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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136826
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】カテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/954 20130101AFI20240927BHJP
【FI】
A61F2/954
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048098
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000200035
【氏名又は名称】SBカワスミ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100116001
【弁理士】
【氏名又は名称】森 俊秀
(72)【発明者】
【氏名】石丸 佳樹
(72)【発明者】
【氏名】宮久 優子
(72)【発明者】
【氏名】向井 智和
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA56
4C267BB02
4C267BB03
4C267BB11
4C267BB12
4C267BB17
4C267BB19
4C267BB31
4C267BB39
4C267BB40
4C267BB43
4C267BB63
4C267CC22
4C267GG02
4C267GG03
4C267GG04
4C267GG06
4C267GG07
4C267GG08
4C267GG10
4C267GG22
4C267GG23
4C267GG24
4C267HH01
4C267HH08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】生体の穿孔や筒状治療具の展開不良が生じにくいカテーテルを提供する。
【解決手段】筒状治療具10を搬送するためのカテーテル1は、筒状治療具10を収容可能なシース20と、複数の筒状脚部12a,12bの各々がシース20から放出された状態で、当該筒状脚部12a,12bの各々の軸方向の少なくとも一部分を収縮状態に維持する複数の拘束紐と、を備える。複数の拘束紐の各々が拘束紐の一端又は他端が軸方向に沿って牽引されることで、締結部が順次解放され、筒状脚部12a,12bの拘束を解除を可能とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体管腔の第1管腔内に留置され、軸方向に略直交する径方向に拡縮可能な筒状本体部と、前記第1管腔から分枝した複数の第2管腔内に留置され、前記筒状本体部の一端部から分枝するように設けられ、軸方向に略直交する径方向に拡縮可能な複数の筒状脚部と、を有する筒状治療具を搬送するためのカテーテルであって、
前記筒状治療具を収容可能なシースと、
前記複数の筒状脚部の各々が前記シースから放出された状態で、当該筒状脚部の各々の軸方向の少なくとも一部分を収縮状態に維持する複数の拘束紐と、を備え、
前記複数の拘束紐の各々は、前記筒状脚部の周面部に第1の巻回方向に沿って配置される第1屈曲部形成部と、前記周面部に前記第1の巻回方向と逆方向の第2の巻回方向に沿って配置される第2屈曲部形成部とを、当該拘束紐の一端側から他端側に交互に複数有し、
前記第1屈曲部形成部により形成された第1屈曲部と前記第2屈曲部形成部により形成された第2屈曲部とにより軸方向に沿って形成された複数の締結部により前記筒状脚部が拘束され、
前記拘束紐の一端又は他端が軸方向に沿って牽引されることで、前記締結部が順次解放され、前記筒状脚部の拘束を解除可能に構成されているカテーテル。
【請求項2】
前記複数の第1屈曲部形成部のうち、一の第1屈曲部形成部により形成された第1屈曲部の内側に、当該一の第1屈曲部形成部と軸方向に隣り合う前記第2屈曲部形成部により形成された第2屈曲部が通されることで第1締結部が形成され、
前記複数の第2屈曲部形成部のうち、一の第2屈曲部形成部により形成された第2屈曲部の内側に、当該一の第2屈曲部形成部と軸方向に隣り合う前記第1屈曲部形成部により形成された第1屈曲部が通されることで第2締結部が形成され、
前記第1締結部及び前記第2締結部が軸方向に沿って交互に配置されることにより、前記筒状脚部の中央部が拘束され、
前記拘束紐の一端又は他端が軸方向に沿って牽引されることで、前記中央部に配置された前記第1締結部及び前記第2締結部が順次解放され、前記筒状脚部の拘束が解除される、
請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記拘束紐は、前記第2屈曲部形成部と軸方向に隣り合い、前記第2の巻回方向に沿って配置される仮止め用屈曲部形成部を有し、
前記筒状脚部における前記軸方向の両端部のうち、少なくとも一方の端部において、前記第1締結部を形成した前記第2屈曲部形成部の前記第2屈曲部の内側に、前記仮止め用屈曲部形成部の仮止め用屈曲部が通されることで仮止め部が形成され、
前記拘束紐の一端又は他端が軸方向に沿って牽引されることで、前記仮止め部が解放される、
