(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136791
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】印刷装置および印刷方法
(51)【国際特許分類】
B41J 11/42 20060101AFI20240927BHJP
B41J 11/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B41J11/42
B41J11/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048037
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(72)【発明者】
【氏名】木村 哲
【テーマコード(参考)】
2C058
【Fターム(参考)】
2C058AB15
2C058AC06
2C058AE04
2C058AF06
2C058AF31
2C058AF51
2C058GA02
2C058GA14
2C058GA17
2C058GE03
2C058GE04
2C058GE16
(57)【要約】
【課題】簡単な制御で印字開始位置を正確に調整することができる印刷装置および印刷方法を提供する。
【解決手段】印刷装置100は、印刷部120と、搬送部130と、押圧部140と、搬送制御部113と、を備える。印刷部120は、印刷媒体に印刷対象を印刷する印刷ヘッドを有する。搬送部130は、印刷ヘッドに印刷媒体を押圧させた状態で、モータにより回転して印刷媒体を搬送するローラを有する。押圧部140は、ローラを印刷ヘッドから離間させ、またはローラに印刷媒体を印刷ヘッドに押圧させる。搬送制御部113は、ローラを印刷ヘッドから離間させるように押圧部140を制御し、モータを少なくとも所定の回転数回転させることで、ローラを印刷ヘッドから離間した状態でモータを少なくとも基準回転角度回転させるように搬送部130を制御し、その後、ローラに印刷媒体を印刷ヘッドへ押圧させるように押圧部140を制御する。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体に印刷対象を印刷する印刷ヘッドを有する印刷部と、
前記印刷ヘッドに前記印刷媒体を押圧させた状態で、モータにより回転して前記印刷媒体を搬送するローラを有する搬送部と、
前記ローラを前記印刷ヘッドから離間させ、または前記ローラに前記印刷媒体を前記印刷ヘッドへ押圧させる押圧部と、
前記ローラを前記印刷ヘッドから離間させるように前記押圧部を制御し、前記モータを少なくとも所定の回転数回転させることで、前記ローラを前記印刷ヘッドから離間した状態で前記モータを少なくとも基準回転角度回転させるように前記搬送部を制御し、その後、前記ローラに前記印刷媒体を前記印刷ヘッドへ押圧させるように前記押圧部を制御する搬送制御部と、
を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記搬送制御部は、前記印刷媒体を送出方向に搬送する場合に、第1の動作として、前記ローラを前記印刷ヘッドから離間させるように前記押圧部を制御し、前記搬送部を制御して、前記モータを正回転させることで、前記ローラを送出方向に回転させるように前記搬送部を制御し、その後、前記ローラに前記印刷媒体を前記印刷ヘッドに押圧させるように前記押圧部を制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記印刷部は、前記第1の動作を行った後に、前記ローラによって搬送される前記印刷媒体に前記印刷対象を印刷する、
ことを特徴とする請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記搬送制御部は、前記印刷媒体を引戻方向に搬送する場合に、第2の動作として、前記押圧部を制御して、前記ローラを前記印刷ヘッドから離間させるように前記押圧部を制御し、前記モータを逆回転させることで、前記ローラを引戻方向に回転させるように前記搬送部を制御し、その後、前記押圧部を制御して前記ローラに前記印刷媒体を前記印刷ヘッドに押圧させるように前記押圧部を制御する、
ことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記印刷媒体を切断する切断部を備え、
前記搬送制御部は、前記切断部によって前記印刷媒体が切断された後に、前記第2の動作を行い、更に前記モータを逆回転させることで、前記印刷媒体を前記ローラによって引戻方向に搬送させる、
ことを特徴とする請求項4に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記モータは、1つのギアまたは複数のギアを介して、前記ローラに動力を伝達する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記基準回転角度は、1つの前記ギアまたは複数の前記ギアのバックラッシュによるガタ付きを無くす回転角度である、
ことを特徴とする請求項6に記載の印刷装置。
【請求項8】
印刷媒体に印刷対象を印刷する印刷ヘッドを有する印刷部と、
前記印刷ヘッドに前記印刷媒体を押圧させた状態で、モータにより回転して前記印刷媒体を搬送するローラを有する搬送部と、
前記ローラを前記印刷ヘッドから離間させ、または前記ローラに前記印刷媒体を前記印刷ヘッドに押圧させる押圧部と、
を備える印刷装置を用いて印刷する方法であり、
前記ローラを前記印刷ヘッドから離間させ、前記モータを少なくとも所定の回転数回転させることで、前記ローラを前記印刷ヘッドから離間した状態で前記モータを基準回転角度回転させ、その後、前記ローラに前記印刷媒体を前記印刷ヘッドに押圧させる、
ことを特徴とする印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置および印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
テープ状の印刷媒体に文字、記号、ロゴ、キャラクタ、マーク等の印刷対象を印刷する印刷装置が特許文献1に開示されている。この印刷装置は、サーマルヘッドを備え、テープ状の印刷媒体を搬送しながらインクリボンに塗布されたインクを熱によって印刷媒体に転写することで印刷対象が印刷される。
