外にもコンクリート打ちっ放しやタイル、塗り壁など、さらにいろいろな選択肢があり、施主にとってデザインを選びやすい部分ともいえる。しかし、苔の発生は素材よりも近くの自然環境、湿度、日当たりや風通しの善し悪し等の方に影響され易く、例えば高い塀に囲まれて日当たりの悪い場所や、隣家と密接している住宅街などでは、外壁Gに苔Kや藻が発生しやすくなる。
【0025】
塀Hは、家や敷地などにおいて、他との境界に設置する囲いのことで、区画、目隠し、防火、侵入防止の目的で設けられる工作物、障壁である。
【0026】
屋根Yは、建物の上方にあり、雨や露を防ぐだけでなく壁や床などとともに建築空間を囲う役割を果たしているものである。居住空間を包む外周部(外皮)の一部である。
【0027】
苔Kは、蘚せん類・苔たい類などの苔K植物や、地衣類・シダ類、種子植物のごく小形のものなどの総称のことであり、湿地や岩石・樹木などに生え、葉状または丈の低い草状をしている物である。苔Kは日本庭園や盆栽で利用され、屋上緑化にも使われるが、本発明においては、建物、特に壁や屋根などにはびこってしまい除去する対象となる苔Kのことを指す。建物に苔Kがはびこる原因として、太陽光が当たりにくく湿気が溜まりやすい北側の日陰などでは、苔Kが育つために必要な光と湿気の条件が揃うため繁殖しやすくなる。苔Kは、胞子が外壁に付着することで繁殖する。したがって、自然に近い環境であるほど多く発生するため、山に囲まれている地域などでは苔Kが発生しやすくなるといえる。また、外壁に凹凸が多いと水が溜まりやすくなり、苔Kが繁殖する原因となる。
【0028】
水10は、本発明においては、特に純水や真水などでなくてもよく、通常の水道からで水でよい。
【0029】
塩化ベンザルコニウムは、陽イオン界面活性剤の一種であり、水溶液は日本薬局方収載医薬品で逆性石鹸として殺菌・消毒用に用いられる。消毒薬として本物質を有効成分とする逆性石鹸液は、オスバン、ヂアミトールなどの商品名で50%、10%、ほか低濃度の水溶液が市販されている。塩化ベンザルコニウムは、細菌細胞膜のリン脂質に吸着し細胞膜の流動性を増加させ細胞膜をバーストさせる。細胞膜の酵素機能を不活性化する。また、細胞のタンパク質を変性させることによって、殺菌性を発揮する。以上は界面活性剤タイプの消毒剤に共通の作用機序と考えられている。
【0030】
なお、殺菌消毒剤としてのベンザルコニウム塩化物液は、細菌・真菌類に抗菌作用があり、「逆性石鹸」と呼ばれている。普段使う石鹸は、水を使って泡立てて、汚れを落とす働きがあり、水で薄めることによって、細菌やカビ細胞を破壊させて殺菌、消毒する効果を発揮する。ベンザルコニウム塩化物液の用法として、手指の殺菌消毒では100~200倍に希釈して利用され、家屋、乗物などの消毒には200~500倍に希釈して利用される。ベンザルコニウム塩化物液は殺菌消毒剤で、価格は500ml入り約500円で薬局で購入できる。外壁の緑苔掃除用の除去剤を作る時は約10倍程度に薄めるので、500円で5L作ることが可能であり経済的である。
【0031】
合成洗剤30は、液性と呼ばれる性質があり、「酸性」、「中性」、「アルカリ性」の大きく3つに分類される。それがパッケージにも記載されていて、合成洗剤30が中性かアルカリ洗剤等かどうかを見分ける基準になる。液性は0から14までのpHという数値を用いてグループ分けされていて、0に近いほど「酸性」が強く、14に近いほど「アルカリ性」が強いことを表し、その中間にあたる、6以上8以下が「中性」である。これは、合成洗剤30に含まれている「界面活性剤」という成分のおかげであり、係る界面活性剤は、本来は混じり合うことのない水と油を混ぜ合わせる働きがあるので、油汚れを浮かせて水で洗い流せるようにしてくれるというものである。
