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特開2024-136786タワークレーン制御方法及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136786
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】タワークレーン制御方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/14 20060101AFI20240927BHJP
   B66C 13/48 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
E04G21/14 ESW
B66C13/48 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048030
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山内 博史
(72)【発明者】
【氏名】市村 元
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 信也
【テーマコード(参考)】
2E174
3F204
【Fターム(参考)】
2E174CA13
3F204AA04
3F204BA02
3F204CA01
3F204DA08
3F204DB04
3F204DD09
(57)【要約】
【課題】入力の手間を省き、入力ミスを防止する。
【解決手段】識別情報読み取り工程94において、読み取り装置を用いて、部材仮置き工程93で仮置き場に仮置きされた部材に部材識別部材装着工程92で装着された部材識別部材から部材の識別情報を読み取るとともに、それに前後して、部材仮置き工程93で部材が仮置きされた仮置き場の近傍に仮置き場識別部材設置工程91で設置された仮置き場識別部材から仮置き場の識別情報を読み取る。運搬工程97において、荷取り位置特定工程95で特定した荷取り位置と、目標位置特定工程96で特定した目標位置とに基づいて、タワークレーンを自動運転することにより、荷取り位置から目標位置へ部材を運搬する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部材を仮置きするための複数の仮置き場それぞれについて、前記仮置き場の識別情報を読み取り装置で読み取り可能な仮置き場識別部材を、前記仮置き場の近傍に設置する仮置き場識別部材設置工程と、
部材の識別情報を読み取り装置で読み取り可能な部材識別部材を、前記部材に装着する部材識別部材装着工程と、
前記部材識別部材装着工程で前記部材識別部材を装着した前記部材を、前記複数の仮置き場のうちのいずれかに仮置きする部材仮置き工程と、
読み取り装置を用いて、前記部材仮置き工程で前記仮置き場に仮置きされた前記部材に前記部材識別部材装着工程で装着された前記部材識別部材から前記部材の識別情報を読み取るとともに、それに前後して、前記部材仮置き工程で前記部材が仮置きされた前記仮置き場の近傍に前記仮置き場識別部材設置工程で設置された前記仮置き場識別部材から前記仮置き場の識別情報を読み取る識別情報読み取り工程と、
前記識別情報読み取り工程で読み取った前記仮置き場の識別情報に基づいて、前記部材を荷取りすべき荷取り位置を特定する荷取り位置特定工程と、
前記識別情報読み取り工程で読み取った前記部材の識別情報に基づいて、前記部材を運搬すべき目標位置を特定する目標位置特定工程と、
前記荷取り位置特定工程で特定した前記荷取り位置と、前記目標位置特定工程で特定した前記目標位置とに基づいて、タワークレーンを自動運転することにより、前記荷取り位置から前記目標位置へ前記部材を運搬する運搬工程と
を備える、タワークレーン制御方法。
【請求項2】
前記識別情報読み取り工程において、前記読み取り装置は、最初に読み取った識別情報が部材の識別情報である場合に、次に仮置き場の識別情報を読み取るよう、使用者に促し、逆に、最初に読み取った識別情報が仮置き場の識別情報である場合に、次に部材の識別情報を読み取るよう、使用者に促す、
請求項1のタワークレーン制御方法。
【請求項3】
前記識別情報読み取り工程において、前記読み取り装置は、最初に読み取った識別情報と次に読み取った識別情報とがともに部材の識別情報である場合、及び、最初に読み取った識別情報と次に読み取った識別情報とがともに仮置き場の識別情報である場合のうち少なくともいずれかの場合に、読み取り順序が間違っている旨、使用者に警告する、
