IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東拓工業株式会社の特許一覧

特開2024-136837螺旋波形ホースの継手構造および螺旋波形ホース用継手
<>
  • 特開-螺旋波形ホースの継手構造および螺旋波形ホース用継手 図1
  • 特開-螺旋波形ホースの継手構造および螺旋波形ホース用継手 図2
  • 特開-螺旋波形ホースの継手構造および螺旋波形ホース用継手 図3
  • 特開-螺旋波形ホースの継手構造および螺旋波形ホース用継手 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136837
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】螺旋波形ホースの継手構造および螺旋波形ホース用継手
(51)【国際特許分類】
   F16L 33/20 20060101AFI20240927BHJP
   F16L 33/00 20060101ALI20240927BHJP
   F16L 19/04 20060101ALI20240927BHJP
   F16L 21/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
F16L33/20
F16L33/00 B
F16L19/04
F16L21/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048117
(22)【出願日】2023-03-24
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 販売日:2022年4月28日~2023年3月22日 販売先:添付の別紙1のリストに記載の販売先
(71)【出願人】
【識別番号】000221502
【氏名又は名称】東拓工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】南 一行
(72)【発明者】
【氏名】宇賀 寛文
(72)【発明者】
【氏名】織邊 健一
(72)【発明者】
【氏名】井上 裕貴
【テーマコード(参考)】
3H014
3H015
3H017
【Fターム(参考)】
3H014GA01
3H015AA05
3H017CA11
3H017GA01
(57)【要約】
【課題】接続後の見た目の良い螺旋波形ホースと継手との螺旋波形ホースの継手構造を提供する。
【解決手段】螺旋波形ホース1と、その螺旋波形ホースの端部に取り付けた螺旋波形ホース用継手10との継手構造。螺旋波形ホース1は、熱可塑性エラストマー製のホース本体2と、その外周に熱可塑性樹脂製の補強芯3を螺旋状に固着することによって形成された突条とを有する。螺旋波形ホース用継手10は、螺旋波形ホース1の端部に挿入される金属製のニップル20と、螺旋波形ホース1をニップル20に締め付ける金属製の加締スリーブ30と、熱硬化性エラストマー製の押圧部材40と、金属製のスパイラルリング50とを備え、押圧部材40の硬度はホース本体2の硬度以上であり、スパイラルリング50は押圧部材40より当該端部側に設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性エラストマー製のホース本体の外周に熱可塑性樹脂製の補強芯が螺旋状に固着されて山部と谷部とが交互に螺旋状に形成された螺旋波形ホースと、その端部に挿入されるニップルとを、前記螺旋波形ホースを前記ニップルに対して圧縮させる筒状の固定用スリーブで固定した螺旋波形ホースの継手構造であって、
前記ニップルと前記固定用スリーブとの間であって、前記螺旋波形ホースを覆うように設けられる熱硬化性エラストマー製で筒状の押圧部材と、
前記ニップルと前記固定用スリーブとの間であって、前記螺旋波形ホースの前記谷部に沿って設けられるスパイラルリングとを備え、
前記押圧部材の内面には前記螺旋波形ホースの前記山部を覆う螺旋状の溝が設けられ、
前記押圧部材の前記熱硬化性エラストマーの硬度を前記ホース本体の前記熱可塑性エラストマーの硬度以上としており、
前記スパイラルリングは、前記押圧部材より前記螺旋波形ホースの前記端部側に設けられている、
螺旋波形ホースの継手構造。
【請求項2】
前記ニップルと前記固定用スリーブとの間であって、前記螺旋波形ホースの前記谷部に沿って設けられる他のスパイラルリングを備えており、
前記スパイラルリングと前記他のスパイラルリングが、前記螺旋波形ホースの長手方向において前記押圧部材を挟むように設けられている、
請求項1記載の螺旋波形継手構造。
【請求項3】
次の式(1)で表される圧縮率が20%以下である、
請求項1記載の螺旋波形ホースの継手構造。
ここで「全圧縮量」とは、前記螺旋波形ホースに装着された前記スパイラルリングまたは押圧部材の圧縮前の外径のいずれか大きい方から圧縮後の前記固定スリーブの内径を差し引いた量を言う。
【請求項4】
前記固定用スリーブが、金属製の筒体を縮径させた加締スリーブである、
請求項1から3のいずれかに記載の螺旋波形ホースの継手構造。
【請求項5】
熱可塑性エラストマー製のホース本体の外周に熱可塑性樹脂製の補強芯が螺旋状に固着されて山部と谷部とが交互に螺旋状に形成された螺旋波形ホースの端部に固定される螺旋波形ホース用継手であって、
前記螺旋波形ホースの端部に挿入される金属製のニップルと、
前記螺旋波形ホースの端部を締め付ける固定用スリーブと、
前記ニップルと前記固定用スリーブとの間であって、前記螺旋波形ホースを覆うように設けられる熱硬化性エラストマー製で筒状の押圧部材と、
前記ニップルと前記固定用スリーブとの間であって、前記螺旋波形ホースの前記谷部に沿って設けられるスパイラルリングとを備え、
