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特開2024-136739電子楽器、電子鍵盤楽器及び電子機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136739
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】電子楽器、電子鍵盤楽器及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   G10H 1/32 20060101AFI20240927BHJP
   G10H 1/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
G10H1/32 Z
G10H1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047953
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002022
【氏名又は名称】弁理士法人コスモ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今村 尚人
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】福島 真吾
(72)【発明者】
【氏名】吉田 匠
(72)【発明者】
【氏名】近藤 大
【テーマコード(参考)】
5D478
【Fターム(参考)】
5D478HH14
5D478JJ09
5D478JJ11
(57)【要約】
【課題】良好な感度で通信装置が通信可能な電子楽器、電子鍵盤楽器及び電子機器を提供する。
【解決手段】電子機器であって、電子楽器でもある電子鍵盤楽器10は、無線ドングル850を含む外部装置を接続させる接続端子810が設けられている第1領域816と、第1領域816より大きい第2領域817と、を含む基板800と、基板800の第2領域817において基板800と電気的に接続する接点fを備え、第1領域816における接続端子810が設けられている位置に対応する位置に開口721を備える板金部材700と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部装置を接続させる接続端子が設けられている第1領域と、前記第1領域より大きい第2領域と、を含む基板と、
前記基板の前記第2領域において前記基板と電気的に接続する接点を備え、前記第1領域における前記接続端子が設けられている位置に対応する位置に開口を備える板金部材と、
を備える、
電子楽器。
【請求項2】
前記第1領域の少なくとも1部は楽器ケースの外側に配置され、
前記第2領域は前記楽器ケースの内側に配置される、
請求項1に記載の電子楽器。
【請求項3】
前記板金部材は、前記基板を固定している板金本体と、前記板金本体に連結している外周板と、を備え、
前記接点は、前記板金本体に設けられ、
前記開口は、前記外周板に設けられる、
請求項1に記載の電子楽器。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載の電子楽器と、
鍵盤部と、
を備え、
前記板金部材は、前記鍵盤部を固定している、
電子鍵盤楽器。
【請求項5】
前記接続端子は、鍵の配列方向の中央部に設けられる、
請求項4に記載の電子鍵盤楽器。
【請求項6】
楽器ケースの下面には、左右夫々にスピーカが設けられ、
前記接続端子は、左右の前記スピーカ間に設けられる、
請求項4に記載の電子鍵盤楽器。
【請求項7】
前記接続端子は、挿入方向が鍵の配列方向に配置される、
請求項4に記載の電子鍵盤楽器。
【請求項8】
外部装置を接続させる接続端子が設けられている第1領域と、前記第1領域より大きい第2領域と、を含む基板と、
前記基板の前記第2領域において前記基板と電気的に接続する接点を備え、前記第1領域における前記接続端子が設けられている位置に対応する位置に開口を備える板金部材と、
前記接続端子を介して、前記外部装置から入力されるデータを出力する出力部と、
を備える、
電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子楽器、電子鍵盤楽器及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、USB機器を接続するUSBコネクタ等の外部装置を取り付ける接続端子を備える電子鍵盤楽器等の電子楽器が提供されている。例えば、特許文献1には、楽器ケースの天板と鍵盤部との間に設けられるパネルにUSBコネクタが配置された電子鍵盤楽器が開示されている。この電子鍵盤楽器では、USBコネクタの挿入口が前側に向けて配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-13508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電子楽器が端末装置と通信するためのモノポールアンテナが搭載された通信装置は、複数のモデルの電子楽器に接続されて使用される。しかし、電子楽器側のグラウンドの形状やサイズは、電子楽器のモデルによって異なるので、モデルごとにアンテナの特性が変化する。特に、電子楽器側のグラウンドとなる基板のサイズが小さい場合、通信装置のアンテナの性能が低下する。
