(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136742
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】駆動回路及び駆動方法
(51)【国際特許分類】
H02M 1/08 20060101AFI20240927BHJP
H03K 17/16 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H02M1/08 A
H03K17/16 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047958
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】木村 大祐
(72)【発明者】
【氏名】亀田 昇
【テーマコード(参考)】
5H740
5J055
【Fターム(参考)】
5H740BA12
5H740BB07
5H740BB08
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5H740BC02
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(57)【要約】
【課題】第1スイッチと第2スイッチが同期間にオンする可能性を低減すること。
【解決手段】第1電源ラインと駆動ラインとの間に配置された第1スイッチと、前記第1電源ラインよりも低電位の第2電源ラインと前記駆動ラインとの間に配置された第2スイッチと、前記第1スイッチのターンオン指令を受けると、前記第1スイッチをターンオンさせてから第1時間の経過時にターンオフさせる第1ドライバと、前記第2スイッチのターンオン指令を受けると、前記第2スイッチをターンオンさせてから第2時間の経過時にターンオフさせる第2ドライバと、前記第1スイッチのターンオン指令を受けると、前記駆動ラインを前記第1電源ラインにプルアップし、前記第2スイッチのターンオン指令を受けると、前記駆動ラインをプルダウンする切り替え回路と、を備える、駆動回路。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電源ラインと、
前記第1電源ラインよりも低い電位である第2電源ラインと、
駆動ラインと、
前記第1電源ラインと前記駆動ラインとの間に配置された第1スイッチと、
前記第2電源ラインと前記駆動ラインとの間に配置された第2スイッチと、
前記第1スイッチのターンオン指令を受けると、前記第1スイッチをターンオンさせてから第1時間の経過時にターンオフさせる第1ドライバと、
前記第2スイッチのターンオン指令を受けると、前記第2スイッチをターンオンさせてから第2時間の経過時にターンオフさせる第2ドライバと、
前記第1スイッチのターンオン指令を受けると、前記駆動ラインを前記第1電源ラインにプルアップし、前記第2スイッチのターンオン指令を受けると、前記駆動ラインをプルダウンする切り替え回路と、を備える、駆動回路。
【請求項2】
前記第1時間は、前記第1スイッチのターンオン指令を受けてから前記駆動ラインの電圧が第1閾値以上になるまでの時間であり、
前記第2時間は、前記第2スイッチのターンオン指令を受けてから前記駆動ラインの電圧が第2閾値以下になるまでの時間である、
請求項1に記載の駆動回路。
【請求項3】
前記第1時間は、前記第1スイッチのターンオン指令を受けてから、前記駆動ラインに制御端子が接続されるスイッチング素子の主電極間の電圧が第3閾値以下になるまでの時間であり、
前記第2時間は、前記第2スイッチのターンオン指令を受けてから前記スイッチング素子の主電極間の電圧が第4閾値以上になるまでの時間である、
請求項1に記載の駆動回路。
【請求項4】
前記第1時間は、前記第1スイッチのターンオン指令を受けてから、前記駆動ラインに制御端子が接続されるスイッチング素子の主電極を流れる電流が第5閾値以上になるまでの時間であり、
前記第2時間は、前記第2スイッチのターンオン指令を受けてから前記スイッチング素子の主電極を流れる電流が第6閾値以下になるまでの時間である、
請求項1に記載の駆動回路。
【請求項5】
前記切り替え回路は、前記第1ドライバ及び前記第2ドライバと共通の指令信号に従って動作する、請求項1に記載の駆動回路。
【請求項6】
前記指令信号は、パルス状の指令信号であり、