前記押圧部材の内面には前記螺旋波形ホースの前記山部を覆う螺旋状の溝が設けられ、
前記押圧部材の前記熱硬化性エラストマーの硬度を前記ホース本体の前記熱可塑性エラストマーの硬度以上としており、
前記スパイラルリングは、前記押圧部材より前記螺旋波形ホースの前記端部側に設けられる、
螺旋波形ホース用継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体、粒体、粉体などの輸送に使用される螺旋波形ホースを各種機器と接続するための螺旋波形ホースの継手構造および螺旋波形ホース用継手に関する。
【背景技術】
【0002】
流体等の輸送に用いられる螺旋波形ホースの端部をバルブ等の各種機器と接続するための継手構造として、螺旋波形ホースと、その端部に挿入されるニップルと、その螺旋波形ホースの外側に設けられ、螺旋波形ホースを締め付ける加締スリーブと、ニップルと加締スリーブとの間であって、螺旋波形ホースの外周面に設けられる押圧部材とを備えた螺旋波形ホースの継手構造が知られている。この継手構造において、ニップルの基部に各種機器との接続部が形成されている。この螺旋波形ホースの継手構造は、ニップルを挿入し、かつ、押圧部材を装着した螺旋波形ホースに円筒体を被せ、螺旋波形ホースを締め付けるようにその円筒体を縮径させて加締スリーブを形成することによって構築する。
【0003】
このような加締スリーブを用いた螺旋波形ホースの継手構造として、特許文献1、2のような技術が知られている。
特許文献1の螺旋波形ホースの継手構造は、線状の硬質塩化ビニル材からなるスパイラルリング(谷埋め材)を螺旋波形ホースの谷部に沿って設け、その外周を加締スリーブで固定したものである。螺旋波形ホースの谷部にスパイラルリングを設けることにより、加締スリーブの圧縮力はスパイラルリングに吸収されることなく螺旋波形ホースの山部および谷部に均一な締め付け力が伝えられ、螺旋波形ホースとスリーブとを強固に固定することができる。
また特許文献2は、凹溝が形成されたニップルの第1領域の螺旋波形ホースの谷部に沿って金属製のスパイラルリング(押圧接当部材)を設け、その外周から加締スリーブで固定したものである。スパイラルリングをニップルの凹溝の第1領域に設けることにより、螺旋波形ホースに加わる加締スリーブの過剰な圧縮力を抑制し、螺旋波形ホースの破断を防止し、かつ、抜け防止効果を維持させることができる。
【0004】
しかし、特許文献1、2の螺旋波形ホースの継手構造はいずれも冷熱サイクル、例えば、加熱された搬送物を流した後常温に戻ることが繰り返されることによる継手接続部の変形およびその変形による止水性の低下について考慮されてはいなかった。詳述すると、螺旋波形ホースの突条とスパイラルリングとが硬質な部材からなる場合、加締スリーブの半径方向の圧縮力が加わった直後は止水性を保てるものの、両者の間には微小な隙間が存在することになる。そのため、当該突条とスパイラルリングは、隙間方向に半径方向以外の圧縮力を受け続けることになり、少なくとも突条は隙間を埋めるようにクリープ変形するおそれがある。特に、高温の流体を長期間流すことによりそのようなクリープ変形が起こりやすく、その後の冷却によって螺旋波形ホース等が収縮したとき螺旋波形ホースの突条とスパイラルリングとの隙間が増大し、螺旋波形ホースへの押圧力(圧縮力)が弱まり、螺旋波形ホース用継手の耐圧性能が低下する不具合があった。
【0005】
本出願人は、上記課題を解決するべく、特許文献3に示すように冷熱サイクルを繰り返しても耐久性能が維持される新しい螺旋波形ホースの継手構造を提案している。
詳しくは、熱可塑性エラストマー製のホース本体の外周に熱可塑性樹脂製の補強芯を螺旋状に固着した螺旋波形ホースと、その端部に挿入される金属製のニップルとを、筒状の加締スリーブを縮径させることによって固定させた螺旋波形ホースの継手構造であって、前記螺旋波形ホースと加締スリーブとの間に設けられる熱硬化性エラストマー製で筒状の押圧部材を備え、前記押圧部材の内面には前記螺旋波形ホースの突条を覆う螺旋状の溝が設けられ、前記押圧部材の硬度を前記ホース本体の硬度以上としていることを特徴とした螺旋波形ホースの継手構造を提案している。
この螺旋波形ホースの継手構造は、押圧部材が熱硬化性エラストマーからなり、押圧部材の硬度を、ホース本体の硬度以上に設定しているため、加締スリーブを縮径させて、押圧部材に半径方向内側の圧縮力を加えたとき、始めに、その圧縮力は押圧部材ではなくホース本体が吸収して変形し、ホース本体が変形した後、押圧部材は微小な隙間を埋めるように弾性変形する。そのため、螺旋形ホースの突条をなす補強芯は半径方向以外の圧縮力を受けにくくクリープ変形しにくい。特に、高温流体を搬送することによって、高温状態と常温状態とが繰り返されても、耐圧性能が低下しにくい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-112521号公報
【特許文献2】特開2016-050594号公報
【特許文献3】特開2021-173401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献3の螺旋波形ホース用継手は、高温の流体を流すことによる耐圧性能の低下は見られないが、加締スリーブを圧縮して継手構造を組み立てたとき、接続部位の見た目が悪くなることがある。詳述すると、加締スリーブを圧縮してホース本体を圧縮変形させることにより、ホース本体の圧縮量がホースの長手方向の伸びに変換され、加締スリーブの外側に一部が飛び出してしまうことがある(例えば、図4参照)。このように見た目が悪くなると、使用者は接続不備等を疑うことになり好ましくない。一方、そのようなホース本体の長手方向への変形を防止するべく、加締スリーブの圧縮量を低減させると耐圧性能が低下するおそれがあることがわかった。