【0005】
本発明は、良好な感度で通信装置が通信可能な電子楽器、電子鍵盤楽器及び電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施例に係る電子楽器は、外部装置を接続させる接続端子が設けられている第1領域と、前記第1領域より大きい第2領域と、を含む基板と、前記基板の前記第2領域において前記基板と電気的に接続する接点を備え、前記第1領域における前記接続端子が設けられている位置に対応する位置に開口を備える板金部材と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、良好な感度で通信装置が通信可能な電子楽器、電子鍵盤楽器及び電子機器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】楽器スタンドに支持された本発明の実施形態に係る電子鍵盤楽器の正面図である。
図2】本発明の実施形態に係る電子鍵盤楽器を下方から見た斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係る電子鍵盤楽器の図1のIII-III断面図である。
図4】本発明の実施形態に係る電子鍵盤楽器の後板、上面板、鍵盤蓋等を省略して後方から見た斜視図である。
図5】本発明の実施形態に係る電子鍵盤楽器の基板を備える板金部材を後方から見た斜視図である。
図6】本発明の実施形態に係る電子鍵盤楽器の基板を備える板金部材を後側から見た背面図である。
図7】本発明の実施形態に係る電子鍵盤楽器の基板を備える板金部材の右側面図である。
図8】本発明の実施形態に係る電子鍵盤楽器の基板を備える板金部材の要部拡大正面図である。
図9】本発明の実施形態に係る電子鍵盤楽器に無線ドングルが接続された状態における、アンテナ長とグランドとの関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。図1に示すように、電子楽器としての電子鍵盤楽器10は、楽器ケース200に、複数の白鍵300と複数の黒鍵400を含むフルサイズ(88鍵)の複数の鍵が設けられる鍵盤部50(音高を指定する演奏操作子或いは、入力装置とも言う)を備えている。電子鍵盤楽器10は、楽器ケース200に着脱自在の譜面台30を有して、楽器スタンド20(脚部)により支持されている。
【0010】
なお、以下の説明においては、複数の鍵(白鍵300、黒鍵400)の前後方向FBにおける前を前側F、鍵の前後方向FBの後を後側Bとし、鍵に向かって左を左側L、右を右側Rとする。鍵の配列方向LRは、左右方向である。また、電子鍵盤楽器10の上下方向ULにおいて上を上側Up、下を下側Loとする。
【0011】
図1図3に示すように、楽器ケース200は、前板210、棚板220、後板230、上面板240及び左右の側板250を備えている。前板210は、鍵盤部50の前側Fに配置されている。上面板240は、鍵盤部50の後側Bの上側Upに配置されている。後板230は、上面板240の下面と接続して、左右の側板250で挟まれるように配置されている。棚板220は、楽器ケース200(電子鍵盤楽器10)の底板とされて、前板210と後板230、かつ、左右の側板250で挟まれるように配置されている。
【0012】
図1に示すように、鍵盤部50の左側L及び右側Rには、左右の側板250と鍵盤部50とで挟まれるようにして、前後方向FBに長い長矩形略箱状の左袖206、右袖207が設けられている。右袖207の上面には、ボリューム摘み208が設けられている。また、後述する楽器ケース200の前板210の右端近傍には、電源用の押し釦スイッチ209が設けられている。
【0013】
楽器スタンド20は、左右の側板21を有する。楽器スタンド20は、左右の側板21間に亘る後方下側に、鍵の配列方向LRに長い下梁部材22が設けられている。下梁部材22の鍵の配列方向LRの略中央部には、ペダル装置40が設けられている。下梁部材22の上側には、板状の上梁部材23が設けられている。電子鍵盤楽器10は、左右の側板21の上に固定されている。
【0014】
