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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136838
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/20 20060101AFI20240927BHJP
   G05D 1/43 20240101ALI20240927BHJP
【FI】
E02F9/20 N
G05D1/02 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048119
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】弁理士法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辺見 森象
(72)【発明者】
【氏名】山本 慎二郎
(72)【発明者】
【氏名】伊東 勝道
(72)【発明者】
【氏名】石井 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】金澤 亮
【テーマコード(参考)】
2D003
5H301
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB01
2D003BA02
2D003BA03
2D003CA02
2D003DA04
2D003DB03
5H301AA03
5H301AA10
5H301BB03
5H301CC03
5H301CC06
5H301DD01
5H301DD06
5H301DD07
5H301DD15
5H301FF11
5H301HH01
5H301HH02
5H301HH15
5H301HH18
5H301HH19
(57)【要約】
【課題】超信地旋回動作において回転中心と車体中心との位置のずれが発生した場合であっても、適切な自動走行を行うことができるようにする。
【解決手段】車体1Bを構成する走行体11と、車体1Bの位置及び方位を検出する位置情報処理装置37と、走行体11を制御して所定の目標経路に従って、超信地旋回動作と走行動作とを組み合わせた自動走行を行う制御装置60を備えた作業機械であって、制御装置60は、超信地旋回動作中において、油圧ショベルの位置及び方位に基づいて、前記超信地旋回動作を終わらせて後続の前記走行動作を開始した場合における目標ヨーレートを算出し、前記目標ヨーレートが0となった場合に、前記超信地旋回動作を終了し、後続の走行動作を開始させるように構成する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体を構成する走行体と、
前記車体の位置及び方位を検出する位置検出装置と、
前記走行体を制御して所定の目標経路に従って、超信地旋回動作と走行動作とを組み合わせた自動走行を行う制御装置を備えた作業機械であって、
前記制御装置は、
前記超信地旋回動作中において、前記作業機械の位置及び方位に基づいて、前記超信地旋回動作を終わらせて後続の前記走行動作を開始した場合における目標ヨーレートを算出し、
前記目標ヨーレートが0となった場合に、前記超信地旋回動作を終了し、後続の走行動作を開始させる、
ことを特徴とする作業機械。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記目標経路における前記超信地旋回動作を行う地点と、前記作業機械の位置とのずれ量が第一距離未満であるか否かを判定し、
前記ずれ量が前記第一距離未満である場合において、前記目標ヨーレートが0となった場合に、前記超信地旋回動作を終了し、後続の走行動作を開始させる
ことを特徴とする請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記目標経路における前記超信地旋回動作を行う地点と、前記作業機械の位置とのずれ量が第一距離未満であるか否かを判定し、
前記ずれ量が前記第一距離未満でない場合であって、前記作業機械の方位が前記超信地旋回動作の終了目標方位を超過していない場合には、前記作業機械の方位が前記超信地旋回動作の終了目標方位と同じになった場合に、前記超信地旋回動作を終了し、後続の走行動作を開始させる
ことを特徴とする請求項1に記載の作業機械。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記目標経路における前記超信地旋回動作を行う地点と、前記作業機械の位置とのずれ量が第一距離未満であるか否かを判定し、
