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  • -電力変換装置およびコイルユニット 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136768
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】電力変換装置およびコイルユニット
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20240927BHJP
   H01F 37/00 20060101ALI20240927BHJP
   H01F 27/28 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
H01F37/00 S
H01F37/00 G
H01F37/00 J
H01F37/00 A
H01F27/28 176
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048003
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 智之
【テーマコード(参考)】
5E043
5H770
【Fターム(参考)】
5E043DA02
5H770PA17
5H770PA22
5H770PA28
5H770PA44
5H770QA25
5H770QA28
5H770QA37
(57)【要約】
【課題】コイルをより冷却可能な電力変換装置およびコイルユニットを提供する。
【解決手段】本開示の電力変換装置は、内側に収容空間を画定する本体部、および、該本体部に形成された冷媒流路を有するケーシングと、収容空間に配置されて、冷媒流路を流れる冷媒により冷却されるコイルユニットと、収容空間に配置されて、コイルユニットに電気的に接続された電力変換回路と、を備えている。コイルユニットは、熱伝導材により形成されたコイルケースと、コイルケース内に配置されたコア、および、電力変換回路に接続された一端と他端との間の部分がコアに巻回された巻線部を有するコイルと、コイルケース内に配置され、コイルケースとコイルとを電気的に絶縁する絶縁部と、を備えている。本体部は、冷媒流路の一部を収容空間に開口させる開口部を有している。コイルケースは、開口部を塞ぐように本体部に固定されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側に収容空間を画定する本体部、および、該本体部に形成された冷媒流路を有するケーシングと、
前記収容空間に配置されて、前記冷媒流路を流れる冷媒により冷却されるコイルユニットと、
前記収容空間に配置されて、前記コイルユニットに電気的に接続された電力変換回路と、
を備え、
前記コイルユニットは、
熱伝導材により形成されたコイルケースと、
前記コイルケース内に配置されたコア、および、前記電力変換回路に接続された一端と他端との間の部分が前記コアに巻回された巻線部を有するコイルと、
前記コイルケース内に配置され、前記コイルケースと前記コイルとを電気的に絶縁する絶縁部と、
を備え、
前記本体部は、前記冷媒流路の一部を前記収容空間に開口させる開口部を有し、
前記コイルケースは、前記開口部を塞ぐように前記本体部に固定されている
電力変換装置。
【請求項2】
前記コアは、中心軸線を中心とした円筒状を成し、
前記コイルケースは、前記中心軸線が延びる方向から前記本体部に固定されている
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記コイルユニットは、
熱伝導材により形成されて、前記コイルケース内の前記コアの内側で前記中心軸線を中心とした円柱状に延びる第1伝熱部を更に備え、
前記絶縁部は、前記コイルと前記第1伝熱部とを更に電気的に絶縁し、
前記第1伝熱部は、前記コイルケースにおける前記開口部を塞ぐ部分に接続されている
請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記コイルユニットは、
熱伝導材により形成されて、前記コイルケースと前記コアとの間に配置された第2伝熱部を更に備え、
前記絶縁部は、前記コイルと前記第2伝熱部とを更に電気的に絶縁し、
前記第2伝熱部は、前記コアの外周面に沿う円筒面状を成した内周面を有し、前記コイルケースに接続されている
請求項2または請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項5】
熱伝導材により形成されたコイルケースと、
前記コイルケース内に配置されて中心軸線を中心とした円筒状を成すコア、および、一端と他端との間の部分が前記コアに巻回された巻線部を有するコイルと、
熱伝導材により形成されて、前記コイルケース内の前記コアの内側で前記中心軸線を中心とした円柱状に延びる第1伝熱部と、