電子鍵盤楽器10の楽器ケース200は、左側面(左側の側板250の外側面)及び右側面(右側の側板250の外側面)が、楽器スタンド20の左右の側板21の外側面と連続するように設けられている。また、図1及び図2に示すように、楽器ケース200の下面200aには、左右の側板21間に配置されるように下側に突出するスピーカカバー60が左右夫々に設けられている。スピーカカバー60の内部には、スピーカ61(図4参照)(接続端子810を介して無線ドングル850を含む外部装置から入力されるデータを出力する出力部)が設けられている。
【0015】
図3に示すように、前板210と棚板220は、前接続部材201によりねじ止めして接続されている。前接続部材201は、左右方向から見てL字状であって、左右に長い板金部材として設けられている。棚板220と後板230は、略L字状の部材であり、鍵の配列方向LRに並ぶ複数の後下接続部材202によりねじ止めして接続されている。後板230と上面板240は、略L字状の部材であり、鍵の配列方向LRに並ぶ複数の後上接続部材203によりねじ止めして接続されている。左右の側板250と後板230は、略L字状の板金部材とされる左後接続部材204、右後接続部材(不図示)によりねじ止めして接続されている。
【0016】
棚板220の左右の端縁近傍には、支持パネル205が設けられている。左右の支持パネル205は、下側Loが棚板220にねじ止めして固定されている。そして、左右の側板250の内側の側面は、それぞれ、左右の支持パネル205の外側の側面にねじ止めして固定されている。
【0017】
楽器ケース200は、鍵盤部50の蓋となる2つ折り式の鍵盤蓋260を有する。鍵盤蓋260は、鍵の配列方向LRに長い2枚の板状の部材である前蓋板261と後蓋板262がヒンジ263で接続されている。左右の支持パネル205には、それぞれ、前蓋板用リンク部材267、後蓋板用リンク部材268(図4参照)が回転自在に設けられている。前蓋板261は、前端縁に設けられて鍵の配列方向LRに長い引出部材264を介して前蓋板用リンク部材267と回転自在に接続している。同様に、後蓋板262は、後蓋板用リンク部材268と回転自在に接続している。鍵盤蓋260は、前蓋板261と後蓋板262が、鍵の配列方向LRに長く、ヒンジ263で接続される分割線で折れ曲がり、収納時には上面板240の下方の楽器ケース200内に収納される。鍵盤蓋260は、引出部材264の凹部に指を掛けて前側Fに引き出すと、鍵盤部50を覆うことができる。
【0018】
楽器ケース200の内部には、各白鍵300、各黒鍵400を回転自在に支持する鍵盤シャーシ500が設けられている。白鍵300は、後端で鍵盤シャーシ500に回転自在に支持されている。白鍵300は、白鍵300の前端の前板301の近傍の左右の側板302間に設けられて側板302を上下方向ULにガイドする摺動ゴム350が鍵盤シャーシ500の前側Fに配置されている。また、白鍵300には、下側Loに突出するスイッチ押圧部304が設けられている。鍵盤シャーシ500の上面には、スイッチ押圧部(不図示)に対応してスイッチ81が配置されている。スイッチ81は、基板80上に設けられている。
【0019】
また、白鍵300の前板301とスイッチ押圧部304間に設けられ、下側Loに延設するハンマー押圧部(不図示)は、ハンマー部材70と接続されている。ハンマー部材70は、鍵盤シャーシ500の内部のハンマー部材支持部(不図示)により回転自在に支持されている。ハンマー部材70は、前後方向FBでハンマー部材支持部を挟んでハンマー押圧部の反対側に配置されるウェイト部70aを備えている。
【0020】
白鍵300を押下すると、鉤状の左右の側板302の下端が、鍵盤シャーシ500の前側Fに設けられるクッションC1に当接するまで下降する。このとき、ハンマー部材70の後方のウェイト部70aは上昇して、鍵盤シャーシ500の内部のクッションC3に当接する。白鍵300から手を離すと、ウェイト部70aは下降して、棚板220上に設けられるクッションC4と当接する。このとき、白鍵300の左右の側板302の顎部分は、クッションC1の上側Upに対向して配置されるクッションC2に当接する。
【0021】
黒鍵400も白鍵300と同様の構造を有している。すなわち、黒鍵400は、後端で鍵盤シャーシ500により回動自在に支持されている。黒鍵400は、側板を有する前板部401を有し、前板部401が摺動ゴム450により上下方向ULにガイドされている。また、前板部401は、ハンマー部材70と接続されている。黒鍵400には、各黒鍵400に対応して設けられるスイッチ81を押圧可能とされているスイッチ押圧部404が設けられている。
【0022】
