(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136790
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】地域別要介護者支援状況分析システムおよび方法ならびにプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/22 20240101AFI20240927BHJP
【FI】
G06Q50/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048036
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】302064762
【氏名又は名称】株式会社日本総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001830
【氏名又は名称】弁理士法人東京UIT国際特許
(72)【発明者】
【氏名】辻本 まりえ
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA13
(57)【要約】
【課題】特定地域における支援項目の見落としを可視化する。
【解決手段】分析システムは,要介護者の属性,複数の支援項目,複数の支援項目のうち上記要介護者に対して実施された複数の実施支援項目,上記実施支援項目を計画した支援員の居住地域が互いに関連付けられた複数の列データが記憶されたデータベースを含む。要介護者の属性および特定地域が入力され,入力された要介護者属性を有する列データ,入力された要介護者属性を有しかつ入力された特定地域を支援員の居住地域に含む列データのそれぞれを用いて,上記支援項目のそれぞれについて,全国および特定地域(AA県)において支援が実施された割合が算出され,数値によって表示される。全国に比べて特定地域において実施割合が低い支援項目を可視化することができる。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
要介護者の属性,複数の支援項目,複数の支援項目のうち上記要介護者に対して実施されたまたは実施が計画された一または複数の実施支援項目,上記実施支援項目を計画した支援員の少なくとも居住地域が互いに関連付けられた複数のレコードが記憶された支援員/要介護者/支援項目データベース,
要介護者の属性を入力する要介護者属性入力手段,
特定地域を入力する地域入力手段,
上記要介護者属性入力手段によって入力された要介護者属性を有する第1のレコードを上記支援員/要介護者/支援項目データベースから検索する第1の検索手段,
上記要介護者属性入力手段によって入力された要介護者属性を有し,かつ地域入力手段によって入力された特定地域を支援員の居住地域に含む第2のレコードを上記支援員/要介護者/支援項目データベースから検索する第2の検索手段,
第1の検索手段および第2の検索手段によって見つけられた第1のレコードおよび第2のレコードのそれぞれを用いて,上記支援項目のそれぞれについて支援が実施された割合を算出する実績算出手段,ならびに
第1のレコードおよび第2のレコードのそれぞれを用いて上記実績算出手段によって算出された支援項目ごとの実施割合を表示する表示手段を備えている,
地域別要介護者支援状況分析システム。
【請求項2】
上記支援員/要介護者/支援項目データベースに記憶される複数のレコードが上記支援員の経験年数を含み,
上記実績算出手段が,
上記第2のレコードを用いて算出される支援が実施された割合を,上記経験年数ごとまたは所定幅の経験年数ごとに算出するものである,
請求項1に記載の地域別要介護者支援状況分析システム。
【請求項3】
要介護者の属性,複数の支援項目,複数の支援項目のうち上記要介護者に対して実施されたまたは実施が計画された一または複数の実施支援項目,上記実施支援項目を計画した支援員の少なくとも居住地域が互いに関連付けられた複数のレコードが記憶された支援員/要介護者/支援項目データベースを備え,
要介護者属性入力手段から要介護者の属性の入力を受付け,
地域入力手段から特定地域の入力を受付け,
第1の検索手段によって上記入力された要介護者属性を有する第1のレコードを上記支援員/要介護者/支援項目データベースから検索し,
第2の検索手段によって上記入力された要介護者属性を有し,かつ上記入力された特定地域を支援員の居住地域に含む第2のレコードを上記支援員/要介護者/支援項目データベース検索し,
実施割合算出手段によって,検索によって見つけられた第1のレコードおよび第2のレコードのそれぞれを用いて,上記支援項目のそれぞれについて支援が実施された割合を算出し,