請求項2に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記仮止め部は、
前記筒状脚部における前記筒状本体部の一端部側に設けられた第1仮止め部と、前記筒状脚部における前記筒状本体部の一端部と反対側に設けられた第2仮止め部と、を有し、
前記筒状脚部は、前記拘束紐の前記第2仮止め部側の端部が軸方向に沿って牽引されることで、前記第2仮止め部、前記中央部における前記第1締結部及び前記第2締結部、前記第1仮止め部の順に解放される、
請求項3に記載のカテーテル。
【請求項5】
前記シースの内側にて先端側を軸方向に沿って進退可能に構成され、前記複数の拘束紐により拘束された収縮状態の前記複数の筒状脚部を保持する複数の軸状部材を更に備え、
前記複数の軸状部材の各々は、その先端部に先端チップが配設され、
前記先端チップは、前記拘束紐の一端及び他端のうち、軸方向に沿って牽引される端部側を係止可能に構成されている、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のカテーテル。
【請求項6】
前記シースの内側にて先端側を軸方向に沿って進退可能に構成され、前記複数の拘束紐により拘束された収縮状態の前記複数の筒状脚部を保持する複数の軸状部材を更に備え、
前記複数の軸状部材の各々には、その先端部に先端チップが配設され、
前記先端チップは、前記拘束紐の一端及び他端のうち、軸方向に沿って牽引される端部側とは異なる端部側を係止可能に構成されている、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のカテーテル。
【請求項7】
前記複数の拘束紐のうち、いずれか一の拘束紐は、前記第1屈曲部と前記第2屈曲部とにより形成された複数の前記締結部により前記筒状本体部を軸方向に沿って拘束し、当該筒状本体部が前記シースから放出された状態で、当該筒状本体部の軸方向の少なくとも一部分を収縮状態に維持し、
前記拘束紐の一端又は他端が軸方向に沿って牽引されることで、前記締結部が順次解放され、前記筒状本体部の拘束を解除可能に構成されている、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のカテーテル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状治療具を搬送するためのカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食道、胃、小腸、大腸、胆管などの消化管や血管(以下、「生体管腔」と称する)に生じた狭窄部又は閉塞部に留置され、病変部位を拡径して生体管腔の開存状態を維持する筒状治療具(一般に「ステント」を呼ばれる)が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一般に、筒状治療具は、カテーテルを用いて留置目標部位まで送達される。カテーテルは、筒状治療具を径方向に収縮させた状態で患部に運び、患部にて筒状治療具を径方向に拡張させることで、筒状治療具を患部に留置させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2005-514106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種のカテーテルでは、樹脂線材を金属線材に係合させつつ収縮状態の筒状治療具に巻回して筒状治療具を収縮状態で拘束し、金属線材を引き抜くことで樹脂線材による筒状治療具の拘束を解除して径方向に拡張させる構成も知られている。しかしながら、金属線材の先端側端部が生体を穿孔する可能性を回避するため、金属線材の先端を保護する必要があった。また、上記の構成において、展開操作を誤って樹脂線材を先に牽引した場合には筒状治療具の展開が困難となってしまう。
【0006】
そこで、本発明は上記の状況に鑑みてなされたものであって、生体の穿孔や筒状治療具の展開不良が生じにくいカテーテルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、生体管腔の第1管腔内に留置され、軸方向に略直交する径方向に拡縮可能な筒状本体部と、第1管腔から分枝した複数の第2管腔内に留置され、本体部の一端部から分枝するように設けられ、軸方向に略直交する径方向に拡縮可能な複数の筒状脚部と、を有する筒状治療具を搬送するためのカテーテルである。カテーテルは、筒状治療具を収容可能なシースと、複数の筒状脚部の各々がシースから放出された状態で、当該筒状脚部の各々の軸方向の少なくとも一部分を収縮状態に維持する複数の拘束紐と、を備える。複数の拘束紐の各々は、筒状脚部の周面部に第1の巻回方向に沿って配置される第1屈曲部形成部と、周面部に第1の巻回方向と逆方向の第2の巻回方向に沿って配置される第2屈曲部形成部とを、当該拘束紐の一端側から他端側に交互に複数有し、第1屈曲部形成部により形成された第1屈曲部と第2屈曲部形成部により形成された第2屈曲部とにより軸方向に沿って形成された複数の締結部により筒状脚部が拘束され、拘束紐の一端又は他端が軸方向に沿って牽引されることで、締結部が順次解放され、筒状脚部の拘束を解除可能に構成されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、生体の穿孔や筒状治療具の展開不良が生じにくいカテーテルを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】(a)は本実施形態のステントグラフトの構成例を示す図であり、(b)は図1(a)のIb-Ib線断面図である。
