(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136758
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】報知システム及び報知方法
(51)【国際特許分類】
H04R 1/10 20060101AFI20240927BHJP
H04R 29/00 20060101ALI20240927BHJP
G10K 15/00 20060101ALI20240927BHJP
H04R 25/00 20060101ALI20240927BHJP
G10K 11/178 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H04R1/10 104E
H04R29/00 310
H04R29/00 320
G10K15/00 L
H04R25/00 Z
H04R1/10 101A
G10K11/178 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047989
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】海和 徹
(72)【発明者】
【氏名】植本 将史
(72)【発明者】
【氏名】清水 薫
(72)【発明者】
【氏名】高地 邦明
(72)【発明者】
【氏名】春川 陽一
(72)【発明者】
【氏名】米澤 吉広
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 芳美
【テーマコード(参考)】
5D005
5D061
【Fターム(参考)】
5D005BB08
5D061FF02
(57)【要約】
【課題】聴音装置の清掃を適切に促すことが可能な報知システムを提供すること。
【解決手段】本開示にかかる報知システム50は、聴音装置10と、聴音装置10を収容する収容部30と、を備えている。聴音装置10は、収容部30に収容された状態で音声信号を出力する音声出力部1と、出力された音声信号を集音する集音部2と、集音された音声信号の音響特性を示す判定特性と、判定基準となる音響特性を示す基準特性とを比較して、音声出力部1の周辺又は集音部2の周辺に汚れがあると判定する判定部3と、汚れがあると判定された場合に、その旨を報知部に報知させる報知制御部4と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
聴音装置と、
前記聴音装置を収容する収容部と、を備え、
前記聴音装置は、
前記収容部に収容された状態で音声信号を出力する音声出力部と、
出力された前記音声信号を集音する集音部と、
集音された前記音声信号の音響特性を示す判定特性と、判定基準となる音響特性を示す基準特性とを比較して、前記音声出力部の周辺又は前記集音部の周辺に汚れがあると判定する判定部と、
前記汚れがあると判定された場合に、その旨を報知部に報知させる報知制御部と、を有する
報知システム。
【請求項2】
前記聴音装置は、複数の集音部を有しており、
前記複数の集音部は、前記音声出力部から出力された1つの音声信号をそれぞれ集音し、
前記判定部は、前記音響特性の変化がある集音部を特定し、前記音声出力部の周辺又は特定された集音部の周辺に汚れがあると判定し、
前記報知制御部は、前記音声出力部の周辺又は前記特定された集音部の周辺に汚れがあると判定された場合に、その旨を前記報知部に報知させる
請求項1に記載の報知システム。
【請求項3】
前記聴音装置を複数備え、
前記集音部は、他の聴音装置の音声出力部から出力された他の音声信号をさらに集音し、
前記判定部は、前記音声信号に対応する判定特性と、前記他の音声信号に対応する判定特性とを用いて、前記音声出力部の周辺又は前記集音部の周辺に汚れがあるか否かをさらに判定する
請求項1又は2に記載の報知システム。
【請求項4】
前記判定部は、前記基準特性が示す周波数特性と、前記判定特性が示す周波数特性とに基づいて、周波数特性の減衰量又は増幅量を前記音響特性の変化として算出し、
前記音響特性の変化の閾値は1dBであり、
前記判定部は、前記音響特性の変化が1dB以上である場合に、前記音声出力部の周辺又は前記集音部の周辺に汚れがあると判定する
請求項1又は2に記載の報知システム。
【請求項5】
収容部に収容された状態で、音声出力部を用いて音声信号を出力する音声出力ステップと、
出力された前記音声信号を、集音部を用いて集音する集音ステップと、
集音された前記音声信号の音響特性を示す判定特性と、判定基準となる音響特性を示す基準特性とを比較して、前記音声出力部の周辺又は前記集音部の周辺に汚れがあると判定する判定ステップと、
前記汚れがあると判定された場合に、その旨を報知部に報知させる報知制御ステップと、を実行する
報知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、報知システム及び報知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯端末や音楽プレイヤなどで再生された音声を聴くためのイヤホン(聴音装置)が知られている。長期に亘りイヤホンを利用していると、イヤホンに装着したイヤーピースやイヤホン内の音筒(ノズル)に、埃や耳垢などの汚れが蓄積する。
【0003】
関連する技術として、特許文献1は、装着時に耳音響放射の測定を行うことで外耳道の耳垢を検出することが可能な補聴器システムを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
耳垢などの汚れが蓄積した状態でイヤホンの使用を継続した場合、イヤホンの性能が低下し、本来の性能を発揮できなくなるおそれがある。そのため、ユーザは、イヤホンやイヤーピースの清掃を適宜行う必要がある。
【0006】
本開示の目的は、上述した課題を鑑み、聴音装置の清掃を適切に促すことが可能な報知システム及び報知方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示にかかる報知システムは、
聴音装置と、
前記聴音装置を収容する収容部と、を備え、
前記聴音装置は、
前記収容部に収容された状態で音声信号を出力する音声出力部と、
出力された前記音声信号を集音する集音部と、
集音された前記音声信号の音響特性を示す判定特性と、判定基準となる音響特性を示す基準特性とを比較して、前記音声出力部の周辺又は前記集音部の周辺に汚れがあると判定する判定部と、
