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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136737
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】鍵盤楽器
(51)【国際特許分類】
   G10H 1/32 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
G10H1/32 Z
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047951
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002022
【氏名又は名称】弁理士法人コスモ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今村 尚人
【テーマコード(参考)】
5D478
【Fターム(参考)】
5D478JJ11
(57)【要約】
【課題】鍵盤部を楽器ケースに良好に組立て可能な小型の鍵盤楽器を提供する。
【解決手段】鍵盤楽器10は、前板210と、棚板220と、前板210と棚板220を互いに固定する接続部材であって、鍵の長手方向(前後方向FB)の後側Bに向けて突出するフック部201cを含む接続部材である前接続部材201と、を有する楽器ケース200と、係止部としての係止板510を有し、フック部201cと棚板220との間に係止板510が配置されている状態で、楽器ケース200に固定されている鍵盤部50と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前板と、棚板と、前記前板と前記棚板を互いに固定する接続部材であって、鍵の長手方向の後側に向けて突出するフック部を含む接続部材と、を有する楽器ケースと、
係止部を有し、前記フック部と前記棚板との間に前記係止部が配置されている状態で、前記楽器ケースに固定されている鍵盤部と、
を備える鍵盤楽器。
【請求項2】
前記係止部は、鍵の配列方向に延在する係止板と、前記係止板より前記棚板側に突出して前記棚板と当接する当接突起と、を含む、
請求項1に記載の鍵盤楽器。
【請求項3】
前記鍵盤部は、前記係止部の上側に前記係止部と平行な板状の補強板と、前記補強板と前記係止部間を支持する柱状部と、を備える、
請求項1に記載の鍵盤楽器。
【請求項4】
前記フック部は、弾性部材を備え、
前記弾性部材が前記係止部と接触している、
請求項1に記載の鍵盤楽器。
【請求項5】
前記鍵盤部は、鍵盤シャーシと、前記鍵盤シャーシの内部空間に挿入される第1挿入部を有し前記鍵盤シャーシの内部で篏合するマウント部材と、を備える、
請求項1に記載の鍵盤楽器。
【請求項6】
前記第1挿入部は、テーパ状に設けられる、
請求項5に記載の鍵盤楽器。
【請求項7】
前記マウント部材は、ハンマー部材が載置されるハンマー部材支持部を有する、
請求項5に記載の鍵盤楽器。
【請求項8】
鍵の長手方向の後側で、前記鍵盤部と前記棚板を固定する固定部材であって、下向きに突出する第2挿入部を含む固定部材を有し、
前記鍵盤シャーシは、前記第2挿入部が挿入されている第2被挿入部を有する、
請求項5乃至請求項7の何れかに記載の鍵盤楽器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鍵盤楽器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、楽器ケースの下面を備える棚板に、複数の鍵を備える鍵盤シャーシ等の鍵盤部が取り付けられた鍵盤楽器が提供されている。例えば、特許文献1には、楽器ケースと接続される連結バーが設けられた鍵盤シャーシを備える鍵盤楽器が開示されている。鍵盤シャーシの棚板に対する固定は、棚板の下面に取り付けられる補強用のリブを介して、棚板の下面側からねじ部材を取り付けることで行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-047837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
棚板の下面側からねじ部材を組み付けるには、楽器ケースを反転させたり、楽器ケースの下側に潜り込んでねじ締め作業を行ったりする必要があり、組立作業がし難いことがある。一方、棚板に鍵盤シャーシを載置して上側からねじ部材を取り付けるように構成すると、そのためのスペースが必要となり、楽器ケース、ひいては鍵盤楽器が大型化してしまうことがある。
【0005】
本発明は、鍵盤部を楽器ケースに良好に組立て可能な小型の鍵盤楽器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る鍵盤楽器は、前板と、棚板と、前記前板と前記棚板を互いに固定する接続部材であって、鍵の長手方向の後側に向けて突出するフック部を含む接続部材と、を有する楽器ケースと、係止部を有し、前記フック部と前記棚板との間に前記係止部が配置されている状態で、前記楽器ケースに固定されている鍵盤部と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、鍵盤部を楽器ケースに良好に組立て可能な小型の鍵盤楽器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る鍵盤楽器を示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る鍵盤楽器の図1のII-II断面図である。
図3】本発明の実施形態に係る鍵盤楽器の前板と棚板を組み合わせた状態を後側から見た斜視図である。
図4】本発明の実施形態に係る鍵盤楽器の鍵盤シャーシを前側から見た斜視図である。