前記第1スイッチのターンオン指令は、前記指令信号の第1エッジをトリガーとする指令であり、
前記第2スイッチのターンオン指令は、前記指令信号の第2エッジをトリガーとする指令である、請求項5に記載の駆動回路。
【請求項7】
前記指令信号は、50%デューティ比の信号である、請求項6に記載の駆動回路。
【請求項8】
前記第1ドライバは、前記第1時間を形成する第1遅延回路を含み、
前記第2ドライバは、前記第2時間を形成する第2遅延回路を含む、請求項1に記載の駆動回路。
【請求項9】
前記切り替え回路は、
第1抵抗と、
第2抵抗と、
前記第1スイッチのターンオン指令を受けると、前記駆動ラインを前記第1抵抗を介して前記第1電源ラインにプルアップし、前記第2スイッチのターンオン指令を受けると、前記駆動ラインを前記第2抵抗を介して前記第2電源ラインにプルダウンする第3スイッチと、を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の駆動回路。
【請求項10】
第1電源ラインと駆動ラインとの間に配置された第1スイッチと、前記第1電源ラインよりも低電位の第2電源ラインと前記駆動ラインとの間に配置された第2スイッチとを駆動する方法であって、
前記第1スイッチのターンオン指令を受けると、前記第1スイッチをターンオンさせてから第1時間の経過時にターンオフさせ、
前記第2スイッチのターンオン指令を受けると、前記第2スイッチをターンオンさせてから第2時間の経過時にターンオフさせ、
前記第1スイッチのターンオン指令を受けると、前記駆動ラインを前記第1電源ラインにプルアップし、前記第2スイッチのターンオン指令を受けると、前記駆動ラインを前記第2電源ラインにプルダウンする、駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、駆動回路及び駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換回路には、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)やMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor:電界効果トランジスタ)といったパワー半導体が用いられる。これらのパワー半導体を制御する回路(ゲート駆動回路)として、例えば、特許文献1,2が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-70233号公報
【特許文献2】特開2019-193406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1,2のように、ゲート駆動回路は、一般的に、ハイサイドの第1スイッチとローサイドの第2スイッチの直列接続により構成される。しかしながら、部品の個体差などによって、ハイサイドの第1スイッチとローサイドの第2スイッチが同期間にオンする可能性がある。
【0005】
本開示は、第1スイッチと第2スイッチが同期間にオンする可能性を低減することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様では、
第1電源ラインと、
前記第1電源ラインよりも低い電位である第2電源ラインと、
駆動ラインと、
前記第1電源ラインと前記駆動ラインとの間に配置された第1スイッチと、
前記第2電源ラインと前記駆動ラインとの間に配置された第2スイッチと、
前記第1スイッチのターンオン指令を受けると、前記第1スイッチをターンオンさせてから第1時間の経過時にターンオフさせる第1ドライバと、
前記第2スイッチのターンオン指令を受けると、前記第2スイッチをターンオンさせてから第2時間の経過時にターンオフさせる第2ドライバと、
前記第1スイッチのターンオン指令を受けると、前記駆動ラインを前記第1電源ラインにプルアップし、前記第2スイッチのターンオン指令を受けると、前記駆動ラインをプルダウンする切り替え回路と、を備える、駆動回路が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様によれば、第1スイッチと第2スイッチが同期間にオンする可能性を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態の駆動回路を備える電力変換装置の構成例を示す図である。
【
図2】一実施形態に係る駆動回路が行う駆動方法による動作を例示するタイミングチャートである。
