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特開2024-136785推定方法、推定モデル生成方法、推定装置、推定モデル生成装置およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136785
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】推定方法、推定モデル生成方法、推定装置、推定モデル生成装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   C10B 57/00 20060101AFI20240927BHJP
   C10B 57/04 20060101ALI20240927BHJP
   G01N 33/22 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C10B57/00
C10B57/04
G01N33/22 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048028
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100217249
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 耕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221279
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100207686
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 恭宏
(74)【代理人】
【識別番号】100224812
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 翔太
(72)【発明者】
【氏名】安達 太聖
(72)【発明者】
【氏名】松尾 翔平
(72)【発明者】
【氏名】窪田 征弘
【テーマコード(参考)】
4H012
【Fターム(参考)】
4H012LA00
4H012MA01
(57)【要約】
【課題】より精度よくコークスの粒径を推定する。
【解決手段】少なくともコークスを製造するときのコークス炉の温度及び前記コークスの配合炭の収縮率を入力として前記コークスの粒径を出力する推定モデルに、対象となるコークスを製造するときのコークス炉の温度及び前記対象となるコークスの配合炭の収縮率を入力することで、前記対象となるコークスの粒径を推定する、推定方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともコークスを製造するときのコークス炉の温度及び前記コークスの配合炭の収縮率を入力として前記コークスの粒径を出力する推定モデルに、対象となるコークスを製造するときのコークス炉の温度及び前記対象となるコークスの配合炭の収縮率を入力することで、前記対象となるコークスの粒径を推定する、
推定方法。
【請求項2】
前記推定モデルは、前記コークス炉の温度及び前記配合炭の収縮率を説明変数として、前記粒径を目的変数として重回帰して作成される、
請求項1に記載の推定方法。
【請求項3】
少なくともコークスを製造するときのコークス炉の温度、前記コークスの配合炭の収縮率及び前記コークスに配合する石炭の銘柄情報を入力として前記コークスの粒径を出力する推定モデルに、対象となるコークスを製造するときのコークス炉の温度、前記対象となるコークスの配合炭の収縮率及び前記対象となるコークスに配合する石炭の銘柄情報を入力することで、前記対象となるコークスの粒径を推定する、
推定方法。
【請求項4】
前記推定モデルは、前記コークス炉の温度、前記配合炭の収縮率及び石炭の銘柄情報を説明変数とし、前記粒径を目的変数として重回帰したときに算出される回帰係数に基づいて作成される、
請求項3に記載の推定方法。
【請求項5】
前記回帰係数は、ラッソ回帰係数である、
請求項4に記載の推定方法。
【請求項6】
少なくともコークスを製造するときのコークス炉の温度及び前記コークスの配合炭の収縮率を入力サンプルとし、前記コークスの粒径を出力サンプルとするデータセットを用いて、コークスを製造するときのコークス炉の温度及び前記コークスの配合炭の収縮率からコークスの粒径を求める推定モデルを生成する、
推定モデル生成方法。
【請求項7】
前記コークス炉の温度及び前記配合炭の収縮率を説明変数として、前記粒径を目的変数として重回帰することで前記推定モデルを生成する、
請求項6に記載の推定モデル生成方法。
【請求項8】
前記データセットは入力サンプルとしてさらにコークスの石炭の銘柄情報を含み、
コークスを製造するときのコークス炉の温度、前記コークスの配合炭の収縮率及びコークスの石炭の銘柄情報を説明変数とし、コークスの粒径を目的変数として重回帰することで算出する回帰係数に基づいて前記推定モデルを生成する、
請求項7に記載の推定モデル生成方法。