図2】(a)は本実施形態のステントグラフトの留置状態を示す図であり、(b)は図2(a)の肝門部を拡大して示す図である。
図3】(a)は本実施形態のカテーテルの分解図であり、(b)は本実施形態のカテーテルの組立状態を示す図であり、(c)はステントグラフト内にインナーチューブを挿入した状態を示す図である。
図4】インナーチューブの一方側の拡大図である。
図5】(a)は第2本体部を拘束紐により拘束した状態を示す模式図であり、(b)は、第2本体部の拘束紐よる拘束が一部解除された状態を示す模式図である。
図6】第2本体部の端部の拘束を説明するための図である。
図7】第2本体部の端部の拘束を説明するための図である。
図8】第2本体部の中央部の拘束を説明するための図である。
図9】カテーテルを用いてステントグラフトを留置する手順を示す図である。
図10】カテーテルを用いてステントグラフトを留置する手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態に係るカテーテルおよび筒状治療具の構成例について説明する。
【0011】
図面における各部の形状、寸法等は模式的に示したもので、実際の形状や寸法等を示すものではない。図面において、カテーテルおよび筒状治療具の軸方向Axを必要に応じて矢印で示す。また、軸方向Axと略直交する方向を径方向と定義する。なお、必要に応じて、図面においてカテーテルおよび筒状治療具の一方側(先端側)を符号Fで示し、他方側(基端側)を符号Bで示す。
【0012】
まず、本実施形態のステントグラフト10の構成について説明する。
図1(a)は、本実施形態のステントグラフト10の構成例を示す図であり、図1(b)は、図1(a)のIb-Ib線断面図である。図2(a)は、本実施形態のステントグラフト10の留置状態を示す図であり、図2(b)は、図2(a)の肝門部HPを拡大して示す図である。
【0013】
ステントグラフト10は、筒状治療具の一例であって、生体管腔内の狭窄部位や閉塞部位等の病変部位に後述のカテーテル1を用いて留置され、これらの病変部位を拡張させるために適用される。図2(a)、(b)に示すように、本実施形態のステントグラフト10は、胆管用のカバードステントであって、生体管腔の一例である肝門部に留置される。
【0014】
ステントグラフト10は、第1本体部11と、第1本体部11の一方側から分枝する第2本体部12a、12bとを有する。第1本体部11は筒状本体部の一例であり、第2本体部12a、12bは筒状脚部の一例である。
【0015】
図2(a)、(b)に示すように、第1本体部11は総肝管H1に留置される。第2本体部12a、12bは、総肝管H1から分枝する右肝管H2および左肝管H3にそれぞれ留置される。総肝管H1は第1管腔の一例であり、右肝管H2および左肝管H3は第2管腔の一例である。
【0016】
第1本体部11および第2本体部12a、12bはそれぞれ筒状に形成されている。第2本体部12a、12bは、第1本体部11よりも管径が細く、第1本体部11の一方側の端部から二股に分枝して連設されている。これにより、第1本体部11の一方側は各々の第2本体部12a、12bの他方側と連通し、第1本体部11および第2本体部12a、12bはY字状の胆汁の流路を内部に形成する。また、第2本体部12a、12bが分枝する股部の角度は、ステントグラフト10が留置される肝門部HPの形状に応じて決定される。
【0017】
また、図3(c)に示すように、軸方向に沿って第2本体部12a、12bを揃えて並べたときに、第2本体部12a、12bは、第1本体部11の軸中心に対してそれぞれの軸中心がずれた状態で配置されている。これにより、第2本体部12a、12bが径方向に圧縮されやすくなり、後述するカテーテル1のシース20にステントグラフト10を収納しやすくなる。なお、以下の説明では、第2本体部12a、12bに共通の事項を説明するときには、第2本体部12と総称することもある。
【0018】
第1本体部11および第2本体部12a、12bは、骨格部13と、骨格部13に固定された被膜部14とをそれぞれ有している。
【0019】
骨格部13は、拡張状態の形状が記憶されたいわゆる自己拡張型の構成であって、径方向内側に収縮した収縮状態から径方向外側に拡張する拡張状態へと拡縮可能である。したがって、留置状態のステントグラフト10は、骨格部13の自己拡張力により総肝管H1、右肝管H2及び左肝管H3の内面を押圧する。また、留置状態のステントグラフト10は、外側から加わる外力に応じて、第1本体部11および第2本体部12a、12bに配設された骨格部13がそれぞれ変形可能である。
【0020】
骨格部13は、一例として、金属素線からなる線材をフェンス状に編み込んだ筒状に構成されている。骨格部13の線材の材料としては、例えば、Ni-Ti合金、ステンレス鋼、チタン合金などに代表される公知の金属又は金属合金等が挙げられる。なお、骨格部13は、金属以外の材料(例えば、セラミックや樹脂等)で形成されていてもよい。
また、骨格部13の線材にはX線造影性を有する合金材料を用いてもよく、あるいはX線造影性を有する合金材料で形成されたマーカ片(不図示)を線材に適宜取り付けてもよい。これらの場合、ステントグラフト10の位置を体外から確認できるようになる。