【
図5】一実施形態の駆動回路の具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、一実施形態を説明する。
【0010】
図1は、一実施形態の駆動回路を備える電力変換装置の構成例を示す図である。
図1に示す電力変換装置101は、直流を交流に変換するインバータでも、直流を直流に変換するコンバータでもよい。例えば、電力変換装置101は、不図示の直流電源から供給される直流電力を、モータ等の負荷に供給する交流電力に変換するインバータである。電力変換装置101は、駆動回路50及びスイッチング素子Qを備える。
【0011】
電力変換装置101が例えばU,V,Wの三相の交流電力を生成するインバータの場合、電力変換装置101は、スイッチング素子Qとそれを駆動する駆動回路50とをそれぞれ有する同一構成の6つのスイッチング回路を備える。
図1は、電力変換装置101が備える複数のスイッチング回路のうちの一つのスイッチング回路を示している。
【0012】
駆動回路50は、ゲートパルス生成回路80から供給される指令信号GP(ターンオン指令又はターンオフ指令)に従って、スイッチング素子Qを駆動することで、スイッチング素子Qをスイッチングさせる(スイッチング素子Qをオン又はオフとする)。
【0013】
スイッチング素子Qは、第1主電極と第2主電極とゲート電極とを有する、電圧駆動型の素子である。スイッチング素子Qの具体例として、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)が挙げられる。MOSFETは、ドレインDとソースSとゲート電極Gとを有するパワースイッチング素子である。なお、ゲート電極Gは、制御端子の一例である。ドレインDは、第1主電極の一例である。ソースSは、第2主電極の一例である。
【0014】
スイッチング素子Qは、MOSFETに限られず、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等の他の半導体スイッチング素子でもよい。IGBTは、コレクタとエミッタとゲート電極とを有するパワースイッチング素子である。なお、ゲート電極は、制御端子の一例である。コレクタは、第1主電極の一例である。エミッタは、第2主電極の一例である。
【0015】
スイッチング素子Qは、駆動回路50によって駆動される。スイッチング素子Qは、ゲート電極が駆動ライン63に電気的に接続され、第2主電極が、駆動回路50の基準電位GNDに電気的に接続される。
【0016】
駆動回路50は、ゲートパルス生成回路80、第1スイッチQ1、第2スイッチQ2、第1ドライバ10、第2ドライバ20及び切り替え回路30を備える。
【0017】
第1スイッチQ1は、第1電源ライン61と駆動ライン63との間に配置されたハイサイドスイッチである。第2スイッチQ2は、第2電源ライン62の駆動ライン63との間に配置されたローサイドスイッチである。第1スイッチQ1は、第1電源ライン61に電気的に接続された第1主電極と、駆動ライン63に電気的に接続された第2主電極と、第1ドライバ10に電気的に接続されたゲート電極とを有するハイサイド素子である。第2スイッチQ2は、駆動ライン63に電気的に接続された第1主電極と、第2電源ライン62に電気的に接続された第2主電極と、第2ドライバ20に電気的に接続されたゲート電極とを有するローサイド素子である。
図1は、第1スイッチQ1及び第2スイッチQ2が、Nチャネル型のMOSFETの場合を例示する。
【0018】
第2電源ライン62は、第1電源ライン61よりも低電位である。例えば、第1電源ライン61は、正電源電圧Vpを出力する正電源に電気的に接続される部位であり、第2電源ライン62は、負電源電圧-Vnを出力する負電源に電気的に接続される部位である。第1電源ライン61は、電位が基準電位GNDよりも高い。第2電源ライン62は、電位が基準電位GNDより低くてもよいし、基準電位GNDと同電位であってもよい。
【0019】
第1ドライバ10は、指令信号GPに従って、第1スイッチQ1をターンオンさせてから第1時間の経過時にターンオフさせる第1パルスGQ1を生成するハイサイド駆動回路である。第1ドライバ10は、パルス生成回路12及び駆動バッファ11を有する。パルス生成回路12は、指令信号GPに従って、第1パルスGQ1を生成する。駆動バッファ11は、パルス生成回路12により生成された第1パルスGQ1により第1スイッチQ1を駆動する回路である。
