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特開2024-136801ウインドレギュレータ、および車両のドア構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136801
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】ウインドレギュレータ、および車両のドア構造
(51)【国際特許分類】
   E05F 11/48 20060101AFI20240927BHJP
   B60J 1/17 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
E05F11/48 B
B60J1/17 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048052
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 信之
【テーマコード(参考)】
3D127
【Fターム(参考)】
3D127AA04
3D127BB01
3D127CB05
3D127CC05
3D127DF04
3D127DF09
3D127DF15
3D127DF26
3D127EE15
(57)【要約】
【課題】ドアガラスの上昇時における上昇側ワイヤの摩擦抵抗を低減することが可能なウインドレギュレータを提供する。
【解決手段】ウインドレギュレータ4は、ドアガラス3に固定される一対のキャリアプレート5と、一対のキャリアプレート5を昇降可能に支持する一対のガイドレール6と、一対のガイドレール6の上部および下部に取り付けられた支持プーリ7と、一端が一方のキャリアプレート5の上部に固定された上昇側ワイヤ9と、一端が他方のキャリアプレート5の下部に固定された下降側ワイヤ10と、上昇側ワイヤ9および下降側ワイヤ10のそれぞれの他端を巻き取るドラム32およびモータ31を備えた駆動部8とを備える。駆動部8は、上昇側ワイヤ9が固定されたキャリアプレート5を支持するガイドレール6に固定される。上昇側ワイヤ9は、支持プーリ7と駆動部8との間では、外部から覆われることなく露出した状態で直線的に張られている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアパネルおよび当該ドアパネルの開口を開閉するドアガラスを有する車両のサイドドアに取り付けられるウインドレギュレータであって、
前記ドアガラスに固定される一対のキャリアプレートと、
互いに平行になるように延びるとともに前記ドアパネルに固定される一対のガイドレールであって、前記一対のキャリアプレートを上下方向に昇降可能に支持する一対のガイドレールと、
前記一対のガイドレールのそれぞれの上部および下部に回転自在に取り付けられた支持プーリと、
一端が前記一対のキャリアプレートのうちの一方のキャリアプレートを上昇させるためにその上部に固定されるとともに前記支持プーリによって往復移動自在に支持された上昇側ワイヤと、
一端が前記一対のキャリアプレートのうちの他方のキャリアプレートを下降させるためにその下部に固定されるとともに前記支持プーリによって往復移動自在に支持された下降側ワイヤと、
前記上昇側ワイヤおよび前記下降側ワイヤのそれぞれの他端を巻き取るドラムと、当該ドラムを正逆両方向に回転させるモータとを備えた駆動部と、
を備え、
前記駆動部は、前記一対のガイドレールのうちの前記上昇側ワイヤが固定された前記キャリアプレートを支持するガイドレールに固定され、
前記上昇側ワイヤは、前記支持プーリと前記駆動部との間では、外部から覆われることなく露出した状態で直線的に張られている、
ことを特徴とするウインドレギュレータ。
【請求項2】
請求項1記載のウインドレギュレータにおいて、
前記上昇側ワイヤおよび前記下降側ワイヤは、前記一対のガイドレールが並ぶ方向と直交する方向から見て、前記ガイドレールと重複しない位置に配置されている、
ことを特徴とするウインドレギュレータ。
【請求項3】
請求項1または2記載のウインドレギュレータにおいて、
前記下降側ワイヤにおける前記駆動部と前記支持プーリとの間を覆って前記下降側ワイヤを往復移動自在に支持するアウターケーシングをさらに備えている、
ことを特徴とするウインドレギュレータ。
【請求項4】
請求項1または2記載のウインドレギュレータにおいて、
前記駆動部は、前記一対のガイドレールがフロントサイドドアに固定される場合における車両後方側の前記ガイドレールに固定される、
ことを特徴とするウインドレギュレータ。
【請求項5】
請求項1または2記載のウインドレギュレータにおいて、
前記駆動部は、前記ドラムの高さが前記ガイドレールの下側の前記支持プーリの高さ以下になり、かつ、前記モータおよび前記ドラムが前記支持プーリよりも車幅方向外側にあるような位置に、配置されている、
ことを特徴とするウインドレギュレータ。
