(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136851
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】静電荷像現像用トナー及び画像形成方法
(51)【国際特許分類】
G03G 9/087 20060101AFI20240927BHJP
G03G 9/097 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
G03G9/087 331
G03G9/097 365
G03G9/097 375
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048136
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】滝ヶ浦 佑介
(72)【発明者】
【氏名】大西 隼也
(72)【発明者】
【氏名】中井 優咲子
(72)【発明者】
【氏名】新井 啓司
(72)【発明者】
【氏名】石川 美知昭
【テーマコード(参考)】
2H500
【Fターム(参考)】
2H500AA01
2H500AA08
2H500AA09
2H500CA06
2H500CB04
2H500CB12
2H500EA13C
2H500EA39B
2H500EA41B
2H500EA44B
2H500EA44D
2H500EA47A
2H500EA52D
(57)【要約】
【課題】かぶりを抑制した良好な画質が得られる静電荷像現像用トナー及び画像形成方法を提供することである。
【解決手段】本発明の静電荷像現像用トナーは、ポリエステルを少なくとも含有するトナー粒子を含む静電荷像現像用トナーであって、前記トナー粒子が、前記ポリエステルとして、非晶性ポリエステルを少なくとも含有し、前記ポリエステルにおける全アルコール由来の構造単位100モル%に対するビスフェノールA誘導体由来の構造単位の含有率が、10モル%以下であり、温度10℃・湿度20%RHの環境下で24時間放置したときの、前記トナー粒子の全体の質量に対する外部及び内部に存在する水分の質量である全体水分量が、0.4質量%以上であることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルを少なくとも含有するトナー粒子を含む静電荷像現像用トナーであって、
前記トナー粒子が、前記ポリエステルとして、非晶性ポリエステルを少なくとも含有し、
前記ポリエステルにおける全アルコール由来の構造単位100モル%に対するビスフェノールA誘導体由来の構造単位の含有率が、10モル%以下であり、
温度10℃・湿度20%RHの環境下で24時間放置したときの、前記トナー粒子の全体の質量に対する外部及び内部に存在する水分の質量である全体水分量が、0.4質量%以上である
ことを特徴とする静電荷像現像用トナー。
【請求項2】
前記トナー粒子が、前記ポリエステルとして、結晶性ポリエステルを含有し、
前記結晶性ポリエステルが、炭素数6~14の脂肪族ジカルボン酸と炭素数6~14の脂肪族ジオールとの重縮合体である
ことを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項3】
前記非晶性ポリエステルが、炭素数5以上の脂肪族多価アルコールに由来する構造単位を有する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項4】
前記トナー粒子が、融点Tmが70℃以上91℃以下の離型剤を含有する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項5】
前記トナー粒子が、個数平均粒子径が90nm以上130nm以下のシリカ粒子を、外添剤として有する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項6】
前記トナー粒子が、チタン酸ストロンチウム粒子を、外添剤として有する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項7】
温度10℃・湿度20%RHの環境下で24時間放置したときの、前記トナー粒子の全体水分量が、0.8質量%以上である
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項8】
温度10℃・湿度20%RHの環境下で24時間放置したときの、前記トナー粒子の全体の質量に対する内部に存在する水分の質量である内部水分量が、0.3質量%以上である
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項9】
温度10℃・湿度20%RHの環境下で24時間放置したときの、前記トナー粒子の全体水分量が、0.6質量%以上であり、内部水分量が、0.5質量%以上である
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項10】
請求項1又は請求項2に記載の静電荷像現像用トナーを用いる
ことを特徴とする画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電荷像現像用トナー及び画像形成方法に関する。
より詳しくは、本発明は、かぶりを抑制した良好な画質が得られる静電荷像現像用トナー及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
省エネルギーの観点から静電荷像現像用トナー(以下、単に「トナー」ともいう。)の低温定着化が望まれている。このために、結着樹脂として非晶性ポリエステルや結晶性ポリエステルを使ったトナーの開発が行われている。非晶性ポリエステルを構成する多価アルコール成分には、低温定着性と耐熱保管性の両立の観点から、ビスフェノールA誘導体が用いられてきた(特許文献1参照。)。
【0003】
一方で、ビスフェノールA誘導体は、分子内に芳香環を多く含む構造であるため、分子が非常に剛直で動きづらいという特徴がある。そのため、ビスフェノールA誘導体由来の構造を多く含むポリエステルを含有するトナーでは、分子内の電荷の移動が容易ではないため、帯電量の立ち上がりが遅い。近年、電子写真プロセスの高速化が進んでいる。また、低温低湿環境下では、帯電量の立ち上がりが遅くなりやすい。このような環境下において、ビスフェノールA誘導体由来の構造を多く含有し、帯電量の立ち上がりが遅いトナーは、十分な帯電量が得られないまま現像されてしまうことがある。これによって非画像部にトナーが飛散してしまい、かぶりが生じることが、問題となっていた。
【0004】
また、特許文献2において、トナーにビスフェノールA誘導体を含まないポリエステルを用いる技術が開示されている。しかし、当該技術だけでは、かぶりの改善が十分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-98008号公報
【特許文献2】特開2017-062344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題又は状況に鑑みてなされたものである。本発明の解決課題は、かぶりを抑制した良好な画質が得られる静電荷像現像用トナー及び画像形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記課題の原因等について検討した。その結果、本発明者は、トナー母体粒子にビスフェノールA誘導体由来の構造単位の含有率が低いポリエステルを含有させ、かつ、トナー粒子の全体水分量を0.4質量%以上にすることで、上記課題を解決できることを見いだした。これに基づき、本発明者は、本発明に至った。上記課題は、以下の手段により解決される。
【0008】
1.ポリエステルを少なくとも含有するトナー粒子を含む静電荷像現像用トナーであって、
前記トナー粒子が、前記ポリエステルとして、非晶性ポリエステルを少なくとも含有し、
前記ポリエステルにおける全アルコール由来の構造単位100モル%に対するビスフェノールA誘導体由来の構造単位の含有率が、10モル%以下であり、