前記ずれ量が前記第一距離未満でない場合であって、前記作業機械の方位が前記超信地旋回動作の終了目標方位と平行となる方位を超過している場合に、前記超信地旋回動作を終了し、後続の走行動作を開始させる
ことを特徴とする請求項1に記載の作業機械。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記作業機械に対して前方注視一次モデルを用いて前記走行動作を制御し、
前記第一距離は、前記前方注視一次モデルでの前方注視点までの距離である
ことを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の作業機械。
【請求項6】
前記制御装置は、
前記目標経路における前記超信地旋回動作を行う地点と、前記作業機械の位置とのずれ量が第二距離未満であるか否かを判定し、
前記ずれ量が前記第二距離未満でない場合に、前記超信地旋回動作を終了させる
ことを特徴とする請求項1に記載の作業機械。
【請求項7】
前記制御装置は、
前記目標ヨーレートが0となる前に、前記作業機械の方位が前記超信地旋回動作の終了目標方位と同じになった場合に、前記超信地旋回動作を終了し、後続の走行動作を開始させる
ことを特徴とする請求項1に記載の作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目標経路に従って、超信地旋回動作と走行動作とを組み合わせた自動走行が可能な作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ショベル等の作業機械を自動走行させる技術が知られている。超信地旋回動作が可能な作業機械においては、超信地旋回動作と走行動作とが組み合わされて自動走行が行われる。超信地旋回動作は、左右のクローラをそれぞれ前方、後方に駆動して走行によりその場で旋回する動作である。
【0003】
自動走行に関する技術として、例えば、特許文献1には、駐車位置までの移動を支援できるショベルに関する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2019/182066号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、左右のクローラを有する作業機械において、超信地旋回動作を行う場合には、左右のクローラを同じ速度で逆回転させることにより、その場での回転を行うことができる。この超信地旋回動作は、理想的には、回転中心と車体中心が一致していることとなるが、実際には、例えば、横滑り等の外乱により、回転中心と車体中心とのずれが発生する虞がある。このずれの発生については、予測や抑制は困難な場合がある。
【0006】
例えば、超信地旋回動作については、作業機械の方向(前方の方向)が目標経路の方向と同じになった場合に超信地旋回動作を終了させる制御を行うことがあるが、この制御においては、回転中心(回転すべき地点)と車体中心とのずれが発生すると、その後の走行動作を行う際に、無駄な旋回動作が必要となったり、作業機械が移動に必要な範囲が大きくなったりする虞がある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、その目的は、超信地旋回動作において回転中心と車体中心との位置のずれが発生した場合であっても、適切な自動走行を行うことのできる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、一観点に係る作業機械は、車体を構成する走行体と、前記車体の位置及び方位を検出する位置検出装置と、前記走行体を制御して所定の目標経路に従って、超信地旋回動作と走行動作とを組み合わせた自動走行を行う制御装置を備えた作業機械であって、前記制御装置は、前記超信地旋回動作中において、前記作業機械の位置及び方位に基づいて、前記超信地旋回動作を終わらせて後続の前記走行動作を開始した場合における目標ヨーレートを算出し、前記目標ヨーレートが0となった場合に、前記超信地旋回動作を終了し、後続の走行動作を開始させる。
【0009】
上記作業機械において、前記制御装置は、前記目標経路における前記超信地旋回動作を行う地点と、前記作業機械の位置とのずれ量が第一距離未満であるか否かを判定し、前記ずれ量が前記第一距離未満である場合において、前記目標ヨーレートが0となった場合に、前記超信地旋回動作を終了し、後続の走行動作を開始させてもよい。
【0010】
また、上記作業機械において、前記制御装置は、前記目標経路における前記超信地旋回動作を行う地点と、前記作業機械の位置とのずれ量が第一距離未満であるか否かを判定し、前記ずれ量が前記第一距離未満でない場合であって、前記作業機械の方位が前記超信地旋回動作の終了目標方位を超過していない場合には、前記作業機械の方位が前記超信地旋回動作の終了目標方位と同じになった場合に、前記超信地旋回動作を終了し、後続の走行動作を開始させてもよい。