【請求項6】
請求項1または2記載のウインドレギュレータにおいて、
前記駆動部は、車両が側方から衝突荷重を受けた際に乗員を車内側に押すプッシャとして機能するように構成されることを特徴とするウインドレギュレータ。
【請求項7】
請求項6に記載のウインドレギュレータにおいて、
前記駆動部は、上下方向において車室内のシートのヒップポイントを含む範囲に配置されている、
ことを特徴とするウインドレギュレータ。
【請求項8】
請求項7に記載のウインドレギュレータにおいて、
前記駆動部は、車室内のシートの座面近傍の高さに位置している、
ことを特徴とするウインドレギュレータ。
【請求項9】
開口を有するドアパネルと、
ドアガラスと、
前記ドアガラスを上昇または下降することで前記ドアパネルの開口を開閉する請求項1記載のウインドレギュレータと
を備えた車両のドア構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のドアに取り付けられるウインドレギュレータおよびそれを備えたドア構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの車両のドアにおけるドアガラスを昇降させるウインドレギュレータが種々提案されている。特許文献1に記載されているウインドレギュレータは、昇降可能な一対のキャリアプレートがドアガラスの下端の2か所を支持するダブルガイド式のウインドレギュレータを備えている。
【0003】
このウインドレギュレータは、車両前後方向に互いに離間した位置でサイドドアのドアガラスの下端に固定される一対のキャリアプレートと、一対のキャリアプレートを昇降自在に支持する一対のガイドレールと、一対のキャリアプレートのうちの車両後方側のキャリアプレートの上部に固定された上昇側ワイヤと、車両前方側のキャリアプレートの下部に固定された下降側ワイヤと、一対のガイドレールの上下両端部にそれぞれ回転自在に取り付けられ、上昇側ワイヤおよび下降側ワイヤを往復移動自在に支持する複数の支持プーリと、上昇側ワイヤおよび下降側ワイヤの巻き上げおよび繰り出しを行う駆動部とを備える。駆動部は、上昇側ワイヤおよび下降側ワイヤの端部が巻かれたドラムと、ドラムを正逆両方向に回転させるモータとを備える。
【0004】
上記のウインドレギュレータでは、駆動部は、一対のガイドレールのうち車両前方側のガイドレールに固定されている。このため、上昇側ワイヤは、車両前方側のガイドレールの駆動部と車両後方側のキャリアプレートの間を、車両後方側のガイドレールの支持プーリを経由して接続している。
【0005】
このウインドレギュレータは、ガイドレール間における上昇側ワイヤの張力を確保するために、上昇側ワイヤを覆って上昇側ワイヤを往復移動自在に支持するアウターケーシングを備えている。アウターケーシングは、上昇側ワイヤにおける車両前方側のガイドレールの駆動部と車両後方側のガイドレールの支持プーリとの間の部分を覆っているので、ガイドレール間において上昇側ワイヤを往復移動自在に直線または緩やかな曲線で延ばすことができ、上昇側ワイヤの張力を維持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004-204551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上昇側ワイヤは、ドアガラスの上昇時にドアガラスの自重を受けて大きな張力がかかる。上記のウインドレギュレータでは、上昇側ワイヤは、ガイドレール間で張力を維持するためにアウターケーシングで覆われているため、ドアガラスの自重に抵抗してドアガラスを上昇させる際に、上昇側ワイヤを覆うアウターケーシングとワイヤとの間で摩擦が生じる。このため、駆動部のモータに係る負荷が大きくなる。
【0008】
本発明は、前記のような事情に鑑みてなされたものであり、ドアガラスの上昇時における上昇側ワイヤの摩擦抵抗を低減することが可能なウインドレギュレータの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために本発明の車両のドア構造は、ドアパネルおよび当該ドアパネルの開口を開閉するドアガラスを有する車両のサイドドアに取り付けられるウインドレギュレータであって、前記ドアガラスに固定される一対のキャリアプレートと、互いに平行になるように延びるとともに前記ドアパネルに固定される一対のガイドレールであって、前記一対のキャリアプレートを上下方向に昇降可能に支持する一対のガイドレールと、前記一対のガイドレールのそれぞれの上部および下部に回転自在に取り付けられた支持プーリと、一端が前記一対のキャリアプレートのうちの一方のキャリアプレートを上昇させるためにその上部に固定されるとともに前記支持プーリによって往復移動自在に支持された上昇側ワイヤと、一端が前記一対のキャリアプレートのうちの他方のキャリアプレートを下降させるためにその下部に固定されるとともに前記支持プーリによって往復移動自在に支持された下降側ワイヤと、前記上昇側ワイヤおよび前記下降側ワイヤのそれぞれの他端を巻き取るドラムと、当該ドラムを正逆両方向に回転させるモータとを備えた駆動部と、を備え、前記駆動部は、前記一対のガイドレールのうちの前記上昇側ワイヤが固定された前記キャリアプレートを支持するガイドレールに固定され、前記上昇側ワイヤは、前記支持プーリと前記駆動部との間では、外部から覆われることなく露出した状態で直線的に張られている、ことを特徴とする。