前記コイルケース内に配置され、前記コイルケースおよび前記コイルならびに前記コイルおよび前記第1伝熱部を電気的に絶縁する絶縁部と、
を備え、
前記第1伝熱部は、前記コイルケースに接続されている
コイルユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力変換装置およびコイルユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コアに巻回される円形状の第1及び第2コイルと、これらコイルを収容するケーシングと、これらコイルとケーシングとの間に形成される断面略三角形状の空間に配設され、内部に冷却媒体通路が形成される冷却部材とを備えるコイル用冷却構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-156678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電力変換装置の分野では、付加価値向上のために装置全体の小型化の機運が高まっている。それに伴い、装置内のコイルを小型化したいという要求があるが、コイルは小型化するに伴ってコイル自身の自己発熱により発熱密度が増大するという課題がある。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、コイルをより冷却可能な電力変換装置およびコイルユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係る電力変換装置は、内側に収容空間を画定する本体部、および、該本体部に形成された冷媒流路を有するケーシングと、前記収容空間に配置されて、前記冷媒流路を流れる冷媒により冷却されるコイルユニットと、前記収容空間に配置されて、前記コイルユニットに電気的に接続された電力変換回路と、を備え、前記コイルユニットは、熱伝導材により形成されたコイルケースと、前記コイルケース内に配置されたコア、および、前記電力変換回路に接続された一端と他端との間の部分が前記コアに巻回された巻線部を有するコイルと、前記コイルケース内に配置され、前記コイルケースと前記コイルとを電気的に絶縁する絶縁部と、を備え、前記本体部は、前記冷媒流路の一部を前記収容空間に開口させる開口部を有し、前記コイルケースは、前記開口部を塞ぐように前記本体部に固定されている。
【0007】
本開示に係るコイルユニットは、熱伝導材により形成されたコイルケースと、前記コイルケース内に配置されて中心軸線を中心とした円筒状を成すコア、および、一端と他端との間の部分が前記コアに巻回された巻線部を有するコイルと、熱伝導材により形成されて、前記コイルケース内の前記コアの内側で前記中心軸線を中心とした円柱状に延びる第1伝熱部と、前記コイルケース内に配置され、前記コイルケースおよび前記コイルならびに前記コイルおよび前記第1伝熱部を電気的に絶縁する絶縁部と、を備え、前記第1伝熱部は、前記コイルケースに接続されている。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、コイルをより冷却可能な電力変換装置およびコイルユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施形態に係る電力変換装置の概略構成を断面で示した図である。
図2図1中のII-II線方向からコイルユニットを見た時の図である。
図3】本開示のその他の実施形態に係るコイルユニットを断面で示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら、本開示の実施形態に係る電力変換装置を説明する。
【0011】
<電力変換装置の実施形態>
電力変換装置は、例えば、直流電力を三相交流電力などに変換する装置である。電力変換装置には、例えば、発電所などの系統で用いられるインバータや、電気自動車などの交流回転電機(モータ)の駆動に用いられるインバータなどが挙げられる。図1に示すように、電力変換装置100は、ケーシング1と、電力変換回路2と、コイルユニット3とを備えている。
【0012】
(ケーシング)
ケーシング1は、電力変換装置100を構成する要素(電力変換回路2、コイルユニット3)を内側に収容するための筐体である。また、本実施形態では、ケーシング1は、当該ケーシング1の外部から供給される液冷媒Rを用いて、コイルユニット3を冷却する。ケーシング1は、本体部10と、冷媒流路11とを有している。
【0013】
(本体部)
本体部10は、上記の各要素が配置される収容空間Sを内側に画定する。本体部10は、例えば、金属材料により形成されている。なお、本体部10を形成する材料は、金属材料に限定されることはなく、例えば合成樹脂材料などであってもよい。
【0014】
(冷媒流路)
冷媒流路11は、上記の液冷媒Rが流れるための通路である。本実施形態における液冷媒Rには、例えば水などが採用される。なお、液冷媒Rには、水以外の液体が採用されてもよい。冷媒流路11は、本体部10に形成されている。具体的には、冷媒流路11は、本体部10を構成する壁部のうち一部分の内部を延びるように形成されている。
