(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136820
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】眼鏡レンズ加工システム及び眼鏡レンズ加工システムの制御プログラム
(51)【国際特許分類】
B24B 9/14 20060101AFI20240927BHJP
B24B 41/06 20120101ALI20240927BHJP
B24B 49/10 20060101ALI20240927BHJP
B25J 13/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B24B9/14 A
B24B41/06 A
B24B49/10
B25J13/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048082
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】川際 智聖
【テーマコード(参考)】
3C034
3C049
3C707
【Fターム(参考)】
3C034AA13
3C034BB72
3C034BB82
3C034BB92
3C034CA13
3C034CB11
3C034DD20
3C049AA02
3C049AA14
3C049AB03
3C049AB05
3C049AC02
3C049BA09
3C049CA01
3C707AS01
3C707AS12
3C707BS12
3C707CS08
3C707FS01
(57)【要約】
【課題】 搬送ロボットによってレンズ保持軸の隙間に眼鏡レンズを搬送する際に、レンズ保持軸にて眼鏡レンズを適切に保持させる。
【解決手段】 眼鏡レンズ加工システムは、眼鏡レンズを保持部に保持して搬送する搬送ロボットと、一対のレンズ保持軸の間に眼鏡レンズを保持して加工する眼鏡レンズ加工装置と、眼鏡レンズの屈折面形状の情報を取得する形状情報取得手段と、搬送ロボットの保持部に保持された眼鏡レンズと一対のレンズ保持軸との相対的な位置関係を変える相対移動手段であって、取得された屈折面形状に基づいて眼鏡レンズの相対的な移動を少なくとも二次元的に変化させることで、一対のレンズ保持軸の隙間の所定の挿入位置に眼鏡レンズを挿入させる相対移動手段と、を備える。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼鏡レンズ加工システムは、
眼鏡レンズを保持部に保持して搬送する搬送ロボットと、
一対のレンズ保持軸の間に眼鏡レンズを保持して加工する眼鏡レンズ加工装置と、
眼鏡レンズの屈折面形状の情報を取得する形状情報取得手段と、
前記搬送ロボットの保持部に保持された眼鏡レンズと前記一対のレンズ保持軸との相対的な位置関係を変える相対移動手段であって、取得された前記屈折面形状に基づいて眼鏡レンズの相対的な移動を少なくとも二次元的に変化させることで、前記一対のレンズ保持軸の隙間の所定の挿入位置に眼鏡レンズを挿入させる相対移動手段と、
を備えることを特徴とする眼鏡レンズ加工システム。
【請求項2】
請求項1の眼鏡レンズ加工システムにおいて、
前記相対移動手段は、前記一対のレンズ保持軸の位置に対する前記屈折面形状の位置関係に基づいて眼鏡レンズの移動を少なくとも二次元的に変化させることを特徴とする眼鏡レンズ加工システム。
【請求項3】
請求項2の眼鏡レンズ加工システムにおいて、
前記一対のレンズ保持軸は、眼鏡レンズの前屈折面側を保持する第1保持軸と、眼鏡レンズの後屈折面側を保持する第2保持軸とを備え、
前記相対移動手段は、前記第1保持軸及び前記第2保持軸の少なくとも一方の位置に関して定められた所定のポイント又は所定の領域を、前記屈折面形状が通過するように、眼鏡レンズの移動を二次元的に変化させることで、前記所定の挿入位置に眼鏡レンズを挿入すること特徴とする眼鏡レンズ加工システム。
【請求項4】
請求項3の眼鏡レンズ加工システムにおいて、
前記形状情報取得手段は、眼鏡レンズの前屈折面及び後屈折面の形状の少なくとも一つを取得し、
前記相対移動手段は、
(a)前記第1保持軸の位置に関して定められた所定の第1ポイントを、前記前屈折面が通過するように眼鏡レンズの移動を二次元的に変化させる第1制御と、
(b)前記第2保持軸の位置に関して定められた所定の第2ポイントを、前記後屈折面が通過するように眼鏡レンズの移動を二次元的に変化させる第2制御と、
(c)前記第1保持軸と前記第2保持軸との中間に設定された所定の第3ポイントを、前記前屈折面と前記後屈折面との間の中間形状が通過するように眼鏡レンズの移動を二次元的に変化させる第3制御と、
(d)前記第1保持軸と前記第2保持軸との間に設定された所定領域を、前記前屈折面と前記後屈折面の両者が通過するように、眼鏡レンズの移動を二次元的に変化させる第4制御と、
の何れかの制御によって前記所定の挿入位置に眼鏡レンズを挿入すること特徴とする眼鏡レンズ加工システム。
【請求項5】
請求項3又は4の眼鏡レンズ加工システムにおいて、
前記相対移動手段は、眼鏡レンズを前記一対のレンズ保持軸の隙間に挿入する前に、レンズ保持軸の軸方向に垂直な方向に対して、眼鏡レンズの屈折面を傾斜させること特徴とする眼鏡レンズ加工システム。
【請求項6】
請求項3~5の何れかの眼鏡レンズ加工システムにおいて、
前記相対移動手段は、眼鏡レンズを前記一対のレンズ保持軸の隙間に挿入する前に、前記第2保持軸より遠い側に位置する前記後屈折面の端部が前記第2保持軸に近づくように眼鏡レンズを傾斜させ、前記レンズ保持軸に垂直な方向の挿入方向への眼鏡レンズの移動に伴って前記傾斜を戻すように、眼鏡レンズの移動を変化させること特徴とする眼鏡レンズ加工システム。
【請求項7】
請求項3~6の何れかの眼鏡レンズ加工システムにおいて、
前記形状情報取得手段は、眼鏡レンズの前記前屈折面に固定された加工治具のカップの外形形状情報を取得し、
前記相対移動手段は、前記外形形状情報に基づき、前記カップが前記第1保持軸に接触しない位置まで眼鏡レンズを前記第1保持軸と前記第2保持軸との隙間に挿入した後、前記レンズ保持軸の軸方向において、前記カップが挿入可能な位置に眼鏡レンズを移動させることで、前記所定の挿入位置に眼鏡レンズを挿入させることを特徴とする眼鏡レンズ加工システム。
【請求項8】
請求項1~7の何れかの眼鏡レンズ加工システムにおいて、
前記形状情報取得手段は、眼鏡レンズの前記前屈折面に固定された加工治具のカップの端部から眼鏡レンズの前記後屈折面の端部までの、前記レンズ保持軸の軸方向におけるレンズ距離を取得し、
前記相対移動手段は、前記レンズ距離が前記一対のレンズ保持軸の隙間間隔より小さいか否か判断し、小さいと判断された場合には、前記屈折面形状に基づく二次元的な眼鏡レンズの移動の制御を行わずに、眼鏡レンズを前記所定の挿入位置に挿入させることを特徴とする眼鏡レンズ加工システム。
【請求項9】
眼鏡レンズを保持部に保持して搬送する搬送ロボットと、一対のレンズ保持軸の間に眼鏡レンズを保持して加工する眼鏡レンズ加工装置と、眼鏡レンズの屈折面形状の情報を取得する形状情報取得手段と、前記搬送ロボットの保持部に保持された眼鏡レンズと前記一対のレンズ保持軸との相対的な位置関係を変える相対移動手段と、制御装置と、を備える眼鏡レンズ加工システムの制御プログラムであって、
前記相対移動手段を制御する制御ステップであって、取得された前記屈折面形状に基づいて眼鏡レンズの移動を少なくとも二次元的に変化させることで、前記一対のレンズ保持軸の隙間の所定の挿入位置に眼鏡レンズを挿入させる制御ステップを、前記制御装置に実行させることを特徴とする眼鏡レンズ加工システムの制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、眼鏡レンズの周縁を眼鏡レンズ加工装置によって加工する眼鏡レンズ加工システム及びその制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
眼鏡レンズの周縁加工を自動化する上で、眼鏡レンズを保持して眼鏡レンズ加工装置に搬送する搬送ロボットを使用することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、眼鏡レンズ加工装置においては、一般に、一対のレンズ保持軸の隙間にレンズが挿入にされた後、レンズ押さえ側にレンズ保持軸が移動されることで、眼鏡レンズがレンズ保持軸に保持され、レンズ保持軸に保持された眼鏡レンズの周縁が加工具によって加工される(例えば、特許文献2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021―58948号公報
【特許文献2】特開2016-190287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、搬送ロボットによって眼鏡レンズを搬送し、眼鏡レンズ加工装置が持つ一対のレンズ保持軸に眼鏡レンズを保持させるために、一対のレンズ保持軸の隙間に眼鏡レンズを挿入する場合、眼鏡レンズの形状によっては、レンズ保持軸に眼鏡レンズが干渉してしまうことが分かった。
【0005】
本開示は、搬送ロボットによってレンズ保持軸の隙間に眼鏡レンズを搬送する際に、レンズ保持軸にて眼鏡レンズを適切に保持させることができる眼鏡レンズ加工システム及び制御プログラムを提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本開示の第1態様に係る眼鏡レンズ加工システムは、眼鏡レンズを保持部に保持して搬送する搬送ロボットと、一対のレンズ保持軸の間に眼鏡レンズを保持して加工する眼鏡レンズ加工装置と、眼鏡レンズの屈折面形状の情報を取得する形状情報取得手段と、前記搬送ロボットの保持部に保持された眼鏡レンズと前記一対のレンズ保持軸との相対的な位置関係を変える相対移動手段であって、取得された前記屈折面形状に基づいて眼鏡レンズの相対的な移動を少なくとも二次元的に変化させることで、前記一対のレンズ保持軸の隙間の所定の挿入位置に眼鏡レンズを挿入させる相対移動手段と、を備えることを特徴とする。