【0003】
また、この印刷装置では、サーマルヘッドとプラテンローラとでインクリボンとテープを圧接挟持して、プラテンローラを回転駆動させることでインクリボンとテープを搬送している。プラテンローラとプラテンローラの駆動用モータとの間に設けられたテープ搬送機構には、例えば、ギア駆動の場合の各ギア間のバックラッシュによるガタつきがある。このため、印字テープに対する印字開始位置を厳密に制御することが容易でないという問題がある。
【0004】
印字開始位置を制御するため、特許文献1に開示された印刷装置は、プラテンローラを正回転させることにより用紙の所定部分を切断部の所定位置に配置させ、切断動作の後に、歯車輪列のバックラッシュを取り除くのに必要な最小ステップ数であるステップ数だけステッピングモータを正回転させる制御を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2012/066837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された印刷装置では、バックラッシュを取り除くのに必要な最小ステップ数は、固定値である。このため、バックラッシュもその時々のプリンタの状態または個体差によるバラツキがあるので、固定値である最小ステップ数だけ正回転すると、回転が足りない場合または多すぎることで、印字開始位置がずれる虞があり、印刷開始位置を容易に調整することが困難である。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、簡単な制御で印字開始位置を正確に調整することができる印刷装置および印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的を達成するため、本発明に係る印刷装置の一様態は、
印刷媒体に印刷対象を印刷する印刷ヘッドを有する印刷部と、
前記印刷ヘッドに前記印刷媒体を押圧させた状態で、モータにより回転して前記印刷媒体を搬送するローラを有する搬送部と、
前記ローラを前記印刷ヘッドから離間させ、または前記ローラに前記印刷媒体を前記印刷ヘッドに押圧させる押圧部と、
前記ローラを前記印刷ヘッドから離間させるように前記押圧部を制御し、前記モータを少なくとも所定の回転数回転させることで、前記ローラを前記印刷ヘッドから離間した状態で前記モータを少なくとも基準回転角度回転させるように前記搬送部を制御し、その後、前記ローラに前記印刷媒体を前記印刷ヘッドへ押圧させるように前記押圧部を制御する搬送制御部と、
を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の目的を達成するため、本発明に係る印刷方法の一様態は、
印刷媒体に印刷対象を印刷する印刷ヘッドを有する印刷部と、
前記印刷ヘッドに前記印刷媒体を押圧させた状態で、モータにより回転して前記印刷媒体を搬送するローラを有する搬送部と、
前記ローラを前記印刷ヘッドから離間させ、または前記ローラに前記印刷媒体を前記印刷ヘッドに押圧させる押圧部と、
を備える印刷装置を用いて印刷する方法であり、
前記ローラを前記印刷ヘッドから離間させ、前記モータを少なくとも所定の回転数回転させることで、前記ローラを前記印刷ヘッドから離間した状態で前記モータを基準回転角度回転させ、その後、前記ローラに前記印刷媒体を前記印刷ヘッドに押圧させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、簡単な制御で印字開始位置を正確に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態に係る印刷システムを示す図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る印刷装置を示す図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る印刷装置を示す正面図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る印刷装置の駆動機構を示す図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る印刷装置の駆動機構の動きを示す図である(その1)。
【
図6】本発明の実施の形態に係る印刷装置の駆動機構の動きを示す図である(その2)。
【
図7】本発明の実施の形態に係る印刷ヘッドを示す断面図である。
【
図8】本発明の第1の実施の形態に係る印刷装置のカムの動きを示す図である(その1)。
【
図9】本発明の第1の実施の形態に係る印刷装置のカムの動きを示す図である(その2)。
【
図10】本発明の実施の形態に係る印刷装置の構成を示すブロック図である。
【
図11】本発明の実施の形態に係る端末装置の構成を示すブロック図である。
【
図12】本発明の実施の形態に係る印刷装置が実行する印刷処理を示すフローチャートである。
【
図13】本発明の実施の形態に係る印刷装置が実行する印刷準備処理を示すフローチャートである。
【
図14】変形例に係る印刷装置が実行する印刷処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態に係る印刷システムおよび印刷装置を、図面を参照しながら説明する。
【0013】
本実施の形態に係る印刷システム1は、
図1に示すように、テープ状の印刷媒体Mに文字、記号、ロゴ、キャラクタ、マーク等の印刷対象Sを印刷するものである。印刷システム1は、印刷装置100と、端末装置200と、を備える。印刷装置100は、リボンに塗布されたインクを熱によって印刷媒体Mに転写する熱転写型プリンタである。端末装置200は、ディスプレイ230を有し、例えばスマートホン、タブレットPC(Personal Computer)から構成される。印刷装置100と端末装置200とは、無線回線を通じて相互に通信可能に構成され、端末装置200は、印刷装置100に印刷対象Sを示すデータを送信する。
【0014】
理解を容易にするために、印刷媒体Mが搬送される方向をx方向、印刷媒体Mに垂直な方向をy方向、x方向およびy方向に垂直な方向をz方向とする直交座標系を設定し、適宜参照する。
【0015】
印刷装置100は、
