(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136784
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】ホエイ加熱濃縮装置
(51)【国際特許分類】
A47J 27/14 20060101AFI20240927BHJP
A23C 21/00 20060101ALI20240927BHJP
A23C 1/12 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
A47J27/14 Q
A23C21/00
A23C1/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048025
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】509003195
【氏名又は名称】大生機設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】500557048
【氏名又は名称】学校法人日本医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100086438
【弁理士】
【氏名又は名称】東山 喬彦
(74)【代理人】
【識別番号】100217168
【弁理士】
【氏名又は名称】東山 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】濱村 賢
(72)【発明者】
【氏名】三浦 孝之
【テーマコード(参考)】
4B001
4B054
【Fターム(参考)】
4B001AC05
4B001BC01
4B001BC04
4B001BC07
4B001BC08
4B001BC99
4B001CC01
4B001EC99
4B054AA04
4B054AC20
4B054CD02
(57)【要約】
【課題】 チーズ加工の際に副産物として生じるチーズホエイを一度だけ濃縮容器に移し替えてセットするだけで、それに続くチーズホエイの冷却から濃縮までを一挙に行うことができる新規なホエイ加熱濃縮装置の開発を技術課題とする。
【解決手段】 本発明のホエイ加熱濃縮装置Cは、基台11と、該基台11に取り外し自在に載置される加工バット2と、該加工バット2内においてチーズホエイHを撹拌する撹拌装置3と、加工バット2を加熱する加熱装置4とを具え、撹拌装置3は、駆動されて回転する撹拌軸34と、これに取り付けられる側面スクレーパ35a及び底面スクレーパ35bとを具え、且つこれら各々のスクレーパは、加工バット2内面に対し撓み接触するスクレーパフラップ36a・36bを具えていることを特徴とする。また底面スクレーパフラップ36bには、下端縁から上方に向かう追従促進切込み37が設けられることが好ましい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器である加工バット内に、原料となるチーズホエイを収容し、加熱下において撹拌して、チーズホエイを濃縮する加工装置であって、
この加工装置は、
基台と、
この基台に対し取り外し可能に載置される加工バットと、
この加工バット内においてチーズホエイを撹拌する撹拌装置と、
基台に載置した加工バットを下方から加熱する加熱装置とを具えて成り、
前記撹拌装置は、駆動されて回転する撹拌軸と、これに取り付けられる側面スクレーパ及び底面スクレーパとを具え、且つこれら各々のスクレーパは、加工バット内面に対し撓み接触するスクレーパフラップを具えていることを特徴とするホエイ加熱濃縮装置。
【請求項2】
前記底面スクレーパにおける底面スクレーパフラップは、下端縁が、加工バットの内底面の断面形状にほぼ沿うように形成され、且つ側面視で中心を外れた位置に、下端縁から上方に向かう追従促進切込みが設けられていることを特徴とする請求項1記載のホエイ加熱濃縮装置。
【請求項3】
前記加工バットの上方には、加工バットの上部開放部に指向する泡抑え風を供給する泡抑えファンが設けられていることを特徴とする請求項1または2記載のホエイ加熱濃縮装置。
【請求項4】