図4に示すように、楽器ケース200の内部の鍵盤シャーシ500の後側Bには、略同形の左右の板金部材600と、中央の板金部材700と、の3つの板金部材600,700が設けられている。板金部材600,700は、板面を前後方向に向けて配置されている。中央の板金部材700は、上側Up、下側Loともに前側Fに折り曲げられる部分を有し、側面視において略U字状とされている(図5参照)。左右の板金部材600は、上側Upにおいて前側Fに折り曲げられる部分を有し、下側Loにおいて後側Bに折り曲げられる部分を有して、側面視において略クランク状とされている。左右の板金部材600は、鍵の配列方向LRの長さが略同一とされて、中央の板金部材700は左右の板金部材600よりも鍵の配列方向LRの長さが長く設けられている。
【0023】
左右の板金部材600は、折れ曲がる上側Up部分が鍵盤シャーシ500とねじ止めして接続し、折れ曲がる下側Lo部分が棚板220とねじ止めして固定される。従って、鍵盤シャーシ500は、左右の板金部材600により、鍵盤シャーシ500の後側Bの部分で上下方向ULの移動が規制されている。なお、鍵盤シャーシ500は、前接続部材201(図3参照)と係合することで、鍵盤シャーシ500の前側Fの部分で上下方向ULの移動が規制されている。
【0024】
図5に示すように、中央の板金部材700は、板面を前後方向に向けて、電子鍵盤楽器10の設置面FL(図1参照)に対して起立する板金本体710を含む。板金本体710は、下側Loを開放側とする複数の切欠き714が設けられている。板金部材700は、板金本体710から前側Fに折れ曲がる上側Upの部分の複数の上接続部711と、板金本体710から前側Fに折れ曲がる下側Loの部分の複数の下接続部712が設けられている。上接続部711、下接続部712は、共に鍵盤シャーシ500と接続している。また、図5においては板金本体710の左右端に図示されるが、板金部材700には、板金本体710から前側Fに折れ曲がる複数の係合板715が設けられている。係合板715は、鍵盤シャーシ500の後側Bにおける係合孔551(図3参照)と係合して鍵盤シャーシ500の上下方向ULの移動を規制している。
【0025】
板金本体710には、板金本体710の後面から後側Bに起立して、側面視略L字状とされる複数の支持ステー716が設けられている(図7も参照)。板金本体710の後面側には、支持ステー716のねじ孔を介して、鍵の配列方向LRに長い略長矩形状の基板800がねじ止めして設けられている。基板800の後面には、配線が接続される複数のコネクタ805が設けられている。
【0026】
基板800は、支持ステー716に支持されることにより、板金本体710と平行に(換言すれば、設置面FLに対して起立して、或いは、楽器ケース200の棚板220に対して起立して)板金本体710に固定して設けられている。なお、コネクタ805は、図4に示すように、電子鍵盤楽器10の左袖206や右袖207に設けられる基板と接続する配線805aのコネクタ部とされている。
【0027】
本願発明の有利な効果を説明する。鍵の長手方向にも短く、上下方向にも薄いコンパクトな電子鍵盤楽器を設計する場合、どの内部部品を、どこに、どのように配置するのかについては、様々な工夫が必要になる。本実施例の場合、以下の利点を有する。
【0028】
(1)本実施例では、鍵盤部50の後方に鍵盤部50を楽器ケース200に固定する板金部材700を設けている。この板金部材700に、外部装置と接続するための各種接続端子810、802等を含む基板800を、設置面(或いは棚板220)に対して略垂直に起立するように固定している。これにより、基板800を水平方向に寝かせて配置するよりも上下方向に楽器ケースを薄くできるし、また、鍵の長手方向(前後方向FB)においてスピーカの最後端部よりも手前側に基板800を配置していることになるので鍵の長手方向にも楽器ケースを短くできる。
【0029】
(2)図6を参照して、基板800は、無線ドングル850(通信装置、図8参照)が接続される接続端子810が設けられている第1領域816と、第1領域816の上側に第1領域816より大きい第2領域817と、を有する。これにより本実施例において、接続端子810は楽器ケース200の棚板220より下側に配置される。この接続端子810に向けて無線ドングル850が、楽器ケース200の下側で鍵の配列方向LRに向かって演奏者により抜き差しされる。演奏者に見えにくい楽器ケース200の下側に接続端子810を設けたので、美感への影響も少ない。
【0030】
(3)基板800の第1領域816に設けられる接続端子810に無線ドングル850を接続させて通信する場合、電波の波長と、基板800の第1領域816のサイズと、の関係でアンテナ性能が低下することが懸念される。これに対して、板金部材700を折り曲げることにより形成した外周板720にアンテナエレメントから放射された電界が結合するように、基板800と板金部材700とを接点fにて電気的に連結させることによって、アンテナ電流経路を形成し、アンテナ性能を向上させた。なお、基板800の形状はモデルごとに異なることが想定されるため、接点fの位置はモデルごとに設計される。これにより、複数モデルの電子楽器において、共通の無線ドングル850にて、良好な通信が実現できる。