前記汚れがあると判定された場合に、その旨を報知部に報知させる報知制御部と、を有するものである。
【0008】
本開示にかかる報知方法は、
収容部に収容された状態で、音声出力部を用いて音声信号を出力する音声出力ステップと、
出力された前記音声信号を、集音部を用いて集音する集音ステップと、
集音された前記音声信号の音響特性を示す判定特性と、判定基準となる音響特性を示す基準特性とを比較して、前記音声出力部の周辺又は前記集音部の周辺に汚れがあると判定する判定ステップと、
前記汚れがあると判定された場合に、その旨を報知部に報知させる報知制御ステップと、を実行するものである。
【発明の効果】
【0009】
本開示にかかる報知システム及び報知方法は、聴音装置の清掃を適切に促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態1にかかる報知システムの機能構成を示すブロック図である。
【
図2】実施形態1にかかる報知システムの外観を示す図である。
【
図3】実施形態1にかかる聴音装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】実施形態1にかかる聴音装置の構成を示す縦断面図である。
【
図5】実施形態1にかかる基準時である工場出荷時に測定した音声用マイクの周波数特性と、所定期間使用を継続した後である判定時に測定した音声用マイクの周波数特性とを示すグラフである。
【
図6】実施形態1にかかる収容部に収容された場合に聴音装置が行う処理を示すフローチャートである。
【
図7】実施形態1にかかる収容部から取り出された場合の聴音装置の処理を示すフローチャートである。
【
図8】実施形態1の変形例にかかるマイクとスピーカの組み合わせに対応する測定結果から特定される清掃指示対象の一例を示す図である。
【
図9】実施形態2にかかる聴音装置の構成を示すブロック図である。
【
図10】実施形態2にかかる聴音装置の構成を示す縦断面図である。
【
図11】実施形態2にかかる聴音装置が行う処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下では、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図面において、同一又は対応する要素には同一の符号が付されている。説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略される。
【0012】
<実施形態1>
図1~
図7を参照して、実施形態1について説明する。
図1は、本実施形態にかかる報知システム50の機能構成を示すブロック図である。
【0013】
(報知システム50の機能構成及び概要)
報知システム50は、聴音装置10と、聴音装置10を収容する収容部30と、を備えている。また、聴音装置10は、音声出力部1、集音部2、判定部3、及び報知制御部4を有している。
【0014】
ここで、報知システム50の概要を説明する。聴音装置10は、本体部に音声出力部1及び集音部2を備えている。集音部2は、例えばマイクである。聴音装置10は、例えば、マイク付きのイヤホンである。収容部30は、聴音装置10を収容するためのケースである。
【0015】
聴音装置10は、収容部30に収容された状態で、メンテナンス用のテスト音声信号を音声出力部1から出力し、出力された音声信号を集音部2で集音する。聴音装置10は、集音された音声信号に対応する音響特性(例えば、周波数特性など)と、出荷時の音響特性とを判定部3において比較する。判定部3は、2つの音響特性に所定以上の変化があるか否かを判定する。
【0016】
聴音装置10は、音響特性に所定以上の変化があった場合、音声出力部1の周辺又は集音部2の周辺に汚れがあると判定する。音声出力部1の周辺又は集音部2の周辺に汚れがあると判定した場合、聴音装置10は、報知制御部4において、ユーザに対してその旨を報知するための制御を行う。例えば報知制御部4は、聴音装置10が備える表示部に、清掃を促すための表示を行わせる。これにより、聴音装置10は、ユーザに対し、聴音装置10の清掃を促すことができる。
【0017】
続いて、報知システム50の各構成について詳細に説明する。
図2は、報知システム50の外観を示す図である。図の例では、収容部30は、左耳用の聴音装置10Lと、右耳用の聴音装置10Rと、を収容可能に構成されている。図では、聴音装置10Lが収容部30に収容され、聴音装置10Rは収容部30に収容されていない状態を示している。聴音装置10L及び10Rの構成は概ね同じであるので、以下では説明のために、聴音装置10L又は10Rを、単に「聴音装置10」と称して説明する場合がある。なお、報知システム50は、聴音装置10L又は10Rのいずれか一方のみを備える構成であってもよい。
【0018】
(収容部30について)
収容部30は、聴音装置10を収容する。例えば、収容部30は、聴音装置10を収容する専用のケースであり得る。収容部30は、持ち運び可能な形態であってもよいし、そうでなくてもよい。
【0019】
収容部30は、筐体31及び蓋体33を備えている。筐体31は、聴音装置10L及び10Rをそれぞれ収容する収容スペース32L及び32Rを備えている。以下では説明のために、収容スペース32L又は32Rを単に「収容スペース32」と称する場合がある。
【0020】
図示しないが、筐体31内部には、聴音装置10を充電するためのバッテリ、電子回路基板、又はインタフェース等の内部装置が内蔵されている。ユーザは、聴音装置10を収容スペース32に収容することで、聴音装置10を充電させることができる。収容部30は、充電する機能を有していなくてもよい。
【0021】
またユーザは、聴音装置10とユーザの耳とが接する部分を保護するために、聴音装置10にイヤーピース8を装着することができる。イヤーピース8は、聴音装置10を汚れなどから保護する。汚れの一例としては、耳垢、埃、又は異物などが挙げられる。
【0022】
(聴音装置10について)
続いて、聴音装置10について説明する。聴音装置10は、ユーザの耳に装着して、音声を再生することが可能な音響機器である。聴音装置10は、例えばイヤホンである。聴音装置10は、例えば、カナル型又はインナーイヤー型のイヤホンや補聴器などであってよい。聴音装置10は、左右の出力ユニットが独立した左右分離型のイヤホンであってもよい。また、聴音装置10は、左右の出力ユニットが接続された左右一体型のイヤホンであってもよい。聴音装置10は、ネックバンド型イヤホン、ネックストラップ型イヤホンなどであってもよい。ここでは、聴音装置10の一例として、左右分離型の完全ワイヤレスステレオ(TWS:True Wireless Stereo)イヤホンを用いて説明する。