(2) 本開示の第2態様に係る眼鏡レンズ加工システムの制御プログラムは、眼鏡レンズを保持部に保持して搬送する搬送ロボットと、一対のレンズ保持軸の間に眼鏡レンズを保持して加工する眼鏡レンズ加工装置と、眼鏡レンズの屈折面形状の情報を取得する形状情報取得手段と、前記搬送ロボットの保持部に保持された眼鏡レンズと前記一対のレンズ保持軸との相対的な位置関係を変える相対移動手段と、制御装置と、を備える眼鏡レンズ加工システムの制御プログラムであって、前記相対移動手段を制御する制御ステップであって、取得された前記屈折面形状に基づいて眼鏡レンズの移動を少なくとも二次元的に変化させることで、前記一対のレンズ保持軸の隙間の所定の挿入位置に眼鏡レンズを挿入させる制御ステップを、前記制御装置に実行させることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施例に係る眼鏡レンズ加工システムを示す図である。
【
図3】搬送ロボットが有する保持部の例を説明する図である。
【
図4】搬送ロボットが有する保持部の別の例を説明する図である。
【
図5】レンズ形状測定装置が備えるレンズ形状測定機構を説明する図である。
【
図6】眼鏡レンズ加工装置の概略構成を説明する図である。
【
図7】眼鏡レンズ加工システムの全体の制御系の構成を示す図である。
【
図8】カップに対する粘着テープの貼付けを説明する図である。
【
図9】搬送ロボットによる、レンズ保持軸に対する眼鏡レンズの進入方向を示す図である。
【
図10】レンズ保持軸に対する、通常のレンズ移動を説明する図である。
【
図11】眼鏡レンズ側の最大レンズ距離と、一対のレンズ保持軸の隙間間隔と、の関係を示す図である。
【
図12】レンズ前面基準の場合におけるレンズ移動を説明する図である。
【
図13】レンズ前面基準における移動軌跡の演算の一例を説明する図である。
【
図14】レンズ後面基準の場合におけるレンズ移動を説明する図である。
【
図15】る眼鏡レンズの前屈折面情報及び後屈折面情報の両方に基づいたレンズ移動を説明する図である。
【
図16】る眼鏡レンズの屈折面形状に基づくレンズ移動の変容例を説明する図である。
【
図17】る眼鏡レンズの屈折面形状に基づくレンズ移動の他の変容例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[概要]
以下、典型的な実施形態の1つについて、図面を参照して説明する。なお、以下の<>にて分類された項目は、独立又は関連して利用されうる。
【0009】
例えば、眼鏡レンズ加工システム(例えば、眼鏡レンズ加工システム1)は、搬送ロボット(例えば、搬送ロボット100)と、眼鏡レンズ加工装置(例えば、眼鏡レンズ加工装置200)と、形状情報取得手段(例えば、レンズ形状測定装置300、制御装置50、制御部110)と、相対移動手段(例えば、搬送ロボット100、移動ユニット250、制御部110、制御部210、制御装置50)と、を備える。例えば、眼鏡レンズ加工システムは、制御手段(例えば、制御部110、制御部210、制御装置50)を備えていてもよい。例えば、眼鏡レンズ加工システムは、制御プログラムを実行する制御装置(例えば、制御部110、制御部210、制御装置50)を備えていてもよい。
【0010】
<搬送ロボット>
例えば、搬送ロボットは、眼鏡レンズを保持部(例えば、保持部150A、保持部150B)に保持する。例えば、搬送ロボットは、保持部に保持した眼鏡レンズを移動する。例えば、搬送ロボットは、アーム部(例えば、アーム部130)を備える。例えば、アーム部は複数の関節部を有する。例えば、搬送ロボットは、関節部を介してアーム部を回転させることで、保持部にて保持された眼鏡レンズを移動させる。例えば、搬送ロボットは、必ずしも複数の関節部を備えなくてもよく、眼鏡レンズ加工装置への眼鏡レンズLEの場合、少なくとも二次元的に眼鏡レンズを移動できる構成であってもよい。
【0011】
<眼鏡レンズ加工装置>
例えば、眼鏡レンズ加工装置は、一対のレンズ保持軸(例えば、レンズ保持軸202)の間に眼鏡レンズを保持する。例えば、一対のレンズ保持軸は、眼鏡レンズの前屈折面側を保持する第1保持軸(例えば、レンズ保持軸202L)と、眼鏡レンズの後屈折面側を保持する第2保持軸(例えば、レンズ保持軸202R)と、を備える。例えば、第1保持軸は、眼鏡レンズの前屈折面に固定された加工治具のカップが挿入されるカップホルダー(例えば、カップホルダー230)を備える。例えば、第2保持軸は、レンズ押さえ(例えば、レンズ押さえ235)を備える。例えば、眼鏡レンズ加工装置は、レンズ保持軸に保持された眼鏡レンズの周縁を加工具(例えば、加工具260)によって加工する。
【0012】
<形状情報取得手段>
例えば、形状情報取得手段は、眼鏡レンズの屈折面形状情報を取得する。例えば、形状情報取得手段は、眼鏡レンズの前屈折面及び後屈折面の形状の少なくとも一つを取得する。例えば、形状情報取得手段は、眼鏡レンズの前屈折面と後屈折面との間の中間カーブを取得してもよい。例えば、形状情報取得手段は、眼鏡レンズの前屈折面に固定された加工治具のカップの外形形状情報を取得してもよい。例えば、形状情報取得手段は、眼鏡レンズの前屈折面に固定された加工治具のカップの端部から眼鏡レンズの後屈折面の端部までのレンズ距離(例えば、最大レンズ距離WL)を取得してもよい。
【0013】
例えば、形状情報取得手段は、レンズ形状測定装置(例えば、レンズ形状測定装置300)を備えていてもよい。例えば、レンズ形状測定装置は、眼鏡レンズの屈折面に接触する測定子(例えば、測定子310)を備え、測定子の移動を検知することにより、眼鏡レンズの屈折面形状を得る。この場合、レンズ形状測定装置は、眼鏡レンズの前屈折面に接触させる測定子(例えば、測定子311)と、眼鏡レンズの後屈折面に接触させる測定子(例えば、測定子312)と、を備え、眼鏡レンズの前屈折面と後屈折面の形状を取得してもよい。また、例えば、レンズ形状測定装置は、眼鏡レンズの屈折面形状を光によって光学的に取得する装置であってもよい。
【0014】
例えば、形状情報取得手段がレンズ形状測定装置を備えていなくても、別途、インタフェースを介して通信によって屈折面形状情報が形状情報取得手段に取得されてもよい。例えば、眼鏡レンズの屈折面形状情報は、加工対象の眼鏡レンズの設計データが入力されることで、形状情報取得手段に取得されてもよい。
【0015】
<相対移動手段、制御手段>
例えば、相対移動手段は、搬送ロボットの保持部に保持された眼鏡レンズと一対のレンズ保持軸との相対的な位置関係を変える。例えば、相対移動手段は、形状情報取得手段によって取得された眼鏡レンズの屈折面形状に基づいて眼鏡レンズの相対的な移動を少なくとも二次元的に変化させることで、一対のレンズ保持軸の隙間の所定の挿入位置に眼鏡レンズを挿入させる。これにより、搬送ロボットによってレンズ保持軸の隙間に眼鏡レンズを搬送する際に、レンズ保持軸によって眼鏡レンズを適切に保持させることができる。例えば、眼鏡レンズが所定の挿入位置に挿入される際、一対のレンズ保持軸の位置が分かればよい。このため、例えば、相対移動手段は、一対のレンズ保持軸の位置に対する屈折面形状の位置関係に基づいて眼鏡レンズの移動を少なくとも二次元的に変化させることでもよい。
【0016】
例えば、相対移動手段は、眼鏡レンズの移動を、レンズ保持軸の軸方向である第1方向(X方向)と、第1軸方向に垂直な方向である第2方向(Y方向)の2つの軸方向に二次元的に変化させる。例えば、眼鏡レンズが挿入される所定の挿入位置は、搬送ロボットによる眼鏡レンズの保持中心がレンズ保持軸の中心軸に一致する位置とされる。
【0017】
例えば、相対移動手段は、第1保持軸及び第2保持軸の少なくとも一方の位置に関して定められた所定のポイント又は所定の領域を、屈折面形状が通過するように、眼鏡レンズの移動を二次元的に変化させることによって所定の挿入位置に眼鏡レンズを挿入してもよい。
【0018】
例えば、相対移動手段は、第1保持軸の位置に関して定められた所定の第1ポイント(例えば、ポイントHF1)を、前屈折面が通過するように眼鏡レンズの移動を二次元的に変化させる第1制御によって、所定の挿入位置に眼鏡レンズを挿入してもよい。例えば、第1ポイントは、第1保持軸の端部に関して定められてもよい。例えば、第1ポイントは、第1保持軸の端部から第2保持軸側に一定の干渉回避距離だけ離れた位置に設定されてもよい。また、この場合、第1ポイントは、第1保持軸の端部に対して眼鏡レンズの挿入方向の近い側のポイントに設定されてもよい。
【0019】
例えば、相対移動手段は、第2保持軸の位置に関して定められた所定の第2ポイント(例えば、ポイントHR1)を、後屈折面が通過するように眼鏡レンズの移動を二次元的に変化させる第2制御によって、所定の挿入位置に眼鏡レンズを挿入してもよい。例えば、第2ポイントは、第2保持軸の端部に関して定められてもよい。例えば、第2ポイントは、第2保持軸の端部から第1保持軸側に一定の干渉回避距離だけ離れた位置に設定されてもよい。また、この場合、第2保持軸の端部に対して眼鏡レンズの挿入方向の遠い側のポイントに設定されてもよい。
【0020】