温度10℃・湿度20%RHの環境下で24時間放置したときの、前記トナー粒子の全体の質量に対する外部及び内部に存在する水分の質量である全体水分量が、0.4質量%以上である
ことを特徴とする静電荷像現像用トナー。
【0009】
2.前記トナー粒子が、前記ポリエステルとして、結晶性ポリエステルを含有し、
前記結晶性ポリエステルが、炭素数6~14の脂肪族ジカルボン酸と炭素数6~14の脂肪族ジオールとの重縮合体である
ことを特徴とする第1項に記載の静電荷像現像用トナー。
【0010】
3.前記非晶性ポリエステルが、炭素数5以上の脂肪族多価アルコールに由来する構造単位を有する
ことを特徴とする第1項又は第2項記載の静電荷像現像用トナー。
【0011】
4.前記トナー粒子が、融点Tmが70℃以上91℃以下の離型剤を含有する
ことを特徴とする第1項又は第2項に記載の静電荷像現像用トナー。
【0012】
5.前記トナー粒子が、個数平均粒子径が90nm以上130nm以下のシリカ粒子を、外添剤として有する
ことを特徴とする第1項又は第2項に記載の静電荷像現像用トナー。
【0013】
6.前記トナー粒子が、チタン酸ストロンチウム粒子を、外添剤として有する
ことを特徴とする第1項又は第2項に記載の静電荷像現像用トナー。
【0014】
7.温度10℃・湿度20%RHの環境下で24時間放置したときの、前記トナー粒子の全体水分量が、0.8質量%以上である
ことを特徴とする第1項又は第2項に記載の静電荷像現像用トナー。
【0015】
8.温度10℃・湿度20%RHの環境下で24時間放置したときの、前記トナー粒子の全体の質量に対する内部に存在する水分の質量である内部水分量が、0.3質量%以上である
ことを特徴とする第1項又は第2項に記載の静電荷像現像用トナー。
【0016】
9.温度10℃・湿度20%RHの環境下で24時間放置したときの、前記トナー粒子の全体水分量が、0.6質量%以上であり、内部水分量が、0.5質量%以上である
ことを特徴とする第1項又は第2項に記載の静電荷像現像用トナー。
【0017】
10.第1項又は第2項に記載の静電荷像現像用トナーを用いる
ことを特徴とする画像形成方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明の上記手段により、かぶりを抑制した良好な画質が得られる静電荷像現像用トナー及び画像形成方法を提供できる。
【0019】
本発明の効果の発現機構又は作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
【0020】
帯電量の立ち上がりを速くするためには、トナー中を電荷が移動し易くし、トナー粒子が次々と帯電していく状態を作ることが重要である。
【0021】
芳香族化合物と比較して、脂肪族化合物の方が、分子鎖が回転し易く、分子鎖同士が隣接し易い。そのため、脂肪族化合物の方が、分子内の電荷の移動が容易となる。そのため、ポリエステルにおいて、芳香族化合物であるビスフェノールA誘導体の含有量を少なくすることで、トナーの帯電量の立ち上がりを良好にできる。具体的には、ポリエステルにおける全アルコール由来の構造単位100モル%に対するビスフェノールA誘導体由来の構造単位の含有率を、10モル%以下にすることで、トナーの帯電量の立ち上がりを良好にできる。
【0022】
また、トナー粒子表面への吸着水分量が多くなるように水分量を制御することで、水を介した電荷移動が促進されるため、帯電量の立ち上がりが更に良好となる。具体的には、低温低湿環境(温度10℃・湿度20%RH)下におけるトナー粒子の全体水分量を、0.4質量%以上にすることで、帯電量の立ち上がりを良好にできる。
【0023】
このように、ポリエステルにおいて剛直なビスフェノールA誘導体の含有量を10モル%以下にし、さらに、低温低湿環境下でのトナー粒子の全体水分量を0.4質量%以上にすることで、トナーを次々と帯電し易いものにできる。このようなトナー粒子を含むトナーは、低温低湿環境下において高速機で使用した際にも、十分な帯電量を得ることができ、かぶりが抑制された良好な画像を形成できる。
【0024】
一方、ポリエステルにおける全アルコール由来の構造単位100モル%に対するビスフェノールA誘導体の含有率が、10モル%を超える場合、分子鎖が回転しにくい。そのため、この場合、分子内の電荷移動が十分とならない。また、低温低湿環境(温度10℃・湿度20%RH)下における全体水分量が0.4質量%未満である場合も、水を介した電荷移動が十分とならない。そのため、ビスフェノールA誘導体の上記含有率が10モル%を超える場合、又は/及び、低温低湿環境下における全体水分量が0.4質量%未満である場合、当該トナーでは、かぶりが十分に抑制された良好な画像を形成できない。
【0025】
また、本発明に係るポリエステルは、ビスフェノールA誘導体の含有量が少なく、分子鎖が回転し易い。これにより、ポリエステルが末端や側鎖に有するヒドロキシ基とカルボキシ基の相互作用が、促進される。これにより、ヒドロキシ基とカルボキシ基の配向に応じて、水分がその間に入りやすくなるため、トナー粒子に吸着した水分がトナー粒子により保持され易くなる。そのため、本発明のトナーは、低温低湿環境下で長期間放置された後においても、かぶりが抑制された良好な画像を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】水分量測定例における加熱時間[分]と1分間当たりの水分変化量[質量%]の関係を示すグラフ
【
図2】水分量測定例における加熱時間[分]と1分間当たりの水分量[質量%]の関係を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の静電荷像現像用トナーは、ポリエステルを少なくとも含有するトナー粒子を含む静電荷像現像用トナーであって、前記トナー粒子が、前記ポリエステルとして、非晶性ポリエステルを少なくとも含有し、前記ポリエステルにおける全アルコール由来の構造単位100モル%に対するビスフェノールA誘導体由来の構造単位の含有率が、10モル%以下であり、温度10℃・湿度20%RHの環境下で24時間放置したときの、前記トナー粒子の全体の質量に対する外部及び内部に存在する水分の質量である全体水分量が、0.4質量%以上であることを特徴とする。この特徴は、下記実施形態に共通する又は対応する技術的特徴である。
【0028】
本発明の静電荷像現像用トナーの実施形態としては、前記トナー粒子が、前記ポリエステルとして、結晶性ポリエステルを含有し、前記結晶性ポリエステルが、炭素数6~14の脂肪族ジカルボン酸と炭素数6~14の脂肪族ジオールとの重縮合体であることが好ましい。これにより、トナーの耐熱保管性を確保しつつ、低温定着性を良好にでき、さらに、帯電量の立ち上がりも良好にできる。
【0029】
本発明の静電荷像現像用トナーの実施形態としては、前記非晶性ポリエステルが、炭素数5以上の脂肪族多価アルコールに由来する構造単位を有することが好ましい。当該構造単位は分子運動の自由度が大きいため、当該構造単位を有することによって、非晶性ポリエステルの分子内において電荷の移動が容易となる。そのため、非晶性ポリエステルが炭素数5以上の脂肪族多価アルコールに由来する構造単位を有することによって、トナーのかぶりをより抑制できる。
【0030】
本発明の静電荷像現像用トナーの実施形態としては、前記トナー粒子が、融点Tmが70℃以上91℃以下の離型剤を含有することが好ましい。これにより、低温定着性及び耐熱保管性を両立しやすくなる。
【0031】
本発明の静電荷像現像用トナーの実施形態としては、前記トナー粒子が、個数平均粒子径が90nm以上130nm以下のシリカ粒子を、外添剤として有することが好ましい。これにより、トナーの耐熱保管性を良好にしやすくなる。
【0032】
本発明の静電荷像現像用トナーの実施形態としては、前記トナー粒子が、チタン酸ストロンチウム粒子を、外添剤として有することが好ましい。チタン酸ストロンチウム粒子は正帯電性である。そのため、チタン酸ストロンチウム粒子を外添剤として有することによって、チタン酸ストロンチウム粒子がトナー母体粒子の負帯電を促進し、かぶりをより抑制できる。
【0033】