【0023】
続いて、
図3及び
図4を参照して、聴音装置10の構成を説明する。
図3は、聴音装置10の構成を示すブロック図である。
図4は、聴音装置10の構成を示す縦断面図である。
図4では、聴音装置10がユーザの耳Eに装着された状態を示している。なお、ここではイヤーピース8の図示を省略している。
【0024】
図3に示されるように、聴音装置10は、CPU(Central Processing Unit)11、通信部12、メモリ13、記憶部14、着脱センサ15、音声制御部16、音声用マイクM1、音声出力部17、及び表示部18を備えている。
【0025】
また、
図4に示されるように、聴音装置10は、本体部101及び挿入部102を備えている。本体部101は、CPU11、通信部12、音声出力部17、及び音声用マイクM1などを有している。音声出力部17は、駆動部105及びスピーカユニット106を有している。
【0026】
挿入部102は、本体部101から突出して設けられており、耳Eの外耳道E1に挿入可能に構成されている。挿入部102の先端は開口しており、音筒を形成する。聴音装置10の使用状態では、駆動部105が動作することで、スピーカユニット106から音が出力される。出力された音は、挿入部102を通って外耳道E1内に放出される。このような構成により、聴音装置10は、通信部12を介して外部の端末などから受信した音声信号を、CPU11及び音声出力部17を介して再生することができる。
【0027】
図に示されるような左右分離型のTWSイヤホンでは、イヤホンの音声出力部17と通話用の音声用マイクM1とが比較的近傍に配置されることが多い。そのため、音声出力部17よりも外耳道E1側に位置する挿入部102やイヤーピース8に蓄積された汚れを検出するために、音声用マイクM1を利用することで精度よく測定することができる。
【0028】
なお、
図3及び
図4に示される聴音装置10の構成は一例であるので、当該構成は適宜変更されてよい。例えば、後述する実施形態2のように、聴音装置10は、複数のマイクを備えてもよい。聴音装置10は、複数のマイクのうちの1つを用いることで、本実施形態にかかる処理を行ってもよい。
【0029】
図3に示される各構成について説明する。CPU11は、聴音装置10の動作を制御する。CPU11は、本実施形態にかかる報知処理を行うために、以下で説明する各種処理を行う。例えば、CPU11は、測定部、上述した判定部3及び報知制御部4として機能する。
【0030】
CPU11は、音声用マイクM1の音響特性を測定するための測定部として機能する。測定部としてのCPU11は、測定を行うための音声信号を音声出力部17から出力させて、音声用マイクM1で当該音声信号に対応する音を集音する。
【0031】
本実施形態のように、聴音装置10と収容部30(例えば、専用の充電ケース)とを合わせて用いる左右独立型のTWSイヤホンの場合、測定環境が安定する収容部30内で測定を行うことで、CPU11は、精度よく音響特性を測定することができる。収容部30内では音の反響が発生するが、CPU11は、出荷時における音響特性と、汚れの判定時における音響特性とを、共に、収容部30内で出力された音声信号を用いて測定する。CPU11は、聴音装置10が収容部30に収容された状態を基準として、後述する判定の処理を行うので、収容部30による音の反響は無視することができる。
【0032】
音響特性は、左右それぞれの音声出力部17及び音声用マイクM1を用いて、測定することができる。例えば、聴音装置10Lの音声用マイクM1について音響特性を測定する場合、CPU11は、聴音装置10Lの音声出力部17及び音声用マイクM1を用いて測定を行う。
【0033】
CPU11は、測定のための音声信号として、スイープ信号を用いることができる。スイープ信号は、予め記憶部14に記憶され得る。CPU11は、記憶部14を参照してスイープ信号を取得し、音声出力部17を介してスイープ信号を再生する。
【0034】
CPU11は、充電開始時に測定を毎回自動で行ってもよい。また、CPU11は、充電開始時に電池残量が所定以上あるか否かを判定し、所定以上ある場合に測定を行うようにしてもよい。このようにすることで、測定中に電池がなくなることを避けることができる。CPU11は、予め設定された閾値(例えば、20%)を用いて電池残量が十分であるか否かを判定してもよい。また聴音装置10は、聴音装置10が収容部30に収容されたことを検知して、自動的に測定を開始するようにしてもよい。測定方法について、詳細は後述する。
【0035】
また、ネックバンド型イヤホンやストラップ型イヤホンの場合、聴音装置10は、測定に用いるマイクの位置とスピーカの位置とを近づけるようにユーザに指示することで簡易的に測定してもよい。例えば、聴音装置10は、文字や画像などを用いて、当該指示をユーザが使用する端末に表示させてもよい。
【0036】
また、CPU11は、音声出力部の周辺又は集音部の周辺に汚れがあるか否かを判定するための判定部3として機能する。
【0037】
音声出力部の周辺は、音声出力部の近傍の領域を含み得る。また音声出力部の周辺は、音声出力部そのものを含んでもよい。例えば、音声出力部17の周辺としては、スピーカユニット106、挿入部102、及びイヤーピース8が含まれ得る。同様に、集音部の周辺は、集音部の近傍の領域を含み得る。また集音部の周辺は、集音部そのものを含んでもよい。音声出力部の周辺及び集音部の周辺は、音声出力部から出力された音声が、集音部で集音されるまでの経路上に位置する領域であり得る。
【0038】
なお、「音声出力部の周辺又は集音部の周辺に汚れがある」とは、音声出力部の周辺及び集音部の周辺のいずれか一方に汚れがある状態であってもよいし、音声出力部の周辺及び集音部の周辺の両方に汚れがある状態であってもよい。
【0039】
判定部3としてのCPU11は、集音された音声信号の音響特性を示す判定特性と、音声出力部の周辺又は集音部の周辺に汚れがあるか否かの判定基準となる音響特性を示す基準特性とを比較する。CPU11は、音響特性の変化が所定の閾値以上である場合に、音声出力部の周辺又は集音部の周辺に汚れがあると判定する。
