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  • 特開-高分子分散型液晶フィルム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136816
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】高分子分散型液晶フィルム
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/13 20060101AFI20240927BHJP
   G02F 1/1334 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
G02F1/13 505
G02F1/1334
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048075
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003845
【氏名又は名称】弁理士法人籾井特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大塚 雅徳
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 健太
(72)【発明者】
【氏名】平井 真理子
【テーマコード(参考)】
2H088
2H189
【Fターム(参考)】
2H088EA34
2H088GA02
2H088GA03
2H088GA04
2H088GA10
2H088GA13
2H088HA01
2H088HA02
2H088JA06
2H088KA02
2H088KA06
2H088KA26
2H088KA27
2H088MA01
2H088MA02
2H189AA04
2H189CA06
2H189HA16
2H189JA06
2H189KA01
2H189KA02
2H189KA18
2H189LA01
2H189LA03
2H189MA15
(57)【要約】
【課題】着色状態と透明状態とを切り替え可能であり、かつ、着色状態における透明性が向上されたPDLCフィルムを提供すること。
【解決手段】第1の透明導電性フィルムと、高分子分散型液晶層と、第2の透明導電性フィルムと、をこの順に含む、高分子分散型液晶フィルムであって、前記高分子分散型液晶層が、高分子マトリクスと、前記高分子マトリクス中に分散しており、液晶成分と二色性色素とを含む液滴と、を含み、前記液滴の平均粒子径が、1μm以下であり、着色状態におけるクラリティが、90以上である、高分子分散型液晶フィルム。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の透明導電性フィルムと、高分子分散型液晶層と、第2の透明導電性フィルムと、をこの順に含む、高分子分散型液晶フィルムであって、
前記高分子分散型液晶層が、高分子マトリクスと、前記高分子マトリクス中に分散しており、液晶成分と二色性色素とを含む液滴と、を含み、
前記液滴の平均粒子径が、1μm以下であり、
着色状態におけるクラリティが、90以上である、高分子分散型液晶フィルム。
【請求項2】
前記液滴の平均粒子径が、0.01μm以上0.38μm未満である、請求項1に記載の高分子分散型液晶フィルム。
【請求項3】
前記液晶成分の複屈折が、0.25以下である、請求項1に記載の高分子分散型液晶フィルム。
【請求項4】
前記高分子分散型液晶層における前記高分子マトリクスの含有量と前記液晶成分および前記二色性色素の合計含有量との重量比(前者:後者)が、10:90~70:30である、請求項1に記載の高分子分散型液晶フィルム。
【請求項5】
前記高分子分散型液晶層の厚みが、30μm以下である、請求項1に記載の高分子分散型液晶フィルム。
【請求項6】
着色状態における全光線透過率が、50%以下である、請求項1に記載の高分子分散型液晶フィルム。
【請求項7】
着色状態におけるヘイズが、80%以下である、請求項1に記載の高分子分散型液晶フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子分散型液晶フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
一対の透明電極層の間に、高分子マトリクスと液晶成分の液滴とを含む高分子分散型液晶(Polymer Dispersed Liquid Crystal;以下、「PDLC」と称する場合がある)層を有するPDLCフィルムは、電圧の印加量に応じて、PDLC層における透過光の散乱度合いを変化させることができる。例えば、PDLCフィルムは、電圧印加状態と無印加状態とを切り替えることにより、光を散乱させる状態(散乱状態)と光を透過させる状態(透明状態)とを切り替えることができる(特許文献1)。このような機能を利用して、PDLCフィルムは、プライバシーまたはセキュリティを向上し得る調光フィルムとして、車、電車等の車両、オフィス、商業施設、住居等における窓、壁面、パーテーション等への適用が進められている。
【0003】
上記PDLCフィルムにおいて、液晶成分の液滴に二色性色素を含有させると、電圧印加状態と無印加状態とを切り替えることにより、少なくとも一部の波長の光を吸収する着色状態と光を透過させる透明状態とを切り替えることができる(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-189123号公報