前記加工バットには、着脱自在の冷却コイル装置が取り付けられるものであり、この冷却コイル装置は、加工バットの内側面に沿う螺旋状の注水管を具えて成り、この注水管に冷却水を循環供給させて加工バット内に収容されたチーズホエイの冷却を図る構成であることを特徴とする請求項1または2記載のホエイ加熱濃縮装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は乳製品の一つであるチーズを製造する際に、副産物として発生するチーズホエイを食材利用できるようにするためのホエイ加熱濃縮装置(チーズホエイの加熱濃縮装置)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
チーズの製造過程において原乳を乳酸発酵することに伴って、乳酸を含んだ液状成分であるチーズホエイが副産物として発生する。従来、このチーズホエイは、廃棄処分されることが多かったが、当然ながら食材としての有効成分も多く含まれており、一部ではこれを濃縮加工して食材や調味料に利用する試みが行われている(例えば特許文献1~4参照)。
具体的には、例えば酪農が盛んな北欧地域にあっては、家庭単位の手法として、鍋等にチーズホエイを入れて、撹拌しながら煮詰めて濃縮させるという、基本的な手法が伝統的に行われている。
【0003】
一方、チーズホエイを煮詰める手法を基にしながらも省力化する試みとして、従来からある製餡等に用いる混錬機を用いることも行われている。この手法は、混錬容器内に入れた原料のチーズホエイを撹拌しながら水分の蒸発除去を行い、濃縮させる手法である。そして、このような混練機を用いた手法では、実際には必要とされる原料のチーズホエイの冷却にあたり、別の容器にチーズホエイを取り込んで一定時間放置する冷却手法が採られ、またその後に、冷却に用いた容器から混練機の容器にチーズホエイを移し替える作業を必要としている。
【0004】
しかしながら、多くの場合、数十リットル程度のチーズホエイを一度に扱うとなると、容器から別の容器に移し替える等の作業は、作業者にとって労力的に大きな負担となっている。
また、濃縮加工にあたっては、チーズホエイを入れた容器を撹拌しながらチーズホエイの焦げ付きを防止しなければならないから、混練機を用いた手法では、混錬ロッドが遊星旋回しながら容器内面を移動撹拌するものの、点接触状に移動することから、常に容器内面、特に容器底面のチーズホエイを満遍なく拭い取って浮かすような作用は、必ずしも期待できない。結果的に焦げ付きを防ぐには、容器の加熱状態を緩やかにして濃縮加工を行うことになるため、加工効率を上げるのにも一定の限界があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平1-148148号公報
【特許文献2】特開2002-125589号公報
【特許文献2】特開昭63-151155号公報
【特許文献2】特開昭58-175438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような背景を考慮してなされたものであって、チーズ加工の際に副産物として生じるチーズホエイを一度だけ濃縮容器に移し替えてセットするだけで、それに続くチーズホエイの冷却から濃縮までを一挙に行うことができ、且つ冷却から濃縮まで材料たるチーズホエイの焦げ付きを回避しながら高効率で加工できるようにしたチーズホエイの加熱濃縮装置を開発することを技術課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち請求項1記載のホエイ加熱濃縮装置は、
容器である加工バット内に、原料となるチーズホエイを収容し、加熱下において撹拌して、チーズホエイを濃縮する加工装置であって、
この加工装置は、
基台と、
この基台に対し取り外し可能に載置される加工バットと、
この加工バット内においてチーズホエイを撹拌する撹拌装置と、
基台に載置した加工バットを下方から加熱する加熱装置とを具えて成り、
前記撹拌装置は、駆動されて回転する撹拌軸と、これに取り付けられる側面スクレーパ及び底面スクレーパとを具え、且つこれら各々のスクレーパは、加工バット内面に対し撓み接触するスクレーパフラップを具えていることを特徴として成るものである。