【0040】
基準特性は、所定のタイミングで測定された音響特性であってよい。聴音装置10に汚れが蓄積すると、音響特性が変化するので、CPU11は、異なるタイミングで測定された複数の音響特性を用いて汚れの有無を判定することができる。
【0041】
所定のタイミングは、音響特性の変化を検出するための基準となるタイミングを示している。以下では、当該タイミングを「基準時」と称して説明する場合がある。基準時は、聴音装置10に汚れが蓄積していないタイミングであり得る。したがって、基準時は、例えば、聴音装置10の出荷時である。また、基準時は、イヤーピースを交換したタイミング、又は清掃後のタイミングなどであってもよい。
【0042】
また、以下では、基準時より後に、聴音装置10に汚れが蓄積している否かを判定するために測定を行うタイミングを「判定時」と称して説明する場合がある。判定時は、任意に設定され得る。判定時は、例えば、出荷時から所定期間経過後、直近の測定から所定期間経過後、又はユーザから判定の要求を受け付けたときなどであってよい。判定時は、予め設定されてもよいし、適宜変更されてもよい。
【0043】
音響特性としては、例えば、周波数特性が用いられ得る。周波数特性は、音の周波数と、当該音に対する音声用マイクM1の入力レベルとの関係を示す情報である。例えば、CPU11は、基準特性が示す周波数特性と、判定特性が示す周波数特性とに基づいて、周波数特性の減衰量を音響特性の変化として算出する。具体的には、CPU11は、基準時で測定された入力レベルと、判定時で測定された入力レベルとに基づいて、入力レベルの減衰量を算出する。ここで、音響特性の変化は、周波数帯域ごとの変化でもよいし、複数の周波数帯域で生じている変化の総和を算出してもよい。これに限らず、基準特性と判定特性が示す周波数特性の差を比較できる種々の手法を用いることができる。
【0044】
CPU11は、当該減衰量が所定の閾値以上であるか否かを判定する。音響特性の変化が所定の閾値以上である場合に、CPU11は、音声出力部の周辺又は集音部の周辺に汚れがあると判定する。所定の閾値は、理想的な状態(例えば、出荷時)からの周波数特性の減衰量に基づいて設定され得る。所定の閾値は、例えば、基準となる埃などの試料を音声用マイクM1に対応するマイク孔やイヤーピース8等に詰めた場合の減衰量に基づいて設定されてもよい。
【0045】
所定の閾値は、例えば、1dBである。閾値は、1dB未満であってもよいし、1dBより大きくてもよい。所定の閾値は、予め設定されていてもよいし、適宜変更されてもよい。CPU11は、算出された減衰量が1dB以上である場合、音声用マイクM1の周辺、スピーカユニット106、挿入部102、又はイヤーピース8に汚れがあると判定する。
【0046】
ここで、
図5を参照して、聴音装置10に蓄積した汚れが与える音響特性への影響について説明する。ここでは音響特性として周波数特性を用いて説明する。
【0047】
図5は、基準時である工場出荷時に測定した音声用マイクM1の周波数特性と、所定期間使用を継続した後である判定時に測定した音声用マイクM1の周波数特性とを示すグラフである。グラフの横軸は、音声信号の周波数を示している。また、グラフの縦軸は、音声用マイクM1の入力レベルを示している。図では、工場出荷時の周波数特性を基準特性C1として○印で示している。また、判定時の周波数特性を判定特性C2として△印で示している。
【0048】
CPU11は、特性悪化の基準として、例えば20Hz~10,000Hzの周波数における音声用マイクM1の応答を計測し得る。これに限らず、CPU11は、例えば、可聴域である20Hz~20,000Hzの周波数における応答を計測してもよい。
【0049】
図に示されるように、基準特性C1と判定特性C2とを比較すると、主に高域において入力レベルが減衰している。図では、5,000Hz以上の周波数において、減衰量が大きくなる。これは、ユーザが聴音装置10を使用するうちに、音声用マイクM1の周辺、スピーカユニット106、挿入部102、又はイヤーピース8に汚れが蓄積することと関連している。CPU11は、減衰量が閾値(例えば、1dB)以上となった場合に、音声用マイクM1の周辺、スピーカユニット106、挿入部102、又はイヤーピース8に汚れがあると判定する。また、汚れの付着の態様により、入力レベルが増幅する場合もある。CPU11は、基準特性C1と判定特性C2とを比較して、増幅量が閾値以上となった場合も汚れがあると判定してもよい。実施例では、主に減衰量で説明する。
【0050】
図3及び
図4に戻り説明を続ける。CPU11は、音声出力部の周辺又は集音部の周辺に汚れがあると判定された場合に、その旨を報知部に報知させる報知制御部4としても機能する。報知制御部4としてのCPU11は、例えば、報知内容を示す報知情報を、表示部18に表示させる。CPU11は、通信部12を介して、ユーザが使用するスマートフォンなどの端末に報知情報を送信してもよい。
【0051】
なお、ここでは聴音装置10を制御する構成としてCPUを用いているが、聴音装置10は、CPU11に代えて、他のプロセッサを備えてもよい。例えば、プロセッサとして、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(field-programmable gate array)、量子プロセッサ(量子コンピュータ制御チップ)等を用いることができる。プロセッサは、記憶部14などの記憶装置からコンピュータプログラムをメモリ13へ読み込ませ、当該コンピュータプログラムを実行する。これにより、プロセッサは、測定部、判定部3、及び報知制御部4としての機能を実現する。
【0052】
または、測定部、判定部3、及び報知制御部4は、それぞれが専用のハードウエアで実現されていてもよい。各構成要素の一部又は全部は、汎用又は専用の回路(circuitry)、プロセッサ等やこれらの組合せによって実現されてもよい。これらは、単一のチップによって構成されてもよいし、バスを介して接続される複数のチップによって構成されてもよい。各構成要素の一部又は全部は、上述した回路等とプログラムとの組合せによって実現されてもよい。
【0053】
