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特開2024-136771アンテナの追尾システム、アンテナの追尾装置、アンテナの追尾方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136771
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】アンテナの追尾システム、アンテナの追尾装置、アンテナの追尾方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 3/42 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
G01S3/42 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048007
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100181135
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 隆史
(72)【発明者】
【氏名】二階堂 瑞希
(72)【発明者】
【氏名】石井 義之
(72)【発明者】
【氏名】大筆 想
(57)【要約】
【課題】 アンテナの指向する方向を精度よく決めること。
【解決手段】 アンテナ受信部30と、追尾受信機20と、追尾受信機20で行われる復調処理により生ずる遅延時間と、第1の誤差情報と、第2の誤差情報とに基づき、アンテナの制御量を決定し、アンテナ受信部30に前記アンテナの制御量を送信するアンテナ制御部10とを備えるアンテナの追尾システム1。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナで受信した変調信号を、和信号と差信号とに分離するアンテナ受信部と、
前記和信号と前記差信号とを前記アンテナ受信部から受信し、前記和信号と前記差信号とを復調し、復調した前記和信号と復調した前記差信号とに基づき第1の誤差情報を決定し、復調していない前記和信号と復調していない前記差信号とに基づき第2の誤差情報を決定する、追尾受信機と、
前記追尾受信機で行われる復調処理により生ずる遅延時間と、前記第1の誤差情報と、前記第2の誤差情報とに基づき、アンテナの制御量を決定し、前記アンテナ受信部に前記アンテナの制御量を送信するアンテナ制御部と、を備える
アンテナの追尾システム。
【請求項2】
前記アンテナ制御部は、
前記第1の誤差情報が有効である場合は、前記第1の誤差情報に基づき前記アンテナの制御量を決定し、前記アンテナ受信部に前記アンテナの制御量を送信し、
前記第1の誤差情報が有効でなく、かつ、前記第2の誤差情報が有効である場合は、前記第2の誤差情報に基づきアンテナの制御量を決定し、前記遅延時間に等しい時間が経過した後に、前記アンテナ受信部に前記アンテナの制御量を送信する、
請求項1に記載のアンテナの追尾システム。
【請求項3】
前記アンテナ制御部は、
前記第1の誤差情報が有効でなく、かつ、前記第2の誤差情報が有効でない場合は、前記アンテナの制御を停止する、
請求項2に記載のアンテナの追尾システム。
【請求項4】
前記アンテナ制御部は、前記第1の誤差情報と前記第2の誤差情報とを所定の制御比率で合成し、
前記アンテナ制御部は、前記遅延時間並びに前記第1の誤差情報及び前記第2の誤差情報に基づき決定される切替え時間の間に前記制御比率を変化させて、前記切替え時間の間に前記第1の誤差情報と前記第2の誤差情報とを切り替える、
請求項1に記載のアンテナの追尾システム。
【請求項5】
前記アンテナ制御部は、
前記第1の誤差情報が有効である場合は、前記切替え時間の経過した後に前記第1の誤差情報と前記第2の誤差情報とが100:0で合成されるよう、前記制御比率を前記切替え時間の間に変化させ、
前記第1の誤差情報が有効でなく、かつ、前記第2の誤差情報が有効である場合は、前記第1の誤差情報と前記第2の誤差情報とが0:100で合成されるよう、前記制御比率を設定する、
請求項4に記載のアンテナの追尾システム。
【請求項6】
前記アンテナ制御部は、
前記第1の誤差情報が有効でなく、かつ、前記第2の誤差情報が有効でない場合は、前記アンテナの制御を停止する、
請求項5に記載のアンテナの追尾システム。
【請求項7】
