(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136756
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】シリコーン重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 77/06 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
C08G77/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047985
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000187046
【氏名又は名称】東レ・ファインケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100186484
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 満
(72)【発明者】
【氏名】小川 龍治
(72)【発明者】
【氏名】村野 治男
(72)【発明者】
【氏名】加藤 秀利
【テーマコード(参考)】
4J246
【Fターム(参考)】
4J246AA03
4J246BA16X
4J246BA26X
4J246BB022
4J246BB02X
4J246CA24X
4J246FA071
4J246FA131
4J246FA441
4J246FA601
4J246FA701
4J246FD01
4J246FE25
4J246GA01
(57)【要約】
【課題】
高い重合速度を得つつ、長期間、自動で連続的にシリコーン重合体が得られる製造方法を提供する。
【解決手段】
下記一般式(1)で表される化合物、および下記一般式(2)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種のシラン化合物、水、ならびに沸点100℃以下のアルコールを含む溶液を、イオン交換樹脂が充填された充填塔に連続的に供給し、前記充填塔の出口側に設置された圧力計のゲージ圧力が0.05~5.0MPaを示す圧力下、70~120℃で前記溶液を前記イオン交換樹脂と接触させる、シリコーン重合体の製造方法。
RaSi(OR1)4-a ・・・・・(1)
式中、Rは水素原子または1価の有機基、R1は1価の有機基、aは1~2の整数を示す。
Si(OR2)4 ・・・・・(2)
式中、R2は1価の有機基を示す。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物および下記一般式(2)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種のシラン化合物、水、ならびに沸点100℃以下のアルコールを含む溶液を、イオン交換樹脂が充填された充填塔に連続的に供給し、前記充填塔の出口側に設置された圧力計のゲージ圧力が0.05~5.0MPaを示す圧力下、70~120℃で前記溶液を前記イオン交換樹脂と接触させる、シリコーン重合体の製造方法。
RaSi(OR1)4-a ・・・・・(1)
式(1)中、Rは水素原子または1価の有機基、R1は1価の有機基、aは1~2の整数を示す。
Si(OR2)4 ・・・・・(2)
式(2)中、R2は1価の有機基を示す。
【請求項2】
イオン交換樹脂が陽イオン交換樹脂である、請求項1に記載のシリコーン重合体の製造方法。
【請求項3】
沸点100℃以下のアルコールが、メタノール、エタノール、n-プロパノール、およびi-プロパノールから選ばれる少なくとも一つを含む、請求項1または2に記載のシリコーン重合体の製造方法。
【請求項4】
沸点100℃以下のアルコールの使用量が、
前記シラン化合物に対し1.0~10質量倍である、請求項1または2に記載のシリコーン重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーン重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーン重合体は、有機化合物と無機化合物とが分子レベルで組み合わさった、有機-無機ハイブリッド材料であり、柔軟性や加工性といった有機材料の特長と、耐熱性・耐候性や耐薬品性といった無機材料の特長を併せ持つ素材であるため、近年盛んに研究されている。
【0003】
中でも半導体用素子等を製造する際のパターン成型においては、リソグラフィー技術、エッチング技術等を適用する反転パターン形成の際、シリコーン重合体をレジスト下層膜として用いることが提案されている。シリコーン重合体の中でも特に、テトラメトキシシランやテトラエトキシシラン由来の構造が多く含まれた場合、微細なレジスト下層膜パターンへの埋め込み性及びレジスト下層膜パターンを酸素系ガスエッチング等で除去する際のエッチング耐性に優れることが知られていた。
【0004】
一方で、フロー合成法の実用化が進められている。フロー合成とは、一般的に原料をポンプ等で連続的に供給し、管型反応器や充填塔、連続攪拌槽型反応器で反応させる方法である。特に管型反応器や充填塔に不均一触媒を充填して反応させた場合、触媒を除去する必要がなくなるため、後処理工程で生じる廃棄物を最小限に抑えるか、あるいは完全にゼロにすることができる。装置は、バッチ法に比べ、より小さく設計することができ、スペースとコストを大幅に節約できる。更に、フロー反応器はバッチ反応器と比べると、体積当たりの表面積が大きく、基質を含む溶液の急速な混合、停止が可能であるため、安全性と効率が向上することが知られており(非特許文献1)、次世代の製造方法として期待されている。