本発明は、上記課題を解決するためになされた発明であり、冷熱サイクルを繰り返しても耐圧性能が維持され、かつ、ホース本体の変形等による接続部周辺の外観が損なわれにくい螺旋波形ホースの継手構造および螺旋波形ホース用継手を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の螺旋波形ホースの継手構造は、熱可塑性エラストマー製のホース本体の外周に熱可塑性樹脂製の補強芯が螺旋状に固着されて山部と谷部とが交互に螺旋状に形成された螺旋波形ホースと、その端部に挿入されるニップルとを、前記螺旋波形ホースを前記ニップルに対して圧縮させる筒状の固定用スリーブで固定した螺旋波形ホースの継手構造であって、前記ニップルと前記固定用スリーブとの間であって、前記螺旋波形ホースを覆うように設けられる熱硬化性エラストマー製で筒状の押圧部材と、前記ニップルと前記固定用スリーブとの間であって、前記螺旋波形ホースの前記谷部に沿って設けられるスパイラルリングとを備え、前記押圧部材の内面には前記螺旋波形ホースの前記山部を覆う螺旋状の溝が設けられ、前記押圧部材の前記熱硬化性エラストマーの硬度を前記ホース本体の前記熱可塑性エラストマーの硬度以上としており、前記スパイラルリングは、前記押圧部材より前記螺旋波形ホースの前記端部側に設けられることを特徴としている。
【0009】
本発明の螺旋波形ホースの継手構造は、ニップルと固定用スリーブとの間であって、螺旋波形ホースを覆うように設けられる熱硬化性エラストマー製で筒状の押圧部材を備えており、その押圧部材の熱硬化性エラストマーの硬度が螺旋波形ホースのホース本体の熱可塑性エラストマーの硬度以上としているため、高温状態と常温状態とが繰り返されても螺旋波形ホースの補強芯がクリープ変形しにくく、止水性能が長期にわたって維持される。一方、本発明の螺旋波形ホースの継手構造は、ニップルと固定用スリーブとの間であって、螺旋波形ホースの谷部に沿って設けられるスパイラルリングを備えているため、止水性能が維持される。特に、ホース本体の圧縮量がホースの長手方向の伸びに変換されにくいように圧縮する量を弱めても、あるいは、特許文献3の継手構造よりホースを圧縮する量を弱めても高い止水性能および高い抜止性能が発揮される。そのため、見た目が悪くなりにくく生産性が高い。
【0010】
本発明の螺旋波形ホースの継手構造であって、前記ニップルと前記固定用スリーブとの間であって、前記螺旋波形ホースの前記谷部に沿って設けられる他のスパイラルリングを備えており、前記スパイラルリングと前記他のスパイラルリングが、前記螺旋波形ホースの長手方向において前記押圧部材を挟むように設けられているものが好ましい。この場合、より高い抜止性能が得られる。
本発明の螺旋波形ホースの継手構造であって、次の式(1)で表される圧縮率が20%以下であるものが好ましい。
ここで「全圧縮量」とは、前記螺旋波形ホースに装着された前記スパイラルリングまたは押圧部材の圧縮前の外径のいずれか大きい方から圧縮後の前記固定スリーブの内径を差し引いた量を言う。
この場合、ホース本体の圧縮量がホースの長手方向の伸びに変換されることなく高い耐圧性能が得られやすい。
本発明の螺旋波形ホースの継手構造であって、前記固定用スリーブが金属製の筒体を縮径させた加締スリーブであるものが好ましい。
【0011】
本発明の螺旋波形ホース用継手は、熱可塑性エラストマー製のホース本体の外周に熱可塑性樹脂製の補強芯が螺旋状に固着されて山部と谷部とが交互に螺旋状に形成された螺旋波形ホースの端部に固定される螺旋波形ホース用継手であって、前記螺旋波形ホースの端部に挿入される金属製のニップルと、前記螺旋波形ホースの端部を締め付ける固定用スリーブと、前記ニップルと前記固定用スリーブとの間であって、前記螺旋波形ホースを覆うように設けられる熱硬化性エラストマー製で筒状の押圧部材と、前記ニップルと前記固定用スリーブとの間であって、前記螺旋波形ホースの前記谷部に沿って設けられるスパイラルリングとを備え、前記押圧部材の内面には前記螺旋波形ホースの前記山部を覆う螺旋状の溝が設けられ、前記押圧部材の前記熱硬化性エラストマーの硬度を前記ホース本体の前記熱可塑性エラストマーの硬度以上としており、前記スパイラルリングは、前記押圧部材より前記螺旋波形ホースの前記端部側に設けられることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の螺旋波形ホースの継手構造は、高温状態と常温状態との冷熱サイクルを繰り返しても十分な止水性能や抜止性能、つまり、高い耐圧性能が得られる。特に、ニップルとホースとの間にOリング等のシール部材を設ける等の特殊なニップルを用いることなく止水性能や抜止性能が得られるため、納期を短縮でき、経済的効果も高い。また本発明の螺旋波形ホースの継手構造は、見た目が悪くなりにくく良い品質の製品を効率良く生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の螺旋波形ホース用継手と螺旋波形ホースとを接続させた螺旋波形ホースの継手構造の一実施形態を示す一部側面断面図である。
図2図2aは螺旋波形ホースを示す一部側面断面図であり、図2b、図2cはそれぞれニップルおよび押圧部材を示す断面図であり、図2dは図1の螺旋波形ホースの継手構造であって、カシメ前の状態を示す断面図である。
図3】本発明の螺旋波形ホース用継手と螺旋波形ホースとを接続させた螺旋波形ホースの継手構造の他の実施形態を示す一部側面断面図である。