請求項1又は2のタワークレーン制御方法。
【請求項4】
前記仮置き場識別部材設置工程において、建物情報モデルデータベースに記憶された建物情報モデルから前記仮置き場の識別情報を取得し、取得した前記仮置き場の識別情報に基づいて前記仮置き場識別部材を作成し、作成した前記仮置き場識別部材を前記仮置き場の近傍に設置し、
前記部材識別部材装着工程において、前記建物情報モデルデータベースに記憶された前記建物情報モデルから前記部材の識別情報を取得し、取得した前記部材の識別情報に基づいて前記部材識別部材を作成し、作成した前記部材識別部材を前記部材に装着し、
前記荷取り位置特定工程において、前記建物情報モデルデータベースに記憶された前記建物情報モデルに基づいて、前記仮置き場の識別情報から前記荷取り位置を特定し、
前記目標位置特定工程において、前記建物情報モデルデータベースに記憶された前記建物情報モデルに基づいて、前記部材の識別情報から前記目標位置を特定し、
前記運搬工程において、前記建物情報モデルデータベースに記憶された前記建物情報モデルに基づいて、前記部材を運搬する経路を決定し、決定した経路にしたがって前記タワークレーンを自動運転する、
請求項1又は2のタワークレーン制御方法。
【請求項5】
前記運搬工程において、前記建物情報モデルデータベースに記憶された前記建物情報モデルに基づいて、進入禁止区域への進入、及び、施工済の建物との衝突を避ける経路を決定する、
請求項4のタワークレーン制御方法。
【請求項6】
複数の仮置き場のうちのいずれかに仮置きされた部材に装着された部材識別部材から前記部材の識別情報を読み取るとともに、前記部材が仮置きされた仮置き場の近傍に設置された仮置き場識別部材から前記仮置き場の識別情報を読み取る読み取り装置と、
前記読み取り装置が読み取った前記仮置き場の識別情報に基づいて、前記部材を荷取りすべき荷取り位置を特定し、前記読み取り装置が読み取った前記部材の識別情報に基づいて、前記部材を運搬すべき目標位置を特定し、特定した荷取り位置及び目標位置に基づいて、前記部材を運搬する経路を決定し、決定した経路にしたがって、タワークレーンを自動運転することにより、前記部材を運搬する自動運転装置と
を備える、タワークレーン制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、タワークレーンを自動制御する方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、建設される建物の本設柱または該建物の周囲に建て込まれた仮設柱間に架け渡される天井走行クレ-ンを用い、前記建物を構成する資材を吊り上げて所定位置に搬送、設置する建物の建設方法を開示している。
特許文献2は、簡単な構成及び操作で、設定された搬送軌道から外れることなく、且つ旋回体の旋回操作とジブの起伏・旋回と吊荷の巻き上げ及び巻き下げを含む操作及び作業を効率よく行えるタワークレーンの自動運転システムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5-287903号公報
【特許文献2】特開2019-112178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の建設方法では、ストックヤードに仮置きされた資材の仮置き位置をキーボードによって入力するので、手間がかかり、入力ミスが発生する可能性がある。
この発明は、例えばこのような課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
タワークレーン制御方法は、部材を仮置きするための複数の仮置き場それぞれについて、前記仮置き場の識別情報を読み取り装置で読み取り可能な仮置き場識別部材を、前記仮置き場の近傍に設置する仮置き場識別部材設置工程と、部材の識別情報を読み取り装置で読み取り可能な部材識別部材を、前記部材に装着する部材識別部材装着工程と、前記部材識別部材装着工程で前記部材識別部材を装着した前記部材を、前記複数の仮置き場のうちのいずれかに仮置きする部材仮置き工程と、読み取り装置を用いて、前記部材仮置き工程で前記仮置き場に仮置きされた前記部材に前記部材識別部材装着工程で装着された前記部材識別部材から前記部材の識別情報を読み取るとともに、それに前後して、前記部材仮置き工程で前記部材が仮置きされた前記仮置き場の近傍に前記仮置き場識別部材設置工程で設置された前記仮置き場識別部材から前記仮置き場の識別情報を読み取る識別情報読み取り工程と、前記識別情報読み取り工程で読み取った前記仮置き場の識別情報に基づいて、前記部材を荷取りすべき荷取り位置を特定する荷取り位置特定工程と、前記識別情報読み取り工程で読み取った前記部材の識別情報に基づいて、前記部材を運搬すべき目標位置を特定する目標位置特定工程と、前記荷取り位置特定工程で特定した前記荷取り位置と、前記目標位置特定工程で特定した前記目標位置とに基づいて、タワークレーンを自動運転することにより、前記荷取り位置から前記目標位置へ前記部材を運搬する運搬工程とを有する。