図2に示すように、カートリッジ格納部101と、印刷部120と、搬送部130と、押圧部140と、切断部150と、を備える。
【0016】
カートリッジ格納部101は、
図3に示すように、テープ状の印刷媒体Mとインクが塗布されたリボンがロール状に巻かれて格納されたカートリッジ300を格納する部分である。印刷媒体Mは、例えば、粘着剤が塗布された紙または樹脂と、剥離紙と、を有する。
【0017】
印刷部120は、印刷ヘッド121と、下ガイド122と、を有し、テープ状の印刷媒体Mに印刷対象Sを印刷するものである。印刷ヘッド121は、剛性を高めるため、アルミダイカストなどの金属製の固定部123に取り付けられている。印刷ヘッド121は、アルミナセラミックなどの基板上に複数の発熱抵抗体をライン状に配置したサーマルプリントヘッドを含む。印刷ヘッド121は、印刷対象Sに対応した通電により、複数の発熱抵抗体を選択的に発熱させ、リボンに塗布されたインクを熱によって印刷媒体Mに転写することで印刷を行う。また、下ガイド122は、熱伝導率の高い金属で作成された放熱板であり、印刷ヘッド121と切断部150との間であり、且つ、印刷ヘッド121の近傍に配置されている。これにより、下ガイド122は、印刷ヘッド121と印刷媒体Mおよびリボンをガイドし、印刷ヘッド121で加熱された印刷媒体Mおよびリボンを冷却する。
【0018】
搬送部130は、ローラ131と、ローラ支持部132と、テープガイド133と、
図2に示す巻取軸134と、を有し、印刷媒体Mを送出方向(x方向)および引戻方向(-x方向)に搬送するものである。また、搬送部130は、印刷媒体Mと共にインクが塗布されたリボンを搬送する。
【0019】
ローラ131は、円柱状の金属製の芯金と芯金の周りに形成された樹脂とを有するプラテンローラを含み、印刷ヘッド121に印刷媒体Mを押圧する。ローラ131は、
図4に示すように、軸21を中心に矢印R1の方向に回転することにより、印刷媒体Mおよびリボンを送出方向に搬送する。一方、ローラ131は、矢印R2の方向に回転することにより、印刷媒体Mおよびリボンを引戻方向に搬送する。
【0020】
巻取軸134は、軸部22を中心に矢印R3の方向あるいは矢印R4の方向に回転可能である。ローラ131が、印刷媒体Mおよびリボンを送出方向に搬送する場合、巻取軸134は、矢印R3の方向に回転し、リボンを巻き取るリボン巻取りコアに巻き取られていく。一方、ローラ131が矢印R2の方向に回転することにより、印刷媒体Mおよびリボンが引戻方向に搬送される場合、リボンが巻き取られているリボン巻取りコアから引き出されることで、巻取軸134は矢印R4の方向に回転する。
【0021】
ローラ131および巻取軸134は、ベース部11に取り付けられた駆動源としてのモータ23からの動力が伝達されて駆動される。モータ23は、例えばサーボモータまたはステッピングモータであり、ロータ、ステータ、エンコーダ等を有している。モータ23の回転運動は、出力軸に取り付けられた出力ギアG1から出力される。なお、
図4~
図6において、各ギアの歯形は、図の理解を容易にするため適宜省略している。出力ギアG1から出力された回転運動は、ギアG2、ギアG3、ギアG4、ギアG5、ギアG6、ギアG7、およびギアG8に伝達されていき、これによりギアG8に接続されたローラ131が回転する。このように、モータ23からローラ131まで動力を伝達する出力ギアG1およびギアG2~G8を第1駆動機構という。また、出力ギアG1から出力された回転運動は、ギアG2、ギアG3、ギアG9、ギアG10、ギアG11、およびギアG12に伝達されていき、ギアG12にトルクリミッタを介して接続された巻取軸134が回転する。このように、モータ23から巻取軸134まで動力を伝達する出力ギアG1、ギアG2~G3およびギアG9~G12を第2駆動機構という。ここで、第2駆動機構の複数のギアのうち、ギアG10は一方向の回転のみを伝達する伝達部としてのワンウェイギアである。
【0022】
巻取軸134は、ギアG12の回転運動と巻取軸134の回転運動とに差が生じた場合に過度なトルクが発生するのを防止するためのトルクリミッタ24を備える。トルクリミッタ24に閾値以上のトルクが作用すると、巻取軸134がギアG12に対してスリップし、過度なトルクが発生するのを防止する。ここでいうスリップとは、巻取軸134がギアG12に対して滑る又は空回りするといった状態である。なお、トルクリミッタ24としては、フェルト式または摩擦板を介在させたものなど公知のトルクリミッタのなかから採用することができる。
【0023】
モータ23が正回転すると、
図5に示すように、印刷媒体MおよびリボンRを送出方向に搬送する。このとき、出力ギアG1は時計回りに回転し、この回転運動が各ギアに伝達される。このとき、ワンウェイギアであるギアG10の回転運動は、ギアG11に伝達される。また、ローラ131が接続されたギアG8は、反時計回りに回転する。一方、巻取軸134が接続されたギアG12は、時計回りに回転する。これに伴い巻取軸134は、軸部22を中心に時計回りに回転する。これにより、リボンRは、リボン巻取りコアに巻き取られていく。
【0024】
なお、モータ23により回転するギアG12の回転速度は、ローラ131により搬送されるリボンRの搬送速度よりも速い。例えば、リボンRを搬送するローラ131の回転速度に対して、ギアG12の回転速度は1.1倍以上2.0倍以下にされ、本実施の形態では例えば1.129倍に設定されている。これは印刷ヘッド121とローラ131との間にリボンが挟まれ、通過した直後に、リボンに対して適切な張力がされないと、リボンがたるんでしまうという現象を解消するためのものである。この回転速度は、第1駆動機構及び第2駆動機構の歯車比、ローラ131の径、あるいはリボン巻取りコアの径などの種々の要因が考慮され決定される。
【0025】
印刷ヘッド121とローラ131との間に挟まれたリボンRを、ローラ131の搬送速度以上で引き出すことはできないが、速く回転するギアG12と、ゆっくり回転する軸部22との間に作用するトルクは、トルクリミッタ24がスリップすることで抑制されている。このようにすることで、リボンRに適切な張力を作用させ続けることができ、送出方向に搬送する時にリボンRにたるみが発生するのを防止することができる。
【0026】
これに対して、