例えば、相対移動手段は、第1保持軸と第2保持軸との中間(略中間でもよい)に設定された所定の第3ポイント(例えば、ポイントHC1)を、前屈折面と後屈折面の中間形状が通過するように眼鏡レンズの移動を二次元的に変化させる第3制御によって、所定の挿入位置に眼鏡レンズを挿入してもよい。例えば、第3ポイントは第1保持軸の端部と第2保持軸の端部との中間に設定されてもよい。例えば、第3ポイントはレンズ保持軸の中心軸上に設定されてもよい。例えば、前屈折面と後屈折面の中間形状は、前屈折面形状と後屈折面形状とに基づいて形状情報取得手段によって取得されてもよい。例えば、中間形状は、前屈折面カーブと後屈折面カーブとの中間の中間カーブとされてもよい。
【0021】
例えば、相対移動手段は、第1保持軸と第2保持軸との間に設定された所定領域(例えば、領域AE)を、前屈折面と後屈折面の両者が通過するように、眼鏡レンズの移動を二次元的に変化させる第4制御によって、所定の挿入位置に眼鏡レンズを挿入してもよい。例えば、所定領域は、第1保持軸の端部と第2保持軸の端部との間に設定さてもよい。例えば、所定領域は、第1保持軸の端部から一定の干渉回避距離だけ離れた位置と、第2保持軸の端部から一定の干渉回避距離だけ離れた位置と、によって設定されてもよい。
【0022】
例えば、相対移動手段は、第1制御、第2制御、第3制御及び第4制御の何れかを実行すればよい。例えば、相対移動手段は、第1制御、第2制御、第3制御及び第4制御の何れかを選択的に実行してもよい。この場合、例えば、相対移動手段は、眼鏡レンズの屈折面形状に応じて何れの制御を行うかを選択してもよい。
【0023】
例えば、相対移動手段は、眼鏡レンズの屈折面形状に基づいて眼鏡レンズの移動を二次元的に変化させる制御に加え、レンズ保持軸の軸方向である第1方向(X方向)に垂直な第2方向(Y方向)に対して、眼鏡レンズを傾斜させてもよい。例えば、相対移動手段は、眼鏡レンズを一対のレンズ保持軸の隙間に挿入する前に、第2保持軸より遠い側に位置する後屈折面の端部が第2保持軸に近づくように眼鏡レンズを傾斜させた後、レンズ保持軸に垂直な第2方向(Y方向)の挿入方向への眼鏡レンズの移動に伴って傾斜を戻すように、眼鏡レンズの移動を変化させてもよい。例えば、相対移動手段は、眼鏡レンズの傾斜を徐々に戻すように眼鏡レンズの移動を変化させてもよい。これにより、レンズ保持軸の隙間が狭い場合でも、所定の挿入位置に挿入可能なレンズの形状の適用範囲が広げられる。
【0024】
なお、眼鏡レンズの傾斜とは、言い換えれば、搬送ロボットの保持部による眼鏡レンズの保持中心を通る中心軸(N1)を、レンズ保持軸の軸方向(X方向)に対して平行な位置関係から、中心軸(N1)の後屈折面側がレンズ保持軸に近づくように傾斜する状態を示す。また、傾斜を戻すとは、レンズ保持軸の軸方向(X方向)に対して中心軸(N1)が平行にされることを示す。
【0025】
例えば、レンズ保持軸の隙間に挿入する前の眼鏡レンズの傾斜は、予め設定された所定角度の傾斜であってもよいし、眼鏡レンズの屈折面形状のカーブ情報に基づく傾斜であってもよい。例えば、第1制御による場合、眼鏡レンズの傾斜は、前屈折面形状に基づいて設定されてもよい。例えば、第2制御による場合、眼鏡レンズの傾斜は、後屈折面形状に基づいて設定されてもよい。例えば、第3制御による場合、眼鏡レンズの傾斜は、前屈折面と後屈折面の中間形状に基づいて設定されてもよい。例えば、第4制御による場合、眼鏡レンズの傾斜は、前屈折面と後屈折面の両者に基づいて設定されてもよい。
【0026】
例えば、相対移動手段は、形状情報取得手段によって取得されたカップの外形形状情報に基づき、カップが第1保持軸に接触しない位置まで眼鏡レンズ(例えば、カップよりレンズ保持軸側に位置する前屈折面及び後屈折面のレンズ部分)を第1保持軸と第2保持軸との隙間に挿入した後、レンズ保持軸の軸方向(X方向)において、第1保持軸の端部に対して、カップが挿入可能な位置に眼鏡レンズを移動させることで、所定の挿入位置に眼鏡レンズを挿入させてもよい。これにより、カップがレンズ前屈折面に固定されている場合も、カップがレンズ保持軸に干渉せずに、レンズ保持軸によって眼鏡レンズを適切に保持させることができる。
【0027】
例えば、形状情報取得手段によってレンズ距離が取得されている場合、相対移動手段は、レンズ距離が一対のレンズ保持軸の隙間間隔より小さいか否か判断し、小さいと判断された場合には、屈折面形状に基づく二次元的な眼鏡レンズの移動の制御を行わずに、所定の挿入位置に眼鏡レンズを挿入させてもよい。例えば、相対移動手段は、眼鏡レンズをレンズ保持軸の隙間に挿入する前に、第1保持軸側の端部に対し、カップの端部が所定距離だけ離れた位置に位置させた後は、眼鏡レンズを挿入方向(Y方向)に移動する制御のみで、所定の挿入位置に眼鏡レンズを挿入させることができる。これにより、二次元的な眼鏡レンズの移動制御を必要としないため、所定の挿入位置へのレンズ移動をスピーディーに行える。
【0028】
例えば、上記の制御は、制御手段によって実行されてもよい。例えば、形状情報取得手段に備えられていてもよい。例えば、制御手段は、搬送ロボットの駆動を制御することで、屈折面形状に基づいて眼鏡レンズの移動を少なくとも二次元的に変化させてもよい。例えば、制御手段は、眼鏡レンズ加工装置(例えば、移動ユニット250)を制御し、屈折面形状に基づいて一対の一対のレンズ保持軸を二次元的に移動することで、相対的に眼鏡レンズの移動を二次元的に変化させてもよい。あるいは、制御手段は、搬送ロボット及び眼鏡レンズ加工装置を制御し、搬送ロボット及び眼鏡レンズ加工装置の協働で、屈折面形状に基づいて眼鏡レンズの相対的な移動を少なくとも二次元的に変化させてもよい。例えば、制御手段は、屈折面形状に基づいて眼鏡レンズ加工装置を制御し、一対のレンズ保持軸をその軸方向に移動し、また、屈折面形状に基づいて搬送ロボットを制御し、レンズ保持軸の軸方向に垂直な方向に眼鏡レンズを移動することで、レンズ保持軸に対して眼鏡レンズを相対的に移動してもよい。あるいは、その逆に、制御手段は、屈折面形状に基づいて搬送ロボットを制御し、レンズ保持軸の軸方向に眼鏡レンズを移動し、また、屈折面形状に基づいて眼鏡レンズ加工装置を制御し、レンズ保持軸の軸方向に垂直な方向にレンズ保持軸を移動してもよい。
【0029】
なお、本開示においては、本実施形態に記載したシステムに限定されない。例えば、下記実施形態の機能を行う制御プログラム(ソフトウェア)をネットワーク又は各種記憶媒体等を介して、システムあるいは装置に供給する。そして、システムあるいは装置の制御装置(例えば、CPU等)がプログラムを読み出し、実行することも可能である。
【0030】
例えば、制御プログラムは、相対移動手段を制御する制御ステップであって、取得された屈折面形状に基づいて眼鏡レンズの移動を少なくとも二次元的に変化させることで、一対のレンズ保持軸の隙間の所定の挿入位置に眼鏡レンズを挿入させる制御ステップを、制御装置に実行させる。
【0031】
[実施例]
本開示における典型的な実施例の1つについて、図面を参照して説明する。
図1は、実施例に係る眼鏡レンズ加工システム1を示す図である。
【0032】
図1において、眼鏡レンズ加工システム1は、搬送ロボット100と、眼鏡レンズ加工装置200と、を備える。搬送ロボット100は、対象物を保持して搬送するために使用される。搬送ロボット100は複数台であってもよい。
図1では、搬送ロボット100は、搬送ロボット100Aと搬送ロボット100Bの2台を備える例である。眼鏡レンズ加工装置200は、
図6に示すように、一対のレンズ保持軸202に保持された眼鏡レンズ(以下、レンズLE)の周縁を加工具260によって加工するために使用される。
【0033】
眼鏡レンズ加工システム1は、付加的に、レンズ形状測定装置300を備えていてもよい。レンズ形状測定装置300は、レンズLEの屈折面形状を得るために使用される。さらに、眼鏡レンズ加工システム1は、トレイ搬送装置410、求心装置420、レンズメータ430、粘着テープ供給装置440、カップ取り付け装置(ブロッカー)450の少なくとも一つを備えていてもよい。
【0034】
本実施例では、未加工のレンズLEは、トレイ搬送装置410に搬送されるトレイTRの所定位置に置かれる。また、トレイTRに、レンズLEの加工治具であるカップCU(
図8参照)が置かれている。そして、トレイTRには加工済みのレンズLEが戻される。粘着テープ供給装置440は、レンズLEの屈折面にカップCUを固定するための粘着テープTAを供給するために使用される。求心装置420は、未加工のレンズLEの周縁の幾何学中心を求心するために使用される。レンズメータ430は、レンズLEの光学中心、乱視軸方向、屈折度数等の光学特性を測定するために使用される。カップ取り付け装置450は、未加工のレンズLEの屈折面(例えば、前屈折面)にカップCUを取付けるために用いられる。
【0035】
<搬送ロボット>
図2は、搬送ロボット100Aの例を説明する図である。本実施例の搬送ロボット100Aは、アーム部130と、アーム部130の先端に設けられた保持部150Aと、を備える。アーム部130は、複数の関節部を有し、関節部を介して各部位を回転させることで、保持部150Aの姿勢を三次元的に自在に変えることができる。これにより、保持部150Aに保持された対象物を三次元的に自在に移動させることができる。
【0036】
本実施例の搬送ロボット100Aのアーム部130は、ベース131、ショルダ132、下アーム133、第1上アーム134、第2上アーム135、手首136、および保持部150Aを備える。
【0037】