【0020】
第2ドライバ20は、指令信号GPに従って、第2スイッチQ2をターンオンさせてから第2時間の経過時にターンオフさせる第2パルスGQ2を生成するローサイド駆動回路である。第2ドライバ20は、反転回路23、パルス生成回路22及び駆動バッファ21を有する。反転回路23は、指令信号GPの論理レベルを反転して、反転指令信号GPIを生成する。パルス生成回路22は、反転指令信号GPIに従って、第2パルスGQ2を生成する。駆動バッファ21は、パルス生成回路22により生成された第2パルスGQ2により第2スイッチQ2を駆動する回路である。
【0021】
切り替え回路30は、指令信号GPに従ってパルス電圧G1を生成する。パルス電圧G1は、駆動ライン63に印加される。切り替え回路30は、指令信号GPに従ってパルス電圧G1を駆動ライン63に印加することで、駆動ライン63を第1電源ライン61にプルアップするか、駆動ライン63を第2電源ライン62にプルダウンするかを切り替える。切り替え回路30は、反転回路33及び電圧維持回路34を有する。反転回路33は、指令信号GPの論理レベルを反転して、第3パルスGQ3を生成する。第3パルスGQ3は、反転指令信号GPIと同位相の信号である。電圧維持回路34は、第3パルスGQ3に従ってパルス電圧G1を生成する。電圧維持回路34は、パルス電圧G1を駆動ライン63に印加することで、スイッチング素子Qのゲート電圧Vgを正電源電圧Vp又は負電源電圧-Vnに略同一の電圧値に維持する。ゲート電圧Vgは、スイッチング素子Qにおけるゲート電極と第2主電極との間の電圧に相当する。第3パルスGQ3は、反転指令信号GPIと同位相の信号であるので、反転回路33と反転回路23は、一つの反転回路にまとめてもよい。
【0022】
切り替え回路30は、第1ドライバ10及び第2ドライバ20と共通の指令信号GPに従って動作する。これにより、パルス電圧G1を駆動ライン63に印加するタイミングは、第1スイッチQ1又は第2スイッチQ2のターンオンのタイミングに同期する。
【0023】
なお、ゲート抵抗が駆動ライン63の間に直列に挿入されてもよい。オンゲート抵抗が駆動ライン63と第1電源ライン61との間において第1スイッチQ1に直列に挿入されてもよい。オフゲート抵抗が駆動ライン63と第2電源ライン62との間において第2スイッチQ2に直列に挿入されてもよい。
【0024】
図2は、一実施形態に係る駆動回路が行う駆動方法による動作を例示するタイミングチャートである。
図2は、指令信号GPが、デューティ比が50%のパルス状の指令信号の場合を例示する。
【0025】
第1ドライバ10は、第1スイッチQ1のターンオン指令を指令信号GPにより受けると、第1スイッチQ1をターンオンさせてから第1時間A(t1-t2)の経過時にターンオフさせる第1パルスGQ1を生成する。この例では、第1スイッチQ1のターンオン指令は、指令信号GPの第1エッジ(
図2では、立ち上がりエッジ)をトリガーとする指令である。
【0026】
第2ドライバ20は、第2スイッチQ2のターンオン指令を指令信号GPにより受けると、第2スイッチQ2をターンオンさせてから第2時間C(t3-t4)の経過時にターンオフさせる第2パルスGQ2を生成する。この例では、第2スイッチQ2のターンオン指令は、指令信号GPの第2エッジ(
図2では、立ち下がりエッジ)をトリガーとする指令である。
【0027】
切り替え回路30は、第1スイッチQ1のターンオン指令を指令信号GPにより受けると、駆動ライン63を第1電源ライン61にタイミングt1でプルアップするため、パルス電圧G1を負電源電圧-Vnから正電源電圧Vpに切り替える。切り替え回路30は、第2スイッチQ2のターンオン指令を指令信号GPによりタイミングt3で受けるまで、駆動ライン63を第1電源ライン61にプルアップした状態を維持する。そして、切り替え回路30は、第2スイッチQ2のターンオン指令を指令信号GPにより受けると、駆動ライン63を第2電源ライン62にタイミングt4でプルダウンするため、パルス電圧G1を正電源電圧Vpから負電源電圧-Vnに切り替える。切り替え回路30は、第1スイッチQ1のターンオン指令を指令信号GPによりタイミングt5で受けるまで、駆動ライン63を第2電源ライン62にプルダウンした状態を維持する。これ以降の動作は、繰り返される。
【0028】