【0005】
フロー合成法で、シリコーン重合体を得る試みがされている。アルコキシシランとイオン交換水をミキサーで混合後、混合液をイオン交換樹脂が充填された充填塔に供給し、充填塔から流出した反応液を濃縮したところ、アルコキシシランの加水分解生成物とその縮合体が得られることが知られている(特許文献1、2)。
【0006】
しかしながら、ある程度の重合度のシリコーン重合体を得ようとすると、長時間、自動で連続的にシリコーン重合体を得ることができないという課題があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】小林修、小野澤俊也 監訳・編著、有機合成のためのフロー化学、266p、東京化学同人(2020)
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8-151445号公報
【特許文献2】特開2011-219647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、高い重合速度を得つつ、長期間、自動で連続的にシリコーン重合体が安定した分子量で得られる製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従来のフロー合成法における課題について発明者らは鋭意検討を重ね、充填塔を加熱すると、イオン交換樹脂の触媒能が劣化して得られる分子量が徐々に低下したり、イオン交換樹脂が破砕したりすることを見出し、本発明に想到した。
【0011】
本発明およびその好ましい態様は、以下の構成からなる。
[1] 下記一般式(1)で表される化合物および下記一般式(2)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種のシラン化合物、水、ならびに沸点100℃以下のアルコールを含む混合液を、イオン交換樹脂が充填された充填塔に連続的に供給し、前記充填塔の出口側に設置された圧力計のゲージ圧力が0.05~5.0MPaを示す圧力下、70~120℃で前記混合液を前記イオン交換樹脂と接触させる、シリコーン重合体の製造方法。
[2] イオン交換樹脂が陽イオン交換樹脂である、上記[1]に記載のシリコーン重合体の製造方法。
[3] 沸点100℃以下のアルコールが、メタノール、エタノール、n-プロパノール、およびi-プロパノールから選ばれる少なくとも一つを含む、上記[1]または[2]に記載のシリコーン重合体の製造方法。
[4] 沸点100℃以下のアルコールの使用量が、前記シラン化合物に対し1.0~10質量倍である、上記[1]~[3]のいずれかに記載のシリコーン重合体の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高い重合速度を得つつ、長期間、自動で連続的にシリコーン重合体を安定した分子量で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明のシリコーン重合体の製造方法において用いられる、フロー式反応器の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のシリコーン重合体の製造方法は、シラン化合物、水、およびアルコールを含む混合液を、イオン交換樹脂が充填された充填塔に連続的に供給し、イオン交換樹脂と接触させる。
【0015】
前記シラン化合物は、下記一般式(1)で表される化合物、および下記一般式(2)で表される化合物から選ばれた少なくとも1種である。
RaSi(OR1)4-a ・・・・・(1)
式(1)中、Rは水素原子または1価の有機基、R1は1価の有機基、aは1~2の整数を示す。
Si(OR2)4 ・・・・・(2)
式(2)中、R2は1価の有機基を示す。
【0016】
上記一般式(1)におけるRおよびR1、ならびに一般式(2)におけるR2の1価の有機基としては、アルキル基、アリール基、アリル基、グリシジル基などを挙げることができる。また、一般式(1)において、Rは1価の有機基、特に、アルキル基またはアリール基であることが好ましい。
【0017】
前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などが挙げられ、好ましくは炭素数1~5であり、これらのアルキル基は鎖状でも、分岐していてもよく、さらに水素原子がフッ素原子などに置換されていてもよい。
【0018】
前記アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、フルオロフェニル基などを挙げることができる。
【0019】