【0011】
また、上記作業機械において、前記制御装置は、前記目標経路における前記超信地旋回動作を行う地点と、前記作業機械の位置とのずれ量が第一距離未満であるか否かを判定し、前記ずれ量が前記第一距離未満でない場合であって、前記作業機械の方位が前記超信地旋回動作の終了目標方位と平行となる方位を超過している場合に、前記超信地旋回動作を終了し、後続の走行動作を開始させてもよい。
【0012】
また、上記作業機械において、前記制御装置は、前記作業機械に対して前方注視一次モデルを用いて前記走行動作を制御し、前記第一距離は、前記前方注視一次モデルでの前方注視点までの距離であってもよい。
【0013】
また、上記作業機械において、前記制御装置は、前記目標経路における前記超信地旋回動作を行う地点と、前記作業機械の位置とのずれ量が第二距離未満であるか否かを判定し、前記ずれ量が前記第二距離未満でない場合に、前記超信地旋回動作を終了し、後続の走行動作を開始させてもよい。
【0014】
また、上記作業機械において、前記制御装置は、前記目標ヨーレートが0となる前に、前記作業機械の方位が前記超信地旋回動作の終了目標方位と同じになった場合に、前記超信地旋回動作を終了し、後続の走行動作を開始させてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、超信地旋回動作において回転中心と車体中心との位置のずれが発生した場合であっても、適切な自動走行を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、一実施形態に係る油圧ショベルの構成図である。
図2図2は、一実施形態に係る油圧ショベルの油圧駆動装置の構成図である。
図3図3は、一実施形態に係る自動走行制御に関わる構成の構成図である。
図4図4は、一実施形態に係る目標経路情報の構成図である。
図5図5は、一実施形態に係る目標経路を説明する図である。
図6図6は、一実施形態に係る前方注視一次モデルによる走行制御を説明する図である。
図7図7は、一実施形態に係る超信地旋回動作制御処理の第一のフローチャートである。
図8図8は、一実施形態に係る超信地旋回動作制御処理の第二のフローチャートである。
図9図9は、一実施形態に係る超信地旋回動作制御処理の第三のフローチャートである。
図10図10は、一実施形態に係る超信地旋回動作制御処理における具体例を説明する第一の図である。
図11図11は、一実施形態に係る超信地旋回動作制御処理における具体例を説明する第二の図である。
図12図12は、一実施形態に係る超信地旋回動作制御処理における具体例を説明する第三の図である。
図13図13は、一実施形態に係る超信地旋回動作制御処理における具体例を説明する第四の図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0018】
まず、一実施形態に係る作業機械の一例である油圧ショベルについて説明する。
【0019】
図1は、一実施形態に係る油圧ショベルの構成図である。
【0020】
油圧ショベル1は、作業装置1Aと、車体1Bとを備える。車体1Bは、下部走行体11と、下部走行体11の上に旋回可能に取り付けられる上部旋回体12とを備える。上部旋回体12は、旋回油圧モータ4により、旋回可能となっている。下部走行体11は、走行左油圧モータ3aを有する左側クローラ13aと、走行右油圧モータ3bを有する右側クローラ13bとを備え、走行可能である。
【0021】
作業装置1Aは、上部旋回体12の前部に支持されている。作業装置1Aは、ブーム8、アーム9、及びバケット10を有する。ブーム8の基端は、上部旋回体12の前部に回動可能に支持され、ブーム8の先端には、アーム9の基端が回動可能に連結されている。アーム9の先端には、バケット10が回動可能に連結されている。ブーム8は、ブームシリンダ5によって駆動され、アーム9は、アームシリンダ6によって駆動され、バケット10は、バケットシリンダ7によって駆動される。
【0022】
ブーム8には、ブーム8の各加速度及び加速度を計測する慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)30が取り付けられ、アーム9には、アーム9の各加速度及び加速度を計測する慣性計測装置31が取り付けられ、バケット10には、バケット10の各加速度及び加速度を計測する慣性計測装置32が取り付けられ、ブーム8、アーム9、及びバケット10の姿勢等に関する情報を検出可能となっている。