【0015】
なお、本体部10の外面に開口する冷媒流路11の一端および他端には、電力変換装置100の外部に配置された冷媒供給装置につながるラインL1,L2が接続されている。当該冷媒供給装置からラインL1を通じて冷媒流路11の一端から冷媒流路11の内部に流入した液冷媒Rは、冷媒流路11を流れた後、冷媒流路11の他端からラインL2に流出し、当該ラインL2を通じて冷媒供給装置に戻る。
【0016】
また、本実施形態における本体部10は、冷媒流路11における一端と他端との間で、冷媒流路11の一部を収容空間Sに開口させる開口部10hを有している。
【0017】
(電力変換回路)
電力変換回路2は、電力変換装置100の外部から入力された電力を変換する回路である。電力変換回路2は、ケーシング1の本体部10に収容されている。すなわち、電力変換回路2は、収容空間Sに配置されている。電力変換回路2は、例えば、入力された電力を変換する動作(例えば制御装置の作動およびパワー半導体素子などのスイッチング動作)を行うための電源(図示省略)を有している。また、電力変換回路2には、例えば、電流の入出力端子(接続用の導体)としてのバスバーなど(図示省略)が電気的に接続されている。
【0018】
(コイルユニット)
コイルユニット3は、電力変換回路2に電気的に接続されている。コイルユニット3は、ケーシング1の本体部10に収容されている。すなわち、コイルユニット3は、収容空間Sに配置されている。図1および図2に示すように、コイルユニット3は、コイルケース30と、封止体31と、結合具32と、コイル33と、第1伝熱部34と、第2伝熱部35と、絶縁部36とを備えている。
【0019】
(コイルケース)
コイルケース30は、コイルユニット3を構成する要素(コイル33、第1伝熱部34、第2伝熱部35、絶縁部36)を内側に収容するための筐体である。コイルケース30は、熱伝導材により形成されている。ここでいう熱伝導材には、例えば、アルミニウムなどを含む金属材料が採用される。なお、コイルケース30を形成する熱伝導材には、アルミニウム以外の材料が採用されてもよい。コイルケース30は、複数の壁部により形成されている。コイルケース30は、底壁部30aと、側壁部30bとを有している。
【0020】
底壁部30aは、平板状を成している。底壁部30aは、本体部10に形成された開口を塞ぐように本体部10に固定されている。したがって、冷媒流路11を流れる液冷媒Rは、底壁部30aに収容空間Sとは反対側から接触する。底壁部30aは、例えば、本体部10の外縁部に沿うように互いに間隔をあけて配置された複数の結合具32により、収容空間Sを画定する本体部10の内面に固定されている。結合具32には、例えばファスナやボルトなどの部材が採用される。なお、図1中および図2中では、一例としてボルトの場合を示している。
【0021】
また、底壁部30aと本体部10との間には、封止体31が配置されている。当該封止体31は、例えば、本体部10の外縁部に沿う環状を成しており、平板状を成す底壁部30aが広がる方向における結合具32と冷媒流路11との間で、底壁部30aと本体部10との間に配置されている。封止体31は、底壁部30aおよび本体部10に当接しており、これら底壁部30aおよび本体部10に挟み込まれている。封止体31には、例えばOリングなどが採用される。
【0022】
側壁部30bは、平板状を成している。側壁部30bは、底壁部30aから立ち上がるように底壁部30aと一体に設けられている。本実施形態では、4つの側壁部30bが底壁部30aに設けられており、これら4つの側壁部30bは、コイル33のコア33a(後述)を収容するための空間を底壁部30aと共に画定している。なお、図1中では、図示の便宜上、2つの側壁部30bの断面のみを図示している。コイル33のコア33aを収容するための空間を画定する4つの側壁部30bのうち、隣り合う2つの側壁部30b同士は、一体に接続されている(図2参照)。本実施形態では、これら4つの側壁部30bおよび1つの底壁部30aにより、直方体形状の空間が画定されている。当該空間は、底壁部30aとは反対側に向かって開口している。
【0023】
(コイル)
コイル33は、電力変換回路2の電源などに電気的に接続されたリアクトルである。本実施形態におけるコイル33は、電源用のコモンモードコイルである。コイル33は、コア33aと、巻線部33bとを有している。
【0024】
コア33aは、コイルケース30の内部に配置されたトロイダルコアである。コア33aは、コイルケース30の内面に接触しない位置に配置されている。コア33aは、例えば鉄などを含む金属材料により形成された強磁性体である。コア33aは、中心軸線Arを中心とした円筒状を成している。コア33aは、コイルケース30の内部で側壁部30bの内面と対向する外周面33s1と、コイルケース30の内部で内側を向く内周面33s2とを有している。これら外周面33s1および内周面33s2は、いずれも円筒面状を成している。コア33aを収容するコイルケース30は、中心軸線Arが延びる方向から本体部10の内面に固定されている。