【特許文献2】国際公開2022/186062
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の二色性色素を用いたPDLCフィルムは、着色状態における透明性が低い傾向にある。よって、透明性や明瞭な視認性が求められる用途等においては、着色状態における透明性が向上されたPDLCフィルムへの要望が存在する。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、着色状態と透明状態とを切り替え可能であり、かつ、着色状態における透明性が向上されたPDLCフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]本発明の1つの局面によれば、第1の透明導電性フィルムと、高分子分散型液晶層と、第2の透明導電性フィルムと、をこの順に含む、高分子分散型液晶フィルムであって、前記高分子分散型液晶層が、高分子マトリクスと、前記高分子マトリクス中に分散しており、液晶成分と二色性色素とを含む液滴と、を含み、前記液滴の平均粒子径が、1μm以下であり、着色状態におけるクラリティが、90以上である、高分子分散型液晶フィルムが提供される。
[2]上記[1]に記載の高分子分散型液晶フィルムにおいて、上記液滴の平均粒子径が、0.01μm以上0.38μm未満であってよい。
[3]上記[1]または[2]に記載の高分子分散型液晶フィルムにおいて、前記液晶成分の複屈折が、0.25以下であってよい。
[4]上記[1]から[3]のいずれかに記載の高分子分散型液晶フィルムにおいて、前記高分子分散型液晶層における前記高分子マトリクスの含有量と前記液晶成分および前記二色性色素の合計含有量との重量比(前者:後者)が、10:90~70:30であってよい。
[5]上記[1]から[4]のいずれかに記載の高分子分散型液晶フィルムにおいて、前記高分子分散型液晶層の厚みが、30μm以下であってよい。
[6]上記[1]から[5]のいずれかに記載の高分子分散型液晶フィルムにおいて、着色状態における全光線透過率が、50%以下であってよい。
[7]上記[1]から[6]のいずれかに記載の高分子分散型液晶フィルムにおいて、着色状態におけるヘイズが、80%以下であってよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態によれば、着色状態と透明状態とを切り替え可能であり、かつ、着色状態における透明性が向上されたPDLCフィルムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の1つの実施形態におけるPDLCフィルムの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。なお、本明細書中で、数値範囲を表す「~」は、その上限および下限の数値を含む。
【0011】
A.高分子分散型液晶フィルム
本発明の実施形態による高分子分散型液晶フィルムは、第1の透明導電性フィルムと、高分子分散型液晶層と、第2の透明導電性フィルムと、をこの順に含み、上記高分子分散型液晶層が、高分子マトリクスと、上記高分子マトリクス中に分散しており、液晶成分と二色性色素とを含む液滴(以下、「液晶液滴」と称する場合がある)と、を含み、上記液滴の平均粒子径が、1μm以下であり、着色状態におけるクラリティが、90以上である。
【0012】
上記の通り、PDLCフィルムの外観は、印加される電圧に応じて変化する。1つの実施形態において、上記PDLCフィルムは、電圧印加時に透明状態であり、電圧無印加時に着色状態である(ノーマルモード)。別の実施形態において、PDLCフィルムは、電圧印加時に着色状態であり、電圧無印加時に透明状態である(リバースモード)。
【0013】
図1は、本発明の実施形態によるノーマルモードのPDLCフィルムの一例の構成を説明する概略断面図であり、図1(a)はPDLC層に電圧が印加されていない状態(着色状態)を示し、図1(b)はPDLC層に電圧が印加されている状態(透明状態)を示す。PDLCフィルム100は、第1の透明導電性フィルム10と、高分子マトリクス22と高分子マトリクス22中に分散した液晶液滴25とを含むPDLC層20と、第2の透明導電性フィルム30と、をこの順に含む。液晶液滴25は、液晶成分23と二色性色素24とを含有する、いわゆるゲスト-ホスト液晶である。図1(a)に示すように、電圧無印加時においては、液晶液滴25中の液晶成分23および二色性色素24が配向しておらず、二色性色素24によって光が吸収される結果、PDLCフィルム100は着色状態となる。一方、図1(b)に示すように、電圧印加時においては、液晶成分23が電界方向に沿って配向し、二色性色素24も液晶成分23に追随して配向する。これにより、液晶液滴25の屈折率と高分子マトリクス22の屈折率とが揃う結果、PDLCフィルム100は透明状態となる。
【0014】
図示しないが、リバースモードのPDLCフィルムによれば、透明導電性フィルム表面に配向膜を設けることによって、電圧無印加時に液晶液滴25中の液晶成分23および二色性色素24を配向させて透明状態とし、電圧を印加することにより液晶成分23および二色性色素24の配向状態が変化する結果、着色状態とすることができる。
【0015】