【0031】
図5に戻り、基板800には、左端近傍の下端部に、電源端子801が設けられている。基板800の鍵の配列方向LRにおける中央よりやや右寄りには、音響機器と接続する音響機器接続端子802が設けられている。音響機器接続端子802の右隣りには、USB-B接続端子803が設けられている。USB-B接続端子803は、USBタイプBの形態の端子とされている。基板800の右端には、USBタイプAの形態の接続端子810が設けられている。接続端子810は、その挿入口811が右側Rに向くように配置されている。
【0032】
より具体的には、図8に示すように、接続端子810は、基板800において右側Rの端部であって下側Loに略矩形に突出する基板突出部806の後面側に取り付けられている。接続端子810の取り付けは、接続端子810の挿入口811が右側Rに向くように取り付けられている。このようにして、電子鍵盤楽器10は、詳細は後述するが、基板800を楽器ケース200に収めつつ、接続端子810を楽器ケース200の下面200aの外側に露出させている。換言すれば、第1領域816の少なくとも1部は楽器ケース200の外側に配置され、第2領域817は楽器ケース200の内側に配置される。
【0033】
図5及び図7に示すように、接続端子810の外周(挿入口811の外周)には、板金本体710と連結している外周板720が設けられている。外周板720は、板金本体710から後側Bに突出するように折り曲げて設けられている。外周板720は、上下方向ULに長い略長矩形の板状に設けられている。外周板720は、板面を鍵の配列方向LRに向けて配置されている。外周板720には、上下方向ULに長い略長矩形状の開口721が設けられている。
【0034】
開口721は、第1領域816における接続端子810が設けられている位置に対応する位置に設けられている。具体的には、図7に示すように、接続端子810の挿入口811は、外周板720の開口721の投影範囲に配置されている。本実施形態においては、接続端子810の挿入口811(挿入口811の外縁まで含む)は、開口721の投影範囲に完全に収まっている。また、図8に示すように、外周板720は、基板800と隙間S1分離間している。接続端子810の挿入口811は、その外縁を含んで開口721の投影範囲に完全に収まっているので、図8で見ると挿入口811が開口721に対応する外周板720の板厚と重なる位置に配置されている。しかしながら、接続端子810は、外周板720と離間し、接触していない。
【0035】
また、接続端子810近傍の支持ステー716aで基板800がねじ止めされている部分には、接点fが設けられている。換言すれば、接点fは、第2領域817に設けられている。接点fは、接続端子810を有する基板800と、板金部材700(外周板720)とを電気的に接続する。
【0036】
外周板720の下端には、外周板720の下端から左側L(基板800側)に小さく折れ曲がる曲げ部722が設けられている。曲げ部722は、基板800の端部(右側Rの端部)と対向して設けられている。電子鍵盤楽器10では、衝撃等が加えられて外周板720と基板800との隙間S1が小さくなる方向に板金部材700と基板800が相対的に移動しても、曲げ部722が基板800の端縁と当接することで、板金部材700と基板800との間には隙間S1と同等な距離が確保される。ここで、基板800の端縁と曲げ部722が当接しても、基板800の端部には導電材料が設けられていなので、板金部材700と基板800が電気的に接続することはない。
【0037】
USBタイプAの形態の接続端子810には、USBメモリの他、図8に二点鎖線で示すように、無線ドングル850が接続される。無線ドングル850が接続端子810に接続されることにより、電子鍵盤楽器10は、無線ドングルを介してスマートフォン等の端末機器と無線接続することができる。これにより、端末機器と電子鍵盤楽器10との間で楽曲データの送受信を行うことができる。無線通信を行う所定の無線通信方式は、例えば、Bluetooth(登録商標)やBluetooth(登録商標)のバージョン4以降に係るBluetooth Low Energy(BLE)等とすることができる。
【0038】
図9を参照して、無線ドングル850は、一般に、小型に構成するためにモノポールアンテナ851が採用されている。モノポールアンテナ851は、電源852と接続している。また、電源852は、モノポールアンテナ851と対となるGND853(グランド)と接続している。具体的には、GND853は、無線ドングル850のグランドであるGND854と、GND854が接続する電子鍵盤楽器10側のグランドであるGND855で構成される。
