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特開2024-136744デューティ比補正回路、クロック分配システム及びデューティ比補正方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136744
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】デューティ比補正回路、クロック分配システム及びデューティ比補正方法
(51)【国際特許分類】
   H03K 5/00 20060101AFI20240927BHJP
   H03K 5/13 20140101ALI20240927BHJP
【FI】
H03K5/00 T
H03K5/13
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047962
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【弁理士】
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】酒井 元
(72)【発明者】
【氏名】堀 真一
【テーマコード(参考)】
5J001
【Fターム(参考)】
5J001BB12
5J001BB15
5J001DD01
(57)【要約】
【課題】クロック信号の高精度なデューティ比補正とデューティ比の高速安定化とを可能とする。
【解決手段】デューティ比補正回路は、入力された第1のクロック信号のデューティ比を制御信号に基づいて調整し、デューティ比が調整された第1のクロック信号である第2のクロック信号を出力するデューティ比調整回路と、第2のクロック信号が入力され、第2のクロック信号の位相を持つ出力クロック信号、及び、出力クロック信号の位相が反転された信号である反転クロック信号を出力する反転信号生成回路と、出力クロック信号と反転クロック信号との間に出力クロック信号の半周期分の遅延量の遅延を生じさせる遅延回路と、遅延回路から出力された出力クロック信号及び反転クロック信号の振幅の差分を増幅した信号を制御信号としてデューティ比調整手段へ出力する差動増幅器と、を備える。
【選択図】 図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された第1のクロック信号のデューティ比を制御信号に基づいて調整し、前記デューティ比が調整された前記第1のクロック信号を第2のクロック信号として出力するデューティ比調整手段と、
前記第2のクロック信号が入力され、前記第2のクロック信号の位相を持つ出力クロック信号、及び、前記出力クロック信号の位相が反転された信号である反転クロック信号を出力する反転信号生成手段と、
前記出力クロック信号と前記反転クロック信号との間に前記出力クロック信号の半周期分の遅延量の遅延を生じさせる遅延手段と、
前記遅延手段から出力された前記出力クロック信号及び前記反転クロック信号の振幅の差分を増幅した信号を前記制御信号として前記デューティ比調整手段へ出力する差動増幅手段と、
を備える、デューティ比補正回路。
【請求項2】
前記遅延手段は前記反転クロック信号を遅延させる、請求項1に記載されたデューティ比補正回路。
【請求項3】
前記遅延手段は偶数個のインバータによって前記出力クロック信号又は前記反転クロック信号を遅延させる、請求項1又は2に記載されたデューティ比補正回路。
【請求項4】
前記遅延手段と前記差動増幅手段との間に備えられたローパスフィルタと、
前記差動増幅手段の出力に備えられた積分キャパシタと、
を備える、請求項1又は2に記載されたデューティ比補正回路。
【請求項5】
前記遅延手段は複数の遅延素子を備え、前記遅延量は前記複数の遅延素子の直列接続数を切り替えることによって調整される、請求項1又は2に記載されたデューティ比補正回路。
【請求項6】
それぞれが請求項1又は2に記載されたデューティ比補正回路である複数のクロック補正回路と、
前記複数のクロック補正回路のそれぞれに前記第1のクロック信号を分配するクロック信号生成回路と、
前記複数のクロック補正回路が備えるそれぞれの前記反転信号生成手段に接続され、前記出力クロック信号又は前記反転クロック信号の少なくとも一方が前記反転信号生成手段から入力される複数のディジタル回路と、
を備えるクロック分配システム。
【請求項7】
入力された第1のクロック信号のデューティ比を制御信号に基づいて調整し、
前記デューティ比が調整された前記第1のクロック信号を第2のクロック信号として出力し、
前記第2のクロック信号の位相を持つ出力クロック信号を出力し、
前記出力クロック信号の位相が反転された信号である反転クロック信号を出力し、
前記出力クロック信号と前記反転クロック信号との間に前記出力クロック信号の半周期分の遅延量の遅延を生じさせ、
前記遅延を生じさせる処理を受けた前記出力クロック信号及び前記反転クロック信号の振幅の差分を増幅した信号を前記制御信号として出力する、
デューティ比補正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デューティ比補正回路等に関する。
【背景技術】
【0002】