【0021】
骨格部13を構成する材料としてNi-Ti合金を用いる場合、骨格部13を拡張状態の形状に整えた後、所定の熱処理を施すことにより、拡張状態の形状を骨格部13に記憶させることができる。
【0022】
なお、骨格部13の構成は、上記に限定されるものではない。例えば、ジグザグ状に折り曲げた金属細線をらせん状に巻回させて骨格部13を形成してもよい。または、骨格部13は、ジグザグに折り返された金属細線を環状に接続したリング状の骨格片を軸方向に間隔をおいて複数配列した構造であってもよい。また、上記の各種金属からなる薄肉円筒体をレーザーカットして骨格部13を形成してもよい。
【0023】
被膜部14は、上述の流路を形成する管状の可撓性の膜体であって、骨格部13の隙間部分を閉塞するように骨格部13に取り付けられている。被膜部14は、例えば、図1(b)に示すように、骨格部13の外周面に取り付けられる。これにより、被膜部14は、病変部位の細胞組織が骨格部13内に浸潤する事象(イングロース)を抑制する。なお、被膜部14は、骨格部13の内周面に取り付けられていてもよく、骨格部13を挟み込むように骨格部13の外周面と内周面に取り付けられてもよい。
【0024】
被膜部14を形成する材料としては、例えば、シリコーン樹脂、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂、及びポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂等が挙げられる。
また、骨格部13に対する被膜部14の固定方法は、例えば、ディッピングによる被膜の形成が挙げられる。もっとも、被膜部14の固定方法は、糸による縫着、接着、溶着、テープ等による貼着等であってもよい。
【0025】
次に、本実施形態におけるカテーテルの構成例について説明する。
図3(a)は、本実施形態のカテーテル1の分解図であり、図3(b)は、本実施形態のカテーテル1の組立状態を示す図である。図3(c)は、ステントグラフト10内にインナーチューブ30を挿入した状態を示す図である。図4は、インナーチューブ30の一方側の拡大図である。
【0026】
図3(a)に示すように、カテーテル1は、管状のシース20と、シース20の内側に配置される管状のインナーチューブ30と、を備えている。
【0027】
シース20は、収縮状態のステントグラフト10を内側に収容可能である。シース20は、シース本体部21と、シース本体部21の他方側の端部に設けられるハブ22とを有している。ハブ22は、インナーチューブ30に対してシース20を固定するためのナット(不図示)や、後述の拘束紐60への操作を行う操作部材(不図示)等を有している。
【0028】
シース本体部21は、可撓性を有する材料で形成された管体である。シース本体部21の材料としては、例えば、フッ素樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、及びポリ塩化ビニル系樹脂等から選択された生体適合性を有する合成樹脂(エラストマー)、これら樹脂に他の材料が混合された樹脂コンパウンド、これらの合成樹脂による多層構造体、並びに、これら合成樹脂と金属線との複合体などが挙げられる。
【0029】
インナーチューブ30は、シース20よりも長尺かつ細径の軸状部材である。インナーチューブ30は、シース20の内側に配置され、シース20に対して先端側が軸方向Axに進退可能に構成されている。
【0030】
図3(c)に示すように、インナーチューブ30は、右肝管H2に留置される第2本体部12aと、左肝管H3に留置される第2本体部12bにそれぞれ挿通するためにシース20内に一対配置される。一対のインナーチューブ30の構成はいずれも同様であるため、以下の説明では、第2本体部12aに対応するインナーチューブ30について説明し、第2本体部12bに対応するインナーチューブ30の重複説明は省略する。
【0031】
インナーチューブ30は、軸方向Axの一方側から他方側に連通する穴を有する管状体である。インナーチューブ30の穴には、肝門部HPに配設される後述のガイドワイヤ40が挿通される。インナーチューブ30の材料としては、例えば、樹脂(プラスチック及びエラストマー等)並びに金属など、適度な硬度及び柔軟性を有する種々の材料が挙げられる。
【0032】
カテーテル1の一方側において、インナーチューブ30の外周とシース本体部21の内周の間に形成される空間にステントグラフト10が収容される。図3(c)に示すように、第2本体部12aに対応するインナーチューブ30は、ステントグラフト10の第1本体部11と第2本体部12aを挿通してシース20内に配設される。同様に、第2本体部12bに対応するインナーチューブ30は、ステントグラフト10の第1本体部11と第2本体部12bを挿通してシース20内に配設される。
【0033】
また、図3(c)に示すように、インナーチューブ30の一方側には、先端チップ31とリブ32が取り付けられている。
【0034】
先端チップ31は、インナーチューブ30の一方側(先端側)に取り付けられる筒状部材である。先端チップ31は、カテーテル1を体内に挿入してステントグラフト10を留置するときに、患者の生体組織にインナーチューブ30が接触することを抑制する機能を担う。また、先端チップ31の材料としては、樹脂(プラスチック及びエラストマー等)並びに金属など、適度な硬度及び柔軟性を有する種々の材料が挙げられる。