アンテナで受信した変調信号から分離した和信号と差信号との復調処理により生ずる遅延時間の情報と、復調した前記和信号と復調した前記差信号とに基づき決定される第1の誤差情報と、復調していない前記和信号と復調していない前記差信号とに基づき決定される第2の誤差情報とを受信するインタフェースと、
前記インタフェースから送信された前記第1の誤差情報に基づき前記アンテナの第1の制御量を決定する第1の伝達関数と、
前記第2の誤差情報に基づき前記アンテナの第2の制御量を決定する第2の伝達関数と、
前記インタフェースから送信された前記第2の誤差情報を、前記遅延時間に等しい時間が経過した後に、前記第2の伝達関数に送信する遅延部と、を備える
アンテナの追尾装置。
【請求項8】
前記第1の誤差情報が有効であるかと、前記第2の誤差情報が有効であるか否かとに基づき、前記アンテナの第1の制御量と前記アンテナの第2の制御量とのいずれかを選択して、前記アンテナを制御する
請求項7に記載のアンテナの追尾装置。
【請求項9】
アンテナで受信した変調信号から分離した和信号と差信号とを受信することと、
前記和信号と前記差信号との復調処理を行うことと、
復調した前記和信号と復調した前記差信号とに基づき第1の誤差情報を決定することと、
復調していない前記和信号と復調していない前記差信号とに基づき第2の誤差情報を決定することと、
前記復調処理により生ずる遅延時間と、前記第1の誤差情報と、前記第2の誤差情報とに基づき、アンテナの制御量を決定することと、を含む
アンテナの追尾方法。
【請求項10】
コンピュータに、
アンテナで受信した変調信号から分離した和信号と差信号とを受信することと、
前記和信号と前記差信号との復調処理を行うことと、
復調した前記和信号と復調した前記差信号とに基づき第1の誤差情報を決定することと、
復調していない前記和信号と復調していない前記差信号とに基づき第2の誤差情報を決定することと、
前記復調処理により生ずる遅延時間と、前記第1の誤差情報と、前記第2の誤差情報とに基づき、アンテナの制御量を決定することと、を実行させるための
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナの追尾システム、アンテナの追尾装置、アンテナの追尾方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
衛星やロケット等の移動体と通信を行う際に、移動体を追尾するため、パラボラアンテナ等の指向性の高いアンテナが用いられる。追尾する対象(以下、「追尾対象」という。)である移動体には、アンテナを正確に向ける必要がある。
【0003】
アンテナの指向する方向を精度よく決めるために、モノパルス追尾方式が提案されている(例えば、特許文献1)。モノパルス追尾方式は、追尾対象から受信した信号に基づき、アンテナの指向する方向を追尾対象の方向により近づけることができる方法である。
【0004】
図5に、モノパルス追尾方式に用いられる、関連するモノパルス追尾システムの概略を示す。モノパルス追尾システムは、追尾受信機と、アンテナ制御装置(ACU)とを含む。
【0005】
モノパルス追尾システムは、追尾対象から受信した信号を和信号と差信号とに分離する。モノパルス追尾システムの追尾受信機は、和信号と差信号とを用いて、方位角方向及び仰角方向の誤差(アンテナの指向する方位角方向及び仰角方向が、追尾対象の方位角方向及び仰角方向と、それぞれどちら方向にどれくらいずれているか)を検出し、誤差の情報をアンテナ制御装置に送信する。アンテナ制御装置は、誤差の情報に基づいてアンテナの指向する方向を補正し、追尾対象にアンテナを指向させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006-226722号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
モノパルス方式では、S/N比(信号とノイズの比)が小さくなると精度が悪くなるという課題がある。特に、追尾対象からの信号が変調されており、変調された信号がS/N比の小さい状態でアンテナに入力される場合に、アンテナの指向する方向を精度よく決めることが困難となる。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、アンテナの指向する方向を精度よく決めることが可能なアンテナの追尾システム、アンテナの追尾装置、アンテナの追尾方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、アンテナで受信した変調信号を、和信号と差信号とに分離するアンテナ受信部と、前記和信号と前記差信号とを前記アンテナ受信部から受信し、前記和信号と前記差信号とを復調し、復調した前記和信号と復調した前記差信号とに基づき第1の誤差情報を決定し、復調していない前記和信号と復調していない前記差信号とに基づき第2の誤差情報を決定する、追尾受信機と、前記追尾受信機で行われる復調処理により生ずる遅延時間と、前記第1の誤差情報と、前記第2の誤差情報とに基づき、アンテナの制御量を決定し、前記アンテナ受信部に前記アンテナの制御量を送信するアンテナ制御部と、を備える。