図14は、クロック信号生成回路910からディジタル回路920へのクロック信号の供給について説明する図である。ディジタル回路920では、動作のタイミングの基準としてクロック信号が用いられる。一般的に、デューティ比が50%であるクロック信号を用いることで、ディジタル回路920を安定して動作させることが可能となる。しかし、高速クロック(特に1GHz以上のクロック)が使用される場合には、図14に示すように、ディジタル回路920への入力時にクロック信号のデューティ比が50%からずれてしまう場合がある。この原因には、例えば、クロック信号生成回路910とディジタル回路920と間でのインピーダンスのミスマッチングがある。クロック信号のこのようなデューティ比のずれを低減する手段として、デューティ比補正回路が知られている。
【0003】
図15は、一般的なデューティ比補正回路900の適用例を示す図である。デューティ比補正回路900は、クロック信号生成回路910から入力されたクロック信号を好ましいデューティ比(例えば、50%)に補正して、ディジタル回路920に供給する。図16は、一般的なデューティ比補正回路900の構成例を示す図である。デューティ比補正回路900は、デューティ比調整回路901とデューティ比検出回路902とから構成される。デューティ比調整回路901は、入力されたクロック信号のデューティ比を制御電圧に応じたデューティ比に調整し、調整されたクロック信号をデューティ比検出回路902へ出力する。制御電圧は、デューティ比検出回路902において検出された、クロック信号のデューティ比に対応する。例えば、デューティ比検出回路902に入力されるデューティ比の増加につれて制御電圧は単調に増加する。デューティ比調整回路901の回路例を図17に示す。デューティ比調整回路901は、閾値調整型インバータを用いて構成できる。閾値調整型インバータは、制御電圧によって閾値を調整可能なインバータである。
【0004】
図18は、デューティ比調整回路901における、制御電圧とデューティ比との関係の例を示す図である。図18の縦軸には入力デューティ比が50%である場合の出力デューティ比が示され、横軸には制御電圧が示される。入力デューティ比は、デューティ比調整回路901に入力されるクロック信号のデューティ比である。出力デューティ比は、デューティ比調整回路901から出力されるクロック信号のデューティ比である。図18は、特に1GHz以上の周波数のクロック信号では、制御電圧を350mVから650mVの間で調整することによって、出力デューティ比を約10%から100%の間で調整できることを示す。
【0005】
図19は、デューティ比検出回路902の詳細な構成例を示す図である。デューティ比検出回路902は、入力されたクロック信号のデューティ比を、DC(Direct Current、直流)電圧に変換して出力する。デューティ比検出回路902は、反転信号生成回路903、LPF(Low Pass Filter、ローパスフィルタ)904及び差動増幅器905によって構成される。反転信号生成回路903は、デューティ比調整回路から出力された出力クロック信号及びそれを反転した信号である反転クロック信号を出力する。LPF904を通過した出力クロック信号及び反転クロック信号は、それぞれのデューティ比に応じたDC(直流)成分を差動増幅器に入力する。
【0006】
差動増幅器905は、クロック信号のDC成分と反転クロック信号のDC成分との差分を増幅する。増幅された差分は、制御電圧として差動増幅器から出力される。
【0007】
図20は、クロック信号及び反転クロック信号のそれぞれのDC成分と制御電圧の時間経過を説明する図である。図20にて、左の縦軸には電圧、右の縦軸には制御電圧が示され、横軸には時間が示されている。デューティ比調整回路901及びデューティ比検出回路902によって、デューティ比補正回路900は、入力クロック信号のデューティ比を補正するフィードバック制御を行う。このフィードバック制御は、差動増幅器905の入力における出力クロック信号のDC成分と反転クロック信号のDC成分との差分が0になるように行われる。DC成分の差分が0になることは、すなわち、クロック信号のデューティ比が50%となることを意味する。従って、反転信号生成回路903から出力されるクロック信号及び反転クロック信号のデューティ比は50%に収束する。
【0008】
本発明に関連して、特許文献1には、デューティ比調整装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2016-149637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図19に示したデューティ比検出回路902が備えるLPF904は、クロック信号及び反転クロック信号から高周波成分を除去し、DC成分を抽出する。矩形波に含まれる高周波成分をLPF904において充分に除去するためには、LPF904の遮断(カットオフ)周波数は入力クロック周波数に対して充分に低い必要がある。しかし、遮断周波数の低いLPFは時定数が大きいため、出力信号が安定するまでに長い時間を要する。
【0011】
また、LPF904によって充分に除去出来なかった矩形波に含まれる高周波成分は、差動増幅器905から出力される制御電圧にリプル(ripple)を生じさせる。この制御電圧のリプルは出力信号のジッタ(jitter)を大きくする要因となるため、高精度なデューティ比補正の障害となる。従って、制御電圧に重畳されたリプルは小さいことが好ましい。しかしながら、制御電圧のリプルを充分に取り除くためには、図19において差動増幅器905の出力に配置された積分キャパシタ906の時定数を大きくする必要がある。しかし、積分キャパシタ906の時定数を大きくすると、やはり、差動増幅器の出力信号の安定までに時間を要する。
【0012】