【0035】
先端チップ31の径はインナーチューブ30よりも大径であり、先端チップ31の一方側の形状は、一方側に向けて緩やかに先細となるテーパー形状をなしている。また、先端チップ31の中心には、ガイドワイヤ40を挿通させるための穴が軸方向に沿って形成されている。また、図4に示すように、先端チップ31には、拘束紐60を係止可能な切り欠き34が外周の一部に形成されている。
【0036】
リブ32は、インナーチューブ30の一方側においてステントグラフト10が保持される保持領域に形成される突起体である。リブ32は、インナーチューブ30よりも大径の円筒形状であり、先端チップ31から他方側に間隔をあけてインナーチューブ30に取り付けられている。図3(c)では、ステントグラフト10の保持される領域に2つのリブ32が配置される例を示すが、インナーチューブ30に設けられるリブ32の数は上記に限定されない。
【0037】
各々のリブ32は、インナーチューブ30から径方向外周側に突出する環状の突起部を一方側と他方側にそれぞれ形成する。リブ32は、シース20に対してインナーチューブ30を軸方向に進行させるときに、インナーチューブ30に保持されたステントグラフト10に軸方向への推力を伝える機能を担う。
【0038】
ステントグラフト10をインナーチューブ30に取り付ける場合、図4に示すように、第2本体部12aは、第2本体部12aの外周に巻回される拘束紐60で外側から拘束され、収縮した状態で内側のインナーチューブ30に保持される。
【0039】
拘束紐60は、インナーチューブ30と並列に軸方向に延在してシース20内に配設されている。拘束紐60の他方側は、シース20内を通ってハブ22の操作部材に接続されている。なお、拘束紐60の材料としては、例えば、ナイロン繊維やフッ素繊維などの縫合糸や樹脂製の紐状部材を適用できる
【0040】
また、拘束紐60は、他方側への牽引により第2本体部12aの拘束が解除されるように巻回されている。操作部材の操作によって拘束紐60が軸方向の他方側に牽引されると、拘束紐60は第2本体部12aの外周から脱落する。これにより、第2本体部12aの径方向への拡張の規制を解除することができる。
【0041】
以下、拘束紐60による第2本体部12の拘束について詳細に説明する。以下の例では、第2本体部12aの例について説明するが、第2本体部12bも同様に拘束紐60により拘束されている。
【0042】
図5(a)は、第2本体部12aを拘束紐60により拘束した状態を示す模式図である。図5(b)は、第2本体部12aの拘束紐60による拘束が一部解除された状態を示す模式図である。図6(a)、図6(b)、図7(a)及び図7(b)は、第2本体部12aの端部の拘束を説明するための図である。図8(a)から図8(c)は、第2本体部12aの中央部の拘束を説明するための図である。
【0043】
図5(a)に示すように、第2本体部12aの両端部には、拘束紐60によって仮止め部653、654が形成される。仮止め部653、654は、自然状態では解かれないが、術者が拘束紐60を牽引したときに解かれる程度の固定力を有する。ここでは、拘束紐60の締結により、仮止め部653、654における固定力が確保されている。なお、仮止め部653は第1仮止め部の一例であり、仮止め部654は第2仮止め部の一例である。
【0044】
また、第2本体部12aの中央部には、拘束紐60によって第1締結部651及び第2締結部652が軸方向に沿って交互に形成される。第2本体部12aは、拘束紐60によって拘束され、収縮状態で維持される。
【0045】
1本の拘束紐60を用いて第2本体部12aを拘束する場合、まず、第2本体部12aの近位側(基端側)S1に仮止め部653が形成される。具体的には、図6(a)に示すように、拘束紐60の近位側S1の端部を屈曲させて拘束紐60を二重にし、二重になった部分(屈曲部を形成する部分)を第2本体部12aの周面部(図6(a)では、第2本体部12aの周面部奥側)に沿って第1の巻回方向に巻回する。図6(a)では、第1の巻回方向は、近位側S1から見て反時計回りである。以下において、第1の巻回方向に巻回される部分を「第1屈曲部形成部61」と称し、第1屈曲部形成部61によって形成される屈曲部を「第1屈曲部641」と称する。
【0046】
次いで、図6(b)に示すように、拘束紐60の第1屈曲部形成部61から遠位側(先端側)S2に延在する部分を屈曲させて二重にし、二重になった部分(屈曲部を形成する部分)を第2本体部12aの周面部(図6(b)では、第2本体部12aの周面部手前側)に沿って第2の巻回方向に巻回する。図6(b)では、第2の巻回方向は、近位側S1から見て時計回りである。以下において、第2の巻回方向に巻回される部分を「第2屈曲部形成部62」と称し、第2屈曲部形成部62によって形成される屈曲部を「第2屈曲部642」と称する。
【0047】
第1屈曲部形成部61により形成された第1屈曲部641の内側に、当該第1屈曲部形成部61と軸方向に隣り合う第2屈曲部形成部62により形成された第2屈曲部642が通されることで、第1締結部651が形成される。
【0048】