【0032】
苔Kの除去作業において、洗剤の「泡」は作業効率に大きな影響を与え、泡切れがよければ、すすぎが速くでき、作業時間の短縮につながる。しかしながら、本発明では、泡切れの悪さも、言い換えれば泡持ちの良さとしてプラスの要素となり、特に、外壁など立面では、泡持ちが良ければ、定着時間が長くなり、塩化ベンザルコニウムによる苔Kへの死滅効果を高めることができる。
【0033】
洗剤の泡立ち方は、洗剤に含まれている界面活性剤によって決まり、含まれている界面活性剤の種類と、その界面活性剤の配合割合が分かれば、どんな「泡」がでるのかが大よそ把握できる。そこで、特に泡立ちに大きな影響を与える2種類の界面活性剤の泡の特徴について実験した。一つは脂肪酸カリウムで、もう一つは脂肪酸アルカノールアミドである。脂肪酸カリウムとは、水石けんのことで、家庭用品質表示法では、「石けん」と「界面活性剤」は、別物と表記しないといけなくなっているが、石けんも立派な界面活性剤であり、その脂肪酸カリウムの泡の大きな特徴は、泡立ち豊かで、泡切れが良く、泡にスタミナがない。(泡もちが悪い)というものである。そのため、基本的には、スプレーで洗浄したり、洗浄機などで発泡洗浄したりするときに最適となる。壁面にも、泡が定着しやすく、しっかり汚れを包み込んでくれ、その他の洗浄成分が働きやすくなる。また、石けんはアルカリ環境でなければ洗浄力を発揮できないので、基本は、アルカリ洗浄剤に使用される。
【0034】
次に、脂肪酸アルカノールアミドは、「ヤシ油脂肪酸アルカノールアミド」、「脂肪酸ジエタノールアミド」、「ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド」と表記される場合があるが、すべて同じものである。脂肪酸アルカノールアミドの泡の特徴は、何といってもスタミナのある泡で、非常に泡もちが良く、泡の状態を長くキープできるという点である。従って、本発明に係る苔Kの除去方法1で利用する除去溶液40に混入させる洗剤の主成分を成す界面活性剤として好適であることが分かった。
【0035】
ここで、本発明に係る苔の除去方法に用いる合成洗剤30として市販されているものを液性と成分毎に示す。中性洗剤であるキュキュット(登録商標)(花王株式会社)では、界面活性剤(37%、高級アルコール系(陰イオン)、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム)であり、チャーミーVクイック(登録商標)(ライオン株式会社)では界面活性剤(23% アルファオレフィンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレン脂肪酸アルカノールアミド、アルキルアミンオキシド)であり、マジカ(登録商標)(ライオン株式会社)では、界面活性剤(32%アルキルアミンオキシド、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、アルキルスルホン酸ナトリウム)である。液性が弱アルカリ性のjoy(登録商標)(プロクター・アンド・ギャンブル)では、界面活性剤(33%、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、アルキルアミンオキシド)となっている。
【0036】
除去溶液40は、混合比率が水10、塩化ベンザルコニウム20、合成洗剤30それぞれが80:15:5で構成される苔を殺菌し、除去しやすくする混合液であり、請求項1に記載の前記苔Kの除去方法に用いられる前記除去溶液40であって、前記除去溶液40の混合比率が前記水10、前記塩化ベンザルコニウム20、前記合成洗剤30それぞれが80:15:5であり、前記合成洗剤30は脂肪酸アルカノールアミドによる界面活性剤を20~38%含有するものである。