一般式(1)で表される化合物の具体例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ-n-プロポキシシラン、メチルトリ-iso-プロポキシシラン、メチルトリ-n-ブトキシシラン、メチルトリ-sec-ブトキシシラン、メチルトリ-tert-ブトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリ-n-プロポキシシラン、エチルトリ-iso-プロポキシシラン、エチルトリ-n-ブトキシシラン、エチルトリ-sec-ブトキシシラン、エチルトリ-tert-ブトキシシラン、エチルトリフェノキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ-n-プロポキシシラン、ビニルトリ-iso-プロポキシシラン、ビニルトリ-n-ブトキシシラン、ビニルトリ-sec-ブトキシシラン、ビニルトリ-tert-ブトキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、n-プロピルトリ-n-プロポキシシラン、n-プロピルトリ-iso-プロポキシシラン、n-プロピルトリ-n-ブトキシシラン、n-プロピルトリ-sec-ブトキシシラン、n-プロピルトリ-tert-ブトキシシラン、n-プロピルトリフェノキシシラン、i-プロピルトリメトキシシラン、i-プロピルトリエトキシシラン、i-プロピルトリ-n-プロポキシシラン、i-プロピルトリ-iso-プロポキシシラン、i-プロピルトリ-n-ブトキシシラン、i-プロピルトリ-sec-ブトキシシラン、i-プロピルトリ-tert-ブトキシシラン、i-プロピルトリフェノキシシラン、n-ブチルトリメトキシシラン、n-ブチルトリエトキシシラン、n-ブチルトリ-n-プロポキシシラン、n-ブチルトリ-iso-プロポキシシラン、n-ブチルトリ-n-ブトキシシラン、n-ブチルトリ-sec-ブトキシシラン、n-ブチルトリ-tert-ブトキシシラン、n-ブチルトリフェノキシシラン、sec-ブチルトリメトキシシラン、sec-ブチルトリエトキシシラン、sec-ブチルトリ-n-プロポキシシラン、sec-ブチルトリ-iso-プロポキシシラン、sec-ブチルトリ-n-ブトキシシラン、sec-ブチルトリ-sec-ブトキシシラン、sec-ブチルトリ-tert-ブトキシシラン、sec-ブチル-トリフェノキシシラン、t-ブチルトリメトキシシラン、t-ブチルトリエトキシシラン、t-ブチルトリ-n-プロポキシシラン、t-ブチルトリ-iso-プロポキシシラン、t-ブチルトリ-n-ブトキシシラン、t-ブチルトリ-sec-ブトキシシラン、t-ブチルトリ-tert-ブトキシシラン、t-ブチルトリフェノキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリ-n-プロポキシシラン、フェニルトリ-iso-プロポキシシラン、フェニルトリ-n-ブトキシシラン、フェニルトリ-sec-ブトキシシラン、フェニルトリ-tert-ブトキシシラン、フェニルトリフェノキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-トリフロロプロピルトリメトキシシラン、γ-トリフロロプロピルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチル-ジ-n-プロポキシシラン、ジメチル-ジ-iso-プロポキシシラン、ジメチル-ジ-n-ブトキシシラン、ジメチル-ジ-sec-ブトキシシラン、ジメチル-ジ-tert-ブトキシシラン、ジメチルジフェノキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチル-ジ-n-プロポキシシラン、ジエチル-ジ-iso-プロポキシシラン、ジエチル-ジ-n-ブトキシシラン、ジエチル-ジ-sec-ブトキシシラン、ジエチル-ジ-tert-ブトキシシラン、ジエチルジフェノキシシラン、ジ-n-プロピルジメトキシシラン、ジ-n-プロピルジエトキシシラン、ジ-n-プロピル-ジ-n-プロポキシシラン、ジ-n-プロピル-ジ-iso-プロポキシシラン、ジ-n-プロピル-ジ-n-ブトキシシラン、ジ-n-プロピル-ジ-sec-ブトキシシラン、ジ-n-プロピル-ジ-tert-ブトキシシラン、ジ-n-プロピル-ジ-フェノキシシラン、ジ-iso-プロピルジメトキシシラン、ジ-iso-プロピルジエトキシシラン、ジ-iso-プロピル-ジ-n-プロポキシシラン、ジ-iso-プロピル-ジ-iso-プロポキシシラン、ジ-iso-プロピル-ジ-n-ブトキシシラン、ジ-iso-プロピル-ジ-sec-ブトキシシラン、ジ-iso-プロピル-ジ-tert-ブトキシシラン、ジ-iso-プロピル-ジ-フェノキシシラン、ジ-n-ブチルジメトキシシラン、ジ-n-ブチルジエトキシシラン、ジ-n-ブチル-ジ-n-プロポキシシラン、ジ-n-ブチル-ジ-iso-プロポキシシラン、ジ-n-ブチル-ジ-n-ブトキシシラン、ジ-n-ブチル-ジ-sec-ブトキシシラン、ジ-n-ブチル-ジ-tert-ブトキシシラン、ジ-n-ブチル-ジ-フェノキシシラン、ジ-sec-ブチルジメトキシシラン、ジ-sec-ブチルジエトキシシラン、ジ-sec-ブチル-ジ-n-プロポキシシラン、ジ-sec-ブチル-ジ-iso-プロポキシシラン、ジ-sec-ブチル-ジ-n-ブトキシシラン、ジ-sec-ブチル-ジ-sec-ブトキシシラン、ジ-sec-ブチル-ジ-tert-ブトキシシラン、ジ-sec-ブチル-ジ-フェノキシシラン、ジ-tert-ブチルジメトキシシラン、ジ-tert-ブチルジエトキシシラン、ジ-tert-ブチル-ジ-n-プロポキシシラン、ジ-tert-ブチル-ジ-iso-プロポキシシラン、ジ-tert-ブチル-ジ-n-ブトキシシラン、ジ-tert-ブチル-ジ-sec-ブトキシシラン、ジ-tert-ブチル-ジ-tert-ブトキシシラン、ジ-tert-ブチル-ジ-フェノキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニル-ジ-エトキシシラン、ジフェニル-ジ-n-プロポキシシラン、ジフェニル-ジ-iso-プロポキシシラン、ジフェニル-ジ-n-ブトキシシラン、ジフェニル-ジ-sec-ブトキシシラン、ジフェニル-ジ-tert-ブトキシシラン、ジフェニルジフェノキシシラン、ジビニルトリメトキシシランなどを挙げることができる。