ベース131は、アーム部130の全体を支持する。ショルダ132は、第1関節部J1を介してベース131の上部に接続されている。ショルダ132は、基台140に対して交差する方向(本実施例では鉛直方向)に延びる回転軸X1を中心として、ベース131に対して回転する。下アーム133の一端部は、第2関節部J2を介してショルダ132の一部に接続されている。下アーム133は、水平方向に延びる回転軸X2を中心として、ショルダ132に対して回転する。第1上アーム134は、下アーム133のうち、ショルダ132に接続されている側とは反対側の端部に、第3関節部J3を介して接続されている。第1上アーム134は、水平方向に延びる回転軸X3を中心として、下アーム133に対して回転する。第2上アーム135は、第4関節部J4を介して、第1上アーム134の先端側(保持部150Aが設けられている側)に接続されている。第2上アーム135は、回転軸X4を中心として、第1上アーム134に対して回転する。手首136は、第5関節部J5を介して、第2上アーム135の先端側に接続されている。手首136は、回転軸X5を中心として、第2上アーム135に対して回転する。保持部150Aは、第6関節部J6を介して、手首136の先端側に接続されている。保持部150Aは、回転軸X6を中心として、手首136に対して回転する。なお、アーム部130の内部には、回転軸X1~X6の各々を中心として各部を回転させるためのモータが内蔵されている。
【0038】
アーム部130は、基台140に固定されている。本実施例では、基台140は水平な設置面に載置される。基台140には、アーム部130を設置面に対して平行な方向に移動させるアーム移動部141が設けられている。アーム移動部141が駆動することで、アーム部130の全体が設置面上を平行移動する。また、本実施例の搬送ロボット100Aは、各種制御(例えば、各部を回転させるモータ、及を駆動するアクチュエータ等の制御等)を司る制御部110を備える。
【0039】
以上のような搬送ロボット100Aにより、保持部150Aに保持された対象物を三次元的に自在に移動させることができる。なお、搬送ロボット100Aのアーム部130等の詳細な構成の例は、例えば、特開2021―58947号公報、特開2019-141970等に記載されている。
【0040】
図3は、搬送ロボット100Aが有する保持部150Aの例を説明する図である。保持部150Aは、レンズLEの屈折面を吸着することで、レンズLEを保持する。搬送ロボット100Aの保持部150Aは、手首136から延びたアーム152を有し、アーム先端155は、アーム152から段差的に延びて取り付けられている。アーム先端155には、
図3上の下方に延びる吸着部160が取り付けられている。アーム先端155は、吸着部160によってレンズLEの後屈折面が吸着された場合に、レンズLEとの干渉を避けることができる程度に、アーム152に対して段差的に取り付け有られていればよい。また、アーム先端155は、レンズLEを眼鏡レンズ加工装置200が備えるレンズ保持軸202に保持させる際に、レンズ保持軸202との干渉を避けることができる程度に、アーム152に対して段差的に取り付けられていればよい。
【0041】
吸着部160は、図示を略す吸引経路を介して吸引源165に接続されている。吸引源165の駆動は、制御部110によって制御される。吸引源165は小型のコンプレッサーであってもよいし、空気の吸引が可能な小型のシリンダー型であってもよい。もちろん、吸着部160は、実施例とは異なる構成であってもよく、対象物のレンズLEを吸引して保持し、移動できる構成であればよい。
【0042】
搬送ロボット100Bは、搬送ロボット100Aと同様なアーム部130と、アーム部130の先端に設けられた保持部150Bと、を備える。搬送ロボット100Bは、主に搬送ロボット100Aに対して保持部150Bの構成が異なるのみのため、アーム部130の手首136までは同符号を使用することで、その説明は省略する。
【0043】
図4は、搬送ロボット100Bが有する保持部150Bの例を説明する図である。保持部150Bは、開閉される左右一対のフィンガー部170によってカップCU等の対象物を保持する。
【0044】
保持部150Bは、手首136から延びた左右一対のフィンガー部170を有する。フィンガー部170は、左フィンガー170Lと右フィンガー170Rとを備える。左フィンガー170L及び右フィンガー170Rの間は、開閉機構部175によって開閉される。言い換えると、左フィンガー170L及び右フィンガー170Rの間隔が変えられることにより、対象物を挟み込んで保持する。なお、開閉機構175は手首136の内部に内蔵されている。例えば、保持部150Bを備える搬送ロボット100Bは、レンズLEの前屈折面に固定されるカップCUの搬送や取り付けに使用される。
【0045】
<レンズ形状測定装置>
図5は、レンズ形状測定装置300が備えるレンズ形状測定機構を説明する図である。実施例のレンズ形状測定装置300は、レンズLEの屈折面形状情報を得る情報取得手段の一要素として利用される。実施例のレンズ形状測定装置300は、レンズLEの屈折面形状を測定するための測定子310を備える。実施例では、測定子310は、レンズLEの前屈折面Lfに接触させる測定子311と、レンズLEの後屈折面に接触させる測定子312と、を備える。測定子312は円筒状の側面を有する。測定子312の側面は、レンズLEの外形形状を測定するために、レンズLEの外周に接触される測定子313として利用される。測定子311は、アーム315が備える左アーム315aの先端に取り付けられている。測定子312は、測定子311に対向するように、アーム315が備える右アーム315bの先端に取り付けられている。また、レンズ形状測定装置300は、測定子311、312のX方向の移動位置を検知するためのセンサ(検知器)321と、X方向に垂直な方向のYa方向の測定子313の移動位置を検知するためのセンサ(検知器)323を備える。センサ321及びセンサ323の検知データは、後述する制御装置50(
図7参照)に出力される。
【0046】
なお、
図5上のX方向は、眼鏡レンズ加工装置200が持つレンズ保持軸202(
図6参照)が延びる方向と同一とされている。Ya方向は、X方向に垂直な方向であり、また、レンズLEが移動される方向であって、測定時に保持部150Aのアーム152が延びる方向とされている。なお、Ya方向は、測定の管理上の方向であり、眼鏡レンズ加工装置200におけるYb方向(
図6参照)とは異なっていてもよい。
【0047】
アーム315はX方向に移動可能に保持ユニット(図示を略す)に保持される。X方向(左右方向)の基準位置に対し、アーム315がX方向(左方向及び右方向)に移動されたときには、それぞれ左右の基準位置に戻すように、バネ等の付勢部材によって付勢力(測定圧)が加えられる。
【0048】
レンズLEの屈折面形状の測定時には、搬送ロボット100Aによって搬送されるレンズLEが、測定子311と測定子312との間に挿入される。そして、レンズLEの前屈折面Lfに測定子311が押し付けられるように、レンズLEがX方向に移動されることにより、レンズLEの前屈折面LfのX方向における位置が測定される。同様に、レンズLEの後屈折面Lrに測定子312が押し付けられるように、レンズLEがX方向に移動されることにより、レンズLEの後屈折面LrのX方向における位置が測定される。X方向におけるレンズLEの前屈折面Lf及び後屈折面Lrの位置は、センサ321による検知結果と、搬送ロボット100AによるレンズLEのX方向の移動制御データと、によって取得される。
【0049】
また、アーム315はYa方向に移動可能に保持ユニット(図示を略す)に保持される。Ya方向(前後方向)の基準位置に対し、アーム315が後方に移動されたときには、Ya方向の基準位置に戻すように、バネ等の付勢部材によって付勢力が加えられる。レンズLEの外形形状の測定時には、
図5の点線で示されるように、レンズLEの径方向の周縁が測定子313に押し付けられるように、搬送ロボット100AによってレンズLEがYa方向に移動される。Ya向における基準位置に対する測定子313の位置がセンサ323によって検知され、この検知結果と搬送ロボット100AによるレンズLEのYa方向の移動制御データと、によってレンズLEの外形形状が取得される。
【0050】
<眼鏡レンズ加工装置>
図6は、眼鏡レンズ加工装置200の概略構成を説明する図である。眼鏡レンズ加工装置200は、レンズLEを保持するレンズ保持軸202(レンズ保持軸202L、202R)と、レンズLEの周縁を加工するための加工具260と、レンズ保持軸202にて保持されたレンズLEと加工具263との相対的な位置関係を変えるための移動ユニット250と、移動ユニット250を制御する制御部210と、を備える。また、眼鏡レンズ加工装置200は、レンズ保持軸202Rをレンズ保持軸202L側に移動するレンズ保持機構240を備え、レンズ保持機構240は制御部210によって制御される。
【0051】
例えば、実施例の眼鏡レンズ加工装置200においては、レンズ保持軸202は、水平方向に延び、眼鏡レンズ加工装置200に配置されている。レンズ保持軸202は、上下方向に延びていてもよい。レンズ保持軸202の軸方向をX方向(X軸)とする。
【0052】
例えば、加工具260は、加工具回転軸261に取り付けられ、ヤゲン形成用のV溝を持つ仕上げ加工具262、粗加工具263の少なくとも一つを備える。仕上げ加工具262、粗加工具263は、代表的に砥石が使用されるが、カッターが使用されてもよい。
【0053】
例えば、移動ユニット250は、レンズ保持軸202を回転可能に保持するキャリッジ(図示を略す)をレンズ保持軸202の軸方向(X方向)に移動する第1移動ユニット252と、レンズ保持軸202と加工具回転軸261との軸間距離を変えるYb方向に移動する第2移動ユニット254と、を備える。また、移動ユニット250は、キャリッジに保持されたレンズ保持軸202を回転する回転ユニット256を備える。