【0037】
混合工程Aは、外壁G、塀H、屋根Yに発生した苔Kを除去する除去方法において、苔Kを死滅させるために用いる薬剤である、水10と塩化ベンザルコニウム20と合成洗剤30を混合して除去溶液40を得る工程である。具体的に例えば、水10と、塩化ベンザルコニウム20と、合成洗剤30をバケツのような容器に所定の割合で注ぎ入れ、泡が立つ程度に撹拌する。
【0038】
塗布工程B1は、除去溶液40を前記苔Kの発生個所に泡状で塗布する工程である。具体的に例えば、混合工程によって得られた除去溶液40をじょうろ等で散布し、苔Kに十分な量の除去溶液40を与えるものである。なお、流し込んだだけでは泡立たないため、ブラシ等でこすって泡立たせることが望ましい。
【0039】
塗布工程B2は、混合工程Aで得られた除去溶液40を噴霧器Fにより苔Kの発生個所に泡状で塗布する工程である。具体的に例えば、フォームノズルの付いた噴霧器を用いて泡状で噴射させることによって泡状に除去溶液40を付着させる。
【0040】
塗布工程B3は、混合工程Aで得られた除去溶液40をコンプレッサー式のフォームガンや吸い上げ式の高圧洗浄機Sにより苔Kの発生個所に泡状で塗布する工程である。具体的に例えば、水流の速度差による圧力変化から洗剤容器41に収容された除去用材40を吸い上げて混合し噴射する構造の泡状洗浄ノズルを有する高圧洗浄機Sを用いて、泡状で塗布することが考えられる。
【0041】
浸け置き工程Cは、苔Kに泡状で塗布した除去溶液40を所定の時間放置しておく浸け置きをする工程である。本発明に係る苔Kの除去方法では少なくとも24時間以上付け置くことが望ましい。
【0042】
すすぎ工程Dは、苔Kに泡状で塗布した除去溶液40を、洗い流す行程である。ここで、高圧洗浄器Sを用いる場合はノズルから所定の距離を取り、すすぎ流すように注意する。余り高圧水噴射によるすすぎは被洗浄物への浸水などを発生させる可能性があるので特に屋根や木質塀では注意が必用である。
【0043】
高圧洗浄機Sは、苔Kに除去溶液40を泡状で塗布するために、又はすすぎ行程において洗浄のために用いる装置のことである。係る高圧洗浄機Sは、電気式やガソリンエンジン式で高圧の水を噴射する洗浄機で、冷水のものと温水のものがある。家庭用のものは、主に屋外設備の洗浄や洗車などの清掃に用いられ、草花の水やりに使用する場合もある。家庭用の高圧洗浄機の普及に伴い、業者に頼らなくても簡単に清掃が行えるようになった。蛇口から直接ホースを繋ぐ場合よりも、吐出水量を節約できることをうたう機種もある。業務用では水の温度と共に、ノズルや添加する研磨剤等を使い分けることで、対象物への損傷を防いだり、金属系の錆を落とすことが可能なものも存在する等、多様化に対応している。本発明に係る苔Kの除去方法では、洗剤に含まれる界面活性剤及びフォームノズルを用いることで、より泡立ちと泡持ちの良い泡状塗布が可能である。
【0044】
噴霧器Fは、苔Kに除去溶液40を泡状で塗布するために用いる装置のことである。ノズルは空気を混入し、泡沫上の小さな泡となって対象物に的確に除去溶液40を塗布可能な泡状噴霧用のラウンドノズルを用いることが望ましい。
【0045】
洗剤容器41は、高圧洗浄機Sに取り付けて除去溶液40を吸い上げるための容体のことである。
【0046】
図2は、本発明に係る苔の除去方法3において、高圧洗浄機Sを利用した構成を説明する実施例説明図であり、高圧洗浄機Sを利用する場合には、混合工程Aで洗剤を別個独立に混合する必要がなく、水10を噴射する際(塗布工程B)に、ノズルの近傍に取り付けた洗剤容器41の中の除去溶液40が混合されてノズルからの噴射により泡状で噴射され、狙った位置に十分に除去溶液40を無駄なくかけることができるということを示している。