着色状態におけるPDLCフィルムのクラリティは、例えば90以上、好ましくは92以上、より好ましくは95以上、さらに好ましくは97以上である。クラリティの上限は、100である。クラリティは、狭角散乱度に対応し、PDLCフィルムに入射した光の平行光の進行方向に対して±2.5°の角度範囲の透過率である。クラリティが高いことは、PDLCフィルムを通して見た像の境界が明瞭であることを意味する。クラリティは、PDLCフィルムを透過した光のなかで、当該PDLCフィルムに入射した光の平行光の光軸に対して直進する直進光の光量を光量Lとし、当該平行光の光軸に対する角度が±2.5°以内である狭角散乱光の光量を光量Lとするときに、以下の式(1)によって算出される。
100×(L-L)/(L+L) … 式(1)
【0016】
着色状態におけるPDLCフィルムの全光線透過率は、例えば50%以下であり、40%以下、30%以下、20%以下、または10%以下であってよく、例えば0.5%以上であり、1%以上であってよい。透明状態におけるPDLCフィルムの全光線透過率は、例えば15%以上であり、20%以上、30%以上、または50%以上であってよく、例えば99%以下である。PDLCフィルムの透明状態と着色状態とにおける全光線透過率の差は、例えば10%以上であり、20%以上または30%以上であってよい。全光線透過率は、JIS K 7361に従って測定され得る。
【0017】
着色状態におけるPDLCフィルムのヘイズは、例えば80%以下であり、60%以下、50%以下、または45%以下であってよく、例えば5%以上である。透明状態におけるPDLCフィルムのヘイズは、例えば30%以下であり、20%以下、10%以下、または5%以下であってよく、例えば0.1%以上である。PDLCフィルムの透明状態と着色状態とにおけるヘイズの差は、例えば10%以上であり、20%以上、30%以上または40%以上であってもよい。ヘイズはJIS K 7136に従って測定され得る。
【0018】
電圧印加時にPDLCフィルムに印加される電圧は、PDLCフィルムを動作させ得る電圧(動作電圧)であり、例えば5V~300V、好ましくは10V~200Vであり得る。本明細書において、「電圧印加時」とは、PDLCフィルムに動作電圧が印加された状態を意味し、例えば150Vの電圧が印加された状態であり得る。
【0019】
PDLCフィルムの全体厚みは、例えば30μm~250μm、好ましくは50μm~150μmである。
【0020】
A-1.第1の透明導電性フィルム
第1の透明導電性フィルム10は、代表的には、第1の透明基材12とその一方の側(PDLC層20側)に設けられた第1の透明電極層14とを有する。第1の透明導電性フィルム10は、必要に応じて、第1の透明基材12の片側または両側にハードコート層を有していてもよく、また、第1の透明基材12と第1の透明電極層14との間に屈折率調整層を有していてもよい。
【0021】
第1の透明導電性フィルムの表面抵抗値は、好ましくは1Ω/□~1000Ω/□であり、より好ましくは5Ω/□~300Ω/□であり、さらに好ましくは10Ω/□~200Ω/□である。
【0022】
第1の透明導電性フィルムのヘイズ値は、好ましくは20%以下であり、より好ましくは10%以下であり、さらに好ましくは0.1%~10%である。
【0023】
第1の透明導電性フィルムの全光線透過率は、好ましくは40%以上であり、より好ましくは60%以上であり、さらに好ましくは80%以上である。
【0024】
第1の透明基材は、任意の適切な材料を用いて形成され得る。代表的には、第1の透明基材は、熱可塑性樹脂を主成分とする高分子フィルムである。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル系樹脂;ポリノルボルネン等のシクロオレフィン系樹脂;アクリル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;セルロース系樹脂等が挙げられる。なかでも好ましくは、ポリエステル系樹脂、シクロオレフィン系樹脂またはアクリル系樹脂である。これらの樹脂は、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性等に優れる。上記熱可塑性樹脂は、単独で、または2種以上組み合わせて用いてもよい。また、偏光板に用いられるような光学フィルム、例えば、低位相差基材、高位相差基材、位相差板、吸収型偏光フィルム、偏光選択反射フィルム等を第1の透明基材として用いることも可能である。
【0025】
第1の透明基材の厚みは、好ましくは200μm以下であり、より好ましくは3μm~100μmであり、さらに好ましくは5μm~70μmである。第1の透明基材の厚みを200μm以下とすることにより、PDLC層の機能を十分に発揮させることができる。
【0026】
第1の透明基材の全光線透過率は、好ましくは40%以上であり、より好ましくは60%以上であり、さらに好ましくは80%以上である。
【0027】
第1の透明電極層は、例えば、インジウム錫酸化物(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化錫(SnO)等の金属酸化物を用いて形成され得る。この場合、金属酸化物は、アモルファス金属酸化物であってもよく、結晶化金属酸化物であってもよい。第1の透明電極層はまた、銀ナノワイヤー(AgNW)等の金属ナノワイヤ、カーボンナノチューブ(CNT)、有機導電膜、金属層またはこれらの積層体によって形成され得る。好ましくはITOを含む透明電極層が形成される。ITOを含む透明電極層は透明性に優れる。第1の透明電極層は、目的に応じて、所望の形状にパターニングされ得る。
【0028】
第1の透明電極層の全光線透過率は、好ましくは85%以上であり、より好ましくは87%以上であり、さらに好ましくは90%以上である。このような範囲の全光線透過率を有する透明電極層を用いることにより、透明状態において高い全光線透過率を有するPDLCフィルムが得られ得る。当該全光線透過率は高いほど好ましく、その上限は、例えば、99%である。