【0054】
レンズLEは、一対のレンズ保持軸202L、202Rによって保持される。片方のレンズ保持軸202Lにはカップホルダー230が取り付けられている。カップホルダー230が備える挿入穴231aに、レンズLEに固定された加工治具であるカップCUの基部CUaが挿入される。なお、挿入穴231aにはキー(図示を略す)が形成され、カップCUの基部CUaにキー溝(図示を略す)が形成されており、挿入穴231a側のキーに基部CUa側のキー溝が嵌め込まれることにより、レンズLEの乱視軸角度とレンズ保持軸202の基準方向とが一定の関係にされる。カップホルダー230にカップCUが装着された後、レンズ保持機構240によってレンズ保持軸202RがレンズLE側に移動され、レンズ保持軸202Rに取り付けられたレンズ押さえ235によってレンズLEが押さえられる。これにより、レンズLEが一対のレンズ保持軸202によって保持される。
【0055】
なお、眼鏡レンズ加工装置200の詳細な構成の一例は、例えば、特開2016-190287号公報等に記載されている。
【0056】
<システムの制御系構成>
図7は、眼鏡レンズ加工システム1の全体の制御系の構成を示す図である。眼鏡レンズ加工システム1は、システム全体の制御を司る制御装置50を備える。制御装置50は、搬送ロボット100(100A、100B)の制御部110と、眼鏡レンズ加工装置200の制御部210と、レンズ形状測定装置300の各センサと、に接続されている。また、制御装置50は、トレイ搬送装置410、求心装置420、レンズメータ430、粘着テープ供給装置440、カップ取り付け装置に接続されている。なお、制御装置50との接続は、有線に限られず、無線で通信可能に接続されていてもよい。
【0057】
制御装置50は、搬送ロボット100の搬送工程に応じて各装置の制御部に動作指令信号を送り、また、加工装置からの信号を受信する。各装置の制御部は、制御装置50からの指令信号に基づいて各装置の構成要素を制御する。制御装置50は、操作部52、表示部53、記憶部57に接続されている。制御装置50は、ホストコンピュータの機能を兼ねていてもよい。記憶部57には、搬送ロボット100の動作を制御するための制御プログラムが記憶されていいてもよい。また、搬送ロボット100と眼鏡レンズ加工装置200と協働でレンズLEをレンズ保持軸202に保持させる場合、その制御プログラムが記憶部57に記憶されていてもよい。記憶部57は可搬性の記憶媒体であってもよい。
【0058】
また、制御装置50は、インタフェース55を外部装置と通信可能にされ、レンズLEの周縁を加工するために必要なレンズ加工情報を取得する。例えば、レンズ加工情報には、レンズLEの周縁加工の目標となる玉型、レイアウトデータ(玉型に対するレンズLEの光学中心の位置関係のデータ)、レンズLEの処方データ(乱視軸角度、マイナス度数又はプラス度数の処方度数、等)の少なくとも一つが含まれる。レンズ加工情報は、操作部52によって入力されてもよい。
【0059】
また、制御装置50及び各装置の制御部は、各種の情報を出力する情報出力部の機能と、各種の情報を取得する情報取得部の機能と、を兼ねていてもよい。例えば、制御装置50は、レンズ形状測定装置300によるレンズ形状の検知結果と、搬送ロボット100の制御データと、に基づいてレンズLEの屈折面形状情報(レンズLEの外形形状を含む)を取得する。レンズLEの屈折面形状情報の取得は、搬送ロボット100の制御部110が担当してもよい。また、搬送ロボット100の制御部110は、カップCUの外形形状の情報を取得することで、レンズLEの搬送における移動制御に使用してもよい。カップCUの外形形状は、記憶部57又は制御装置50が備える記憶部(図示を略す)に予め記憶された情報が読みだされることで、取得されてもよい。
【0060】
<制御動作>
以上のような構成を備える眼鏡レンズ加工システム1の動作を説明する。まず、トレイTRからの未加工のレンズLEを取り出し、カップCUの取り付けまでの搬送動作を簡単に説明する。
【0061】
制御装置50からの指令信号を受けた搬送ロボット100Aの制御部110は、アーム部130及び吸着部160の駆動を制御し、各装置の間でレンズLEを搬送する。トレイTRに入れられた未加工のレンズLEは、吸着部160によって吸着されることで、保持部150Aに保持されて取り出された後、求心装置420に搬送される。求心装置420では、レンズLEの周縁の幾何学中心が検出され、そのデータは制御装置50に送られる。次に、レンズLEは搬送ロボット100Aによってレンズメータ430の所定位置に搬送される。レンズメータ430では、レンズLEの光学中心、乱視軸方向、屈折度数等の光学特性が測定される。次に、レンズLEは搬送ロボット100Aによってカップ取り付け装置450の所定のレンズ載置台に搬送される。このとき、レンズメータ430によって得られたレンズLEの光学中心に基づき、カップ取り付け装置450のカップ取り付けの基準軸に対するレンズLEの位置合わせが、搬送ロボット100AによるレンズLEの移動で行われる。
【0062】
搬送ロボット100AによってレンズLEの各装置間での搬送が行われている間に、搬送ロボット100BによってトレイTR上に置かれたカップCUが取り出され、粘着テープ供給装置440に搬送される。カップCUは、搬送ロボット100Bが備えるフィンガー部170によって保持されることで、搬送される。粘着テープ供給装置440では、例えば、
図8に示す所定形状の粘着テープTAが、搬送ベルトによって搬送される。
図8は、カップCUに対する粘着テープTAの貼付けを説明する図である。粘着テープTAは、カップCUをレンズLEの屈折面に固定するために使用される。例えば、カップCUは、粘着テープTAを介して、レンズLEの前屈折面Lfに固定される。
【0063】
粘着テープ供給装置440の搬送ベルトで搬送された粘着テープTA上に、搬送ロボット100Bによって搬送されたカップCUの略楕円形状の鍔部CUb側が置かれることで、鍔部CUbの下面に、粘着テープTAが貼り付けられる。そして、粘着テープTAが貼り付けられたカップCUは、鍔部CUbの縁が搬送ロボット100Bのフィンガー部170によって保持され、搬送ロボット100Bによってカップ取り付け装置450が備えるブロッキングアーム451(
図1参照)まで搬送され、ブロッキングアーム451に装着される。
【0064】
ブロッキングアーム451へのカップCUの装着が完了すると、ブロッキングアーム451が載置台に置かれたレンズLE側に移動されることで、レンズLEの前屈折面Lfに粘着テープTAを介してカップCUが固定される。例えば、カップCUの中心は、レンズLEの光学中心に取り付けられる。あるいは、カップCUの中心は、制御装置50によって取得されたレイアウトデータ(玉型に対するレンズLEの光学中心の位置関係のデータ)に基づき、玉型の幾何中心に取り付けられる。なお、レンズLEへのカップCUの取り付け時、
図8に示される鍔部CUbの長手方向が、眼鏡装用時のレンズLEの左右方向とされる。
【0065】
カップCUがレンズLEに固定されると、ブロッキングアーム451が上昇されることでレンズLEが持ち上げられる。次に、搬送ロボット100Aが駆動され、搬送ロボット100Aの保持部150AがレンズLEの後屈折面Lrの下に移動された後、レンズLEの後屈折面Lrを吸着部160が吸着することで、レンズLEが保持部150Aに保持され、ブロッキングアーム451からレンズLEが取り外される。このとき、吸着部160の吸着中心が、カップCUの取り付け中心に一致するように保持部150Aが移動される。また、カップCUの鍔部CUbの長手方向(最も長い方向)に直交する短手方向(最も短い方向)と、保持部150Aのアーム152が延びる方向と、が一致するように保持部150Aが移動される。これにより、保持部150Aの保持基準位置とカップCUの取り付け中心とが一定の位置関係にされる。
【0066】
<レンズ形状測定>
次に、保持部150Aに保持されたレンズLEは、搬送ロボット100Aによってレンズ形状測定装置300に搬送され、レンズLEの前屈折面Lf及び後屈折面Lrの少なくとも一方の屈折面形状が測定される。例えば、レンズLEの前屈折面Lfのカーブ情報を得る場合、
図5に示されるように、搬送ロボット100AによってレンズLEがYa方向における複数(例えば、少なくとも3点)の測定位置に移動され、Ya方向の各測定位置で測定子311が前屈折面Lfに接触されることで、Ya方向における各測定位置のX方向の位置がセンサ321によって検知される。そして、センサ321によるX方向の位置情報と、搬送ロボット100AによるX方向及びYa方向の移動情報と、に基づき、レンズLEの前屈折面Lfのカーブ情報(ここでは、Ya方向におけるカーブ情報)が得られる。レンズLEの後屈折面Lrのカーブ情報は、測定子312が使用されることで、同様な方法で取得される。
【0067】
また、レンズLEの外形形状(カップ中心に対するYa方向における外形形状)の取得時は、搬送ロボット100AによってレンズLEのコバが測定子313に向けてYa方向に移動される。そして、レンズLEの外形が測定子313に接触したことがセンサ323により検知され、センサ323の検知情報と、搬送ロボット100AによるYa方向の移動情報と、に基づいてレンズLEの外形形状が取得される。
【0068】
以上のような測定により、搬送ロボット100Aの保持部150Aに保持された状態のレンズLEの外形形状が取得される。すなわち、保持部150Aの保持基準位置Spに対するレンズLEの外形形状が取得される。例えば、保持基準位置Spは、アーム先端155の先端で吸着部160の吸着中心が通る位置とされる。例えば、吸着部160の吸着中心が通る第1軸方向が