【発明の効果】
【0006】
このタワークレーン制御方法によれば、入力の手間を省き、入力ミスを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】建設現場の一例を示す平面図。
図2】タワークレーン制御システムの一例を示すブロック図。
図3】タワークレーン制御処理の一例を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1を参照して、タワークレーン制御方法及びシステムの適用対象である建設現場80について説明する。
建設現場80には、建設中の建物81と、建物81に使用される鉄骨などの部材86a~86cを仮置きするための複数の仮置き場84a~84cと、仮置き場84a~84cに仮置きされた部材86a~86cを運搬するタワークレーン82とがある。それぞれの仮置き場84a~84cの近傍には、表示部材85a~85cが設置されている。
【0009】
図2を参照して、タワークレーン制御システム10について説明する。
タワークレーン制御システム10は、例えば、建物情報モデルデータベース11と、識別部材作成装置12と、読み取り装置13と、自動運転装置14とを有する。
【0010】
建物情報モデルデータベース11は、例えばコンピュータであり、建物情報モデル(BIM)を記憶している。建物情報モデルデータベース11が記憶している建物情報モデルには、建物81の設計図、建物81のどこにどの部材を使用するか、建物81の建設がどこまで進んでいるか、建設現場80のどこに仮置き場84a~84cがあるか、建設現場80のどこが進入禁止区域であるか、建設作業のスケジュールや手順などを表す情報が含まれている。
【0011】
識別部材作成装置12は、例えばコンピュータであり、仮置き場識別部材87や部材識別部材88を作成する。
仮置き場識別部材87は、読み取り装置13を用いることにより、それぞれの仮置き場84a~84cを識別する識別情報を読み取ることができる。識別部材作成装置12は、建物情報モデルデータベース11が記憶した建物情報モデルから、建設現場80に設けられる仮置き場84a~84cの識別情報を取得し、取得した識別情報を用いて、仮置き場識別部材87を作成する。識別部材作成装置12が作成した仮置き場識別部材87は、その識別情報によって識別される仮置き場84a~84cの近傍に設置される表示部材85a~85cに装着される。
部材識別部材88は、読み取り装置13を用いることにより、それぞれの部材86a~86cを識別する識別情報を読み取ることができる。識別部材作成装置12は、建物情報モデルデータベース11が記憶した建物情報モデルから、建物81に使用される部材86a~86cの識別情報を取得し、取得した識別情報を用いて、部材識別部材88を作成する。識別部材作成装置12が作成した部材識別部材88は、その識別情報によって識別される部材86a~86cに装着される。
【0012】
仮置き場識別部材87や部材識別部材88は、例えば、シールである。識別部材作成装置12は、例えばプリンターを用いて、仮置き場84a~84cや部材86a~86cの識別情報を表す二次元バーコードなどのバーコードをシールに印刷することにより、仮置き場識別部材87や部材識別部材88を作成する。
あるいは、仮置き場識別部材87や部材識別部材88は、RFIDタグであってもよい。識別部材作成装置12は、例えばRFIDリーダーを用いて、仮置き場84a~84cや部材86a~86cの識別情報をRFIDタグに書き込むことにより、仮置き場識別部材87や部材識別部材88を作成する。
作成した仮置き場識別部材87や部材識別部材88は、例えば表示部材85a~85cや部材86a~86cに貼り付けることにより、表示部材85a~85cや部材86a~86cに装着される。
【0013】
読み取り装置13は、例えばバーコードリーダーやRFIDリーダー、スマートフォンなどであり、仮置き場識別部材87や部材識別部材88から識別情報を読み取る。読み取り装置13は、読み取った識別情報を自動運転装置14に対して送信する。識別情報は、読み取り装置13と自動運転装置14とが直接通信することにより送信されてもよいし、インターネットや公衆通信回線などを介して送信されてもよい。あるいは、読み取り装置13がクラウドストレージにアップロードした識別情報を自動運転装置14がダウンロードして取得するなど、間接的に識別情報を送信してもよい。