【0010】
本発明の第2の態様によれば、アンテナの追尾装置は、アンテナで受信した変調信号から分離した和信号と差信号との復調処理により生ずる遅延時間の情報と、復調した前記和信号と復調した前記差信号とに基づき決定される第1の誤差情報と、復調していない前記和信号と復調していない前記差信号とに基づき決定される第2の誤差情報とを受信するインタフェースと、前記インタフェースから送信された前記第1の誤差情報に基づき前記アンテナの第1の制御量を決定する第1の伝達関数と、前記第2の誤差情報に基づき前記アンテナの第2の制御量を決定する第2の伝達関数と、前記インタフェースから送信された前記第2の誤差情報を、前記遅延時間に等しい時間が経過した後に、前記第2の伝達関数に送信する遅延部と、を備える。
【0011】
本発明の第3の態様によれば、アンテナの追尾方法は、アンテナで受信した変調信号から分離した和信号と差信号とを受信することと、前記和信号と前記差信号との復調処理を行うことと、復調した前記和信号と復調した前記差信号とに基づき第1の誤差情報を決定することと、復調していない前記和信号と復調していない前記差信号とに基づき第2の誤差情報を決定することと、前記復調処理により生ずる遅延時間と、前記第1の誤差情報と、前記第2の誤差情報とに基づき、アンテナの制御量を決定することと、を含む。
【0012】
本発明の第4の態様によれば、プログラムは、コンピュータに、アンテナで受信した変調信号から分離した和信号と差信号とを受信することと、前記和信号と前記差信号との復調処理を行うことと、復調した前記和信号と復調した前記差信号とに基づき第1の誤差情報を決定することと、復調していない前記和信号と復調していない前記差信号とに基づき第2の誤差情報を決定することと、前記復調処理により生ずる遅延時間と、前記第1の誤差情報と、前記第2の誤差情報とに基づき、アンテナの制御量を決定することと、を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、アンテナの指向する方向を精度よく決めることが可能なアンテナの追尾システム、アンテナの追尾装置、アンテナの追尾方法及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態に係るアンテナの追尾システムの構成を示した図である。
図2】本発明の第1実施形態に係るアンテナの追尾方法のフロー図である。
図3】本発明の第2実施形態に係るアンテナの追尾システムの構成を示した図である。
図4】本発明の第1実施形態に係るアンテナの追尾方法のフロー図である。
図5】関連するモノパルス追尾システムの概略を示した図である。
図6】アンテナ追尾システムの最小構成を示す図である。
図7】最小構成によるアンテナ追尾システムの処理フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組合せの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0016】
<第1実施形態>
以下、図1及び図2を用いて、本発明の第1実施形態について説明する。
【0017】
<アンテナの追尾システム>
図1は、本発明の第1実施形態に係るアンテナの追尾システムの構成を示した図である。図1に示すように、アンテナの追尾システム1は、アンテナ制御部10と、追尾受信機20と、アンテナ受信部30とを備える。以下、説明の便宜上、アンテナ受信部30、追尾受信機20、アンテナ制御部10の順に説明する。
【0018】
[アンテナ受信部]
アンテナ受信部30は、アンテナ反射器300と、給電部310と、アンテナ駆動部320と、第1の低雑音増幅器330と、第2の低雑音増幅器331と、第1の周波数変換装置340と、第2の周波数変換装置341とを備える。
【0019】
アンテナ反射器300は、追尾対象からの信号を受信する。アンテナ反射器300は、曲面を持つ1又は2以上の反射器を用いて、焦点の位置に追尾対象からの信号を集める。アンテナ反射器300は、受信した信号を給電部310に送信する。アンテナ反射器300は、パラボラアンテナ、カセグレンアンテナ、グレゴリアンアンテナ、リングフォーカスアンテナ等、公知のアンテナを含む様々なアンテナを用いることができる。