表示手段によって第1のレコードおよび第2のレコードのそれぞれを用いて算出された支援項目ごとの実施割合を表示する,
地域別要介護者支援状況分析方法。
【請求項4】
コンピュータに請求項3に記載の地域別要介護者支援状況分析を実行させる,プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,地域別要介護者支援状況分析システムに関する。また,この発明は地域別要介護者支援状況分析方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
介護支援専門員(以下,ケアマネジャーという)は,要介護者(要支援者,一般には高齢者)の相談や心身の状態に応じて要介護者が適切な介護サービス(訪問介護,デイサービスなど)を受けられるようケアプラン(介護サービス等の提供についての計画)の作成や市町村・サービス事業者・施設等との連絡調整を行う。ケアマネジャーの業務は一般には以下の(1)~(6)の工程に組み込まれる。
【0003】
(1)アセスメント
要介護者の置かれている状況の把握,生活上の支障・要望などに関する情報の収集,心身機能の低下の背景・要因の分析,解決すべき生活課題(ニーズ)と可能性の把握が行われる。
(2)ケアプラン原案の作成
総合的な援助方針,短期及び長期の目標(達成時期等)の設定,目標達成のために必要なサービス種別,回数等の設定など,ケアプランの原案作成が行われる。
(3)サービス担当者会議等
ケアプラン原案に関してサービス提供事業者を含めて専門的な視点で検討調整が行われる。また,多職種間で認識が共有され,要介護者への説明・同意を経てケアプランが決定される。
(4)介護サービスの提供
決定したケアプランにしたがって,食事介助,入浴介助等の具体的な介護サービスが要介護者に対してサービス提供事業者によって行われる。
(5)給付管理
介護保険サービスの利用によって発生する介護給付費の管理が行われる。
(6)モニタリング(再アセスメント)
介護サービスの提供によって要介護者が自立した生活が送れているのか,短期目標をクリアできているのか等がチェックされる。
【0004】
上記(6)モニタリング(再アセスメント)を終え,短期目標が達成されていれば,長期目標も踏まえて新たな短期目標が設定されて,新たな短期目標を達成するためのケアプランが新たに作成される。短期目標が達成されていなければ,短期目標が現状と合っているのか,問題点はないのか等が調査され,ケアプランの継続または変更が決定される。上記(2)ケアプラン原案の作成に戻ることになる。
【0005】
(1)アセスメントまたは(6)モニタリングにおいて,ケアマネジャーは,一般に要介護者の自宅等を訪問し,本人やその家族に会い,話を聞き,ケアプランの作成または変更に必要な情報の収集等を行い,ケアプランにしたがって(4)介護サービスの提供が行われる。しかしながら,ケアプランおよびケアプランに基づく介護サービスがケアマネジャーの経験不足,学習不足等に起因して十分でないことがある。
【0006】
特許文献1は,地域包括支援センター,介護事業者,被介護者の家族等,介護に関連するあらゆる団体又は人が介護情報を共有すると共に,この共有された介護情報に基づいて適切な介護サービスを支援する介護支援システム及び介護支援プログラムを提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【0008】
経験豊富なケアマネジャーは,普段の業務において「こんな支援が必要かも?」「もう少しこの辺りの話を詳しく聞いてみよう」といったことを,過去の経験や知識に基づき半ば無意識で考え,実践している。しかしながら,経験の浅いケアマネジャーにとってこれは簡単なことではない。
【0009】
経験の浅いケアマネジャーであっても一定以上の水準のケアマネジメントが提供できるようにするために,経験豊富なケアマネジャーの知見を体系化した「想定される支援内容」を,大項目,中項目,小項目で整理したものが考えられている。たとえば,大項目は「現在の全体像の把握と生活上の将来予測,備え」,「意思決定過程の支援」,「予測に基づく新進機能の維持・向上,フレイルや重度化の予防の支援」など7つの項目が用意され,中項目では,「疾病や心身状態の理解」,「現在の生活の全体像の把握」,「目指す生活を踏まえたリスクの予測」,「緊急時の対応のための備え」,「本人の意思を捉える支援」など24個の項目が用意され,小項目では「疾患管理の理解の支援」,「併存疾患の把握の支援」,「口腔内の異常の早期発見と歯科受診機械の確保」,「転倒・骨折のリスクや経緯の確認」など44個の項目が用意される。「想定される支援内容」が用意されていることによって,支援内容の仮説やその必要性を判断するためのアセスメントの視点がうっかり抜け落ちてしまうことを防ぐことができる。
