(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013682
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】空気圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04B 49/10 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
F04B49/10 331H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022115958
(22)【出願日】2022-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雄二
(72)【発明者】
【氏名】太田 尚博
(72)【発明者】
【氏名】松坂 岳廣
【テーマコード(参考)】
3H145
【Fターム(参考)】
3H145AA05
3H145AA15
3H145AA26
3H145AA42
3H145BA33
3H145CA24
3H145EA16
3H145EA49
3H145EA50
(57)【要約】
【課題】
コストアップを抑制しつつ、適正なタイミングでクーラ清掃を推奨することが可能なパッケージ型で空冷式の空気圧縮機を提供する。
【解決手段】
パッケージ型で空冷式の空気圧縮機であって、パッケージには空冷式クーラとモータへの二つの冷却経路と、この冷却経路が外気を取り入れる二つの冷却風の吸込み口と、クーラとモータ冷却後の冷却風をまとめて外部へ排出するファンおよび排出口と、モータの軸両端に配置した軸受の温度を検出する二つの温度センサとを備え、モータ軸両端の冷却風の流れ方向の上流側(反負荷側)と下流側(負荷側)に配置された軸受の温度差を演算し、その温度差が閾値未満である場合はクーラの目詰まりであることを判定する制御部と、クーラの目詰まりと判定した場合に清掃の推奨を報知する表示部と、を備える空気圧縮機。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機本体と、前記圧縮機本体を駆動するモータと、前記圧縮機本体により圧縮された空気と前記モータと前記圧縮機本体とを冷却するクーラと、前記圧縮機本体と前記モータと前記クーラとを収容する筐体と、を備えた空気圧縮機であって、
前記筐体に設けられたクーラ用吸気口により外部空気を吸気し、前記クーラを冷却するクーラ冷却経路と、前記筐体に設けられたモータ用吸気口により外部空気を吸気し、前記モータを冷却するモータ冷却経路と、を分離し、前記クーラ冷却経路と前記モータ冷却経路を合流させる開口部を有するクーラダクトと、
前記筐体に設けられ前記開口部により合流された前記クーラ冷却経路と前記モータ冷却経路の空気を前記筐体の外に排出する排気口と、
前記モータの負荷側軸受の温度を検出する第1のセンサと反負荷側軸受の温度を検出する第2のセンサと、
前記第1のセンサと前記第2のセンサの温度差を演算し、温度差が閾値未満である場合は前記クーラの目詰まりであることを判定する制御部とを有する
空気圧縮機。
【請求項2】
請求項1に記載の空気圧縮機であって、
表示部を有し、
前記制御部は、前記クーラの目詰まりであることを判定すると、警告信号を前記表示部に出力し、
前記表示部は、前記制御部からの警告信号に基づき、クーラ清掃を推奨するための表示を行う
空気圧縮機。
【請求項3】
請求項2に記載の空気圧縮機であって、
前記制御部は、
前記空気圧縮機がロード運転か否かを判定し、ロード運転時に前記第1のセンサと前記第2のセンサの温度差を演算し、温度差が閾値未満である場合は前記クーラの目詰まりであることを判定する
空気圧縮機。
【請求項4】
請求項3に記載の空気圧縮機であって、