【0029】
第1の透明電極層の厚みは、例えば10nm以上であり、好ましくは15nm以上である。第1の透明電極層の厚みは、例えば50nm以下であり、好ましくは35nm以下であり、より好ましくは30nm以下である。
【0030】
第1の透明電極層は、例えば、スパッタリングによって、第1の透明基材の一方の面に設けられる。スパッタリングによって金属酸化物層を形成後、アニーリングすることにより結晶化することができる。アニーリングは、例えば120℃~300℃、10分~120分熱処理することにより行われる。
【0031】
屈折率調整層およびハードコート層については、当該技術分野において周知の構成が採用され得るので、その詳細な構成については記載を省略する。
【0032】
A-2.高分子分散型液晶層
PDLC層20は、高分子マトリクス22と高分子マトリクス22中に分散した液晶液滴25とを含む。液晶液滴の平均粒子径は、代表的には1μm以下であり、例えば0.5μm以下である。粒子径が小さい液晶液滴を含むPDLC層は散乱性が低くなることから、液晶液滴の平均粒子径を1μm以下とすることにより、クラリティが高いPDLCフィルムが得られ得る。散乱性をより低くする観点から、液晶液滴の平均粒子径は、可視光の波長以下であることが好ましい。具体的には、液晶液滴の平均粒子径は、好ましくは0.38μm未満、より好ましくは0.3μm未満、さらに好ましくは0.2μm未満、さらにより好ましくは0.18μm以下、さらにより好ましくは0.15μm以下、さらにより好ましくは0.12μm以下である。液晶液滴の平均粒子径の下限は、本発明の効果が得られる限り制限されず、例えば0.01μm以上または0.05μm以上であり得る。上記液晶液滴の平均粒子径は、体積平均粒子径であり、例えば、実施例に記載の方法で求めることができる。
【0033】
液晶液滴の粒子径は、比較的狭い粒度分布を有することが好ましい。液晶液滴の粒子径の変動係数(CV値)は、例えば0.4未満であり得、好ましくは0.35以下、より好ましくは0.3以下であり得る。変動係数は以下の式から算出することができる。
CV値=液晶液滴の粒子径分布の標準偏差/平均粒子径
【0034】
高分子マトリクスは、任意の適切な樹脂で構成され得る。高分子マトリクス形成用樹脂は、光透過率、液晶成分の屈折率、透明導電性フィルムとの密着力等に応じて適切に選択され得る。高分子マトリクス形成用樹脂は、液晶成分の屈折率と近似した屈折率を有することが好ましい。
【0035】
高分子マトリクス形成用樹脂の具体例としては、ウレタン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられる。これらは、水溶性樹脂または水分散性樹脂であることが好ましい。高分子マトリクス形成用樹脂は、1種のみ用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
液晶成分としては、任意の適切な液晶化合物を単独でまたは二種以上組み合わせて用いることができる。液晶成分の波長589nmにおける複屈折(Δn=ne-no;neは異常光屈折率、noは常光屈折率)は、例えば0.25以下である。クラリティが高いPDLCフィルムを得る観点から、上記複屈折は、好ましくは0.2以下、より好ましくは0.15以下であり、例えば0.12以下、また例えば0.1以下であってよい。上記複屈折は、例えば0.01以上であり、0.05以上または0.08以上であってよい。上記複屈折を有する液晶成分を用いることにより、電圧無印加時のPDLC層の散乱性を低下させることができ、結果として、クラリティが高いPDLCフィルムを得ることができる。
【0037】
液晶成分の誘電異方性は、正でも負でもよい。液晶成分は、例えば、ネマティック型液晶、スメクティック型液晶、またはコレステリック型液晶であり得る。透明状態において優れた透明性を実現できることから、ネマティック型液晶を用いることが好ましい。
【0038】
ネマティック型の液晶化合物としては、ビフェニル系化合物、フェニルベンゾエート系化合物、シクロヘキシルベンゼン系化合物、アゾキシベンゼン系化合物、アゾベンゼン系化合物、アゾメチン系化合物、ターフェニル系化合物、ビフェニルベンゾエート系化合物、シクロヘキシルビフェニル系化合物、フェニルピリジン系化合物、シクロヘキシルピリミジン系化合物、コレステロール系化合物、フッ素系化合物等が挙げられる。
【0039】
二色性色素としては、液晶成分へ相溶し得る任意の適切な二色性色素を用いることができる。Δεが正の二色性色素でも負の二色性色素でもよい。二色性色素自体が液晶性を示してもよい。二色性色素は、1種のみ用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
二色性色素の具体例としては、アゾ系染料、アントラキノン系染料、ナフトキノン系染料、ペリレン系染料、キノフタロン系染料、テトラジン系染料、ベンゾチアジアゾール系染料等が挙げられる。なかでも、吸光係数、液晶成分への溶解度、耐光性等の観点から、二色性色素はアントラキノン系染料またはアゾ系染料を含むことが好ましい。例えば、日本学術振興会第142委員会編;「液晶デバイスハンドブック」日本工業新聞社(1989年)、第192頁~第196頁及び第724頁~第730頁に記載のアゾ系染料、アントラキノン系染料またはこれらの混合物を用いることができる。また、種々の二色性色素が市販されており、これらを適宜用いることができる。