このように、駆動回路50によれば、第1スイッチQ1と第2スイッチQ2がいずれもオフ状態である第1デッドタイムB(t2-t3)および第2デッドタイムD(t4-t5)が確保される。また、上述した電圧の変化時間(t1-t2およびt3-t4)は、スイッチング動作の1周期(t1-t5)に対して各々10%以下の時間である。したがって、第1スイッチQ1と第2スイッチQ2が同期間にオンしなくなる。
【0029】
また、第1デッドタイムBおいて駆動ライン63が第1電源ライン61にプルアップされた状態が維持されるので、スイッチング素子Qのゲート電圧Vgが意図に反して第1デッドタイムBおいて低下しないように、第1デッドタイムBを設けることができる。同様に、第2デッドタイムDおいて駆動ライン63が第2電源ライン62にプルダウンされた状態が維持されるので、スイッチング素子Qのゲート電圧Vgが意図に反して第2デッドタイムDおいて上昇しないように、第2デッドタイムDを設けることができる。
【0030】
図3は、パルス生成回路の一構成例を示す図である。
図1に示すパルス生成回路12,22のいずれも、
図3に示す構成を有してよい。
図3に示すパルス生成回路2は、遅延回路5、反転回路7及び論理積回路6を有する。
【0031】
ハイサイドのパルス生成回路12(
図1)の場合、
図3に示す遅延回路5は、第1時間A(
図2)を形成する第1遅延回路の一例である。遅延回路5は、パルス状の指令信号GPを第1時間Aだけ遅延させた第1遅延指令信号GPD(
図2)を生成する。反転回路7は、第1遅延指令信号GPDの論理レベルを反転させて、第1反転遅延指令信号を生成する。論理積回路6は、指令信号GPと第1反転遅延指令信号との論理積である第1パルスGQ1を生成する。
【0032】
ローサイドのパルス生成回路22(
図1)の場合、
図3に示す遅延回路5は、第2時間C(
図2)を形成する第2遅延回路の一例である。遅延回路5は、パルス状の反転指令信号GPIを第2時間Cだけ遅延させた第2遅延指令信号GPID(
図2)を生成する。反転回路7は、第2遅延指令信号GPIDの論理レベルを反転させて、第2反転遅延指令信号を生成する。論理積回路6は、指令信号GPと第2反転遅延指令信号との論理積である第2パルスGQ2を生成する。
【0033】
遅延回路5は、例えば、抵抗素子3とコンデンサ4によるローパスフィルタを含む回路である。ローパスフィルタの時定数は、所定の第1時間A及び所定の第2時間Cが確保されるように予め調整される。
【0034】
第1時間Aは、例えば、第1スイッチQ1のターンオン指令を受けてから駆動ライン63の電圧(ゲート電圧Vg)が所定の第1閾値th1以上に到達するまでの時間のうち、第1スイッチQ1の動作条件で想定される最長の時間以上の値に設定される。第2時間Cは、例えば、第2スイッチQ2のターンオン指令を受けてからゲート電圧Vgが所定の第2閾値th2以下に到達するまでの時間のうち、第2スイッチQ2の動作条件で想定される最長の時間以上に設定される。これにより、第1時間A及び第2時間Cは、予め設定された一定値となる。第2閾値th2は、第1閾値th1よりも低い。
【0035】
あるいは、第1時間A及び第2時間Cは、可変値としてもよい。第1ドライバ10及び第2ドライバ20は、例えば、駆動ライン63の電圧(ゲート電圧Vg)を検出する。第1ドライバ10は、ゲート電圧Vgの検出値が所定の第1閾値th1以上であることが検出されると、第1スイッチQ1をターンオフさせる。これにより、
図2に示す第1時間Aは、第1スイッチQ1のターンオン指令を受けてから駆動ライン63の電圧が第1閾値th1以上になるまでの時間が可変の値となる。例えば、スイッチング素子Qのゲート電極の充電が完了すると速やかにタイミングt2で第1スイッチQ1をターンオフさせることができる。同様に、第2ドライバ20は、ゲート電圧Vgの検出値が所定の第1閾値th1よりも低い第2閾値th2以下であることが検出されると、第2スイッチQ2をターンオフさせる。これにより、
図2に示す第2時間Cは、第2スイッチQ2のターンオン指令を受けてから駆動ライン63の電圧が第2閾値th2以下になるまでの時間が可変の値となる。例えば、スイッチング素子Qのゲート電極の放電が完了すると速やかにタイミングt4で第2スイッチQ2をターンオフさせることができる。
【0036】
第1ドライバ10は、ゲート電圧Vgの検出値が所定の第1閾値th1以上であることが検出されると、例えば、遅延回路5(
図3)の時定数を調整することで、第1時間Aの長さを調整する。第2ドライバ20は、ゲート電圧Vgの検出値が所定の第1閾値th1よりも低い第2閾値th2以下であることが検出されると、例えば、遅延回路5(