【0025】
巻線部33bは、例えば、一端および他端が電力変換回路2の電源などに接続された導線である。巻線部33bにおける一端と他端との間の部分は、コア33aに巻回されている。本実施形態における巻線部33bは、コア33aに対してキャンセル巻きで巻回されている。なお、巻線部33bのコア33aに対する巻回のされ方は、キャンセル巻きに限定されることはなく、バイファイラ巻きなどであってもよい。
【0026】
巻線部33bは、コイルケース30の内面に接触しない位置に配置されている。巻線部33bは、例えば銅などを含む金属材料により形成されている。本実施形態では、2つの巻線部33bがコア33aに巻回されている。図2に示すように、2つの巻線部33bの各々におけるコア33aに巻回された部分は、中心軸線Arを間に挟むように互いに離間して配置されている。巻線部33bにおけるコア33aに巻回されていない部分は、コイルケース30の開口を通じて、コア33aから電力変換回路2に向かって延びている。
【0027】
(第1伝熱部)
第1伝熱部34は、コイルケース30内でコア33aの内側に配置されている。本実施形態における第1伝熱部34は、中心軸線Arを中心とした円柱状に延びている。具体的には、第1伝熱部34は、コア33aの内側を中心軸線Arが延びる方向に貫くように配置されている。第1伝熱部34の外周面とコア33aの内周面33s2とは、底壁部30aが広がる方向に間隔をあけて対向している。第1伝熱部34における一方側(中心軸線Arが延びる方向における一方側、図1中の下側)の端面は、底壁部30aに接続されている(接している)。
【0028】
第1伝熱部34は、熱伝導材により形成されている。ここでいう熱伝導材には、例えば、アルミニウムなどを含む金属材料が採用される。なお、第1伝熱部34を形成する熱伝導材には、アルミニウム以外の材料が採用されてもよい。なお、第1伝熱部34は、コイルケース30を形成する熱伝導材よりも熱伝導率の高い熱伝導材で形成されていることが好ましい。
【0029】
(第2伝熱部)
第2伝熱部35は、コイルケース30内でコア33aの外側に配置されている。第2伝熱部35は、コイルケース30とコア33aとの間に配置されている。本実施形態における第2伝熱部35は、コア33aの外周面33s1に沿う円筒面状を成した内周面35s1と、側壁部30bの内面と対向する外周面35s2とを有している。第2伝熱部35の内周面35s1は、底壁部30aが広がる方向でコア33aの外周面33s1と対向している。第2伝熱部35の内周面35s1とコア33aの外周面33s1とは、底壁部30aが広がる方向に間隔をあけて対向している。
【0030】
本実施形態における第2伝熱部35は、直方体形状を成す部材の中心部分から円柱状の部分がくり抜かれた形状を成している。円柱状の部分が直方体形状を成す部材からくり抜かれることにより、第2伝熱部35の内周面35s1が形成されている。第2伝熱部35の外周面35s2は、コイルケース30の内面に当接している。第2伝熱部35における一方側(中心軸線Arが延びる方向における一方側、図1中の下側)の端面は、底壁部30aに接続されている(接している)。
【0031】
第2伝熱部35は、熱伝導材により形成されている。ここでいう熱伝導材には、例えば、アルミニウムなどを含む金属材料が採用される。なお、第2伝熱部35を形成する熱伝導材には、アルミニウム以外の材料が採用されてもよい。なお、第2伝熱部35は、コイルケース30を形成する熱伝導材よりも熱伝導率の高い熱伝導材で形成されていることが好ましい。本実施形態における第2伝熱部35は、例えば第1伝熱部34と同じ材料で形成されている。
【0032】
(絶縁部)
絶縁部36は、コイルケース30に収容された要素(コイル33、第1伝熱部34、第2伝熱部35)同士を電気的に絶縁するとともに、これら各要素とコイルケース30とを電気的に絶縁する絶縁部材である。絶縁部36は、コイルケース30内に配置されている。絶縁部36は、コイル33とコイルケース30との間のすき間、コイル33と第1伝熱部34との間のすき間、およびコイル33と第2伝熱部35との間のすき間を埋めるように配置されている。したがって、絶縁部36は、コイル33およびコイルケース30、コイル33および第1伝熱部34、ならびに、コイル33および第2伝熱部35のそれぞれを互いに電気的に絶縁している。
【0033】
本実施形態では、絶縁部36は、ポッティング材により形成されている。コイルケース30の内部には、外部から液状のポッティング材が充填され(ポッティング)、充填されたポッティング材は、コイルケース30の内部の空間内で露出する各要素を封止する。コイルケース30の内部に充填されたポッティング材は、所定の時間がかけられることで硬化して絶縁部36となり、コイルケース30の内部における要素間、および各要素とコイルケース30の外部の空間とを電気的に絶縁する。ポッティング材には、例えば、シリコンゲルやエポキシ樹脂などの絶縁材料が採用される。すなわち、絶縁部36は、シリコンゲルやエポキシ樹脂などの絶縁材料により形成されている。なお、ポッティング材には、シリコンゲルやエポキシ樹脂以外の合成樹脂などを採用してもよい。