【0014】
自動運転装置14は、例えばコンピュータであり、タワークレーン82を自動運転する。自動運転装置14は、読み取り装置13が読み取った識別情報に基づいて、どの仮置き場84a~84cにどの部材86a~86cが仮置きされているかを把握する。また、自動運転装置14は、建物情報モデルデータベース11が記憶した建物情報モデルに基づいて、仮置き場84a~84cに仮置きされた部材86a~86cを運搬する順序や経路を決定する。そして、決定した順序や経路にしたがって、タワークレーン82を自動運転することにより、部材86a~86cを運搬する。なお、タワークレーン82を自動運転する具体的な方式は、例えば特許文献2に記載された方式であってもよいし、他の方式であってもよい。
【0015】
例えば、自動運転装置14は、自動運転情報生成部と、自動運転部とを有してもよい。自動運転情報生成部と自動運転部とは、物理的に異なるコンピュータであってもよい。
自動運転情報生成部は、読み取り装置13から受信した識別情報に基づいて、タワークレーン82を自動運転するための自動運転情報を生成する。
自動運転部は、自動運転情報生成部が生成した自動運転情報に基づいて、タワークレーン82を自動運転する。
例えば、読み取り装置13が読み取った識別情報をクラウドストレージにアップロードすると、自動運転装置14の自動運転情報生成部は、その旨の通知を受け、クラウドストレージから識別情報を取得する。自動運転情報生成部は、例えば、あらかじめクラウドストレージにアップロードされた建物通り芯座標情報及び置き場情報に基づいて、荷取り位置座標情報を取得し、取得した荷取り位置座標情報と仮置き場の識別情報とに基づいて、該当する吊荷の荷取り位置座標を取得する。また、自動運転情報生成部は、あらかじめクラウドストレージにアップロードされたクレーン吊荷通過点座標情報を取得し、取得した通過点座標情報と部材の識別情報とに基づいて、該当する吊荷の通過点情報を取得する。そして、自動運転情報生成部は、取得した荷取り位置座標と通過点情報とに基づいて、自動運転情報を生成し、生成した自動運転情報をクラウドストレージにアップロードする。自動運転装置14の自動運転部は、その旨の通知を受け、クラウドストレージから自動運転情報を取得し、取得した自動運転情報に基づいて、タワークレーン82を自動運転する。
【0016】
図3を参照して、タワークレーン制御処理90について説明する。
タワークレーン制御処理90は、例えば、仮置き場識別部材設置工程91と、部材識別部材装着工程92と、部材仮置き工程93と、識別情報読み取り工程94と、荷取り位置特定工程95と、目標位置特定工程96と、運搬工程97とを有する。
【0017】
最初に、仮置き場識別部材設置工程91において、それぞれの仮置き場84a~84cの近傍に、その仮置き場を識別する識別情報を含む仮置き場識別部材87を設置する。
例えば、まず、建設現場80のなかに複数の仮置き場84a~84cを設定し、設定した仮置き場84a~84cそれぞれの位置を表す情報や識別情報などを建物情報モデルデータベース11が記憶した建物情報モデルに書き込む。
その後、識別部材作成装置12が、建物情報モデルデータベース11が記憶した建物情報モデルから、仮置き場84a~84cの識別情報を取得し、それぞれの仮置き場84a~84cについて、取得した識別情報を含む仮置き場識別部材87を作成する。
次に、作成した仮置き場識別部材87を表示部材85a~85cに装着する。
最後に、仮置き場識別部材87が装着された表示部材85a~85cを仮置き場84a~84cの近傍に設置することにより、仮置き場識別部材87を仮置き場84a~84cの近傍に設置する。
なお、仮置き場識別部材87は、そこに含まれる識別情報によって識別される仮置き場がどこであるかを作業員が目視により把握することができるような表示を含むことが望ましい。これにより、表示部材85a~85cが間違った場所に設置されるのを防ぐことができる。
【0018】
次に、部材識別部材装着工程92において、建物81に使用される部材を識別する識別情報を含む部材識別部材88を、その識別情報によって識別される部材に装着する。
例えば、まず、部材を製造する工場において、建物情報モデルデータベース11が記憶した建物情報モデルに基づいて部材を製造する。あるいは、部材を保管している倉庫において、建物情報モデルデータベース11が記憶した建物情報モデルに基づいて建設現場80に向けて出荷する部材を特定する。