【0041】
PDLC層は、必要に応じて、任意の適切な成分をさらに含んでもよい。このような任意成分としては、界面活性剤、レベリング剤、架橋剤、分散安定剤等が挙げられる。
【0042】
PDLC層における液晶成分の含有割合は、例えば30重量%~90重量%、好ましくは35重量%~85重量%、より好ましくは40重量%~80重量%である。
【0043】
PDLC層における二色性色素の含有量は、液晶成分100重量部に対して、例えば0.1重量部~20重量部、好ましくは1重量部~15重量部、より好ましくは3重量部~10重量部である。
【0044】
PDLC層における高分子マトリクスの含有量と液晶成分および二色性色素の合計含有量との重量比(前者:後者)は、例えば10:90~70:30、好ましくは15:85~65:35、より好ましくは20:80~60:40である、
【0045】
PDLC層における高分子マトリクスと液晶成分と二色性色素との合計含有割合は、例えば80重量%以上、好ましくは90重量%以上、より好ましくは95重量%以上であり、例えば100重量%以下、好ましくは99重量%以下である。
【0046】
PDLC層の厚みは、好ましくは40μm以下、より好ましくは30μm以下であり、例えば25μm以下、また例えば20μm以下であってよく、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上であり、例えば5μm以上、また例えば10μm以上であってよい。PDLC層の厚みが上記範囲内であると、クラリティが大きく、着色性も高いPDLCフィルムが好適に得られ得る。
【0047】
A-3.第2の透明導電性フィルム
第2の透明導電性フィルム30は、代表的には、第2の透明基材32とその一方の側(PDLC層20側)に設けられた第2の透明電極層34とを有する。第2の透明導電性フィルム30は、必要に応じて、第2の透明基材32の片側または両側にハードコート層を有していてもよく、また、第2の透明基材32と第2の透明電極層34との間に屈折率調整層を有していてもよい。
【0048】
第2の透明導電性フィルムの表面抵抗値は、好ましくは1Ω/□~1000Ω/□であり、より好ましくは5Ω/□~300Ω/□であり、さらに好ましくは10Ω/□~200Ω/□である。
【0049】
第2の透明導電性フィルムのヘイズ値は、好ましくは20%以下であり、より好ましくは10%以下であり、さらに好ましくは0.1%~10%である。
【0050】
第2の透明導電性フィルムの全光線透過率は、好ましくは40%以上であり、より好ましくは60%以上であり、さらに好ましくは80%以上である。
【0051】
第2の透明基材および第2の透明電極層については、第1の透明基材および第1の透明電極層と同様の説明をそれぞれ適用することができる。第2の透明導電性フィルムは、第1の透明導電性フィルムと同じ構成を有していてもよく、異なる構成を有していてもよい。
【0052】
B.高分子分散型液晶フィルムの製造方法
A項に記載のPDLCフィルムは、任意の適切な製造方法で製造することができる。A項に記載のPDLCフィルムの製造方法は、例えば、
液晶成分と二色性色素と分散媒とを混合して、上記液晶成分と上記二色性色素とを含有する粒子を含む液晶エマルションを調製すること(工程A)、
上記液晶エマルションと高分子マトリクス形成用樹脂とを混合して、上記粒子を含む塗工液を調製すること(工程B)、
第1の透明導電性フィルムに、上記塗工液を塗工して、塗布層を得ること(工程C)、
該塗布層を乾燥させて、高分子マトリクスと上記高分子マトリクス中に分散した上記液晶成分および上記二色性色素を含有する液滴とを含むPDLC層を得ること(工程D)、および、
上記PDLC層の上に第2の透明導電性フィルムを積層すること(工程E)、
を含む。
【0053】
B-1.工程A
工程Aにおいては、液晶成分と二色性色素と分散媒とを混合して、上記液晶成分と二色性色素とを含有する粒子(以下、「液晶粒子」と称する場合がある)を含む液晶エマルションを調製する。
【0054】
分散媒としては、水または水と水混和性有機溶媒との混合溶媒が好ましく用いられ得る。水混和性有機溶媒としては、C1-3アルコール、アセトン、DMSO等が挙げられる。液晶成分および二色性色素については、A項に記載した通りである。
【0055】
液晶エマルションにおける液晶成分の含有割合は、例えば30重量%~70重量%、好ましくは40重量%~60重量%である。
【0056】
液晶エマルションにおける二色性色素の含有量は、液晶成分100重量部に対して、例えば0.1重量部~20重量部、好ましくは1重量部~15重量部、より好ましくは3重量部~10重量部である。
【0057】
液晶粒子の平均粒子径は、代表的には1μm以下であり、例えば0.5μm以下、好ましくは0.38μm未満、より好ましくは0.3μm未満、さらに好ましくは0.2μm未満、さらにより好ましくは0.18μm以下、さらにより好ましくは0.15μm以下、さらにより好ましくは0.12μm以下であり、例えば0.01μm以上または0.05μm以上であり得る。PDLC層における液晶液滴の粒子径は、液晶エマルションにおける液晶粒子の粒子径に依存し得る。よって、液晶エマルションにおける液晶粒子の平均粒子径が上記範囲内であれば、PDLC層における液晶液滴の平均粒子径を上記所望の範囲とすることができる。なお、上記液晶粒子の平均粒子径は、体積平均のメジアン径を意味し、動的光散乱式粒度分布測定装置を用いて測定され得る。
【0058】