図3)の時定数を調整することで、第2時間Cの長さを調整する。
【0037】
また、第1時間Aおよび第2時間Cは、駆動ライン63の電圧(ゲート電圧Vg)に代えて、スイッチング素子Qにおける第1主電極と第2主電極との間に生ずる電圧(主電極間の電圧)を利用して決められてもよい。
【0038】
第1時間Aは、例えば、第1スイッチQ1のターンオン指令を受けてからスイッチング素子Qの主電極間の電圧が所定の第3閾値th3以下に到達するまでの時間のうち、第1スイッチQ1の動作条件で想定される最長の時間以上の値に設定される。第2時間Cは、例えば、第2スイッチQ2のターンオン指令を受けてからスイッチング素子Qの主電極間の電圧が所定の第4閾値th4以上に到達するまでの時間のうち、第2スイッチQ2 の動作条件で想定される最長の時間以上に設定される。これにより、第1時間A及び第2時間Cは、予め設定された一定値となる。第4閾値th4は、第3閾値th3よりも高い。
【0039】
あるいは、第1ドライバ10及び第2ドライバ20は、例えば、スイッチング素子Qの主電極間の電圧を検出する。第1ドライバ10は、主電極間の電圧の検出値が所定の第3閾値th3以下であることが検出されると、第1スイッチQ1をターンオフさせる。これにより、
図2に示す第1時間Aは、第1スイッチQ1のターンオン指令を受けてからスイッチング素子Qの主電極間の電圧が第3閾値th3以下になるまでの時間が可変の値となる。例えば、スイッチング素子Qのターンオンが完了すると速やかにタイミングt2で第1スイッチQ1をターンオフさせることができる。同様に、第2ドライバ20は、スイッチング素子Qの主電極間の電圧の検出値が所定の第3閾値th3よりも高い第4閾値th4以上であることが検出されると、第2スイッチQ2をターンオフさせる。これにより、
図2に示す第2時間Cは、第2スイッチQ2のターンオン指令を受けてからスイッチング素子Qの主電極間の電圧が第4閾値th4以上になるまでの時間が可変の値となる。例えば、スイッチング素子Qのターンオフが完了すると速やかにタイミングt4で第2スイッチQ2をターンオフさせることができる。
【0040】
また、第1時間Aおよび第2時間Cは、駆動ライン63の電圧(ゲート電圧Vg)に代えて、スイッチング素子Qにおける第1主電極と第2主電極との間に流れる電流(主電極間の電流)を利用して決められてもよい。
【0041】
第1時間Aは、例えば、第1スイッチQ1のターンオン指令を受けてからスイッチング素子Qの主電極間の電流が所定の第5閾値th5以上に到達するまでの時間のうち、第1スイッチQ1の動作条件で想定される最長の時間以上の値に設定される。第2時間Cは、例えば、第2スイッチQ2のターンオン指令を受けてからスイッチング素子Qの主電極間の電流が所定の第6閾値th6以下に到達するまでの時間のうち、第2スイッチQ2の動作条件で想定される最長の時間以上に設定される。これにより、第1時間A及び第2時間Cは、予め設定された一定値となる。第6閾値th6は、第5閾値th5よりも低い。
【0042】
あるいは、第1ドライバ10及び第2ドライバ20は、例えば、スイッチング素子Qの主電極間の電流を検出する。第1ドライバ10は、主電極間の電流の検出値が所定の第5閾値th5以上であることが検出されると、第1スイッチQ1をターンオフさせる。これにより、
図2に示す第1時間Aは、第1スイッチQ1のターンオン指令を受けてからスイッチング素子Qの主電極間の電流が第5閾値th5以上になるまでの時間が可変の値となる。例えば、スイッチング素子Qのターンオンが完了すると速やかにタイミングt2で第1スイッチQ1をターンオフさせることができる。同様に、第2ドライバ20は、スイッチング素子Qの主電極間の電流の検出値が所定の第5閾値th5よりも低い第6閾値th6以下であることが検出されると、第2スイッチQ2をターンオフさせる。これにより、
図2に示す第2時間Cは、第2スイッチQ2のターンオン指令を受けてからスイッチング素子Qの主電極間の電流が第6閾値th6以下になるまでの時間が可変の値となる。例えば、スイッチング素子Qのターンオフが完了すると速やかにタイミングt4で第2スイッチQ2をターンオフさせることができる。
【0043】
第1ドライバ10は、スイッチング素子Qの主電極間の電圧の検出値が所定の第3閾値th3以下又はスイッチング素子Qの主電極間の電流の検出値が所定の第5閾値th5以上であることが検出されると、例えば、遅延回路5(