【0039】
モノポールアンテナ851は、λ/4長(λ;無線通信の波長)で設けられている。良好な無線通信状態を得るためには、ミラー効果を生じさせるために、GND853におけるグランドの半径rをλ/4長よりも大きくする必要がある。換言すれば、GND853の面積が大きいほど無線通信状態が良好となる。ここで、無線ドングル850側のGND854は固定的であり、かつ、無線ドングル850が小さく構成されるため、電子鍵盤楽器10側のGND855のグランドの長さを大きくする必要がある。
【0040】
例えば、本実施形態においては、図7に示す基板突出部806(第1領域)の鍵の配列方向LRの長さa、無線ドングル850の接続部850cの下端と基板突出部806の下端までの長さbについて、a=20mm、b=6.5mmとすると、2.4GHzの周波数であるBluetooth(登録商標)では、λ=124mm、つまりλ/4=31mmとなる。良好な無線通信状態を得るためには、GND853(図8)の長さがλ/4=31mmよりも大きい必要がある。しかし、無線ドングル850側のGND854が極小であることを考慮すると、電子鍵盤楽器10側のGND855がa+b=26.5mmとなり、最低限必要な長さλ/4=31mmに不足する。
【0041】
そこで、電子鍵盤楽器10では、接続端子810の外周に外周板720を設けて、十分なグランドの長さを確保した。すなわち、図8の太い矢印線で示すアンテナ電流経路LAは、接続端子810から基板800を通り、接点fを介して外周板720を伝って開口721に戻るまでの距離2e以上となる。ここで、距離eは、少なくとも、接続端子810の上下方向ULの中心から外周板720と板金本体710との折り曲げ部分の下端p(図5も参照)までの距離とすることができる。例えば、e=36mmとすることができ、従って、2e=72mmとなり、上記例におけるλ/4=31mmよりも十分に大きなグランド長さを確保することができる。
【0042】
音響機器接続端子802、USB-B接続端子803及び接続端子810は、楽器ケース200から以下のように露出される。図2及び図4に示すように、棚板220における、電源端子801に対応する部分には、前後方向FBがやや長い略長矩形の開口221が設けられている。開口221には、略平板状の電源端子カバー860が設けられている。開口221は、電源端子カバー860によりカバーされている。挿入口を下側Loに向けた電源端子801において、この電源端子801の挿入口の周囲は、下面200aよりも若干、上側Upに窪んで設けられている。
【0043】
棚板220における、音響機器接続端子802、USB-B接続端子803及び接続端子810に対応する部分には、鍵の配列方向LRに長い略長矩形状の開口222が設けられている。開口222には、略平板状の端子カバー870が設けられている。音響機器接続端子802及びUSB-B接続端子803の各挿入口の周囲は、下面200aよりも若干、上側Upに窪んで設けられている。接続端子810に対応する端子カバー870には、下側Loに突出する端子ケース871が設けられている。
【0044】
端子ケース871は、略直方体状に突出している。端子ケース871には、接続端子810が収められている。端子ケース871の右側面には、開口871aが設けられて、接続端子810の挿入口811が露出されている。また、端子ケース871の右側Rの端子カバー870には、上側Upに凹む凹部872が設けられている。
【0045】
電源端子801、音響機器接続端子802、USB-B接続端子803及び接続端子810は、左右のスピーカカバー60(スピーカ61)間に設けられる。電源端子801、音響機器接続端子802、USB-B接続端子803及び接続端子810は、鍵の配列方向LRにおける略中央部に設けられる。接続端子810は、楽器ケース200の下面200aの下側Loに突出している。
【0046】
また、接続端子810は、挿入口811が右側Rに配置されている。従って、挿入口811への外部装置(USBメモリや通信装置(無線ドングル850)等)の挿入方向は、鍵の配列方向LRである右側Rから左側Lに向かう方向とされている。
【0047】
電源端子801、音響機器接続端子802、USB-B接続端子803は、コード類が接続される。着座して演奏する奏者にとって、これらのコード類が脚に当たって不快になることはほとんどない。また、鍵の配列方向LRに外部装置が挿入される接続端子810においても、外部装置は鍵の配列方向LRである右側Rに突出するので、外部装置が下側Loに向けて突起状に装着されることはなく、よって奏者の脚が外部装置に当たってしまうことが低減される。そして、前述の通り、接続端子810に無線ドングル850を取り付けた場合であっても、良好な無線通信状態を得ることができる。
【0048】