液晶粒子の粒子径は、比較的狭い粒度分布を有することが好ましい。液晶粒子の変動係数(CV値)は、例えば0.4未満であり得、好ましくは0.35以下、より好ましくは0.3以下であり得る。
【0059】
液晶エマルションは、例えば、機械的乳化法、マイクロチャネル法、膜乳化法等によって調製され得る。好ましくは、液晶エマルションは機械的乳化法または膜乳化法で調製される。機械的乳化法によれば、粒子径が小さい液晶エマルションが効率的に得られ得る。機械的乳化法は、ホモミキサー、ホモジナイザー等の公知の分散・混合装置を用いて行うことができ、好ましくは高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー等のホモジナイザーを用いて行われ得る。また、膜乳化法によれば、粒度分布が揃ったエマルションが好適に得られ得る。膜乳化法の詳細については、特開平4-355719号公報、特開2015-40994号公報(これらは、本明細書に参考として援用される)等の開示を参照することができる。
【0060】
液晶成分、二色性色素、および分散媒の混合順は特に制限されない。例えば、液晶成分と二色性色素とを混合し、得られた混合物と分散媒とを混合してもよく、3つを同時に添加および混合してもよい。
【0061】
B-2.工程B
工程Bにおいては、工程Aで得られた液晶エマルションと高分子マトリクス形成用樹脂とを混合して、上記液晶粒子を含む塗工液を調製する。塗工液は、必要に応じて、任意の他の成分を含み得る。任意成分としては、界面活性剤、レベリング剤、架橋剤、分散安定剤等が挙げられる。これらの任意成分は、目的に応じて、工程Aにおいて液晶エマルションに添加されていてもよい。
【0062】
高分子マトリクス形成用樹脂については、A項に記載の通りである。高分子マトリクス樹脂は、例えば、高分子マトリクス形成用樹脂粒子が分散媒中に分散した樹脂分散体として、あるいは、高分子マトリクス形成用樹脂が溶媒中に溶解した樹脂溶液として、液晶エマルションと混合される。このとき、樹脂分散体の分散媒または樹脂溶液の溶媒としては、液晶エマルションの調製において用いられる分散媒と同様の物が用いられ得る。
【0063】
高分子マトリクス形成用樹脂粒子の平均粒子径は、好ましくは10nm~500nmであり、より好ましくは30nm~300nm、さらに好ましくは50nm~200nmである。樹脂の種類および/または平均粒子径の異なる2種以上の樹脂粒子を用いてもよい。高分子マトリクス形成用樹脂粒子の平均粒子径は、体積平均のメジアン径を意味し、動的光散乱式粒度分布測定装置を用いて測定され得る。
【0064】
塗工液における液晶粒子の粒子径は、液晶エマルションにおける粒子径と実質的に同一である。よって、塗工液における液晶粒子の平均粒子径(体積平均粒子径)は、代表的には1μm以下であり、例えば0.5μm以下、好ましくは0.38μm未満、より好ましくは0.3μm未満、さらに好ましくは0.2μm未満、さらにより好ましくは0.18μm以下、さらにより好ましくは0.15μm以下、さらにより好ましくは0.12μm以下であり、例えば0.01μm以上または0.05μm以上であり得る。
【0065】
塗工液の固形分における液晶成分の含有割合は、例えば30重量%~90重量%、好ましくは35重量%~85重量%、より好ましくは40重量%~80重量%である。
【0066】
塗工液における高分子マトリクスの含有量と液晶成分および二色性色素の合計含有量との重量比(前者:後者)は、例えば10:90~70:30、好ましくは15:85~65:35、より好ましくは20:80~60:40である、
【0067】
塗工液の固形分における高分子マトリクスと液晶成分と二色性色素との合計含有割合は、例えば80重量%以上、好ましくは90重量%以上、より好ましくは95重量%以上であり、例えば100重量%以下、好ましくは99重量%以下である。
【0068】
界面活性剤としては、例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤等を挙げることができる。界面活性剤の含有割合は、塗工液の固形分100重量部に対して、好ましくは1重量部~15重量部であり、より好ましくは2重量部~10重量部である。
【0069】
レベリング剤としては、例えば、アクリル系レベリング剤、フッ素系レベリング剤、シリコーン系レベリング剤等を挙げることができる。レベリング剤の含有量は、塗工液の固形分100重量部に対して、好ましくは0.1重量部~10重量部であり、より好ましくは0.5重量部~5重量部である。
【0070】
架橋剤としては、例えば、アジリジン系架橋剤、イソシアネート系架橋剤等を挙げることができる。架橋剤の含有量は、塗工液の固形分100重量部に対して、好ましくは0.5重量部~20重量部であり、より好ましくは1重量部~10重量部である。
【0071】
塗工液の固形分濃度は、例えば20重量%~60重量%、好ましくは30重量%~50重量%であり得る。
【0072】
B-3.工程C
工程Cにおいては、第1の透明導電性フィルムに、B項で調製した塗工液を塗布して、塗布層を得る。
【0073】
塗工液は、代表的には、第1の透明導電性フィルムの透明電極層側表面に塗布される。第1の透明導電性フィルムについては、A項に記載した通りである。
【0074】
塗布時における塗工液の粘度は、好ましくは20mPas~400mPasであり、より好ましくは30mPas~300mPasであり、さらに好ましくは40mPas~200mPasである。粘度が20mPas未満の場合、分散媒を乾燥させる際に分散媒の対流が顕著となり、PDLC層の厚みが不安定となるおそれがある。また、粘度が400mPasを超える場合、塗工液のビードが安定しないおそれがある。塗工液の粘度は、例えば、アントンパール社製レオメーターMCR302により測定することができる。ここでの粘度は、20℃、せん断速度1000(1/s)の条件でのせん断粘度の値を用いている。