前記圧縮機本体は、低圧段側圧縮機本体と高圧段側圧縮機本体の多段構成である
空気圧縮機。
【請求項5】
請求項3に記載の空気圧縮機であって、
前記クーラは、
前記圧縮機本体により圧縮された空気を冷却する空気用クーラと、
前記モータと前記圧縮機本体とを冷却するオイル用クーラとを有する
空気圧縮機。
【請求項6】
請求項5に記載の空気圧縮機であって、
前記圧縮機本体は、低圧段側圧縮機本体と高圧段側圧縮機本体との多段構成であり、
前記空気用クーラは、前記低圧段側圧縮機本体からの圧縮空気を冷却する低圧段吐出空気用クーラと、前記高圧段側圧縮機本体からの圧縮空気を冷却する高圧段吐出空気用クーラと、有する
空気圧縮機。
【請求項7】
圧縮機本体と、
前記圧縮機本体を駆動するモータと、
前記圧縮機本体により圧縮された空気を冷却する空気用クーラと、
前記モータと前記圧縮機本体とを冷却するオイル用クーラと、
前記圧縮機本体、前記モータ、前記空気用クーラと前記オイル用クーラを収容する筐体と、を有する空気圧縮機であって、
前記筐体は、
前記空気用クーラと前記オイル用クーラの冷却に使用される外部空気を吸気するクーラ用吸気口と、
前記モータの冷却に使用される外部空気を吸気するモータ用吸気口と、を有し、
前記空気圧縮機は、
前記筐体内で、前記クーラ用吸気口から吸気された空気により前記空気用クーラと前記オイル用クーラを冷却するクーラ冷却経路と、前記モータ用吸気口から吸気された空気により前記モータを冷却するモータ冷却経路とを分離するクーラダクトとを有し、
前記クーラダクトは、前記クーラ冷却経路と前記モータ冷却経路とを合流させる開口部を有し、
前記空気圧縮機は、
前記開口部により合流された前記クーラ冷却経路と前記モータ冷却経路の空気を、前記空気圧縮機の外部に排出する冷却風排気口を有し、
前記モータの負荷側軸受の温度を検出する第1のセンサと反負荷側軸受の温度を検出する第2のセンサと、
前記第1のセンサと前記第2のセンサの温度差を演算し、温度差が閾値未満である場合は前記空気用クーラあるいは前記オイル用クーラの目詰まりであることを判定し、警告信号を出力する制御部と、
前記制御部からの警告信号に基づき、クーラ清掃を推奨するための表示を行う表示部と、を有する
空気圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッケージ型で空冷式の空気圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
パッケージ型で空冷式の空気圧縮機においては、圧縮空気吸込み用のフィルタ(吸込みフィルタ)や圧縮空気や潤滑油冷却用の空冷式熱交換器(クーラ)が外気に含まれる塵埃等の目詰まりで能力低下するのを防止するため、既定の運転時間又は期間毎の清掃作業を取扱説明書やタッチパネル等により報知している。
【0003】
フィルタやクーラの目詰まりの進行は使用環境等で異なり、清掃タイミングが遅い場合には、圧縮空気の温度上昇による圧縮機が運転停止や、圧縮機本体の機能低下による消費動力アップや部品寿命の低下を引き起こす。汚れが酷い場合は、清掃作業工数の増加が考えられる。一方、清掃タイミングが早い場合には、余剰な作業となり、空気圧縮機の稼働効率低下やコストアップに繋がることが考えられる。
【0004】
特許文献1に示す技術では、圧縮空気吸込み用に設けた外気フィルタにおいて、圧縮機に搭載されている圧縮空気の圧力(吐出圧力)と温度(吐出温度)を検出する既存のセンサを使用し、検出した温度と圧力に閾値を設定することで、目詰まりの進行を推定し、目詰まりを判定する手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