【0010】
上記のウインドレギュレータは、一対のキャリアプレートのうちの一方のキャリアプレートを上昇させる上昇側ワイヤと、他方のキャリアプレートを下降させる下降側ワイヤと、これら上昇側ワイヤおよび下降側ワイヤを巻き取りまたは繰り出すドラムおよびモータを備えた駆動部とを備える。駆動部は、一対のガイドレールのうちの上昇側ワイヤが固定されたキャリアプレートを支持するガイドレールに固定されている。さらに、上昇側ワイヤは、支持プーリと駆動部との間では、外部から覆われることなく露出した状態で直線的に張られている。この構成では、駆動部と上昇側ワイヤが同じガイドレールに配置されているので、上昇側ワイヤは、ガイドレール間にまたがっておらず、アウターケーシングが無くても直線的に張ることが可能である。このため、上昇側ワイヤは、アウターケーシングで覆わなくても張力を維持することができる。その結果、動力負荷の高い上昇側ワイヤとアウターケーシングとの間の摩擦抵抗が無くなり、上昇側ワイヤの摩擦抵抗を大幅に低減することが可能である。これにより、駆動部のモータへの負荷を低減することが可能になる。
【0011】
上記のウインドレギュレータにおいて、前記上昇側ワイヤおよび前記下降側ワイヤは、前記一対のガイドレールが並ぶ方向と直交する方向から見て、前記ガイドレールと重複しない位置に配置されているのが好ましい。
【0012】
ガイドレールは、ドアパネルの形状に合わせて設計されるので、ドアパネルが車幅方向外側に膨らむ形状である場合には、ドアパネルの形状に合わせて、一対のガイドレールが並ぶ方向と直交する方向に反るように延びるので、上昇側ワイヤおよび下降側ワイヤがガイドレールに接触することが懸念される。しかし、上記の構成では、上昇側ワイヤおよび下降側ワイヤは、一対のガイドレールが並ぶ方向と直交する方向から見て、ガイドレールと重複しない位置に配置されているので、上昇側ワイヤおよび下降側ワイヤのいずれもガイドレールに接触するおそれがない。したがって、ワイヤとガイドレールの間の摺動抵抗が発生しないので、駆動部のモータへの負荷を確実に低減することが可能になる。
【0013】
上記のウインドレギュレータにおいて、前記下降側ワイヤにおける前記駆動部と前記支持プーリとの間を覆って下降側ワイヤを往復移動自在に支持するアウターケーシングをさらに備えているのが好ましい。
【0014】
上記のウインドレギュレータでは、駆動部が一対のガイドレールのうちの上昇側ワイヤが固定されたキャリアプレートを支持するガイドレールに固定されている構成上、下降側ワイヤは、一対のガイドレールの間に延びている。上記の構成では、アウターケーシングが下降側ワイヤにおける駆動部と支持プーリとの間を覆うことにより、下降側ワイヤを往復移動自在に直線または緩やかな曲線で延ばすことができ、下降側ワイヤの張力を維持することが可能である。これにより、下降側ワイヤの組付自由度が向上する。また、ドアガラス下降時において駆動部から下降側ワイヤへ与えられる張力はドアガラスの自重によるサポート(減殺分)により小さくて済むので、上記のように下降側ワイヤをアウターケーシングで覆っていても摺動抵抗を抑えることができる。
【0015】
上記のウインドレギュレータにおいて、前記駆動部は、前記一対のガイドレールがフロントサイドドアに固定される場合における車両後方側の前記ガイドレールに固定されるのが好ましい。
【0016】
かかる構成によれば、駆動部が車両後方側のガイドレールに固定されることにより、上昇側ワイヤの摩擦抵抗を大幅に低減する上記の構成を容易に実現することができる。
【0017】
上記のウインドレギュレータにおいて、前記駆動部は、前記ドラムの高さが前記ガイドレールの下側の前記支持プーリの高さ以下になり、かつ、前記モータおよび前記ドラムが前記支持プーリよりも車幅方向外側にあるような位置に、配置されているのが好ましい。
【0018】
かかる構成によれば、駆動部が上記の位置に配置されることにより、ドラムの高さがガイドレールの下側の支持プーリの高さ以下になるとともに、モータおよびドラムが当該支持プーリよりも車幅方向外側に位置する。このため、モータおよびドラムがキャリアプレートおよびドアガラスと干渉することを防止しながら、モータおよびドラムの車室内への突出量を抑えることができる。
【0019】
上記のウインドレギュレータにおいて、前記駆動部は、車両が側方から衝突荷重を受けた際に乗員を車内側に押すプッシャとして機能するように構成されるのが好ましい。
【0020】