以上、本発明の実施形態によれば、電子機器であって、電子楽器でもある電子鍵盤楽器10は、無線ドングル850を含む外部装置を接続させる接続端子810が設けられている第1領域816と、第1領域816より大きい第2領域817と、を含む基板800と、基板800の第2領域817において基板800と電気的に接続する接点fを備え、第1領域816における接続端子810が設けられている位置に対応する位置に開口721を備える板金部材700と、を備える。
【0049】
これにより、外部装置として小型の無線ドングル850(通信装置)が接続端子810の挿入口811に挿入して接続された場合であっても、無線ドングル850のアンテナに対して十分大きなグランドが形成されるので、良好な感度で通信装置が通信可能な電子鍵盤楽器10(電子楽器、電子機器)を提供することができる。
【0050】
第1領域816の少なくとも1部は楽器ケース200の外側に配置され、第2領域817は楽器ケース200の内側に配置される。これにより、基板800の大部分を楽器ケース200内に収めつつ、基板800に設けられる接続端子810は楽器ケース200の下面200aから外側に露出して、接続端子810の部分のみを楽器ケース200から突出させることができ、着座して演奏する演奏者の脚に接続端子810が当たってしまうことを低減することができる。
【0051】
また、板金部材700は、基板800を固定している板金本体710と、板金本体710に連結している外周板720と、を備え、接点fは、板金本体710に設けられ、開口721は、外周板720に設けられる。これにより、基板800を楽器ケース200の内部に確実に保持しつつ、良好な感度で通信可能とすることができる。
【0052】
また、接続端子810は、鍵の配列方向LRの中央部に設けられる。これにより、演奏者の脚が接続端子810に当たってしまうことを低減することができる。
【0053】
また、楽器ケース200の下面200aには、左右夫々にスピーカ61及びスピーカカバー60が設けられ、接続端子810は、左右のスピーカ61(スピーカカバー60)間に設けられる。これにより、大きく下方に突出するスピーカカバー60が着座して演奏する演奏者の脚に当たってしまうことを回避しつつ、脚に当たり難い接続端子810を設けることができる。
【0054】
また、接続端子810は、挿入方向が鍵の配列方向LRに配置される。そして、挿入方向は、右側Rから左側Lに向かって配置される。これにより、接続端子810に取り付けられる外部装置が楽器ケース200の下面200aから下方に突出してしまうこと低減しつつ、右利きにとって、着脱操作がし易い接続端子810の配置とすることができる。
【0055】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。本発明の範囲は、電子楽器に限定されない。本発明の範囲は、電子機器を含む。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0056】
10 電子鍵盤楽器 20 楽器スタンド
21 側板 22 下梁部材
23 上梁部材 30 譜面台
40 ペダル装置 50 鍵盤部
60 スピーカカバー 61 スピーカ
70 ハンマー部材 70a ウェイト部
80 基板 81 スイッチ
200 楽器ケース 200a 下面
201 前接続部材 202 後下接続部材
203 後上接続部材 204 左後接続部材
205 支持パネル 206 左袖
207 右袖 208 ボリューム摘み
209 押し釦スイッチ 210 前板
220 棚板 221 開口
222 開口 230 後板
240 上面板 250 側板
260 鍵盤蓋 261 前蓋板
262 後蓋板 263 ヒンジ
264 引出部材 267 前蓋板用リンク部材
268 後蓋板用リンク部材 300 白鍵
301 前板 302 側板
304 スイッチ押圧部 350 摺動ゴム
400 黒鍵 401 前板部
404 スイッチ押圧部 450 摺動ゴム
500 鍵盤シャーシ 551 係合孔
600 板金部材 700 板金部材
710 板金本体 711 上接続部
712 下接続部 714 切欠き
715 係合板 716 支持ステー
716a 支持ステー 720 外周板
721 開口 722 曲げ部
800 基板 801 電源端子
802 音響機器接続端子 803 USB-B接続端子
805 コネクタ 805a 配線
806 基板突出部 810 接続端子
811 挿入口 816 第1領域
817 第2領域 850 無線ドングル
850c 接続部 851 モノポールアンテナ
852 電源 860 電源端子カバー
870 端子カバー 871 端子ケース
871a 開口 872 凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9