その後、識別部材作成装置12が、建物情報モデルデータベース11が記憶した建物情報モデルから、製造し又は特定した部材を識別する識別情報を取得し、取得した識別情報を含む部材識別部材88を作成する。
最後に、識別部材作成装置12が作成した部材識別部材88を、製造又は特定した部材に装着する。
なお、部材識別部材88の装着作業は、部材を製造し又は特定したその場で実行されることが望ましいので、部材を製造する工場や部材を保管する倉庫それぞれに、識別部材作成装置12を設置することが望ましい。
【0019】
次に、部材仮置き工程93において、部材識別部材88が装着された部材を、仮置き場84a~84cのいずれかに仮置きする。
例えば、まず、工場で製造された部材や倉庫から出荷された部材をトラックなどで運搬して、建設現場80に搬入する。
その後、建設現場80に搬入された部材を、仮置き場に仮置きする。
なお、部材を仮置きするために、タワークレーン82を用いてもよい。また、一つの仮置き場には、一つの部材を仮置きすることが望ましい。一つの仮置き場に複数の部材を仮置きすると、運搬工程97で間違った部材を運搬してしまう可能性があるからである。しかし、そのような間違いを防ぐための対策が講じられる場合は、一つの仮置き場に複数の部材を仮置きしてもよい。
【0020】
次に、識別情報読み取り工程94において、読み取り装置13を使用して、部材仮置き工程93で仮置き場に仮置きした部材に装着された部材識別部材88からその部材の識別情報を読み取るとともに、その部材を仮置きした仮置き場の近傍に設置された仮置き場識別部材87からその仮置き場の識別情報を読み取る。
例えば、まず、部材識別部材88から識別情報を読み取り、続けて、仮置き場識別部材87から識別情報を読み取る。あるいは、逆に、まず、仮置き場識別部材87から識別情報を読み取り、続けて、部材識別部材88を読み取る。
読み取り装置13は、このように、部材の識別情報と仮置き場の識別情報とを連続して読み取ることにより、その2つの識別情報をペアであるものとして認識する。これにより、その部材がどの仮置き場に仮置きされているかがわかる。
【0021】
複数の部材がそれぞれ異なる仮置き場に仮置きされている場合は、上述したように部材の識別情報と仮置き場の識別情報とをペアとして読み取る作業を、それぞれの部材について繰り返す。
また、複数の部材が同じ仮置き場に仮置きされている場合は、最初に運搬すべき部材の識別情報だけを読み取り、それ以外の部材の識別情報は読み取らない。
【0022】
識別情報のフォーマットは、任意の形式でよいが、部材の識別情報であるか仮置き場の識別情報であるかを区別できる形式であることが望ましい。そうすれば、上述したようにどちらの識別情報を先に読み取ったとしても、どちらが部材の識別情報でどちらが仮置き場の識別情報であるかを判別できる。また、間違って部材の識別情報を連続して読み取ったり、仮置き場の識別情報を連続して読み取ったりした場合に、読み取り順序が間違っていることを警告することができる。
【0023】
読み取り装置13は、例えば、文字を表示する表示装置や、音声を出力する音声出力装置を有してもよく、表示装置に表示した文字や音声出力装置から出力した音声により、次に読み取るべき識別情報の種別を使用者に通知してもよい。
例えば、読み取り装置13は、まだ識別情報を読み取っていない状態である場合は、部材又は仮置き場の識別情報を読み取るべき旨を使用者に通知する。
この通知にしたがって、使用者が識別情報を読み取った場合、読み取り装置13は、それが部材の識別情報であるか、仮置き場の識別情報であるかを判定する。
【0024】
読み取った識別情報が部材のものであった場合、読み取り装置13は、次に仮置き場の識別情報を読み取るべき旨を使用者に通知する。この通知にしたがって、使用者が識別情報を読み取った場合、読み取り装置13は、それが部材の識別情報であるか、仮置き場の識別情報であるかを判定し、部材の識別情報であった場合は、読み取り順序が間違っている旨を使用者に通知する。この場合、仮置き場の識別情報を読み取るようもう一度促してもよいし、最初から識別情報の読み取りをやり直すよう促してもよい。
【0025】
逆に、最初に読み取った識別情報が仮置き場のものであった場合、読み取り装置13は、次に部材の識別情報を読み取るべき旨を使用者に通知する。この通知にしたがって、使用者が識別情報を読み取った場合、読み取り装置13は、それが部材の識別情報であるか、仮置き場の識別情報であるかを判定し、仮置き場の識別情報であった場合は、読み取り順序が間違っている旨を使用者に通知する。この場合も同様に、部材の識別情報を読み取るようもう一度促してもよいし、最初から識別情報の読み取りをやり直すよう促してもよい。