本発明の静電荷像現像用トナーの実施形態としては、温度10℃・湿度20%RHの環境下で24時間放置したときの、前記トナー粒子の全体水分量が、0.8質量%以上であることが好ましい。これにより、低温低湿環境下でもトナーの帯電量の立ち上がりがより良好となり、かぶりをより抑制できる。
【0034】
本発明の静電荷像現像用トナーの実施形態としては、温度10℃・湿度20%RHの環境下で24時間放置したときの、前記トナー粒子の全体の質量に対する内部に存在する水分の質量である内部水分量が、0.3質量%以上であることが好ましい。これにより、低温低湿環境下で長時間使用された場合においても、内部水分が少しずつ外部に拡散される。その水分が電荷の移動を促進するため、トナーの帯電量の立ち上がりがより良好となり、かぶりをより抑制できる。
【0035】
本発明の静電荷像現像用トナーの実施形態としては、温度10℃・湿度20%RHの環境下で24時間放置したときの、前記トナー粒子の全体水分量が、0.6質量%以上であり、内部水分量が、0.5質量%以上であることが好ましい。これにより、トナーの帯電量の立ち上がりがより良好となり、かぶりをより抑制できる。
【0036】
本発明の画像形成方法は、本発明の静電荷像現像用トナーを用いることを特徴とする。
【0037】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0038】
[1.静電荷像現像用トナー]
[1-1.静電荷像現像用トナーの概要]
本発明の静電荷像現像用トナーは、ポリエステルを少なくとも含有するトナー粒子を含む。前記トナー粒子は、前記ポリエステルとして、非晶性ポリエステルを少なくとも含有する。前記ポリエステルにおける全アルコール由来の構造単位100モル%に対するビスフェノールA誘導体由来の構造単位の含有率は、10モル%以下である。温度10℃・湿度20%RHの環境下で24時間放置したときの、前記トナー粒子の全体の質量に対する外部及び内部に存在する水分の質量である全体水分量は、0.4質量%以上である。
【0039】
本発明において、「静電荷像現像用トナー」とは、トナー粒子の集合体のことをいう。以下、「静電荷像現像用トナー」を単に「トナー」ともいう。
【0040】
トナー粒子は、トナー母体粒子のみで構成されてもよく、トナー母体粒子と、トナー母体粒子の表面に付着される外添剤と、で構成されていてもよい。「トナー母体粒子」とは、トナー粒子の母体を構成するものである。トナー母体粒子は、非晶性ポリエステル等の結着樹脂を含有し、その他必要に応じて、着色剤、離型剤(ワックス)、荷電制御剤等を含有し得る。
【0041】
[1-2.ポリエステル]
本発明に係るトナー粒子は、ポリエステルを少なくとも含有する。また、本発明に係るトナー粒子は、前記ポリエステルにおける全アルコール由来の構造単位100モル%に対するビスフェノールA誘導体由来の構造単位の含有率が、10モル%以下であることを特徴とする。
【0042】
従来は、ポリエステルを構成する多価アルコールとして、低温定着性と耐熱保管性の両立の観点から、ビスフェノールA誘導体が好適に用いられてきた。しかしながら、本発明に係るポリエステルは、トナーのかぶりを抑制する観点から、ポリエステルが有する全アルコール由来の構造単位100モル%に対して、ビスフェノールA誘導体由来の構造単位の含有率が、10モル%以下であることを特徴とする。そのため、本発明に係るポリエステルの合成においては、使用する多価アルコール100モル%に対して、使用するビスフェノールA誘導体の量は10モル%以下である。
【0043】
ビスフェノールA誘導体には、ビスフェノールAとその誘導体が含まれる。ビスフェノールA誘導体の例としては、ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0044】
ポリエステルにおけるビスフェノールA誘導体由来の構造単位の含有率は、ポリエステルが有する全アルコール由来の構造単位100モル%に対して、6モル%以下であることが好ましく、0モル%であることが特に好ましい。これによって、トナーのかぶりをより抑制できる。
【0045】
トナー粒子中のポリエステルを構成する成分は、核磁気共鳴(NMR)装置によって分析できる。具体的には、当該成分は、例えば、測定対象となるトナー粒子を重水素溶媒に溶解し、プロトン核磁気共鳴(1H-NMR)装置を用いて分析できる。ポリエステルを構成する各成分の含有量は、以下の方法で求められる。まず、トナー粒子を、濃度既知の内部標準物質と共に分析する。次に濃度既知の分析対象成分(例えば、直鎖状脂肪族ジオール等)と内部標準物質のみを分析する。これらによって得たスペクトルを比較することで、ポリエステルを構成する各成分の含有量を算出できる。
【0046】
(非晶性ポリエステル)
本発明に係るトナー粒子は、前記ポリエステルとして、非晶性ポリエステルを少なくとも含有する。トナーのかぶりを抑制する観点から、非晶性ポリエステルにおける全アルコール由来の構造単位100モル%に対するビスフェノールA誘導体由来の構造単位の含有率は、10モル%以下であることが好ましい。
【0047】
非晶性ポリエステルは、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸)と、2価以上のアルコール(多価アルコール)との重合反応によって得られるポリエステルのうち、非晶性を示すものである。本願において、多価アルコールには、ビスフェノールA誘導体等の多価フェノール類も含まれる。
【0048】
「非晶性」とは、融点を有さないことをいう。換言すると、「非晶性」とは、示差走査熱量測定(DSC)により得られる吸熱曲線において、昇温時に、明確な吸熱ピークを有さないことをいう。「明確な吸熱ピーク」とは、10℃/minの昇温速度で昇温したときの吸熱曲線において半値幅が15℃以内のピークのことをいう。
【0049】
非晶性ポリエステルは、公知のエステル化触媒を利用して、多価カルボン酸及び多価アルコールを重縮合してエステル化することにより、合成できる。
【0050】
非晶性ポリエステルの合成に使用できるビスフェノールA誘導体以外の多価アルコールとしては、例えば、2価又は3価のアルコールとして、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、1,4-ソルビタン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0051】
本発明に係る非晶性ポリエステルは、炭素数5以上の脂肪族多価アルコールに由来する構造単位を有することが好ましい。当該構造単位は分子運動の自由度が大きいため、当該構造単位を有することによって、非晶性ポリエステルの分子内において電荷の移動が容易となる。そのため、非晶性ポリエステルが炭素数5以上の脂肪族多価アルコールに由来する構造単位を有することによって、トナーのかぶりをより抑制できる。
【0052】
上記のため、本発明に係る非晶性ポリエステルの合成においては、炭素数5以上の脂肪族多価アルコールを用いることが好ましい。炭素数5以上の脂肪族多価アルコールとしては、特にネオペンチルグリコールが好ましい。
【0053】
非晶性ポリエステルの合成に使用できる多価カルボン酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、マロン酸、メサコニン酸、イソフタル酸ジメチル、フマル酸、ドデセニルコハク酸、1,10-ドデカンジカルボン酸等を挙げることができる。これらの中では、テレフタル酸、フマル酸、及びドデセニルコハク酸が好ましい。
【0054】
非晶性ポリエステルの合成に使用可能な触媒の例としては、金属含有化合物、亜リン酸化合物、リン酸化合物、アミン化合物等が挙げられる。金属含有化合物が含有する金属の例としては、ナトリウム、リチウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウム等が挙げられる。これらは一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