図5】本発明の実施形態に係る鍵盤楽器の鍵盤シャーシを後側から見た斜視図である。
図6】本発明の実施形態に係る鍵盤楽器のマウント部材を前上側から見た斜視図である。
図7】本発明の実施形態に係る鍵盤楽器のマウント部材を後下側から見た斜視図である。
図8】本発明の実施形態に係る鍵盤楽器の組立方法の説明図であって、前板が接続された棚板にマウント部材を載置した状態を示す平面図である。
図9】本発明の実施形態に係る鍵盤楽器の組立方法の説明図であって、図8のマウント部材に複数の鍵を支持する鍵盤シャーシを嵌合させる様子を示す図8のIX-IX断面に相当する断面図である。なお、複数の鍵は断面とせず、基板やスイッチ等、一部の部材は省略されている。
図10】本発明の実施形態に係る鍵盤楽器の組立方法の説明図であって、図8のマウント部材に複数の鍵を支持する鍵盤シャーシを載置して嵌合させた状態を示す平面図である。
図11】本発明の実施形態に係る鍵盤楽器の組立方法の説明図であって、マウント部材に鍵盤シャーシを載置して嵌合させた状態を示す図10のXI-XI断面に相当する断面図である。なお、複数の鍵は断面とせず、基板やスイッチ等、一部の部材は省略されている。
図12】本発明の実施形態に係る鍵盤楽器の組立方法の説明図であって、図11の状態から鍵盤部を前進させた状態を示す、図10のXI-XI断面に相当する断面図である。なお、複数の鍵は断面とせず、基板やスイッチ等、一部の部材は省略されている。
図13】本発明の実施形態に係る鍵盤楽器の組立方法の説明図であって、鍵盤部を前側及び右側に移動して正規の位置とし、固定部材及び回転部材を取り付けた状態を示す平面図である。
図14】本発明の実施形態に係る鍵盤楽器の回転部材を下側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。図1に示すように、鍵盤楽器10は、楽器ケース200に、複数の白鍵300と複数の黒鍵400を含むフルサイズ(88鍵)の複数の鍵が設けられている。鍵盤楽器10は、楽器ケース200に着脱自在の譜面台30を有して、楽器スタンド20により支持されている。
【0010】
なお、以下の説明においては、複数の鍵(白鍵300、黒鍵400)の前後方向FBにおける前を前側F(y軸のプラス側)、鍵の前後方向FBの後を後側B(y軸のマイナス側)とし、鍵に向かって左を左側L(x軸のプラス側)、右を右側R(x軸のマイナス側)とする。鍵の配列方向LRは、左右方向である。また、鍵盤楽器10の上下方向ULにおいて上を上側Up(z軸のプラス側)、下を下側Lo(z軸のマイナス側)とする。
【0011】
複数の鍵(白鍵300、黒鍵400)の左側L及び右側Rには、前後方向に長い長矩形略箱状の左袖206、右袖207が設けられている。右袖207の上面には、ボリューム摘み208が設けられている。また、後述する楽器ケース200の前板210の右端近傍には、電源用の押し釦スイッチ209が設けられている。
【0012】
楽器スタンド20は、左右の側板21を有する。楽器スタンド20は、左右の側板21間に亘る後方下側には、鍵の配列方向LRに長い下梁部材22が設けられている。下梁部材22の鍵の配列方向LRの略中央部には、ペダル装置40が設けられている。下梁部材22の上側には、板状の上梁部材23が設けられている。鍵盤楽器10は、左右の側板21の上に固定されている。
【0013】
鍵盤楽器10の楽器ケース200は、左側面(左側の側板250の外側面)及び右側面(右側の側板250の外側面)が、楽器スタンド20の左右の側板21の外側面と連続するように設けられている。また、鍵盤楽器10の下面には、左右の側板21間に配置されるように下側に突出するスピーカカバー60が左右夫々に設けられている。
【0014】
図2に示すように、鍵盤楽器10の楽器ケース200には、複数の鍵(白鍵300、黒鍵400)の前側Fにおいて、鍵の配列方向LRに長い板状の前板210が設けられている。楽器ケース200の底部は、楽器ケース200の下面220aを有する棚板220が設けられている。前板210と棚板220は、側面視略L字状の接続部材としての前接続部材201により接続されている。
【0015】
前接続部材201は、板面を前後方向FBに向けた縦板201aと、板面を上下方向ULに向けた横板201bとを有する。縦板201aは、図3に示すように、ねじ孔201a1が複数設けられる。縦板201aは、各ねじ孔201a1を介して前板210とねじ部材3により固定されている。横板201bは、複数のねじ孔201b1を介してねじ部材4により棚板220と固定されている。
【0016】
横板201bには、略中央部に前後方向FBの幅が広い幅広部201b2が設けられている。また、横板201bには、複数のフック部201cが設けられている。フック部201cは、図2のM1部囲み図に示すように、横板201bから側面視クランク状に設けられ、鍵の長手方向(前後方向FB)の後側Bに向かって突出し、棚板220の上面から離間している。図3に示すように、フック部201cは、鍵の配列方向LRの長さを異ならせて、フック部F-1~F-7の7個配置されている。左右端側のフック部F-1,F-7は、他のフック部F-2~F-6よりも長く設けられている。楽器ケース200の左右端側は、撓み量が大きいため、フック部201cをより長く設けて撓みを抑制している。
【0017】
左側L端のフック部F-1、中央左側Lのフック部F-4、中央右側Rのフック部F-5、右側R端のフック部F-7には、シート状の弾性部材201dが、フック部201cを巻回するように設けられている(図2のM1囲み図参照)。フック部F-1,F-7の弾性部材201dは、フック部201cの長さに合わせて、フック部F-4,F-5の弾性部材201dよりも長く設けられている。弾性部材201dは、フェルト材や不織布により設けることができる。弾性部材201dは、楽器ケース200の鍵の配列方向LRの中央よりも左側L及び右側R寄りに設けられることで、鍵盤シャーシ500や前接続部材201の製造上の撓みが生じ易い左右端側の寸法公差を吸収することができる。