【請求項9】
前記回帰係数は、ラッソ回帰係数である、
請求項8に記載の推定モデル生成方法。
【請求項10】
少なくともコークスを製造するときのコークス炉の温度及び前記コークスの配合炭の収縮率を入力として前記コークスの粒径を出力する推定モデルに、対象となるコークスを製造するときのコークス炉の温度及び前記対象となるコークスの配合炭の収縮率を入力することで、前記対象となるコークスの粒径を推定する、
推定装置。
【請求項11】
コークスを製造するときのコークス炉の温度及び前記コークスの配合炭の収縮率を入力サンプルとし、前記コークスの粒径を出力サンプルとするデータセットを取得するデータセット取得部と、
前記データセットを用いて、コークスを製造するときのコークス炉の温度及び前記コークスの配合炭の収縮率からコークスの粒径を求める推定モデルを生成する、推定モデル生成部と、
前記生成された推定モデルを出力する、推定モデル出力部と、
を備える推定モデル生成装置。
【請求項12】
コンピュータに請求項1~5のいずれか一項に記載の方法を実行させるためのプログラム。
【請求項13】
コンピュータに請求項6~9のいずれか一項に記載の方法を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推定方法、推定モデル生成方法、推定装置、推定モデル生成装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
室炉式コークス炉によって高炉用コークスを製造する際に、製造したコークス粒径(平均粒径)を常に一定以上の値に保持することは、高炉の通気性を確保し安定操業を実現する上で不可欠である。そこで、室炉式コークス炉で製造されるコークスの粒径を推定する方法が各々検討されてきた。
【0003】
例えば、特許文献1にはコークス原料となる配合炭を構成する単味炭のコークス収縮率を測定し、測定した単味炭のコークス収縮率を配合割合で加重平均して配合炭のコークス収縮率を算出し、配合炭のコークス収縮率に基づいてコークス粒径を推定する方法が開示されている。特許文献2には、配合炭を構成する単味炭の収縮率を加重平均して配合炭の加重平均収縮率を算出し、予め求めておいた配合炭の加重平均収縮率とコークス粒径との関係からコークス粒径を推定する方法が開示されている。特許文献3には、試験コークス炉で乾留して得られたコークスに対して、亀裂面の面積と衝撃を受けた後のコークス平均粒径との関係を基にコークスの平均粒径を予測する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-232349号公報
【特許文献2】特開2018-48262号公報
【特許文献3】特開2021-165340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び2に開示された方法は配合炭の収縮率との関係だけからコークス粒径を推定するため、精度よくコークス粒径を推定することはできなかった。また、特許文献3に開示された方法も亀裂面の面積との関係だけからコークス粒径を推定するため、精度よくコークス粒径を推定することはできなかった。
本発明の目的は、より精度高くコークス粒径を推定するための推定装置、推定モデル生成装置、推定方法、推定モデル生成方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、少なくともコークスを製造するときのコークス炉の温度及び前記コークスの配合炭の収縮率を入力として前記コークスの平均粒径を出力する推定モデルに、対象となるコークスを製造するときのコークス炉の温度及び前記対象となるコークスの配合炭の収縮率を入力することで、前記対象となるコークスの粒径を推定する、推定方法である。
【0007】
本発明の一態様は、少なくともコークスを製造するときのコークス炉の温度、前記コークスの配合炭の収縮率及び前記コークスに配合する石炭の銘柄情報を入力として前記コークスの平均粒径を出力する推定モデルに、対象となるコークスを製造するときのコークス炉の温度、前記対象となるコークスの配合炭の収縮率及び前記対象となるコークスに配合する石炭の銘柄情報を入力することで、前記対象となるコークスの粒径を推定する、推定方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、より精度高くコークス粒径を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態に係るコークス粒径推定装置1の構成を示す図である。
図2】第1の実施形態に係るコークス粒径推定装置1の動作を示すフローチャートである。
図3】第1の実施形態に係る推定モデル生成装置2の構成を示す図である。
図4】第1の実施形態に係る推定モデル生成装置2の動作を示すフローチャートである。
図5】第2の実施形態に係るコークス粒径推定装置1の構成例を示す図である。
図6A】比較手法による推定値と実測値を示す図である。
図6B】第1の実施形態の手法による推定値と実測値を示す図である。
図6C】第2の実施形態の手法による推定値と実測値を示す図である。