図21は、LPF904と積分キャパシタ906とが制御電圧に与える影響を示す一般的な図である。図21にて、縦軸には制御電圧が示され、横軸には時間が示されている。図21の波形Aは、LPF904の遮断周波数fcが比較的低く、積分キャパシタ906が比較的大きい場合を示す。波形Bは、LPFの遮断周波数が波形Aの場合より高く、積分キャパシタ906が波形Aの場合よりも小さい場合を示す。
【0013】
波形Aは、制御電圧のリプルは小さいが、制御電圧が安定するまでに(すなわち、出力クロック信号のデューティ比が一定となるまでに)に、波形Bよりも時間を要している。一方で、波形Bは、クロック信号のデューティ比の高速安定化を重視するために、時定数が小さく遮断周波数の高いLPF904、及び、小容量の積分キャパシタ906を使用した場合を示す。この場合には、矩形波に由来する高周波成分が充分に除去されない。加えて、小容量の(すなわち、時定数が小さい)積分キャパシタでは、差動増幅器905から出力された制御電圧に重畳されたリプルを充分に除去できない。このため、制御電圧には大きなリプルが残存する。波形Bは、このように、時定数が小さい反面、制御電圧に大きなリプルが重畳されることを示す。以上のように、デューティ比の補正の高精度化と高速安定化との間にはトレードオフの関係がある。このため、一般的なデューティ比制御回路には、これらの両立が困難であるという課題があった。
【0014】
(発明の目的)
本発明は、クロック信号の高精度なデューティ比補正とデューティ比の高速安定化とを可能とするための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のデューティ比補正回路は、
入力された第1のクロック信号のデューティ比を制御信号に基づいて調整し、前記デューティ比が調整された前記第1のクロック信号である第2のクロック信号を出力するデューティ比調整手段と、
前記第2のクロック信号が入力され、前記第2のクロック信号の位相を持つ出力クロック信号、及び、前記出力クロック信号の位相が反転された信号である反転クロック信号を出力する反転信号生成手段と、
前記出力クロック信号と前記反転クロック信号との間に前記出力クロック信号の半周期分の遅延量の遅延を生じさせる遅延手段と、
前記遅延手段から出力された前記出力クロック信号及び前記反転クロック信号の振幅の差分を増幅した信号を前記制御信号として前記デューティ比調整手段へ出力する差動増幅手段と、
を備える。
【0016】
本発明のデューティ比補正方法は、
入力された第1のクロック信号のデューティ比を制御信号に基づいて調整し、
前記デューティ比が調整された前記第1のクロック信号である第2のクロック信号を出力し、
前記第2のクロック信号の位相を持つ出力クロック信号、及び、前記出力クロック信号の位相が反転された信号である反転クロック信号を出力し、
前記出力クロック信号と前記反転クロック信号との間に前記出力クロック信号の半周期分の遅延量の遅延を生じさせ、
前記遅延が生じした前記出力クロック信号及び前記反転クロック信号の振幅の差分を増幅した信号を前記制御信号として出力する、
手順を含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、クロック信号の高精度なデューティ比補正とデューティ比の高速安定化とを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】デューティ比補正回路の構成例を示す図である。
図2】差動増幅器の同相除去機能について説明する図である。
図3】差動増幅器の同相除去機能について説明する図である。
図4】差動増幅器に入力されるクロック信号及び反転クロック信号の波形の変化の例を示す図である。
図5】差動増幅器に入力されるクロック信号及び反転クロック信号の波形の変化の例を示す図である。
図6】デューティ比補正回路における制御電圧の変化例を示す図である。
図7】デューティ比補正回路の構成例を示す図である。
図8】遅延回路の構成例を示す図である。
図9】デューティ比補正回路の構成例を示す図である。
図10】デューティ比補正回路の構成例を示す図である。
図11】クロック周波数と、その周波数におけるインバータの数の関係の例を示す図である。
図12】クロック分配システムの構成例を示す図である。
図13】デューティ比補正回路の構成例を示す図である。
図14】クロック信号の生成回路からディジタル回路へのクロック信号の供給について説明する図である。
図15】一般的なデューティ比補正回路について説明する図である。
図16】一般的なデューティ比補正回路の構成例を示す図である。
図17】一般的なデューティ比調整回路の回路図を示す図である。
図18】制御電圧とデューティ比との関係の例を示す図である。
図19】一般的なデューティ比検出回路の構成例を示す図である。
図20】クロック信号及び反転クロック信号のそれぞれのDC成分と制御電圧の時間経過を説明する図である。
図21】LPFと積分キャパシタとが制御電圧に与える影響を示す一般的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態について以下に説明する。各図面内の矢印は実施形態における信号の方向を例示するものであり、信号の方向を限定しない。各ブロック図の信号の経路を示す直線の交点は、黒い丸印等によって特記されない限り交差する信号間の分岐あるいは結合を意味しない。各図面において既出の要素には同一の参照符号を付して、重複する説明は省略する場合がある。
【0020】
(第1の実施形態)
[構成]
