(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136754
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】樹状細胞の遊走抑制剤、皮膚外用組成物、化粧料、及び医薬品
(51)【国際特許分類】
A61K 8/9789 20170101AFI20240927BHJP
A61K 36/74 20060101ALI20240927BHJP
A61K 36/61 20060101ALI20240927BHJP
A61K 36/185 20060101ALI20240927BHJP
A61K 8/58 20060101ALI20240927BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20240927BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240927BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240927BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240927BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20240927BHJP
A61P 17/04 20060101ALI20240927BHJP
A61K 31/695 20060101ALI20240927BHJP
A61K 31/202 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61K36/74
A61K36/61
A61K36/185
A61K8/58
A61K8/36
A61P43/00 105
A61Q19/00
A61P29/00
A61P37/08
A61P17/04
A61K31/695
A61K31/202
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047981
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000112266
【氏名又は名称】ピアス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】福田 康二
(72)【発明者】
【氏名】阪本 聡
(72)【発明者】
【氏名】丸山 勝弘
【テーマコード(参考)】
4C083
4C086
4C088
4C206
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AA112
4C083AC251
4C083AC252
4C083AC911
4C083AC912
4C083CC02
4C083EE13
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA44
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA63
4C086NA14
4C086ZA89
4C086ZB11
4C086ZB13
4C088AB12
4C088AB14
4C088AB57
4C088BA08
4C088MA08
4C088MA63
4C088NA14
4C088ZA89
4C088ZB11
4C088ZB13
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA05
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA03
4C206MA04
4C206MA83
4C206NA14
4C206ZA89
4C206ZB11
4C206ZB13
(57)【要約】
【課題】 樹状細胞の遊走を抑制できる樹状細胞の遊走抑制剤などを提供することを課題とする。
【解決手段】 コーヒー抽出物、サリチル酸シランジオール、チョウジ抽出物、メマツヨイグサ種子抽出物、及び、エイコサペンタエン酸からなる群より選択される少なくとも1種を含む、樹状細胞の遊走抑制剤などを提供する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーヒー抽出物、サリチル酸シランジオール、チョウジ抽出物、メマツヨイグサ種子抽出物、及び、エイコサペンタエン酸からなる群より選択される少なくとも1種を含む、樹状細胞の遊走抑制剤。
【請求項2】
前記コーヒー抽出物、及び、前記サリチル酸シランジオールのうち少なくとも一方を含む、請求項1に記載の樹状細胞の遊走抑制剤。
【請求項3】
前記コーヒー抽出物、及び、前記サリチル酸シランジオールを含む、請求項2に記載の樹状細胞の遊走抑制剤。
【請求項4】