クーラが目詰まりした場合は、圧縮空気の冷却が不足するため、特許文献1の技術によれば、センサで検出した吐出温度によってクーラの目詰まりの推定は可能である。しかし、吐出温度が吸込みフィルタ目詰まり等の別の要因で変化した場合や、オイル用など複数のクーラを使用している場合においては、クーラの目詰まりの推定精度が低くなることが考えられる。また、クーラ部に流れる冷却風の流量や冷却風経路の差圧を検出するセンサを追加することでクーラの目詰まりを推定できるが、センサ類の追加や、流量・圧力検出用の制御変更や機器追加等によりコストアップするという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題に対する解決手段を以下に示す。
【0008】
パッケージ型で空冷式の空気圧縮機であって、圧縮機本体と、圧縮機本体を駆動するモータと、圧縮機本体により圧縮された空気とモータと圧縮機本体とを冷却するクーラと、圧縮機本体とモータとクーラとを収容する筐体と、を備える。
【0009】
空気圧縮機は、筐体に設けられたクーラ用吸気口により外部空気を吸気し、クーラを冷却するクーラ冷却経路と、筐体に設けられたモータ用吸気口により外部空気を吸気し、モータを冷却するモータ冷却経路と、を分離し、クーラ冷却経路とモータ冷却経路を合流させる開口部を有するクーラダクトと、筐体に設けられ前記開口部により合流されたクーラ冷却経路とモータ冷却経路の空気を筐体の外に排出する排気口とを有する。
【0010】
空気圧縮機は、さらに、モータの負荷側軸受の温度を検出する第1のセンサと反負荷側軸受の温度を検出する第2のセンサと、第1のセンサと第2のセンサの温度差を演算し、温度差が閾値未満である場合はクーラの目詰まりであることを判定する制御部と、クーラの目詰まりと判定した場合に清掃の推奨を報知する表示部と、を備える。
【0011】
これらの手段では、クーラの目詰まり時にクーラ冷却経路を通過する冷却風量の減少に伴い、モータ冷却経路を通過する冷却風量が増加することで、モータ両軸端に備えた二つの軸受の温度差が小さくなることを利用しており、既存のセンサを使用してクーラの目詰まりを推定ができるため、コストアップを抑制しつつ、適正なタイミングでクーラ清掃の推奨を報知することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、空気圧縮機に備えた既存のセンサを使用してクーラの目詰まりを推定することで、コストアップを抑制しつつ、適正なタイミングでクーラ清掃を推奨することができる。上記以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により示す。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】空冷式オイルフリースクリュー圧縮機の概略図である。
【
図2】冷却系構造と冷却風経路を説明した図である。
【
図3】冷却風量とモータ軸受温度差との関係を示した図である。
【
図4】制御装置のフローチャートを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の具体的実施例を図面に基づき説明する。
【0015】
図1は、本実施形態の空冷式オイルフリースクリュー圧縮機の概略図である。
空気圧縮機100は、多段の圧縮機本体として低圧段側圧縮機本体2と高圧段側圧縮機本体3を備える。各圧縮機本体は互いに噛合う雄雌一対のスクリューロータと、低圧段側圧縮機本体2、高圧段側圧縮機本体3を回転駆動させる増速ギヤ6とを収容するケーシング5を備える。尚、空気圧縮機100は、圧縮機本体が2段で構成されるものに限定されるものではない。
【0016】