【0020】
本実施形態では、アンテナ反射器300が受信する信号は、変調信号である。変調方式は、二位相偏移変調(BPSK)、四位相偏移変調(QPSK)、周波数ホッピング・スペクトラム拡散(FHSS),パルス符号変調-位相変調(PCM-PM)等、公知の方式を含む様々な方式を用いることができる。
【0021】
給電部310は、高次モード結合器(不図示)を備える。給電部310は、アンテナ反射器300が送信した追尾対象からの信号を受信する。給電部310は、受信した信号を、前記高次モード結合器を用いて、和信号と差信号とに分離する。和信号と差信号との分離の方法は、公知の方法を含む様々な方法を用いることができる。給電部310は、差信号を第1の低雑音増幅器330に、和信号を第2の低雑音増幅器331に、それぞれ送信する。
【0022】
低雑音増幅器(LNA:Low Noise Amplifier)330、331は、入力された信号を、雑音を低く抑えつつ増幅して出力する。第1の低雑音増幅器330は、給電部310から送信された差信号(DIFF)を増幅する。第2の低雑音増幅器331は、給電部310から送信された和信号(SUM)を増幅する。低雑音増幅器330、331は、公知の手段を含む様々な手段を用いることができる。第1の低雑音増幅器330は、増幅された差信号を第1の周波数変換装置340に、第2の低雑音増幅器331は、増幅された和信号を第2の周波数変換装置341に、それぞれ送信する。
【0023】
周波数変換装置(D/C:Down Converter)340、341は、入力された高周波数の信号を、低周波数の信号に変換して出力する。第1の周波数変換装置340は、第1の低雑音増幅器330から送信された、増幅された差信号の周波数を変換する。第2の周波数変換装置341は、第2の低雑音増幅器331から送信された、増幅された和信号の周波数を変換する。周波数変換装置340、341は、公知の手段を含む様々な手段を用いることができる。第1の周波数変換装置340は周波数が変換された差信号を、第2の周波数変換装置341は周波数が変換された和信号を、それぞれ追尾受信機20に送信する。
【0024】
アンテナ駆動部320は、アンテナ制御部10から送信された指令情報(後述)を用いてアンテナの制御を行う。アンテナ駆動部320は、例えば、指令情報を、アンテナを駆動するモーターのトルク制御量に換算し、当該トルク制御量を用いてアンテナの制御を行う。
【0025】
[追尾受信機]
追尾受信機20は、復調器200と、相関検波部210、211と、インタフェース220とを備える。
【0026】
復調器(DEM:Demodulator)200は、受信した変調信号に対して復調を行う。復調方式は、前記変調方式に応じて、公知の方式を含む様々な方式を用いることができる。復調器200は、公知の手段を含む様々な手段を用いることができる。
【0027】
復調器200は、第1の周波数変換装置340が送信した、周波数が変換された差信号と、第2の周波数変換装置341が送信した、周波数が変換された和信号とを受信する。復調器200は、周波数が変換された差信号と、周波数が変換された和信号とを、それぞれ復調する。復調器200は、復調された差信号と復調された和信号とを、それぞれ相関検波部210に送信する。
【0028】
復調器200は、信号伝搬の遅延時間を保持する。遅延時間は、復調器200が信号の復調を行うために要する処理時間である。復調器200は、例えば、復調器200が備える記録媒体(例えば、半導体メモリ)に、遅延時間を保持する。遅延時間の保持は、例えば、リアルタイムに計測した遅延時間を保持してもよい。遅延時間の保持は、例えば、復調方式や通信レートに応じて決まる遅延時間の値の組合せを、復調器200が備える記録媒体に予めテーブルとして記録しておき、受信した信号が用いている復調方式や通信レートに対応する遅延時間の値を、当該テーブルから取得して保持してもよい。復調器200は、遅延時間の情報をインタフェース220に送信する。
【0029】
相関検波部(Cross Correlation)210、211は、入力された信号の相関検波を行う。相関検波は、公知の方法を含む様々な方法を用いることができる。
【0030】