かかる構成によれば、車両側突時において駆動部がプッシャとして機能して乗員を車内側に押すことにより、乗員に作用する衝突荷重のピークを抑えることができ、乗員への衝撃を緩和することが可能になる。
【0021】
上記のウインドレギュレータにおいて、前記駆動部は、上下方向において車室内のシートのヒップポイントを含む範囲に配置されているのが好ましい。
【0022】
かかる構成では、車両側突時に駆動部を乗員の股関節付近の部分に確実に当てて乗員を車内側へ押すことが可能になり、乗員への衝撃を確実に緩和することが可能になる。
【0023】
上記のウインドレギュレータにおいて、前記駆動部は、車室内のシートの座面近傍の高さに位置しているのが好ましい。
【0024】
かかる構成では、車両側突時に駆動部を乗員の股関節付近の部分に確実に当てて乗員を車内側へ押すことが可能になり、乗員への衝撃を確実に緩和することが可能になる。
【0025】
本発明の車両のドア構造は、開口を有するドアパネルと、ドアガラスと、前記ドアガラスを上昇または下降することで前記ドアパネルの開口を開閉する請求項1記載のウインドレギュレータとを備えていることを特徴とする。
【0026】
上記のドア構造では、上記の構成のウインドレギュレータを備えているので、動力負荷の高い上昇側ワイヤとアウターケーシングとの間の摩擦抵抗が無くなり、上昇側ワイヤの摩擦抵抗を大幅に低減することが可能である。これにより、駆動部のモータへの負荷を低減することが可能になる。
【発明の効果】
【0027】
以上のように、本発明のウインドレギュレータおよび車両のドア構造によれば、ドアガラスの上昇時における上昇側ワイヤの摩擦抵抗を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の実施形態のウインドレギュレータを備えた車両のドア構造の全体構成を示すドアパネルのドアアウターおよびウインドレギュレータを車内側から見た図であり、ドアインナーを取り外した状態の図である。
図2図1のウインドレギュレータを車内側から見た図である。
図3図1のドアパネルのドアインナーおよびウインドレギュレータを車外側から見た図である。
図4】本発明の変形例のウインドレギュレータを備えたドア構造の全体構成を示すドアパネルのドアアウターおよびウインドレギュレータを車内側から見た図であって、駆動部をガイドレールの下側の支持プーリ以下の高さに配置した図である。
図5図4のドア構造においてシートの位置を概略的に示した説明図である。
図6】本発明の他の変形例のウインドレギュレータを備えたドア構造の全体構成を示すドアパネルのドアアウターおよびウインドレギュレータを車内側から見た図であって、駆動部をプッシャの位置に配置してプッシャとして機能する構成にした図である。
図7図2のガイドレールの本体部が車幅方向外側に反っていることを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態に係る車両のドア構造について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0030】
図1および図3には、本発明の実施形態に係るドア構造を備えたフロントサイドドア1(以下、ドア1と言う)が示されている。図1は、ドアパネル2のドアアウター2aおよびウインドレギュレータ4を車内側から見た図であり、ドアインナー2cを取り外した状態の図である。図3は、ドアインナー2cおよびウインドレギュレータ4を車外側から見た図である。
【0031】
ドア1は、開口2bを有するドアパネル2と、ドアガラス3と、ドアガラス3を上昇または下降することでドアパネル2の開口2bを開閉する構成を有するウインドレギュレータ4とを備える。
【0032】
ドアパネル2は、車幅方向外側の部分を構成する板状のドアアウター2a(図1参照)と、車幅方向内側の部分を構成する板状のドアインナー2c(図3参照)とを接合した中空のパネルである。ドアパネル2の上部には、窓枠で囲まれた開口2bが形成されている。ウインドレギュレータ4によってドアガラス3を昇降することにより、開口2bを開閉することが可能である。ドアパネル2の内部には、ウインドレギュレータ4および下降位置のドアガラス3が収納される。ドアアウター2aの車内側の面には、ドアパネル2の剛性向上のため、車両前後方向Xに延びる複数のビーム21~24が固定されている。最下方のビーム24には車両側突時に乗員を側方へ押し出すプッシャ25が固定されている。
【0033】
ウインドレギュレータ4は、ドア1の中空のドアパネル2内部に取り付けられる。具体的には、後述の一対のガイドレール6(6A、6B)がドアインナー2cにネジなどで固定されることにより、ウインドレギュレータ4は、ドアインナー2cの内面(車外側を向く面)に取り付けられる。
【0034】