【0020】
一般式(1)で表される化合物のとして中でも、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ-n-プロポキシシラン、メチルトリ-iso-プロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシランなどが工業的に入手しやすく好ましい。これらは、1種あるいは2種以上を同時に使用してもよい。
【0021】
上記一般式(2)で表される化合物としては具体的には、テトラメトキシシラン、メトキシトリエトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、トリメトキシエトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ-n-プロポキシシラン、テトラ-iso-プロポキシシラン、テトラ-n-ブトキシシラン、テトラ-sec-ブトキシシラン、テトラ-tert-ブトキシシラン、テトラフェノキシシラン等が用いられる。中でもテトラメトキシシラン、テトラエトキシシランが工業的に入手しやすく好ましい。
【0022】
前記水は、前記シラン化合物を加水分解、縮重合するために用いられる。前記水の種類としては、工業用水、市水、井水、蒸留水、イオン交換水および超純水などが用いられる。これらの1種類を用いてもよいし、2種類以上を用いてもよい。
【0023】
中でも電気抵抗率が高い、イオン交換水や超純水が好ましく、電気抵抗率が15MΩ・cm以上の超純水が、金属含量が少なくより好ましい。
【0024】
水の使用量は、前記シラン化合物のアルコキシル基の総量1.0当量に対して、1.0~15.0当量が好ましい。水の量が1.0当量以上の場合、加水分解、縮重合反応が速やかに進行し、15.0当量以下、より好ましくは10.0当量以下、さらに好ましくは5.0当量以下であれば、反応が制御されゲル化しないため好ましい。
【0025】
前記水は、先ず前記シラン化合物と混合してもよいし、後述するアルコールに加えてもよい。前記アルコールに加えた場合、前記シラン化合物の意図しない加水分解が生じるのを防ぐことができ好ましい。
【0026】
前記アルコールにより、前記シラン化合物と前記水とが混合しやすくなる。前記アルコールは、沸点が100℃以下であることが重要である。従来技術として例えば沸点146℃のプロピレングリコールモノエチルエーテルを溶媒とした場合、イオン交換樹脂の触媒能が低下したりイオン交換樹脂が変形、破砕してしまうことがわかった。本発明のシリコーン重合体の製造方法においては、前記アルコールの沸点が100℃以下であることで、前記アルコールを含む反応液とイオン交換樹脂とを加熱しても、イオン交換樹脂の触媒能が低下したりイオン交換樹脂が変形、破砕することなく、長期間、繰り返し使用することができる。
【0027】
前記アルコールは、メタノール、エタノール、n-プロパノール、およびi-プロパノールから選ばれる少なくとも一つを含むことが好ましい。中でもメタノールは、留去しやすく好ましい。前記アルコールは、2種類以上を用いてもよい。
【0028】
前記アルコールの量としては、前記シラン化合物に対して、0.1~10.0質量倍が好ましい。前記アルコールの量が前記シラン化合物の0.1質量倍以上、より好ましくは0.5質量倍以上、さらに好ましくは1.0質量倍以上、さらに好ましくは1.2質量倍以上であれば、前記シラン化合物と前記水とが混合しやすくなり、またシリコーン重合体のゲル化が抑制され安定する。また、10.0質量倍以下、より好ましくは8.0質量倍以下、さらに好ましくは5.0質量倍以下であれば、経済的に好ましい。
【0029】
本発明のシリコーン重合体の製造方法では、前記シラン化合物、前記水および前記アルコールをミキサーで混合してもよい。
【0030】
ミキサーへの原料の供給は、ポンプを用いるとよい。ポンプの圧力や流量の制御にパーソナルコンピュータ(PC)を利用すると、自動化や省人化に繋がり好ましい。
【0031】
ミキサーの材質は、SUS304、SUS316等のステンレス鋼、SS41、SC、SCM等の炭素鋼、“ハステロイ”、チタン、モネル、ニッケル、“カーペンター”、タンタル等の金属、“テフロン(登録商標)”、PFA、PVC,FRP、CFRP等の樹脂、金属等にセラミックス、ゴムライニング、“テフロン(登録商標)”ライニング、ガラスライニングした材料等が用いられる。“テフロン(登録商標)”や“テフロン(登録商標)”ライニングした材料を用いた場合、混合液に金属が溶出せず好ましい。
【0032】
ミキサーとしては、遠心ポンプ、渦巻きポンプ、撹拌羽を有するインラインミキサー等の駆動型混合攪拌器、スタティックミキサー、ノズル、オリフィス等の静止型混合攪拌器などが用いられる。中でも駆動部や摺動部がない静止型混合撹拌機、いわゆるスタティックミキサーは、発塵やオイルの混入リスクがなく、管理が厳格な医薬品や電子情報材料向け材料の製造に適しており、好ましい。また、スタティックミキサーは一般的な反応缶に比べ、比表面積が大きいので、温度の管理が容易であり、好ましい。
【0033】