【0026】
部材の識別情報と仮置き場の識別情報とをペアとして正しく読み取った場合、読み取り装置13は、その旨を使用者に通知し、読み取りを続けるか否かを使用者に問い合わせる。読み取り装置13は、使用者の回答を入力するためのボタンを有してもよい。読み取りを続ける場合は、最初に戻り、読み取り装置13は、部材又は仮置き場の識別情報を読み取るべき旨を使用者に通知する。
【0027】
このようにして、読み取り装置13は、仮置き場84a~84cに仮置きされた任意の数の部材について、部材の識別情報と仮置き場の識別情報とのペアを読み取る。
【0028】
次に、荷取り位置特定工程95において、自動運転装置14は、識別情報読み取り工程94で読み取った仮置き場の識別情報に基づいて、部材を荷取るべき荷取り位置を特定する。
例えば、自動運転装置14は、建物情報モデルデータベース11が記憶した建物情報モデルから、その識別情報によって識別される仮置き場についての情報を取得し、取得した情報からその仮置き場の位置を特定することにより、荷取り位置を特定する。
識別情報読み取り工程94で読み取った識別情報のペアが複数ある場合は、それぞれのペアに含まれる仮置き場の識別情報に基づいて、荷取り位置を特定する。
【0029】
次に、目標位置特定工程96において、自動運転装置14は、識別情報読み取り工程94で読み取った部材の識別情報に基づいて、その部材を運搬すべき目標位置を特定する。
例えば、自動運転装置14は、建物情報モデルデータベース11が記憶した建物情報モデルから、その識別情報によって識別される部材についての情報を取得し、取得した情報から、その部材が建物81のどこに使用されるものであるかを特定することにより、目標位置を特定する。
識別情報読み取り工程94で読み取った識別情報のペアが複数ある場合は、それぞれのペアに含まれる部材の識別情報に基づいて、目標位置を特定する。
【0030】
次に、運搬工程97において、自動運転装置14は、荷取り位置特定工程95で特定した荷取り位置と、目標位置特定工程96で特定した目標位置とに基づいて、タワークレーン82を自動運転することにより、仮置き場84a~84cに仮置きされた部材86a~86cを荷取り位置から目標位置へ運搬する。
例えば、自動運転装置14は、建物情報モデルデータベース11が記憶した建物情報モデルから、建物81の建設がどこまで進んでいるかを表す情報や、進入禁止区域を表す情報などを取得し、取得した情報に基づいて、既設の建物81や進入禁止区域を回避しつつタワークレーン82のフックを荷取り位置まで移動させる経路を決定し、決定した経路にしたがって、タワークレーン82を自動運転することにより、フックを荷取り位置に移動させる。
次に、自動運転装置14は、仮置き場に仮置きされた部材をフックに吊り下げた状態で既設の建物81や進入禁止区域を回避しつつ荷取り位置から目標位置まで部材を運搬する経路を決定し、荷取り位置に仮置きされた部材を作業者がタワークレーン82のフックに吊り下げたのち、決定した経路にしたがって、タワークレーン82を自動運転することにより、フックに吊り下げられた部材を荷取り位置から目標位置まで運搬する。
【0031】
識別情報読み取り工程94で読み取った識別情報のペアが複数ある場合、自動運転装置14は、部材を運搬する順序を決定し、決定した順序にしたがって、部材を一つずつ運搬する。
例えば、自動運転装置14は、建物情報モデルデータベース11が記憶した建物情報モデルから、建設作業のスケジュールや作業手順を表す情報を取得し、取得した情報に基づいて、部材を運搬する順序を決定する。
あるいは、自動運転装置14は、複数の部材のうちのいずれかの部材を先に目標位置に運搬した状態をシミュレーションして、別の部材を運搬する経路を計算することにより、別の部材を目標位置に運搬できなくなったり、運搬できたとしても遠回りを余儀なくされたりするなど、別の部材の運搬の邪魔にならないかを判定し、別の部材の運搬の邪魔になると判定した部材については、その別の部材よりもあとに運搬するよう、部材を運搬する順序を決定してもよい。
【0032】
部材を運搬する順序は、識別情報読み取り工程94で読み取った識別情報のペアに含まれる部材の識別情報によって識別される部材、すなわち、その時点でいずれかの仮置き場84a~84cに仮置きされている部材に限らず、タワークレーン82が運搬すべきすべての部材に基づいて、決定してもよい。その場合、建設現場80にまだ搬入されていない部材よりもあとに運搬すべきと判定した部材については、運搬工程97で運搬せず、仮置き場に仮置きしたまま残してもよい。