コーヒー抽出物、サリチル酸シランジオール、チョウジ抽出物、メマツヨイグサ種子抽出物、及び、エイコサペンタエン酸からなる群より選択される少なくとも2種を含む、皮膚外用組成物。
【請求項5】
コーヒー抽出物、サリチル酸シランジオール、チョウジ抽出物、メマツヨイグサ種子抽出物、及び、エイコサペンタエン酸からなる群より選択される少なくとも2種を含む、化粧料。
【請求項6】
コーヒー抽出物、サリチル酸シランジオール、チョウジ抽出物、メマツヨイグサ種子抽出物、及び、エイコサペンタエンからなる群より選択される少なくとも2種を含む、医薬品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹状細胞の遊走抑制剤、皮膚外用組成物、化粧料、及び医薬品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な皮膚外用組成物が知られており、例えば、抗炎症作用を有する皮膚外用組成物が知られている。
【0003】
この種の皮膚外用組成物としては、例えば、ヒト羊膜上皮細胞を培養した培養上清を含むものが知られている(特許文献1)。
【0004】
特許文献1に記載の皮膚外用組成物は、抗炎症作用を有し、且つ、樹状細胞の遊走を抑制する作用も有する。
【0005】
樹状細胞は、皮膚のアレルギー性炎症と深く関わり合っていることが知られている。詳しくは、皮膚の角質層にアレルゲンが付着すると、表皮角化細胞(ケラチノサイト)がアレルギー炎症因子を分泌する。代表的なアレルギー炎症因子として、ロイコトリエンB4(Leukotriene B4)や、胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)(thymic stromal lymphopoietin)というサイトカインが知られている。アレルギー炎症因子は、免疫細胞の一部である樹状細胞を刺激し、刺激された樹状細胞は、成熟しながらリンパ管へと遊走する。遊走する樹状細胞がリンパ管に到達すると、抗原特異的T細胞の分化を誘導し、アトピー性皮膚炎などのTh2型アレルギー性炎症が引き起こされる。
従って、樹状細胞の遊走を抑制できれば、アレルギー性炎症を抑制できることが期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、樹状細胞の遊走を抑制できる樹状細胞の遊走抑制剤又は皮膚外用組成物などについては、未だ十分に検討されているとはいえない。
【0008】
そこで、本発明は、樹状細胞の遊走を抑制できる樹状細胞の遊走抑制剤を提供することを課題とする。また、本発明は、樹状細胞の遊走を抑制できる皮膚外用組成物、化粧料、及び医薬品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る樹状細胞の遊走抑制剤は、コーヒー抽出物、サリチル酸シランジオール、チョウジ抽出物、メマツヨイグサ種子抽出物、及び、エイコサペンタエン酸からなる群より選択される少なくとも1種を含む。
【0010】
本発明に係る皮膚外用組成物、化粧料、及び医薬品は、それぞれ独立して、
コーヒー抽出物、サリチル酸シランジオール、チョウジ抽出物、メマツヨイグサ種子抽出物、及び、エイコサペンタエン酸からなる群より選択される少なくとも2種を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明の樹状細胞の遊走抑制剤、皮膚外用組成物、化粧料、及び医薬品は、樹状細胞の遊走を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】各実施例及び各比較例等における樹状細胞の変化率を示すグラフ。
【
図2】各実施例等における樹状細胞の変化率を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る樹状細胞の遊走抑制剤、皮膚外用組成物、化粧料、及び医薬品の実施形態について以下に説明する。以下、上記の遊走抑制剤、皮膚外用組成物、化粧料、及び医薬品を単に「遊走抑制用組成物」と表記する場合がある。
【0014】
本実施形態の遊走抑制用組成物は、コーヒー抽出物、サリチル酸シランジオール、チョウジ抽出物、メマツヨイグサ種子抽出物、及び、エイコサペンタエン酸からなる群より選択される少なくとも1種を含む。
【0015】
本実施形態の遊走抑制用組成物は、上記のごとき各種成分のうち少なくとも1種を含むため、樹状細胞の遊走を抑制できる。これにより、樹状細胞がリンパ管へ遊走することを抑制できることから、アトピー性皮膚炎などのTh2型アレルギー性炎症が抑制され得る。なお、樹状細胞の遊走が抑制されることによって、アレルギー性炎症が抑制され得る理由については、以下の通りである。