スタティックミキサーの、パイプやブロックからなる流路は1mm未満であることが好ましい。当該流路が1mm未満であることで、混合が反応を伴う場合、物質の拡散距離が制限されるため、反応をより速やかに進行させることができる。
【0034】
スタティックミキサーに用いるパイプの内径は1~20mmが好ましい。内径が1mm以上であれば圧力損失が小さく、閉塞のリスクが少ない。内径が20mm以下、より好ましくは10mm以下であれば、比表面積がさらに大きくなり、反応が速やかに進行して好ましい。
【0035】
スタティックミキサーやマイクロミキサーには、長方形の板を左右逆方向に、180度ねじったエレメントが、管内に交互に配列される。エレメント数は、12以上が好ましい。エレメント数が12以上、より好ましくは24以上であれば、原料の供給速度によらず、十分に混合させることができる。
【0036】
スタティックミキサーとしては具体的には、Kenics mixer型、Sulzer SMV型、Sulzer SMX型、Toray Hi-mixer型、Komax mixer型、Lightnin mixer型、Ross ISG型、Bran&Lube mixer型、YMC,Deneb型、YMC Spica型、YMC Hadar型、IMM CPMM-R300型等が挙げられる。
【0037】
ミキサーで混合する際の時間は、原料の供給速度とミキサーの設計によるが、0.1秒から600秒が好ましく、さらに好ましくは1秒から300秒である。混合時間が0.1秒以上、より好ましくは1秒以上であれば十分に混合が行われ、600秒以下、より好ましくは300秒以下であれば反応時間の制御への影響を少なくすることができる。
【0038】
本発明のシリコーン重合体の製造方法は、前記混合液を、前記イオン交換樹脂が充填された充填塔に連続的に供給する。すなわち、本発明のシリコーン重合体の製造方法は、フロー合成法を用いる。フロー合成法は、長期間、自動で連続的にシリコーン重合体を製造できるため、従来のバッチ反応に比べると、手動操作が少なく、省人化できる。
【0039】
前記溶液は、前記充填塔の上部から供給して底部から排出してもよいし、前記充填塔の底部から供給して上部から排出してもよい。
【0040】
本発明のシリコーン重合体の製造方法は、前記混合液を、前記イオン交換樹脂と接触させる。前記イオン交換樹脂と接触させることで、前記シラン化合物の加水分解や縮合が促進される。加えて、金属などイオン性の不純物を連続的に除去することができる。イオン交換樹脂は、再生することで繰り返し使用することができ資源的、経済的に好ましい。
【0041】
前記イオン交換樹脂は、陽イオン交換樹脂、陰イオン交換樹脂のいずれでもよい。前記シラン化合物の加水分解、縮重合の反応が酸でも塩基でも促進されるためである。
【0042】
前記陽イオン交換樹脂としては、強酸性陽イオン交換樹脂でも、弱酸性陽イオン交換樹脂でもよい。通常用いられているもの、例えば市販品の水素型陽イオン交換樹脂、具体的には、例えば
“Amberlist”(オルガノ株式会社製)、15DRY、15JWET、16WET、35WET、
“Lewatit”(ランクセス株式会社製)、モノプラスSP112、モノプラスSP112H、CNP80WS、CNP LF、K2420、K2431、K2620、K2629、S2328、
“ダイヤイオン”(三菱化学株式会社製)、SK104H、SK110、SK110L、SK112、SK112L、SK1BH、SK1BL、SK1BLH、SKL10、SKT10L、SKT110、SKT110L、SKT20L、PK208、PK208L、PK208LH、PK212L、PK212LH、PK216、PK216L、PK216H、PK216LH、PK218、PK218L、PK220、PK220L、PK228、PK228L、PK228LH、RCP145H、RCP160M、RCP200、RCP400、RCP610、UBK04、UBK08、UBK08A、UBK08H、UBK08HUP、UBK10、UBK10H、UBK10HUP、UBK12、UBK16、UBKN1U、UBKN1UMB、UBK522M、UBK530、UBK530J、UBK530K、UBK535、UBK535J、UBK535K、UBK535L、UBK550、UBK555、JC600、JC603、WK10、WK100、WK10S、WK11、WT01S、WK60L、WK60LA、
“Monosphere”(ダウ・ケミカル社製)、強酸性陽イオン交換樹脂No.1(架橋度2%、50-100メッシュ、H形)、強酸性陽イオン交換樹脂No.2(架橋度2%、100-200メッシュ、H形)、強酸性陽イオン交換樹脂50W×2 200-400メッシュ(H形)、強酸性陽イオン交換樹脂No.4(架橋度8%、50-100メッシュ、H形)、強酸性陽イオン交換樹脂No.5(架橋度8%、100-200メッシュ、H形)、強酸性陽イオン交換樹脂N0.6(架橋度8%、200-400メッシュ、H形)、強酸性陽イオン交換樹脂HCR-S(Na形)、強酸性陽イオン交換樹脂No.7(H形)、強酸性陽イオン交換樹脂C-10(Na形)等を用いることができる。
【0043】
陽イオン交換樹脂として、強酸性陽イオン交換樹脂が好ましく、“Amberlist”15JWETがさらに好ましい。
【0044】
陰イオン交換樹脂は、強塩基性陰イオン交換樹脂、弱塩基性陰イオン交換樹脂のいずれでもよく、好ましくは強塩基性陰イオン交換樹脂がよい。陰イオン交換樹脂としては例えば、