図4】螺旋波形ホースへの圧縮量がホースの長手方向の伸びに変換された状態を示す螺旋波形ホースの継手構造の比較例の写真図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は次の実施形態に限定されるものではない。
【0015】
図1に、螺旋波形ホース1と、その螺旋波形ホースの端部に取り付けた螺旋波形ホース用継手10との継手構造を示す。螺旋波形ホース1は、流体、粒体、粉体などの輸送に用いられるものであり、好ましくは加熱された流体、粒体、粉体などの輸送に用いられるものであり、特に好ましくは加熱された流体の輸送に用いられるものである。
【0016】
初めに、螺旋波形ホース1について説明する。
螺旋波形ホース1は、図2aに示すように、熱可塑性エラストマー製のホース本体2と、その外周に螺旋状に固着された熱可塑性樹脂製の補強芯3とを有し、全体として可撓性を有するものである。螺旋波形ホース1は、外面1Bが補強芯3による山部(突条)1Baとホース本体2による谷部1Bbとが交互に螺旋状に形成された波形管となっている。なお内面1Aは、微小な凹凸等が形成されていてもよいが、平滑であるのが好ましい。
螺旋波形ホース1の圧縮前の寸法として、次のように例示することができる。
螺旋波形ホース1の外径Xは、20~130mm、好ましくは30~80mm、特に好ましくは35~75mmである。
螺旋波形ホース1の内径Yは、10~100mm、好ましくは15~75mm、特に好ましくは20~55mmである。
螺旋波形ホース1の山部1Baの高さhは、1~10mm、好ましくは1.5~6mm、特に好ましくは2~5mmである。
螺旋波形ホース1の山部1Baの幅W1は、1~20mm、好ましくは1.5~10mm、特に好ましくは2~7mmである。
螺旋波形ホース1の谷部1Bbの幅W2は、1~20mm、好ましくは2~10mm、特に好ましくは3~6mmである。
螺旋波形ホース1の山部1BaのピッチP(W1+W2)は、3~30mm、好ましくは5~15mm、特に好ましくは7~12mmである。
【0017】
ホース本体2は、本体内層2aと、本体外層2bと、その間に設けられた補強層2cとを一体化させたものである。このようなホース本体2は、例えば、熱可塑性エラストマーからなる本体外層2b用の帯状体と、熱可塑性エラストマーからなる本体内層2a用の帯状体とを押出成形により生成し、それらの間に補強層2cを挟んで融着し、それを螺旋状に巻回することにより製造することができる。
本体内層2aおよび本体外層2bの熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー等が挙げられる。このようなエラストマーとして、オレフィン系エラストマー及びスチレン系エラストマーが好ましく、特にスチレン系エラストマーが好ましい。
【0018】
熱可塑性エラストマーの23℃におけるJIS K 6251(2010)に準じて測定される降伏点応力の下限は、0.8MPa以上、1.0MPa以上、1.1MPa以上、特に1.2MPa以上であるのが好ましい。23℃における降伏点応力が0.8MPaより小さい場合、流体等輸送の螺旋波形ホースとして好ましくない。一方、23℃における降伏点応力の上限は、2.5MPa以下、2.0MPa以下、1.5MPa以下、特に1.4MPa以下であるものが好ましい。さらに、引張強度の下限は、10MPa以上、11MPa以上、特に12MPa以上であるものが好ましい。引張強度の上限は、20MPa以下、17MPa以下、特に16MPa以下である。
熱可塑性エラストマーの100℃におけるJIS K 6251(2010)に準じて測定される降伏点応力の下限は、0.1MPa以上、0.2MPa以上、0.3MPa以上、特に0.4MPa以上であるのが好ましい。100℃における降伏点応力が0.1MPaより小さい場合、流体等輸送の螺旋波形ホースとして好ましくない。一方、上限は、1.0MPa以下、0.7MPa以下、0.6MPa以上、特に0.5MPa以下であるものが好ましい。100℃における降伏点応力の上限は大きいほど流体輸送の螺旋波形ホースとして好ましい。しかし、100℃における降伏点応力が1.0MPaより大きい熱可塑性エラストマーは特殊であり、螺旋波形ホースとして実用的ではない。さらに、引張強度の下限は、0.3MPa以上、0.4MPa以上、特に0.5MPa以上であるものが好ましい。引張強度の上限は、1.0MPa以下、0.7MPa以上、特に0.6MPa以下である。
なお、ここで降伏点応力とは、試験片が切断する前に、引張力が増加しないで伸びが増加する最初の点の引張応力をいう。引張強度とは、試験片を切断するまでに引っ張ったときに記録される最大の引張力を試験片の初期断面積で除した値をいう。
なお、JIS K 6251の試験は、厚さ2.0mmのエラストマーシートのダンベル形3号形試験片を用いて、引張速度50mm/分で行う。
【0019】
補強層2cは、合成樹脂繊維をメッシュ状にしたものである。このような補強層2cの合成樹脂繊維としては、ポリエステル撚り糸が挙げられる。熱可塑性エラストマー製のホース本体2における補強層2cは、流体輸送に使用されるホースとしての可撓性を保持しつつ、内圧が上昇したときのホース本体2への負荷を軽減する。
【0020】
この実施形態では、補強層2cを有する3層構造のホース本体2を開示したが、ホース本体として補強層2cを設けない2層構造としたり、さらに最内層を設けて4層構造とするなど、単層構造または複層構造とすることができる。
しかし、ホース本体2(補強芯3なし)としては、100℃熱水をそれぞれ1.0MPa以上、好ましくは1.1MPa以上、特に好ましくは1.2MPa以上の圧力で30分間循環したときに耐える構造であるものが好ましい。なお、耐えられる圧力は高い方が好ましいが、2.0MPaより高い圧力でも耐えられるものは特殊であり、螺旋波形ホースとして実用的ではない。