図5上のX方向とされ、第1軸方向に直交する第2軸方向が
図5上のYa方向とされる。なお、保持基準位置Spに対するレンズ形状(屈折面形状、外形形状も含む)の取得処理は、制御装置50によって行われてもよいし、搬送ロボット100Aの制御部110によって行われてもよい。
【0069】
なお、付加的に、レンズLEに固定されたカップCUの端面CUeのX方向の位置が測定されてもよい。例えば、測定子311が端面CUeに接触されるようにレンズLEがX方向に移動されることにより、センサ321によるX方向の位置情報と、搬送ロボット100AによるX方向の移動情報と、に基づき、レンズLEが保持部150Aに保持された状態の保持基準位置Spに対する端面CUeのX方向の位置情報が取得される。
【0070】
なお、カップCUの端面CUeの位置情報は、レンズ形状測定装置300による測定が行われなくても、取得可能である。例えば、カップCUの外形形状が記憶部57又は制御装置50の記憶部に予め記憶されていることで、この外形形状情報とレンズLEの前屈折面Lfのカーブ情報とに基づき、保持基準位置Spに対する端面CUeのX方向の位置情報が取得される。
【0071】
<眼鏡レンズ加工装置へのレンズ搬送とレンズ保持軸に対するレンズ移動>
レンズLEの形状測定が完了すると、保持部150Aに保持された未加工のレンズLEが搬送ロボット100Aにより搬送され、眼鏡レンズ加工装置200の搬入口270(
図1参照)から保持部150Aが進入される。次に、眼鏡レンズ加工装置200が備えるレンズ保持軸202Lとレンズ保持軸202Rとの間にレンズLEが挿入された後、カップホルダー230にカップCUが装着されるようにレンズLEが移動されることで、レンズLEがレンズ保持軸202によって保持される。
【0072】
図9~
図14は、搬送ロボット100Aによるレンズ保持軸202へのレンズLEの装着を説明する図である。各図において、レンズ保持軸202の軸方向をX方向とする。X方向に垂直なY方向は、
図9に示すように、レンズ保持軸202に対する保持部150A(レンズLE)の進入方向(挿入方向)とされ、また、保持部150Aのアーム152が延びる方向とされている。
図9は、搬送ロボット100Aによる、レンズ保持軸202に対するレンズLEの進入方向を示す図であり、レンズ保持軸202の軸方向から見た図である。
【0073】
なお、以下の実施例では、レンズLEと一対のレンズ保持軸202との相対的な位置関係を変える制御に関し、搬送ロボット100Aの駆動が制御されることで、レンズ保持軸202に対してレンズLEが移動される場合を例にして説明する。
【0074】
図9において、搬送ロボット100Aは、レンズLEの加工時におけるレンズ保持軸202の回転の基準方向ST1に対して、角度β1だけ傾斜したY方向の進入軸M1に沿ってレンズLEが進入するように制御される。なお、レンズ保持軸202の回転の基準方向ST1は、玉型の左右方向(これはレンズLEの乱視軸の0度方向でもある)とされ、例えば、レンズLEの加工の開始時及び終了時には水平方向とされている。
【0075】
レンズLEの進入に関し、具体的には、待機位置に置かれたレンズ保持軸202の中心Oを通る進入軸M1に沿って、保持部150Aが搬入口270から進入される。また、レンズLEに固定されたカップCUの鍔部CUbの短手方向(最も短い方向)がY方向とされるように進入される。これに合わせて、レンズ保持軸202の回転角度が調整され、待機される。これにより、カップホルダー230の挿入穴231aのキーと、カップCUの基部CUaのキー溝と、の方向が合わせられ、カップホルダー230へのカップCUの装着が可能とされる。
【0076】
なお、搬送ロボット100Aの制御において、Y方向と、レンズLEの屈折面形状の取得時のYa方向(
図5参照)は、共に保持部150Aのアーム152が延びる方向であり、Y方向はYa方向と同じ基準での方向とされている。すなわち、屈折面のカーブ情報は、進入方向と同じ方向での情報とされ、レンズLEのカーブ情報等の屈折面形状はY方向における形状として管理される。
【0077】
次に、レンズ保持軸202Lとレンズ保持軸202Rとの間にレンズLEを挿入する動作を説明する。なお、レンズLEの挿入時、レンズ保持軸202Lの端部(実施例ではカップホルダー230)とレンズ保持軸202Rの端部(実施例ではレンズ押さえ235)とは、所定の隙間間隔WHで開かれている。
【0078】
<通常のレンズ移動>
図10は、例えば、レンズLEが低カーブレンズの場合のように、通常のレンズ移動を説明する図である。例えば、低カーブレンズでは、レンズLEの最大レンズ距離WL(X方向におけるカップCUの端面CUeと、レンズLEのレンズ保持軸202R側の端と、の幅)が、レンズ保持軸202の隙間間隔WHより小さい状態である。
【0079】
この場合、
図10(a)に示すように、一対のレンズ保持軸202の間隔WHに、レンズLE側の幅WLが入るようにX方向の位置決めがされ、レンズLEがX方向に移動される。例えば、カップCUの端面CUeが、レンズ保持軸202L側の端部202Le(カップホルダー230の端部)からレンズ保持軸202R側に定の干渉回避距離ΔD1(例えば、1mm)だけ離れたポイントHF1に位置するように、レンズLEがX方向に移動される。なお、レンズ保持軸202L及びレンズ保持軸202Rの位置(それぞれの端部の位置)は、制御部110による搬送ロボット100の駆動の制御上、既知の位置として管理されている。
【0080】
次に、
図10(b)に示すように、所定の挿入位置までレンズLEがY方向に直線的に移動されることで、一対のレンズ保持軸202の隙間へのレンズLEの挿入が完了される。所定の挿入位置は、レンズ保持軸202の中心軸とレンズLEの保持中心とが一致する位置とされる。レンズLEの保持中心は、カップCUの中心軸と同じであり、また、保持部150Aの保持中心と同じでもある。なお、レンズLEの挿入方向のY方向は、
図6におけるレンズ保持軸202の移動方向のYb方向と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0081】
その後、レンズ保持軸202L側にレンズLEが移動されることで、カップホルダー230にカップCUが装着される。次に、搬送ロボット100Aの保持部150AがレンズLEから離された後、レンズ保持軸202RがレンズLE側に移動されることで、レンズLEの後屈折面Lrがレンズ押さえ235に押さえられる。これにより、一対のレンズ保持軸202によってレンズLEが保持される。
【0082】
以上のように、レンズLEの最大レンズ距離WLが隙間間隔WHより小さい場合には、単純にY方向への直線的な1軸のレンズLEの平行移動で、所定の挿入位置にレンズLEを挿入できる。しかし、レンズLEの形状によっては、単純にY方向への平行移動では、レンズ保持軸202にレンズLEが干渉してしまうことがある。この問題は、特に、レンズLEの屈折面のカーブがきつい高カーブレンズの場合に発生しやすい。例えば、
図11に示す如く、レンズLEが高カーブレンズで、レンズLEの最大レンズ距離WLが隙間間隔WHより大きい場合、単純なY方向への平行移動のみでは、レンズLEをレンズ保持軸202の所定の挿入位置に挿入できない。一対のレンズ保持軸202の隙間を十分に広げる対応は、眼鏡レンズ加工装置100が大型化しやすく、また、既存のレンズ加工装置100が使用できず、経済的に不利となる。
【0083】
<本開示のレンズ移動>
そこで、本開示の搬送ロボット100Aの制御部110は、搬送ロボット100Aの駆動を制御し、事前に取得されたレンズLEの屈折面形状に基づき、レンズLEの移動を少なくともX方向及びY方向の2軸方向に二次元的に変化させることで、一対のレンズ保持軸202の隙間の所定の挿入位置にレンズLEを挿入させる。例えば、制御部110は、レンズLEの前屈折面情報及び後屈折面情報の少なくとも一方に基づいてレンズLEの移動を二次元的に変化させる。以下では、レンズLEの前屈折面情報に基づくレンズ前面基準の場合、レンズLEの後屈折面情報に基づくレンズ後面基準の場合、レンズLEの前屈折面情報及び後屈折面情報の両方に基づく場合のレンズ移動の一例を説明する。
【0084】
<レンズ前面基準の場合>
図12は、レンズ前面基準の場合におけるレンズ移動を説明する図である。この場合、
図12(a)に示すように、レンズ保持軸202L側に設定されたポイントHF1を前屈折面Lfが通過するように、事前に取得された前屈折面情報(例えば、前カーブ情報)に基づいてレンズLEの移動がXY方向の2次元的に変化される。例えば、ポイントHF1は、レンズ保持軸202L側の端部(カップホルダー230の端部)からレンズ保持軸202R側に干渉回避の一定距離ΔD1(例えば、1mm)だけX方向に離れたポイントに設定される。また、ポイントHF1のY方向の位置は、レンズ保持軸202L側の端部に対して、レンズLEの挿入方向の近い側のポイントとされる。例えば、このときのレンズ移動に当たり、制御部110又は制御装置50により、ポイントHF1を前屈折面Lf(前カーブCLf)が通過する移動軌跡が求められる(取得される)。
【0085】
図13は、レンズ前面基準における移動軌跡の演算の一例を説明する図である。例えば、
図13に示されるように、ポイントHF1が、相対的に、前屈折面Lfの前カーブCLf上を移動するように、Y方向の微小移動距離Δy1毎に、X方向の移動距離Δx1、Δx2、Δx3、・・・、Δx9を求める。これにより、レンズ前面基準における移動軌跡が定められる。
【0086】
図12の説明に戻り、未加工のレンズLEのレンズ外形形状情報が取得されていない場合は、