図7】第1の実施形態の手法及び第2の実施形態の手法による推定値の精度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
〈第1の実施形態〉
《コークス粒径推定装置の構成》
図1は、第1の実施形態に係るコークス粒径推定方法を実施するコークス粒径推定装置1の構成の一例を示す図である。
コークス粒径推定装置1は、温度取得部10、収縮率取得部11、記憶部12、推定部14、推定結果出力部16を備える。コークス粒径推定装置1は、コークスの情報に基づいて、コークスの粒径を推定する。コークスの粒径は例えばコークスの平均粒径である。
【0011】
温度取得部10は、コークスを製造するときのコークス炉の温度を取得する。コークス炉の温度は炭化室に設けられた温度計(例えば、熱電対)で測定されたものである。コークス炉の温度は、ある所定の時間(例えば1日)に測定された温度の平均値であってもよい。
【0012】
収縮率取得部11は、コークスの配合炭の収縮率を取得する。収縮率取得部11は、コークスの配合炭を構成する各単味炭の収縮率を取得し、取得した各単味炭の収縮率と配合率から配合炭の収縮率を算出することで、配合炭の収縮率を取得してもよい。収縮率取得部11は、配合炭の収縮率を記憶した外部の記憶装置から、配合炭の収縮率を取得してもよい。
【0013】
コークスの粒径はコークスの亀裂密度により決定される。亀裂はコークスの収縮による熱応力がコークス強度を超えると発生する。そのため、亀裂はコークス炉の温度とコークスの配合炭の収縮率により影響される。
コークス炉の温度が高く装入された配合炭の昇温速度が大きいと、温度勾配が大きく熱応力が大きくなる。そのため、コークス炉の温度が高いとコークスの亀裂の発生が多くなり、コークスの粒径は小さくなる。
一方、配合炭の収縮率が高くなると、亀裂密度が増加し、コークスの粒径は小さくなる。配合炭の収縮率は、例えば石炭の再固化温度における容積と再固化温度以上の温度(例えば1000℃)における容積の変化率を測定することで得られる。配合炭の収縮率は、特許文献1や2に開示された方法により測定すればよい。
【0014】
記憶部12は、推定モデルを記憶する。推定モデルは、コークス炉の温度及びコークスの配合炭の収縮率を入力として、コークスの粒径を出力するモデルである。
【0015】
推定部14は、記憶部12に記憶される推定モデルに、温度取得部10により取得されたコークス炉の温度及び収縮率取得部11により取得されたコークスの配合炭の収縮率を入力することで、推定モデルにコークスの粒径の推定値を出力させる。
【0016】
推定結果出力部16は、推定部14による推定結果を外部に出力する。推定結果は、例えばディスプレイなどに出力され、ディスプレイに表示される。
【0017】
《コークス粒径推定装置の動作》
図2は、第1の実施形態に係るコークス粒径推定方法を実施するコークス粒径推定装置1の動作を示すフローチャートである。
作業者は、コークス粒径推定装置1の機能を実行する前に、コークス粒径推定装置1がコークスの情報を取得できるようにしておく。作業者は、コークス粒径推定装置1にコークス粒径推定機能の実行指示を入力する。コークス粒径推定装置1がコークス粒径推定機能を実行すると、温度取得部10が、コークス炉の温度を取得し、収縮率取得部11が、配合炭の収縮率を取得する(ステップS101)。推定部14がコークスの情報と推定モデルを用いて、コークスの粒径を推定する(ステップS102)。推定結果出力部16が、推定部14により推定された結果を出力する(ステップS103)。
【0018】
《推定モデル生成装置の構成》
図3は、第1の実施形態に係る推定モデルを生成する推定モデル生成装置2の構成を示す図である。推定モデル生成装置2は、データセット取得部20、推定モデル生成部22、推定モデル出力部24とを備える。推定モデル生成装置2は、コークス粒径推定装置1の記憶部12に記憶される推定モデルを生成する。
【0019】
データセット取得部20は、コークス炉の温度及び配合炭の収縮率を入力サンプルとし、コークスの粒径を出力サンプルとするデータセットを取得する。
【0020】
推定モデル生成部22は、データセット取得部20により取得されるデータセットを用いて、コークス炉の温度及び配合炭の収縮率に基づいてコークスの粒径を推定する推定モデルを生成する。推定モデル生成部22は、例えばコークス炉の温度及び配合炭の収縮率を説明変数とし、コークスの粒径を目的変数として重回帰を行い、重回帰式を生成することで推定モデルを生成する。重回帰式は、例えば式(1)により表される。
【数1】
【0021】
ここでsはコークスの粒径、Tはコークス炉の温度、rは配合炭の収縮率である。a、b、cは重回帰により決定される値である。
【0022】
推定モデル出力部24は、推定モデル生成部22により生成された推定モデルを出力する。推定モデル出力部24は、推定モデルを例えばコークス粒径推定装置1に出力する。推定モデルはコークス粒径推定装置1に入力され、記憶部12に記憶される。
【0023】
《推定モデル生成装置の動作》