図1は、本発明のデューティ比補正回路100の構成例を示す図である。デューティ比補正回路100は、デューティ比調整回路110、反転信号生成回路120、差動増幅器130及び遅延回路140を備える。遅延回路140は、反転信号生成回路120の反転クロック出力と差動増幅器130の差動入力の一方である入力132との間に配置される。反転信号生成回路120、差動増幅器130及び遅延回路140は、デューティ比検出回路109を構成する。
【0021】
[動作]
デューティ比調整回路110には、デューティ比が必ずしも50%でないクロック信号(第1のクロック信号)が入力される。デューティ比調整回路110の出力(第2のクロック信号)は、反転信号生成回路120に入力される。反転信号生成回路120は、デューティ比調整回路110から入力されたクロック信号と同じ位相を持つクロック信号121(出力クロック信号)と、反転クロック信号122とをそれぞれ出力する。反転クロック信号122は、クロック信号121の位相を反転させた信号である。クロック信号121及び反転クロック信号122は、インバータ等のバッファを介して出力端子(out1、out2)からデューティ比補正回路100の外部に出力される。出力されたこれらのクロック信号は、図示されないディジタル回路のクロック信号として用いることができる。なお、反転信号生成回路120は、デューティ比調整回路110から入力されたクロック信号を、そのままクロック信号121として出力してもよい。
【0022】
クロック信号121及び反転クロック信号122は、差動増幅器130にも入力される。クロック信号121は、差動増幅器130の差動入力の他方である入力131に入力される。反転クロック信号122は、遅延回路140を介して差動増幅器130の入力132に入力される。
【0023】
遅延回路140は、回路固有の遅延によって、入力された信号を遅延させる。遅延回路140は、例えば、インバータ、増幅器、差動アンプ等、一般的な電気回路やLSI(Large Scale Integration)等の小型のデバイスを用いて構成される。遅延回路140は、クロック信号121と反転クロック信号122との間に、クロック信号121の半周期分の遅延を生じさせる遅延量を持つ。なお、本実施形態及び以降の実施形態において、それぞれに記載された遅延回路の遅延量はクロック信号121の正確な半周期分である必要はない。遅延量がクロック信号121の正確な半周期分でない場合には、差動増幅器130に入力される高周波成分は完全に同相とはならない。しかし、このような場合であっても、後述するように、差動増幅器130への入力信号の振幅は同相除去特性によってその差分として出力されるため、デューティ比補正回路100によって高周波成分の抑圧効果が得られる。すなわち、本願の各実施形態の効果は、「遅延量」がクロック信号121の正確な半周期の長さでない場合にも得られうる。そこで、各実施形態に記載されたそれぞれの遅延回路の説明においては、あるクロック信号に対する「半周期分の遅延量」とは、当該クロック信号の正確な半周期の長さの0.8倍以上1.2倍以下(すなわち、±20%以内)の値の遅延量を指すものとする。
【0024】
なお、反転信号生成回路120から差動増幅器130へクロック信号121が伝搬する経路は、遅延回路140に含まれてもよい。この場合、差動増幅器130は、遅延回路140から出力されたクロック信号121及び反転クロック信号141の振幅の差分を増幅した信号を制御信号として出力する。ただし、この場合、クロック信号121は遅延回路140による処理を受けない。
【0025】
また、遅延回路140は、反転信号生成回路120から差動増幅器130へクロック信号121が伝搬する経路上に設けられてもよい。このような構成によっても、遅延回路140は、クロック信号121と反転クロック信号122との間に、クロック信号121の半周期分の遅延を生じさせることができる。
【0026】
デューティ比補正回路100の動作について以下に説明する。反転クロック信号122に対する遅延回路140の遅延量が、クロック信号121の半周期に設定された場合を考える。この場合には、反転クロック信号122の直流成分の振幅は、遅延回路140への入力時の振幅が維持される。一方、入力された反転クロック信号122の高周波成分の位相は、遅延回路140の出力では入力時よりも半周期分遅延される。これにより、遅延回路140から出力される反転クロック信号141の高周波成分は、反転信号生成回路120から出力されるクロック信号121の同相信号に変換される。
【0027】
遅延回路140は、回路固有の遅延機能によって、入力された反転クロック信号122の高周波成分の位相のみをクロック信号121と同相に変換する。そして、遅延回路140の入力と出力との間で、反転クロック信号の直流成分とクロック信号121の直流成分との差動状態は維持される。
【0028】
図2及び図3は、差動増幅器130の同相除去機能について説明する図である。図2は、比較的低周波の差動信号と比較的高周波の同相信号とが、差動増幅器130の差動入力Vin(+)及びVin(-)に入力された場合の動作例を示す。差動増幅器130の出力Voutにおいて、同相信号である高周波信号の振幅は抑圧される一方、逆相である差動信号の振幅は加算されて増大する。すなわち、差動増幅器130は、入力される信号の差分を増幅するとともに、同相信号(例えば、同相ノイズ)を除去する同相除去特性を持つ。
【0029】