“Amberlist”(オルガノ株式会社製)、A21、A26、A27、
“Lewatit”(ランクセス株式会社製)、モノプラスMP800、モノプラスMP600、MP62WS、モノプラスMP64、VPOC1065、S4268、S6368、S7468、
“ダイヤイオン”(三菱化学株式会社製)、NSA100、SA10A、SA10AL、SA10ALLP、SA10AOH、SA10AP、SA10DL、SA11A、SA11AL、SA12A、SA12AL、SAALL、SA20A、SA20ALL、SA20ALLP、SA20AP、SA20AP2、SAF11AL、SANUPB、SAT10L、SAT20L、UMA130J、UBA100、UBA100OH、UBA100OHUP、UBA120、UBA120A、UBA120OH、UBA120OHUP、UBA150、UBA200、PA306S、PA308、PA308L、PA312、PA312L、PA312LOH、PA312LTU、PA312LTUMB、PA316、PA316L、PA318L、PA318LOH、PA408、PA412、PA418、PA418L、PA418LL、PAF308L、HPA25L、HPA25M、HPA512、HPA716、WA10、WA20、WA21J、WA30、WA30C、WA30LL、WA55、
“Monosphere”(ダウ・ケミカル社製)、強塩基性イオン交換樹脂No.2(架橋度2%、100-200メッシュ、Cl形)、強塩基性陰イオン交換樹脂1×2 200-400メッシュ(タイプI、Cl形)、強塩基性陰イオン交換樹脂1×4 20-50メッシュ(タイプI、Cl形)、強塩基性陰イオン交換樹脂No.3(架橋度4%、50-100メッシュ、Cl形)、強塩基性陰イオン交換樹脂No.4(架橋度4%、100-200メッシュ、Cl形)、強塩基性陰イオン交換樹脂1×4 200-400メッシュ(タイプI、Cl形)、強塩基性陰イオン交換樹脂No.5(架橋度8%、50-100メッシュ、Cl形)、強塩基性陰イオン交換樹脂No.6(架橋度8%、100-200メッシュ、Cl形)強塩基性陰イオン交換樹脂No.7(架橋度8%、200-400メッシュ、Cl形)、強塩基性陰イオン交換樹脂No.8(OH形)、強塩基性陰イオン交換樹脂22(タイプII、Cl形)、強塩基性陰イオン交換樹脂MSA-2(タイプII、Cl形)、強塩基性陰イオン交換樹脂2A(タイプII、Cl形)、弱塩基性陰イオン交換樹脂66(遊離塩形)、弱塩基性陰イオン交換樹脂77(遊離塩形)等が挙げられる。
【0045】
前記混合液の前記イオン交換樹脂との接触時間は、空間速度(SV)0.05~5が好ましい。空間速度(SV)が0.05以上、より好ましくは0.1以上であれば、単位時間あたりの反応量が多く経済的に好ましく、5以下、より好ましくは2以下であれば、十分加水分解、縮重合が進行するため好ましい。
【0046】
本発明のシリコーン重合体の製造方法は、充填塔の出口側に設置された圧力計のゲージ圧力が0.05~5.0MPaを示す圧力下で反応を行う。
前記ゲージ圧力を0.05MPa以上、より好ましくは0.10MPa以上とすることで、沸点100℃以下の前記アルコールを含む前記混合液であっても、沸点以上に加熱することができる。前記アルコールの沸騰を抑えつつ、系内の温度を上昇させることで、前記イオン交換樹脂を不均一触媒として機能させることができる。そうすることで、反応速度を上げて速やかに反応を完結させたり、重合度の高いシリコーン重合体を得ることができる。前記ゲージ圧力が5.0MPa以下、より好ましくは3.0MPa以下であれば、簡素な装置でも漏れ等が生じずに安全に反応させることができる。
【0047】
圧力を調節する方法は特に限定されないが、イオン交換樹脂が充填された充填塔の排出側に、背圧弁を設置することで、圧力を調整することができる。背圧弁は、反応器内の圧力を任意に調節できるものが好ましい。
【0048】
本発明のシリコーン重合体の製造方法は、前記混合液を70~120℃でイオン交換樹脂と接触させる。温度が70℃以上であれば、イオン交換樹脂が不均一触媒として機能し、速やかに加水分解、縮合が進行し、短時間でシリコーン重合体が得られる。120℃以下、より好ましくは100℃以下であれば、反応の制御が容易で好ましい。所定の温度で反応を進行させるため、前記混合液あるいはその構成成分をあらかじめ加熱しておいてもよいし、前記充填塔を加熱してもよい。前記充填塔の加熱には、前記充填塔にジャケットを設置し、温水やスチームで加熱してもよい。
【0049】
前記イオン交換樹脂は、繰り返し使用することができる。使用後、シリコーン重合体を溶解する溶媒で洗浄し、再度使用してもよいし、塩酸や水酸化ナトリウム水溶液等で再生を行ってもよい。
【0050】
本発明のシリコーン重合体の製造方法において、ポンプの運転や、スタティックミキサーおよび充填塔の温度制御を、PC等を使用してプログラムで制御すると、自動運転することができる。情報伝達のネットワークを利用すれば、装置の運転を遠隔操作することができ、作業の安全性をより向上させることができる。また、自動運転とすると、手動操作によるバラつきがなくなるので、再現性の高い生産ができる。
【0051】
本発明の製造方法により製造されるシリコーン重合体の重量平均分子量は、300~100,000が好ましい。前記シリコーン重合体の重量平均分子量が300以上、より好ましくは500以上、さらに好ましくは1,000以上であれば、塗膜を形成することができる。また前記シリコーン重合体の重量平均分子量が100,000以下、より好ましくは50,000以下、さらに好ましくは20,000以下であれば、有機溶媒に可溶である。