【0010】
しかしながら,44個の「想定される支援内容」の小項目があらかじめ用意されていることによって支援内容の仮説やその必要性の判断を補助できるとしても,要介護者にとって必要とされる支援内容を選択するのは容易ではない。44個の「想定される支援内容」のなかから対象の要介護者に適する項目を適切に選択しなければならないが,要介護者の属性(状態)は様々であり,要介護者によって選択すべき項目が異なるものとなるのが一般的であるからである。当然に実施される支援項目は,状態(属性)が同じであるとしても要介護者ごとに異なるのが一般的である。
【0011】
要介護者の状態(属性)が同じであれば,その要介護者に対して実施されるべき項目は基本的には同じ(ほぼ同じ)であるのが好ましい。しかしながら,所定の状態(属性)の要介護者に対して実施される支援項目(その種類)が地域(たとえば都道府県)によって異なることがある。ケアマネジャーに対する研修等が地域によって異なることが原因の一つとして考えられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
この発明は,特定地域における支援項目の見落としを可視化することを目的とする。
【0013】
この発明はまた,特定地域における支援項目の見落としを世代別(ケアマネジャーの経験年数ごと)に可視化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明による地域別要介護者支援状況分析システムは,要介護者の属性,複数の支援項目,複数の支援項目のうち上記要介護者に対して実施されたまたは実施が計画された一または複数の実施支援項目,上記実施支援項目を計画した支援員(ケアマネジャー)の少なくとも居住地域が互いに関連付けられた複数のレコードが記憶された支援員/要介護者/支援項目データベース,要介護者の属性を入力する要介護者属性入力手段,特定地域を入力する地域入力手段,上記要介護者属性入力手段によって入力された要介護者属性を有する第1のレコードを上記支援員/要介護者/支援項目データベースから検索する第1の検索手段,上記要介護者属性入力手段によって入力された要介護者属性を有し,かつ地域入力手段によって入力された特定地域を支援員の居住地域に含む第2のレコードを上記支援員/要介護者/支援項目データベースから検索する第2の検索手段,第1の検索手段および第2の検索手段によって見つけられた第1のレコードおよび第2のレコードのそれぞれを用いて,上記支援項目のそれぞれについて支援が実施された割合を算出する実績算出手段,ならびに第1のレコードおよび第2のレコードのそれぞれを用いて上記実績算出手段によって算出された支援項目ごとの実施割合を表示する表示手段を備えている。
【0015】
この発明は,要介護者の属性,複数の支援項目,複数の支援項目のうち上記要介護者に対して実施されたまたは実施が計画された一または複数の実施支援項目,上記実施支援項目を計画した支援員(ケアマネジャー)の少なくとも居住地域が互いに関連付けられた複数のレコードが記憶された支援員/要介護者/支援項目データベースを用意し,要介護者属性入力手段から要介護者の属性の入力を受付け,地域入力手段から特定地域の入力を受付け,第1の検索手段によって上記入力された要介護者属性を有する第1のレコードを上記支援員/要介護者/支援項目データベースから検索し,第2の検索手段によって上記入力された要介護者属性を有し,かつ上記入力された特定地域を支援員(ケアマネジャー)の居住地域に含む第2のレコードを上記支援員/要介護者/支援項目データベース検索し,実施割合算出手段によって,検索によって見つけられた第1のレコードおよび第2のレコードのそれぞれを用いて,上記支援項目のそれぞれについて支援が実施された割合を算出し,表示手段によって,第1のレコードおよび第2のレコードのそれぞれを用いて算出された支援項目ごとの実施割合を表示する地域別要介護者支援状況分析方法も提供する。
【0016】
要介護者の属性は,たとえば要介護者の年齢,性別,要介護度,世帯,居住形態,既往歴等を含む。複数の支援項目,たとえば44種類の支援項目があらかじめ用意される。実施支援項目は,上述の複数の支援項目のうち上記要介護者に対して実施されたまたは実施が計画された一または複数の支援項目である。要介護者の属性,複数の支援項目,および一または複数の実施支援項目に加え,支援員/要介護者/支援項目データベースには,上記実施支援項目を計画した支援員(ケアマネジャー)の居住地域が関連付けられた複数のレコードが記憶されている。居住地域は都道府県であってもよいし都道府県に加えて市区町村まで特定されてもよい。