通信部12は、図示しないネットワークとの通信インタフェースである。ネットワークは、有線であっても無線であってもよい。ここでは、聴音装置10が無線通信を用いてネットワークに接続する例を用いて説明する。通信部12は、無線機器との通信を行うためのモジュールである。無線機器は、例えば、スマートフォン、タブレット端末、携帯電話端末、又はPC(Personal Computer)などであってよい。通信部12は、例えば、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)、又は赤外線通信などの近距離無線通信の規格に基づく通信インタフェースであってよい。これらに限らず、通信部12は、種々の通信方式を用いて通信を行い得る。
【0054】
メモリ13は、CPU11の動作時に一時的に情報を保持するための記憶領域である。メモリ13は、例えば、RAM(Random Access Memory)等の揮発性記憶装置であってよい。
【0055】
記憶部14は、本実施形態にかかる処理が実装されたコンピュータプログラムを記憶する。記憶部14は、例えば、ハードディスク、フラッシュメモリ等であってよい。また、記憶部14は、音響特性の測定に用いられるスイープ信号を記憶し得る。
【0056】
着脱センサ15は、ユーザの耳に対する聴音装置10の着脱を検知するセンサである。着脱センサ15は、例えば、ユーザの耳と聴音装置10とが近接したことを検出する近接センサなどであってよい。
【0057】
音声用マイクM1は、上述した集音部2の一例である。音声用マイクM1は、音声出力部17から出力された音声信号を集音する。なお、本実施形態では、音声用マイクを用いているが、音声用マイクに代えて、他の用途に用いられるマイクが用いてられてもよい。
【0058】
音声用マイクM1は、周囲の音声を集音する。周囲の音声は、例えば、ユーザが発する声や、ユーザの周囲で発生する周囲音である。音声用マイクM1は、例えば、聴音装置10と接続される携帯端末における通話に用いられる。この場合、音声用マイクM1は、ユーザの口元から比較的近い位置に配置され得る。本体部101に設けられるマイク孔に汚れが蓄積することで音響特性に影響を与えるおそれがある。
【0059】
音声制御部16は、音声用マイクM1の制御を行う。例えば、音声制御部16は、音声用マイクM1から集音された音声に対して処理を行う。音声制御部16は、例えば、通話音声に関する制御を行う。
【0060】
音声出力部17は、上述した音声出力部1の一例である。音声出力部17は、収容部30に収容された状態で音声信号を出力する。音声出力部17は、例えば、スピーカである。上述したように、音声出力部17は、駆動部105及びスピーカユニット106を備えている。駆動部105は、CPU11を介して、外部の端末などから受信した音声信号を受け取る。駆動部105は、受け取った音声信号を増幅し、スピーカユニット106に出力させる。これにより、スピーカユニット106は、外部に音声を出力する。音声出力部17から出力される音声の経路となる挿入部102(音筒)、又は挿入部102の先端に装着されるイヤーピース8に汚れが蓄積することで音響特性に影響を与えるおそれがある。
【0061】
音声出力部17は、音声用マイクM1の周辺、スピーカユニット106、挿入部102、又はイヤーピース8に汚れがあると判定された場合に、その旨を報知する報知部としても機能し得る。音声出力部17は、例えば、「音声用マイクM1、スピーカユニット106、挿入部102、又はイヤーピース8が汚れています。清掃を行ってください。」などのアナウンスを行う。音声出力部17は、例えば、清掃が比較的困難なスピーカユニット106を除外して、音声用マイクM1、挿入部102、又はイヤーピース8の清掃を促すように報知を行ってもよい。
【0062】
また、音声出力部17は、聴音装置10の電源ON時や装着時において、音声でユーザに対するアナウンスを行ってもよい。例えば、音声出力部17は、汚れの状態が著しく酷い場合や、汚れがあると判定された状態が継続した場合などにアナウンスを行ってもよい。または、音声出力部17は、所定の時間間隔で、定期的にアナウンスを行ってもよい。これに限らず、音声出力部17は、所定の条件が満たされた場合にアナウンスを行ってもよい。
【0063】
表示部18は、報知に関する情報を表示する表示装置である。表示部18は、音声用マイクM1の周辺、スピーカユニット106、挿入部102、又はイヤーピース8に汚れがあると判定された場合に、その旨を報知する報知部として機能する。表示部18は、例えば、LED(Light Emission Diode)、液晶、有機EL(Electro-Luminescence)、又は無機ELなどで構成され得る。例えば、表示部18は、本体部101に設けられたLEDなどのインジケータなどであってよい。表示部18は、汚れがあると判定された場合に、清掃を促すためのエラー表示を行う。または、表示部18は、収容部30に設けられてもよい。例えば、表示部18は、聴音装置10L及び10Rのそれぞれに対応するインジケータとして設けられてもよい。
【0064】
以上、報知システム50の構成について説明した。なお、上述した報知システム50の構成は一例に過ぎず、適宜変更され得る。例えば、聴音装置10の各構成要素の一部又は全部が複数の情報処理装置や回路等により実現される場合には、複数の情報処理装置や回路等は、集中配置されてもよいし、分散配置されてもよい。
【0065】
(聴音装置10の処理)
続いて、
図6及び
図7を参照して、聴音装置10が行う処理を説明する。まず、
図6を参照して、聴音装置10が収容部30に収容された場合に、聴音装置10が行う処理について説明する。
図6は、収容部30に収容された場合に聴音装置10が行う処理を示すフローチャートである。なお、聴音装置10は、工場出荷時において周波数特性が測定されているものとする。当該周波数特性は、上述した基準特性に対応する。基準特性は、例えば記憶部14に記憶されている。ここでは、基準特性として、
図5に示される基準特性C1が記憶されているものとする。
【0066】
ユーザが聴音装置10を収容部30に収容すると、収容部30は、聴音装置10の充電を開始する。CPU11は、聴音装置10の電池残量が20%以上であるか否かを判定する(S101)。電池残量が20%未満である場合(S101のNO)、CPU11はステップS101の処理を繰り返す。電池残量が20%以上である場合(S101のYES)、CPU11はステップS102の処理に進む。なお、電池残量の判定条件は20%に限定されない。
【0067】