スズ含有化合物の具体例としては、酸化ジブチルスズ(ジブチル錫オキサイド)、オクチル酸スズ、ジオクチル酸スズ、これらの塩等が挙げられる。
【0056】
チタン含有化合物の例としては、チタンアルコキシド、チタンアシレート、チタンキレート等が挙げられる。チタンアルコキシドの例としては、テトラノルマルブチルチタネート(Ti(O-n-Bu)4)、テトライソプロピルチタネート、テトラメチルチタネート、テトラステアリルチタネート等が挙げられる。チタンアシレートの例としては、ポリヒドロキシチタンステアレート等が挙げられる。チタンキレートの例としては、チタンテトラアセチルアセトナート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネート等が挙げられる。
【0057】
ゲルマニウム含有化合物の例としては、二酸化ゲルマニウム等が挙げられる。
【0058】
アルミニウム含有化合物の例としては、ポリ水酸化アルミニウム、アルミニウムアルコキシド、トリブチルアルミネート等が挙げられる。
【0059】
重合温度は特に限定されいが、150~250℃の範囲内が好ましい。重合時間は特に限定されないが、0.5~10時間の範囲内が好ましい。重合中には、必要に応じて反応系内を減圧にしてもよい。
【0060】
非晶性ポリエステルのガラス転移点Tgは、十分な低温定着性と耐熱保管性を両立する観点からは、25~60℃の範囲内が好ましく、35~55℃の範囲内がより好ましい。当該ガラス転移点Tgは、示差走査熱量測定装置、例えばダイヤモンドDSC(パーキンエルマー社製)を用いて測定できる。
【0061】
非晶性ポリエステルの重量平均分子量Mwは、10000~100000の範囲内とすることができる。当該重量平均分子量Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定できる。
【0062】
非晶性ポリエステルは、非晶性ポリエステル重合セグメントとスチレン-アクリル重合セグメントとのグラフト共重合体構造を有するハイブリッド非晶性ポリエステルであってもよい。
【0063】
非晶性ポリエステルの含有量は、トナー母体粒子が含有する樹脂の全量に対して、50~100質量%の範囲内が好ましく、70~90質量%の範囲内がより好ましい。
【0064】
(結晶性ポリエステル)
本発明に係るトナー粒子は、前記ポリエステルとして、結晶性ポリエステルを含有することが好ましい。これにより、トナーの耐熱保管性を確保しつつ、低温定着性を良好にでき、さらに、帯電量の立ち上がりも良好にできる。
【0065】
結晶性ポリエステルは、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸)と、2価以上のアルコール(多価アルコール)との重合反応によって得られるポリエステルのうち、結晶性を示すものである。
【0066】
「結晶性」とは、融点を有することをいう。換言すると、「結晶性」とは、示差走査熱量測定(DSC)により得られる吸熱曲線において、昇温時に、明確な吸熱ピークを有することをいう。「明確な吸熱ピーク」とは、10℃/minの昇温速度で昇温したときの吸熱曲線において半値幅が15℃以内のピークのことをいう。
【0067】
結晶性ポリエステルは、公知のエステル化触媒を利用して、多価カルボン酸及び多価アルコールを重縮合してエステル化することにより製造できる。
【0068】
結晶性ポリエステルの合成に使用できる2価の多価カルボン酸の例としては、飽和脂肪族ジカルボン酸、不飽和脂肪族ジカルボン酸、不飽和芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。飽和脂肪族ジカルボン酸の例としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸(ドデカン二酸)、1,11-ウンデカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸、1,13-トリデカンジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸、1,16-ヘキサデカンジカルボン酸、1,18-オクタデカンジカルボン酸等が挙げられる。不飽和脂肪族ジカルボン酸の例としては、メチレンコハク酸、フマル酸、マレイン酸、3-ヘキセンジオイック酸、3-オクテンジオイック酸、ドデセニルコハク酸等が挙げられる。不飽和芳香族ジカルボン酸の例としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、t-ブチルイソフタル酸、テトラクロロフタル酸、クロロフタル酸、ニトロフタル酸、p-フェニレン二酢酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4′-ビフェニルジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸等が挙げられる。これらのジカルボン酸の低級アルキルエステルや酸無水物を、多価カルボン酸として用いることもできる。
【0069】
結晶性ポリエステルの合成に使用できる3価以上の多価カルボン酸の例としては、トリメリット酸、ピロメリット酸等が挙げられる。
【0070】
結晶性ポリエステルの合成に使用できる2価の多価アルコールの例としては、飽和脂肪族ジオール、不飽和脂肪族ジオール、芳香族ジオール等が挙げられる。飽和脂肪族ジオールの例としては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、1,20-エイコサンジオール、ネオペンチルグリコール等が挙げられる。不飽和脂肪族ジオールの例としては、2-ブテン-1,4-ジオール、3-ブテン-1,4-ジオール、2-ブチン-1,4-ジオール、3-ブチン-1,4-ジオール、9-オクタデセン-7,12-ジオール等が挙げられる。芳香族ジオールの例としては、ビスフェノール類、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。ビスフェノール類の例としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF等が挙げられる。ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物の例としては、ビスフェノール類のエチレンオキサイド付加物、ビスフェノール類のプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。これらのジオールの誘導体を、多価アルコールとして用いることもできる。
【0071】
本発明に係る結晶性ポリエステルは、炭素数6~14の脂肪族ジカルボン酸と炭素数6~14の脂肪族ジオールとの重縮合体であることが好ましい。結晶性ポリエステルを構成する酸とアルコールの炭素数が小さいほど、当該樹脂を含有するトナー粒子は溶融しやすくなり、低温定着性が良くなる。一方で、トナー粒子は、溶融しやすくなり過ぎると、耐熱性が低くなり、例えば現像器中で熱が掛かった状態にて保管された場合などにおいて凝集してしまうことがある。そこで、結晶性ポリエステルを構成する酸とアルコールの炭素数をいずれも6~14とすることで、トナーの耐熱保管性を確保しつつ、低温定着性を良好にできる。また、結晶性ポリエステルを構成する酸とアルコールの炭素数が大きくなると、結晶性ポリエステルの極性が下がり、結晶性ポリエステルがその他の樹脂に対して相溶しづらくなる。そのため、結晶性ポリエステルを構成する酸とアルコールの炭素数が大きくなると、結着樹脂中における結晶性ポリエステルのドメインが大きくなる。一方で、結晶性ポリエステルを構成する酸とアルコールの炭素数が小さくなると、結晶性ポリエステルの極性が上がり、結晶性ポリエステルがその他樹脂との相溶しやすくなる。そのため、結晶性ポリエステルを構成する酸とアルコールの炭素数が小さくなると、結晶性ポリエステルの結着樹脂中の微分散化が進む。結晶性ポリエステルの分散状態が適度であることで、結晶性ポリエステルのドメイン間の距離が近くなる。これによって、トナー粒子において、電荷移動に対する抵抗が下がるため、帯電量が立ち上がりやすくなる。そのため、帯電量の立ち上がりを良好とする分散状態の観点においても、結晶性ポリエステルを構成する酸とアルコールの炭素数は、いずれも6~14の範囲内が好ましい。