図3は、同相の高周波成分としてクロック信号の周波数の成分と、クロック信号の直流成分とが差動増幅器130に入力された場合の動作例を示す。図3においてGNDは直流成分が0の位置を示す。また、図3では、差動増幅器130のVin(+)側に入力される直流成分の振幅はVin(-)側に入力される直流成分の振幅よりも小さい。差動増幅器130は、これらの直流成分の振幅の差をVoutから出力する。また、差動増幅器130の同相除去特性により、差動増幅器130に同相で入力された高周波成分は除去される。その結果、差動増幅器130は、リプルが抑圧された直流信号を出力する。本実施形態では、図1の入力131が図2のVin(+)に対応し、入力132がVin(-)に対応する。
【0030】
このような構成を備えるデューティ比補正回路100では、高周波成分を除去して直流成分を抽出し、制御電圧のリプルを除去するために、一般的なデューティ比補正回路において用いられたローパスフィルタ及び積分キャパシタを省略することができる。その結果、デューティ比補正回路100は、クロック信号の高精度なデューティ比補正とデューティ比の高速安定化とを可能とする
なお、上述の例において差動増幅器130の同相除去特性の効果を充分に得るためには、差動増幅器130に入力される高周波成分の位相が完全に同相となることが好ましい。しかし、高周波成分が完全に同相でない場合であっても、差動増幅器130への入力信号の振幅は同相除去特性によってその差分として出力されるため、デューティ比補正回路100によって高周波成分の抑圧効果が得られる。
【0031】
図4及び図5は、差動増幅器130に入力されるクロック信号121及び反転クロック信号141の波形の変化の例を示す図である。図4及び図5において、差動増幅器130に入力されるクロック信号121及び反転クロック信号141の波形は、デューティ比調整回路110によるフィードバック制御により、時間の経過とともに上の波形から下の波形へ変化する。図4及び図5では、クロック信号の周波数が1GHzの場合を例として示す。従って、差動増幅器130において入出力されるクロック信号の周期は1nsec(ナノ秒)であり、その半周期は0.5nsecである。
【0032】
図4は、デューティ比補正回路100が遅延回路140を備えない場合の例を示す。図4の実線はクロック信号121を示し、図4の破線は反転クロック信号122を示す。図4において、波形の立ち上がり及び立下りの時刻においては実線と破線とは重複している。図4においては、差動増幅器130に入力されるクロック信号121と反転クロック信号122とは逆相の関係にある。この場合、リプルの原因となる矩形波に含まれる高周波成分は同相ではないため、同相除去特性を持つ差動増幅器130では高周波成分は抑圧されない。
【0033】
図5は、デューティ比補正回路100が遅延回路140を備える場合の例を示す。図5の実線はクロック信号121を示し、図5の破線は反転クロック信号141を示す。図5は、差動増幅器130に入力される、クロック信号121及び反転クロック信号141の波形例を示す。遅延回路140の作用によって、差動増幅器130に入力されるクロック信号121と反転クロック信号141とは同相の関係にある。
【0034】
図5において、フィードバック制御の進行によってデューティ比が50%に収束した状態では、クロック信号と反転クロック信号のそれぞれの高周波成分は同相信号に変換されて差動増幅器130へ入力される。そして、上述した差動増幅器130の同相除去特性を利用することによって、リプルの原因となる矩形波に含まれる高周波成分が抑圧される。
【0035】
図6は、図21のグラフに、本発明のデューティ比補正回路100における制御電圧の変化例を追記したものである。図6に示されるように、デューティ比補正回路100では、クロック信号121及び反転クロック信号141に含まれる高周波成分が差動増幅器130によって抑圧される。このため、一般的な回路において必要であったLPF及び積分キャパシタを省くことができ、さらに、制御電圧は、小さい時定数で(すなわち、短時間で)リプルが小さい状態に到達する。その結果、デューティ比補正回路100は、クロック信号の高精度なデューティ比補正とデューティ比の高速安定化とを可能とする。
【0036】
(第2の実施形態)
[構成]
図7は、本発明のデューティ比補正回路101の構成例を示す図である。デューティ比補正回路101は、第1の実施形態のデューティ比補正回路100の遅延回路140に代えて遅延回路240を備える。図8は、遅延回路240の構成例を示す図である。遅延回路240は、インバータ群241を備える。インバータ群241では、2n個のインバータが直列に接続されている。nは自然数である。
【0037】
[動作]
反転クロック信号122は、遅延回路240に入力される。遅延回路240は偶数個のインバータからなるため、入力された反転クロック信号122の論理及び直流成分は遅延回路240による影響を受けることなく、反転クロック信号141として遅延回路240から出力される。一方、反転クロック信号122の高周波成分は、遅延回路240によって反転クロック信号122の半周期分の時間遅延を受ける。遅延回路240による遅延によって、クロック信号121の高周波成分と反転クロック信号141の高周波成分とが差動増幅器130の入力において同相信号となるように、インバータ群241に含まれるインバータの数が設定される。このように、遅延回路240は、クロック信号121に対する直流成分の差動状態を維持しつつ、反転クロック信号141の高周波成分のみを同相信号に変換し、反転クロック信号122として差動増幅器に入力する。このような構成を備えるデューティ比補正回路101も、クロック信号の高精度なデューティ比補正とデューティ比の高速安定化とを可能とする。