相関検波部210は、復調器200が送信した、復調された差信号と復調された和信号とを受信する。相関検波部210は、復調された差信号と復調された和信号との相関検波を行う。相関検波部210は、相関検波の結果に基づき、誤差情報Aを出力する。誤差情報Aは、仰角方向の誤差(EL ERR)と、方位角方向の誤差(AZ ERR)と、信号の強度(AGC LV)と、品質情報(Q/D:Quality оf Data)とを含む。品質情報は、仰角方向の誤差、方位角方向の誤差、及び信号の強度に係る情報が、有効であるか否かを表す情報である。ここで、誤差等の情報が有効であるとは、それらの情報に基づき、所望する追尾対象からの信号を受信できていることを意味する。誤差等の情報が有効であるか否かを決める条件は、対象とする追尾対象によって異なるが、例えば、S/N比が十分に大きい、規定の周波数帯域内の電力が閾値よりも高い、受信機が特定のパターンの信号と同期できた、などの条件が挙げられる。仰角方向の誤差及び方位角方向の誤差の算出方法や品質情報の決定方法は、公知の方法を含む様々な方法を用いることができる(例えば、本実施形態では、相関検波部210においては復調可能か否か、相関検波部211においては所望の帯域におけるS/N比が決められた閾値以上であるか否かを、それぞれ判定する。)。相関検波部210は、誤差情報Aをインタフェース220に送信する。
【0031】
相関検波部211は、第1の周波数変換装置340が送信した、周波数が変換された差信号(復調される前の差信号)と、第2の周波数変換装置341が送信した、周波数が変換された和信号(復調される前の和信号)とを受信する。相関検波部211は、周波数が変換された差信号(復調される前の差信号)と周波数が変換された和信号(復調される前の和信号)との相関検波を行う。相関検波部211は、相関検波の結果に基づき、誤差情報Bを出力する。誤差情報Bは、仰角方向の誤差と、方位角方向の誤差と、信号の強度と、品質情報とを含む。仰角方向の誤差及び方位角方向の誤差の算出方法や品質情報の決定方法は、公知の方法を含む様々な方法を用いることができる。相関検波部211は、誤差情報Bをインタフェース220に送信する。
【0032】
インタフェース220は、復調器200が送信した遅延時間の情報と、相関検波部210が送信した誤差情報Aと、相関検波部211が送信した誤差情報Bとを受信する。インタフェース220は、受信した遅延時間の情報と誤差情報Aと誤差情報Bとを、アンテナ制御部10(インタフェース120)に送信する。インタフェース120、220は、インタフェース120、220は、図2に示すLAN(Local Area Network)に限られず、シリアルインタフェース、接点による電圧出力等、公知の手段を含む様々な手段を用いることができる。
【0033】
[アンテナ制御部]
アンテナ制御部10は、伝達関数100、101と、切替器102と、遅延部110と、前記インタフェース120とを備える。インタフェース120は、インタフェース220から送信された、遅延時間の情報と誤差情報Aと誤差情報Bとを受信する。インタフェース120は、遅延時間の情報を遅延部110に送信する。インタフェース120は、誤差情報Aを伝達関数100に送信する。インタフェース120は、誤差情報Bを遅延部110に送信する。
【0034】
伝達関数100は、前記アンテナ駆動部320の制御量を決定する。伝達関数100は、インタフェース120から送信された誤差情報Aを受信する。アンテナ制御部10が備える記録媒体(不図示)に記録されたアンテナ駆動部320の過去の制御量と、誤差情報Aとに基づき、アンテナ駆動部320の制御量を更新する。伝達関数100は、アンテナ制御部10が備える記録媒体(不図示)に、更新したアンテナ駆動部320の制御量を記録する。伝達関数100は、更新したアンテナ駆動部320の制御量を、切替器102に送信する。
【0035】
遅延部110は、インタフェース120から送信された、遅延時間の情報と誤差情報Bとを受信する。遅延部110は、受信した遅延時間の情報に基づき、遅延時間に等しい時間だけ遅延を行う。すなわち、遅延部110は、遅延時間に等しい時間が経過するまで、受信した誤差情報Bの送信を行わず、遅延時間に等しい時間が経過した時点で、誤差情報Bを伝達関数101に送信する。
【0036】
伝達関数101は、前記アンテナ駆動部320の制御量を決定する。伝達関数101は、遅延部110から送信された誤差情報Bを受信する。伝達関数101は、アンテナ制御部10が備える記録媒体(不図示)に記録されたアンテナ駆動部320の過去の制御量と、誤差情報Bとに基づき、アンテナ駆動部320の制御量を更新する。伝達関数101は、アンテナ制御部10が備える記録媒体(不図示)に、更新したアンテナ駆動部320の制御量を記録する。伝達関数101は、更新したアンテナ駆動部320の制御量を、切替器102に送信する。