【0072】
結晶性ポリエステルの合成には、上述の非晶性ポリエステルの合成に使用可能な触媒を使用できる。
【0073】
重合温度は特に限定されないが、70~250℃の範囲内が好ましい。重合時間は特に限定されないが、0.5~10時間の範囲内が好ましい。重合中には、必要に応じて反応系内を減圧にしてもよい。
【0074】
結晶性ポリエステルは、結晶性ポリエステル重合セグメントとスチレン-アクリル重合セグメントとのグラフト共重合体構造を有するハイブリッド結晶性ポリエステルであってもよい。
【0075】
結晶性ポリエステルの重量平均分子量Mwは、1000~29000の範囲内が好ましい。当該重量平均分子量Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定できる。
【0076】
結晶性ポリエステルの含有量は、トナー母体粒子が含有する樹脂の全量に対して、5~30質量%の範囲内が好ましく、10~20質量%の範囲内がより好ましい。
【0077】
[1-3.ビニル系樹脂]
本発明に係るトナー粒子は、ビニル系樹脂を含有していてもよい。
【0078】
ビニル系樹脂は、ビニル基を有するモノマー(以下、ビニルモノマーという。)の重合体のうち、非晶性を示すものをいう。
【0079】
使用できるビニル系樹脂としては、スチレン・アクリル樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂等が挙げられ、中でも耐熱性に優れるスチレン・アクリル樹脂が好ましい。
【0080】
使用できるビニルモノマーとしては、以下のものが挙げられ、これらのうちの一種を単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。
【0081】
(1)スチレン系モノマー
スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、p-フェニルスチレン、p-エチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-デシルスチレン、p-n-ドデシルスチレン及びこれらの誘導体等のスチレン構造を有するモノマー
(2)(メタ)アクリル酸エステル系モノマー
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル及びこれらの誘導体等の(メタ)アクリル基を有するモノマー
(3)ビニルエステル類
プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等
(4)ビニルエーテル類
ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等
(5)ビニルケトン類
ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトン等
(6)N-ビニル化合物類
N-ビニルカルバゾール、N-ビニルインドール、N-ビニルピロリドン等
(7)その他
ビニルナフタレン、ビニルピリジン等のビニル化合物類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等のアクリル酸、メタクリル酸誘導体等
【0082】
ビニルモノマーとしては、結晶性樹脂との親和性の制御が容易になることから、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基等のイオン性解離基を有するモノマーが好ましい。
【0083】
カルボキシ基を有するモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル等が挙げられる。
【0084】
スルホン酸基を有するモノマーとしては、スチレンスルホン酸、アリルスルホコハク酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸等が挙げられる。
【0085】
リン酸基を有するモノマーとしては、アシドホスホオキシエチルメタクリレート等が挙げられる。
【0086】
ビニルモノマーとして多官能性ビニル類を使用し、架橋構造を有する重合体を得ることもできる。多官能性ビニル類としては、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート等が挙げられる。
【0087】
[1-4.離型剤]
本発明に係るトナー粒子は、離型剤を含有することが好ましい。
【0088】
離型剤としては、特に限定されるものではなく公知の種々のワックスを用いることができる。
【0089】
使用できる離型剤としては、例えば、分枝鎖状炭化水素ワックス、長鎖炭化水素系ワックス、ジアルキルケトン系ワックス、エステル系ワックス、アミド系ワックス等が挙げられる。分枝鎖状炭化水素ワックスとしては、例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等のポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。長鎖炭化水素系ワックスとしては、例えば、パラフィンワックス、サゾールワックス等が挙げられる。ジアルキルケトン系ワックスとしては、例えば、ジステアリルケトン等が挙げられる。エステル系ワックスとしては、例えば、カルナバワックス、モンタンワックス、ベヘン酸ベヘニル、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18-オクタデカンジオールジステアレート、トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエート、ステアリン酸ステアリル等が挙げられる。アミド系ワックスとしては、例えば、エチレンジアミンベヘニルアミド、トリメリット酸トリステアリルアミド等が挙げられる。
【0090】
離型剤の市販品としては、例えば、日本精蝋社製のHNP-0190、HNP-51、FNP-0090、サゾール社製のC80等が挙げられる。
【0091】
これらの離型剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0092】
離型剤の融点Tmは、70℃以上91℃以下が好ましい。融点Tmが91℃以下であることによって、離型剤が定着時にトナー粒子から染み出しやすくなり、画像の表面における離型剤の量が多くなる。これによって、定着部材との分離性が良くなり、低温定着性が良くなる。また、融点Tmが70℃以上であることによって、離型剤が結着樹脂との粘度差の関係で製造時にトナー粒子の表面に配置されにくくなり、トナー粒子の耐熱保管性が良くなる。
【0093】
離型剤の融点Tmは、示差走査熱量測定(DSC)により、例えば以下の手順で求められる。示差走査熱量計「DSC7000X」(HITACHI社製)及び熱分析装置コントローラー「AS3/DX」(HITACHI社製)を用いる。測定試料0.5mgをAIオートサンプラ用試料容器φ6.8 H2.5mm(HITACHI社製)に入れる。これを、AIオートサンプラ用カバー(HITACHI社製)を用いて封入する。これを、「AS3/DX」のサンプルホルダーにセットする。測定条件は、測定温度0~200℃、昇温速度10℃/分、降温速度10℃/分とする。Heat-cool-Heatの温度制御を行い、その1st.Heatにおけるデータを解析する。リファレンスの測定には空のアルミニウム製パンを使用する。1st.Heatにおける結晶性樹脂由来の吸熱ピークのピークトップ温度を融点Tmとする。吸熱ピークが複数検出された場合は、吸熱ピークの内一番高温側のピークのピークトップ温度を離型剤Tmの融点とする。
【0094】
離型剤の含有量は、トナー母体粒子が含有する樹脂の全量に対して、通常1~30質量%の範囲内とすることができ、好ましくは5~20質量%の範囲内である。離型剤の含有量が上記範囲内であることにより、十分な定着分離性が得られる。
【0095】
[1-5.着色剤]
本発明に係るトナー粒子は、着色剤を含有し得る。