【0008】
また請求項2記載のホエイ加熱濃縮装置は、前記請求項1記載の要件に加え、
前記底面スクレーパにおける底面スクレーパフラップは、下端縁が、加工バットの内底面の断面形状にほぼ沿うように形成され、且つ側面視で中心を外れた位置に、下端縁から上方に向かう追従促進切込みが設けられていることを特徴として成るものである。
【0009】
また請求項3記載のホエイ加熱濃縮装置は、前記請求項1または2記載の要件に加え、
前記加工バットの上方には、加工バットの上部開放部に指向する泡抑え風を供給する泡抑えファンが設けられていることを特徴として成るものである。
【0010】
また請求項4記載のホエイ加熱濃縮装置は、前記請求項1または2記載の要件に加え、
前記加工バットには、着脱自在の冷却コイル装置が取り付けられるものであり、この冷却コイル装置は、加工バットの内側面に沿う螺旋状の注水管を具えて成り、この注水管に冷却水を循環供給させて加工バット内に収容されたチーズホエイの冷却を図る構成であることを特徴として成るものである。
これら各請求項記載の発明の構成を手段として前記課題の解決が図られる。
【発明の効果】
【0011】
まず請求項1記載の発明によれば、加工バットの内側面と内底面とに対し、撓み接触するスクレーパフラップを設けるため、撹拌中は、加工バットの内面に付着・残留しがちなチーズホエイを、当該スクレーパフラップによって綺麗に拭い取ることができ、充分に撹拌することができる。
【0012】
また請求項2記載の発明によれば、底面スクレーパフラップの下部には、中心を外れた位置に追従促進切込みが設けられるため、加工バットの底部中央に付着・滞留しがちなチーズホエイを充分に拭い取ることができ、より確実にチーズホエイを撹拌することができる。
【0013】
また請求項3記載の発明によれば、加工バットの上方に泡抑えファンが設けられるため、加工中にチーズホエイから発生する泡を効率的に破裂させて泡の発生を抑制し、泡が加工バット上部から零れ落ちること等を防止することができる。
また、風送装置(泡抑えファン)を設けることにより、加熱中、バット本体内のチーズホエイから湯気が立ち昇り、これが加工バットの上方に位置する機器部材の下部に付着し、結露となる現象を防止することができる。
更に風送装置(泡抑えファン)は、加工終盤で火を止めた後、バット本体内のチーズホエイを撹拌しながら常温(例えば30℃程度)まで冷やす場合にも有効に作用する。
【0014】
また請求項4記載の発明によれば、加工バットの内側面に沿う螺旋状の注水管を具えた冷却コイル装置を具え、加工バット内に収容したチーズホエイを冷却する際には、上記冷却コイル装置を加工バットに装着し、注水管に冷却水を循環供給させてチーズホエイを冷却するため、効率的な冷却を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明のホエイ加熱濃縮装置(加熱濃縮装置)を示す斜視図(a)、並びに撹拌装置(スクレーパ)を拡大して示す斜視図(b)である。
【
図2】本発明のホエイ加熱濃縮装置を正面から視た説明図(a)、並びに側面図(b)である。
【
図3】同上、正面から視た説明図(a)、並びに平面から視た説明図(b)である。
【
図4】底面スクレーパに形成する追従促進切込みを、撹拌軸の下方において真っ直ぐ形成した場合のスクレーパの斜視図(a)と、当該底面スクレーパによって加工バットの内底面を拭い取る様子を示す平面図(b)である。
【
図5】底面スクレーパに設ける追従促進切込みを、撹拌軸下方から幾らかずらして斜めに形成した場合のスクレーパの斜視図(a)と、当該底面スクレーパによって加工バットの内底面を拭い取る様子を示す平面図(b)である。
【
図6】冷却コイル装置を示す斜視図(a)、並びにこの冷却コイル装置を加工バットに装着した様子を示す斜視図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施するための形態は、以下の実施例に述べるものをその一つとするとともに、更にその技術思想内において改良し得る種々の手法をも含むものである。
【実施例0017】