さらに、図7(a)に示すように、拘束紐60の第2屈曲部形成部62から遠位側S2に延在する部分を屈曲させて二重にし、二重になった部分(屈曲部を形成する部分)を第2本体部12aの周面部(図7(a)では、第2本体部12aの周面部手前側)に沿って第2の巻回方向に巻回する。以下において、第2屈曲部形成部62と軸方向に隣り合い、第2の巻回方向に巻回される部分を「仮止め用屈曲部形成部63」と称し、仮止め用屈曲部形成部63によって形成される屈曲部を「仮止め用屈曲部643」と称する。
【0049】
第2屈曲部形成部62の第2屈曲部642の内側に、当該第2屈曲部形成部62に隣り合う仮止め用屈曲部形成部63の仮止め用屈曲部643が通されることで、仮止め部653が形成される。第1締結部651及び仮止め部653が軸方向に重なって配置されることにより、第1締結部651が単体で配置される場合に比較して、拘束紐60は解かれにくくなる。第2本体部12aの近位側S1の端部に仮止め部653を設けることで、第2本体部12aの中央部を形成していくときの拘束紐60のずれを防止でき、拘束作業をスムーズに進めることができる。
【0050】
図8(a)に示すように、仮止め部653を形成した仮止め用屈曲部形成部63は、第2屈曲部形成部62として遠位側S2に引き出され、第2本体部12aの中央部を拘束するのに用いられる。すなわち、近位側S1の仮止め部653から引き出された第2屈曲部形成部62の第2屈曲部642(仮止め部653を形成する際の仮止め用屈曲部643と同じ)の内側に、当該第2屈曲部形成部62と軸方向に隣り合い、第1の巻回方向に巻回された第1屈曲部形成部61の第1屈曲部641が通される。そして、第2屈曲部642に通された第1屈曲部641が遠位側S2に牽引されることで、第2屈曲部形成部62が縛り上げられ、第2締結部652が形成される(図8(b)参照)。
【0051】
さらに、図8(b)に示すように、第2締結部652から引き出された第1屈曲部形成部61の第1屈曲部641の内側に、当該第1屈曲部形成部61と軸方向に隣り合い、第2の巻回方向に巻回された第2屈曲部形成部62の第2屈曲部642が通される。そして、第1屈曲部641に通された第2屈曲部642が遠位側S2に牽引されることで、第1屈曲部形成部61が縛り上げられ、第1締結部651が形成される(図8(c)参照)。第1締結部651及び第2締結部652は、軸方向から見たときに、径方向に対向する位置(略180°回転した位置)に配置されることとなる。
【0052】
拘束紐60において、第1締結部651と第2締結部652とを連結している部分は、周方向成分及び軸方向成分を有するように斜めに延在し、軸方向に直線的に延在する部分はない。すなわち、拘束紐60において、第2本体部12aを拘束せずに軸方向に直線的に延在する部分が形成されないため、第2本体部12aの周面部に巻回されて当該第2本体部12aを拘束する拘束紐60の長さを短くすることができる。
【0053】
上述したように、拘束紐60の第1屈曲部形成部61と第2屈曲部形成部62とを互いに交差させながら、第1締結部651と第2締結部652を軸方向に交互に形成することにより、第2本体部12aの中央部は近位側S1から順に拘束されていき、収縮状態で維持される。
【0054】
また、第2本体部12aの遠位側S2の端部には、近位側S1の端部に設けられる仮止め部653と同様にして、仮止め部654が形成される。第2本体部12aの遠位側S2の端部に仮止め部654を設けることで、第2本体部12aの中央部における拘束が簡単に解除されることを防止できる。
【0055】
ここで、拘束紐60の遠位側S2は、図4に示すように第2本体部12よりも遠位側(先端側)S2に引き出され、先端チップ31の切り欠き34に係止されて近位側S1に折り返している。切り欠き34で折り返した拘束紐60は、図示を省略するが軸方向に沿って近位側に向けて配設され、ハブ22の操作部材に接続されている。これにより、操作部材での拘束紐60の操作により、拘束紐60が遠位側S2に牽引される。
【0056】
拘束紐60が遠位側S2に牽引されることで、第2本体部12aの遠位側S2の端部を拘束している仮止め部654が解放され、続いて、第2本体部12aの中央部を拘束している第1締結部651及び第2締結部652が遠位側S2から順次解放され、第2本体部12aの拘束が解除されていく(図5(b)参照)。第2本体部12aの拘束が解除された部分は、径方向に拡張される。最後に、第2本体部12aの近位側S1の端部を拘束している仮止め部653が解放され、第2本体部12aは完全に拡張状態となり、適切に目標留置位置に留置される。
【0057】
なお、図5(a)等に示す例では、第2締結部652が第2本体部12aの中央部を拘束する最初の締結部となっているが、第1締結部651が最初の締結部となってもよい。例えば、第2本体部12aの近位側S1の端部において、第1締結部651及び第2締結部652を形成した後、第2締結部652を形成した第1屈曲部形成部61に隣り合う仮止め用屈曲部形成部63を、第1屈曲部形成部61と同じ第1の巻回方向に巻回して、第1屈曲部形成部61により形成された第1屈曲部641の内側に、仮止め用屈曲部形成部63により形成された仮止め用屈曲部643が通されることで、仮止め部653が形成されてもよい。この場合、仮止め部653を形成した仮止め用屈曲部形成部63は、第1屈曲部形成部61として遠位側S2に引き出されるので、当該第1屈曲部形成部61と軸方向に隣り合う第2屈曲部形成部62により形成された第2屈曲部642が通されて形成される第1締結部651が第2本体部12aの中央部を拘束する最初の締結部となる。