【0037】
切替器102は、伝達関数100から送信されたアンテナ駆動部320の制御量と、伝達関数101から送信されたアンテナ駆動部320の制御量との、いずれの出力をアンテナ駆動部320に伝えるかの切替えを行う。切替器102は、切替えにより選択した伝達関数100、101のいずれかにおいて算出された、アンテナ駆動部320の制御量(駆動方向、速度)を示す指令情報を、前記アンテナ受信部30(前記アンテナ駆動部320)に送信する。
【0038】
<アンテナの追尾方法>
以下、図2を用いて、本発明の第1実施形態に係るアンテナの追尾方法を説明する。
【0039】
図2は、本発明の第1実施形態に係るアンテナの追尾方法のフロー図である。
【0040】
まず、アンテナ制御部10は、アンテナ制御部10が備えるCPU及びメモリ(不図示)を用いて、アンテナ制御部10が受信した誤差情報Aが含む品質情報を参照し、誤差情報Aが有効であるか否かを判別する(S101)。本フローが開始する時点で、誤差情報A、誤差情報B、及び品質情報は、追尾受信機20からアンテナ制御部10に送られており、前記メモリに格納されている。
【0041】
誤差情報Aが有効であった場合(S101:Yes)は、伝達関数100の出力をアンテナ制御に用いるように、切替器102が切替えを行う(S103)。しかる後に、伝達関数100は、受信した誤差情報Aに基づいて、アンテナ駆動部320の制御量(駆動方向、速度)を算出し、算出した結果を示す指令情報をアンテナ受信部30(アンテナ駆動部320)に送信する(S106)。
【0042】
誤差情報Aが有効でなかった場合(S101:No)は、アンテナ制御部10は、アンテナ制御部10が受信した誤差情報Bが含む品質情報を参照し、誤差情報Bが有効であるか否かを判別する(S102)。
【0043】
誤差情報Bが有効であった場合(S102:Yes)は、伝達関数101の出力をアンテナ制御に用いるように、切替器102が切替えを行う(S104)。しかる後に、遅延部110は、アンテナ制御部10が受信した遅延時間に等しい時間の遅延を行う(S107)。伝達関数101は、受信した誤差情報Bに基づいて、アンテナ駆動部320の制御量を算出し、指令情報をアンテナ受信部30(アンテナ駆動部320)に送信する(S108)。
【0044】
誤差情報Bが有効でなかった場合(S102:No)は、誤差情報に基づくアンテナの駆動制御を停止する(S105)。
【0045】
以上のアンテナの追尾方法により、伝達関数100を用いた制御と伝達関数101を用いた制御との切替えを行うことができる。
【0046】
アンテナの追尾システム1で行われる処理の過程は、コンピュータで読取り可能なプログラムの形式で、アンテナの追尾システム1が備える記録媒体(不図示)に記憶されている。このプログラムをコンピュータが読み出して実行することで、アンテナの追尾システム1での処理が行われる。例えば、アンテナ制御部10で行われる処理の過程のプログラムは、アンテナ制御部10が備える記録媒体に記憶されていてもよいし、アンテナ制御部10の外部にある他の記録媒体に記憶されていてもよい。
【0047】
追尾対象からの信号が変調されている場合、アンテナの指向方向と追尾対象の方向の誤差が大きいときには、アンテナの指向方向を衛星の方向へ近づけることはできる。しかし、正対に近い方向に近づくと、変調によってS/N比が小さくなった分、アンテナの指向する方向を精度よく決めることが困難となる。そのため、復調ができるようになった後は、復調後の信号を用いて(誤差情報Aを用いて)アンテナの指向する方向を決める。
【0048】
復調器200での復調には遅延時間だけ処理時間を要するため、アンテナ反射器300がある時点で受信した信号に基づく誤差情報Bは、アンテナ反射器300が同じ時点で受信した信号に基づく誤差情報Aに比べて、遅延時間に等しい時間だけ早くアンテナ制御部10(インタフェース120)に到達する。このため、同じ時点でアンテナ制御部10(インタフェース120)に到達した誤差情報Aと誤差情報Bとの間で、アンテナ駆動の制御に用いることのできるタイミングに差が生じてしまう。
【0049】
本実施形態によれば、追尾対象からの信号が変調されており、信号の復調ができない場合にも、復調前の信号と復調後の信号とを適宜切り替えて用いることができる。これにより、制御量の誤差を低減し、アンテナの指向する方向を精度よく決めることができるという効果を奏する。
【0050】