以下、本発明のホエイ加熱濃縮装置C(チーズホエイの加熱濃縮装置Cであり、以下、単に「加熱濃縮装置C」と略記することがある)を図示の実施例に基づいて具体的に説明する。
加熱濃縮装置Cは、一例として
図1~
図3に示すように、大別すると基台11と、この基台11に対し取り外し可能に載置される釜状の加工バット2と、この加工バット2内において原料となるチーズホエイHを撹拌する撹拌装置3と、基台11に載置した加工バット2を下方から加熱する加熱装置4とを具える。以下、各構成部材について説明する。
【0018】
まず図中符号1は、加熱濃縮装置Cのフレームであって、このフレーム1の下方に立体枠状の基台11が設けられる。この基台11は、適宜の接地脚部材を具えるとともに、その内部空間を加熱装置室12とするものであり、下方に加熱室底板13が設けられ、更にこれと対向する上方側にバット支持テーブル14を具える。このバット支持テーブル14は、加工バット2を支持する部位を一例として円孔状にくり抜いて形成され、、この円孔の外周側に一例として放射状に三カ所、加工バット2の支持を行うためのブラケット受け15が形成される。
【0019】
一方、このような基台11に対し、その側面からポストフレーム16を上方に立ち上げるものであって、当該ポストフレーム16の上端に駆動支持部17を側方に張り出すように設ける。なお、この駆動支持部17は、ポストフレーム16の上端において水平面軌跡で回動するように構成されており、駆動支持部17の中心がバット支持テーブル14のバット支持部位から側方に回動退去し得るように構成されている。
因みに、これらフレーム1をはじめ、後述する加工バット2や撹拌装置3など、多くの部材は、加工対象物が食品であることに因み、サニタリー性の見地からステンレス素材で構成される。
【0020】
次に加工バット2について説明する。
加工バット2は、一例としてステンレス製の幾分か縦長の有底円筒状を成し、上部が解放されたバット本体21を主要部材として構成され、このバット本体21は、内側面21aと内底面21bとを具えて成る。このうち内底面21bについては、フラットな形状ではなく、中心部が底下がりになった、略偏平状に形成される。
一方、バット本体21の外側面には、一例として対向状に一対の把手22が突出状に設けられ(
図3(b)参照)、更にその下方には一例として放射状に三カ所、固定ブラケット23を具える。なお、この固定ブラケット23は、前述した基台11におけるブラケット受け15に対向して設けられる部材である。すなわちバット本体21をバット支持テーブル14上に載置した際に、バット本体21側の固定ブラケット23が、バット支持テーブル14側のブラケット受け15に合致するように設けられ、バット本体21の載置後は、これら固定ブラケット23とブラケット受け15とが、適宜ピン止めされるものである。
【0021】
次に撹拌装置3について説明する。
撹拌装置3は、濃縮加工の際、前記加工バット2内に収容したチーズホエイHを撹拌するものであり、その駆動系統を説明すると、一例として
図3(a)に示すように、駆動モータ30が、前記駆動支持部17に搭載されるとともに、当該駆動モータ30に接続されたギヤユニット31によって、出力方向を下方に向けた出力軸32に回転を伝達する。この出力軸32の下端には、接続フランジ33aが設けられ、撹拌軸34に設けた接続フランジ33bと密着状態に接続固定されることによって、出力軸32の回転が撹拌軸34に伝達される構成となっている。
なお撹拌軸34の上方には、側方に突出する位置決めピン341を具えるものであり、このものは撹拌軸34と出力軸32との接続位置をロックピン状に定めるものである。これによって前記接続フランジ33a・33bの固定を図るためのピン位置が合致するように構成されている。
【0022】
そして、上記撹拌軸34に対しスクレーパ35が設けられるものであって、このスクレーパ35は、側面スクレーパ35aと底面スクレーパ35bとを具えて成る。まず側面スクレーパ35aについては、撹拌軸34に直交するように設けられたステー351を介して、フラップ押さえ352がステー351の両端に取り付けられ、当該フラップ押さえ352に対し外向きに側面スクレーパフラップ36aが取り付けられる。