図1~3に示されるように、ウインドレギュレータ4は、具体的な構成として、一対のキャリアプレート5(5A、5B)と、当該一対のキャリアプレート5を昇降自在に支持する一対のガイドレール6(6A、6B)と、一対のガイドレール6に取り付けられた4個の支持プーリ7(7A1、7A2、7B1、7B2)と、リア側キャリアプレート5Bを上昇させる上昇側ワイヤ9と、フロント側キャリアプレート5Aを下降させる下降側ワイヤ10と、上昇側ワイヤ9および下降側ワイヤ10を巻き取りおよび繰り出す駆動部8と、フロント側キャリアプレート5Aとリア側キャリアプレート5Bとを接続する接続ワイヤ12とを備える。
【0035】
一対のキャリアプレート5(5A、5B)は、互いに車両前後方向Xに離間し、ドアガラス3の下端両側に固定される。本明細書では、一対のキャリアプレート5の個々について呼ぶ場合には、フロント側キャリアプレート5A、リア側キャリアプレート5Bと呼ぶ。
【0036】
一対のガイドレール6(6A、6B)は、互いに車両前後方向Xに離間するとともに互いに平行になるように延び、ドアパネル2(具体的には、上記のドアインナー2c)に固定される。一対のガイドレール6(6A、6B)は、一対のキャリアプレート5(5A、5B)を上下方向Zに昇降可能に支持する。本明細書では、一対のガイドレール6(6A、6B)の個々について呼ぶ場合には、フロント側ガイドレール6A、リア側ガイドレール6Bと呼ぶ。
【0037】
4個の支持プーリ7(7A1、7A2、7B1、7B2)は、一対のガイドレール6のそれぞれの上部および下部に回転自在に取り付けられている。本明細書では、4個の支持プーリ7(7A1、7A2、7B1、7B2)の個々について呼ぶ場合には、フロント上側支持プーリ7A1、フロント下側支持プーリ7A2、リア上側支持プーリ7B1、リア下側支持プーリ7B2と呼ぶ。
【0038】
上昇側ワイヤ9は、図2に示されるように、一端9aが一対のキャリアプレート5のうちの一方のリア側キャリアプレート5Bを上昇させるためにその上部に固定されている。上昇側ワイヤ9は、リア上側支持プーリ7B1によって往復移動自在に支持されている。さらに、上昇側ワイヤ9の他端9bは、駆動部8のドラム32に巻き取られる。したがって、上昇側ワイヤ9は、リア側キャリアプレート5Bと駆動部8との間を、リア上側支持プーリ7B1を経由して接続している。
【0039】
下降側ワイヤ10は、図2に示されるように、一端10aが一対のキャリアプレート5のうちの他方のフロント側キャリアプレート5Aを下降させるためにその下部に固定されている。下降側ワイヤ10は、にフロント下側支持プーリ7A2によって往復移動自在に支持されている。さらに、下降側ワイヤ10の他端10bは、駆動部8のドラム32に巻き取られる。したがって、下降側ワイヤ10は、フロント側キャリアプレート5Aと駆動部8との間を、フロント下側支持プーリ7A2を経由して接続している。
【0040】
接続ワイヤ12は、フロント側キャリアプレート5Aとリア側キャリアプレート5Bとを接続するワイヤである。接続ワイヤ12の一端12aは、フロント側キャリアプレート5Aの上部に接続されている。接続ワイヤ12の他端12bは、リア側キャリアプレート5Bの下部に接続されている。接続ワイヤ12は、一端12aと他端12bとの間では、フロント上側支持プーリ7A1およびリア下側支持プーリ7B2によって往復移動自在に支持されている。これにより、接続ワイヤ12は、フロント上側支持プーリ7A1およびリア下側支持プーリ7B2を経由して、リア側キャリアプレート5Bの下部とフロント側キャリアプレート5Aの上部とを接続する。
【0041】
上記のように構成された接続ワイヤ12は、駆動部8に接続されていないが、上記の上昇側ワイヤ9および下降側ワイヤ10のうちのいずれか1つが駆動部8によって巻き取られるのに連動して、フロント側キャリアプレート5Aの上昇およびリア側キャリアプレート5Bの下降を行うことができる(すなわち、従動ワイヤとして機能することができる)。
【0042】
一対のガイドレール6は、図2に示されるように、それぞれ、上下方向Zでかつ上部が車両後方側X2に傾いた向きに延びる長尺の本体部6aと、本体部6aの上下両端部から一対のガイドレール6の互いに向かい合う方向に突出する上下2か所のプーリ支持部6b、6cとを備える。一対のガイドレール6の上下2か所のプーリ支持部6b、6cには、上記の4個の支持プーリ7(7A1、7A2、7B1、7B2)が取り付けられている。4個の支持プーリ7に上記の上昇側ワイヤ9、下降側ワイヤ10、接続ワイヤ12がかけられた状態で配設されることにより、上昇側ワイヤ9、下降側ワイヤ10、および接続ワイヤ12は、図1~3に示されるように、一対のガイドレール6が並ぶ方向と直交する方向、すなわち、図1~3の紙面垂直方向から見て、ガイドレール6と重複しない位置に配置されている。
【0043】
駆動部8は、図2に示されるように、上昇側ワイヤ9および下降側ワイヤ10のそれぞれの他端9b、10bを巻き取るドラム32と、当該ドラム32を正逆両方向に回転させるモータ31とを備えている。
【0044】