【0017】
要介護者の属性が入力され,入力された要介護者属性を有するレコード(第1のレコード)が支援員/要介護者/支援項目データベースから検索される。上述のように要介護者の属性は要介護者の年齢,性別,要介護度,世帯等を含み,これらの一または複数を用いて検索条件は作られる。検索条件が少なければ検索によって見つかる第1のレコードは多くなり,検索条件が多ければ検索によって見つけるレコードは少なくなるのは言うまでもない。
【0018】
さらに,特定地域が入力され,入力された特定地域を支援員の居住地域に含むレコードが支援員/要介護者/支援項目データベースから検索される。一般には特定地域は一の住所(たとえば一の都道府県)であるが,複数の住所(たとえば二つの都道府県)であってもよいし,広域の地域(九州,四国など)であってもよい。広域の地域が特定地域として入力された場合に,その広域地域に含まれる都道府県を支援員の居住地域に含むレコードが検索される。
【0019】
この発明によると,入力された要介護者属性を有する第1のレコードを用いて支援項目のそれぞれについて支援が実施された割合が算出され,かつ入力された要介護者属性および入力された特定地域を有する第2のレコードを用いて支援項目のそれぞれについて支援が実施された割合が算出され,これらの2つの実施割合が支援項目ごとに表示される。すなわち,特定地域の限定のない実施割合と,特定地域に限定された実施割合とが,支援項目ごとに表示される。
【0020】
たとえば,ある支援項目についての実施割合が,特定地域の限定のない(いわば全国)実施割合の方が大きく,特定地域に限定された実施割合の方が小さいとすると,その特定地域においてその支援項目について実施が見落とされている可能性がある。特定地域における支援項目の見落としを可視化することができ,たとえばその特定地域における研修システムを見直す等することで,その特定地域における支援実施の割合を全国レベルに合わせることが可能になる。
【0021】
一実施態様では,上記支援員/要介護者/支援項目データベースに記憶される複数のレコードが上記支援員の経験年数を含み,上記実績算出手段が,上記第2のレコードを用いて算出される支援が実施された割合を,上記経験年数ごとまたは所定幅の経験年数ごとに算出するものである。特定世代の支援項目の見落としの傾向を可視化することができる。
【0022】
この発明は,地域別要介護者支援状況分析方法をコンピュータに実行させるプログラムも提供する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】業務支援システムのハードウエア構成を示すブロック図である。
【
図5】地域別要介護者支援状況分析装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】地域別要介護者支援状況分析装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図7】都道府県名および要介護者属性の入力画面を示す。
【
図10】他の実施例の分析システムの処理の流れを示すフローチャートである。
【
図11】他の実施例の分析システムの処理の流れを示すフローチャートである。
【
図12】他の実施例の分析システムの分析画面である。
【実施例0024】
図1は業務支援システムのハードウエア構成を示すブロック図である。
【0025】
業務支援システムは,分析システム10とデータの入力や表示に用いられる端末装置(パーソナル・コンピュータ,タブレット端末,スマートフォンなど)20を含む。分析システム10はたとえば業務支援システムの運営会社の管理下に置かれる。端末装置20はたとえばケアマネジャーによって用いられる。
【0026】
分析システム10と端末装置20とはネットワーク,たとえばインターネットによって相互に接続されている。分析システム10によって作成される画面データが端末装置20にネットワークを通じて送信され,その表示画面に表示される。端末装置20において入力されるデータが分析システム10に送信され,データ分析等が行われる。
【0027】
分析システム10は,地域別要介護者支援状況分析装置11,ケアマネジャーデータベース12,要介護者データベース13,および支援実施状況データベース14を含む。
【0028】