続いて、CPU11(測定部)は、周波数特性を測定する(S102)。CPU11は、例えば、スイープ信号などの音声信号を音声出力部17から出力させる。音声用マイクM1は、出力された音声信号を集音する。これにより、CPU11は、測定結果として周波数特性を得ることができる。当該周波数特性は、上述した判定特性に対応する。ここでは、判定特性として、
図5に示される判定特性C2が得られたものとする。
【0068】
続いて、CPU11(判定部3)は、判定特性C2が工場出荷時の基準特性C1と比較して、変化があるか否かを判定する(S103)。具体的には、CPU11は、基準特性C1と判定特性C2とに基づいて、周波数特性の減衰量を算出する。CPU11は、当該減衰量に基づいて、所定の閾値を用いて、当該変化があるか否かを判定する。所定の閾値は、例えば、1dBである。基準特性C1と比較して変化があると判定しなかった場合(S103のNO)、CPU11はステップS105に処理を進める。
【0069】
変化があると判定した場合(S103のYES)、CPU11(報知制御部4)は音声用マイクM1、スピーカユニット106、挿入部102、又はイヤーピース8の周辺に汚れがあると判定し、表示部18に清掃指示を表示させる(S104)。表示部18は、例えば、本体部101に設けられたLEDなどのインジケータなどである。表示部18は、汚れがあると判定された場合に、清掃を促すためのエラー表示を行う。また、CPU11は、音声出力部17を用いて清掃指示を音声でアナウンスさせてもよい。なお、CPU11は、単に、汚れがある旨を報知させてもよい。そして、CPU11は、聴音装置10の充電を継続する(S105)。
【0070】
続いて、
図7を参照して、充電中又は充電が完了している聴音装置10が、収容部30から取り出された場合の聴音装置10の処理について説明する。
図7は、収容部30から取り出された場合の聴音装置10の処理を示すフローチャートである。
【0071】
まず、CPU11は、聴音装置10が収容部30から取り出されて、電源がONされたか否かを判定する(S106)。電源がONされていない場合(S106のNO)、CPU11はステップS106の処理を繰り返す。
【0072】
電源がONされた場合(S106のYES)、CPU11は、着脱センサ15を用いて、聴音装置10がユーザの耳に装着されたか否かを判定する(S107)。耳に装着されていない場合(S107のNO)、CPU11はステップS107の処理を繰り返す。
【0073】
ユーザの耳に装着された場合(S107のYES)、CPU11は清掃指示を行うか否かを判定する(S108)。CPU11は、
図6で説明したステップS102と同様にして測定処理を行い、ステップS103と同様に、測定結果に応じて清掃指示を行うか否かを判定し得る。または、CPU11は、所定の時間間隔で定期的に測定を行い、音響特性が悪化した場合に清掃指示を行うようにしてもよい。
【0074】
清掃指示を行う場合(S108のYES)、CPU11は、音声出力部17を用いて清掃指示の音声案内を行う(S109)。これにより、ユーザは、聴音装置10を清掃する必要があることを、音楽再生などを行う前に認識することができる。なお、収容部30内に汚れや異物がある場合、測定結果に影響が出るおそれがある。そのため、CPU11は、清掃指示を行う場合、収容部30内の清掃指示も行うようにしてもよい。
【0075】
清掃指示の音声案内を行った後、又は清掃指示を行わない場合(S108のNO)、CPU11は、音楽再生などの通常動作を行う(S110)。
【0076】
以上説明したように、本実施形態にかかる報知システム50では、聴音装置10において、集音された音声信号の音響特性を示す判定特性と、音声出力部の周辺又は集音部の周辺に汚れがあるか否かの判定基準となる音響特性を示す基準特性とを比較する。聴音装置10は、音響特性の変化が所定の閾値以上である場合に、音声出力部の周辺又は集音部の周辺に汚れがあると判定し、その旨を報知部に報知させる。
【0077】
このような構成により、聴音装置10は、音声出力部の周辺又は集音部の周辺に汚れがある場合に、ユーザに対して清掃を促すことができる。聴音装置10が適切なタイミングで清掃を指示し、ユーザがイヤーピースや音筒の清掃を行うことで、耳垢や異物による性能の低下を防止することができる。適切なメンテナンスを行うことで、ユーザは、聴音装置10の性能を低下させることなく、聴音装置10を継続して利用することが可能となる。
【0078】
<実施形態1の変形例>
【0079】
続いて、実施形態1の変形例について説明する。実施形態1では、1つのスピーカ(音声出力部17)から出力された音声信号を1つのマイク(音声用マイクM1)が集音することで、マイクの周波数特性の測定を行った。左耳用の聴音装置10Lを例にすれば、実施形態1は、聴音装置10Lの音声出力部17が音声信号を出力し、同じ聴音装置10Lの音声用マイクM1が集音して測定を行うものである。
【0080】
本変形例では、聴音装置10は、自身が備える音声出力部から出力された音声信号だけでなく、他の聴音装置が備える音声出力部から出力された音声信号を用いて測定を行う。例えば上述の例では、聴音装置10Lは、聴音装置10Lの音声出力部17から出力される音声信号だけでなく、聴音装置10Rの音声出力部17から出力された音声信号を用いて、聴音装置10Lが備える音声用マイクM1の周波数特性を測定する。
【0081】
これにより、本変形例にかかる報知システム50では、複数の聴音装置10のそれぞれが備える集音部と音声出力部との組み合わせに対応する測定結果を得ることができる。また、本変形例では、聴音装置10は、それぞれの組み合わせに対応する測定結果に基づいて、汚れがある場所を特定する。聴音装置10は、特定された場所を清掃指示対象として、清掃指示を行う。
【0082】
本変形例にかかる報知システム50及び聴音装置10の基本的な構成については実施形態1と同様であるので、ここでは詳細な説明を省略する。報知システム50は、聴音装置10L及び10Rを備えており、聴音装置10L及び10Rは、それぞれ音声用マイクM1と音声出力部17とを備えている。それぞれの聴音装置10が備える音声用マイクM1は、他の聴音装置の音声出力部から出力された他の音声信号をさらに集音する。例えば、聴音装置10Lの音声用マイクM1は、聴音装置10Rの音声出力部17から出力された音声信号をさらに集音する。
【0083】
以下では、具体例を用いて本変形例を説明する。ここでは、聴音装置10L及び10Rのそれぞれが備える音声出力部17を、それぞれスピーカSL及びSRとする。また、聴音装置10L及び10Rが備える音声用マイクM1を、それぞれマイクML及びMRとする。