【0018】
棚板220の後端縁近傍には、複数の後下接続部材202が設けられている。一方、楽器ケース200には、複数の鍵(白鍵300、黒鍵400)の後側Bに、楽器ケース200の上面240aを有する上面板240が設けられている。上面板240の後端縁近傍には、複数の後上接続部材203が設けられている。後下接続部材202、後上接続部材203は、上下方向ULと前後方向FBに貫通するねじ孔を有して略L字状に設けられている。後下接続部材202は、棚板220に対して上側Upからねじ止めされ、後上接続部材203は、上面板240に対して下側Loからねじ止めされ固定されている。楽器ケース200には、後下接続部材202及び後上接続部材203の前後方向FBに貫通するねじ孔を介してねじ部材により固定される後板230が設けられている。後板230は、後下接続部材202、後上接続部材203に外側面からねじ止めして固定されている。
【0019】
楽器ケース200には、左右の側板250が設けられている。左右の側板250は、略L字状の板金部材とされる左後接続部材204、右後接続部材(不図示)により後板230と接続されている。また、棚板220の左右の端縁近傍には、支持パネル205が設けられている。左右の支持パネル205は、棚板220にねじ止めして固定されている。そして、左右の側板250は、それぞれ、左右の支持パネル205にねじ止めして固定されている。
【0020】
楽器ケース200は、複数の鍵(白鍵300、黒鍵400)の蓋となる2つ折り式の鍵盤蓋260を有する。鍵盤蓋260は、鍵の配列方向LRに長い2枚の板状の部材である前蓋板261と後蓋板262がヒンジ263で接続されている。左右の支持パネル205には、それぞれ、前蓋板用リンク部材267、後蓋板用リンク部材268が回転自在に設けられている。前蓋板261は、前端縁に設けられて鍵の配列方向LRに長い引出部材264を介して前蓋板用リンク部材267と回転自在に接続している。同様に、後蓋板262は、後蓋板用リンク部材268と回転自在に接続している。鍵盤蓋260は、前蓋板261と後蓋板262が鍵の配列方向LRを分割線として折れ曲がり、収納時には上面板240の下方の楽器ケース200内に収納される。鍵盤蓋260は、引出部材264の凹部に指を掛けて前側Fに引き出すと、複数の鍵(白鍵300、黒鍵400)を覆うことができる。
【0021】
楽器ケース200の内部には、複数の鍵(白鍵300、黒鍵400)を支持する鍵盤部50が設けられている。鍵盤部50は、複数の鍵(白鍵300、黒鍵400)と、鍵盤シャーシ500と、鍵盤シャーシ500の内部に設けられるマウント部材600とを含む。図2及び図4図5に示すように、鍵盤シャーシ500は、鍵の配列方向LRに長く、後側Bが高さの高い側面視略クランク状に設けられている。鍵盤シャーシ500の内部は、空間が設けられている。鍵盤シャーシ500の前側Fの前面板501には、下側Loに係止板510(係止部)が設けられ、上側Upに補強板520が設けられている。
【0022】
前面板501、係止板510及び補強板520は、鍵の配列方向LRに長く板状に設けられている。なお、前面板501及び係止板510は、一部が間欠部503で間欠している。間欠部503は、前接続部材201の幅広部201b2に対応する。また、図4に示すように、鍵盤シャーシ500には、係止板510と補強板520間を支持するように柱状部502が設けられている。図4のN1方向(鍵盤シャーシ500の下側から上側を見た方向)から見たN1部囲み図に示すように、柱状部502は、略円筒状の柱状部502aと、角丸長矩形の筒状の柱状部502bを含む。略円筒状の柱状部502aには、係止板510を介して下方に突出する棚板当接部502a1(当接突起)と、棚板当接部502a1から鍵の配列方向LRに対向して延びる2つのリブ502a2が設けられている。換言すれば、棚板当接部502a1、リブ502a2を含む当接突起は、係止板510より棚板220側に突出する。
【0023】
棚板当接部502a1及びリブ502a2の下面は、棚板220の上面と当接する鍵盤シャーシ500の側面板504の下面や、鍵盤シャーシ500の後側の当接面505(図2参照)と同一平面とされている。従って、鍵盤シャーシ500と楽器ケース200の組立状態では、鍵盤シャーシ500の前側Fでは、棚板220の上面と棚板当接部502a1及びリブ502a2の下面が当接する。そして、係止板510は、棚板220の上面から離間して配置される(図11も参照)。
【0024】
補強板520の後側Bの鍵盤シャーシ500には、前側被挿入部530(第1被挿入部)が設けられている。前側被挿入部530は、図2のように側面からみた断面視において、開放側を下側Loとする略U字状の断面として鍵の配列方向LRに長く設けられている照)。略U字状の断面とされる前側被挿入部530の内部には、上側Upに向かって漸次前後方向FBの幅が狭くなるテーパ状の内部空間532が設けられている(図9も参照)。前側被挿入部530の上側Upには、各白鍵300に対応して設けられる摺動ゴム350(図2参照)を支持する板状のゴム支持部531が板面を前後方向FBに向けて、前側Fから立設するよう設けられている。ゴム支持部531の前面には、摺動ゴム350の孔と係合する係合突起251a(図2参照)が設けられている。
【0025】
鍵盤シャーシ500の後側Bは、側面視において開放側を下側Loに向けた略U字状であって鍵の配列方向LRに長い支持台540が設けられている。支持台540の内部空間542には、後述するマウント部材600に支持されるハンマー部材70が収納されている。なお、図4に示すように、支持台540の前側Fには、ハンマー部材70の前端が支持台540の内部から突出するように複数の開口部544(図4参照)が設けられている。支持台540の前側Fには、各黒鍵400に対応して設けられる摺動ゴム450(図2参照)を支持するように上側Upに突出する複数のゴム支持部541(図4参照)が設けられている。