駆動部8は、具体的には、上記のモータ31およびドラム32と、図示しない減速機と、これらモータ31、ドラム32および減速機を収納するハウジング33とを備える。ハウジング33は、リア側ガイドレール6Bの本体部6aの中間部に設けられた駆動部支持部6dに固定されている。モータ31およびドラム32は、リア側ガイドレール6Bよりも車内側(図2の紙面手前側)に位置しているので、リア側キャリアプレート5Bおよびドアガラス3に接触しない。
【0045】
なお、図2では、上昇側ワイヤ9および下降側ワイヤ10のそれぞれの他端9b、10bは、これらの位置を視認しやすいように、ドラム32の外周付近に配置されているが、実際にはドラム32に巻き取られている。
【0046】
また、実際の上昇側ワイヤ9および下降側ワイヤ10のそれぞれの他端9b、10bは、ドラム32に巻き取られているとともに他端9b、10b同士が連結している。これにより、上昇側ワイヤ9および下降側ワイヤ10は、1本の駆動ワイヤ11を構成している。つまり、1本の駆動ワイヤ11により、リア側キャリアプレート5Bの上昇およびフロント側キャリアプレート5Aの下降を行うことができる。なお、上昇側ワイヤ9および下降側ワイヤ10は、分離した状態でドラム32に巻き取られていてもよい。
【0047】
本実施形態のウインドレギュレータ4では、図1~3に示されるように、駆動部8は、一対のガイドレール6のうちの上昇側ワイヤ9が固定されたリア側キャリアプレート5Bを支持するリア側ガイドレール6Bに固定されている。
【0048】
上昇側ワイヤ9は、リア上側支持プーリ7B1と駆動部8との間では、外部から覆われることなく露出した状態で直線的に張られている。したがって、上昇側ワイヤ9の張力維持のためのアウターケーシングは必要ない。
【0049】
また、本実施形態のウインドレギュレータ4は、下降側ワイヤ10のワイヤ本体10cにおける駆動部8とフロント下側支持プーリ7A2との間を覆って下降側ワイヤ10を往復移動自在に支持するアウターケーシング13をさらに備えている。
【0050】
アウターケーシング13は、下降側ワイヤ10のワイヤ本体10cを往復移動自在に支持し、かつ多少の曲げを許容するが、座屈しない内部の剛性を有する。例えば、アウターケーシング13は、複数の金属製リングまたは金属製コイルからなる内層と、内層の表面を覆う樹脂またはゴムなどの外層とを有する。アウターケーシング13の両端は、アウタ固定具15を介して、駆動部8のハウジング33およびフロント側ガイドレール6Aの下側のプーリ支持部6cに固定されている。
【0051】
さらに、アウターケーシング13の中間部は、筒状のゴムパッド16で覆われているので、アウターケーシング13が周囲の部品(ドアインナー2cなど)に接触することによる異音を防ぐことが可能である。
【0052】
また、本実施形態のウインドレギュレータ4は、接続ワイヤ12のワイヤ本体12cにおける駆動部8とフロント上側支持プーリ7A1とリア下側支持プーリ7B2の間を覆って接続ワイヤ12を往復移動自在に支持するアウターケーシング14をさらに備えている。アウターケーシング14の両端は、アウタ固定具17を介して、フロント側ガイドレール6Aの上側のプーリ支持部6cおよびリア側ガイドレール6Bの下側のプーリ支持部6cに固定されている。さらに、アウターケーシング14の中間部は、異音防止のための筒状のゴムパッド16で覆われている。
【0053】
(本実施形態の特徴)
(1)
本実施形態のウインドレギュレータ4は、図1~3に示されるように、ドアパネル2および当該ドアパネル2の開口2bを開閉するドアガラス3を有する車両のドア1に取り付けられる。ウインドレギュレータ4は、ドアガラス3に固定される一対のキャリアプレート5と、ドアパネル2に固定され、一対のキャリアプレート5を上下方向Zに昇降可能に支持する一対のガイドレール6と、一対のガイドレール6のそれぞれの上部および下部に回転自在に取り付けられた4個の支持プーリ7と、リア側キャリアプレート5Bを上昇させるためにその上部に固定されるとともにリア上側支持プーリ7B1によって往復移動自在に支持された上昇側ワイヤ9と、一端がフロント側キャリアプレート5Aを下降させるためにその下部に固定されるとともにフロント下側支持プーリ7A2によって往復移動自在に支持された下降側ワイヤ10と、上昇側ワイヤ9および下降側ワイヤ10のそれぞれの他端を巻き取るドラム32と、当該ドラム32を正逆両方向に回転させるモータ31とを備えた駆動部8とを備える。
【0054】
上記のウインドレギュレータ4では、駆動部8は、一対のガイドレール6のうちの上昇側ワイヤ9が固定されたリア側キャリアプレート5Bを支持するリア側ガイドレール6Bに固定されている。さらに、上昇側ワイヤ9は、リア上側支持プーリ7B1と駆動部8との間では、外部から覆われることなく露出した状態で直線的に張られている。この構成では、駆動部8と上昇側ワイヤ9が同じリア側ガイドレール6Bに配置されているので、上昇側ワイヤ9は、ガイドレール6間にまたがっておらず、アウターケーシングが無くても直線的に張ることが可能である。このため、上昇側ワイヤ9は、アウターケーシングで覆わなくても張力を維持することができる。その結果、動力負荷の高い上昇側ワイヤ9とアウターケーシングとの間の摩擦抵抗が無くなり、上昇側ワイヤ9の摩擦抵抗を大幅に低減することが可能である。これにより、駆動部8のモータ31への負荷を低減することが可能になる。