地域別要介護者支援状況分析装置11はコンピュータ装置であり,その全体的な動作を統括的に制御する中央演算処理装置(CPU),ワークエリア,バッファエリアなどを提供するメモリ,入力装置(キーボードなど),表示装置(液晶ディスプレイなど),各種プログラムおよびデータを記憶する記憶装置(ハードディスクなど),およびネットワーク(インターネットなど)を通じてデータを送受信する通信装置が接続されている。記憶装置にコンピュータ装置を地域別要介護者支援状況分析装置11として機能させるためのプログラムをインストールし,これを実行することによって,コンピュータ装置が地域別要介護者支援状況分析装置11として動作する。
【0029】
地域別要介護者支援状況分析装置11に接続される記憶装置には複数のデータベース,ここではケアマネジャーデータベース12,要介護者データベース13および支援実施状況データベース14が構築されている。はじめに,これらのデータベース12~14を説明する。
【0030】
図2はケアマネジャーデータベース12を示している。
【0031】
ケアマネジャーデータベース12には,業務システムを利用可能なケアマージャーのそれぞれにあらかじめ付与される一意の識別番号(ID)が登録される。このケアマネジャーIDに関連付けられて,業務システムを利用するときの認証処理に用いられるパスワード(PSW),ケアマネジャーの氏名,住所,経験年数,所有資格,主任有無(主任の経験があるかどうか),受講済研修の種類,および習熟度(熟練者または初心者)を表すデータがケアマネジャーデータベース12には登録される。
【0032】
【0033】
要介護者データベース13には,要介護者のそれぞれにあらかじめ付与される一意の識別番号(ID)が登録される。この要介護者IDに関連付けられて,要介護者の氏名,年齢,性別,要介護度(要介護度1~5のいずれか),居住形態(居宅(戸建て),居宅(集合住宅),有料老人ホーム,サービス付き高齢者向け住宅,グループホーム,介護施設,その他のいずれか),既往歴(脳血管疾患,心疾患,骨折・転倒,がん,呼吸器疾患,関節の病気,糖尿病,認知症,パーキンソン病,脊髄損傷,視覚・聴覚障害,言語障害のいずれか),日常生活自立度(J1,J2,A1,A2,B1,B2,C1,C2のいずれか),認知機能自立度(該当なし,Ia,Ib,IIa,IIb,IIIa,IIIb,Mのいずれか),意欲の状況(高い,低い,どちらでもないのいずれか),疾患理解・必要性の理解(高い,低い,どちらでもないのいずれか)および主な課題(任意情報)を表すデータが要介護者データベース13には登録される。
【0034】
【0035】
支援実施状況データベース14には複数の列データ(レコード)が登録されており,各列データは「A.ケアマネジャーID」,「B.要介護者ID」および「C.支援項目」を含む。「A.ケアマネジャーID」には上述したケアマネジャーデータベース12(
図2)に登録されるケアマネジャーIDが登録され,これによって要介護者に実施された支援項目のプランを作成したケアマネジャーの氏名,住所,経験年数等が把握される。「B.要介護者ID」には上述した要介護者データベース13(
図3)に登録される要介護者IDが登録され,これによって支援を受けた要介護者の氏名,年齢,性別,要介護度等が把握される。「A.ケアマネジャーID」には同一IDが複数の列データに含まれることがある(あるケアマネジャーが複数の要介護者に対してプランを計画した場合)が,「B.要介護者ID」にはユニークなIDのみが含まれる。
【0036】
「C.支援項目」には,「A.ケアマネジャーID」によって特定されるケアマネジャーがプランを立て「B.要介護者ID」によって特定される要介護者に対して実施された支援項目(そのセット)が登録される。
図4に示す支援実施状況データベース14では丸印(〇)によって44個の支援項目のうち実施された支援項目(実施支援項目)が示されている。実施支援項目は,一般には経験豊富なケアマネジャーの知見を体系化した44個の支援項目の中から選択されかつ実施される。
【0037】
要介護者に対して支援が実施されるたびに支援実施状況データベース14には列データ(レコード)が追加されるまたは更新される。ケアマネジャーがケアプランを立てたときに列データを支援実施状況データベース14に追加してもよく,この場合にはデータベース14には実施が想定される支援項目が登録されることになる。多数のケアマネジャーが多数の要介護者に対して支援を実施することによって
図4に示す支援実施状況データベース14には多くの列データが登録される。
【0038】
図5~
図6は地域別要介護者支援状況分析装置11の処理の流れを示すフローチャートである。
図7は端末装置20の表示画面に表示される入力画面例を,
図8および
図9は端末装置20の表示画面に表示される分析結果を含む画面例を示している。
【0039】
はじめに端末装置20から都道府県名および要介護者の属性が入力される(ステップ31,32)。
【0040】