【0058】
また、仮止め部653、654は、拘束紐60の締結ではなく、接着剤により形成されてもよい。
【0059】
次に、図9図10を参照しつつ、カテーテル1を用いてステントグラフト10を肝門部に留置する手順を説明する。
【0060】
まず、瘤の形成された病変部位50を通過するように、総肝管H1から分枝する右肝管H2および左肝管H3にそれぞれガイドワイヤ40が配置される。そして、収縮状態のステントグラフト10をシース20内に収容したカテーテル1に対して、カテーテル1の一方側の端部からガイドワイヤ40をカテーテル1に挿通させる。その後、カテーテル1を患者の体内に導入し、図9(a)に示すように、収縮状態のステントグラフト10をシース20内に収容したカテーテル1を総肝管H1の分枝する位置まで進行させる。
【0061】
次に、図9(b)に示すように、総肝管H1の分枝する位置にシース20を留めたまま、収縮状態の第2本体部12a、12bを保持した一対のインナーチューブ30、30を右肝管H2および左肝管H3でそれぞれ一方側(先端側)に進行させる。このとき、インナーチューブ30、30の一方側への推力は、リブ32を介して第2本体部12に伝えられ、第2本体部12はインナーチューブ30、30の動きに同期して一方側に進行する。
【0062】
次に、各々のインナーチューブ30が所定位置まで進行すると、右肝管H2側および左肝管H3側でそれぞれ拘束紐60が牽引される。すると、拘束紐60の締結部が解放されることで第2本体部12の拘束が解除され、第2本体部12の径方向への拡張の規制が解除される。これにより、図10(a)に示すように、右肝管H2側および左肝管H3側でそれぞれ第2本体部12a、12bが径方向外側に自己拡張する。
【0063】
その後、シース20を他方側に向けて引き抜くように移動させる。すると、図10(b)に示すように、カテーテル1のシース20からステントグラフト10の第1本体部11が放出される。ステントグラフト10の第1本体部11は、シース20から外部に放出されることで径方向外側に自己拡張する。これにより、肝門部HPにステントグラフト10が留置されて病変部位50が拡張される。なお、ステントグラフト10の留置が完了した後、カテーテル1およびガイドワイヤ40を他方側に移動させることで、カテーテル1およびガイドワイヤ40は体内から撤去される。
【0064】
以下、本実施形態のカテーテル1の効果を述べる。
本実施形態のカテーテル1は、肝門部HP(生体管腔)の総肝管H1(第1管腔)内に留置され、軸方向に略直交する径方向に拡縮可能な第1本体部11(筒状本体部)と、総肝管H1から分枝した右肝管H2、左肝管H3(複数の第2管腔)内に留置され、第1本体部11の一端部から分枝するように設けられ、軸方向に略直交する径方向に拡縮可能な第2本体部12a,12b(複数の筒状脚部)と、を有するステントグラフト10(筒状治療具)を搬送する。カテーテル1は、ステントグラフト10を収容可能なシース20と、第2本体部12a,12bの各々がシース20から放出された状態で、第2本体部12a,12bの各々の軸方向の少なくとも一部分を収縮状態に維持する複数の拘束紐60と、を備える。複数の拘束紐60の各々は、第2本体部12の周面部に第1の巻回方向に沿って配置される第1屈曲部形成部61と、周面部に第1の巻回方向と逆方向の第2の巻回方向に沿って配置される第2屈曲部形成部62とを、拘束紐60の一端側から他端側に交互に複数有する。また、第1屈曲部形成部61により形成された第1屈曲部641と第2屈曲部形成部62により形成された第2屈曲部642とにより軸方向に沿って形成された複数の締結部651、652により第2本体部12が拘束される。拘束紐60の一端又は他端が軸方向に沿って牽引されることで、締結部651、652が順次解放され、第2本体部12の拘束を解除可能にカテーテル1は構成されている。
本実施形態によれば、第2本体部12a、12bは柔軟な拘束紐60のみでそれぞれカテーテル1に収縮状態で拘束され、拘束紐60の牽引で拘束を解除可能である。本実施形態では、第2本体部12の拘束を解除するための金属線材が不要となるので、金属線材による生体の穿孔は生じない。また、本実施形態では、第2本体部12の拘束を解除するときに牽引する部材が拘束紐60のみになるので、線材の引き抜き順のミスによるステントグラフト10の展開不良も生じない。
【0065】
また、本実施形態では、複数の第1屈曲部形成部61のうち、一の第1屈曲部形成部61により形成された第1屈曲部641の内側に、当該一の第1屈曲部形成部61と軸方向に隣り合う第2屈曲部形成部62により形成された第2屈曲部642が通されることで第1締結部651が形成される。また、複数の第2屈曲部形成部62のうち、一の第2屈曲部形成部62により形成された第2屈曲部642の内側に、当該一の第2屈曲部形成部62と軸方向に隣り合う第1屈曲部形成部61により形成された第1屈曲部641が通されることで第2締結部652が形成される。また、第1締結部651及び第2締結部652が軸方向に沿って交互に配置されることにより、第2本体部12の中央部が拘束され、拘束紐60の一端又は他端が軸方向に沿って牽引されることで、中央部に配置された第1締結部651及び第2締結部652が順次解放され、第2本体部12の拘束が解除される。