図6に示すように、モータ23が逆回転すると、出力ギアG1は反時計回りに回転し、この回転運動を各ギアに伝達させる。このとき、ワンウェイギアであるギアG10からギアG11およびギアG11に噛み合ったギアG12にモータ23の逆回転の運動が伝達されない。一方、ローラ131が接続されたギアG8は、矢印R2で示す時計回りに回転する。
【0027】
このギアG8の回転に伴い、ローラ131は、印刷媒体MおよびリボンRを印刷ヘッド121に押圧しながら軸21を中心に矢印R2で示す時計回りに回転する。これにより、印刷媒体MおよびリボンRは、ローラ131と印刷ヘッド121とに挟持されながら引戻方向に搬送される。これにより、ローラ131により既に送り出された印刷媒体Mの部分は、矢印Y4の方向に引き戻される。一方、リボンRは、矢印Y6で示すように、巻き取られていた部分が巻取軸134から引き出される。このようにして、印刷媒体MとリボンRは同等の速度でローラ131により引戻方向に搬送される。
【0028】
図3に示すように、ローラ支持部132は、アーム132aと、ローラ軸支部132bと、を備える。アーム132aは、一端部132cが回転軸132dに回転可能に軸支され、他端部132eにローラ軸支部132bが取り付けられている。アーム132aが回転軸132dを中心に回転することで、ローラ軸支部132bがy方向または-y方向に移動する。ローラ軸支部132bは、ローラ131を回転可能に軸支する。
【0029】
テープガイド133は、
図7に示すように、固定部133aと、弯曲部133bと、先端部133cと、を有する。テープガイド133は、ローラ131より送出方向(ローラ131と切断部150との間)、且つ、ローラ131の近傍である位置に配置され、印刷媒体Mが撓むことを抑制するものである。固定部133aは、ローラ131に対して固定された位置にテープガイド133を配置するために、ローラ軸支部132bに固定されている。弯曲部133bは、一端部が固定部133aに固定され、ローラ131の回転を妨げないように弯曲した形状を有する。先端部133cは、弯曲部133bの他端部に配置され、印刷媒体Mが撓むと接触する位置に配置される。
【0030】
押圧部140は、
図3に示すように、カム141と、カム141により移動するカムフォロワ142と、カムフォロワ142とローラ支持部132との間に配置された弾性体143と、を備える。押圧部140は、ローラ131で印刷媒体Mを印刷ヘッド121に押圧する装置であり、ローラ131で印刷媒体Mを印刷ヘッド121に第1の圧力または第1の圧力より小さい第2の圧力で押圧する。具体的には、印刷媒体Mを送出方向に搬送する場合、ローラ131で印刷媒体Mを印刷ヘッド121に第1の圧力で押圧する。第1の圧力は、例えば、500gf/cmである。これにより、印刷媒体Mに印刷対象Sが鮮明に印刷される。印刷媒体Mを引戻方向に搬送する場合、ローラ131で印刷媒体Mを印刷ヘッド121に第2の圧力で押圧する。第2の圧力は、例えば、360gf/cmである。これにより、搬送時の印刷媒体Mおよびリボン310の負荷を抑え、かつ安定的な搬送を可能とする。印刷媒体Mおよびリボン310への負荷を軽減させることで、リボンしわ、およびリボン切れの防止が可能となる。なお、第1の圧力および第2の圧力はローラの軸方向の長さあたりの力で表される。また、カートリッジ300を交換する際には、押圧部140は、ローラ131を印刷ヘッド121から離間させる。
【0031】
カム141は、y軸方向に延びる回転軸を中心にステッピングモータ等により回転し、第1のカム面141aと、第2のカム面141bと、第3のカム面141cと、を有する。第1のカム面141aと印刷部120との間隔D1は、第2のカム面141bと印刷部120との間隔D2より小さい。第2のカム面141bと印刷部120との間隔D2は、第3のカム面141cと印刷部120との間隔D3より小さい。また、第3のカム面141cは、嵌合部141dを有する。ここでは、カム141がy軸方向に延びる回転軸を中心に回転する例について説明するが、カム141の回転軸の方向やカム141の形状はここで説明する以外のものであってもよい。
【0032】
カムフォロワ142は、接触部142aと、嵌合部141dに嵌合する被嵌合部142bとを有し、カム141により押圧され、y方向または-y方向に移動する。カムフォロワ142の接触部142aが、第1のカム面141aに接触している場合、ローラ軸支部132bが弾性体143に付勢され、ローラ131は印刷媒体Mを印刷ヘッド121に第1の圧力で押圧する。
図8に示すように、カムフォロワ142の接触部142aが、第2のカム面141bに接触している場合、ローラ支持部132が弾性体143に付勢され、ローラ131は印刷媒体Mを印刷ヘッド121に第2の圧力で押圧する。
図9に示すように、カムフォロワ142の接触部142aが、第3のカム面141cに接触している場合、被嵌合部142bは嵌合部141dに嵌合し、ローラ131は印刷ヘッド121から離間する。
【0033】
図3に示すように、弾性体143は、カムフォロワ142とローラ軸支部132bの間に配置され、ローラ支持部132を付勢するものであり、例えば、板バネまたはコイルバネを含む。
【0034】
切断部150は、印刷部120により印刷対象Sが印刷されたテープ状の印刷媒体Mを切断する。切断部150は、切断刃と切断刃を駆動する駆動部とを有する。印刷ヘッド121から切断部150までの距離は、例えば、20mmである。
【0035】
印刷装置100は、電気的構成として、
図10に示すように、上述した印刷部120と、搬送部130と、押圧部140と、切断部150と、に加えて、制御部110と、通信部160と、ROM(Read Only Memory)170と、RAM(Random Access Memory)180と、を備える。
【0036】
制御部110は、CPU(Central Processing Unit)等から構成される。制御部110は、ROM170に記憶したプログラムを実行することにより、印刷対象取得部111と、印刷ヘッド制御部112と、搬送制御部113として機能する。
【0037】
印刷対象取得部111は、通信部160を介して、端末装置200から送信された印刷対象のデータを取得し、RAM180に記憶させる。
【0038】