【0038】
(第3の実施形態)
[構成]
図9は、本発明のデューティ比補正回路102の構成例を示す図である。デューティ比補正回路102は、第1の実施形態のデューティ比補正回路100と比較して、LPF(ローパスフィルタ)301及び積分キャパシタ302を備える点で相違する。LPF301は、クロック信号121及び反転クロック信号141の高周波成分を抑圧する。LPF301の遮断周波数は、一般的なデューティ比補正回路において用いられるLPFよりも高い。積分キャパシタ302は、差動増幅器130の出力と接地点との間に設けられる。積分キャパシタ302の容量は、一般的なデューティ比補正回路において用いられる積分キャパシタよりも小さい。
【0039】
[動作]
差動増幅器130の出力には、同相除去特性のみでは除去しきれない、クロック信号121及び反転クロック信号141の矩形波に由来する高周波成分がわずかに含まれる場合がある。そして、このような高周波成分は制御電圧のわずかなリプルの原因となる。本実施形態のデューティ比補正回路102は、このような高周波成分をLPF301及び積分キャパシタ302を用いて抑圧する。高周波成分のほとんどは差動増幅器130で除去されるため、LPF301は、一般的なデューティ比補正回路においてリプル除去のために用いられるLPFと比較して遮断周波数を高くすることができる。さらに、デューティ比補正回路102では、積分キャパシタ302の容量も、一般的なデューティ比補正回路においてリプル除去のために用いられるものと比較して小さくできる。このような構成を備えるデューティ比補正回路102は、クロック信号の高精度なデューティ比補正とデューティ比の高速安定化とを可能とする。さらに、デューティ比補正回路102は、LPF301及び積分キャパシタ302として、一般的なデューティ比補正回路で用いられるものよりも小型の部品を用いてさらにリプルを抑圧できる。
【0040】
(第4の実施形態)
[構成]
図10は、本発明のデューティ比補正回路103の構成例を示す図である。デューティ比補正回路103は、デューティ比補正回路101と比較して、遅延回路240に代えて遅延回路340を備える点で相違する。遅延回路340は、反転クロック信号を遅延させるためのインバータ数を切り替えることができる。
【0041】
[動作]
遅延回路340は、インバータ群341及び342を備える。インバータ群341及び342は、いずれも複数個のインバータを備え、直列に接続される。インバータ群341の遅延量はD1、インバータ群342の遅延量はD2である。スイッチ343は、反転信号生成回路120の反転クロック信号122の出力を、インバータ群341の入力又はインバータ群342の入力と接続する。このような構成により、スイッチ343を切り替えることによって、遅延回路340の遅延量を変更できる。すなわち、遅延回路340の遅延量は、インバータ群341の遅延量D1、又は、インバータ群341及び342の両者の遅延量の和D1+D2のいずれかに設定される。インバータ群の接続の切り替え(すなわち、遅延量の切り替え)は、例えば、反転クロック信号122の周波数に応じてスイッチ343を制御することで行われる。
【0042】
遅延回路240及び340は遅延回路140の構成例であり、これらの遅延回路の構成要素はインバータに限定されない。すなわち、遅延回路140は、回路固有の遅延量を利用し、例えばスイッチ制御により遅延量を調節してもよい。このとき、周波数が異なるクロック信号に対しても、直流成分の差動状態が維持されたまま、高周波成分のみが同相信号に変換可能であることが好ましい。遅延回路240及び340は、複数のインバータを遅延素子として備える。そして、遅延回路240及び340の遅延量は、遅延素子の直列接続数を切り替えることによって調整される、
これまでに、インバータ群を含む遅延回路240及び340について説明した。次に、インバータ群に含まれるインバータの数の決定手順の例を説明する。遅延回路240及び340は、直流成分の差動状態を維持するために、入力された反転クロック信号122が偶数個のインバータを通過して、反転クロック信号141として出力されるように構成される。反転クロック信号141の高周波成分の位相を、クロック信号121と同相に変換するために必要なインバータの数Nは、以下のように定まる。なお、入力される反転クロック信号122の半周期の長さをT/2とし、インバータ1つ当たりの遅延時間をdとする。
【0043】
N=(T/2)/d=T/(2d)
上式より求まった値に最も近い偶数値が、直流成分の差動状態を維持したまま高周波成分を同相信号に変換するのに適したインバータの数となる。
【0044】
図11は、クロック周波数と、その周波数におけるインバータの数の関係の例を示す図である。クロック信号の周期は、クロック信号の周波数によって異なるため、遅延回路に要求される遅延量も、クロック周波数により異なる。図11を参照することによって、クロック周波数に応じたインバータ数を知ることができる。例えば、クロック周波数が1GHzのクロック信号がデューティ比補正回路101に入力される場合は、インバータ群として38個のインバータが直列に接続される。クロック周波数が2GHzのクロック信号がデューティ比補正回路に入力される場合は、インバータ群として18個のインバータが直列に接続される。
【0045】