【0021】
ホース本体2の硬度はショアA硬度で50~80、好ましくは60~80、特に好ましくは65~75、最も好ましくは65~70である。ホース本体2の硬度が50より低い場合、耐久性が著しく低下するおそれがある。ホース本体2の硬度が80より高い場合、ホースとしての柔軟性が低くなり、配管作業が煩雑になる。
なお、ホース本体が複数の層からなる場合、硬度が一番低い層の硬度をホース本体2の硬度とする。ホース本体2の場合、本体外層2bの方が本体内層2aより硬度が低くなっており、本体外層2bの硬度が本発明のホース本体2の硬度となる。このように、ホース本体2を複数の層から形成する場合、外層の硬度を一番低くするのが好ましい。
【0022】
圧縮前のホース本体2の厚さTは、つまり、内面1Aから谷部1Bbまでの距離、2.0~10.0mm、好ましくは2.5~8.0mm、特に好ましくは3.0~6.0mmである。2.0mmより低い場合、高温流体を流したとき、その熱が補強芯3に伝わりやすくなり、補強芯3がクリープしやすくなる。10.0mmより高い場合、コストが高くなる。
【0023】
螺旋波形ホース1の山部1Ba(突条)を形成する補強芯3の断面形状は、外側が円弧で、内側が矩形となっている。
補強芯3の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル等が挙げられる。特に、ホース本体2としてポリオレフィン系エラストマーを用いる場合、ポリオレフィンが好ましく、ホース本体2としてポリプロピレン系エラストマーを用いる場合、ポリプロピレンが好ましい。
また補強芯3は、ASTM D648の試験法による荷重たわみ温度の下限が、70℃以上、80℃以上、特に、85℃以上である。そして、上限が130℃以下、120℃以下、特に、115℃以下である。荷重たわみ温度が70℃より小さい場合、100℃の流体を流したとき、補強芯が変形するおそれがある。荷重たわみ温度は大きいほど好ましいが、熱可塑性樹脂として荷重たわみ温度が130℃より大きいものは特殊であり、螺旋波形ホースとして実用的ではない。
なお、ASTM D648の試験は、長さ127mm、幅12.7mm、厚さ6.4mmの短冊状の試験片を使用し、荷重0.455MPa(B法)で行う。
【0024】
次に、螺旋波形ホース用継手10について説明する。
図1に戻って、螺旋波形ホース用継手10は、螺旋波形ホース1の端部に挿入されるニップル20と、螺旋波形ホース1をニップル20に締め付ける加締スリーブ30と、ニップル20と加締スリーブ30との間であって、螺旋波形ホース1を覆うように設けられる押圧部材40と、ニップル20と加締スリーブ30との間であって、螺旋波形ホースの谷部に沿って設けられるスパイラルリング50とを備えている。なお、スパイラルリング50は、押圧部材40より螺旋波形ホース1の端部側(図1の左側)に、押圧部材40と実質的に隣接するように設けられている。つまり、後述する押圧部材40の内面の溝40Baとスパイラルリング50とは、半ピッチ以下、好ましくは1/4ピッチ以下、特に好ましくは1/8ピッチ以下となっている。このように実質的に押圧部材40とスパイラルリング50とを隣接させることにより、スパイラルリング50を設置している方向への押圧部材40の変形を抑制させることができる。
【0025】
ニップル20は、図2bに示すように、螺旋波形ホース1の端部に挿入される挿入部21と、挿入部の基端に設けられる基部22とを有する。
挿入部21は、前部21aと、後部21bとからなり、実質的に全体として外径を同じにしている。挿入部21の外径は、螺旋波形ホース1の内径より若干大きくなっている。そして、挿入部21の後部21bは基部22と連結している。
この挿入部21の外周、特に挿入部の前部21aの外周には、螺旋波形ホース1を介して押圧部材40およびスパイラルリング50が設けられる。なお、スパイラルリング50は、挿入部の後部21bまで延びていてもよい。特に、加締スリーブ30で固定することによって、スパイラルリング50の外径が小さくなり、その分だけスパイラルリング50がホースの長さ方向に延びるため、スパイラルリング50は挿入部21の前部21aから後部21bに架けて配置されることがある。なお、加締めスリーブ30は、この挿入部21に配置される押圧部材40およびスパイラルリング50を覆うように設けられる(図1参照)。
【0026】
挿入部21の前部21aの先端側の外面には、螺旋波形ホース1の内面1Aに食い込む複数の環状爪21cが設けられている。詳しくは、先端に向かって緩やかな角度で縮径する第1傾斜部21c1と、第1傾斜部の頂点から基端に向かって第1傾斜部より急な角度で縮径する第2傾斜部21c2とを備えた環状爪21cが複数軸に沿って設けられている。ここで環状爪21cの外径とは、すなわち一番大きい部位、第1傾斜部21c1と第2傾斜部21c2との頂点になる。この頂点は、前部21aの円筒部と外径を同じにしており、前部21aは全体として実質的に外径を同じとしている。また前部21aの内面は、平滑な円筒状である。
このように挿入部21は構成されているため、螺旋波形ホース1の端部に挿入部21を挿入することにより、螺旋波形ホース1の内面1Aに環状爪21cが食い込み、螺旋波形ホース1とニップル20との間にシールが形成される。そして、加締スリーブの圧縮を受けて高い止水性能を発揮する。つまり、螺旋波形ホース1とニップル20との間に別途シール材を設ける必要がない。
【0027】