図12(a)に示すように、求められた移動軌跡に基づき、前屈折面Lfの前カーブCLfがポイントHF1を通過するように、レンズLEがXY方向に二次元的に移動される。レンズLEのレンズ外形形状情報が取得されている場合は、
図12(b)のように、レンズ前面の周縁がポイントHF1に達するまでY方向に移動され、その後、前屈折面LfがポイントHF1を通過するように、レンズLEがXY方向に移動されてもよい。なお、レンズ外形形状情報は、レンズ形状測定装置300で測定されていなくても、未加工のレンズLEの一般的な最大外形(例えば、直径100mm)に基づいて取得されてもよい。
【0087】
次に、
図12(c)のように、カップCUの鍔部CUbがポイントHF1の付近(例えば、干渉を避けるために、Y方向に予め定められた距離)に近づいたら、Y方向の移動が停止される。この時、レンズLEの後屈折面Lr側の端部は、Y方向において、レンズ保持軸202R及びレンズ押さえ235を通り過ぎているため、これらにレンズLEの後屈折面が干渉することが回避される。その後、
図12(d)のように、カップCUの端面CUeのX方向における位置が、ポイントHF1に達するまでX方向にレンズLEが移動される。これにより、カップCU及びレンズLEがレンズ保持軸202に干渉することなく、所定の挿入位置に挿入可能とされ、レンズ保持軸202にてレンズLEを適切に保持させることができる
次に、
図12(e)に示すように、レンズLEがY方向に移動されことで、所定の挿入位置に挿入される。その後、レンズ保持軸202L側にレンズLEが移動されることで、カップホルダー230にカップCUが装着された後、吸着部160が退避され、レンズ保持軸202RがレンズLE側に移動されることで、レンズ保持軸202によってレンズLEが保持される。
【0088】
<レンズ後面基準の場合>
図14は、レンズ後面基準の場合におけるレンズ移動を説明する図である。この場合、
図14に示すように、レンズ保持軸202R側に設定されたポイントHR1を後屈折面Lrが通過するように、事前に取得された後屈折面情報(例えば、後カーブ情報)に基づいてレンズLEの移動がXY方向の2次元的に変化される。例えば、ポイントHR1は、レンズ保持軸202R側の端部202Re(レンズ押さえ235の端部)からレンズ保持軸202L側に干渉回避の一定距離ΔD1(例えば、1mm)だけX方向に離れたポイントに設定される。また、ポイントHR1のY方向の位置は、ポイントHF1とは逆に、レンズ保持軸202R側の端部に対して、レンズLEの挿入方向の遠い側のポイントとされる。このときのレンズ移動における後屈折面Lrの移動軌跡も、レンズ前面基準の場合と同様な考え方に基づき、制御部110又は制御装置50により求められる(取得される)。
【0089】
初めに、レンズLEが一対のレンズ保持軸202の隙間に挿入される前に、
図14(a)のように、ポイントHR1のX方向の位置に後屈折面Lrの後面端LrEが位置される。次に、
図14(b)のように、レンズLEの後面端LrEがポイントHR1に位置するように、レンズLEがY方向に移動される。次に、求められた移動軌跡に基づき、後屈折面LrがポイントHR1を通過するようにレンズLEがXY方向に二次元的に移動される。そして、
図14(c)のように、X方向におけるカップCUの端面CUeの位置がポイントHF1に達すると、カップCU及びレンズLEがレンズ保持軸202に干渉することなく、所定の挿入位置に挿入可能とされる。その後、Y方向にレンズLEが移動されることにより、
図14(d)のように、所定の挿入位置にレンズLEが挿入される。これにより、レンズ保持軸202にてレンズLEを適切に保持させることができる。
【0090】
<前屈折面情報及び後屈折面情報に基づく場合>
図15は、レンズLEの前屈折面情報及び後屈折面情報の両方に基づいたレンズ移動を説明する図である。
図15(a)に示すように、まず、保持部150Aに保持されたレンズLEに関し、事前に取得された前屈折面情報及び後屈折面情報に基づき、前屈折面Lfと後屈折面Lrとの中間に中間カーブLCが設定される。また、レンズ保持軸202の隙間間隔WHの中間に、移動基準のポイントHC1が設定される。例えば、ポイントHC1はレンズ保持軸202の中心軸上に設定される。そして、ポイントHC1上のY方向に、中間カーブLCのレンズ周縁端LCeが位置するようにレンズLEが移動される。
【0091】
次に、
図15(b)のように、ポイントHC1にレンズ周縁端LCeが位置するように、レンズLEがY方向に移動される。その後、
図15(c)のように、中間カーブLCがポイントHC1を通過するように、レンズLEがXY方向に二次元的に移動される。そして、
図15(d)のように、カップCUの端面CUeのX方向の位置が、レンズ保持軸202L側の端部202Leから一定の干渉回避距離だけ離れた位置に達すると、カップCU及びレンズLEがレンズ保持軸202に干渉することなく、所定の挿入位置に挿入可能とされる。その後、Y方向にレンズLEが移動されることにより、
図15(e)のように、所定の挿入位置にレンズLEが挿入される。
【0092】
その後、レンズ保持軸202L側にレンズLEが移動されることで、カップホルダー230にカップCUが装着される。次に、搬送ロボット100Aの吸着部160の吸着が解除され、保持部150AがレンズLEから離された後、レンズ保持軸202RがレンズLE側に移動されることで、一対のレンズ保持軸202によってレンズLEが保持される。
【0093】
なお、カップホルダー230にはカップCUの保持を維持するラッチ機構が設けられていてもよい。これにより、搬送ロボット100Aの吸着部160の吸着が解除され、保持部150AがレンズLEから離された場合でも、カップホルダー230に装着されたレンズLEの落下の懸念が軽減される。また、ラッチ機構の代わりに、磁石が利用されてもよい。例えば、カップホルダー230又はカップCUの一方に磁石が設けられ、他方に磁石の磁力で引きつけられる金属部材が設けられていてもよい。
【0094】
<レンズ保持軸による眼鏡レンズの保持後の動作>
以上のように、レンズ保持軸202によってレンズLEが保持されると、眼鏡レンズ加工装置200の制御部210によって移動ユニット250の駆動が制御され、制御装置50からの指令に含まれる玉型等のレンズ加工情報に基づき、レンズ保持軸202に保持されたレンズLEの周縁が加工具260によって加工される。
【0095】
レンズLEの周縁加工が終了すると、再び、搬送ロボット100Aが駆動され、レンズ保持軸202に保持された加工済みレンズLEが搬送ロボット100Aによって取り出される。加工済みレンズLEが取り出される際、加工済みレンズLEが十分に小さければ、Y方向への直線的な移動でレンズLEの取り出しが可能とされるが、加工済みレンズLEの加工形状によっては、レンズLEがレンズ保持軸202に干渉してしまう場合がある。この場合も、加工済みレンズLEの屈折面形状に基づき、レンズLEの移動を少なくともXY方向に二次元的に変化させることで、レンズLEがレンズ保持軸202に干渉することなく、一対のレンズ保持軸202の隙間から加工済みレンズLEを取り出すことができる。例えば、搬送ロボット100Aによる加工済みレンズLEの所定の取り出し位置からの取り出しは、未加工レンズLEの所定の挿入位置への挿入動作に対して逆の動作で行われればよい。
【0096】
搬送ロボット100Aによって眼鏡レンズ加工装置200から取り出された加工済みレンズLEは、搬送ロボット100Aによって搬送され、トレイTRの所定位置に戻される。
【0097】
<変容例>
以上、本開示の典型的な実施例を説明したが、本開示はここに示した実施例に限られず、種々の変容が可能である。
【0098】
例えば、上記の説明では、レンズ形状測定装置300から眼鏡レンズ加工装置200へのレンズLEの搬送時、レンズLEの保持は、搬送ロボット100Aの保持部150Aが持つ吸着部160によって行われるものとしたが、搬送ロボット100Bが備える保持部150Bのフィンガー部170によって行われてもよい。この場合、レンズLEの前屈折面に取り付けらえたカップCUの鍔部CUbの周縁がフィンガー部170によって保持されることで、レンズLEが保持される。鍔部CUbの周縁がフィンガー部170によって保持されることで、Qカップホルダー230にカップCUを装着する際も、フィンガー部170がカップホルダー230に干渉することなく、その装着が行える。
【0099】
フィンガー部170によってレンズLEが保持される構成の場合、吸着部160によるレンズLEの後屈折面Lrの吸着に対し、後屈折面Lr側に余分な干渉物をなくすことができるため、レンズ保持軸202へのレンズLEの挿入時におけるXY移動の自由度が増し、より適切にレンズ保持軸202にてレンズLEを保持させることができる。
【0100】
また、吸着部160を備える搬送ロボット100Aの保持部150Aにフィンガー部170を設けてもよい。この場合、1台の搬送ロボット100Aにより、レンズLE及びカップCUの保持が可能となり、搬送ロボット100の配置スペースが節約され、また、経済的に有利となる。各装置間での対象物の搬送工程においても、吸着部160とフィンガー部170と使い分けることができる。
【0101】
また、搬送ロボット100Bが備える左フィンガー170L及び右フィンガー170Rに、それぞれ吸着部160のような吸着部を設けてもよい。この場合も、各装置間での対象物の搬送工程において、吸着部とフィンガー部170と使い分けることができる。例えば、レンズLEをレンズ保持軸202に保持させるために搬送される場合であっても、左フィンガー170L及び右フィンガー170Rにそれぞれ設けられた吸着部により、レンズLEの前屈折面Lf側を吸着することでレンズLEを保持できる。これにより、レンズ保持軸202に対する部材の干渉を回避し、より適切にレンズ保持軸202にてレンズLEを保持させることができる。