【0033】
また、建設作業のスケジュールや作業手順によっては、その時点で目標位置にまだ運搬できず又は運搬すべきでない部材が仮置き場に仮置きされる可能性もある。自動運転装置14は、建物情報モデルデータベース11が記憶した建物情報モデルに基づいて、仮置き場に仮置きされた部材が目標位置に運搬できる状態であるか否かを判定し、運搬できる状態ではないと判定した部材について、運搬工程97で運搬せず、仮置き場に仮置きしたまま残してもよい。
【0034】
以上のように、仮置き場に仮置きされた部材の識別情報と、その部材が仮置きされた仮置き場の識別情報とを連続して読み取ることによりどの部材がどの仮置き場に仮置きされたかを把握するので、入力の手間を省くことができるとともに、入力ミスを防ぐことができる。
読み取り装置が識別情報の読み取り順序を使用者に通知したり、読み取り順序を間違ったときに警告したりすることにより、識別情報の読み取り作業を容易にすることができる。
部材の識別情報や仮置き場の識別情報などを建設情報モデルで統一的に管理することにより、これらの情報を容易に管理することができる。
建設情報モデルに基づいて、進入禁止区域や既設の建物を回避する経路を決定することにより、進入禁止区域への進入や建物との衝突を防止することができる。
【0035】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例である。本発明は、これに限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって定義される範囲から逸脱することなく様々に修正し、変更し、追加し、又は除去したものを含む。これは、以上の説明から当業者に容易に理解することができる。
【0036】
鉄骨工事において、建設現場に搬入されてきた鉄骨部材の判別のために、鉄骨製作工場にて事前に部材自体に書かれた番号などをもとに、現場の鳶工や鉄骨工が目視で確認し判別する必要がない。
鉄骨部材や現場の鉄骨部材置場にあらかじめ識別番号を割り振った上で、それを二次元バーコード化し、鉄骨部材や鉄骨部材置場に二次元バーコードを貼り付ける。現場では、その二次元バーコードを専用のアプリケーションで読み取ることで、部材や部材置場を識別することができる。
二次元バーコードから読み取った情報は、タワークレーン三次元自動誘導システムに取り込むことで、部材取付位置やタワークレーン自動運転時の部材取付経路を自動で設定することができる。
鉄骨部材にあらかじめ識別番号を割り振っておき、それを二次元バーコード化し、工場にて鉄骨部材に貼り付けを行う。現場では、その鉄骨部材二次元バーコードを専用のアプリケーションで読み取ることで部材を識別することができる。
また、現場の鉄骨部材置場にもあらかじめ識別番号を割り振っておき、それを二次元バーコード化し、置場ごとに設置する。部材の識別後に続けて部材置場二次元バーコードを読み取ることで、鉄骨部材の情報とその置き場情報とを紐づけた情報を得ることができる。
鉄骨部材の識別番号及び鉄骨部材置場の識別番号は、事前にBIM等を使って割り振っておく。
専用のアプリケーションで読み取った情報は、専用のクラウドストレージ上に無線通信によりアップロードする。
アップロードされた情報は、クラウドストレージからタワークレーン三次元自動誘導システムに取り込むことで、部材取付位置やタワークレーン自動運転時の部材取付経路を自動で設定することができる。部材取付経路については、BIMデータ上で指定した「進入禁止区域」や建物の施工済みの部分を回避した経路を自動で生成することができる。
人が目視で行っていた識別作業を自動で行うことで、作業を効率化するとともに、識別間違いを防止できる。
タワークレーン三次元自動誘導システムと連携することで、部材取付位置やタワークレーン自動運転時の部材取付経路を自動で設定することができる。
【符号の説明】
【0037】
10 タワークレーン制御システム、11 建物情報モデルデータベース、12 識別部材作成装置、13 読み取り装置、14 自動運転装置、80 建設現場、81 建物、82 タワークレーン、84a~84c 仮置き場、85a~85c 表示部材、86a~86c 部材、87 仮置き場識別部材、88 部材識別部材、90 タワークレーン制御処理、91 仮置き場識別部材設置工程、92 部材識別部材装着工程、93 部材仮置き工程、94 識別情報読み取り工程、95 荷取り位置特定工程、96 目標位置特定工程、97 運搬工程。
図1
図2
図3