印刷ヘッド制御部112は、ローラ131で印刷媒体Mを印刷ヘッド121に第1の圧力で押圧された状態で、搬送部130が印刷媒体Mを送出方向に搬送した搬送距離に基づいて、印刷部120を制御して印刷媒体Mに印刷対象Sを印刷させる。具体的には、印刷ヘッド制御部112は、印刷媒体Mが副走査方向に1ドットピッチに相当する距離を搬送される度、RAM180に記憶された印刷対象Sの画像を、主走査方向にライン状に並んだ1画素のラインである1ドットラインを印刷ヘッド121に印刷させる。
【0039】
搬送制御部113は、搬送部130、押圧部140および切断部150を制御し、送出方向および引戻方向に印刷媒体Mを搬送し、印刷された印刷媒体Mを切断する。具体的には、搬送制御部113は、第1の動作として、ローラ131を印刷ヘッド121から離間させるように押圧部140を制御し、ローラ131を印刷ヘッド121から離間し、モータ23を少なくとも所定の回転数回転させることで、モータ23を予め定めた基準回転角度で正回転する。例えば、モータ23が48ステップで1回転するステッピングモータである場合、バックラッシュによるガタ付きを無くすために、モータ23を少なくとも61ステップ(1.25回転)以上回転させる必要があり、また、印刷処理に必要な時間を長くしすぎないために、好ましくは、100ステップ以上200ステップ以下回転させる。基準回転角度は、出力ギアG1、ギアG2~G8を含む第1駆動機構のギアのバックラッシュによるガタ付きを無くすのに十分な回転角度である。基準回転角度を示すデータは、予めROM170に記憶されている。モータ23が基準回転角度で正回転することで、第1駆動機構のギアのバックラッシュによるガタ付きを無くすことができる。この後、搬送制御部113は、押圧部140を制御し、ローラ131で印刷媒体Mを印刷ヘッド121に第1の圧力で押圧する。また、搬送制御部113は、印刷媒体Mに印刷対象Sを印刷した後、搬送部130を制御し、印刷媒体Mの切断予定位置が切断部150の切断刃の位置に配置するまで印刷媒体Mを送出方向に搬送し、切断部150を制御し、印刷媒体Mの切断予定位置を切断する。搬送制御部113は、第2の動作として、ローラ131を印刷ヘッド121から離間させるように押圧部140を制御し、ローラ131を印刷ヘッド121から離間し、モータ23を少なくとも所定の回転数回転させることで、モータ23を予め定めた基準回転角度で逆回転する。逆回転する場合の基準回転角度は、正回転する場合の基準回転角度と同じであってもよく、異なってもよい。これにより、逆回転した場合においても、第1駆動機構のギアのバックラッシュによるガタ付きを無くすことができる。これにより、印刷媒体Mの引戻量を容易に調整することができる。この後、搬送制御部113は、押圧部140を制御し、ローラ131で印刷媒体Mを印刷ヘッド121に第2の圧力で押圧し、搬送部130を制御し、印刷媒体Mを引戻方向に搬送する。第1駆動機構のギアのバックラッシュによるガタ付きを無くしているため、印刷媒体Mの先端部を正確に位置決めすることが可能である。搬送部130は、印刷媒体Mを、
図7に示すように、テープガイド133と切断部150との間であり、且つ、テープガイド133の近傍に印刷予定の印刷媒体Mの先端部が配置される位置に正確に引戻方向に搬送することができる。
【0040】
印刷部120は、上述したように、印刷ヘッド制御部112の制御に基づいて、印刷ヘッド121に設けられた発熱抵抗体を印刷データに応じて選択的に発熱させる。発熱した発熱抵抗体は、リボン310に塗布されたインクを印刷媒体Mに転写し、印刷ヘッド121の主走査方向に向けてライン状に並んだ画素(1ドットライン)が印刷される。
【0041】
搬送部130は、上述したように、搬送制御部113の制御に基づいて、印刷ヘッド121に印刷媒体Mを押圧させた状態で、送出方向および引戻方向に印刷媒体を搬送する。また、搬送制御部113の制御に基づいて、搬送部130は、巻取軸134を回転して、印刷媒体Mと共にインクが塗布されたリボン310も搬送される。
【0042】
押圧部140は、上述したように、搬送制御部113の制御に基づいて、カム141を回転し、印刷媒体Mを送出方向に搬送する場合、ローラ131で印刷媒体Mを印刷ヘッド121に第1の圧力で押圧し、印刷媒体Mを引戻方向に搬送する場合、ローラ131で印刷媒体Mを印刷ヘッド121に第2の圧力で押圧する。また、搬送制御部113の制御に基づいて、カム141を回転し、ローラ131を印刷ヘッド121から離間させる。
【0043】
切断部150は、上述したように、搬送制御部113の制御に基づいて、印刷部120により印刷対象Sが印刷されたテープ状の印刷媒体Mを切断する。
【0044】
通信部160は、端末装置200から印刷対象Sを示すデータを受信する。通信部160は、無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)などの無線通信モジュールから構成される。
【0045】
ROM170は、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリから構成され、上述したように制御部110が各種機能を実現するためのプログラムと、基準回転角度を示すデータと、を記憶する。RAM180は、揮発性メモリから構成され、制御部110が各種処理を行うためのプログラムを実行するための作業領域として用いられる。また、RAM180は、印刷対象Sの画像データなどの情報を記憶する。
【0046】
端末装置200は、
図11に示すように、制御部210と、通信部220と、ディスプレイ230と、操作部240と、ROM250と、RAM260と、を備える。
【0047】
制御部210は、CPU等から構成される。制御部210は、ROM250に記憶されたプログラムを実行することにより、印刷対象取得部211と、印刷対象送信部212として機能する。
【0048】
印刷対象取得部211は、操作部240が受け付けた、または通信部220が受信した印刷対象Sを示すデータを取得する。
【0049】
印刷対象送信部212は、通信部220を介して、印刷対象Sのデータを印刷装置100に送信する。また、ユーザが端末装置200を操作して印刷開始の指示が実行されると、印刷開始の指示を示すデータを印刷装置100に送信する。
【0050】
通信部220は、印刷装置100に印刷対象Sを示すデータおよび印刷開始の指示を示すデータを送信する。通信部220は、上述した通信部160と同様に、無線LAN、Bluetoothなどの無線通信モジュールから構成される。