【0034】
(作用・効果)
電力変換回路2に電力が入力されて、コイルユニット3の巻線部33bに電流が流れた際、コイル33のコア33aは発熱する。コア33aから発生した熱は、絶縁部36を介して熱伝導材により形成されたコイルケース30に伝導する。コイルケース30に伝導した熱は、コイルケース30中をケーシング1の本体部10に向かって伝導し、冷媒流路11を開口させる開口部10hを塞ぐ部分に到達する。冷媒流路11の開口を塞ぐ部分は液冷媒Rにより積極的に熱交換されるため、当該部分に伝導した熱は冷媒流路11を流れる液冷媒Rにより除去される。
【0035】
上述した構成では、熱伝導材により形成されたコイルケース30が、冷媒流路11を開口させる本体部10の開口部10hを塞いでいるため、コイルケース30自体が冷媒流路11を流れる液冷媒Rに直接的に冷却されている。つまり、コイルケース30がコイルユニット3のヒートシンクを兼ねている。これにより、例えばコイルケース30に、当該コイルケース30とは別体の冷却用のヒートシンクなどを設けた場合と比較して、コイル33のコア33aから生じた熱が伝導する部材の数が少ない。したがって、発熱したコイル33をより冷却することができる。その結果、コイル33をより小型化することができる。また、コイルユニット3を冷却するためのヒートシンクなどを必要としないため、電力変換装置100の全体をコンパクトに設計することができる。
【0036】
また、発明者らは、コア33a(トロイダルコア)の表面温度が、中心軸線Arを中心とした周方向で均一に分布することを見出した。
上述した構成では、コア33aを収容するコイルケース30は中心軸線Arが延びる方向から本体部10の内面に固定されている。これにより、コア33aからコイルケース30に伝導した熱の経路の長さに、中心軸線Arを中心とした周方向で差が生じにくい。すなわち、コア33aから発生した熱が、コイルケース30のなかで偏在しにくい。したがって、コア33aをより均一に冷却することができる。
【0037】
また、上述した構成では、中心軸線Arを中心とした円柱状の第1伝熱部34がコア33aの内側に配置されており、当該第1伝熱部34がコイルケース30における開口部10hを塞ぐ部分に接続されている。これにより、例えば、コア33aよりも内側の部分(コイルケース30の内部でコア33aの内周面33s2に囲まれた領域)に絶縁部36などが単に配置されている場合と比較して、コア33aにおける内側部分から生じた熱をコイルケース30に向けて円滑に伝導させることができる。すなわち、コア33aから生じた熱をコイルケース30に円滑に逃がすことができる。したがって、コイル33をより冷却することができる。
【0038】
また、上述した構成では、コイルケース30とコア33aとの間に配置された第2伝熱部35が、コア33aの外周面33s1に沿う円筒面状を成した内周面35s1を有している。これにより、例えばコイルユニット3が第2伝熱部35を有していない場合と比較して、コア33aの外周面33s1から生じた熱が第2伝熱部35の内周面35s1を介してコイルケース30に伝導させることができる。すなわち、コア33aから生じた熱をコイルケース30に円滑に逃がすことができる。したがって、コイル33をより冷却することができる。
【0039】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成は実施形態の構成に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内での構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
【0040】
例えば、図3に示すように、コイルユニット3は、コイルケース30に設けられて、冷媒流路11を流れる液冷媒Rと熱交換する放熱部37を更に有していてもよい。この場合、放熱部37は、コイルケース30の底壁部30aに設けられて、底壁部30aから冷媒流路11内に向けて延びるフィンである。放熱部37は、底壁部30aが広がる方向で等間隔に複数が並んで配置されている。放熱部37は、熱伝導材により形成される。なお、各々の放熱部37は、底壁部30aに対して垂直な状態に配置された板状を成してもよいし、底壁部30aに対して垂直な状態に配置された柱状を成してもよい。
【0041】
また、コイルユニット3は、第2伝熱部35を備えなくてもよい。この場合、例えばコイルケース30がコア33aの外周面33s1に沿う円筒面状を成した内周面を有していればよい。また、コイルケース30は、円筒状に形成されていてもよい。
【0042】
<付記>