【0102】
また、レンズLEの屈折面形状の取得は、上記実施例ではレンズ形状測定装置300が使用されるものとしたが、これに限られない。例えば、レンズLEの設計データが分かっている場合、あるいは、加工対象のレンズLEに添付される添付データに、前屈折面Lf及び後屈折面Lrの形状データが含まれている場合、これらが制御装置50によって事前に取得されていてもよい。
【0103】
また、上記では、眼鏡レンズ加工システム1は、トレイ搬送装置410、求心装置420、レンズメータ430、粘着テープ供給装置440、カップ取り付け装置450を備える例を説明したが、例えば、小規模のレンズ加工施設では、これらは備えず、眼鏡レンズ加工装置200の他に、搬送ロボット100と、レンズ形状測定装置300と、を備える場合であってもよい。この場合には、カップCUが事前に取り付けられた未加工のレンズLEがトレイに入れられて供給され、これを搬送ロボット100が搬送することで、レンズ加工の自動化が図られる。
【0104】
また、レンズ保持軸202に対するレンズ移動の動作において、レンズLEのX方向の最大レンズ距離WLがレンズ保持軸202の隙間間隔WHより小さいか否かが、制御部110(制御装置50であってもよい)により判断されてもよい。小さいと判断された場合には、レンズLEの屈折面形状に基づく二次元的なレンズ移動の制御は行われず、Y方向への1軸のレンズ移動によって加工済みレンズLEが移動される。この場合、二次元的なレンズ移動を必要としないため、レンズ移動がスピーディーに行える。一方、最大レンズ距離WLが隙間間隔WHより大きいと判断された場合は、レンズLEの移動を少なくともXY方向に二次元的に変化させることによってレンズLEが所定の挿入位置に挿入される。これにより、レンズLEがレンズ保持軸202に干渉することなく、適切に保持される。なお、この判断のレンズ移動の制御は、加工済みレンズLEがレンズ保持軸202から取り出されるときも実行されてもよい。
【0105】
また、上記の実施例では、搬送ロボット100は、複数の関節部を有するアーム部130を備え、保持部150Aに保持された対象物を三次元的に自在に移動させることができる例を説明したが、これに限られない。例えば、眼鏡レンズ加工装置200のレンズ保持軸202に対するレンズLEの搬送の場合、少なくともXY方向に二次元的に移動できる搬送ロボットの構成であってもよい。
【0106】
また、上記では、レンズ保持軸202にレンズLEを保持させるために、加工治具のカップCUが使用される例を説明したが、これに限られない。例えば、カップCUが使用されなくても、レンズ保持軸202にレンズLEを吸着する機構を設けることで、レンズ保持軸202はレンズLEを保持することができる。この場合、レンズLEがレンズ保持軸202の間に移動される所定の挿入位置は、前述と同じであってもよいし、レンズ保持軸202の中心軸とレンズLEの保持中心(保持基準位置Sp)との位置関係が管理されている位置であってもよい。
【0107】
また、上記で説明した、レンズLEの屈折面形状に基づくレンズ移動の制御は、一例に過ぎず、上記に限られない。
【0108】
例えば、
図16は、レンズLEの屈折面形状に基づくレンズ移動の変容例を説明する図である。
図16(a)おいて、斜線で示す領域AEは、一対のレンズ保持軸202の隙間の領域(実施例では、カップホルダー230とレンズ押さえ235との間の領域)である。例えば、領域AEは、先の実施例で示したポイントHF1とポイントHR1で定義される領域であり、レンズ保持軸202との干渉を避けるマージンを取った領域として定められる。
【0109】
レンズ保持軸202の所定の挿入位置へのレンズLEの移動に際しては、レンズLEの前屈折面Lf及び後屈折面Lrの形状情報(例えば、カーブ情報)に基づき、領域AE内に前屈折面Lfと後屈折面Lrの両者が通過するように、前屈折面Lfと後屈折面Lrの情報に基づき、レンズLEがXY方向に移動される。例えば、初めの段階では、
図16(a)のように、レンズLEがY方向に移動され、前屈折面Lfが領域AEから外れそうになったら、
図16(b)のように、X方向の移動が加えられる。そして、X方向におけるカップCUの端面CUeの位置が領域AE内に入れば(
図16(c)参照)、Y方向へレンズLEが移動されることで、レンズLEが所定の挿入位置に挿入可能とされる(
図16(d)参照)。なお、このようなレンズLEのXY方向の移動軌跡は、領域AEに対する前屈折面Lf及び後屈折面Lrの位置関係に基づいて予め演算される。
【0110】
図17は、レンズLEの屈折面形状に基づくレンズ移動の他の変容例を説明する図である。上記の
図12~
図16の説明では、レンズLEがXY方向に二次元的に移動される例を示したが、さらに、レンズLEの傾斜の移動が加えられてもよい。例えば、
図17は、
図14のレンズ後面基準のレンズ移動に対し、レンズLEの傾斜が加えられた例である。
【0111】
例えば、レンズLEがレンズ保持軸202の隙間に挿入される前に、レンズ保持軸の軸方向(X方向)に垂直な方向(Y方向)に対してレンズLEの屈折面が傾斜される。例えば、
図17(a)のように、レンズ保持軸202Rより遠い側に位置する後屈折面Lrの端部LrEがレンズ保持軸202Rに近づくように、レンズLEが角度α(
図17ではX方向に対する保持部150Aの保持中心軸N1の角度で示している)で傾斜される。言い換えれば、X方向に平行な位置関係にあった保持中心軸N1の後屈折面Lr側が、レンズ保持軸202Rに近づくように、角度αで傾斜される。なお、例えば、初期の角度αは、保持部150Aの傾斜が可能な範囲で、保持部150Aがレンズ保持軸202R及びレンズ押さえ235等との干渉を回避可能な一定角度で設定されてもよい。あるいは、初期の角度αは、レンズLEの屈折面形状に基づいて定められてもよい。
【0112】
次に、レンズLEの後面端LrEがポイントHR1に位置するように、レンズLEがY方向に移動される(
図14(b)参照)。後面端LrEがポイントHR1に位置したら、後屈折面LrがポイントHR1を通過するようにレンズLEがXY方向に二次元的に移動されと共に、傾斜の角度αが、Y方向の移動に伴って徐々に戻される(
図14(c)参照)。そして、傾斜の角度αがゼロに戻され、X方向におけるカップCUの端面CUeの位置が、ポイントHF1より保持軸202R側に位置するように、レンズLEがXY移動されることで、レンズLEが所定の挿入位置に挿入される(
図14(d)参照)。
【0113】
このように、レンズLEのXY移動に、レンズLEの傾斜の移動が加えられることにより、レンズ保持軸202の所定の挿入位置に挿入可能なレンズLEの形状の適用が広げられる。
【0114】
また、レンズLEの傾斜の移動に関し、搬送ロボット100の保持部(保持部150A又は150B)がレンズLEの前屈折面Lfを保持するように構成されている場合、さらにレンズ移動の自由度が増す。例えば、後屈折面Lr側に余分な干渉物が無いため、後屈折面Lrのカーブ中心をレンズ保持軸202Rの軸中心上又はその付近に位置させることができるため、レンズLEの傾斜の角度αを大きくできる。これにより、例えば、カーブ中心を基準にレンズLEの傾斜を戻すレンズ移動が行え、レンズ保持軸202の隙間間隔WHが狭い場合でも、レンズ保持軸202の所定の挿入位置に挿入可能なレンズLEの形状の適用範囲が広げられる。
【0115】
また、レンズLEの傾斜の移動に関しては、
図17の例に限らず、例えば、
図16で示された領域AE内に、レンズLEの前屈折面Lf及び後屈折面Lrの両者が入るように、レンズLEのXY方向の二次元的な移動に加え、傾斜の移動が行われてもよい。
【0116】
また、上記では、屈折面形状に基づくレンズLEの二次元的な移動は、搬送ロボット100の駆動が制御されることで行われるものとしたが、これに限られない。例えば、眼鏡レンズ加工装置200(移動ユニット250)が制御され、屈折面形状に基づいて一対の一対のレンズ保持軸202がXY方向に二次元的に移動されることで、相対的にレンズLEの移動が二次元的に変化されてもよい。この場合、まず、搬送ロボット100によって、レンズ保持軸202がY方向に移動可能な位置にレンズLEが搬送された後、屈折面形状にレンズ保持軸202がXY方向に二次元的に移動される。なお、この場合、レンズLEの挿入方向のY方向は、
図6におけるレンズ保持軸202の移動方向のYb方向が同じとされている。
【0117】
また、搬送ロボット100及び眼鏡レンズ加工装置200の両方が制御され、搬送ロボット100及び眼鏡レンズ加工装置200の協働で、屈折面形状に基づいてレンズLEの相対的な移動が二次元的に行われてもよい。例えば、屈折面形状に基づいて眼鏡レンズ加工装置200が制御され、一対のレンズ保持軸202がX方向に移動され、また、屈折面形状に基づいて搬送ロボット200が制御され、搬送ロボット200に保持されたレンズLEがY方向に移動されることで、レンズ保持軸202に対してレンズLEが相対的に移動されもよい。あるいは、その逆に、搬送ロボット200に保持されたレンズLEがX方向に移動され、一対のレンズ保持軸202がY方向に移動されることで、レンズ保持軸202に対してレンズLEが相対的に移動されもよい。
【符号の説明】
【0118】
1 眼鏡レンズ加工システム
50 制御装置
100 搬送ロボット
110 制御部
150A、150B 保持部
200 眼鏡レンズ加工装置
202 レンズ保持軸
210 制御部
250 移動ユニット
300 レンズ形状測定装置