【0051】
ディスプレイ230は、操作に必要な画像を表示するものであり、LCD(liquid crystal display)などから構成される。
【0052】
操作部240は、ユーザの入力に基づいて、印刷対象Sのデータや印刷処理の開始、印刷開始、終了、カートリッジ交換の指示を受け付けるものである。なお、操作部240とディスプレイ230とは、タッチパネルディスプレイ装置を構成する。
【0053】
ROM250は、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリから構成され、制御部110が各種機能を実現するためのプログラムを記憶する。RAM260は、揮発性メモリから構成され、制御部110が各種処理を行うためのプログラムを実行するための作業領域として用いられ、印刷対象Sを示すデータを記憶する。
【0054】
つぎに、印刷装置100が実行する印刷処理について説明する。
【0055】
ユーザによる印刷処理を開始させる指示に応答し、印刷装置100は、
図12に示す印刷処理を開始する。なお、印刷処理の終了時にローラ131は印刷ヘッド121から離間されるので、処理開始時では、ローラ131は印刷ヘッド121から離間した状態である。
【0056】
まず、印刷対象取得部111は、印刷対象Sを示すデータを受信できる状態で待機し、印刷対象Sを示すデータを受信したか否かを判定する(ステップS101)。印刷対象Sを示すデータを受信していない場合(ステップS101;No)、ステップS101を繰り返す。
【0057】
ユーザの操作により、端末装置200に印刷対象Sが入力され、端末装置200から印刷対象Sが印刷装置100に送信されると、印刷対象取得部111は、印刷対象Sを示すデータを受信する(ステップS101;Yes)。印刷対象Sを受信すると、印刷対象取得部111は、印刷対象Sを示すデータをRAM180に記憶させ、ユーザにより開始の指示がされれば印刷を開始できる状態で待機する(ステップS102)。
【0058】
つぎに、搬送制御部113は、ユーザが端末装置200を操作して印刷開始の指示が実行されたか否かを判定する(ステップS103)。印刷開始の指示が実行されなかったと判定した場合(ステップS103;No)、ステップS102に戻り、ステップS102とステップS103とを繰り返す。
【0059】
搬送制御部113は、印刷開始の指示が実行されたと判定すると(ステップS103;Yes)、
図13に示す切断処理を実行する(ステップS104)。
【0060】
つぎに、この時点では、ローラ131が印刷ヘッド121から離間した状態であるので、搬送制御部113は、
図13に示すように、ローラ131が印刷ヘッド121から離間した状態で、モータ23を予め定めた基準回転角度で逆回転する(ステップS201)。これにより、逆回転した場合においても、第1駆動機構のギアのバックラッシュによるガタ付きを無くすことができる。これにより、印刷媒体Mの引戻量を容易に調整することができる。
【0061】
つぎに、搬送制御部113は、押圧部140を制御し、ローラ131で印刷媒体Mを印刷ヘッド121に第2の圧力で押圧する(ステップS202)。詳細には、搬送制御部113は、押圧部140を制御し、
図5に示すように、第2のカム面141bがカムフォロワ142の接触部142aに接触する位置にカム141を回転する。これにより、カムフォロワ142とローラ軸支部132bの間に配置された弾性体143に付勢され、ローラ131により第2の圧力で印刷媒体Mが印刷ヘッド121に押圧される。
【0062】
つぎに、搬送制御部113は、搬送部130を制御し、印刷媒体Mを引戻方向に搬送する(ステップS203)。搬送部130は、印刷媒体Mを、好ましくは、
図7に示すように、テープガイド133と切断部150との間であり、且つ、テープガイド133の近傍に印刷予定の印刷媒体Mの先端部が配置される位置に引戻方向に搬送する。ステップS203で、モータ23を基準回転角度で逆回転し、第1駆動機構のギアのバックラッシュによるガタ付きを無くしているため、印刷媒体Mの先端部を正確に位置決めすることが可能である。このとき、印刷媒体Mの先端部は、テープガイド133の先端部133cと下ガイド122との間に正確に位置するため、印刷媒体Mおよびリボン310の撓みが抑えられる。これにより、再度、印刷媒体Mが送出方向に搬送された場合、印刷媒体Mの先端部がカートリッジ300のリブ320またはカートリッジ爪330に接触することを防ぐことができる。
【0063】
搬送制御部113は、押圧部140を制御し、ローラ131を印刷ヘッド121から離間させる(ステップS204)。詳細には、搬送制御部113は、押圧部140を制御し、
図9に示すように、カムフォロワ142の接触部142aが、第3のカム面141cに接触する位置にカム141を回転する。これにより、カムフォロワ142の被嵌合部142bはカム141の嵌合部141dに嵌合し、ローラ131は印刷ヘッド121から離間する。
【0064】
つぎに、搬送制御部113は、ローラ131が印刷ヘッド121から離間した状態で、モータ23を予め定めた基準回転角度で正回転する(ステップS205)。ここでの基準回転角度は、ステップS201での回転角度と同じである。基準回転角度は、出力ギアG1、ギアG2~G8を含む第1駆動機構のギアのバックラッシュによるガタ付きを無くすのに十分な回転角度である。モータ23が基準回転角度で正回転することで、第1駆動機構のギアのバックラッシュによるガタ付きを無くすことができる。これにより、印字開始位置を容易に調整することができる。
【0065】
つぎに、
図12に示す印刷処理に戻って、搬送制御部113は、押圧部140を制御し、ローラ131で印刷媒体Mを印刷ヘッド121に第1の圧力で押圧する(ステップS105)。詳細には、搬送制御部113は、押圧部140を制御し、
図3に示すように、第1のカム面141aがカムフォロワ142の接触部142aに接触する位置にカム141を回転する。これにより、カムフォロワ142とローラ軸支部132bの間に配置された弾性体143に付勢され、ローラ131により第1の圧力で印刷媒体Mが印刷ヘッド121に押圧される。
【0066】