挿入部21の後部21bの内面の先端側には、基部22に向かって拡径するように傾斜する傾斜面21b1が形成されており、後部21bの内面の傾斜面21b1より基部側は平滑な円筒状となっている。また後部21bの外面は、前部21aの外面と外径が同じ平滑な円筒状である。つまり、後部21bの基部側が薄肉となっている。
基部22は、バルブ等との接続部であり、フランジとなっている。しかし、その形状は、バルブ等との接続構造に応じて適宜選択することができる。
ニップル20は、ステンレス鋼等の金属の剛性材料から成形される。
【0028】
加締スリーブ30は、ステンレス鋼等の金属等の剛性材料からなる円筒状のものである(図1参照)。実質的に外周面も内周面も径を同一とした平滑な面となっており、軸方向に段差が形成されていない。加締スリーブ30は、押圧部材40の外径よりも大きな内径を有する筒体を、加締機によって径方向に圧縮することにより押圧部材40の外径よりも小さい内径となるように圧縮変形させて形成される。また加締スリーブ30の長さは、ニップル20の挿入部21より短く、後述する押圧部材40とスパイラルリング50を合わせた長さよりも長くなっている。
加締スリーブの外径(カシメ後)は、30~150mm、好ましくは35~100mm、特に好ましくは40~80mmである。
加締スリーブの圧縮率は、8~22%、好ましくは10~20%、特に好ましくは12~18%である。
圧縮前後から求められる加締スリーブの外径の圧縮量は、4~15mm、好ましくは6~13mm、特に好ましく7~11mmである。
【0029】
押圧部材40は、図2cに示すように、内面40Bには螺旋波形ホース1の山部1Baを覆う螺旋状の溝40Baが形成されている。この内面40Bは、螺旋波形ホース1の外面1Bを実質的に隙間なく覆う(図1参照)。また外面40Aは、微小な凹凸等が形成されていてもよいが、加締スリーブ30の内面と実質に同形状とし平滑であるのが好ましい。また押圧部材40は、半径方向に2分割された一対の分割体から構成されている。しかし、円筒体であってもよく、3以上に分割された分割体から構成されてもよい。
押圧部材40の外径Z(螺旋波形ホース1に装着したときの外径(圧縮前))は、25~140mm、好ましくは35~110mm、特に好ましくは40~85mmである。
押圧部材40の長さSは、螺旋波形ホース1の1ピッチ以上、好ましくは1.5ピッチ以上、特に好ましくは2.0ピッチ以上であり、5.0ピッチ以下、好ましくは4.0ピッチ以下、特に好ましくは3.0ピッチ以下である。押圧部材40の長さが1ピッチより短いと加締スリーブの圧縮力がホース周りに均等に届かず十分な止水性が得られない。一方、押圧部材40が長すぎるとホース本体2の圧縮量が増加し、長手方向の伸びへ変換されるおそれが大きくなる。具体的な長さは、例えば、5mm~100mm、好ましくは10mm~50mm、特に好ましくは20mm~30mmである。
押圧部材40の厚みRは、0.5~10mm、好ましくは1~7mm、特に好ましくは1.5~5mmである。
【0030】
押圧部材40の硬度はショアA硬度で50~80、好ましくは60~80、特に好ましくは65~75、最も好ましくは67~72であり、ホース本体2の硬度と同じあるいは硬く、特に、ホース本体2の硬度より硬いものが好ましい。具体的に、押圧部材40のショアA硬度とホース本体2のショアA硬度の差が1~15、好ましくは1~10、特に好ましくは1~5である。押圧部材40の硬度がショアA硬度80より大きい場合、寸法公差により螺旋波形ホース1への取り付けが困難となる。
【0031】
押圧部材40は、熱硬化性エラストマーからなる。熱硬化性エラストマーとは、所望により硬化剤(架橋剤)とともに加熱することにより三次元的に網目構造が形成され、弾性が発現するポリマーのことである。例えば、天然ゴムや合成ゴムの加硫ゴムや、ウレタン系、スチレン系、アクリル系、シリコーン系、フッ素系のエラストマーが挙げられる。特に、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、ニトリルゴム(NBR)、シリコーンゴムなどの合成ゴムが高く好ましい。
このように押圧部材40は、熱硬化性エラストマーを用いているため、クリープ変形しにくく、耐熱性にも優れている。
【0032】
スパイラルリング50は、ステンレス鋼等の金属線を螺旋状に巻回したものである。このスパイラルリング50は、押圧部材40より螺旋波形ホース1の端部側(図1の左側)であって、螺旋波形ホース1の谷部1Bbに沿って設けられる。
このようにスパイラルリング50を、押圧部材40より螺旋波形ホース1の端部側に設けることにより、使用によってホース本体2とニップル20との間に流体がたまることを防止し、品質問題を防止することができる。詳述すると、螺旋波形ホース1にスパイラルリング50を巻回した上で加締スリーブ30で締め付けると、スパイラルリング50を介してホース本体2に加わる圧力と、補強線3(山部1Ba)を介してホース本体2に加わる圧力とが異なり、スパイラルリング50を介してホース本体2に加わる力の方が大きくなる。そのため、スパイラルリング50が押圧部材40より螺旋波形ホース1のホース本体側(図1の右側)に設ける場合、ホース本体2内から圧力がかかると、ホース本体2とニップル20との間にホース本体内に連通する螺旋状の隙間が形成されることがある。そして、この隙間に流体が溜まることにより、流体の腐敗や洗浄液の残留による品質問題が起こるおそれがある。一方、押圧部材40を螺旋波形ホース1のホース本体側(図1の右側)に設けることにより、押圧部材40からホース本体2の全体に圧力が均等に加わるため、そのような隙間がホース本体2とニップル20との間に生じにくく、ホース本体2とニップル20との間に流体がたまるといった現象が生じにくい。