一方、底面スクレーパ35bについては、撹拌軸34の下端に、上記ステー351に直交するようにフラップ押さえ352が設けられ、このフラップ押さえ352の下面に底面スクレーパフラップ36bを取り付ける。ここで符号36は、側面スクレーパフラップ36aと底面スクレーパフラップ36bとの総称であり、これら双方のスクレーパフラップ36によってバット本体21の内側(内側面21aと内底面21b)に付着・残留しがちなチーズホエイHを綺麗に拭い取ることができる。
【0023】
因みに、スクレーパフラップ36は、いわゆる一定の腰の強さをもったシリコン製の平板状部材であり、側面スクレーパフラップ36aは、ほぼ縦長短冊状の直方体形状に形成される。
一方、底面スクレーパフラップ36bは、下端縁が前記バット本体21の内底面21bの曲率形状にほぼ馴染んだ概形状に形成される。より詳細には、その曲面は底面スクレーパフラップ36bが内底面21bに撓み接触することを考慮すると、相似形状ではあるものの、曲率等については、内底面21bの曲率より幾らか大きい寸法に設される。
更に、この底面スクレーパフラップ36bには、追従促進切込み37が形成されるものであって、この追従促進切込み37は、底面スクレーパフラップ36bの側面視で中心を外れた位置において下端縁から上方斜めに向かうように形成されている。なお追従促進切込み37の上端には、ここに生ずる引き裂き応力を分散させ、更なる切込みが進行しないようにする目的から、円孔状の応力分散孔37aが形成されている。
因みに、追従促進切込み37の「追従」については、作動状況を説明する際に併せて説明する。
【0024】
次に加熱装置4について説明する。
加熱装置4は、加工バット2に収容されたチーズホエイHを加熱するためのものであり、一般的にはガスコンロ等の汎用部材を、基台11における加熱装置室12に具えることにより構成される。
【0025】
更に加熱濃縮装置Cは、加工バット2の上方に、加工バット2の上部開放部に向けて泡抑え風を作用させる風送装置として泡抑えファン5を設ける。これは後述するように、加工の際、バット本体21内のチーズホエイHを撹拌すると、チーズホエイHの上面に泡が発生する現象が見られ、この泡を破裂させ(泡の抑制)、また発生した泡が加工バット2の上部から吹きこぼれること等を防止するためのものである。
また、風送装置(泡抑えファン5)を設置しない場合には、加熱加工中、バット本体21内のチーズホエイHから湯気が立ち昇り、これが加工バット2の上方に位置する機器部材(例えば駆動支持部17等)の下部に付着し、結露となってバット本体21内に落下することがあった。しかしながら、本実施例では、泡抑えファン5を設けるため、このような湯気の上昇を抑え、上記結露の発生を抑制するものである。
更に、加工終盤で火を止めた後、バット本体21内のチーズホエイHを撹拌しながら常温(例えば30℃程度)まで冷やす場合にも風送装置(泡抑えファン5)による送風が有効である。
なお、本実施例では、風送装置として泡抑えファン5自体を加工バット2の上方に設置するものであるが、ファン自体は別途適宜の場所に設置しておき、ファンから送風口(吹出口)までをフレキシブルダクト等で接続し、送風口のみを加工バット2の上方に配置するようにしても構わない。
更に加熱濃縮装置Cは、前記フレーム1のポストフレーム16から側方に張り出すように制御盤6が設けられ、例えば当該制御盤6における回転トルク計によって、加熱濃縮加工が制御される。すなわち、チーズホエイHは加熱濃縮に伴い、例えば粘性等が増し、これに伴い撹拌装置3の抵抗も上昇するため、撹拌装置3(撹拌軸34)の回転トルク等を制御することにより、チーズホエイHの加熱温度や加工時間あるいは撹拌装置3の回転速度等を制御するものである。もちろん、これらは回転トルク計を用いずに、温度計やタイマーなどを用いて計測・制御することも可能である。
【0026】
また前記加工バット2は、一例として
図6(a)に示すような着脱自在の冷却コイル装置7を具え、この冷却コイル装置7は、一例として
図6(b)に示すように、チーズホエイHを冷却する際、加工バット2に装着される。