本実施形態によれば、アンテナ制御部10が遅延部110を備えているため、アンテナ反射器300が同じ時点で受信した信号に基づく誤差情報Aと誤差情報Bとが、それぞれ伝達関数100、101に同時に到達することができる。これにより、復調前の信号に基づくアンテナ駆動制御と、復調後の信号に基づくアンテナ駆動制御とを切り替えたときも、復調処理に起因する遅延時間により誤差情報が不連続となることを抑止することができる。その結果、復調後の誤差情報を、同じ時点での復調前の誤差情報と比較して決定することができるため、適切な制御量を決定することができるという効果を奏する。
【0051】
<第2実施形態>
以下、図3及び図4を用いて、本発明の第2実施形態について説明する。第1実施形態と共通する構成要素は、説明を省略する。
【0052】
<アンテナの追尾システム>
図3に示すように、本実施形態に係るアンテナの追尾システム2は、復調の遅延時間を追尾受信機20からアンテナ制御部10に出力せずにアンテナ制御を行う点に特徴を有する。
【0053】
アンテナ制御部10は、伝達関数100と、誤差合成部111と、制御比率保持部112と、インタフェース120とを備える。
【0054】
誤差合成部111は、インタフェース120から誤差情報Aと誤差情報Bとを受信する。誤差合成部111は、誤差情報Aと誤差情報Bとを、所与の制御比率で合成する。制御比率がX%の場合には、誤差合成部111は、誤差情報A:誤差情報B=X%:(100-X)%の比率で、誤差情報Aと誤差情報Bとを合成する。特に、制御比率が0%の場合は誤差情報Bのみを用いる場合に相当し、制御比率が100%の場合は誤差情報Aのみを用いる場合に相当する。誤差合成部111は、合成された誤差情報Aと誤差情報Bとを、伝達関数100に送信する。
【0055】
制御比率保持部112は、誤差合成部111が誤差情報Aと誤差情報Bとを合成する前記制御比率の値を保持する。
【0056】
<アンテナの追尾方法>
以下、図4を用いて、本発明の第2実施形態に係るアンテナの追尾方法を説明する。
【0057】
図4は、本発明の第2実施形態に係るアンテナの追尾方法のフロー図である。
【0058】
まず、アンテナ制御部10は、アンテナ制御部10が受信した誤差情報Aが含む品質情報を参照し、誤差情報Aが有効であるか否かを判別する(S201)。
【0059】
誤差情報Aが有効であった場合(S201:Yes)は、制御比率保持部112が保持する制御比率の値(X%)に一定の値(ΔX%)を加え、制御比率の値を更新する((X+ΔX)%)(S203)。制御比率の更新に用いる加算値は、アンテナ駆動制御処理の処理間隔と切替え時間とに基づき決定する。切替え時間は、復調に要することが想定される遅延時間、及び、誤差情報Aと誤差情報Bとの差の大きさにより決定される。
【0060】
例えば、処理間隔が100msで、切替え時間が2sであった場合は、加算値を5%とすることにより(ΔX%=5%)、制御比率が05から100msごとに5%ずつ加算される結果、2s後には制御比率が100%となる。これにより、誤差情報Bから誤差情報Aへの切替えが、切替え時間内に行われる。
【0061】
誤差情報Aが有効でなかった場合(S201:No)は、アンテナ制御部10は、アンテナ制御部10が受信した誤差情報Bが含む品質情報を参照し、誤差情報Bが有効であるか否かを判別する(S202)。
【0062】
誤差情報Bが有効であった場合(S202:Yes)は、制御比率保持部112が保持する制御比率の値を更新して0%とする(X%=0%)(S204)。
【0063】
S203又はS204が終了した後、誤差合成部111は、制御比率保持部112が保持する制御比率に応じ、誤差情報の合成を行う(S206)。しかる後に、伝達関数100は、合成された誤差情報を用いて、アンテナの制御量(駆動方向、速度)を算出し、算出した結果を示す指令情報をアンテナ受信部30(アンテナ駆動部320)に送信する(S207)。
【0064】
誤差情報Bが有効でなかった場合(S202:No)は、誤差情報に基づくアンテナの駆動制御を停止する(S205)。
【0065】
以上のアンテナの追尾方法により、伝達関数100のみを用いた制御で、誤差情報の切替えを行うことができる。
【0066】
この構成により、第1実施形態とは異なり、誤差情報Aが有効となった後に、一定の時間(切替え時間)をかけて、誤差情報の合成比率を徐々に変えつつ、誤差情報Bから誤差情報Aに切替えを行うことができる。これにより、遅延時間による誤差情報の不連続を、切替え時間を設けることによって吸収することができる。その結果、復調処理に起因する遅延時間を用いた制御がアンテナ制御部10で不要となり、アンテナ制御部10における構成及び方法を単純化することができる。