【0023】
上部旋回体12に設けられた運転室内には、走行左油圧モータ3aを操作するための走行左レバー20と、走行右油圧モータ3bを操作するための走行右レバー21と、アームシリンダ6及び旋回油圧モータ4を操作するための操作左レバー22と、ブームシリンダ5及びバケットシリンダ7を操作するための操作右レバー23と、設けられている。
【0024】
上部旋回体12には、上部旋回体12の角速度や加速度を計測する慣性計測装置33と、上部旋回体12と下部走行体11との旋回角を検出する旋回角センサ34が取り付けられている。旋回角センサ34は、例えば、上部旋回体と下部走行体との回転角を検知するロータリーエンコーダであってもよい。
【0025】
上部旋回体12には、衛星からの測位信号を受信可能なGNSS(Global Navigation Satellite System)アンテナ36a,36bが取り付けられている。GNSSアンテナ36a,36bは、受信した測位信号を後述する位置情報処理装置37(図3参照)に出力する。
【0026】
上部旋回体12の内部には、原動機の一例としてのエンジン18と、エンジン18により駆動される油圧ポンプ2(2a,2b,2c)とが設けられている。
【0027】
次に、油圧ショベル1に構成されている油圧駆動装置100について説明する。
【0028】
図2は、一実施形態に係る油圧ショベルの油圧駆動装置の構成図である。
【0029】
油圧駆動装置100は、エンジン18、油圧ポンプ2a、油圧ポンプ2b、パイロットポンプ2c、走行左油圧モータ3a、走行右油圧モータ3b、コントロールバルブ15、パイロットバルブ50を備える。
【0030】
エンジン18は、油圧ポンプ2a、油圧ポンプ2b、パイロットポンプ2cを駆動する。油圧ポンプ2aは、エンジン18により駆動されることにより、走行左油圧モータ3a側への作動油の供給を行う。油圧ポンプ2bは、エンジン18により駆動されることにより、走行右油圧モータ3b側への作動油の供給を行う。パイロットポンプ2cは、エンジン18により駆動されることにより、パイロットバルブ50へのパイロット圧の供給を行う。
【0031】
コントロールバルブ15は、走行左油圧モータ3aへの作動油の供給方向及び流量を制御する流量制御弁15aと、走行右油圧モータ3bへの作動油の供給方向及び流量を制御する流量制御弁15bとを含む。
【0032】
パイロットバルブ50は、制御装置60(図3参照)からの制御信号に従って、流量制御弁15aによる作動油の供給方向及び流量を制御するパイロット圧を調整する電磁比例弁54a,54bと、制御装置60からの制御信号に従って、流量制御弁15bによる作動油の供給方向及び流量を制御するパイロット圧を調整する電磁比例弁55a,55bと、を備える。
【0033】
次に、油圧ショベル1における自動走行制御に関わる構成について説明する。
【0034】
図3は、一実施形態に係る自動走行制御に関わる構成の構成図である。
【0035】
油圧ショベル1は、位置検出装置の一例としての位置情報処理装置37と、制御装置60とを備える。
【0036】
位置情報処理装置37は、GNSSアンテナ36a,36bからの測位情報、慣性計測装置33からの上部旋回体12の姿勢情報、及び旋回角センサ34からの旋回角情報に基づいて、油圧ショベル1の所定の位置(例えば、下部走行体11の中心の位置)及び下部走行体11の前方の方位(車体方向)を算出し、制御装置60に入力する。例えば、下部走行体11の位置及び方位は、上部旋回体12の位置及び方位に対して、旋回角センサ34により出力される旋回角による調整を行うことで算出することができる。
【0037】
制御装置60は、目標経路入力部61と、車体情報入力部62と、走行制御部63と、電磁比例弁制御部64と、停止条件演算部65とを含む。制御装置60は、プロセッサや、RAM、ROM等のメモリを備えるコンピュータにより構成されてもよく、各部は、プロセッサがプログラムを実行することにより構成されてもよい。
【0038】
目標経路入力部61は、施工管理システム40から目標経路情報42(図4参照)を受信し、走行制御部63及び停止条件演算部65に送信する。ここで、施工管理システム40は、例えば、油圧ショベル1と離れた位置に配置され、目標経路情報42を管理する目標経路管理部41を有する。目標経路情報42は、ユーザによって設定されてもよく、ユーザにより指定された自動走行を行う始点と終点とから目標経路管理部41により作成されてもよい。
【0039】
車体情報入力部62は、位置情報処理装置37から油圧ショベル1(下部走行体11)の位置及び車体方向を受信し、走行制御部63及び停止条件演算部65に送信する。また、車体情報入力部62は、位置情報処理装置37から下部走行体11の旋回における角速度、加速度等を受信し、停止条件演算部65に送信する。