【0033】
スパイラルリング50は、螺旋波形ホース1の谷部1Bbに沿って設けられるため、実質的に、螺旋波形ホース1と同じピッチで巻回されたものである。そのピッチ数は、1ピッチ以上、好ましくは1.5ピッチ以上、特に好ましくは2.0ピッチ以上であり、5.0ピッチ以下、好ましくは4.0ピッチ以下、特に好ましくは3.0ピッチ以下である。スパイラルリング50のピッチ数を1.0以上とすることにより、抜止性能が確保される。なお、スパイラルリング50のピッチ数が大きい方が抜止性能を向上させることができるが、ピッチ数が5.0を超えるとその増加による効果が顕著でなくなる。
スパイラルリング50の線径は、螺旋波形ホース1の山部1Baの高さhと同じあるいは大きく、若干大きいするのが好ましい。特に、スパイラルリング50の線径が螺旋波形ホース1の山部1Baの高さに対して、0.0mm以上、好ましくは0.1mm以上、特に好ましくは0.2mm以上であり、2mm以下、好ましくは1.7mm以下、特に好ましくは1.5mm以下だけ大きい。螺旋波形ホース1の山部1Baと同じまたは大きくすることにより、加締スリーブ30の締付力を確実にスパイラルリング50に与えることができ、抜止性能を確保することができる。一方、大きくしすぎると、スパイラルリング50と隣接した螺旋波形ホース1の山部1Ba(補強線3)のクリープ変形が生じやすくなり、逆に抜止性能が低下するおそれがあり。具体的にスパイラルリング50の線径としては、1mm以上、好ましくは2mm以上、特に好ましくは3mm以上であり、10mm以下、好ましくは7mm以下、特に好ましくは5mm以下である。
またスパイラルリング50を螺旋波形ホース1に装着させた第1領域の外径(スパイラルリング50の外径)は、押圧部材40を螺旋波形ホース1に装着させた第2領域の外径(押圧部材40の外径Z)と同じあるいは小さく、特に第1領域の外径を第2領域の外径より小さくするのが好ましい。例えば、第1領域の外径と第2領域の外径の差は0.0mm以上、好ましくは0.5mm以上、特に好ましくは1.0mm以上であり、10mm以下、好ましくは6mm以下、特に好ましくは3mm以下である。図2dは、ホース本体2に押圧部材40とスパイラルリング50を装着し、加締スリーブ30で加締め作業を行う前の状態を示す。
さらにスパイラルリングを装着させた第1領域と、押圧部材を装着させた第2領域のホース長さ方向の長さ比は、2:1~1:2であり、好ましくは1.5:1~1:1.5、特に好ましくは1.2:1~1:1.2である。
なお、スパイラルリング50は、加締スリーブ30によって圧縮されることにより、外径が小さくなり、その分だけスパイラルリング50がホースの長さ方向に延びる。
【0034】
螺旋波形ホース用継手10の圧縮率は、次の式(1)で表される圧縮率が25%以下、好ましくは20%以下、より好ましくは18%以下、さらに好ましくは17%以下、特に好ましくは16%以下、最も好ましくは15%以下であり、5%以上、好ましくは8%以上、特に好ましくは10%以上である。圧縮率が25%より大きくなると、ホース本体2への圧縮量がホースの長手方向の伸びに変換されやすくなる。一方、5%より小さいと、良好な抜止性能が得られにくくなる。
ここで「全圧縮量」とは、螺旋波形ホース1に装着されたスパイラルリング50または押圧部材40の圧縮前の外径のいずれか大きい方から圧縮後の加締スリーブ30の内径(圧縮後のスパイラルリング50あるいは押圧部材40の外径)を差し引いた量を言う。
螺旋波形ホース用の継手構造1において、加締スリーブ30を圧縮加工することにより、実質的に圧縮されるホース本体2以外の押圧部材40およびスパイラルリング50も圧縮する。そのため、圧縮率の算出では、ホース本体30および押圧部材40を剛体として、実際は変形しないニップル20をどれだけ変形させたかで算出している。つまり、圧縮率は、全圧縮量に対するニップル外径の仮想の変化率としている。
【0035】
このように螺旋波形ホース1と螺旋波形ホース用継手10との継手構造は、内面40Bが適切な螺旋形状を呈した押圧部材40が螺旋波形ホース1の第2領域に設けられ、螺旋波形ホース1の谷部1Bbに沿って設けられたスパイラルリング50が螺旋波形ホース1の第1領域に設けられているため、加締スリーブ30で圧縮したとき、その半径方向内側の圧縮力は押圧部材40およびスパイラルリング50ではなくホース本体2が実質的に吸収し、ホース本体2が実質的に変形する。つまり、押圧部材40が設けられた第2領域では、押圧部材40を介して螺旋波形ホース1の圧縮によって止水性が確保される。一方、スパイラルリング50が設けられた第1領域では、第2領域より強い圧縮力がスパイラルリング50を介してホース本体2に加えられ、螺旋波形ホース1のニップル20への締付力が維持される。そのため、全体の圧縮率を小さくすることができる。つまり、ホース本体2への圧縮量が長さ方向へ変換するのを抑制でき、接続部位の外側(加締スリーブ30の外側)にホース本体2の一部が膨出することを防止できる。つまり、接続周辺の外観不良が起こりにくい良質な螺旋波形ホースの継手構造を効率良く生産することができる。
【0036】
図面に基づいて本発明の好ましい実施形態を紹介したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。
例えば、上述の実施形態では固定スリーブとして加締スリーブ30を用いているが、固定スリーブは、押圧部材40およびスパイラルリング50を介して螺旋波形ホース1を圧縮し、螺旋波形ホース1とニップル20とを固定するものであれば、特に限定されるものではない。例えば、固定スリーブは、半径方向に2分割された一対の分割体あるいは半径方向に複数に分割された分割体から構成されてもよい。なお、分割体とする場合、螺旋波形ホースの端部側に内側に延びる係止壁等のような抜け止め構造を設けるのが好ましい。