皮膚の角質層にアレルゲンが付着すると、表皮角化細胞(ケラチノサイト)がアレルギー炎症因子を分泌する。代表的なアレルギー炎症因子として、ロイコトリエンB4(Leukotriene B4)や、TSLP(thymic stromal lymphopoietin)というサイトカインが知られている。アレルギー炎症因子は、免疫細胞の一部である樹状細胞を刺激し、刺激された樹状細胞は、成熟しながらリンパ管へと遊走する。遊走する樹状細胞がリンパ管に到達すると、抗原特異的T細胞の分化を誘導し、アトピー性皮膚炎などのTh2型アレルギー性炎症が引き起こされる。従って、樹状細胞の遊走が抑制されることによって、アレルギー性炎症が抑制され得る。
【0016】
本実施形態の遊走抑制用組成物は、好ましくは、コーヒー抽出物、サリチル酸シランジオール、チョウジ抽出物、メマツヨイグサ種子抽出物、及び、エイコサペンタエン酸からなる群より選択される少なくとも2種を含む。
【0017】
本実施形態の遊走抑制用組成物は、より好ましくは、コーヒー抽出物、及び、サリチル酸シランジオールのうち少なくとも一方を含み、さらに好ましくは、少なくともコーヒー抽出物及びサリチル酸シランジオールを含む。これにより、樹状細胞の遊走をより十分に抑制できる。
【0018】
コーヒー抽出物は、アカネ科コーヒーノキ属に属する植物(Coffea arabica Linne)またはその同属植物(Rubiaceae)の種子(豆)に対して抽出溶媒によって抽出処理を施すことによって得られる。コーヒーノキ属(Coffea属)に属する植物としては、アラビカ種のもの(Coffea arabica)、又は、ロブスタ種のもの(Coffea canephora)などが挙げられる。
【0019】
コーヒーの種子は、焙煎されていない種子であってもよく、焙煎された種子であってもよい。焙煎とは、水の沸点を超える温度で加熱する加熱処理である。焙煎における好ましい温度は、150~250℃程度である。
【0020】
上記のコーヒー抽出物は、本実施形態の遊走抑制用組成物中に乾燥物換算で0.00001質量%以上10.00000質量%以下含まれてもよい。
【0021】
上記のコーヒー抽出物の抽出溶媒としては、水;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどの脂肪族1価アルコール(炭素数1~4であり且つOH基を1つ有する有機化合物(構造異性体含む));グリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコールなどの脂肪族多価アルコール(炭素数1~5であり且つOH基を複数有する有機化合物);アセトンなどのケトン類;ジエチルエーテル、ジオキサン、アセトニトリル、酢酸エチルエステルなどのエステル類;キシレン、ベンゼン、トルエンなどの芳香族類;クロロホルムなどハロゲン化アルキル類などの有機溶媒が挙げられる。
これらの抽出溶媒は、1種が単独で、又は2種以上が混合されて用いられ得る。混合抽出溶媒の混合比は、特に限定されるものではなく、適宜調整される。
【0022】
なお、抽出部位に対して、乾燥、粉砕、切断又は細断等の前処理を適宜施してから抽出処理を実施することが好ましい。即ち、このような前処理の後に抽出処理を施すことが好ましい。
上記抽出処理の方法としては、特に制限されず、従来公知の一般的な抽出方法を採用することができる。抽出処理においては、抽出原料として各植物の抽出部位(葉や果実)をそのまま若しくは乾燥させて用いることができる。また、通常、抽出溶媒量が抽出原料の5~15倍量(質量比)であり、抽出温度が20℃~80℃であり、抽出時間が2時間~3日間である。抽出処理した後においては、必要に応じて、ろ過、脱臭、脱色などの精製処理を行うことができる。
【0023】
後述するチョウジ抽出物又はメマツヨイグサ種子抽出物の各抽出溶媒、抽出処理についても上記と同様である。
【0024】
上記のコーヒー抽出物の抽出溶媒としては、エタノールを含む溶媒が好ましく、エタノールを50質量%以上含む抽出溶媒がより好ましく、エタノールを90質量%以上含む溶媒がさらに好ましい。
【0025】
上記のコーヒー抽出物としては、市販されている原料(例えば、一丸ファルコス社製の製品名「カフェノアージュ」、又は、丸善製薬社製の製品名「生コーヒー豆エキス」)を採用できる。
【0026】
サリチル酸シランジオールは、例えば、サリチル酸ジメチルシランを加水分解させることによって得られる。
【0027】
チョウジ抽出物は、フトモモ科フトモモ属のチョウジノキ(学名:Syzygium aromaticum)の花蕾に対して抽出溶媒によって抽出処理を施すことによって得られる。
【0028】
上記のチョウジ抽出物は、本実施形態の遊走抑制用組成物中に乾燥物換算で0.00010質量%以上1.00000質量%以下含まれてもよい。
【0029】
上記のチョウジ抽出物の抽出溶媒としては、水と脂肪族一価アルコール(例えばエタノール)とを含む混合溶媒が好ましい。混合溶媒において、水と脂肪族一価アルコール(エタノール)との混合質量比は、1:1(水:脂肪族一価アルコール)が好ましい。
【0030】
上記のチョウジ抽出物としては、市販されている原料(例えば、一丸ファルコス社製の製品名「ファルコレックス チョウジ」)を採用できる。