【0052】
また、前記シリコーン重合体は、重量平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で割った分散度(Mw/Mn)が1~20であることが好ましく、より好ましくは1~5である。本発明において、シリコーン重合体の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)およびZ平均分子量(Mz)は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)を使用して測定し、標準ポリスチレン換算により求める事が出来る。
【0053】
前記シリコーン重合体は、その高次構造が籠型であっても良い。
【0054】
前記シリコーン重合体は、溶媒に溶解してもよい。溶媒としては、アルコール系溶媒、高沸点溶媒が用いられる。
アルコール系溶媒としては例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等、
高沸点溶媒としては例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチル等を好ましく用いることができる。
【0055】
前記シリコーン重合体組成物は、スピンコーティング等の一般的な塗膜方法によって塗膜可能である。また、前記シリコーン重合体組成物は、基板に例えばスピンコートにより塗布した場合、基板上に薄膜を形成することができ、加熱することにより、溶媒を除去するとともに、シリコーン重合体の加水分解、縮重合反応させることで、熱硬化フィルムとすることができる。
【0056】
前記基板としては例えば、ガラス、シリコンウェハ、ならびにポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリプロピレンテレフタレートなどの樹脂が挙げられる。
【0057】
基板上に形成された薄膜の加熱は、ホットプレートやインキュベーターを用いて行うことができる。
【0058】
前記加熱の温度としては、80℃以上が好ましく、より好ましくは100℃以上である。
【0059】
このように形成した熱硬化フィルムは、透明性と耐熱性に優れた特性を有していることから、半導体やディスプレイの保護膜およびレジスト下層膜などに使用することができる。
【0060】
本発明の製造方法により得られるシリコーン重合体は、上述の通り、簡便に塗膜が得られることから半導体やディスプレイなどに好適に用いられる。また、前記シリコーン重合体は、電子情報材料分野に限らず、塗料や接着剤等、幅広い分野に応用できる。
【実施例0061】
以下実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明する。以下の実施例において、分析には下記装置を使用し、原料は、特に明示しない場合、試薬メーカーから購入した一般的な試薬を用いた。分析には以下の方法を用いた。
【0062】
・分子量測定
ゲル浸透クロマトグラフィー装置として東ソー社製HLC-8220GPCシステムを使用し、カラムとして東ソー社製“TSKgel”SuperHZ3000、“TSKgel”SuperHZ2000、“TSKgel”SuperHZ1000を直列に接続して分析を行った。検出は屈折率計(RI)で行い、リファレンスカラムとして“TSKgel”SuperH-RCを1本使用した。展開溶媒には和光純薬社製テトラヒドロフランを使用し、カラムとリファレンスカラムの流速は0.35mL/minとした。測定温度はプランジャーポンプ、カラム共に40℃とした。サンプルの調製にはシリコーン重合体約0.025gを10mLのテトラヒドロフランで希釈したものを25μL打ちこむ設定で行った。分子量分布計算には、標準物質として東ソー社製“TSKgel”標準ポリスチレン(A-500、A-1000、A-2500、A-5000、F-1、F-2、F-4、F-10、F-20、F-40、F-80)を使用した。
【0063】
[実施例1]
(フロー式反応器)
フロー式反応器としては、デュアルプランジャーポンプ2基、マイクロミキサー、コントローラーおよび制御用PCからなる、“KeyChem-Integral”(株式会社ワイエムシィ製)を用いた。デュアルプランジャーポンプのそれぞれは、マイクロミキサーと接続させた。さらに、マイクロミキサーは60mlのカラムと接続させた。60mlのカラムには前処理された強酸性陽イオン交換樹脂(“Amberlist”15JWET、オルガノ製)53mlを充填させた。60mlのカラムには温水ジャケットを設置し、70℃に加熱して、イオン交換樹脂が不均一触媒として機能するようにした。60mlのカラムを通った反応液をナスフラスコで収集するようにした。
【0064】
(モノマー溶液)
100mlのポリ容器にテトラメトキシシランを54.48g(0.400mol)、メチルトリメトキシシランを60.88g(0.400mol)、溶媒としてメタノールを115.36g計量し、マグネチックスターラーで攪拌し、モノマー溶液とした。
【0065】
(イオン交換水)
100mlのポリ容器にイオン交換水を100.92g計量し、イオン交換水とした。
【0066】
(混合液)