図4は、第1の実施形態に係る推定モデルを生成する推定モデル生成装置2の動作を示すフローチャートである。
データセット取得部20が、データセットを取得する(ステップS201)。推定モデル生成部22が、推定モデルを生成する(ステップS202)。推定モデル出力部24が、推定モデルを出力する(ステップS203)。
【0024】
このようにして第1の実施形態に係る推定モデル生成装置2により生成された推定モデルに、コークス粒径推定装置1はコークス炉の温度及び配合炭の収縮率を入力することで、コークスの粒径を推定する。先述したようにコークス炉の温度及び配合炭の収縮率はコークスの亀裂密度に影響し、コークスの粒径に影響する。したがって、配合炭の収縮率のみを用いて推定する手法と比較して、コークス炉の温度及び配合炭の収縮率を用いる第1の実施形態に係る推定手法はコークス炉の温度を考慮することができ、より精度高くコークスの粒径を推定することができる。なお、データセットにおける入力サンプルは、コークス炉の温度と配合炭の収縮率以外にさらに他の変数(例えば、粉コークス等の添加量)を含んでもよく、推定モデル生成部22はコークス炉の温度と配合炭の収縮率に他の変数を加えてモデルを作成してもよい。この場合、コークス粒径推定装置1には、他の変数の取得部をさらに備え、推定部14では取得された他の変数の値をさらに推定モデルに入力することで、推定モデルにコークスの粒径の推定値を出力させる。
【0025】
〈第2の実施形態〉
図5は、第2の実施形態に係るコークス粒径推定方法を実施するコークス粒径推定装置1の構成例を示す図である。第2の実施形態に係るコークス粒径推定装置1は、第1の実施形態に係るコークス粒径推定装置1に加え石炭銘柄取得部18を備える。
石炭銘柄取得部18は、コークス原料となる配合炭を構成する石炭の銘柄情報を取得する。石炭の銘柄とは石炭のブランドや産地を示す。石炭にある銘柄を配合したときに、コークスの粒径が変化することがある。石炭の銘柄情報は例えば銘柄ごとの石炭の配合比率である。
【0026】
第2の実施形態において、記憶部12に記憶された推定モデルは、コークス炉の温度、配合炭の収縮率及び石炭の銘柄情報を入力として、コークスの粒径の推定値を出力するモデルである。第2の実施形態に係る推定部14は、推定モデルにコークス炉の温度、配合炭の収縮率及び石炭の銘柄情報を入力することでコークスの粒径の推定値を出力させる。
【0027】
第2の実施形態に係るデータセット取得部20は、コークス炉の温度、配合炭の収縮率及び石炭の銘柄情報を入力サンプルとし、コークスの粒径を出力サンプルとするデータセットを取得する。
【0028】
第2の実施形態に係る推定モデル生成部22は、データセット取得部20により取得されるデータセットを用いて、コークス炉の温度、配合炭の収縮率及び石炭の銘柄情報に基づいてコークスの粒径を推定する推定モデルを生成する。推定モデル生成部22は、例えば以下の手法により推定モデルを生成する。
推定モデル生成部22は、コークス炉の温度、配合炭の収縮率及び石炭の銘柄情報を説明変数とし、コークスの粒径を目的変数として重回帰を行い、石炭銘柄ごとの回帰係数を算出する。その後、推定モデル生成部22は、式(2)で表される重回帰式を生成することで推定モデルを生成する。
【数2】
【0029】
第2の実施形態に係る推定モデル生成部22は、まずコークス炉の温度、配合炭の収縮率及びコークスの粒径に基づいて式(1)を算出した後に、コークス炉の温度、配合炭の収縮率及び石炭の銘柄情報を説明変数とし、コークスの粒径を目的変数として重回帰を行い、石炭銘柄ごとの回帰係数dを算出し、式(1)の右辺に石炭の銘柄情報の項を加えて式(2)で表される重回帰式を生成する。式(2)において、xは石炭銘柄の配合率である。
【0030】
第2の実施形態において、説明変数に石炭の銘柄情報が含まれる。石炭の銘柄が多い場合、説明変数の数が多くなり、過学習させた推定モデルを生成する可能性がある。そのため、推定モデル生成部22は、回帰係数が外れ値をとる銘柄の影響を小さくして、式(2)で表される重回帰式の生成するのがよい。推定モデル生成部22は、例えばラッソ回帰又はリッジ回帰により石炭銘柄ごとの回帰係数を算出するのがよい。ラッソ回帰においては、相関の低い銘柄の回帰係数dを0にすることで、多重共線性を小さくすることができる。また、リッジ回帰においては、回帰係数dの上限値を設定することで、多重共線性を小さくすることができる。
なお、第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、説明変数に他の変数(例えば、粉コークス等の添加量)を加えてもよい。
【0031】
〈実施例〉
以下、実施例について説明する。コークスの平均粒径、コークス炉の温度、配合炭の収縮率及び石炭の銘柄ごとの配合率からなるデータセットを用いた。データセットにおいて、400個の平均粒径のデータが対応する温度、収縮率及び銘柄ごとの配合率と結び付けられている。コークス炉の温度としては、炭化室に設けられた温度計で連続測定しているコークス炉の炭化室の温度の1日平均値を用いた。配合炭の収縮率は特許文献1に開示された石炭の再固化温度における容積と再固化温度以上の所定の温度における容積の変化率を測定することで算出される単味炭の収縮率を配合割合で加重平均して算出した。コークスの平均粒径とは、試料を目の大きさの異なる所定のふるいでふるい分けし、各ふるい目上の残留量及び最小目ふるいの通過量を測定し、試料に対する質量分率(%)によって表される試料の粒度分布により求めた平均粒度のことを指す。この手法はJIS K 2151により規定されているコークス類試験方法の粒度試験方法である。