【0026】
図2に示すように、支持台540の上面には、スイッチ81が設けられた基板80が配置されている。支持台540の後端には、各白鍵300、各黒鍵400を回動自在に支持する鍵支持部543が設けられている(図4図5も参照)。また、図5に示すように、支持台540の後側Bには、略四角錐台形状の後側被挿入部550(第2被挿入部)が複数設けられている。後側被挿入部550は、内部空間が設けられている。後側被挿入部550は、上面部分に、後側被挿入部550の内部空間に連通する円形の開口孔551が設けられている。
【0027】
複数の鍵(白鍵300、黒鍵400)は、鍵盤シャーシ500により回転自在に支持される。白鍵300は、後端で鍵盤シャーシ500の鍵支持部543により回動自在に支持されている。白鍵300は、打鍵面である上面板の前側Fから下側Loに延在する前板301を有する。白鍵300は、左右に側板302が設けられている。左右の側板302は、前側Fで前板301を挟むようにして下側Loに鉤状に延在する。この鉤状に延在する左右の側板302は、左右の側板302間に設けられる摺動ゴム350によりガイドされている。また、白鍵300には、ハンマー押圧部303が設けられ、ハンマー部材70と接続されている。白鍵300には、下側Loに突出するスイッチ押圧部304が設けられ、各白鍵300に対応して設けられるスイッチ81を押圧可能とされている。
【0028】
白鍵300を押下すると、鉤状の左右の側板302の下端が、補強板520の上面に設けられるクッションC1に当接するまで下降する。このとき、ハンマー部材70の後方のウェイト部70aは上昇して、支持台540の下面に設けられるクッションC3に当接する。白鍵300から手を離すと、ウェイト部70aは下降して、棚板220上に設けられるクッションC4と当接する。このとき、白鍵300の左右の側板302の顎部分は、前側Fに突出するゴム支持部531の下側の支持板531aの下面に設けられるクッションC2に当接する。
【0029】
黒鍵400も白鍵300と同様の構造を有している。すなわち、黒鍵400は、図2及び図9も参照して、後端で鍵盤シャーシ500の鍵支持部543により回動自在に支持されている。黒鍵400は、側板を有する前板部401を有し、前板部401が摺動ゴム450によりガイドされている。また、前板部401は、ハンマー部材70と接続されている。黒鍵400には、各黒鍵400に対応して設けられるスイッチ81を押圧可能とされているスイッチ押圧部404が設けられている。
【0030】
図6図7に示すように、マウント部材600は、左マウント部材610と右マウント部材620の2つに分割して設けられている。マウント部材600は、前側Fにおいて、側面視略山形状に突出する前側挿入部601(第1挿入部)が設けられている。前側挿入部601は、鍵の配列方向LRに長く設けられて、略中央部分には間欠部603が設けられている。間欠部603は、前接続部材201の幅広部201b2及び鍵盤シャーシ500の間欠部503に対応する。後述する複数の凸条601a,601bを含む前側挿入部601は、側面視において、上側Upに向かって細い(前後方向FBの幅が狭い)テーパ状に設けられている。
【0031】
前側挿入部601の前側Fには、突出部602が設けられている。突出部602は、前後方向FBに板面を向けた板状であって、上側の角部2か所を角R状とし、前側Fに突出している。突出部602は、鍵の配列方向LRの長さを異ならせて複数設けられている。突出部602は、下端を前側挿入部601と一致させているが、上端は前側挿入部601よりも低く設けられる。よって、突出部602と前側挿入部601の接続部分には段部604が設けられている。段部604における前側挿入部601の前面には、複数の凸条601aが設けられ、前側挿入部601の後面には複数の凸条601bが設けられている。
【0032】
マウント部材600は、後側Bが上下方向ULの厚みが厚く設けられ、上面にはハンマー部材70が載置されるハンマー部材支持部71(図2参照)が取り付けられる複数のねじ孔605が設けられている。前側挿入部601とねじ孔605が設けられる部分との前後方向FBにおける間には、鍵の配列方向に複数の開口607が設けられている。
【0033】
図6のP1部囲み図及び図7のQ1部囲み図に示すように、左マウント部材610と右マウント部材620は、左マウント部材610の右端に設けられる接続凹部611と、右マウント部材620の左端に設けられる接続凸部621とが凹凸係合することで一体的に接続されている。接続凸部621は、右マウント部材620の左端から舌片状に左側Lに突出する接続板625の後側Bにおいて、所定幅の略帯状に、開放側を下向きとした略U字に設けられる。接続凸部621には、接続凸部621の外表面に沿って突出する凸条621aが設けられている。一方、接続凹部611は、前側Fに段部611aが設けられている。
【0034】
接続凸部621が接続凹部611に挿入されると、接続凸部621の前側Fが段部611aと対向し、接続凸部621の後側Bが左マウント部材610の後面板613に対向することで、左マウント部材610と右マウント部材620の相対的な前後移動が規制される。また、右マウント部材620の接続凸部621の右側Rの縁面621bは、左マウント部材610の右縁部615と対向し、右マウント部材620の接続板625の基部における左側面625aは、左マウント部材610の右縁部615と対向する。これにより、左マウント部材610と右マウント部材620の相対的な左右方向の移動が規制される。
【0035】