つぎに、印刷ヘッド制御部112は、搬送制御部113に制御された搬送部130が印刷媒体Mを送出方向に搬送した搬送距離に基づいて、印刷部120を制御して印刷媒体Mに印刷対象Sを印刷させる(ステップS106)。具体的には、印刷ヘッド制御部112は、印刷媒体Mが副走査方向に1ドットピッチに相当する距離を搬送される度、RAM180に記憶された印刷対象Sの画像を、主走査方向にライン状に並んだ1画素のラインである1ドットラインを印刷ヘッド121に印刷させる。
【0067】
つぎに、印刷媒体Mに印刷対象Sを印刷した後、搬送制御部113は、搬送部130を制御し、印刷媒体Mの切断予定位置が切断部150の切断刃の位置に配置するまで印刷媒体Mを送出方向に搬送する(ステップS107)。
【0068】
つぎに、搬送制御部113は、切断部150を制御し、印刷媒体Mの切断予定位置を切断する(ステップS108)。
【0069】
つぎに、搬送制御部113は、ステップS204と同様に、押圧部140を制御し、ローラ131を印刷ヘッド121から離間させる(ステップS109)。
【0070】
つぎに、搬送制御部113は、
図12に示す印刷処理に戻って、印刷処理を終了する指示を受け付けたか否かを判定する(ステップS110)。印刷処理を終了する指示を受け付けない場合(ステップS110;No)、ステップS101に戻り、ステップS101からステップS110を繰り返す。ステップS101に戻って、再度、印刷媒体Mに印刷する場合、ステップS203において、印刷媒体Mが引戻方向に搬送されており、印刷媒体Mの先端部と、印刷ヘッド121と、の間に生じる余白が少なくできる。
【0071】
印刷処理を終了する指示を受け付けると(ステップS110;Yes)、印刷装置100は、印刷処理を終了する。なお、印刷処理が終了した時点では、ステップS109により、ローラ131を印刷ヘッド121から離間している。
【0072】
以上のように、本実施の形態の印刷システム1および印刷装置100によれば、ローラ131を印刷ヘッド121から離間し、モータ23を予め定めた基準回転角度で正回転することで、ギアのバックラッシュによるガタ付きを無くすことができ、印字開始位置を容易に調整することができる。また、ローラ131を印刷ヘッド121から離間し、モータ23を予め定めた基準回転角度で逆回転することで、ギアのバックラッシュによるガタ付きを無くすことができ、印刷媒体Mの引戻量を容易に調整することができる。また、印刷対象Sが印刷された印刷媒体Mを切断した後、搬送部130により印刷予定の印刷媒体Mを引戻方向に搬送することで、テープ状の印刷媒体Mに小さい余白で印刷できる。詳細には、上述のように、ギアのバックラッシュによるガタ付きを無くすことができ、印刷媒体Mの引戻量を容易に調整することができるため、搬送部130が、テープガイド133と切断部150との間であり、且つ、テープガイド133の近傍に印刷予定の印刷媒体Mの先端部が配置される位置に印刷媒体Mを引戻方向に正確に搬送することができる。これにより、印刷媒体Mを引戻方向に搬送する距離を大きくすることができ、テープ状の印刷媒体Mに小さい余白で印刷できる。また、印刷媒体Mの先端部をテープガイド133と切断部150の間に正確に搬送することで、テープガイド133によって、印刷媒体Mの撓みを抑え、印刷媒体Mの先端部がカートリッジ300のリブ320またはカートリッジ爪330に接触することを防ぐことができる。また、第1の圧力で押圧しながら印刷することで、印刷媒体Mに印刷対象Sが鮮明に印刷される。また、印刷媒体Mを引戻方向に搬送する場合、ローラ131で印刷媒体Mを印刷ヘッド121に第1の圧力より小さい第2の圧力で押圧することで、搬送時の印刷媒体Mおよびリボン310の負荷を抑え、リボンしわ、およびリボン切れを防止し安定的な搬送を可能とする。
【0073】
(変形例)
上述の実施の形態の印刷装置100では、押圧部140が、ローラ131で印刷媒体Mを印刷ヘッド121に第1の圧力または第1の圧力より小さい第2の圧力で押圧する例について説明した。押圧部140は、ローラ131で印刷媒体Mを印刷ヘッド121に押圧した場合、印刷媒体Mおよびリボン310への負荷を軽減できればよい。第2の圧力は、第1の圧力と異なればよく、第1の圧力より大きくてもよい。第1の圧力および第2の圧力は、印刷媒体Mおよびリボン310の特性などによって決定される。
【0074】
上述の実施の形態の印刷装置100では、押圧部140が、第1の圧力と第2の圧力によりローラ131で印刷媒体Mを印刷ヘッド121に押圧する例について説明したが、押圧部140は、ローラ131で印刷媒体Mを印刷ヘッド121に押圧し、また、ローラ131を離間することができればよい。また、押圧部140が、カム141と、カム141により移動するカムフォロワ142と、を備える例について説明したが、カム構造以外のリニアモータを用いた構造や油圧または空気圧などの流体を用いた構造を有してもよい。このようにすることで、構造をシンプルにすることができる。
【0075】
上述の実施の形態の印刷装置100では、印刷媒体Mを送出方向および引戻方向に搬送する例について説明したが、印刷装置100は、印刷媒体Mを送出方向にのみ搬送してもよい。この場合、ユーザによる印刷処理を開始させる指示に応答し、印刷装置100は、
図14に示す印刷処理を開始する。ステップS301からステップS303は、上述したステップS101からステップS103と同様である。なお、印刷処理の終了時にローラ131は印刷ヘッド121から離間されるので、処理開始時では、ローラ131は印刷ヘッド121から離間した状態である。搬送制御部113は、印刷開始の指示が実行されたと判定すると(ステップS303;Yes)、ローラ131が印刷ヘッド121から離間した状態で、モータ23を予め定めた基準回転角度で正回転する(ステップS304)。モータ23が基準回転角度で正回転することで、ギアのバックラッシュによるガタ付きを無くすことができる。これにより、印字開始位置を容易に調整することができる。つぎに、搬送制御部113は、ステップS105と同様に、押圧部140を制御し、ローラ131で印刷媒体Mを印刷ヘッド121に押圧する(ステップS305)。つぎに、印刷ヘッド制御部112は、搬送制御部113に制御された搬送部130が印刷媒体Mを送出方向に搬送した搬送距離に基づいて、印刷部120を制御して印刷媒体Mに印刷対象Sを印刷させる(ステップS306)。