【0084】
スピーカSLとスピーカSRとは、それぞれ別々に測定が行われる必要がある。そのため、音声信号(スイープ信号)は、スピーカSLのみで再生、又はスピーカSRのみで再生される。このような場合、スピーカSLから出力される音声信号を用いた測定では、マイクMLの周波数特性だけでなく、マイクMRの周波数特性も測定することができる。同様に、スピーカSRから出力される音声信号を用いた測定では、マイクMRの周波数特性だけでなく、マイクMLの周波数特性も測定することができる。つまり、スピーカSLはマイクML及びMRの測定に用いることができる。また、スピーカSRはマイクML及びMRの測定に用いることができる。
【0085】
図8は、マイクとスピーカの組み合わせに対応する測定結果から特定される清掃指示対象の一例を示す図である。聴音装置10は、例えば、図に示されるようなテーブルを記憶部14に予め記憶しておく。報知制御部4としてのCPU11は、当該テーブルを参照して、清掃指示対象を特定する。
【0086】
例えば、IDが「4」の組み合わせの例では、スピーカSLを用いてマイクML及びMRの測定を行った場合、マイクML及びMRはいずれも、基準時の周波数特性と判定時の周波数特性とに閾値以上の変化があると判定されている。同時に、スピーカSRを用いてマイクML及びMRの測定を行った場合、マイクML及びMRはいずれも、基準時の周波数特性と判定時の周波数特性とに閾値以上の変化がないと判定されている。このような場合、スピーカSLの周辺に汚れがあることが特定できる。スピーカSLの周辺は、例えば、聴音装置10Lの挿入部が含まれる。よって、この場合、CPU11は、スピーカSL周辺を清掃指示対象として特定し、スピーカSL周辺の清掃をユーザに促すように報知を制御する。
【0087】
また、例えば、IDが「6」の組み合わせの例では、全ての組み合わせにおいて、周波数特性に閾値以上の変化があると判定されている。このような場合、CPU11は、スピーカSL、スピーカSR、マイクML、及びマイクMRの全てを清掃指示対象として特定する。
【0088】
なお、測定結果の組み合わせに矛盾が生じる場合(不図示)、CPU11は、汚れのある場所を特定することができない。このような場合、CPU11は、所定の条件を用いて清掃指示対象を特定してもよい。例えば、CPU11は、全てのスピーカ及びマイクを清掃指示対象として特定してもよい。
【0089】
以上説明したように、本変形例にかかる報知システム50では、聴音装置10は、左右のスピーカと左右のマイクとの組み合わせを用いて、測定結果に応じて、汚れのある場所を清掃指示対象として特定することができる。CPU11は、清掃指示対象に対する清掃を促すように、ユーザに対する清掃指示を行うことができるので、ユーザは、容易に清掃指示対象を認識することができる。
【0090】
<実施形態2>
続いて、
図9~
図11を参照して、実施形態2について説明する。本実施形態は、1つの聴音装置が複数の集音部を備えている点で実施形態1と異なる。以下では実施形態1と異なる点を中心に説明し、重複する点は適宜説明を省略する。
【0091】
(聴音装置10aについて)
まず、
図9及び
図10を参照して、実施形態2にかかる聴音装置10aについて説明する。
図9は、聴音装置10aの構成を示すブロック図である。また、
図10は、聴音装置10aの構成を示す縦断面図である。なお、報知システム50の全体的な構成や収容部30の構成等は実施形態1と同様であるので図示を省略する。
【0092】
図9に示されるように、聴音装置10aは、CPU11、通信部12、メモリ13、記憶部14、着脱センサ15、音声制御部16、音声用マイクM1、音声出力部17、表示部18、ノイズキャンセル制御部19、及びノイズキャンセル用マイクM2を備えている。
【0093】
実施形態1の聴音装置10と異なり、聴音装置10aは、2つの集音部として、音声用マイクM1及びノイズキャンセル用マイクM2を備えている。このように、1つの聴音装置が2つのマイクを備える場合、2つのうちいずれか一方、又は両方の周囲に汚れが蓄積する場合がある。したがって、聴音装置10aは、2つのマイクに対して周波数特性の測定を行う必要がある。
【0094】
ノイズキャンセル用マイクM2は、例えば、ノイズキャンセル機能を実現するために設けられるフィードフォワード用マイクである。ノイズキャンセル用マイクM2は、音声用マイクM1と比較して、ユーザの口元より比較的遠い位置に配置され得る。ノイズキャンセル用マイクM2は、周囲の音を集音する。ノイズキャンセル制御部19は、ノイズキャンセル用マイクM2を制御する。
【0095】
聴音装置10aは、聴音装置10aの音声処理能力に応じて、音声信号(例えば、スイープ信号)を1回再生するのみで、音声用マイクM1及びノイズキャンセル用マイクM2の周波数特性を測定してもよい。または、聴音装置10aは、音声用マイクM1及びノイズキャンセル用マイクM2の周波数特性をそれぞれ個別に測定してもよい。
【0096】
例えば、音声用マイクM1及びノイズキャンセル用マイクM2は、音声出力部17から出力された1つの音声信号を本体部101にそれぞれ設けられるマイク孔を介してそれぞれ集音する。判定部3としてのCPU11は、音声用マイクM1及びノイズキャンセル用マイクM2のうち、音響特性の変化が所定の閾値以上であるマイクを特定する。CPU11は、音声出力部17の周辺又は特定されたマイクの周辺に汚れがあると判定する。
【0097】
なお、「音声出力部17の周辺又は特定されたマイクの周辺に汚れがある」とは、音声出力部17の周辺及び特定されたマイクの周辺のいずれか一方に汚れがある状態であってもよいし、音声出力部17の周辺及び特定されたマイクの周辺の両方に汚れがある状態であってもよい。
【0098】
音声出力部17の周辺又は特定されたマイクの周辺に汚れがあると判定された場合、報知制御部4としてのCPU11は、その旨を表示部18に表示させる。これにより、表示部18は、ユーザへの報知を行うことができる。
【0099】
なお、ここでは聴音装置10aが音声用マイクM1及びノイズキャンセル用マイクM2の2つのマイクを備える例を示しているが、聴音装置10aは3つ以上の集音部を備えてもよい。例えば、聴音装置10aは、ノイズキャンセル機能を実現するためのフィードバック用マイクをさらに備えてもよい。
【0100】
(聴音装置10aの処理)
続いて、
図11を参照して、聴音装置10aが行う処理について説明する。