図7に示すように、マウント部材600(左マウント部材610、右マウント部材620)には、下側Loに向けて立設する凸部630が設けられている。凸部630は、鍵の配列方向LRに所定の間隔で複数設けられている。本実施形態においては、凸部630は、左マウント部材610に4個設けられ、右マウント部材620に3個設けられている。凸部630は、略円筒状に設けられている。凸部630の外周には、補強のためのリブ631が複数設けられている。
【0036】
凸部630の外径は、後述の棚板220の凹溝部225の溝幅よりも若干小さく設けられている。よって、凸部630は、凹溝部225と凹凸係合する。換言すれば、凸部630と凹溝部225は、凹凸係合構造とされている。複数の凸部630は、それぞれ、対応する凹溝部225と凹凸係合する。
【0037】
マウント部材600の下側Lo面には、開口607に対応して設けられる複数のリブ608や、複数のボス606a,606bが設けられている。2枚のリブ608間に対応する左マウント部材610の後面板613及び右マウント部材620の後面板623には、略U字状に開口する複数の開口孔613a,623aが設けられている。
【0038】
図3に示すように、棚板220の上面には、複数の凹溝部225が設けられている。本実施形態においては、鍵の配列方向LRに所定の間隔で7個設けられている。凹溝部225は、鍵の配列方向LRに長い左右溝225aと、左右溝225aと連通し、前後方向FBに長い前後溝225bを含む。凹溝部225は、前側Fに左右溝225aが設けられる、平面視略L字状とされている。
【0039】
また、棚板220の右側Rの端部近傍には、前後方向FBに所定の間隔を空けて2個の目印部226が設けられている。2個の目印部226のうち、前側Fには第1目印部221が設けられ、後側Bには第2目印部222が設けられている。目印部226は、鍵の配列方向LRに長い左右目印溝226aと、左右目印溝226aと連通し、前後方向FBに長い前後目印溝226bを含む。目印部226は、後側Bに左右目印溝226aが設けられる、平面視略L字状とされている。
【0040】
凹溝部225と目印部226の溝幅は、略同一とされている。これにより、棚板220を加工する際に、NC工作機械等に設置した棚板220の材料に対して、加工工具の変更を要することなく凹溝部225と目印部226を加工することができる。なお、凹溝部225の左右溝225a、前後溝225bの長さは、目印部226の左右目印溝226a、前後目印溝226bの長さよりも短い。また、凹溝部225と目印部226は、互いに180度回転した略L字形状とされている。
【0041】
図2に示すように、鍵盤楽器10には、鍵盤シャーシ500の後側Bに、後側固定部材700(固定部材)が設けられている。後側固定部材700は、板金材料により製造され、側面視において略クランク状とされている。後側固定部材700は、後側Bに突出する下端部分に、ねじ部材6が挿通されるねじ孔が設けられて、棚板220に固定されている。後側固定部材700は、前側Fに、板面を鍵の配列方向LRに向け、下側Loに突出するように設けられた後側挿入部710(第2挿入部)を有する。後側挿入部710は、鍵盤シャーシ500の後側被挿入部550の開口孔551に挿入されている。
【0042】
鍵の配列方向LRに所定長さで設けられる後側固定部材700は、図12に示すように、鍵盤シャーシ500の後側Bに3個配置されている。
【0043】
次に、鍵盤部50を楽器ケース200に組み付ける鍵盤楽器10の製造方法について説明する。
ここで、凹凸係合構造は、鍵盤部50及び棚板220の何れか一方(本実施形態においては棚板220)に設けられる凹溝部225と、何れか他方(本実施形態においては鍵盤部50のマウント部材600)に設けられる凸部630を含む。凹溝部225と凸部630は、係合可能に設けられている係合構造である。なお、鍵盤部50に凹溝部を設け、棚板220に凸部を設けた凹凸係合構造としてもよい。鍵盤楽器10の製造方法は、凸部630を凹溝部225の前後溝225bに係合させる前後溝係合工程と、凸部630を前側Fに移動させて左右溝225aに係合させる左右溝係合工程と、を有する。
【0044】
前後溝係合工程において、凸部630を前側Fに移動させると、鍵盤シャーシ500の係止板510は、前接続部材201のフック部201cと棚板220の間に挿入され配置される。詳細に述べると、前後溝係合工程は、(1)楽器ケース200に設けられた第1目印部221に合わせて楽器ケース200にマウント部材600を配置する工程と、(2)楽器ケース200に設けられた第2目印部222に合わせて鍵盤シャーシ500を配置してマウント部材600の上側Upに鍵盤シャーシ500を配置する工程と、(3)鍵盤部50を、棚板220上をスライドさせることにより、楽器ケース200に設けられる前接続部材201のフック部201cと楽器ケース200の棚板220との間隙に、鍵盤部50の一部である係止板510を入れ込む鍵盤部入込工程と、を含む。
【0045】
次に、左右溝係合工程において、凸部630を左右方向(鍵の配列方向LR、本実施形態においては右側R)に移動させると、鍵盤部50は、棚板220に対して正規の位置に配置される。
【0046】
更に、前後溝係合工程及び左右溝係合工程の後に、鍵盤部50の鍵の配列方向における少なくとも一端に設けられる回転部材800を回転させて、楽器ケース200に鍵盤部50を固定する鍵盤部固定工程を有する。
【0047】
マウント部材600は、前後溝係合工程により棚板220に載置され、左右溝係合工程は、マウント部材600に鍵盤シャーシ500が載置された後に行われる。マウント部材600は、第1目印部221に合わせて棚板220に配置される。これにより、前後溝係合工程が行われる。すなわち、凸部630と凹溝部225の前後溝225bが係合する。そして、鍵盤シャーシ500は、第2目印部222に合わせて棚板220に配置される。すると、鍵盤シャーシ500の前側被挿入部530の内部空間532に、マウント部材600の前側挿入部601が挿入されて嵌合し、マウント部材600が鍵盤シャーシ500内に配置される。