冷却コイル装置7は、円筒籠状に形成されたケージフレーム71を具えるとともに、このケージフレーム71に対しフレキシブル加工可能な注水管72を支持させて成り、加工バット2への取付状態では、全体として注水管72が加工バット2の内側面21aに沿う螺旋状に配設される構成となっている。この注水管72は、両端部にソケット73を具え、一方の端部が水道水等の冷却水を受け入れる注水口となり、他端部が冷却作用を終えた冷却水の吐出口(排出口)となるように構成されている。
また前記ケージフレーム71は、その上端部に一例として二カ所、前記バット本体21の上端縁に係止できるようなハンガーブラケット74を具える。すなわち本実施例では、バット本体21の上端縁において、直径線上における対向二カ所に、ハンガーブラケット74が設けられている。
【0027】
本発明の加熱濃縮装置Cは、以上述べたような具体的な構成を有するものであり、次のような手順によってチーズホエイHの濃縮加工が行われる。
(1)始発状態
始発状態としては、既に述べたように各構成部材(各種機材)が、例えば
図1(a)に示すような加工状態に設定されている状態とする。すなわち、基台11におけるバット支持テーブル14上に加工バット2が載置されるとともに、加工バット2内には、撹拌装置3が収まった状態であり、更に加工バット2の下方にはガスコンロ等の加熱装置4が収納されている状態を始発状態とする。
【0028】
(2)準備作業
準備作業としては、別途、チーズ製造工程において副産物として生じたチーズホエイHを、加工バット2によって受け取る。このため、まず加工バット2内に収められた撹拌装置3を接続フランジ33a・33bにおいて出力軸32から切り離した状態とする。その後、駆動支持部17を加工バット2の上方から退去させるように側方に移動させ、切り離された撹拌装置3を加工バット2から抜き取る。
その後、加工バット2と基台11との間における固定ブラケット23とブラケット受け15との固定を外し、加工バット2を可搬できるようにする。
ここで加工バット2を可搬する際には、作業者が把手22を利用して持ち上げる等して、加工バット2を適宜の台車等に乗せて、チーズホエイHが副産物として生じたチーズ加工装置まで運搬し、当該チーズ加工装置からドレン状にチーズホエイHを抜き出し加工バット2内に収容する。
このようにしてチーズホエイHを加工バット2内に収容した後、加工バット2を加熱濃縮装置Cにおける基台11に戻すように載置する。
その後、加工バット2における固定ブラケット23と、バット支持テーブル14に設けられているブラケット受け15とを合致させて、適宜ピン止め等により両者の止め付けを図る。なお、この作業においては、撹拌装置3は外されたままであり、且つその駆動系の駆動モータ30、ギヤユニット31、出力軸32等の部材も、前記フレーム1の駆動支持部17をバット支持テーブル14の上方から側方に退去させたままの状態である。
【0029】
(3)冷却
チーズ製造装置から加工バット2(加熱濃縮装置C)に収容し、冷却した直後のチーズホエイHは、液温としては80℃程度であり、次の濃縮加工にあたっては、いわゆる室温程度まで冷却する必要がある。このためバット支持テーブル14上に載置された加工バット2内に冷却コイル装置7を収めるように装着し、その後、注水管72のソケット73に水道管等を接続し、ここに冷却水(水道水)を循環状態に供給して、チーズホエイHを冷却する。なお、冷却コイル装置7の注水管72は、螺旋状を描くように形成されているため、チーズホエイHに漬かった注水管72がチーズホエイHを効率良く冷却することができる。因みに、このようにチーズホエイHを室温程度に冷却するのは、チーズホエイHに対して酵素等を添加するのに適切な温度とするためであり、この酵素は、乳糖の分解作用を担うものである。
このようにして加工バット2内に収容したチーズホエイHを上記酵素と反応させた後、撹拌装置3によってチーズホエイHの撹拌と、水分の蒸発を促す加熱が行われる。
【0030】
(4)撹拌装置の装着
撹拌装置3を装着するには、まず上記冷却コイル装置7を加工バット2から取り外す。その後、撹拌装置3における撹拌軸34と、これに取り付けられた部材とを加工バット2の上方からバット本体21内に挿入する。