図11は、聴音装置10aが行う処理を示すフローチャートである。なお、工場出荷時において音声用マイクM1の周波数特性及びノイズキャンセル用マイクM2の周波数特性が測定されており、それぞれの測定結果が記憶部14に記憶されているものとする。
【0101】
まず、CPU11(測定部)は、音声用マイクM1及びノイズキャンセル用マイクM2の周波数特性の測定を開始する。CPU11は、定期的に測定を行ってもよいし、充電開始を検出して測定を行ってもよい。
【0102】
具体的には、CPU11は、音声出力部17を介して音声信号を出力させる。音声用マイクM1及びノイズキャンセル用マイクM2は、音声出力部17から出力された1つの音声信号をそれぞれ集音する。CPU11(判定部3)は、実施形態1と同様にして、出荷時の基準特性と、判定時の判定特性とを比較し、周波数特性の変化が所定の閾値以上であるか否かを判定する。閾値は、例えば、1dB以上の減衰量である。
【0103】
まず、CPU11は、音声用マイクM1の測定結果に変化があるか否かを判定する(S201)。音声用マイクM1の測定結果に変化がない場合(S201のNO)、CPU11は、ノイズキャンセル用マイクM2の測定結果に変化があるか否かを判定する(S202)。ノイズキャンセル用マイクM2の測定結果に変化がない場合(S202のNO)、CPU11は、音声出力部17及び2つのマイクに汚れがないと判定できるので、測定を終了する。
【0104】
ステップS202において、ノイズキャンセル用マイクM2の測定結果に変化がある場合(S202のYES)、CPU11は、ノイズキャンセル用マイクM2の周辺に汚れがあると判定する。CPU11(報知制御部4)は、報知部を用いて、ノイズキャンセル用マイクM2の清掃指示を行う(S204)。CPU11は、例えば、表示部18や音声出力部17を報知部として用いることができる。例えば、CPU11は、インジケータや音声アナウンスを用いて、清掃指示を行い得る。
【0105】
ステップS201において、音声用マイクM1の測定結果に変化がある場合(S201のYES)、CPU11は、ノイズキャンセル用マイクM2の測定結果に変化があるか否かを判定する(S203)。
【0106】
ノイズキャンセル用マイクM2の測定結果に変化がない場合(S203のNO)、CPU11は、音声用マイクM1の周辺に汚れがあると判定する。よって、CPU11は、音声用マイクM1に対する清掃指示を行う(S205)。ノイズキャンセル用マイクM2の測定結果に変化がある場合(S203のYES)、CPU11は、2つのマイクの周辺に汚れがあるか、又は、2つのマイクの周辺及び音声出力部17の周辺に汚れがあると判定する。よって、CPU11は、音声用マイクM1、ノイズキャンセル用マイクM2、及び音声出力部17に対する清掃指示を行う(S206)。
【0107】
上述の処理を行うことで、CPU11は、周波数特性の変化が所定の閾値以上であるマイクを特定し、音声出力部17の周辺又は特定されたマイクの周辺に汚れがあると判定することができる。また、CPU11は、音声出力部17の周辺又は特定されたマイクの周辺に汚れがあると判定された旨を報知部に報知させることができる。
【0108】
以上説明したように、本実施形態にかかる聴音装置10aによれば、実施形態1と同様の効果を奏することができる。また、本実施形態にかかる聴音装置10aは、複数の集音部を使用して周波数特性の測定を行うので、音筒やイヤーピースだけでなく、特定の集音部周辺に汚れがあることを検出することができる。聴音装置10aは、特定結果に応じて報知内容を変えることができるので、ユーザに対して、適切に清掃指示を行うことができる。
【0109】
<ハードウエアの構成例>
上述した聴音装置10及び10aの各機能構成部は、各機能構成部を実現するハードウエア(例:ハードワイヤードされた電子回路など)で実現されてもよいし、ハードウエアとソフトウエアとの組み合わせ(例:電子回路とそれを制御するプログラムの組み合わせなど)で実現されてもよい。例えば、本開示は、任意の処理を、CPU11にコンピュータプログラムを実行させることにより実現することも可能である。
【0110】
プログラムは、コンピュータに読み込まれた場合に、実施形態で説明された1又はそれ以上の機能をコンピュータに行わせるための命令群(又はソフトウェアコード)を含む。プログラムは、非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)又は実体のある記憶媒体(tangible storage medium)に格納されてもよい。限定ではなく例として、非一時的なコンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体は、random-access memory(RAM)、read-only memory(ROM)、フラッシュメモリ、solid-state drive(SSD)又はその他のメモリ技術、CD-ROM、digital versatile disc(DVD)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)又は通信媒体上で送信されてもよい。限定ではなく例として、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体は、電気的、光学的、音響的、又はその他の形式の伝搬信号を含む。
【0111】
なお、本開示は上記実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。また、上述した実施形態は任意に組み合わせて実行可能である。例えば、実施形態1、実施形態1の変形例、及び実施形態2の一部又は全部は、組み合わせて実現されてもよい。
【符号の説明】
【0112】
1 音声出力部
2 集音部
3 判定部
4 報知制御部
8 イヤーピース
10、10a、10L、10R 聴音装置
12 通信部
13 メモリ
14 記憶部
15 着脱センサ
16 音声制御部
17 音声出力部
18 表示部
19 ノイズキャンセル制御部
30 収容部
31 筐体
32、32L、32R 収容スペース
33 蓋体
50 報知システム
101 本体部
102 挿入部
105 駆動部
106 スピーカユニット
C1 基準特性
C2 判定特性
E 耳
E1 外耳道
M1 音声用マイク
M2 ノイズキャンセル用マイク
ML、MR マイク
SL、SR スピーカ