【0048】
鍵盤シャーシ500の後側Bには、後側固定部材700が棚板220に組み付けられる。このとき、後側固定部材700の後側挿入部710は、鍵盤シャーシ500の後側被挿入部550の開口孔551に挿入される。
【0049】
左右溝係合工程を完了し、鍵盤部50が棚板220に対して正規の取付位置に配置された後には、ねじ部材880の回転と共に回転部材800が回転することで、回転部材800を鍵盤部50の鍵盤シャーシ500に当接させて、楽器ケース200と鍵盤部50とを固定する鍵盤部固定工程が行われる。
【0050】
その後、楽器ケース200の他の部材(後板230、上面板240、左右の側板250)や、鍵盤蓋260、左袖206、右袖207、左右の支持パネル205、電装部品が設けられ、鍵盤楽器10が完成する。鍵盤楽器10の完成後、鍵盤楽器10は、楽器スタンド20に取り付けられる。
【0051】
鍵盤楽器10の製造方法(組立方法)を更に具体的に説明する。
先ず、前板210と棚板220を前接続部材201により接続する。ここで、図3に示すように、棚板220には、前板210と棚板220を前接続部材201で接続する前又は後に、棚板220の下面側から取り付けられる部品(例えば、スピーカ12やコネクタケース13,14等)を取り付けておくことができる。なお、棚板220には、スピーカ12に対応する放音孔227が設けられている。放音孔227は、円形の開口に亘って梁状部227aが設けられ、前側Fの前半円孔227bと後半円孔227cとで構成されている。
【0052】
そして、作業者は、前板210と接続された棚板220にマウント部材600を組み付ける。マウント部材600は、図8のR1部囲み図に示すように、マウント部材600の右後の角部680を、第1目印部221の略L字における内側の角部(内角部221a)に合わせて棚板220に載置し、配置する。すると、マウント部材600の各凸部630は、棚板220の各凹溝部225に凹凸係合する。各凸部630は、凹溝部225の前後溝225bの後端に配置される。
【0053】
なお、マウント部材600は、事前に左マウント部材610と右マウント部材620を接続しておく。そして、棚板220にマウント部材600を配置した後、マウント部材600にハンマー部材支持部71やハンマー部材70を取り付ける。
【0054】
次に、図9に示すように、複数の鍵(白鍵300、黒鍵400)や基板80等を取り付けた鍵盤シャーシ500をマウント部材600に被せるように載置して配置する。鍵盤シャーシ500は、図10のS1部囲み図に示すように、鍵盤シャーシ500の右後の角部581を、第2目印部222の略L字における内側の角部(内角部222a)に合わせて配置する。すると、図9に示すマウント部材600の前側挿入部601は、図11に示すように、鍵盤シャーシ500の前側被挿入部530における内部空間532に挿入される。このとき、鍵盤シャーシ500の棚板当接部502a1の下面及び棚板当接部502a1の下面と同一平面の下面を備えるリブ502a2、側面板504の各下面は、棚板220の上面と当接する。
【0055】
前側挿入部601が前側被挿入部530の内部空間532に挿入されると、マウント部材600の段部604(突出部602の上面)と、鍵盤シャーシ500における前側被挿入部530と補強板520による段部508(補強板520の下面)が当接する。このようにして、鍵盤シャーシ500とマウント部材600は嵌合する。そして、マウント部材600の前側Fの凸条601aは、前側被挿入部530の内側面(内部空間532の前面)と近接又は接触する。そして、マウント部材600の後側Bの凸条601bは、前側被挿入部530の内側面(内部空間532の後面)と近接又は接触する。このようにして、鍵盤シャーシ500とマウント部材600は、前後方向FBの相対的な移動が互いに規制されている。
【0056】
なお、マウント部材600の右マウント部材620の右側面626には、図6のP2部囲み図に示すように、上下方向ULに長い夫々2つの凸条626aが設けられている。左マウント部材610の左側面616にも同様に凸条616aが設けられている(図7参照)。凸条616a,626aは、鍵盤シャーシ500の左右の側面板504の内側面と近接又は接触することで、鍵盤シャーシ500と鍵の配列方向LRの相対的な移動が互いに規制されている。
【0057】
マウント部材600に複数の鍵(白鍵300、黒鍵400)等が設けられた鍵盤シャーシ500を配置した後、各ハンマー部材70と各白鍵300、黒鍵400を接続する。そして、マウント部材600に鍵盤シャーシ500を配置した鍵盤部50を前側Fに移動させて、図12に示すように、フック部201cと棚板220の上面との間、すなわち、フック部201c(前接続部材201)と棚板220との間隙に係止板510を挿入する。鍵盤部50の前側Fへの移動は、凸部630を凹溝部225の前後溝225bに沿って前側Fに移動させる(図8のR1囲み図及び図13のT1囲み図参照)。
【0058】
凸部630を凹溝部225の前後溝225bに沿って前側Fに移動させて左右溝225aと前後溝225bの交差点まで凸部630が到達したら、凸部630を左右溝225aに沿って右側Rに移動させる。鍵盤部50の移動が完了すると、図13のT1囲み図に示すように、凸部630は、左右溝225aの略右端部に位置される。これにより鍵盤部50(鍵盤シャーシ500及びマウント部材600)は、棚板220に対して少なくとも前後方向FBに移動不能に固定される。
【0059】