この場合、デューティ比補正回路103では、インバータ群341を18個のインバータで構成し、インバータ群342を20個のインバータで構成してもよい。クロック信号の周波数が1GHzの場合は、インバータ38個分の遅延が必要となるため、スイッチ343は、反転クロック信号122がインバータ群341及び342の両方を通過するように切り替えられる。クロック信号の周波数が2GHzの場合は、遅延量はインバータ18個分でよいため、スイッチ343は、反転クロック信号122がインバータ群341のみを通過するように切り替えられる。
【0046】
このように、デューティ比補正回路103は、スイッチ343及び2組のインバータ群341及び342を備える。これにより、デューティ比補正回路103は、スイッチ343を制御することにより、遅延回路のインバータの数、すなわち遅延時間を制御することによって、周波数が異なる2種類のクロック信号に対するデューティ比補正が可能になる。また、インバータ群をさらに用意し、スイッチによって3種類以上の遅延量が設定可能なように遅延回路340が構成されてもよい。
【0047】
スイッチ343の切り替えは、機器の保守者が行ってもよい。あるいは、デューティ比補正回路103は、さらに入力されるクロック信号の周波数を測定する周波数カウンタを備えてもよい。デューティ比補正回路103は、当該周波数カウンタで測定されたクロック周波数に応じて、より好ましい遅延量が得られるようにスイッチ343を切り替えてもよい。
【0048】
このような構成を備えるデューティ比補正回路103は、クロック信号の高精度なデューティ比補正とデューティ比の高速安定化とを可能とする。さらに、デューティ比補正回路103は、周波数が異なる複数のクロック信号に対するデューティ比補正を可能とする。
【0049】
(第5の実施形態)
[構成]
図12は、本発明のデューティ比補正回路10の構成例を示す図である。デューティ比補正回路10は、デューティ比調整回路11と、反転信号生成回路12と、差動増幅器13と、遅延回路14と、を備える。
【0050】
[動作]
デューティ比調整回路11は、入力されたクロック信号である第1のクロック信号のデューティ比を制御信号に基づいて調整し、デューティ比が調整された前記第1の入力クロック信号を第2のクロック信号として出力する。デューティ比調整回路11は、デューティ比調整手段の一例である。
【0051】
反転信号生成回路12には、デューティ比調整回路11から第2のクロック信号が入力される。反転信号生成回路12は、第2のクロック信号の位相を持つ出力クロック信号、及び、出力クロック信号の位相が反転された信号である反転クロック信号を出力する。反転信号生成回路12は、反転信号生成手段の一例である。なお、第2のクロック信号は、反転信号生成回路12に入力され、反転信号生成回路12において反転されることなく遅延回路14へ出力されてもよい。
【0052】
遅延回路14は、出力クロック信号と反転クロック信号と、の間に、出力クロック信号の半周期分の遅延を生じさせる遅延量を持つ。遅延回路14は、遅延手段の一例である。いいかえれば、遅延回路14は、差動増幅器13に入力される2個のクロック信号に、クロックの半周期分の遅延差を生じさせる。なお、遅延回路14の機能は、出力クロック信号及び反転クロック信号の一方のみに遅延を与えることで実現されてもよい。すなわち、この場合、出力クロック信号及び反転クロック信号の他方は、反転信号生成回路12から差動増幅器13へそのまま入力されてもよい。
【0053】
差動増幅器13は、遅延回路14から出力された出力クロック信号及び反転クロック信号の振幅の差分を増幅した信号を制御信号として出力する。差動増幅器13は、差動増幅手段の一例である。差動増幅器13から出力された制御信号は、デューティ比調整回路11に入力される。
【0054】
デューティ比補正回路10においては、差動増幅器13に入力されるクロック信号の高周波成分が同相となるため、差動増幅器13の出力において高周波成分が低減される。その結果、デューティ比調整回路11では、直流成分の差分に基づいてクロック信号のデューティ比を調整する際に、高周波成分に由来するリプルの影響が低減される。さらに、デューティ比補正回路10においては、差動増幅器13の入出力に、カットオフ周波数が低いLPFや容量が大きい積分キャパシタを必ずしも設ける必要がないため、デューティ比を高速に安定化することができる。従って、デューティ比補正回路10は、クロック信号の高精度なデューティ比補正とデューティ比の高速安定化とを可能とする。
【0055】
(第6の実施形態)
[構成]
図13は、本発明のクロック分配システム500の構成例を示す図である。クロック分配システム500は、クロック信号生成回路501、複数のクロック補正回路502、及び複数のDフリップフロップ(D-FF)503を備える。クロック補正回路502には、各実施形態で説明したデューティ比補正回路10、100、101、102及び103を用いることができる。図13において、図を簡単とするために、クロック補正回路502にはデューティ比調整回路110及び反転信号生成回路120のみを記載し、他の構成要素の記載は省略される。
【0056】
[動作]
複数のクロック補正回路502及びD-FF503は並列に配置され、D-FF503のそれぞれのクロック入力には、クロック補正回路502からクロック信号が入力される。なお、D-FF503は例であり、他の論理回路でもよい。クロック補正回路502は、クロック信号生成回路501において生成されたクロック信号のデューティ比が50%となるようにデューティ比を調整し、クロック信号521及び反転クロック信号522として出力する。本実施形態では、D-FF503は、クロック補正回路502から出力された反転クロック信号522を用いて、D端子に入力されるデータ信号をクロックと同期させる。D-FF503には、クロック信号521が供給されてもよい。