実施形態に記載の電力変換装置100およびコイルユニット3は、例えば以下のように把握される。
【0043】
(1)第1の態様に係る電力変換装置100は、内側に収容空間Sを画定する本体部10、および、該本体部10に形成された冷媒流路11を有するケーシング1と、前記収容空間Sに配置されて、前記冷媒流路11を流れる冷媒Rにより冷却されるコイルユニット3と、前記収容空間Sに配置されて、前記コイルユニット3に電気的に接続された電力変換回路2と、を備え、前記コイルユニット3は、熱伝導材により形成されたコイルケース30と、前記コイルケース30内に配置されたコア33a、および、前記電力変換回路2に接続された一端と他端との間の部分が前記コア33aに巻回された巻線部33bを有するコイル33と、前記コイルケース30内に配置され、前記コイルケース30と前記コイル33とを電気的に絶縁する絶縁部36と、を備え、前記本体部10は、前記冷媒流路11の一部を前記収容空間Sに開口させる開口部10hを有し、前記コイルケース30は、前記開口部10hを塞ぐように前記本体部10に固定されている。
【0044】
これにより、例えばコイルケース30に当該コイルケース30とは別体の冷却用のヒートシンクなどを設けた場合と比較して、コイル33のコア33aから生じた熱が伝導する部材の数が少ない。したがって、発熱したコイル33をより冷却することができる。
【0045】
(2)第2の態様に係る電力変換装置100は、(1)の電力変換装置100であって、前記コア33aは、中心軸線Arを中心とした円筒状を成し、前記コイルケース30は、前記中心軸線Arが延びる方向から前記本体部10に固定されてもよい。
【0046】
これにより、コア33aからコイルケース30に伝導した熱の経路の長さに、中心軸線Arを中心とした周方向で差が生じにくい。したがって、コア33aをより均一に冷却することができる。
【0047】
(3)第3の態様に係る電力変換装置100は、(2)の電力変換装置100であって、前記コイルユニット3は、熱伝導材により形成されて、前記コイルケース30内の前記コア33aの内側で前記中心軸線Arを中心とした円柱状に延びる第1伝熱部34を更に備え、前記絶縁部36は、前記コイル33と前記第1伝熱部34とを更に電気的に絶縁し、前記第1伝熱部34は、前記コイルケース30における前記開口部10hを塞ぐ部分に接続されてもよい。
【0048】
これにより、例えば、コア33aよりも内側の部分に絶縁部36などが単に配置されている場合と比較して、コア33aにおける内側部分から生じた熱をコイルケース30に向けて円滑に伝導させることができる。
【0049】
(4)第4の態様に係る電力変換装置100は、(2)または(3)の電力変換装置100であって、前記コイルユニット3は、熱伝導材により形成されて、前記コイルケース30と前記コア33aとの間に配置された第2伝熱部35を更に備え、前記絶縁部36は、前記コイル33と前記第2伝熱部35とを更に電気的に絶縁し、前記第2伝熱部35は、前記コア33aの外周面33s1に沿う円筒面状を成した内周面35s1を有し、前記コイルケース30に接続されてもよい。
【0050】
これにより、例えばコイルユニット3が第2伝熱部35を有していない場合と比較して、コア33aの外周面33s1から生じた熱が第2伝熱部35の内周面35s1を介してコイルケース30に伝導させることができる。すなわち、コア33aから生じた熱をコイルケース30に円滑に逃がすことができる。
【0051】
(5)第5の態様に係るコイルユニット3は、熱伝導材により形成されたコイルケース30と、前記コイルケース30内に配置されて中心軸線Arを中心とした円筒状を成すコア33a、および、一端と他端との間の部分が前記コア33aに巻回された巻線部33bを有するコイル33と、熱伝導材により形成されて、前記コイルケース30内の前記コア33aの内側で前記中心軸線Arを中心とした円柱状に延びる第1伝熱部34と、前記コイルケース30内に配置され、前記コイルケース30および前記コイル33ならびに前記コイル33および前記第1伝熱部34を電気的に絶縁する絶縁部36と、を備え、前記第1伝熱部34は、前記コイルケース30に接続されている。
【0052】
これにより、第1伝熱部34を介して、コア33aの内側から生じた熱をコイルケース30に逃がすことができる。したがって、コイルケース30の内部でコア33aから生じた熱が滞留することを抑制することができる。その結果、コイル33をより冷却することができる。
【符号の説明】
【0053】
1…ケーシング 2…電力変換回路 3…コイルユニット 10…本体部 10h…開口部 11…冷媒流路 30…コイルケース 30a…底壁部 30b…側壁部 31…封止体 32…結合具 33…コイル 33a…コア 33b…巻線部 33s1,35s2…外周面 33s2,35s1…内周面 34…第1伝熱部 35…第2伝熱部 36…絶縁部 37…放熱部 100…電力変換装置 Ar…中心軸線 L1,L2…ライン R…液冷媒 S…収容空間
図1
図2
図3