【0040】
走行制御部63は、目標経路情報に従って、下部走行体11の位置及び車体方向に基づいて、油圧ショベル1の超信地旋回動作及び走行動作を制御する制御指令を作成し、電磁比例弁制御部64に出力する。走行制御部63は、走行動作の制御においては、例えば、目標経路情報と、下部走行体11の位置及び車体方向とに基づいて、後述する前方注視一次モデルによる走行制御に従って制御指令を出力する。走行制御部63は、超信地旋回動作の制御においては、超信地旋回動作を行う地点において、超信地旋回動作を開始させる制御指令を出力し、停止条件演算部65からの動作終了信号に従って超信地旋回動作を終了させる制御指令を出力する。
【0041】
電磁比例弁制御部64は、走行制御部63からの制御指令に従って、パイロットバルブ50に制御指令に従う制御信号を出力する。
【0042】
停止条件演算部65は、目標経路情報と、下部走行体11の位置及び車体方向とに基づいて、後述する超信地旋回動作制御処理を行って、超信地旋回動作を終了させる動作終了信号を走行制御部63に出力する。
【0043】
次に、目標経路情報42について説明する。
【0044】
図4は、一実施形態に係る目標経路情報の構成図である。
【0045】
目標経路情報42は、各中継点(例えば、終点も含む)に対応するエントリを格納する。目標経路情報42のエントリは、地点No. 42aと、x座標42bと、y座標42cと、目標速度42dと、方向転換点42eとのフィールドを含む。
【0046】
地点No. 42aには、エントリに対応する中継点の番号が格納される。x座標42bには、エントリに対応する中継点の所定のx-y座標系のx座標が格納される。ここで、所定のx-y座標系は、例えば、油圧ショベル1の移動開始点を原点としてもよい。y座標42cには、エントリに対応する中継点のy座標が格納される。目標速度42dには、エントリに対応する中継点までの目標速度が格納される。方向転換点42eには、エントリに対応する中継点が、超信地旋回動作を行う地点(方向転換点)であるか否かの情報が格納される。本実施形態では、方向転換点42eにおいては、エントリに対応する中継点が方向転換点である場合には、〇が設定され、方向転換点でない場合には、×が設定される。なお、方向転換点である中継点は、その点の位置を油圧ショベル1が通ることとなるが、方向転換点でない中継点は、油圧ショベル1がその点の位置を通るとは限らない。
【0047】
図5は、一実施形態に係る目標経路を説明する図である。図5は、図4に示す目標経路情報42に対応する目標経路の例を示している。
【0048】
図5に示すように、目標経路は、目標経路OR1を通って地点2に進み、目標経路OR2を通って地点3に進み、地点3から目標経路OR3を通る経路となっている。この場合に、超信地旋回動作を行わずに走行制御のみで目標経路OR1,OR2、OR3に従って制御しようとすると、地点2の手前側の周囲(両側)に障害物O1,O2が存在するので、場合によっては、油圧ショベル1(下部走行体11)が障害物O1,O2と接触してしまう虞がある。そこで、図4の地点2に対して、方向転換点に設定し、地点2で超信地旋回動作を行うようにすることにより、障害物O1,O2に接触することを防止できるように走行させることができる。
【0049】
次に、制御装置60の走行制御部63による前方注視一次モデルによる走行制御について説明する。
【0050】
図6は、一実施形態に係る前方注視一次モデルによる走行制御を説明する図である。
【0051】
まず、走行制御部63は、油圧ショベル1の現在の位置の前方の所定の距離(前方注視距離D)だけ離れた点(前方注視点FP)を特定し、前方注視点FPを通る、油圧ショベル1と前方注視点FPとを結ぶ線に対する法線が目標経路ORと交わる交点CPを特定し、前方注視点FPと交点CPとの偏差(軌跡偏差Δ)を算出する。次いで、走行制御部63は、軌跡偏差Δを0とするように、すなわち、交点CPで油圧ショベル1が目標経路OR上に位置するように、油圧ショベル1の運動モデルからヨーレート(目標ヨーレート)を求める。走行制御部63は、求めたヨーレートで走行するように、電磁比例弁制御部64に制御指令を出力する。
【0052】
次に、停止条件演算部65による超信地旋回動作制御処理について説明する。
【0053】
図7は、一実施形態に係る超信地旋回動作制御処理の第一のフローチャートである。図8は、一実施形態に係る超信地旋回動作制御処理の第二のフローチャートである。図9は、一実施形態に係る超信地旋回動作制御処理の第三のフローチャートである。