【0096】
着色剤には、公知の無機着色剤又は有機着色剤を使用できる。着色剤としては、カーボンブラック、磁性粉、有機顔料、無機顔料、染料等を使用できる。
【0097】
着色剤の含有量は、トナー粒子に対して、好ましくは1~30質量%、より好ましくは2~20質量%である。
【0098】
[1-6.荷電制御剤]
本発明に係るトナー粒子は、荷電制御剤を含有し得る。
【0099】
荷電制御剤としては、ニグロシン系染料、ナフテン酸の金属塩、高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、第4級アンモニウム塩、アゾ系金属錯体、サリチル酸金属塩等の公知の化合物を用いることができる。荷電制御剤を用いることにより、帯電性に優れたトナーを得ることができる。
【0100】
荷電制御剤の含有量は、トナー母体粒子が含有する樹脂の全量に対して、通常0.1~5.0質量%の範囲内とすることができる。
【0101】
[1-7.外添剤]
本発明のトナー粒子は、外添剤を有することが好ましい。
【0102】
外添剤の例としては、無機酸化物微粒子、無機ステアリン酸化合物微粒子、無機チタン酸化合物微粒子、ジルコニア粒子等が挙げられる。外添剤は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0103】
無機酸化物微粒子の例としては、シリカ粒子、アルミナ微粒子、酸化チタン微粒子、酸化亜鉛粒子、酸化クロム粒子、酸化セリウム粒子、酸化アンチモン粒子、酸化タングステン粒子、酸化スズ粒子、酸化テルル粒子、酸化マンガン粒子、酸化ホウ素粒子等が挙げられる。
【0104】
無機ステアリン酸化合物微粒子の例としては、ステアリン酸アルミニウム微粒子、ステアリン酸亜鉛微粒子等が挙げられる。
【0105】
無機チタン酸化合物微粒子の例としては、チタン酸ストロンチウム、チタン酸亜鉛等が挙げられる。
【0106】
外添剤は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0107】
外添剤の添加量は、トナー母体粒子の全量に対して0.05~5質量%の範囲内が好ましく、0.1~3質量%の範囲内がより好ましい。当該添加量は、複数の外添剤を用いる場合は、その合計の添加量である。
【0108】
上記の中でも、本発明のトナー粒子は、外添剤として、シリカ粒子又はチタン酸ストロンチウム粒子を有することが好ましい。
【0109】
(シリカ粒子)
シリカ粒子は、シリカ(SiO2)を主成分とする粒子である。シリカ粒子は、結晶性及び非晶性のいずれであってもよい。シリカ粒子は、水ガラス、アルコキシシラン等のケイ素化合物を原料に製造された粒子であってもよいし、石英を粉砕して得られる粒子であってもよい。
【0110】
シリカ粒子は、例えば、ゾルゲルシリカ粒子、水性コロイダルシリカ粒子、アルコール性シリカ粒子、気相法等により得られるフュームドシリカ粒子、溶融シリカ粒子等でありうる。上記の中でも、シリカ粒子は、ゾルゲルシリカ粒子であることが好ましい。
【0111】
ゾルゲルシリカ粒子は、例えば、次のようにして得られる。アルコール化合物とアンモニア水とを含むアルカリ触媒溶液にテトラアルコキシシラン(TMOS等)を滴下し、テトラアルコキシシランを加水分解及び縮合させゾルゲルシリカ粒子を含む懸濁液を得る。次いで、懸濁液から溶媒を除去し粒状物を得る。次いで、粒状物を乾燥することにより、ゾルゲルシリカ粒子を得る。
【0112】
シリカ粒子は、疎水化処理剤により疎水化処理されたシリカ粒子であってもよい。疎水化処理剤としては、例えば、アルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等)を有する公知の有機珪素化合物が挙げられる。疎水化処理剤の具体例としては、アルコキシシラン化合物、シロキサン化合物、シラザン化合物等が挙げられる。上記の中でも、疎水化処理剤は、シロキサン化合物及びシラザン化合物の少なくとも一方であることが好ましい。シロキサン化合物としては、例えば、シリコーンオイル、シリコーン樹脂等が挙げられる。シリコーンオイルは、ジメチルシリコーンオイルが好ましい。シラザン化合物としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン、テトラメチルジシラザン等が挙げられる。シラザン化合物は、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)が好ましい。疎水化処理剤は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。
【0113】
シリカ粒子の表面に付着するシラザン化合物等の疎水化処理剤の表面付着量は、シリカ粒子の疎水化度を向上させる観点から、シリカ粒子に対して、0.01~5質量%の範囲内が好ましく、0.05~3質量%の範囲内がより好ましく、0.10~2質量%の範囲内が更に好ましい。
【0114】
シリカ粒子を疎水化処理剤による疎水化処理する方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
[1]超臨界二酸化炭素中に疎水化処理剤を溶解させて、これをシリカ粒子表面に付与(する方法。
[2]大気中において、疎水化処理剤を含む溶液をシリカ粒子表面に付与(例えば噴霧、塗布)する方法。
[3]大気中において、シリカ粒子分散液に、疎水化処理剤を含む溶液を添加して保持した後、当該混合液を乾燥させる方法。
【0115】
シリカ粒子の個数平均粒子径は、90nm以上130nm以下であることが好ましい。個数平均粒子径が90nm以上であることによって、当該シリカ粒子が、他のトナー粒子とのスペーサー効果を発揮しやすくなる。これにより、トナー母体粒子の溶融性が高い場合においても、トナー粒子同士の合一凝集が発生しづらくなり、耐熱保管性が良くなる。個数平均粒子径が130nm以下であることによって、当該シリカ粒子がトナー母体粒子から脱離しにくくなり、トナー母体粒子が露出することによる耐熱保管性の低下を抑制できる。
【0116】
シリカ粒子の個数平均粒子径は、以下の手順で求められる。
(1)トナー粒子をメタノールに分散させ、室温(23℃)にて撹拌後、超音波バスにて処理し、トナー母体粒子から外添剤を分離する。遠心分離により、トナー母体粒子を沈降させ、外添剤が分散した分散液を回収する。分散液からメタノールを留去し、外添剤を取り出す。
(2)体積平均粒子径100μmの樹脂粒子(ポリエステル、重量平均分子量Mw=50000)に、取り出した外添剤を、分散させる。
(3)外添剤が分散された樹脂粒子を、エネルギー分散型X線分析装置(EDX装置、堀場製作所社製、EMAX Evolution X-Max80mm2)を取り付けた走査型電子顕微鏡(SEM、日立ハイテクノロジーズ社製、S-4800)を用いて、倍率4万倍で画像を撮影する。この際、EDX分析によって、Siの存在に基づき、一視野内からシリカの一次粒子を300個以上特定する。SEM観察は、加速電圧15kV、エミッション電流20μA、WD15mmとする。EDX分析は、同条件で、検出時間60分とする。
(4)得られた画像を、画像解析装置(LUZEXIII、ニレコ社製)に取り込む。取り込んだ画像の解析により、各粒子の面積を求める。
(5)この測定された面積値から、シリカ粒子の粒子径を円相当径として求める。
(6)円相当径が80nm以上のシリカ粒子を100個選別する。
(7)選別されたシリカ粒子の粒子径から、個数平均粒子径を算出する。
【0117】
(チタン酸ストロンチウム粒子)
チタン酸ストロンチウム粒子は、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)を主成分とする粒子である。チタン酸ストロンチウム粒子は正帯電性である。そのため、チタン酸ストロンチウム粒子を外添剤として有することによって、チタン酸ストロンチウム粒子がトナー母体粒子の負帯電を促進し、かぶりを抑制できる。
【0118】