【0055】
(2)
本実施形態のウインドレギュレータ4では、図1~3に示されるように、上昇側ワイヤ9および下降側ワイヤ10は、一対のガイドレール6が並ぶ方向と直交する方向から見て、ガイドレール6と重複しない位置に配置されている。
【0056】
ガイドレール6は、ドアパネル2の形状に合わせて設計されるので、ドアパネル2が車幅方向外側に膨らむ形状である場合には、ドアパネル2の形状に合わせて、図7に示されるように、一対のガイドレール6が並ぶ方向と直交する方向に反るように延びるので、上昇側ワイヤ9および下降側ワイヤ10(および接続ワイヤ12)がガイドレール6に接触することが懸念される。しかし、上記の構成では、図1~3に示されるように、上昇側ワイヤ9および下降側ワイヤ10(および接続ワイヤ12)は、一対のガイドレール6が並ぶ方向と直交する方向から見て、ガイドレール6と重複しない位置に配置されているので、上昇側ワイヤ9および下降側ワイヤ10のいずれもガイドレール6に接触するおそれがない。したがって、ワイヤとガイドレール6の間の摺動抵抗が発生しないので、駆動部8のモータ31への負荷を確実に低減することが可能になる。
【0057】
(3)
本実施形態のウインドレギュレータ4では、下降側ワイヤ10における駆動部8とフロント下側支持プーリ7A2との間を覆って下降側ワイヤ10を往復移動自在に支持するアウターケーシング13を備えている。
【0058】
上記のウインドレギュレータ4では、駆動部8がリア側ガイドレール6Bに固定されている構成上、下降側ワイヤ10は、駆動部8とフロント側キャリアプレート5Aとを接続するために、一対のガイドレール6の間に延びている。上記の構成では、アウターケーシング13が下降側ワイヤ10における駆動部8とフロント下側支持プーリ7A2との間を覆うことにより、下降側ワイヤ10を往復移動自在に直線または緩やかな曲線で延ばすことができ、下降側ワイヤ10の張力を維持することが可能である。これにより、下降側ワイヤ10の組付自由度が向上する。また、ドアガラス3下降時において駆動部8から下降側ワイヤ10へ与えられる張力はドアガラス3の自重によるサポート(減殺分)により小さくて済むので、上記のように下降側ワイヤ10をアウターケーシング13で覆っていても摺動抵抗を抑えることができる。
【0059】
(4)
本実施形態のウインドレギュレータ4では、駆動部8は、一対のガイドレール6がフロントサイドドア1に固定される場合における車両後方側X2のガイドレール6、すなわち、リア側ガイドレール6Bに固定される。このように駆動部8がリア側ガイドレール6Bに固定される構成にする(すなわち、上記特許文献1に記載されている駆動部がフロント側ガイドレールに固定された構成からリア側ガイドレールに固定された構成に変更する)ことにより、上昇側ワイヤ9の摩擦抵抗を大幅に低減する上記の構成を容易に実現することができる。
【0060】
なお、本発明のウインドレギュレータ4では、駆動部8は、一対のガイドレール6のうちの上昇側ワイヤ9が固定されたキャリアプレート5を支持するガイドレールに固定されており、さらに、上昇側ワイヤ9は、支持プーリ7と駆動部8との間では、外部から覆われることなく露出した状態で直線的に張られていればよい。したがって、本発明のウインドレギュレータ4は、上記実施形態のように一対のガイドレール6がフロントサイドドア1に固定されるだけでなく、リアサイドドアに固定してもよい。この場合においても上記(1)~(3)の作用効果を奏することが可能である。
【0061】
(5)
本実施形態の車両のドア構造は、開口2bを有するドアパネル2と、ドアガラス3と、 ドアガラス3を上昇または下降することでドアパネル2の開口2bを開閉する上記の構成のウインドレギュレータ4とを備える。
【0062】
上記のドア構造では、上記の構成のウインドレギュレータ4を備えているので、動力負荷の高い上昇側ワイヤ9とアウターケーシングとの間の摩擦抵抗が無くなり、上昇側ワイヤ9の摩擦抵抗を大幅に低減することが可能である。これにより、駆動部8のモータ31への負荷を低減することが可能になる。
【0063】
(変形例)
(A)
上記の実施形態のウインドレギュレータ4では、図1~3に示されるように、駆動部8のモータ31およびドラム32は、リア側キャリアプレート5Bおよびドアガラス3に接触しないように、リア側ガイドレール6Bよりも車内側(図2の紙面手前側)に位置しているが、本発明では駆動部8の配置はこれに限定されない。
【0064】