【0047】
図3は、本発明に係る苔Kの除去方法2において噴霧器Fを利用する実施例説明図であり、本発明に係る苔Kの除去方法3における高圧洗浄機Sとは異なり、専用の洗剤容器41から吸い上げる等の圧力を発生させるほどの力が無いため、噴霧器Fを利用する場合には混合工程Aで水10と塩化ベンザルコニウム20に合成洗剤30を混合しておく必要がある。特に図3に示した様な家庭的に用いられる農薬や消毒液の散布用の噴霧器Fでは力が足りず、泡立ちが悪く噴霧器Fそのものに負担を掛けてしまうことにもなりかねない。したがって、エンジン式の噴霧器Fやコンプレサーを駆動して圧縮力を得るタイプのものを用いることが望ましい。図3は、図2同様、混合された除去溶液40がノズルからの噴射により泡状で噴射され、狙った位置に十分に除去溶液40を無駄なくかけることができるということを示している。
【0048】
図4は、本発明に係る苔Kの除去状態を示す実施状態説明図である。
図4(a)は、エアコンの室外機上面に緑色の苔Kが繁殖した状態を示し、図4(b)は、本発明に係る苔Kの除去方法における浸け置き工程Cまでの処理を終えた後のエアコン室外機の上面を表している。図面では分かりにくいが、施工前は上面全体が緑色がかった色を有していたが、除去溶液40を塗布して24時間後には黒く変色した残渣が残る程度で、すすぎ工程Dにおいて水で流すか、若しくはウエス等で軽く拭き上げることが可能な状態を示したものである。なお、係る残渣をすすぎ流した状態のエアコン室外機の上面は、図5(b)に示す。
【0049】
具体的には、エアコンの室外機上面にびっしりと緑色の苔Kが繁殖した状態と、混合工程Aで作った除去溶液40をまんべんなくかかるように、たっぷり塗布し24時間放置した後の状態とを比較したものである。図4(a)に現れていた緑色の苔Kが、図4(b)に表されるように黒っぽくなり、殺菌消毒されて、苔Kが死滅した様子が見て取れる。水10を含ませたスポンジで拭くと、苔Kの汚れが力を入れることなく容易に取れた(図5(b)参照)。黒い汚れを全部取り、除去溶液40と塗布した部分に水10をかけて洗い流し、乾燥させて苔Kの除去作業が完了する。
【0050】
図5は、本発明に係る苔Kの除去状態を示す別の実施状態説明図である。
図5(a)は、外壁Gに緑色の苔Kが繁殖した状態を示し、図5(b)は、本発明に係る苔Kの除去方法におけるすすぎ工程Dまでの処理を終えた後の外壁Gを表している。図面では分かりにくいが、施工前は壁の全体に緑色がかった色を有していたが、除去溶液40の壁面への付着状態も良好であり、塗布して24時間後には黒く変色した残渣が残る程度で、すすぎ工程Dにおいて水で流しただけで綺麗に苔Kが除去できた状態が示されている。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明に係る苔の除去方法によれば、外壁、屋根や塀などに発生・付着した苔Kを効率よく死滅、除去することができることから、リフォーム業等を営む多くの方々の利用が期待でき、産業上利用可能性は高いと思慮されるものである。

【符号の説明】
【0052】
1 苔の除去方法
2 苔の除去方法
3 苔の除去溶液
10 水
20 塩化ベンザルコニウム
21 脂肪酸アルカノールアミド
30 合成洗剤
40 除去溶液
41 洗剤容器
G 外壁
H 塀
Y 屋根
K 苔
A 混合工程
B1 塗布工程
B2 塗布工程
B3 塗布工程
C 浸け置き工程
D すすぎ行程
S 高圧洗浄機
F 噴霧器
図1
図2
図3
図4
図5