【0075】
塗布方法としては、任意の適切な方法を採用することができる。例えば、ロールコート法、スピンコート法、バーコート法、ディップコート法、ダイコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ナイフコート法(コンマコート法等)等が挙げられる。なかでも、ロールコート法が好ましい。例えば、スロットダイを用いたロールコート法による塗布に関しては、特開2019-5698号公報の記載を参照することができる。
【0076】
塗布層の厚みは、好ましくは1μm~100μmであり、より好ましくは2μm~90μmであり、さらに好ましくは5μm~75μmである。
【0077】
B-4.工程D
工程Dにおいては、塗布層を乾燥させて、高分子マトリクスと該高分子マトリクス中に分散した液晶成分の液滴とを含むPDLC層を得る。乾燥により塗布層から分散媒が除去されて高分子マトリクス形成用樹脂と液晶成分を含む粒子が残存する結果、高分子マトリクス中に液晶液滴が分散した構造を有するPDLC層が形成される。
【0078】
塗布層の乾燥は、任意の適切な方法によって行われ得る。乾燥方法の具体例としては、自然乾燥、加熱乾燥、熱風乾燥等が挙げられる。塗工液が架橋剤を含む場合、乾燥時において、高分子マトリクスの架橋構造が形成され得る。
【0079】
乾燥温度は、好ましくは20℃~150℃であり、より好ましくは25℃~80℃である。乾燥時間は、好ましくは1分~100分であり、より好ましくは2分~10分である。
【0080】
B-5.工程E
工程Eにおいては、PDLC層の上に第2の透明導電性フィルムを積層する。これにより、第1の透明導電性フィルムと、PDLC層と、第2の透明導電性フィルムとをこの順に有するPDLCフィルムが得られる。
【0081】
第2の透明導電性フィルムについては、A項に記載した通りである。PDLC層上への第2の透明導電性フィルムの積層は、代表的には、第2の透明電極層側がPDLC層と対向するように行われる。当該積層は、十分な密着性を得る観点から、好ましくはラミネーターを用いて、0.006MPa/m~7MPa/mのラミネート圧、より好ましくは0.06MPa/m~0.7MPa/mのラミネート圧をかけながら行われ得る。
【実施例0082】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例になんら限定されるものではない。各特性の測定方法は以下の通りである。また、特に明記しない限り、実施例および比較例における「部」および「%」は重量基準である。
【0083】
(1)厚み
デジタルマイクロメーター(アンリツ社製、製品名「KC-351C」)を用いて測定した。
(2)液晶エマルション中の液晶粒子の体積平均粒子径
100mLの水に液晶エマルションを数滴加えて測定試料を調製した。動的光散乱式粒子径分布測定装置(Microtrac社製、装置名「Nanotrac150」)を用いて、装置の測定ホルダに測定試料をセットし、測定可能な濃度であることを装置のモニタにて確認後に測定を行った。
(3)樹脂粒子の平均粒子径
100mLの水に樹脂分散体を数滴加えて測定試料を調製した。動的光散乱式粒子径分布測定装置(Microtrac社製、装置名「Nanotrac150」)を用いて、装置の測定ホルダに測定試料をセットし、測定可能な濃度であることを装置のモニタにて確認後に測定を行った。
(4)ヘイズ
ヘイズメーター(日本電色社製、製品名「NDH4000」)を用いて、JIS K 7136に基づいて測定した。
(5)全光線透過率
ヘイズメーター(日本電色社製、製品名「NDH4000」)を用いて、JIS K 7361に基づいて測定した。
(6)クラリティ
ヘイズメーター(BYK-GARDNER社製、製品名「haze-gard i」)を用いて、メーカー指定の方法に基づいて測定した。
(7)PDLC層中の液晶液滴の平均粒子径
冷却環境下でPDLCフィルムを水平方向にスライスし、露出したPDLC層の水平断面をミクロトームにより平滑化した。次いで、PDLC層の水平断面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察し、断面SEM画像を得た。断面SEM画像中、30μm×20μmの領域における全ての液晶液滴の断面積から面積円相当径(Heywood diameter)を算出し、相当径ごとに推定される体積で重み付けした統計を取ることで体積平均粒子径(メジアン径)を算出した。
(8)液晶成分の複屈折
液晶成分の製造業者が開示する値を用いた。
【0084】
[実施例1]
(第1および第2の透明導電性フィルム)
PET基材(厚み:50μm)の一方の面に、スパッタ法によりITO層を形成して、[透明基材/透明電極層]の構成を有する透明導電性フィルムを得た。
【0085】
(液晶エマルションの調製)
2種以上の液晶化合物を含む液晶成分(JNC社製、製品名「JC-5175XX」、複屈折Δn=0.09(ne=1.569,no=1.479、誘電率異方性Δε=7.9、粘度=32.2mPa・s)27.9部、二色性色素(林原社製、製品名「G-470」)0.26部、二色性色素(林原社製、製品名「NKX-3739」)0.53部、二色性色素(林原社製、製品名「NKX-3708」)1.31部、純水67部、および界面活性剤(第一工業製薬社製、「ノイゲンET159」)3部を混合し、高圧ホモジナイザーで処理することによって液晶エマルションを調製した。得られた液晶エマルション中の液晶粒子の平均粒子径は、170nmであった。