【0054】
ここで、超信地旋回動作制御処理は、油圧ショベル1が方向転換点に位置した場合に停止条件演算部65により実行される。なお、油圧ショベル1が方向転換点に位置した場合には、走行制御部63は、車体方向が次の中間点への目標経路と同じ方向となるように超信地旋回動作を実行させる制御指令を電磁比例弁制御部64に出力する。
【0055】
まず、停止条件演算部65は、目標経路情報42を取得する(S11)。なお、すでに処理に必要な目標経路情報42をメモリに格納している場合には、目標経路情報42をメモリから取得してもよい。
【0056】
次いで、停止条件演算部65は、油圧ショベル1(下部走行体11)の現在の中心位置(自己位置)と、車体方向(方位)とを取得する(S12)。
【0057】
次いで、停止条件演算部65は、方向転換点(回転中心)と、自己位置とのずれ量(ずれ距離)を算出する(S13)。
【0058】
次いで、停止条件演算部65は、ずれ距離が所定の第二距離以上であるか否かを判定する(S14)。ここで、本実施形態では、第二距離は、後述する第一距離より長い距離であり、油圧ショベル1又は地面状態が異常であることを考慮する必要がある距離である。
【0059】
この結果、ずれ距離が第二距離以上である場合(S14:YES)には、油圧ショベル1又は地面状態が異常であると考えられるので、停止条件演算部65は、油圧ショベル1の超信地旋回動作を終了させる信号(動作終了信号)を走行制御部63に出力し(S15)、処理を終了する。なお、ずれ距離が第二距離以上である場合(S14:YES)おいては、動作終了信号は、以降の走行動作も停止させる指令を含む信号であってもよい。
【0060】
一方、ずれ距離が第二距離以上でない場合(S14:NO)には、停止条件演算部65は、ずれ距離が第一距離以上であるか否かを判定する(S16)。ここで、本実施形態では、第一距離は、前方注視距離であってもよい。
【0061】
この結果、ずれ距離が第一距離以上である場合(S16:YES)には、処理をステップS17に進める一方、ずれ距離が第一距離以上でない場合(S16:NO)には、停止条件演算部65は、処理をステップS21(図8参照)に進める。
【0062】
ステップS17では、停止条件演算部65は、車体方向が目標経路と平行になる方位を超過しているか否かを判定する(S17)。この結果、車体方向が目標経路と平行になる方位を超過している場合(S17:YES)、停止条件演算部65は、処理をステップS15に進めて、油圧ショベル1の超信地旋回動作を終了させる動作終了信号を走行制御部63に出力する一方、車体方向が目標経路と平行になる方位を超過していない場合(S17:NO)、停止条件演算部65は、処理をステップS31(図9参照)に進める。
【0063】
ステップS21(図8参照)では、停止条件演算部65は、油圧ショベル1の位置及び車体方位に基づいて、その時点で超信地旋回動作を停止するとした場合に油圧ショベル1が停止する車体方位(停止方位:終了目標方位)を予測する。例えば、超信地旋回動作において、旋回開始から角速度を徐々に増加させ、所定の角速度に到達した後にその角速度を維持し、旋回を停止する際に角速度を徐々に減少させる制御を行う場合には、停止方位は、現在の車体方向と、現在の角速度から旋回を停止するために角速度を徐々に減少させた場合に旋回する旋回角とに基づいて、予測することができる。
【0064】
次いで、停止条件演算部65は、超信地旋回動作を停止した後の後続の走行動作制御において指令するヨーレート(指令ヨーレート:目標ヨーレート)を予測する(S22)
【0065】
次いで、停止条件演算部65は、指令ヨーレートが0であるか否かを判定する(S23)。この結果、指令ヨーレートが0である場合(S23:YES)には、超信地旋回動作を停止し、走行動作を開始すると、無駄な旋回を行わずに済むことを意味しているので、停止条件演算部65は、処理をステップS15に進めて、油圧ショベル1の超信地旋回動作を終了させる動作終了信号を走行制御部63に出力する。
【0066】
一方、指令ヨーレートが0でない場合(S23:NO)には、停止条件演算部65は、停止方位が目標経路の方位(経路方位)と同じ(平行)であるか否かを判定する(ステップS24)。この結果、停止方位が経路方位と同じ場合(S24:YES)には、さらに旋回を行うと旋回量が多くなり、ずれ距離をさらに大きくしてしまう可能性があるので、停止条件演算部65は、処理をステップS15に進めて、油圧ショベル1の超信地旋回動作を終了させる動作終了信号を走行制御部63に出力する。
【0067】
一方、停止方位が経路方位と同じでない場合(S24:NO)には、旋回を継続する必要があるので、停止条件演算部65は、処理をステップS12に進める。