チタン酸ストロンチウム粒子の個数平均一次粒子径は、30~100nmが好ましく、30~80nm以下がより好ましく、30~60nm以下が更に好ましい。チタン酸ストロンチウム粒子は、個数平均一次粒子径が30nm以上であることで、トナー母体粒子への埋没が抑制される。チタン酸ストロンチウム粒子は、個数平均一次粒子径が100nm以下であることで、トナー母体粒子に対する表面被覆量を高め易い。
【0119】
チタン酸ストロンチウム粒子の個数平均一次粒子径は、上述のシリカ粒子の個数平均粒子径と同様に測定できる。なお、EDX分析においては、Ti及びSrの存在に基づき、一視野内からチタン酸ストロンチウムの一次粒子を300個以上特定する。
【0120】
チタン酸ストロンチウム粒子は、丸みを帯びた形状であることが好ましい。例えば、チタン酸ストロンチウム粒子の平均円形度は、0.82~0.94が好ましく、0.84~0.94がより好ましく、0.86~0.92が更に好ましい。チタン酸ストロンチウム粒子は、平均円形度が0.82以上であることで、トナー母体粒子への分散性が高め易い。チタン酸ストロンチウム粒子は、平均円形度が0.94以下であることで、トナー母体粒子の表面における移動性が落ち、表面の均一分散性を高め易い。
【0121】
チタン酸ストロンチウム粒子のX線回折法により得られる(110)面のピークの半値幅は、0.2~2.0°が好ましい。当該(110)面のピークは、回折角度2θ=32°付近に現れるピークである。このピークは、ペロブスカイト結晶の(110)面のピークに相当する。粒子形状が立方体又は直方体であるチタン酸ストロンチウム粒子は、ペロブスカイト結晶の結晶性が高く、(110)面のピークの半値幅は通常0.2°未満である。例えば、チタン工業社製のSW-350(主たる粒子形状が立方体であるチタン酸ストロンチウム粒子)の(110)面のピークの半値幅は、0.15°である。一方、丸みを帯びた形状のチタン酸ストロンチウム粒子は、ペロブスカイト結晶の結晶性が相対的に低く、(110)面のピークの半値幅が拡がる。
【0122】
チタン酸ストロンチウム粒子のX線回折は、X線回折装置(例えば、リガク社製、商品名RINT Ultima-III)を用いて行う。測定の設定は、線源:CuKα、電圧:40kV、電流:40mA、試料回転速度:回転なし、発散スリット:1.00mm、発散縦制限スリット:10mm、散乱スリット:開放、受光スリット:開放、走査モード:FT、計数時間:2.0秒、ステップ幅:0.0050°、操作軸:10.0000°~70.0000°とする。本開示においてX線回折パターンにおけるピークの半値幅は、半値全幅(full width at half maximum)である。
【0123】
チタン酸ストロンチウム粒子は、チタン及びストロンチウム以外の金属元素(以下、ドーパントともいう。)を含有することが好ましい。チタン酸ストロンチウム粒子は、ドーパントを含有することにより、ペロブスカイト構造の結晶性が下がり、丸みを帯びた形状となる。
【0124】
チタン酸ストロンチウム粒子が含有するドーパントは、チタン及びストロンチウム以外の金属元素であれば、特に制限されない。当該ドーパントは、それをイオン化したときに、チタン酸ストロンチウム粒子を構成する結晶構造に入り得るイオン半径となる金属元素が好ましい。この観点から、当該ドーパントは、イオン化したときのイオン半径が40pm以上200pm以下である金属元素が好ましく、イオン化したときのイオン半径が60pm以上150pm以下である金属元素がより好ましい。
【0125】
当該ドーパントの例としては、ランタノイド、シリカ、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、パラジウム、インジウム、アンチモン、タンタル、タングステン、レニウム、イリジウム、白金、ビスマス、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、銀、錫等が挙げられる。ランタノイドとしては、ランタン又はセリウムが好ましい。これらの中でも、ドープしやすくチタン酸ストロンチウム粒子の形状制御がしやすい観点から、ランタンが好ましい。
【0126】
当該ドーパントとしては、チタン酸ストロンチウム粒子を過度に負帯電させない観点から、電気陰性度が2.0以下の金属元素が好ましく、電気陰性度が1.3以下の金属元素がより好ましい。この電気陰性度は、オールレッド・ロコウの電気陰性度である。
【0127】
電気陰性度が2.0以下の金属元素として好適なものは、ランタン(1.08)、マグネシウム(1.23)、アルミニウム(1.47)、シリカ(1.74)、カルシウム(1.04)、バナジウム(1.45)、クロム(1.56)、マンガン(1.60)、鉄(1.64)、コバルト(1.70)、ニッケル(1.75)、銅(1.75)、亜鉛(1.66)、ガリウム(1.82)、イットリウム(1.11)、ジルコニウム(1.22)、ニオブ(1.23)、銀(1.42)、インジウム(1.49)、錫(1.72)、バリウム(0.97)、タンタル(1.33)、レニウム(1.46)、セリウム(1.06)等である。括弧内の数値は電気陰性度である。
【0128】
チタン酸ストロンチウム粒子におけるドーパントの量は、ストロンチウムの量に対して、0.1~20モル%が好ましく、0.1~15モル%がより好ましく、0.1~10モル%が更に好ましい。これによって、チタン酸ストロンチウム粒子をペロブスカイト型の結晶構造を有しながら丸みを帯びた形状しやすくなる。
【0129】
チタン酸ストロンチウム粒子の含水率は、1.5~10質量%が好ましく、2~5質量%がより好ましい。これによって、チタン酸ストロンチウム粒子の抵抗が適度な範囲となり、かぶりがより抑制される。
【0130】
チタン酸ストロンチウム粒子の含水率は、チタン酸ストロンチウム粒子を湿式製法により製造し、乾燥処理の条件(温度及び時間)を調整することにより、調整できる。チタン酸ストロンチウム粒子の表面を疎水化処理する場合には、その疎水化処理後の乾燥処理の条件を調整することにより、チタン酸ストロンチウム粒子の含水率を調整してもよい。
【0131】
チタン酸ストロンチウム粒子の含水率は、次のように測定する。
測定試料20mgを、温度22℃/相対湿度55%のチャンバーにて、17時間静置し、調湿する。その後、測定試料を、熱天秤(島津製作所製TGA-50型)を用いて、チッ素ガス雰囲気中にて、30℃から250℃まで30℃/分の温度上昇速度で加熱する。これにより、加熱によって失われた測定試料の質量[mg]を測定する。
以下の式にて、含水率を算出する。
含水率[質量%]=A/B×100
A:加熱によって失われた測定試料の質量[mg]
B:調湿後加熱前の測定試料の質量[mg]
【0132】
チタン酸ストロンチウム粒子は、当該粒子の作用を良化する観点から、疎水化処理された表面を有することが好ましく、ケイ素含有有機化合物により疎水化処理された表面を有することがより好ましい。
【0133】
ケイ素含有有機化合物としては、アルコキシシラン化合物、シラザン化合物、シリコーンオイル等が挙げられる。中でも、ケイ素含有有機化合物は、アルコキシシラン化合物及びシリコーンオイルからなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。
【0134】
ケイ素含有有機化合物の量(疎水化処理量)は、チタン酸ストロンチウム粒子の全量に対して、1~50質量%が好ましく、5~40質量%がより好ましく、5~30質量%がより好ましく、10~25質量%がより好ましい。疎水化処理量が1質量%以上であると、高温高湿下においてもトナーの帯電量が確保でき、カブリの発生を抑制し易い。疎水化処理量が50質量%以下であると、低温低湿下においてもトナーの飽和帯電量が大きくなり過ぎず、カブリの発生を抑制し易い。疎水化処理量が30質量%以下であると、この疎水化処理された表面に起因する凝集体の発生を抑制し易い。
【0135】
チタン酸ストロンチウム粒子の疎水化処理された表面は、当該粒子の作用を良化する観点から、蛍光X線分析の定性・定量分析から算出されるケイ素(Si)とストロンチウム(Sr)との質量比(Si/Sr)が、0.025~0.25であることが好ましく、0.05~0.20がより好ましい。
【0136】
チタン酸ストロンチウム粒子の疎水化処理表面の蛍光X線分析は、以下の方法で行われる。