上述の実施形態ではニップルの挿入部に、環状爪21cが設けられているが、環状爪21cはなくてもよい。また挿入部よりも先端側に、ホース本体への挿入をガイドするため、先端に向かって径が縮径するように傾斜する先端部を挿入部21(前部21a)の先端側に設けてもよい。
上述の実施形態では、加締スリーブ(固定スリーブ)内に一つのスパイラルリングを設けているが、例えば、図3の螺旋波形ホース用継手10Aのように、ニップル20と固定用スリーブ30との間であって、螺旋波形ホース1の谷部に沿って設けられる他のスパイラルリング50Aを設け、2つのスパイラルリング50、50Aを、螺旋波形ホース1の長手方向において押圧部材40を挟むように配置してもよい。
上述の実施形態では、螺旋波形ホース1とニップル20との間にシール部材を設けていないが、一層高い耐圧性能を得ることを目的として螺旋波形ホース1とニップル20との間にシール部材を設けるようにしてもよい。例えば、Oリング等のシール部材を収容する環状凹部をニップルに設けることが考えられる。しかし、このような特殊なニップルを用いることにより、コストが大きくなるおそれがある。
【実施例0037】
[螺旋波形ホース1]
硬度がショアA硬度72であり、スチレン系エラストマーからなる本体内層2aと、硬度がショアA硬度66であり、スチレン系エラストマーからなる本体外層2bと、その間にポリエステル撚り糸からなる補強層2cとを備えたホース本体2と;その外周にポリプロピレンからなる補強芯3とを備えた螺旋波形ホース1であって、外径Xが55.0mmであり、内径Yが38.0mmであり、ピッチPが10.0mmであり、ホース本体2の硬度がショアA硬度66である螺旋波形ホースD38を準備した。
ホース本体2を構成する本体内層2aのスチレン系エラストマーの23℃および100℃におけるJIS K 6251(2010)に準じて測定される降伏点応力はそれぞれ1.26MPa、0.46MPaであり、引張強度はそれぞれ14.6MPa、0.52MPaであった。補強芯3のASTM D648の試験法による荷重たわみ温度が90℃であった。またホース本体2(補強芯なし)は、少なくとも100℃において、1.2MPaの圧力に耐える構造であった。
【0038】
[螺旋波形ホース用継手10および螺旋波形ホースの継手構造]
次に、SUS製のニップル20と、SUS製の加締スリーブ30と、EPDM製の押圧部材40と、SUS製のスパイラルリング50(線径4mm)を備えた螺旋波形ホース用継手10(実施例)を準備した。スパイラルリング50以外を備えた螺旋波形ホース用継手(比較例1)と、比較例1の螺旋波形ホース用継手よりもEPDM製の押圧部材の長さを長くした螺旋波形ホース用継手(比較例2)を準備した。
螺旋波形ホースD38に実施例および比較例の螺旋波形ホース用継手を取り付けて、実施例1の螺旋波形ホースの継手構造、比較例1の螺旋波形ホースの継手構造および比較例2の螺旋波形ホースの継手構造を構築した。実施例1において、螺旋波形ホース用継手10に装着させた押圧部材40の外径(第2領域の外径)は、螺旋波形ホース用継手10に装着させたスパイラルリング50の外径(第1領域の外径)より大きかった。
実施例および比較例の螺旋波形ホースの継手構造の詳細を表1に示す。
なお、比較例2の螺旋波形ホースの継手構造は、図4に示すように、継手(加締スリーブ30)の境界部分からホース本体2の伸びた部分が膨出し、境界部分において折れ曲がった。つまり、比較例2の継手構造では、ホース本体2の圧縮量がホースの長手方向の伸びに変換されていることがわかった。
【0039】
【表1】
【0040】
「冷熱サイクル試験」
実施例1、比較例1および比較例2の螺旋波形ホースを用いて冷熱サイクル試験を行った。冷熱サイクル試験は、100℃の熱水を30分間循環し、その後、ホースが常温になるまで水冷することを1サイクルとした。そして、サイクル毎に継手10の加締スリーブ30の緩みおよび漏水の有無を確認した。その結果を表2に示す。
【0041】
【表2】
○:漏水、金具抜けが見られなかった。
×:漏水が見られた。
【0042】
表2に示すように、比較例1の継手構造は、この冷熱サイクル試験の1回目から漏水が見られた。比較例2は、押圧部材の長さを長くしている分だけ漏水が起こりにくくはなっているが、冷熱サイクル試験の4回目から漏水が見られた。また比較例2は、上述したように螺旋波形ホースと継手との境界において、ホースの伸びた部分が膨出し、境界部分で折れ曲がった現象が見られた。一方、実施例1の継手構造は、冷熱サイクル試験を5サイクルした後でも継手構造の加締スリーブ30が空回りすることがなく、漏水も見られず、かつ、外観の異常も見られなかった。
【符号の説明】
【0043】
1 螺旋波形ホース
1A 内面
1B 外面
1Ba 山部
1Bb 谷部
2 ホース本体
2a 本体内層
2b 本体外層
2c 補強層
3 補強芯
10 螺旋波形ホース用継手
20 ニップル
21 挿入部
21a 前部
21b 後部
21b1 傾斜面
21c 環状爪
21c1 第1傾斜部
21c2 第2傾斜部
22 基部
30 加締スリーブ
40 押圧部材
40A 外面
40B 内面
40Ba 溝
50 スパイラルリング
X 螺旋波形ホースの外径
Y 螺旋波形ホースの内径
h 螺旋波形ホースの山部の高さ
P 螺旋波形ホースの山部のピッチ
T ホース本体の厚み
W1 山部(補強芯)の幅
W2 谷部の幅
Z 押圧部材の外径
S 押圧部材の長さ
R 押圧部材の厚み
V 押圧部材の溝の厚み
図1
図2
図3
図4