【0068】
ステップS31では、停止条件演算部65は、油圧ショベル1の位置及び車体方位に基づいて、その時点で超信地旋回動作を停止するとした場合に油圧ショベル1が停止する停止方位を予測する。
【0069】
次いで、停止条件演算部65は、停止方位が目標経路の方位(経路方位)と同じ(平行)であるか否かを判定する(ステップS32)。この結果、停止方位が経路方位と同じ場合(S32:YES)には、無駄に旋回を行う可能性があるので、停止条件演算部65は、処理をステップS15に進めて、油圧ショベル1の超信地旋回動作を終了させる動作終了信号を走行制御部63に出力する。一方、停止方位が経路方位と同じでない場合(S32:NO)には、旋回を継続する必要があるので、停止条件演算部65は、処理をステップS12に進める。
【0070】
次に、本実施形態に係る超信地旋回動作制御処理における具体例について説明する。
【0071】
図10は、一実施形態に係る超信地旋回動作制御処理における具体例を説明する第一の図である。図10は、超信地旋回動作制御処理のステップS23で、指令ヨーレートが0であると判定された場合(S23:YES)に、超信地旋回動作を終了する例を説明する図である。図10(2)及び図10(3)は、比較例である、油圧ショベル1の車体方向が目標経路ORの方位と同じになった場合に超信地旋回動作を終了させる制御を行う場合の例であり、図10(4)及び図10(5)は、実施形態に係る指令ヨーレートが0となった場合(S23:YES)に、超信地旋回動作を終了させる制御を行う場合の例である。
【0072】
油圧ショベル1は、図10(1)に示すように超信地旋回動作を開始する方向転換点TNに到達し、時計回り方向に旋回する超信地旋回動作を開始するものとする。
【0073】
ここで、図10(2)に示すように、油圧ショベル1の車体方向が目標経路ORの方位と同じになった場合に超信地旋回動作を終了させる制御を行い、この超信地旋回動作において車体中心が方向転換点TNから図面下方向にずれが発生したとする。この場合には、超信地旋回動作後に走行動作を開始すると、図10(3)に示すように、油圧ショベル1は、反時計回り方向に旋回する動作を行って目標経路ORに至るよう走行するので、必要走行幅RWは、図示したものとなる。
【0074】
これに対して、図10(4)に示すように、指令ヨーレートが0となった場合(S23:YES)に、超信地旋回動作を終了させる制御を行い、この超信地旋回動作において車体中心が方向転換点TNから図面下方向にずれが発生したとする。この場合には、超信地旋回動作後に走行動作を開始すると、図10(5)に示すように、油圧ショベル1は、指令ヨーレート0に従って直進を開始して目標経路ORに至るよう走行するので、必要走行幅RWは、図示したものとなる。この場合の必要走行幅RWは、図10(3)における必要走行幅RWよりも狭くなる。
【0075】
このように、指令ヨーレートが0となった場合(S23:YES)に、超信地旋回動作を終了させる制御を行うことにより、走行動作において、超信地旋回動作における旋回方向と逆方向の無駄な旋回を行うことを低減でき、必要走行幅を狭くすることができる。
【0076】
図11は、一実施形態に係る超信地旋回動作制御処理における具体例を説明する第二の図である。図11は、超信地旋回動作制御処理のステップS16で、ずれ距離が第一距離以上であり(S16:YES)、車体方向が目標経路ORと平行になる方位を超過していない場合(S17:NO)における超信地旋回動作の例を説明する図である。図11(2)は、比較例である、指令ヨーレートが0となった場合に超信地旋回動作を終了させる制御を行う場合の例であり、図11(3)は、油圧ショベル1の停止方位が目標経路ORの方位と同じになった場合に超信地旋回動作を終了させる制御を行う場合の例である。
【0077】
油圧ショベル1は、図11(1)に示すように、方向転換点TNにおいて時計回り方向に旋回する超信地旋回動作を実行中であり、この超信地旋回動作により車体中心が方向転換点TNから図面上方向にずれ、ずれ距離が第一距離よりも長くなったとする。
【0078】
この場合において、指令ヨーレートが0となった場合に超信地旋回動作を終了させる制御を行うようにすると、図11(2)に示すように、油圧ショベル1は、車体方向が目標経路ORと垂直となるところまで時計回り方向の旋回を行ってしまい、その後の走行動作では、反時計回り方向の旋回を行いつつ目標経路ORに至るよう走行することとなる。
【0079】