【0031】
メマツヨイグサ種子抽出物は、アカバナ科マツヨイグサ属(学名:Oenothera biennis)の種子に対して抽出溶媒によって抽出処理を施すことによって得られる。
【0032】
上記のメマツヨイグサ種子抽出物は、本実施形態の遊走抑制用組成物中に乾燥物換算で0.00010質量%以上0.10000質量%以下含まれてもよい。
【0033】
上記メマツヨイグサ種子抽出物の抽出溶媒としては、脂肪族多価アルコールを含む溶媒が好ましく、脂肪族多価アルコール(1,3-ブチレングリコール)を50質量%以上含む抽出溶媒がより好ましく、1,3-ブチレングリコールを90質量%以上含む溶媒がさらに好ましい。
【0034】
上記のメマツヨイグサ種子抽出物としては、市販されている原料(例えば、一丸ファルコス社製の製品名「ルナホワイトB」)を採用できる。
【0035】
エイコサペンタエン酸は、いわゆるω-3脂肪酸の1種である。エイコサペンタエン酸は、塩の状態であってもよい。
【0036】
上記のコーヒー抽出物、チョウジ抽出物、又はメマツヨイグサ種子抽出物などの各抽出物(以下、単に抽出物ともいう)は、抽出溶媒又は希釈用溶媒を含む抽出液の状態、又は、抽出後の抽出溶媒を除去した乾燥物の状態になり得る。具体的には、各抽出物は、例えば、溶液状、ペースト状、ゲル状、粉末状などの状態になり得る。
【0037】
上述したように、本実施形態の遊走抑制用組成物は、好ましくは、コーヒー抽出物、及び、サリチル酸シランジオールのうち少なくとも一方を含み、さらに好ましくは、少なくともコーヒー抽出物及びサリチル酸シランジオールを含む。これにより、樹状細胞の遊走をより十分に抑制できる。
【0038】
本実施形態の遊走抑制用組成物において、コーヒー抽出物と、サリチル酸シランジオールとの質量比(コーヒー抽出物:サリチル酸シランジオール)は、コーヒー抽出物の乾燥物換算で、10:1から1:10までの範囲であることが好ましく、1:1から1:2までの範囲がさらに好ましい。斯かる範囲の含有比であることによって、樹状細胞の遊走をより十分に抑制できる。
【0039】
上記の遊走抑制用組成物は、通常、水を含み、上記の成分の他に、増粘剤、界面活性剤、防腐剤などをさらに含んでもよい。
【0040】
本実施形態において、遊走抑制用組成物の性状は、特に限定されないが、例えば液状である。本実施形態の遊走抑制用組成物は、固形状であってもよい。
【0041】
本実施形態の遊走抑制用組成物は、一般的な方法によって製造できる。
例えば、配合する各成分を混合し、撹拌することによって上記遊走抑制用組成物を製造できる。撹拌するための装置としては、一般的なものを使用できる。必要に応じて、加温しつつ撹拌してもよい。
【0042】
上記の遊走抑制用組成物は、例えば、皮膚に塗布されて使用される。上記の遊走抑制用組成物は、例えば、アトピー性皮膚炎の予防又は治療の用途で使用されてもよく、皮膚でのアレルギー性炎症の予防又は治療の用途で使用されてもよく、敏感肌やかぶれ等によって生じる炎症の予防又は治療の用途で使用されてもよい。
なお、上記の遊走抑制用組成物は、貼付剤における皮膚と接触する部分の構成成分として使用されてもよい。また、上記の遊走抑制用組成物は、入浴剤に配合される成分として使用されてもよい。
【0043】
本実施形態の遊走抑制用組成物は、薬機法上の化粧料、医薬部外品、医薬品等の分類には必ずしも拘束されない。
【0044】
本発明の樹状細胞の遊走抑制剤、皮膚外用組成物、化粧料、及び医薬品は、上記例示の通りであるが、本発明は、上記例示の実施形態に限定されるものではない。また、本発明では、一般の皮膚外用組成物などにおいて採用される種々の形態を、本発明の効果を損ねない範囲で採用することができる。
【0045】
本明細書によって開示される事項は、以下のものを含む。
(1)
コーヒー抽出物、サリチル酸シランジオール、チョウジ抽出物、メマツヨイグサ種子抽出物、及び、エイコサペンタエン酸からなる群より選択される少なくとも1種を含む、樹状細胞の遊走抑制剤。
(2)
前記コーヒー抽出物、及び、前記サリチル酸シランジオールのうち少なくとも一方を含む、上記(1)に記載の樹状細胞の遊走抑制剤。
(3)
前記コーヒー抽出物、及び、前記サリチル酸シランジオールを含む、上記(2)に記載の樹状細胞の遊走抑制剤。
(4)
コーヒー抽出物、サリチル酸シランジオール、チョウジ抽出物、メマツヨイグサ種子抽出物、及び、エイコサペンタエン酸からなる群より選択される少なくとも2種を含む、皮膚外用組成物。
(5)
前記コーヒー抽出物、及び、前記サリチル酸シランジオールを含む、上記(4)に記載の皮膚外用組成物。
(6)
コーヒー抽出物、サリチル酸シランジオール、チョウジ抽出物、メマツヨイグサ種子抽出物、及び、エイコサペンタエン酸からなる群より選択される少なくとも2種を含む、化粧料。
(7)
前記コーヒー抽出物、及び、前記サリチル酸シランジオールを含む、上記(6)に記載の化粧料。
(8)