図7は都道府県名および要介護者属性の入力画面53を示している。
【0041】
都道府県名および要介護者属性入力画面53は,都道府県名入力欄53Aと,年齢,性別,要介護度,世帯,居住形態,既往歴,日常生活自立度,認識能自立度,意欲の状況,疾患理解・必要性の理解(かかわり初期),主な課題※追加のキーワードの11種類の要介護者属性入力欄53Bを含む。
【0042】
都道府県名および要介護者属性入力画面53の「決定」ボタン53Cがクリックされると,入力データが端末装置20から地域別要介護者支援状況分析装置11に送信される。都道府県名入力欄53Aに入力された都道府県名と11個の要介護者属性入力欄52Aに入力される11種類の要介護者の属性(すべてでなくてもよい)が検索キーワードとして用いられて,以下の処理が行われる。
【0043】
図5に戻って,はじめに要介護者属性入力画面53の入力欄53Bに入力された要介護者属性が検索キーワードとして用いられて,一致する要介護者属性を持つ列データ(レコード)が,上述した支援実施状況データベース14(
図4)から読み出される(検索される)(ステップ33)。
【0044】
入力欄53Bに入力される属性の内容によっては,支援実施状況データベース14から読み出される列データが無い(ヒット数0)こともあるし,多数の列データが読み出されることもある。入力欄53Bは11種類のすべてについて属性を入力する必要は必ずしもなく空欄があってもよい。入力欄52Bに入力する属性データの種類を少なくすれば読み出される列データの数は多くなる。また,たとえば年齢については幅を持たせた入力値(たとえば75~80歳など)を受け付けるようにしてもよい。幅を持たせた入力値を受け付けることによっても読み出される列データの数を多くすることができる。
【0045】
支援実施状況データベース14から読み出された列データは上述したようにケアマネジャーIDを含み(
図4),ケアマネジャーIDはケアマネジャーデータベース12(
図2)においてケアマネジャーの住所に関連付けられている。次に,入力された要介護者属性を有するレコードの中から,要介護者属性入力画面53の入力欄53Aに入力された都道府県に住所があるケアマネジャーのケアマネジャーIDを含む列データが抽出される(検索される)(ステップ34)。すなわち,入力された要介護者属性および都道府県名の両方が検索条件(検索キーワード)として用いられて,一致する列データが,上述した支援実施状況データベース14から読み出される(検索される)。
【0046】
支援実施状況データベース14から読み出された列データはケアマネジャーIDを含み(
図4),ケアマネジャーIDはケアマネジャーデータベース12(
図2)においてケアマネジャーの経験年数に関連づけられている。次に,要介護者属性および都道府県名の両方を用いて検索された列データの中から,経験年数が0~2年,3~5年,6~10年,11年~15年,16年~20年,21年以上のそれぞれが抽出される(区分けされる)(ステップ39A~39F)。
【0047】
上述したように,列データは,「A.ケアマネジャーID」にIDが登録されているケアマネジャーがプランを立て,「B.要介護者ID」にIDが登録されている要介護者に対して実施された実施支援項目を含む(
図4で丸印で示されている支援項目)。要介護者属性が検索キーワードとして用いられて読み出された列データ,要介護者および都道府県名の両方が検索キーワードとして用いられて読み出された列データ,さらに要介護者,都道府県名および経験年数が検索キーワードとして用いられて読み出された列データのそれぞれを用いて,44個の支援項目のそれぞれについて「〇」の数がカウントされる(ステップ35,ステップ37,ステップ40)。
【0048】
44個の支援項目のそれぞれについて,「〇の数/読み出された(抽出された)列データ数」×100(%),すなわち支援が実施された割合が算出される(ステップ36,38,41)。これによって,都道府県名および要介護者属性入力画面53の要介護者属性入力欄53Bに入力された要介護者属性を持つ要介護者に対して,44個の支援項目のそれぞれについて,多くのケアマネジャーによってプランが立てられかつ実施された支援項目かどうかが数値によって表される(以下,全国統計という)。また,都道府県名および要介護者属性入力画面53の都道府県名入力欄53Aに入力された都道府県によって対象を絞った場合の同様の数値(以下,全世代統計という),さらにケアマネジャーの経験年数によって対象をさらに絞った場合の同様の数値(以下,世代別統計という)が算出される。
【0049】