【0067】
図6はアンテナの追尾システムの最小構成を示す図である。
図7は最小構成によるアンテナの追尾システムの処理フローを示す図である。
アンテナの追尾システム1は、少なくともアンテナ受信部30と、追尾受信機20と、アンテナ制御部10を備える。これら各処理部の機能は追尾システム1のコンピュータに実装される。これら各処理部の機能は追尾システム1の回路により当該機能が実装されてもよいし、CPU等の処理部が上記プログラムを実行することにより追尾システム1に実装されてもよい。
アンテナ受信部30は、アンテナで受信した変調信号を、和信号と差信号とに分離する(ステップS71)。
追尾受信機20は、和信号と差信号とをアンテナ受信部から受信し、和信号と差信号とを復調し、復調した和信号と復調した差信号とに基づき第1の誤差情報を決定し、復調していない和信号と復調していない差信号とに基づき第2の誤差情報を決定する(ステップS72)。
アンテナ制御部10は、追尾受信機で行われる復調処理により生ずる遅延時間と、第1の誤差情報と、第2の誤差情報とに基づき、アンテナの制御量を決定し、アンテナ受信部にアンテナの制御量を送信する(ステップS73)。
【0068】
上記の実施形態の一部または全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0069】
(付記1) アンテナで受信した変調信号を、和信号と差信号とに分離するアンテナ受信部と、前記和信号と前記差信号とを前記アンテナ受信部から受信し、前記和信号と前記差信号とを復調し、復調した前記和信号と復調した前記差信号とに基づき第1の誤差情報を決定し、復調していない前記和信号と復調していない前記差信号とに基づき第2の誤差情報を決定する、追尾受信機と、前記追尾受信機で行われる復調処理により生ずる遅延時間と、前記第1の誤差情報と、前記第2の誤差情報とに基づき、アンテナの制御量を決定し、前記アンテナ受信部に前記アンテナの制御量を送信するアンテナ制御部と、を備えるアンテナの追尾システム。
【0070】
(付記2)前記アンテナ制御部は、前記第1の誤差情報が有効である場合は、前記第1の誤差情報に基づき前記アンテナの制御量を決定し、前記アンテナ受信部に前記アンテナの制御量を送信し、前記第1の誤差情報が有効でなく、かつ、前記第2の誤差情報が有効である場合は、前記第2の誤差情報に基づきアンテナの制御量を決定し、前記遅延時間に等しい時間が経過した後に、前記アンテナ受信部に前記アンテナの制御量を送信する、付記1に記載のアンテナの追尾システム。
【0071】
(付記3)前記アンテナ制御部は、前記第1の誤差情報が有効でなく、かつ、前記第2の誤差情報が有効でない場合は、前記アンテナの制御を停止する、付記2に記載のアンテナの追尾システム。
【0072】
(付記4)前記アンテナ制御部は、前記第1の誤差情報と前記第2の誤差情報とを所定の制御比率で合成し、前記アンテナ制御部は、前記遅延時間並びに前記第1の誤差情報及び前記第2の誤差情報に基づき決定される切替え時間の間に前記制御比率を変化させて、前記切替え時間の間に前記第1の誤差情報と前記第2の誤差情報とを切り替える、付記1に記載のアンテナの追尾システム。
【0073】
(付記5)前記アンテナ制御部は、前記第1の誤差情報が有効である場合は、前記切替え時間の経過した後に前記第1の誤差情報と前記第2の誤差情報とが100:0で合成されるよう、前記制御比率を前記切替え時間の間に変化させ、前記第1の誤差情報が有効でなく、かつ、前記第2の誤差情報が有効である場合は、前記第1の誤差情報と前記第2の誤差情報とが0:100で合成されるよう、前記制御比率を設定する、付記4に記載のアンテナの追尾システム。
【0074】
(付記6)前記アンテナ制御部は、前記第1の誤差情報が有効でなく、かつ、前記第2の誤差情報が有効でない場合は、前記アンテナの制御を停止する、付記5に記載のアンテナの追尾システム。
【符号の説明】
【0075】
1,2…アンテナの追尾システム
10…アンテナ制御部
100、101…伝達関数
102…切替器
110…遅延部
111…誤差合成部
112…制御比率保持部
120、220…インタフェース
20…追尾受信機
200…復調器
210、211…相関検波部
30…アンテナ受信部
300…アンテナ反射器
310…給電部
320…アンテナ駆動部
330…第1の低雑音増幅器
331…第2の低雑音増幅器
340…第1の周波数変換装置
341…第2の周波数変換装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7