コーヒー抽出物、サリチル酸シランジオール、チョウジ抽出物、メマツヨイグサ種子抽出物、及び、エイコサペンタエン酸からなる群より選択される少なくとも2種を含む、医薬品。
(9)
前記コーヒー抽出物、及び、前記サリチル酸シランジオールを含む、上記(8)に記載の医薬品。
【実施例0046】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0047】
まず、樹状細胞について説明する。
樹状細胞は、刺激を受けると、突起又は仮足といった細胞骨格の一部を変化させて遊走性を高める性質を有することが知られている。従って、樹状細胞の細胞骨格の変化を観察することによって、刺激に対する成熟度及び遊走性を評価できる。
以下の実験では、様々な試験成分に対する樹状細胞の形態変化を、定性評価(目視観察)及び半定量評価(画像解析)によって評価した。その評価方法の詳細を以下に示す。
【0048】
<使用した成分>
(実施例1)
・コーヒー抽出物(エタノールによる生豆の抽出液)
製品名「カフェノアージュ」 一丸ファルコス社製 固形分0.6質量%
(実施例2)
・サリチル酸シランジオール(溶液状態)
製品名「D.S.B.C」 EXSYMOL S.A.M社製 固形分1.0質量%
(実施例3)
・チョウジ抽出物(アルコール含有水溶液による抽出液)
製品名「ファルコレックス チョウジ」 一丸ファルコス社製 固形分3.2質量%
(実施例4)
・メマツヨイグサ種子抽出物(多価アルコールによる抽出液)
製品名「ルナホワイトB」 一丸ファルコス社製 固形分1.0質量%
(実施例5)
・エイコサペンタエン酸 市販品
製品名「EicosaPentaenoic Acid」 TCI社製
(比較例1)
・レゾルビンE1(樹状細胞の遊走抑制能を有する公知の物質)
(比較例2)
・グリチルリチン酸ジカリウム
(比較例3)
・トラネキサム酸
(比較例4)
・ヘパリン類似物質
(比較例5)
・ガンマアミノ酪酸(GABA)
【0049】
<樹状細胞の形態変化に関わる評価方法>
事前にフィブロネクチン(Sigma社製)でコーティング処理を行った培養プレートに、樹状細胞(LONZA社製)を播種し、プレ培養を行った。なお、樹状細胞培養専用培地(LONZA社製)に、Recombinant Human IL-4(R&D社製)および Recombinant Human GM-CSF(R&D社製)をいずれも50ng/mL濃度となるように添加した培地で培養を行った。
5日間のプレ培養を行った後、炎症刺激としてロイコトリエンB4(Cayman社製)を終濃度100nMとなるように添加して3時間を経過させた。その後、上記の炎症刺激を含まず且つ各試験成分(各実施例及び各比較例の成分)を添加した培地へ交換し、さらに1時間経過させた。
その後、4%パラホルムアルデヒド(nakalai tesqu社製)を用いて細胞の固定化処理を行った。固定化後、トライトンX-100(nakalai tesqu社製)を用いて透過処理を行い、続けて、ファロイジン試薬(Thermo Fisher社製,1:200)を用いて細胞骨格の染色処理を行った。染色した細胞を、蛍光顕微鏡(OLYMPUS社製)にて観察し、観察像を撮影した。
得られた細胞染色画像について、画像解析ソフト Image-Pro Premier(MEDIA CYBERNETICS社製)を用いて、各細胞体の真円度を解析した。なお、無刺激条件の場合における真円度を100%として、各試験成分での算出値を相対値で表し、斯かる値を細胞形態変化量とした。
【0050】
上記の評価方法の概要を表1に示す。また、上記の評価方法の評価結果を
図1にグラフで表す。
【0051】
【0052】
図1から把握されるように、実施例の各成分によって、炎症刺激に対する樹状細胞の形態変化が抑えられた。即ち、樹状細胞の遊走が抑制され得ると考えられた。樹状細胞の遊走が抑制されることによって、アトピー性皮膚炎などのアレルギー性炎症が抑制され得るといえる。
【0053】
各成分を表2に示すように組み合わせて、上記の評価方法と同様にして、評価を実施した。評価結果を
図2にグラフで表す。
【0054】
【0055】
図2から把握されるように、コーヒー抽出物とサリチル酸シランジオールとを組み合わせることによって、樹状細胞の形態変化が顕著に抑えられた。斯かる効果は、相乗的に発揮されたといえる。
【0056】
以上の結果から把握されるように、上記の実施形態で説明した樹状細胞の遊走抑制剤、皮膚外用組成物、化粧料、及び医薬品は、炎症刺激に対する樹状細胞の形態変化を抑えることができた。従って、樹状細胞の遊走を抑制でき、その結果、アトピー性皮膚炎などのアレルギー性炎症を抑えることができると考えられる。
本発明の樹状細胞の遊走抑制剤、皮膚外用組成物、化粧料及び医薬品は、例えば、アトピー性皮膚炎の症状を軽減させる等の目的で、皮膚などに適用されて使用される。本発明の樹状細胞の遊走抑制剤又は皮膚外用組成物は、例えばヒトの皮膚に直接塗布され、医薬部外品等の用途で好適に使用される。