つまり、凸部630が左右溝225aと前後溝225bの交差点まで到達したとき、鍵盤部50(鍵盤シャーシ500)の係止板510は、フック部221cと棚板220の上面との間に配置される。そして、凸部630が左右溝225aを移動するときには、係止板510は、フック部221cと棚板220との間を滑るようにして移動する。このようにして、鍵盤シャーシ500の前側Fは、フック部221cと棚板220の間に係止板510が配置されることで、上下方向ULに移動しないよう固定される。鍵盤部50は、フック部201cと棚板220との間に係止板510が配置されている状態で楽器ケース200に固定されている。
【0060】
なお、本実施形態においては、凸部630を前側Fに移動させてから右側Rに移動させるように凹溝部225を設けたが、他の構成、例えば、フック部201c、係止板510を後側Bに設ければ、凸部630を後側Bに移動させてから左側Lに移動させるようにすることもできる。本実施形態においては、最終的に凸部630を右側Rに移動させて鍵盤部50を位置決めすることにより、右袖207と隣接する白鍵300との隙間を設計値に極めて近くすることができる。鍵盤楽器10の右側Rには、ボリューム摘み208や押し釦スイッチ209が設けられることで、使用者の視線が左側Lよりも右側Rに多いため、より一層、使用者に与える美観を向上させることができる。
【0061】
なお、本実施形態においては、フック部201cを鍵盤楽器10の前側Fに設け、マウント部材600の凸部630を前後溝225bに篏合させて、マウント部材600の凸部630を後側Bから前側Fに移動させている。これにより演奏者側に近い鍵盤楽器10の前側Fのスペースが少なく調整され、良好な鍵盤楽器10を提供できるという利点がある。
【0062】
鍵盤部50を正規の位置に配置した後、図13に示すように、後側固定部材700を取り付ける。後側固定部材700の取付は、図2のM2部拡大囲み図に示す後側挿入部710を鍵盤シャーシ500の後側被挿入部550の開口孔551に挿入しつつ、後側固定部材700の下端のねじ孔と棚板220の雌ねじ部を合わせて、ねじ部材6により後側固定部材700を棚板220に固定する。後側挿入部710は、図2のM2部拡大囲み図に示すように、下方に向かって突出して設けられ、開口孔551に入り込むことができる。従って、鍵盤シャーシ500の後側Bは、上下方向ULに移動しないよう固定される。
【0063】
なお、鍵盤シャーシ500の後側Bの左右端部等では、後側固定部材700と鍵盤シャーシ500がねじ部材7により固定されている。
【0064】
後側固定部材700の取付後、図13のT2部囲み図及びT3部囲み図に示すように、鍵盤シャーシ500の左右側方における棚板220に、回転部材800を取り付ける。回転部材800は、図14にも示すように、略円盤状に設けられ、中央にねじ孔801が設けられている。回転部材800の外形は、上下方向ULからみて、凸円弧状の第1円弧部810と、第1円弧部810と対向して設けられる凸円弧状の第2円弧部820が直線状に接続された形状の環状壁部830が設けられている。環状壁部830は、第1円弧部810側が第2円弧部820よりも高さが高く設けられている。
【0065】
ねじ孔801の外周には円筒部802が設けられ、ねじ部材880の頭部が円筒部802の内部に収まるように設けられている。回転部材800の下面805には、ねじ孔801と同心円状の2つの円環状の凸部831,832が設けられている。凸部831,832は、回転部材800の設置の際、棚板220の上面と摺接し、回転部材800が回転し易い。
【0066】
回転部材800は、ねじ孔801を介してねじ部材880により、鍵盤シャーシ500の前側Fにおける、鍵盤シャーシ500の左右の側面板504の近くの棚板220に固定される。回転部材800の取付の際には、ねじ部材880を時計回りD1方向回すと、回転部材800もねじ部材880と共に時計回りに回転する。すると、図13の囲み図T2,T3に示すように、鍵盤シャーシ500の左側Lの側面板504に回転部材800の第1円弧部810が当接し、鍵盤シャーシ500の右側Rにおいても側面板504に第1円弧部810が当接する。そして、回転部材800が容易に回転しない程度にねじ部材880を十分に締め込むことによって、鍵盤部50(鍵盤シャーシ500)は、回転部材800により鍵の配列方向LRの移動が規制される。
【0067】
以上、本発明の実施形態では、鍵盤楽器10は、前板210と、棚板220と、前板210と棚板220を互いに固定する接続部材であって、鍵の長手方向(前後方向FB)の後側Bに向けて突出するフック部201cを含む接続部材である前接続部材201と、を有する楽器ケース200と、係止部としての係止板510を有し、フック部201cと棚板220との間に係止板510が配置されている状態で、楽器ケース200に固定されている鍵盤部50と、を備える。
【0068】
これにより、複数の鍵の前側Fに、鍵盤部50を固定するためのねじ部材を設けるスペースを設けなくても、フック部201cと係止板510により、少なくとも前側Fにおける鍵盤部50の棚板220に対する上下方向ULの移動を規制することができる。ここで、従来は、複数の鍵の前側Fに、鍵盤部50を固定するためのねじ部材を設けるスペースがない場合には、楽器ケース200の下面220a側からねじ部材をねじ込み、鍵盤部50を棚板220に固定していた。このねじ部材をねじ込む際には、例えば約10kgfの重い鍵盤部50を楽器ケース200に固定していない状態で楽器ケース200を反転させることがあり、作業性が悪かった。しかしながら、上記構成により、複数の鍵の前側Fにスペースがなくても楽器ケース200を反転等させる必要が無いので、鍵盤部50を楽器ケース200に良好に組立て可能な小型の鍵盤楽器10を提供することができる。
【0069】
また、係止部としての係止板510は、鍵の配列方向LRに延在する係止板510より棚板220側に突出して棚板220に当接する当接突起である棚板当接部502a1と、を含む。これにより、係止板510に弾性を付与して、フック部201cと係止板510との係止が外れ難くすることができる。