【0032】
初めに、第1の実施形態の実施例として、コークス炉の温度及び配合炭の収縮率を説明変数とし、コークスの平均粒径を目的変数として重回帰を行い、式(1)に示す重回帰式を生成した。生成した式(1)に示す重回帰式に、テスト用のデータセットのコークス炉の温度及び配合炭の収縮率を代入することで、コークスの平均粒径の推定値を算出した。その後、コークスの平均粒径の推定値と対応するデータセットのコークスの平均粒径とを比較して、推定精度を検証した。
また、第2の実施形態の実施例として、コークス炉の温度、配合炭の収縮率及び石炭の銘柄ごとの配合比率を説明変数とし、コークスの平均粒径を目的変数としてラッソ回帰を行い、回帰係数として石炭銘柄ごとのラッソ回帰係数を算出し、式(1)の重回帰式の右辺に算出した石炭銘柄ごとのラッソ回帰係数と配合比率の積の和を加えることで、最終的に式(2)に示す重回帰式を生成した。
生成した式(2)に示す重回帰式に、テスト用のデータセットのコークス炉の温度、配合炭の収縮率及び石炭の銘柄ごとの配合率を代入することで、コークスの平均粒径の推定値を算出した。その後、コークスの平均粒径の推定値と対応するデータセットのコークスの平均粒径とを比較して、推定精度を検証した。
【0033】
推定精度検証の比較として、配合炭の収縮率のみでコークスの平均粒径を推定する方法(比較手法)を使用した。
【0034】
図6A図6B及び図6Cは、それぞれ比較手法、第1の実施形態の手法及び第2の実施形態の手法による推定値の精度を示す図である。図6Aに示す比較手法による推定値と実測値は、推定値があまり精度よく実測値を推定できていないことを示す。図6B及び図6Cに示す第1及び第2の実施形態の手法による推定値と実測値は、決定係数R2がそれぞれ0.40、0.78と比較手法の0.10よりも精度よく推定値が実測値と近い値となっていることが分かる。
【0035】
図7は、第1の実施形態の手法及び第2の実施形態の手法による推定値の精度を示す図である。各タイミングにおけるコークスの平均粒径、コークス炉の温度、配合炭の収縮率及び石炭の銘柄ごとの配合率を含むテスト用のデータセットを用いて、コークスの平均粒径の実測値と、第1の実施形態の手法及び第2の実施形態の手法による推定値とを比較した。第2の実施形態の手法による推定値は第1の実施形態の手法による推定値と比較して、より実測値と近い値であることが分かる。
【0036】
このようにして第2の実施形態に係る推定モデル生成装置2は、第1の実施形態に係る推定モデル生成装置2により生成される推定モデルの説明変数として石炭の銘柄情報を加える。コークス粒径推定装置1はコークス炉の温度、配合炭の収縮率及び石炭の銘柄情報を推定モデルに入力することで、コークスの粒径を推定する。実験結果が示すように、石炭の銘柄情報を説明変数とすることで、より精度よくコークスの粒径を推定することができる。したがって、第2の実施形態に係る推定手法は第1の実施形態に係る推定手法よりもより精度高くコークスの粒径を推定することができる。
【0037】
〈他の実施形態〉
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【0038】
第1の実施形態においては推定モデルの説明変数としてコークス炉の温度とコークスの配合炭の収縮率とを使用し、第2の実施形態においては推定モデルの説明変数としてコークス炉の温度とコークスの配合炭の収縮率とコークスに配合する石炭の銘柄情報とを使用したが、さらにほかの変数を加えてもよい。例えば、推定モデルの説明変数として粉コークスの添加量を追加して使用してもよい。
【0039】
上述した実施形態におけるコークス粒径推定装置1及び推定モデル生成装置2の一部又は全部をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記録装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものを含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。また、コークス粒径推定装置1及び推定モデル生成装置2の一部または全部は、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 コークス粒径推定装置、10 温度取得部、11 収縮率取得部、12 記憶部、14 推定部、16 推定結果出力部、2 推定モデル生成装置、20 データセット取得部、22 推定モデル生成部、24 推定モデル出力部、
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7