空気圧縮機100は、さらに、各圧縮機を駆動するモータ(電動機)4と、圧縮に使用される外部空気を吸気する圧縮空気用吸気口50と、クーラの冷却に使用される外部空気を吸気するクーラ用吸気口51、モータの冷却に使用される外部空気を吸気するモータ用吸気口52と、低圧段吐出空気用クーラ10と、高圧段用吐出空気用クーラ11と、オイル用クーラ12と、モータ4を制御する制御部30と、表示部31と、それらを収容する筐体60を有している。低圧段吐出空気用クーラ10と、高圧段用吐出空気用クーラ11と、オイル用クーラ12を総称して、単にクーラと呼ぶ。
【0017】
空気圧縮機100の圧縮機本体は、スクリューロータの歯溝に複数の圧縮室が形成されている。低圧段側圧縮機本体2と高圧段側圧縮機本体3はそれぞれ駆動源となるモータ4により、増速ギヤ6を介して回転駆動される。制御部30は、例えばCPU、メモリによって構成され、モータ4の制御の他、表示部31の表示制御等を行う。制御部30はCPUの代わりに、FPGAやASICで構成することもできる。
【0018】
圧縮に使用される外部空気は、筐体60に設けた圧縮空気用吸気口50から取込まれ、圧縮空気用吸込みダクト42、吸込みフィルタ1を介して低圧段側圧縮機本体2に供給され、所定の圧力まで圧縮される。圧縮されて高温となった空気は、低圧段吐出空気用クーラ10で冷却された後、高圧段側圧縮機本体3に供給される。高圧段側圧縮機本体3で所定の圧力まで圧縮され、高温となった空気は、高圧段用吐出空気用クーラ11で冷却された後、圧縮機外部14へ吐出される。低圧段吐出空気用クーラ10と高圧段用吐出空気用クーラ11は、空冷式クーラと呼ばれる。圧縮に使用される外部空気を取り込み、低圧段側圧縮機本体2から低圧段吐出空気用クーラ10を介し、高圧段圧側縮機本体3から高圧段用吐出空気用クーラ11を介し、外部へと吐出される空気の経路を圧縮系統と呼ぶ。
【0019】
潤滑および冷却に使用されるオイルは、ギヤケーシング5の溜まり部17に補給されており、オイル用ポンプ7を介して、オイル用クーラ12で冷却された後、潤滑経路15と冷却経路16に分岐して各機器へ供給される。
【0020】
潤滑経路15では、増速ギヤ6、低圧段圧縮機本体2と高圧段側圧縮機本体3に備えた軸受とに、オイルを供給した後、ギヤケーシング5内の溜まり部17へ回収される。冷却経路16では、高圧段側圧縮機本体3、低圧段圧縮機本体2の順に各圧縮機本体に備えたケーシングのジャケット部へオイルを供給した後、ギヤケーシング5内の溜まり部17へ回収される。
【0021】
低圧段吐出空気用クーラ10、高圧段用吐出空気用クーラ11、オイル用クーラ12の冷却風は、筐体60に設けたクーラ用吸気口51から空気圧縮機100内へ取込まれる。モータ冷却用の冷却風は、筐体60に設けたモータ用吸気口52から空気圧縮機100内へ取込まれる。
【0022】
クーラ冷却経路では、冷却ファン13によりクーラ冷却風の外部空気がクーラ用吸気口51から取込まれ、クーラダクト41を介して低圧段吐出空気用クーラ10、高圧段吐出空気用クーラ11、オイル用クーラ12に供給し、それぞれの冷却を行う。
【0023】
モータ冷却経路では、モータの冷却風吸込み側に備えた自冷却ファンによりモータ冷却用の外部空気がモータ用吸気口52から取込まれる。取り込まれた外部空気は、モータ冷却風吸込みダクト(モータダクト40)を通過後に、モータ4に備えた反負荷側軸受61、ハウジング、負荷側軸受62の順に供給され、軸受は収納するブラケット部を介して、
それぞれの冷却を行う。モータ冷却後の空気は、圧縮機本体2、3やその配管、電気部品など空気圧縮機100内部に備えたクーラ部以外の発熱体によって高温になった空気とまとめて、クーラダクト41上部の開口部54よりクーラダクト41内に引き込まれ、クーラ冷却後の空気と共に、冷却ファン13の排気側へ設けた冷却風排気口53より空気圧縮機の外へ放出される。
【0024】