本発明の変形例として、図4~6に示されるように、駆動部8をリア側ガイドレール6Bの下側へ移動して、リア側キャリアプレート5Bおよびドアガラス3が最下方の位置まで下降してもこれらに接触しない位置まで退避してもよい。
【0065】
図4は、本発明の変形例に係るウインドレギュレータ4を備えたドア構造の全体構成を示すドアパネル2のドアアウター2aおよびウインドレギュレータ4を車内側から見た図であって、駆動部8をリア側ガイドレール6Bの下側のリア下側支持プーリ7B2以下の高さに配置した図である。図5は、図4のドア構造においてシート30の位置を概略的に示した説明図である。図6は、本発明の他の変形例に係るウインドレギュレータ4を備えたドア構造の全体構成を示すドアパネル2のドアアウター2aおよびウインドレギュレータ4を車内側から見た図であって、駆動部8をプッシャ25の位置に配置してプッシャ25として機能する構成にした図である。なお、図4~6は、いずれもドアインナー2cを取り外した状態の図である。
【0066】
図4~6に示される変形例では、駆動部8は、ドラム32の高さがリア側ガイドレール66Bのリア下側支持プーリ7B2の高さ以下になり、かつ、モータ31およびドラム32がリア下側支持プーリ7B2よりも車幅方向外側にあるような位置に、配置されている。
【0067】
駆動部8が上記の位置に配置されることにより、ドラム32の高さがリア下側支持プーリ7B2の高さ以下になるとともに、モータ31およびドラム32が当該リア下側支持プーリ7B2よりも車幅方向外側(図4~6の紙面奥側)に位置する。そのため、モータ31およびドラム32がリア側キャリアプレート5Bおよびドアガラス3と干渉することを防止しながら、モータ31およびドラム32の車室内への突出量を抑えることができる。
【0068】
また、図4~6に示される変形例では、ガイドレール6は、本体部6aを細くするとともにプーリ支持部6b(図2参照)を無くした構成である。支持プーリ7は、本体部6aの上部および下部に回転自在に取り付けられている。この図4~6の変形例においても、上記実施形態と同様に、上昇側ワイヤ9および下降側ワイヤ10は、一対のガイドレール6が並ぶ方向と直交する方向から見て、ガイドレール6の本体部6aと重複しない位置に配置されており、上昇側ワイヤ9および下降側ワイヤ10の摩擦抵抗を確実に低減することが可能である。
【0069】
(B)
また、図6に示される変形例のように、駆動部8は、車両が側方から衝突荷重を受けた際に乗員を車内側に押すプッシャ25(図5~6参照)として機能するように構成されるようにしてもよい。
【0070】
通常のプッシャ25(図5~6参照)は、鋼板などの剛性を有する板状部材などからなり、車両が側方から衝突荷重を受けた際に乗員を車内側に押すことができるように、シート30の座面30aに座る乗員の股関節の位置に対応するヒップポイント50を含む範囲(言い換えれば、座面30a近傍の高さ)に配置される。プッシャ25は、ドアアウター2aを支持する最下方のビーム24に固定されている。
【0071】
そこで、図6に示される変形例では、駆動部8は、プッシャ25としての機能を発揮するように、上記のプッシャ25の代わりに、ヒップポイント50を含む範囲に配置される。さらに詳しくは、駆動部8は、車両前後方向Xおよび上下方向Zにおいてプッシャ25と同じ位置に配置されるが、ビーム24よりも車幅方向外側(図6の紙面奥側)にある点でプッシャ25とは異なる。
【0072】
また、駆動部8は、プッシャ25としての機能を発揮するように、プッシャ25と同程度の剛性を有するように、モータ31、ドラム32、およびハウジング33が強化されているのが好ましい。
【0073】
上記のような図6に示される変形例では、車両側突時において駆動部8がプッシャ25として機能して乗員を車内側に押すことにより、乗員に作用する衝突荷重のピークを抑えることができ、乗員への衝撃を緩和することが可能になる。これにより、従来のプッシャ25は不要になる。
【0074】
図6に示される駆動部8は、プッシャ25として機能するために、上下方向Zにおいて車室内のシート30のヒップポイント50を含む範囲に配置されている。駆動部8は、言い換えれば、シート30の座面30a近傍の高さに位置している。このような構成では、車両側突時に駆動部8を乗員の股関節付近の部分に確実に当てて乗員を車内側へ押すことが可能になり、乗員への衝撃を確実に緩和することが可能になる。
【符号の説明】
【0075】
1 フロントサイドドア(ドア)
2 ドアパネル
2b 開口
3 ドアガラス
4 ウインドレギュレータ
5、5A、5B キャリアプレート
6、6A、6B ガイドレール
7、7A1、7A2、7B1、7B2 支持プーリ
8 駆動部
9 上昇側ワイヤ
10 下降側ワイヤ
11 駆動ワイヤ
12 接続ワイヤ
13、14 アウターケーシング
25 プッシャ
30 シート
30a 座面
31 モータ
32 ドラム
50 ヒップポイント
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7