【0070】
また、鍵盤部50は、係止板510の上側Upに係止板510と平行な板状の補強板520と、補強板520と係止板510間を支持する柱状部502と、を備える。これにより、板状の係止板510とされるのでフック部201cと棚板220との間に挿入し易くされ、補強板520が柱状部502を介して係止板510の撓みを抑制することができ、更にフック部201cと係止板510との係止が外れ難くすることができる。
【0071】
また、フック部201cは、弾性部材201dを備え、弾性部材201dが係止板510と接触している。これにより、鍵盤シャーシ500をフック部201cにより弾性的に規制することができ、部材の製造上の寸法公差も吸収させることができる。
【0072】
また、鍵盤部50は、鍵盤シャーシ500と、鍵盤シャーシ500の内部空間532に挿入される第1挿入部としての前側挿入部601を有し鍵盤シャーシ500の内部で嵌合するマウント部材600と、を備える。これにより、棚板220に対して前後方向FBに固定されるマウント部材600と鍵盤シャーシ500が相対的に前後方向FBの移動が規制されて、棚板220に対する鍵盤部50の前後方向FBの移動を規制することができる。
【0073】
また、前側挿入部601は、テーパ状に設けられる。これにより、前側挿入部601が前側被挿入部530の内部空間532に対して自動調心されて、挿入をスムーズに行うことができる。
【0074】
また、マウント部材600は、ハンマー部材70が載置されるハンマー部材支持部71を有する。これにより、鍵盤部50を小型としつつハンマー部材70を設けることができるので、弾き心地が本物のピアノに近い感触の小型で組み立て易い鍵盤楽器10を提供することができる。
【0075】
また、鍵の長手方向(前後方向FB)の後側Bで、鍵盤部50と棚板220を固定する固定部材であって、下向きに突出する第2挿入部としての後側挿入部710を含む固定部材としての後側固定部材700を有し、鍵盤シャーシ500は、後側挿入部710が挿入されている第2被挿入部としての後側被挿入部550を備える。これにより、鍵盤シャーシ500の後側Bの上下方向ULの移動規制をすることができる。
【0076】
本実施例においては、前後溝係合工程の後に、左右溝係合工程を実施する工程を例示したが、鍵盤楽器10側の構造が本実施例で説明した構造と異なる場合など、左右溝係合工程の後に、前後溝係合工程を実施してもよい。前後溝と左右溝の位置関係は、本実施例で例示した位置関係に限定されない。
【0077】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0078】
3~7 ねじ部材
10 鍵盤楽器 12 スピーカ
13,14 コネクタケース
20 楽器スタンド 21 側板
22 下梁部材 23 上梁部材
30 譜面台 40 ペダル装置
50 鍵盤部 60 スピーカカバー
70 ハンマー部材 70a ウェイト部
71 ハンマー部材支持部 80 基板
81 スイッチ 200 楽器ケース
201 前接続部材 201a 縦板
201a1 ねじ孔 201b 横板
201b1 ねじ孔 201b2 幅広部
201c フック部 201d 弾性部材
202 後下接続部材 203 後上接続部材
204 左後接続部材 205 支持パネル
206 左袖 207 右袖
208 ボリューム摘み 209 押し釦スイッチ
210 前板 220 棚板
220a 下面 221 第1目印部
221a 内角部 221c フック部
222 第2目印部 222a 内角部
225 凹溝部 225a 左右溝
225b 前後溝 226 目印部
226a 左右目印溝 226b 前後目印溝
227 放音孔 227a 梁状部
227b 前半円孔 227c 後半円孔
230 後板 240 上面板
240a 上面 250 側板
251a 係合突起 260 鍵盤蓋
261 前蓋板 262 後蓋板
263 ヒンジ 264 引出部材
267 前蓋板用リンク部材 268 後蓋板用リンク部材
300 白鍵 301 前板
302 側板 303 ハンマー押圧部
304 スイッチ押圧部 350 摺動ゴム
400 黒鍵 401 前板部
404 スイッチ押圧部
450 摺動ゴム 500 鍵盤シャーシ
501 前面板 502 柱状部
502a 柱状部 502a1 棚板当接部
502a2 リブ 502b 柱状部
503 間欠部 504 側面板
505 当接面 508 段部
510 係止板 520 補強板
530 前側被挿入部 531 ゴム支持部
531a 支持板 532 内部空間
540 支持台 541 ゴム支持部
542 内部空間 543 鍵支持部
544 開口部 550 後側被挿入部
551 開口孔 581 角部
600 マウント部材 601 前側挿入部
601a 凸条 601b 凸条
602 突出部 603 間欠部
604 段部 605 ねじ孔
606a ボス 606b ボス
607 開口 608 リブ
610 左マウント部材 611 接続凹部
611a 段部 613 後面板
613a 開口孔 615 右縁部
616 左側面 616a 凸条
620 右マウント部材 621 接続凸部
621a 凸条 621b 縁面
623 後面板 623a 開口孔
625 接続板 625a 左側面
626 右側面 626a 凸条
630 凸部 631 リブ
680 角部 700 後側固定部材
710 後側挿入部 800 回転部材
801 ねじ孔 802 円筒部
803 リブ 805 下面
810 第1円弧部 820 第2円弧部
830 環状壁部
831,832 凸部 880 ねじ部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14