本実施形態によれば、軸方向に視て第一側に第1締結部651を形成し、第一側と異なる第二側に第2締結部652を形成することができ、拘束紐60を牽引することにより第2本体部12を第一側と第二側とに交互に展開(拡張)できる。このため、狭窄部等から第2本体部12に加わる反力の方向が第二側と第一側とに交互に代わることとなる。したがって、例えば、ワイヤを用いた場合のように、その反力の方向が一定の場合と比較して、第2本体部12の留置目標位置に対して、拡張時の第2本体部12の位置ズレが生じることを抑制できる。
【0066】
また、本実施形態において、拘束紐60は、第2屈曲部形成部62と軸方向に隣り合い、第2の巻回方向に沿って配置される仮止め用屈曲部形成部63を有する。また、第2本体部12における軸方向の両端部のうち、少なくとも一方の端部において、第1締結部651を形成した第2屈曲部形成部62の第2屈曲部642の内側に、仮止め用屈曲部形成部63の仮止め用屈曲部643が通されることで仮止め部653、654が形成される。また、拘束紐60の一端又は他端が軸方向に沿って牽引されることで、仮止め部653、654が解放される。
本実施形態によれば、仮止め部653、654を設けることで第1締結部651及び第2締結部652による第2本体部12の拘束をより適正に行うことができる。
【0067】
また、本実施形態において、仮止め部は、第2本体部12における第1本体部11の一端部側に設けられた第1仮止め部653と、第2本体部12における第1本体部11の一端部と反対側に設けられた第2仮止め部654と、を有する。第2本体部12は、拘束紐60の第2仮止め部654側の端部が軸方向に沿って牽引されることで、第2仮止め部654、中央部における第1締結部651及び第2締結部652、第1仮止め部653の順に解放される。
本実施形態によれば、第2本体部12の先端側から拘束紐60による拘束を解放することが可能となる。
【0068】
また、本実施形態のカテーテル1は、シース20の内側にて先端側を軸方向に沿って進退可能に構成され、複数の拘束紐60により拘束された収縮状態の複数の第2本体部12を保持する複数のインナーチューブ30(軸状部材)を更に備える。複数のインナーチューブ30の各々は、その先端部に先端チップ31が配設される。先端チップ31は、拘束紐60の一端及び他端のうち、軸方向に沿って牽引される端部側を係止可能に構成されている。
本実施形態によれば、拘束紐60を先端チップ31で係止することで、シース20からの放出時に第2本体部12が軸方向に位置ずれしにくくなり、ステントグラフト10をより容易に体内に搬送することが可能となる。
【0069】
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行ってもよい。
【0070】
上記実施形態では、肝門部に配置されるステントグラフトを留置するカテーテル1の構成例を説明した。しかし、本発明は、分枝部を有する血管などの他の生体管腔にステントグラフトを留置するカテーテルにも同様に適用できる。
【0071】
また、上記実施形態のカテーテル1において、拘束紐60の軸方向の位置ずれを抑制するために、インナーチューブ30に拘束紐60を保持するガイド部材を設けてもよい。
【0072】
また、上記実施形態では、第2本体部12の拘束紐60による拘束が先端側(遠位側)S2から順に解放される例を説明した。しかし、上記実施形態において第2本体部12の拘束が基端側(近位側)S1から順に解放されるように拘束紐60を巻回してもよい。この場合、第1仮止め部653が遠位側、第2仮止め部654が近位側となるように拘束紐60を巻回し、拘束紐60の第2仮止め部654側の端部をハブ22の操作部材に接続する。また、拘束紐60の第1仮止め部653側の端部を先端チップ31の切り欠き34などに係止すればよい。
上記の構成によれば、第2本体部12の基端側から拘束紐60による拘束を解放することが可能となる。また、拘束紐60を先端チップ31で係止することで、シース20からの放出時に第2本体部12が軸方向に位置ずれしにくくなり、ステントグラフト10をより容易に体内に搬送することが可能となる。
【0073】
また、上記実施形態において、第2本体部12a、12bがそれぞれ拘束紐60で拘束される例を説明したが、いずれか一方の拘束紐60でさらに収縮状態の第1本体部11を外側から拘束するようにしてもよい。
上記の構成によれば、第2本体部12a、12bと併せて第1本体部11も収縮状態で拘束することができ、留置の手技における利便性が向上しうる。
【0074】
加えて、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0075】
1…カテーテル、10…ステントグラフト、11…第1本体部、12a,12b…第2本体部、13…骨格部、14…被膜部、20…シース、30…インナーチューブ、31…先端チップ、32…リブ、34…切り欠き、40…ガイドワイヤ、60…拘束紐、61…第1屈曲部形成部、62…第2屈曲部形成部、63…仮止め用屈曲部形成部、641…第1屈曲部、642…第2屈曲部、643…仮止め用屈曲部、651…第1締結部、652…第2締結部、653,654…仮止め部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10