そして、この状態とした後、加工バット2の上部から退去していた駆動支持部17を、加工バット2の上方に旋回移動させて、撹拌装置3におけるギヤユニット31の出力軸32の接続フランジ33aと、撹拌軸34の接続フランジ33bとの接続を行う。なお、この接続にあたっては、位置決めピン341を出力軸32の接続フランジ33aにおける一定の位置に収めるものであって、位置決めピン341の先端を出力軸32の接続フランジ33aのロック孔に嵌め合わせる。これによって前記一対の接続フランジ33a・33bの接続部位が正しく設定され、貫通ボルト等による両者の固定が図られるとともに、スクレーパ35におけるスクレーパフラップ36のバット本体21に対する接触状態も適切なものに設定される。すなわち、撹拌軸34が出力軸32に取り付けられた状態では、スクレーパ35のスクレーパフラップ36は、幾らか撓んだ状態でバット本体21の内側面21aや内底面21bに当接した状態となる。
【0031】
(5)撹拌開始
このような状態とした後、撹拌装置3における駆動モータ30の駆動によって、撹拌軸34を回転させる。この際、回転方向に対してスクレーパフラップ36の先端が後追従するような曲成状態を採り(例えば
図4参照)、側面スクレーパ35aにおける側面スクレーパフラップ36aは、バット本体21の内側面21aに撓み接触しながら回転する。
一方、底面スクレーパ35bにおける底面スクレーパフラップ36bについては、撹拌軸34を中心とした回転移動となることから、例えば追従促進切込み37が平面視で撹拌軸34のほぼ中心位置に形成されていれば、底面スクレーパフラップ36bも、撹拌軸34の中心を境として平面視で後追従状態に変形する(例えば上記
図4(b)参照)。すなわち、底面スクレーパフラップ36bは、平面視で追従促進切込み37を境にして異なった方向に弧を描くような撓み接触となる。
しかしながら、これではバット本体2の内底面21bの中心位置(最も低い部分)において、チーズホエイHの取り残しが考えられる。このため本実施例では、一例として
図5(a)に示すように、底面スクレーパフラップ36bに施す追従促進切込み37は、側面視で中心よりずれた位置(傾斜状態)に形成される。そして、この追従促進フラップの作用により、底面スクレーパフラップ36bの直径方向における撓み方向の違いが円滑に出現する。すなわち、一例として
図5(b)に示すように、平面視で長い弧を描く底面スクレーパフラップ36bが、バット本体21の内底面21bの中心位置(最も低い部分)と、確実に撓み接触するものであるから、当該部位において、チーズホエイHの取り残し(拭き取り残し)を一切生じさせない撹拌が可能となる。
【0032】
(6)泡抑え
このような撹拌が進むに伴い、特に初期段階において液状成分が充分に多いチーズホエイHは、その上面が泡立つものであり、そのままでは当該泡が加工バット2の上部開放部から零れ落ちるような現象を生じる。このため風送装置たる泡抑えファン5を作動させることにより、泡抑え風によって、発生した泡の破裂が促進され、泡の発生を抑制するものであり、加工バット2からの泡の零れ落ちも回避することができる。
また、風送装置(泡抑えファン5)を設けることにより、加熱中、バット本体21内のチーズホエイHから湯気が立ち昇り、これが加工バット2の上方に位置する機器部材(例えば駆動支持部17等)の下部に付着し、結露となる現象を防止することができる。
なお風送装置(泡抑えファン5)は、加工終盤で火を止めた後、バット本体21内のチーズホエイHを撹拌しながら常温(例えば30℃程度)まで冷やす場合にも有効である。
【0033】
(7)濃縮加工の終了
そして、このような濃縮加工が進むに従い、水分が蒸発し、液状のチーズホエイHが、例えばその色調をブラウンカラー状に変えながら、ペースト状に濃縮されて行く。このような濃縮が進むことは前記撹拌装置3の撹拌負荷が増大するような傾向として検知されるから、駆動モータ30への給電電流等の変化を回転トルク計等により検知して、適切な濃縮状態を知ることができる。
なおこのようにして濃縮されたチーズホエイHを、食材として市場に提供する場合には、原液状のままであると、乳酸等の作用で幾分か食材としての味覚に欠ける場合もあり、適宜の香料、調味料等を添加して味の調整を行うことが好ましい。