たとえば,読み出された(抽出された)複数の列データにおいて,「疾患管理の理解の支援」の支援項目についてすべての列データに〇(要介護者に対して実施された支援項目であること)が登録されていれば,ステップ36,38,41で算出される値は100%になる。読み出された複数の列データのうち半分の列データに〇が登録されていれば,算出される値は50%になる。
【0050】
図8は,ステップ36,38,41で算出された数値のそれぞれを含む分析画面51を示している。
【0051】
分析画面51には,入力された要介護者属性(検索条件)が表示されるとともに,ステップ36,38,41で算出された数値,すなわち特定の(検索条件とされた)要介護者属性を持つ要介護者について,44個の支援項目のそれぞれについて,全国的にはどの程度の割合で実施がされているか(全国統計),特定の都道府県ではどうか(全世代),特定の都道府県の世代別ではどうか,が表示される(
図6のステップ43)。必要に応じて,全国統計と全世代統計との乖離が大きい順に,44個の支援項目を並び変えてもよい(ステップ42)。
【0052】
たとえば「転倒・骨折のリスクや経緯の確認」について,AA県の経験年数「20年以上」のケアマネジャーの支援実績(32%)が全国統計(78%)に比べて低いことが分かる。また,「コミュニケーション状況の把握の支援」については,AA県の全世代統計(46%)が全国統計(78%)より低く,特に,経験年数「3~5年」,「5~10年」のケアマネジャーの支援実績が低いことが分かる。また,「口腔内及び摂食嚥下機能のリスクの予測」については,ケアマネジャーの経験年数に関わらずAA県の全世代統計(50%)が全国統計(80%)より低いことが分かる。全国統計に比べて全世代統計が著しく低い支援項目があれば,その支援項目は特定地域(入力された都道府県)において多くのケアマネジャーがプランニングにおいてその支援項目を見落としており,その結果として支援が実施されていない可能性が高い。特定地域(都道府県)における支援項目の見落としを可視化することができる。
【0053】
また,世代別の統計も算出されるので,支援項目を見落としている世代も可視化される。研修システムの見直し等の施策検討に役立てることができる。
【0054】
図9に示すように,全国統計と全世代統計の乖離が大きい5つの支援項目のみを分析画面52に表示してもよい。
【0055】
分析画面51,52には分析結果を表示してもよい。
【0056】
全国統計との乖離があった地域が,(A)都道府県であるか,(B)市区町村であるか,によって分析結果の内容を異ならせてもよい。具体的には,全国統計との乖離があった地域が(A)都道府県であるとき,特定の支援項目について所定以上の乖離があった場合に「当該地域の支援項目について,研修項目に漏れがあった可能性がある。」,特定の年次のケアマネジャーに所定以上の乖離があった場合に「当該特定の支援項目について,当該特定年次のケアマネジャーへの研修項目に漏れがあった可能性がある。」と表示してもよい。全国統計との乖離があった地域が(B)市区町村であるとき,特定の支援項目について所定以上の乖離があった場合に「当該特定の支援項目について,サービス提供者が不在のためサービスを提供できない可能性がある。」と表示してもよい。
【0057】
図10~
図12は他の実施例を示すもので,
図10および
図11は分析システム10の処理の流れを示すフローチャートである。
図12は他の実施例における分析画面54を示している。
【0058】
図10,
図11を参照して,支援実施状況データベース14に登録されている列データに含まれる要介護者IDに関連付けられている年齢,性別,要介護度,世帯,居住形態,既往歴,日常生活自立度および認知機能自立度の要介護者属性のすべての組み合わせについて(ステップ61~68),上述と同様に44個の支援項目のそれぞれについて全国統計と都道府県統計を算出し(ステップ70,ステップ71~73),30%以上の乖離のある支援項目を,その要介護者属性の組み合わせとともに記録する処理が行われる(ステップ74)。年齢については,たとえば5歳刻みの幅を持たせてもよい。
【0059】
図12を参照して,分析画面54には,全国統計と特定地域(都道府県)の実施割合の差が大きい要介護者属性および支援項目の組が表示される。また,サマリーも表示される。サマリーは従来技術である多変量解析(https://gmo-research.jp/research-column/multivariate-analysis)あるいはクラスター分析により、傾向(たとえば,当該県では、男性80~85歳で独居老人への支援について全国統計との差が大きいなど)が導くことができる。支援項目は集計するだけで傾向(口腔内の異常の早期発見と歯科受診機会の確保の支援が少ないなど)を導くことができる。