上記のモノマー溶液を含むポリ容器をデュアルプランジャーポンプAに接続し、上記のイオン交換水を含むポリ容器をそれぞれデュアルプランジャーポンプBに接続した。ポンプAの送液速度を3.07ml/min、ポンプBの送液速度を0.135mlとし、温度25℃に設定したマイクロミキサーに送液した。マイクロミキサーでモノマー溶液およびイオン交換水を混合し、混合液とした。
【0067】
(フロー反応)
上記の混合液を、イオン交換樹脂が充填された60mlのカラム内に、空間速度(SV)が0.5となるようにポンプを調節して供給した。また、カラムの流出側に設置された背圧弁を調整し、圧力計で計測されたゲージ圧力は0.2~0.3MPaの範囲内となるようにした。カラムの流出側より、反応後の溶液をフラスコで収集した。
【0068】
(濃縮)
上記の反応後の溶液を収集することと並行して、プランジャーポンプでこの溶液にプロピレングリコールモノエチルエーテルを177.8g加えた。この溶液を減圧濃縮することとで、無色透明のシリコーン重合体溶液を得た。減圧濃縮操作までは、制御用PCを用いた自動運転で行った。
【0069】
得られたシリコーン重合体溶液の量は177.5gであり、シリコーン重合体の重量平均分子量は(Mw)は1,400であった。
【0070】
(イオン交換樹脂の1回目の洗浄)
続いて、洗浄液としてメタノールを87.6g、ポリ容器に計量し、ポンプA,Bから同様にしてイオン交換樹脂が充填された60mlのカラムに供給することで、イオン交換樹脂を洗浄した。カラム内のイオン交換樹脂の外観を目視で確認したところ、変形・破砕は見られなかった。
【0071】
(2回目の製造)
引き続き、洗浄したイオン交換樹脂(リサイクル1回目)を用いて、上記の「モノマー溶液」~「濃縮」を同じ条件で繰り返し、無色透明のシリコーン重合体溶液を得た。
【0072】
得られたシリコーン重合体溶液の量は176.2gであり、シリコーン重合体の重量平均分子量(Mw)は1,360であった。
【0073】
(イオン交換樹脂の2回目の洗浄)
続いて、「イオン交換樹脂の1回目の洗浄」と同様にして、イオン交換樹脂を洗浄した。カラム内のイオン交換樹脂を目視で確認したところ、変形・破砕は見られなかった。
【0074】
(3回目の製造)
引き続き、洗浄したイオン交換樹脂(リサイクル2回目)を用いて、上記の「モノマー溶液」~「濃縮」を同じ条件で繰り返し、無色透明のシリコーン重合体溶液を得た。
【0075】
得られたシリコーン重合体溶液の量は177.2gであり、シリコーン重合体の重量平均分子量(Mw)は1,360であった。
【0076】
(イオン交換樹脂の3回目の洗浄)
続いて、「イオン交換樹脂の1回目の洗浄」と同様にして、イオン交換樹脂を洗浄した。カラム内のイオン交換樹脂を目視で確認したところ、変形・破砕は見られなかった。
【0077】
実施例1においては、長時間、自動で連続的にシリコーン重合体が得られた。
【0078】
[比較例1]
(フロー式反応器)
実施例1で用いたのと同様のフロー式反応器を用いた。
【0079】
(モノマー溶液)
溶媒としてメタノールに替えてプロピレングリコールモノエチルエーテル(沸点146.4℃)を用いた。
【0080】
(イオン交換水)
実施例1で用いたのと同様のイオン交換水を用いた。
【0081】
(混合液)
上記のモノマー溶液を用いた以外は実施例1と同様にして、混合液を調製した。
【0082】
(フロー反応)
上記の混合液を用い、また背圧弁を、圧力計で計測されるゲージ圧力が0.0MPaとなるように調整した。それら以外は実施例1と同様にして、反応後の溶液を収集した。
【0083】
(濃縮)
上記の反応後の溶液に対して、実施例1と同様にしてプロピレングリコールモノエチルエーテルの添加を行い、さらに減圧濃縮することとで、無色透明のシリコーン重合体を得た。
【0084】
得られたシリコーン重合体溶液の量は176.2gであり、シリコーン重合体の重量平均分子量は(Mw)は1,900であった。
【0085】
(イオン交換樹脂の1回目の洗浄)
続いて、洗浄液としてプロピレングリコールモノエチルエーテルを用いた以外は実施例1と同様にして、イオン交換樹脂を洗浄した。カラム内のイオン交換樹脂を目視で確認したところ、変形・破砕は見られなかった。
【0086】
(2回目の製造)
引き続き、洗浄したイオン交換樹脂(リサイクル1回目)を用いて、本比較例における上記の「モノマー溶液」~「濃縮」を同じ条件で繰り返し、無色透明のシリコーン重合体溶液を得た。
【0087】
得られたシリコーン重合体溶液の量は178.8gであり、シリコーン重合体の重量平均分子量(Mw)は1,780であった。
【0088】
(イオン交換樹脂の2回目の洗浄)
続いて、本比較例の「イオン交換樹脂の1回目の洗浄」と同様にして、イオン交換樹脂を洗浄した。カラム内のイオン交換樹脂を目視で確認したところ、部分的に割れたり、形状が変化していたものがあった。
【0089】
(3回目の製造)
引き続き、洗浄したイオン交換樹脂(リサイクル2回目)を用いて、本比較例における上記の「モノマー溶液」~「濃縮」を同じ条件で繰り返し、無色透明のシリコーン重合体溶液を得た。
【0090】
得られたシリコーン重合体溶液の量は178.2gであり、シリコーン重合体の重量平均分子量(Mw)は1,560であった。重量平均分子量(Mw)が徐々に低下し、イオン交換樹脂の触媒能の低下が示唆された。
【0091】
(イオン交換樹脂の3回目の洗浄)
続いて、本比較例の「イオン交換樹脂の1回目の洗浄」と同様にして、イオン交換樹脂を洗浄した。カラム内のイオン交換樹脂を目視で確認したところ、部分的に割れたり、形状が変化していたものがあった。
【0092】