クーラ冷却経路とモータ冷却経路は、空気圧縮機100の筐体60に設けられた、それぞれ異なる吸気口(クーラ冷却風のクーラ用吸気口51、モータ冷却風のモータ用吸気口52)によって、外部から冷却風が取り込まれ、共通のファン13によって、空気圧縮機100の一つの冷却風排気口53から外部に放出されるように構成されている。クーラダクト41は、外部の空気を、クーラ用吸気口51を介して、低圧段吐出空気用クーラ10、高圧段吐出空気用クーラ11、オイル用クーラ12に対して供給すると共に、空気圧縮機100の筐体60内において、モータ冷却経路と分離する機能を有する。
【0025】
空気圧縮機100に備えたモータ4には温度上昇による発火や損傷に対する保護を目的に、負荷側軸受62を収納するブラケット部にモータ負荷側軸受用温度センサ20が備えられ、反負荷側軸受61を収納するブラケット部にモータ反負荷側軸受用温度センサ21が備えられている。制御部30では、各センサで検出した温度を記録し、予め設定した温度を超過した場合に、圧縮機を停止し、表示部31には「モータ温度異常」など圧縮機が停止した要因を表示する。
【0026】
図2は、本実施形態のクーラ冷却経路とモータ冷却経路で、低圧段吐出空気用クーラ10、高圧段用吐出空気用クーラ11、オイル用クーラ12(各種クーラ)と、モータ4の冷却に関係する機器の配置と冷却風の流れの概略を示したものである。高圧段用吐出空気用クーラ11は、紙面の奥行方向全面に設けられ、低圧段吐出空気用クーラ10は、高圧段用吐出空気用クーラ11の下側の紙面前側の部分に設けられ、オイル用クーラ12は、高圧段用吐出空気用クーラ11の下側の紙面後側の部分に設けられる。
【0027】
図2に示す通り、空気圧縮機100の冷却経路は、上段部分のクーラ冷却経路と下段部分のモータ冷却経路に分かれている。クーラ冷却経路とモータ冷却経路の吸気口は、異なる二つのクーラ用吸気口51、モータ用吸気口52からそれぞれ外部空気を冷却用に取り込んでいるが、クーラダクト41上部の開口部54で、二つの経路(クーラ冷却経路、モータ冷却経路)が合流し、ファン13により一つの共通した冷却風排気口53から冷却風を排出している。
【0028】
そのため、各種クーラの目詰まりによって各種クーラを通過する風量が減少した場合は、モータ冷却用の風量が増加する。つまり、クーラ冷却経路の流量が減少し、モータ冷却経路の流量が増加する現象が生じる。モータ冷却経路において、モータ用の冷却風は負荷側軸受62と反負荷側軸受61を冷却するが、構造上、反負荷側軸受61を冷却し易いため、負荷側軸受62の方が高温になる傾向にある。そのため、冷却風量が多くなった場合は、負荷側軸受62では、反負荷側軸受61と同等の冷却効果を得られるため、それぞれの軸受の温度差は小さくなる。これらの特性を利用してクーラの目詰まりの判定を行う。
【0029】
図3は、モータの冷却風量と軸受温度差との関係を示すグラフである。軸受温度差Tfbは、負荷側軸受温度センサ20で検出した温度Tfから反負荷側軸受温度センサ21で検出した温度Tbを差し引いた値を制御部30により演算したものである。各種クーラの目詰まりがない正常運転時には、軸受温度差Tfbは大きくなる。しかし、各種クーラの目詰まりが発生し、モータの冷却風量が増加した場合には、軸受温度差Tfbは小さくなる。即ち、クーラの目詰まりが進行して、軸受温度差Tfbが閾値未満となった場合は、制御部30がクーラの目詰まりと判定し、表示部31によって「クーラ清掃」などクーラ清掃を推奨するための表示を行う。制御部30により判定するクーラの目詰まりとは、低圧段吐出空気用クーラ10、高圧段吐出空気用クーラ11、オイル用クーラ12の何れか一つあるいは二つ、もしくは全てが目詰まりしている状態をいう。
【0030】
ここで、軸受温度差でクーラの目詰まり判定を行う利点として、軸受温度はモータの回転数や電流、圧縮機本体の負荷状況、外部空気の温度により変化するが、反負荷側軸受61と負荷側軸受62間の温度差とすることでこれらの影響を除外することができる。また、この温度差は、軸受に限らず別の発熱部(例えばコイル)に使用している温度センサを使用してもよい。