図3)の時定数を調整することで、第1時間Aの長さを調整する。第2ドライバ20は、スイッチング素子Qの主電極間の電圧の検出値が所定の第4閾値th4以上又はスイッチング素子Qの主電極間の電流の検出値が所定の第6閾値th6以下であることが検出されると、例えば、遅延回路5(
図3)の時定数を調整することで、第2時間Cの長さを調整する。
【0044】
図4は、電圧維持回路の一構成例を示す図である。電圧維持回路34は、第1抵抗R1と、第2抵抗R2と、第3スイッチQ3とが直列に接続された構成を有する。第3スイッチQ3は、第3パルスGQ3に従ってターンオン又はターンオフする。第3スイッチQ3は、第1スイッチQ1のターンオン指令を第3パルスGQ3により受けると、駆動ライン63を第1抵抗R1を介して第1電源ライン61にプルアップし、パルス電圧G1を負電源電圧-Vnから正電源電圧Vpに切り替える。第3スイッチQ3は、第2スイッチQ2のターンオン指令を第3パルスGQ3により受けると、駆動ライン63を第2抵抗R2を介して第2電源ライン62にプルダウンし、パルス電圧G1を正電源電圧Vpから負電源電圧-Vnに切り替える。
【0045】
図5は、一実施形態の駆動回路の具体例を示す図である。
図5に示す駆動回路51は、上記の駆動回路50の一具体例である。駆動回路51は、
図4に示す電圧維持回路34の構成を有する。スイッチング素子QSは、上記のスイッチング素子Qの一例であり、MOSFETの場合を示す。第1電源ライン61は、正電源電圧Vpを生成する正電源64に接続される。第2電源ライン62は、負電源電圧-Vnを生成する負電源65に接続される。基準電位GNDは、スイッチング素子QSのソース電極(第2主電極の一例)に電気的に接続される。コンデンサ66は、ゲート電極とソース電極との間に存在する容量成分を表したものである。
【0046】
図6-
図9は、
図2に示す期間A,B,C、Dでの電流経路を示す図である。期間A(
図6)では、第1スイッチQ1のオンにより駆動ライン63は第1電源ライン61に接続される。これにより、図示の経路で、スイッチング素子QSのゲート電極を充電する電流が流れる。期間B(
図7)では、第1スイッチQ1のオフにより駆動ライン63は第1抵抗R1を介して第1電源ライン61にプルアップされる。これにより、図示の経路で電流が流れるので、駆動ライン63の電圧は、正電源電圧Vpに維持され、スイッチング素子QSは、オン状態に維持される。期間C(
図8)では、第2スイッチQ2のオンにより駆動ライン63は第2電源ライン62に接続される。これにより、図示の経路で、スイッチング素子QSのゲート電極を放電する電流が流れる。期間D(
図9)では、第2スイッチQ2のオフ及び第3スイッチQ3のオンにより駆動ライン63は第2抵抗R2を介して第2電源ライン62にプルダウンされる。これにより、以下の式の様に、第1抵抗R1と第2抵抗R2の分圧により決定される電圧が、スイッチング素子QSのゲート電極に印加される。
【0047】
駆動ライン63の電圧=(Vp-Vn)×R2/(R1+R2)-Vn
駆動ライン63電圧をスイッチング素子QSがオンするゲート電圧未満にするように第1抵抗R1と第2抵抗R2を設定することで、スイッチング素子QSのオフ状態は、維持される。
【0048】
なお、「駆動ライン63をプルダウンする」とは、駆動ライン63の電圧をスイッチング素子がオンする電圧未満にすることを表し、駆動ライン63の電圧は、第2電源ライン62の電圧に一致しなくてもよい。
【0049】
以上の通り、実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の組み合わせ、省略、置き換え、変更などを行うことが可能である。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0050】
例えば、ゲートパルス生成回路80が設けられる箇所は、駆動回路50の内部でも外部でもよい。
【符号の説明】
【0051】
2 パルス生成回路
5 遅延回路
6 論理積回路
10 第1ドライバ
20 第2ドライバ
30 切り替え回路
34 電圧維持回路
50,51 駆動回路
61 第1電源ライン
62 第2電源ライン
63 駆動ライン
64 正電源
65 負電源
66 コンデンサ
80 ゲートパルス生成回路
101 電力変換装置
Q1 第1スイッチ
Q2 第2スイッチ
Q3 第3スイッチ
R1 第1抵抗
R2 第2抵抗