【0086】
(塗工液の調製)
上記液晶エマルション47.6部、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂水性分散体(DSM社製、商品名「NeoRezR967」、ポリマー平均粒子径:80nm、CV値=0.27、固形分:40wt%)32部、レベリング剤(DIC社製、製品名「F-444」)0.1部、および架橋剤(トリス〔3-(2-メチルアジリジン-1-イル)プロピオン酸〕=プロピリジントリメチル)1部、純水19.3部を混合することにより、エマルション塗工液(固形分濃度:30wt%)を得た。
【0087】
(PDLCフィルムの作製)
上記エマルション塗工液を、第1の透明導電性フィルムのITO層面に塗布し、40℃で乾燥させて、厚み16μmのPDLC層を形成した。その後、ラミネーターを用いて0.4MPa/mのラミネート圧を適用しながら、上記PDLC層の上に第2の透明導電性フィルムを、ITO層がPDLC層に対向するように積層した。これにより、PDLCフィルムを得た。
【0088】
[実施例2~8]
表1に示すように、異なる種類の液晶成分を用いたこと、液晶粒子の平均粒子径が異なる液晶エマルションを調製したこと、および/またはPDLC層の厚みを変更したこと以外は実施例1と同様にして、PDLCフィルムを得た。用いた液晶成分の特性は以下のとおりである。
・液晶成分(JNC社製、製品名「JC-5174XX」、複屈折Δn=0.098(ne=1.577,no=1.479)、誘電率異方性Δε=11.8、粘度=46.8mPa・s)
・液晶成分(JNC社製、製品名「JC-5173XX」、複屈折Δn=0.149(ne=1.651,no=1.502)、誘電率異方性Δε=10.0、粘度=48.5mPa・s)
【0089】
[比較例1]
(第1および第2の透明導電性フィルム)
PET基材(厚み:50μm)の一方の面に、スパッタ法によりITO層を形成して、[透明基材/透明電極層]の構成を有する透明導電性フィルムを得た。
【0090】
(液晶エマルションの作製)
液晶成分(JNC社製、製品名「JC-5174XX」)27.9部、二色性色素(林原社製、製品名「G-470」)0.26部、二色性色素(林原社製、製品名「NKX-3739」)0.53部、二色性色素(林原社製、製品名「NKX-3708」)1.31部、純水67部、および界面活性剤(第一工業製薬社製、「ノイゲンET159」)3部を混合し、ホモジナイザーにて100rpmで10分攪拌して粗分散した。粗分散液を、粒度分布の揃った分離膜(エス・ピー・ジーテクノ社製、「SPGポンピングコネクター」、細孔径5μm)に、室温にて膜の外から内に通過するように流速80mL/分/cmの速度で透過させた。この操作を10回実施した。得られた液晶エマルション中の液晶粒子の体積平均粒子径は2.1μmであった。
【0091】
(塗工液の調製)
上記液晶エマルション47.6部、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂水性分散体(DSM社製、商品名「NeoRezR967」、ポリマー平均粒子径:80nm、CV値=0.27、固形分:40wt%)32部、レベリング剤(DIC社製、製品名「F-444」)0.1部、および架橋剤(トリス〔3-(2-メチルアジリジン-1-イル)プロピオン酸〕=プロピリジントリメチル)1部、純水19.3部を混合することにより、エマルション塗工液(固形分濃度:30wt%)を得た。
【0092】
(PDLCフィルムの作製)
上記エマルション塗工液を、第1の透明導電性フィルムのITO層面に塗布し、40℃で乾燥させて、厚み16μmのPDLC層を形成した。その後、ラミネーターを用いて0.4MPa/mのラミネート圧を適用しながら、上記PDLC層の上に第2の透明導電性フィルムを、ITO層がPDLC層に対向するように積層した。これにより、PDLCフィルムを得た。
【0093】
[比較例2]
表1に示すように、異なる種類の液晶成分を用いたこと以外は比較例1と同様にして、PDLCフィルムを得た。
【0094】
<目視透明度評価>
黒インクで文字を印刷した普通紙を実施例および比較例で得たPDLCフィルム(電圧無印加の着色状態)を介して目視で観察した際の文字の視認性に基づいて、以下の基準で目視透明度を評価した。なお、普通紙とPDLCフィルムとの距離は約200mmであり、観察者の眼から普通紙までの距離は200mmであった。各PDLCフィルムのクラリティ、全光線透過率、およびヘイズと併せて評価結果を表1に示す。
≪評価基準≫
優:透明度が非常に高く、文字を明瞭に視認できる。
良:透明度がやや高く、文字を視認できる。
不良:透明度が低く、文字を視認できない。
【0095】
【表1】
【0096】
表1に示されるとおり、実施例のPDLCフィルムは、着色状態における散乱性が低く、高いクラリティを示した。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明のPDLCフィルムは、広告、案内板等の表示体、スマートウインドウ等の種々の用途に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0098】
100 PDLCフィルム
10 第1の透明導電性フィルム
20 PDLC層
22 高分子マトリクス
23 液晶成分
24 二色性色素
25 液晶液滴
30 第2の透明導電性フィルム

図1