【0031】
本実施形態のクーラの目詰まり判定は、空気圧縮機100の運転状態がロード運転時のみ適用する。理由としては、アンロード運転時は圧縮機本体2、3の負荷が低いことから、反負荷側軸受61と負荷側軸受62の軸受温度が低くなり、その温度差も小さくなるためである。しかし、アンロード時においては、クーラ冷却経路で冷却される圧縮空気やオイルの温度は低くなっているため、仮にクーラが目詰まりしていた場合に清掃を行わなくても特に問題が発生することはないことから、目詰まり判定は不要と考えられる。ここで、ロード運転とは、負荷を伴って、圧縮空気を吐出しながら運転している状態を指す。一方、アンロード運転とは、圧縮機を停止させないため、微量の吸込み空気を放気しながら低負荷で運転している状態を指す。
【0032】
図4は、制御装置のフローチャートを示した図である。ステップS40で制御部30の制御が開始されると、まず、ステップS41で制御部30は、空気圧縮機100の運転状態がロード運転又はアンロード運転かを判定し、ロード運転時の場合、ステップS42に移る。
【0033】
ステップS42では、負荷側軸受温度センサ20で検出した温度Tf、反負荷側軸受温度センサ21で検出した温度Tbと、をそれぞれ検出する。尚、ステップS41、ステップS42の順を入れ替えても問題なく、負荷側軸受温度センサ20と反負荷側軸受温度センサ21による温度の検出は、ロード運転以外の運転状態で行われていても構わない。
【0034】
ステップ43で、制御部30は、ステップS42で検出した温度により、軸受温度差Tfb=Tf-Tbを算出する。
【0035】
ステップS44で、制御部30は、軸受温度差Tfbが所定の閾値より小さいかを判定する。軸受温度差Tfbが所定の閾値より小さい場合、ステップS45に進み、そうでない場合、ステップS42に戻り、温度検出を行う。このステップでは、所定の閾値以下を判定しても良い。いずれにしても、所定の閾値は、制御部30のメモリ(図示せず)に予め記憶させておく。
【0036】
ステップS45で、制御部30は、クーラの目詰まりの警告信号を表示部31に対して出力する。
【0037】
ステップS46で、表示部31は、制御部30から出力された警告信号に基づき、「クーラ清掃」と表示し、クーラ清掃を推奨するための表示を行う。この表示は、ユーザにクーラの清掃を推奨することができる内容であれば、他の形態を用いても良い。
【0038】
以上のように本実施形態によれば、空気圧縮機100に備えた既存のセンサである反負荷側軸受用温度センサ21、負荷側軸受温度センサ20を使用してクーラの目詰まりを推定することで、コストアップを抑制しつつ、適正なタイミングでクーラ清掃を推奨することができる。
【0039】
なお、本実施例は空冷式オイルフリースクリュー圧縮機について説明したが、油冷式空気圧縮機や単段又は多段式の空気圧縮機においても、本発明でのクーラの目詰まりの判定は適用することができる。
【符号の説明】
【0040】
1:吸込みフィルタ、
2:低圧段側圧縮機本体、
3:高圧段側圧縮機本体、
4:モータ、
5:ギヤケーシング、
6:増速ギヤ、
7:オイル用ポンプ、
10:低圧段用吐出空気用クーラ、
11:高圧段吐出空気用クーラ、
12:オイル用クーラ、
13:冷却ファン、
15:潤滑経路、
16:冷却経路、
17:溜まり部、
20:モータ負荷側軸受用温度センサ、
21:モータ反負荷側軸受用温度センサ、
30:制御部、
31:表示部、
40:モータ冷却風吸込みダクト、
41:クーラダクト、
42:圧縮空気用吸込みダクト、
50:圧縮空気用吸気口、
51:クーラ冷却風のクーラ用吸気口、
52:モータ冷却風のモータ用吸気口、
53:冷却風排気口、
54:クーラダクト上部の開口部、
60:筐体、
100:空気圧縮機。