これに対して、油圧ショベル1の停止方位が目標経路ORの方位と同じになった場合に超信地旋回動作を終了させる制御を行うと、図11(3)に示すように、油圧ショベル1の停止方位が目標経路ORの方位と同じになった場合(S32:YES)に超信地旋回動作を終了させる制御を行う。この場合には、超信地旋回動作後の走行動作を行うと、油圧ショベル1は、時計回り方向の旋回を行いつつ目標経路ORに至るよう走行することとなる。
【0080】
このように、ずれ距離が第一距離以上であり(S16:YES)、車体方向が目標経路ORと平行になる方位を超過していない場合(S17:NO)には、油圧ショベル1の停止方位が目標経路ORの方位と同じになった場合(S32:YES)に、超信地旋回動作を終了させる制御を行うことにより、その後の走行動作において、超信地旋回動作における旋回方向と逆方向の無駄な旋回を行うことを低減できる。
【0081】
図12は、一実施形態に係る超信地旋回動作制御処理における具体例を説明する第三の図である。図12は、超信地旋回動作制御処理のステップS16で、ずれ距離が第一距離以上であり(S16:YES)、車体方向が目標経路ORと平行になる方位を超過している場合(S17:YES)における超信地旋回動作の例を説明する図である。
【0082】
この場合には、車体方向が目標経路ORと平行になる方位を超過しており、油圧ショベル1の停止方位が目標経路ORの方位と同じにはならないので、直ちに超信地旋回動作を終了させる制御を行う。これにより、油圧ショベル1の停止方位が目標経路ORの方位と大きくずれることを防止でき、その後の走行動作において、超信地旋回動作における旋回方向と逆方向の無駄な旋回を行うことを低減できる。
【0083】
図13は、一実施形態に係る超信地旋回動作制御処理における具体例を説明する第四の図である。図13は、超信地旋回動作制御処理のステップS23で、指令ヨーレートが0であると判定されていない場合(S23:NO)に、油圧ショベル1の車体方向が目標経路ORの方位と同じになった場合(S24:NO)に超信地旋回動作を終了する例を説明する図である。図13(2)は、比較例である、指令ヨーレートが0となった場合に、超信地旋回動作を終了させる制御を行う場合の例であり、図13(3)は、油圧ショベル1の停止方位が目標経路ORの方位と同じになった場合に超信地旋回動作を終了させる制御を行う場合の例である。
【0084】
油圧ショベル1は、図13(1)に示すように超信地旋回動作を開始する方向転換点TNに到達し、時計回り方向に旋回する超信地旋回動作を開始するものとする。
【0085】
ここで、指令ヨーレートが0となった場合に、超信地旋回動作を終了させる制御を行い、この超信地旋回動作において車体中心が方向転換点TNから図面上方向にずれが発生した場合には、図13(2)に示す状態となる。
【0086】
これに対して、油圧ショベル1の車体方向が目標経路ORの方位と同じになった場合(S24:YES)に超信地旋回動作を終了させる制御を行い、この超信地旋回動作において車体中心が方向転換点TNから図面下方向にずれが発生した場合には、図13(3)に示すようになる。この場合には、図13(2)に示す場合よりも超信地旋回動作における旋回量を抑えることができるので、ずれ距離を抑えることができる。
【0087】
なお、本発明は、上述の実施形態及び変形例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変形して実施することが可能である。
【0088】
例えば、上記実施形態では、作業機械の一例として油圧ショベルを例に説明していたが、本発明はこれに限られず、バケット以外のアタッチメントを備える作業機械にも本発明を適用することができ、要は、クローラ等の超信地旋回動作が可能な作業機械であればよい。
【0089】
また、上記実施形態では、第二距離を第一距離よりも長い距離としていたが、第二距離を第一距離よりも短い距離としてもよい。
【0090】
また、本実施形態では、走行制御を、前方注視一次モデルを使用した走行制御としていたが、本発明はこれに限られず、他の走行制御であってもよく、この場合は、前方注視距離が存在しないので、第一距離は、任意の値としてもよい。例えば、他の走行制御としては、油圧ショベル1の車体方向及び位置と、目標経路とを用いたPID制御を行う走行制御であってもよい。
【符号の説明】
【0091】
1…油圧ショベル、1A…作業装置、1B…車体、2a…油圧ポンプ、2b…油圧ポンプ、2c…パイロットポンプ、3a…走行左油圧モータ、3b…走行右油圧モータ、11…下部走行体、12…上部旋回体、60…制御装置、61…目標経路入力部、62…車体情報入力部、63…走行制御部、64…電磁比例弁制御部、65…停止条件演算部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13