【0057】
このような構成を備えるクロック分配システム500は、複数のクロック補正回路502を備えるため、クロック信号を必要とするディジタル回路(例えばD-FF503)に対して、デューティ比が補正されたクロック信号を直近から供給することができる。なお、クロック補正回路502は、D-FF503以外のディジタル回路にクロック信号521又は反転クロック信号522を供給してもよい。
【0058】
なお、本発明の実施形態は以下の付記のようにも記載されうるが、これらには限定されない。
【0059】
(付記1)
入力された第1のクロック信号のデューティ比を制御信号に基づいて調整し、前記デューティ比が調整された前記第1のクロック信号を第2のクロック信号として出力するデューティ比調整手段と、
前記第2のクロック信号が入力され、前記第2のクロック信号の位相を持つ出力クロック信号、及び、前記出力クロック信号の位相が反転された信号である反転クロック信号を出力する反転信号生成手段と、
前記出力クロック信号と前記反転クロック信号との間に前記出力クロック信号の半周期分の遅延量の遅延を生じさせる遅延手段と、
前記遅延手段から出力された前記出力クロック信号及び前記反転クロック信号の振幅の差分を増幅した信号を前記制御信号として前記デューティ比調整手段へ出力する差動増幅手段と、
を備える、デューティ比補正回路。
【0060】
(付記2)
前記遅延手段は前記反転クロック信号を遅延させる、付記1に記載されたデューティ比補正回路。
【0061】
(付記3)
前記遅延手段は偶数個のインバータによって前記出力クロック信号又は前記反転クロック信号を遅延させる、付記1又は2に記載されたデューティ比補正回路。
【0062】
(付記4)
前記遅延手段と前記差動増幅手段との間に備えられたローパスフィルタと、
前記差動増幅手段の出力に備えられた積分キャパシタと、
を備える、付記1乃至3のいずれか1項に記載されたデューティ比補正回路。
【0063】
(付記5)
前記遅延手段は複数の遅延素子を備え、前記遅延量は前記複数の遅延素子の直列接続数を切り替えることによって調整される、付記1乃至4のいずれか1項に記載されたデューティ比補正回路。
【0064】
(付記6)
それぞれが付記1乃至5のいずれか1項に記載されたデューティ比補正回路である複数のクロック補正回路と、
前記複数のクロック補正回路のそれぞれに前記第1のクロック信号を分配するクロック信号生成回路と、
前記複数のクロック補正回路が備えるそれぞれの前記反転信号生成手段に接続され、前記出力クロック信号又は前記反転クロック信号の少なくとも一方が前記反転信号生成手段から入力される複数のディジタル回路と、
を備えるクロック分配システム。
【0065】
(付記7)
入力された第1のクロック信号のデューティ比を制御信号に基づいて調整し、
前記デューティ比が調整された前記第1のクロック信号を第2のクロック信号として出力し、
前記第2のクロック信号の位相を持つ出力クロック信号を出力し、
前記出力クロック信号の位相が反転された信号である反転クロック信号を出力し、
前記出力クロック信号と前記反転クロック信号との間に前記出力クロック信号の半周期分の遅延量の遅延を生じさせ、
前記遅延を生じさせる処理を受けた前記出力クロック信号及び前記反転クロック信号の振幅の差分を増幅した信号を前記制御信号として出力する、
デューティ比補正方法。
【0066】
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。また、各実施形態におけるデューティ比補正回路の説明は、デューティ比補正方法及びデューティ比補正回路を用いた論理回路をも開示する。
【0067】
また、それぞれの実施形態に記載された構成は、必ずしも互いに排他的なものではない。本発明の作用及び効果は、上述の実施形態の全部又は一部を組み合わせた構成によって実現されてもよい。
【0068】
各実施形態に記載されたデューティ比補正回路の処理の手順は、デューティ比補正方法をも開示する。また、各実施形態に記載されたデューティ比補正回路の機能及び手順は、デューティ比補正回路が備える中央処理装置(central processing unit、CPU)がプログラムを実行することにより実現されてもよい。プログラムは、固定された、一時的でない記録媒体に記録される。記録媒体としては半導体メモリ又は固定磁気ディスク装置が用いられるが、これらには限定されない。
【符号の説明】
【0069】
10、100-103 デューティ比補正回路
11、110 デューティ比調整回路
12、120 反転信号生成回路
14、140、240 遅延回路
13、130 差動増幅器
109 デューティ比検出回路
121 クロック信号
122、141 反転クロック信号
131、132 入力
240 遅延回路
241 インバータ群
302 積分キャパシタ
340 遅延回路
341、342 インバータ群
343 スイッチ
500 クロック分配システム
501 クロック信号生成回路
502 クロック補正回路
503 Dフリップフロップ(D-FF)
521 クロック信号
522 反転クロック信号
900 デューティ比補正回路
901 デューティ比調整回路
902 デューティ比検出回路
903 反転信号生成回路
905 差動増幅器
906 積分キャパシタ
910 クロック信号生成回路
920 ディジタル回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21