具体的には、印刷ヘッド制御部112は、印刷媒体Mが副走査方向に1ドットピッチに相当する距離を搬送される度、RAM180に記憶された印刷対象Sの画像を、主走査方向にライン状に並んだ1画素のラインである1ドットラインを印刷ヘッド121に印刷させる。つぎに、印刷媒体Mに印刷対象Sを印刷した後、搬送制御部113は、搬送部130を制御し、印刷媒体Mの切断予定位置が切断部150の切断刃の位置に配置するまで印刷媒体Mを送出方向に搬送する(ステップS307)。つぎに、搬送制御部113は、切断部150を制御し、印刷媒体Mの切断予定位置を切断する(ステップS308)。つぎに、搬送制御部113は、上述したステップS109と同様に、押圧部140を制御し、ローラ131を印刷ヘッド121から離間させる(ステップS309)。搬送制御部113は、印刷処理を終了する指示を受け付けたか否かを判定する(ステップS310)。印刷処理を終了する指示を受け付けない場合(ステップS310;No)、ステップS301に戻り、ステップS301からステップS310を繰り返す。印刷処理を終了する指示を受け付けると(ステップS310;Yes)、印刷装置100は、印刷処理を終了する。なお、印刷処理が終了した時点では、ステップS309により、ローラ131を印刷ヘッド121から離間している。この例では、ローラ131を印刷ヘッド121から離間した状態でモータ23を正回転することで、印刷装置100の電源OFF時に発生するギアのバックラッシュによるガタ付きを無くすことができる。このため、電源をONにして、一枚目を印刷する場合であっても、印字開始位置を容易に調整することができる。
【0076】
上述の実施の形態の印刷装置100では、モータ23からローラ131まで動力を伝達する出力ギアG1およびギアG2~G8を含む第1駆動機構を備える例について説明した。モータ23は、ローラ131に動力を伝達することができればよく、1つのギアまたは複数のギアを介して、モータ23からローラ131まで動力を伝達してもよい。また、モータ23からローラ131まで、例えば、チェーンまたはベルトなどの他の伝達手段により動力を伝達してもよい。このようにすることで、印刷装置100の設計変更が容易になる。チェーンまたはベルトなどを用いたとしても、上記構成を有する印刷装置100であれば、伝達手段によって生じるガタ付きを無くすことができる。
【0077】
上述の実施の形態の印刷装置100では、リボンに塗布されたインクを熱によって印刷媒体Mに転写する熱転写型プリンタである例について説明した。印刷装置100は、印刷ヘッド121が熱転写できるプリントヘッドであればよく、リボンに塗布されたインクを熱によって印刷媒体Mに転写する代わりに、熱を感知して色が変化する感熱紙に印刷する感熱方式のプリンタであってもよい。この場合、リボンが不要であるため、ランニングコストを下げることが可能である。また、レジのレシートなどの感熱紙に印刷することも可能である。
【0078】
上述の実施の形態の印刷システム1では、印刷装置100と、端末装置200と、を備える例について説明した。印刷装置100は、ディスプレイと操作部とを備え、端末装置200なしで、単体で印刷媒体Mに印刷対象Sを印刷できるものであってもよい。
【0079】
また、CPU、RAM、ROM等から構成される端末装置200が実行する印刷補助処理を行う中心となる部分は、専用のシステムによらず、通常の情報携帯端末(スマートフォン、タブレットPC)、パーソナルコンピュータなどを用いて実行可能である。たとえば、上述の動作を実行するためのコンピュータプログラムを、コンピュータが読み取り可能な記録媒体(フレキシブルディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)等)に格納して配布し、このコンピュータプログラムを情報携帯端末などにインストールすることにより、上述の処理を実行する情報端末を構成してもよい。また、インターネット等の通信ネットワーク上のサーバ装置が有する記憶装置にこのコンピュータプログラムを格納しておき、通常の情報処理端末などがダウンロード等することで情報処理装置を構成してもよい。
【0080】
また、印刷補助装置の機能を、OS(Operating System)とアプリケーションプログラムとの分担、またはOSとアプリケーションプログラムとの協働により実現する場合などには、アプリケーションプログラム部分のみを記録媒体や記憶装置に格納してもよい。
【0081】
また、搬送波にコンピュータプログラムを重畳し、通信ネットワークを介して配信することも可能である。例えば、通信ネットワーク上の掲示板(BBS:Bulletin Board System)にこのコンピュータプログラムを掲示し、ネットワークを介してこのコンピュータプログラムを配信してもよい。そして、このコンピュータプログラムを起動し、OSの制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、上述の処理を実行できるように構成してもよい。
【0082】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【符号の説明】
【0083】
1…印刷システム、100…印刷装置、101…カートリッジ格納部、110、210…制御部、111、211…印刷対象取得部、112…印刷ヘッド制御部、113…搬送制御部、120…印刷部、121…印刷ヘッド、122…下ガイド、123…固定部、130…搬送部、131…ローラ、132…ローラ支持部、132a…アーム、132b…ローラ軸支部、132c…一端部、132d…回転軸、132e…他端部、133…テープガイド、133a…固定部、133b…弯曲部、133c…先端部、134…巻取軸、140…押圧部、141…カム、141a…第1のカム面、141b…第2のカム面、141c…第3のカム面、141d…嵌合部、142…カムフォロワ、142a…接触部、142b…被嵌合部、143…弾性体、150…切断部、160、220…通信部、170、250…ROM、180、260…RAM、200…端末装置、212…印刷対象送信部、230…ディスプレイ、240…操作部、300…カートリッジ、310…リボン、320…リブ、330…カートリッジ爪、M…印刷媒体、R…リボン、S…印刷対象、D1~D3…間隔、G1…出力ギア、G2~G12…ギア、11…ベース部、21…軸、22…軸部、23…モータ、24…トルクリミッタ