蛍光X線解析装置(島津製作所社製、XRF1500)を用いて、X線出力:40V、70mA、測定面積:10mmφ、測定時間:15分の条件で、定性及び定量分析を実施する。ここで、分析する元素は、酸素(O)、ケイ素(Si)、チタン(Ti)、ストロンチウム(Sr)、並びに、チタン及びストロンチウム以外の金属元素(Me)とする。測定された各元素の総計から、別途に作成した各元素を定量可能な検量線データ等を参照して、各々の各元素の質量比(%)を算出する。
得られたケイ素(Si)質量比の値とストロンチウム(Sr)の質量比の値を基に、質量比(Si/Sr)を算出する。
【0137】
チタン酸ストロンチウム粒子は、トナーの帯電性を良化しカブリの発生をより抑制する観点から、体積固有抵抗率R1(Ω・cm)が、常用対数値logR1にて、11~14が好ましく、11~13がより好ましく、12~13が更に好ましい。
【0138】
チタン酸ストロンチウム粒子の体積固有抵抗率R1は、次のように測定する。
エレクトロメーター(KEYTHLEY社製、KEITHLEY610C)と高圧電源(FLUKE社製、FLUKE415B)とに接続された一対の20cm2の円形極板(鋼製)である測定治具を用いる。測定治具の下部極板上に、チタン酸ストロンチウム粒子を、厚さ1~2mmの平坦な層を形成するように入れる。形成されたチタン酸ストロンチウム粒子層を、22℃、55%RHにて24時間調湿する。22℃、55%RHの環境下で、調湿したチタン酸ストロンチウム粒子層上に上部極板を配置し、チタン酸ストロンチウム粒子層内の空隙を除くために上部極板上に4kgの重しを乗せる。その状態でチタン酸ストロンチウム粒子層の厚さを測定する。次いで、両極板に1000Vの電圧を印加して電流値を測定し、下記式(1)から体積固有抵抗率R1を算出する。
体積固有抵抗率R1[Ω・cm]=V×S/{(A1-A0)d}
V:印加電圧[V](1000V)
S:極板面積[cm2](20cm2)
A1:測定電流値[A]
A0:印加電圧0Vのときの初期電流値[A]
d:チタン酸ストロンチウム粒子層の厚さ[cm]
【0139】
チタン酸ストロンチウム粒子の体積固有抵抗率R1は、例えば、以下の要素によって制御しうる。
[1]疎水化処理される前のチタン酸ストロンチウム粒子の体積固有抵抗率R2(R2は、含水率、ドーパントの種類、ドーパント量等により変化する。)
[2]疎水化処理剤の種類
[3]疎水化処理量
[4]疎水化処理後の乾燥温度及び乾燥時間
【0140】
体積固有抵抗率R1は、疎水化処理される前のチタン酸ストロンチウム粒子の含水率、及び疎水化処理量の少なくとも一方により制御されることが好ましい。
【0141】
疎水化処理される前のチタン酸ストロンチウム粒子の体積固有抵抗率R2は、常用対数値logR2にて、6~10が好ましく、7~9がより好ましい。つまり、チタン酸ストロンチウム粒子は、内部が低抵抗であり、表面が疎水化処理によって高抵抗であることが好ましい。これによって、トナーの帯電性が良化する。
【0142】
チタン酸ストロンチウム粒子において、体積固有抵抗率R1の常用対数値logR1と体積固有抵抗率R2の常用対数値logR2との差(logR1-logR2)は、2~7が好ましく、3~5がより好ましい。これによって、トナーの帯電性を良化し、画像濃度を確保できる。
【0143】
疎水化処理表面が形成される前のチタン酸ストロンチウム粒子の体積固有抵抗率R2は、例えば、チタン酸ストロンチウム粒子の含水率、ドーパントの種類、ドーパント量等によって制御しうる。
【0144】
疎水化処理される前のチタン酸ストロンチウム粒子の体積固有抵抗率R2は、体積固有抵抗率R1と同様の方法にて測定される。
【0145】
チタン酸ストロンチウム粒子の外添量は、トナー粒子の全量に対して、0.1~5質量%が好ましく、0.5~3質量%がより好ましく、0.7~2質量%が更に好ましい。
【0146】
(チタン酸ストロンチウム粒子の製造方法)
チタン酸ストロンチウム粒子は、例えば湿式製法により製造できる。湿式製法では、例えば、酸化チタン源とストロンチウム源との混合液にアルカリ水溶液を添加しながら反応させ、次いで酸処理を行うことで、チタン酸ストロンチウム粒子を製造できる。湿式製法においては、酸化チタン源とストロンチウム源の混合割合、反応初期の酸化チタン源濃度、アルカリ水溶液を添加するときの温度、アルカリ水溶液の添加速度等によって、チタン酸ストロンチウム粒子の粒子径を制御できる。
【0147】
酸化チタン源としては、チタン化合物の加水分解物の鉱酸解膠品が好ましい。ストロンチウム源の例としては、硝酸ストロンチウム、塩化ストロンチウム等が挙げられる。
【0148】
酸化チタン源とストロンチウム源の混合割合は、SrO/TiO2モル比で0.9~1.4が好ましく、1.05~1.20がより好ましい。反応初期の酸化チタン源濃度は、TiO2として0.05~1.3モル/Lが好ましく、0.5~1.0モル/Lがより好ましい。
【0149】
チタン酸ストロンチウム粒子の形状を、立方体又は直方体ではなく、丸みを帯びた形状にする観点から、酸化チタン源とストロンチウム源との混合液にドーパント源を添加することが好ましい。ドーパント源としては、チタン及びストロンチウム以外の金属の酸化物が挙げられる。ドーパント源としての金属酸化物は、例えば、硝酸、塩酸又は硫酸に溶解した溶液として添加する。ドーパント源の添加量は、ストロンチウム源に含まれるストロンチウム100モルに対して、ドーパント源に含まれる金属が0.1~20モルとなる量が好ましく、0.5~10モルとなる量がより好ましい。
【0150】
アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。アルカリ水溶液を添加するときの反応液の温度は、高いほど結晶性の良好なチタン酸ストロンチウム粒子が得られる。アルカリ水溶液を添加するときの反応液の温度は、ペロブスカイト型の結晶構造を有しながら丸みを帯びた形状とする観点から、60~100℃が好ましい。アルカリ水溶液の添加速度は、添加速度が遅いほど大きな粒子径のチタン酸ストロンチウム粒子が得られ、添加速度が速いほど小さな粒子径のチタン酸ストロンチウム粒子が得られる。アルカリ水溶液の添加速度は、仕込み原料に対し例えば0.001~1.2当量/hであり、0.002~1.1当量/hが適切である。
【0151】
アルカリ水溶液を添加した後、未反応のストロンチウム源を取り除く目的で酸処理を行う。酸処理は、例えば塩酸を用いて、反応液のpHを2.5~7.0、より好ましくは4.5~6.0に調整する。酸処理後、反応液を固液分離し、固形分を乾燥処理してチタン酸ストロンチウム粒子が得られる。
【0152】
チタン酸ストロンチウム粒子の表面処理は、例えば、以下の手順で行われる。まず、疎水化処理剤であるケイ素含有有機化合物と溶媒とを混合してなる処理液を調製する。次いで、この処理液の撹拌下、チタン酸ストロンチウム粒子と処理液とを混合し、さらに撹拌を続ける。これにより、チタン酸ストロンチウム粒子の表面処理を行える。表面処理後は、処理液の溶媒を除去する目的で、乾燥処理を行うことが好ましい。
【0153】
チタン酸ストロンチウム粒子の表面処理に用いるケイ素含有有機化合物の例としては、アルコキシシラン化合物、シラザン化合物、シリコーンオイル等が挙げられる。
【0154】
チタン酸ストロンチウム粒子の表面処理に用いるアルコキシシラン化合物の例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、n-オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、o-メチルフェニルトリメトキシシラン、p-メチルフェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン等が挙げられる。
【0155】
チタン酸ストロンチウム粒子の表面処理に用いるシラザン化合物の例としては、ジメチルジシラザン、トリメチルジシラザン、テトラメチルジシラザン、ペンタメチルジシラザン、ヘキサメチルジシラザン等が挙げられる。
【0156】
チタン酸ストロンチウム粒子の表面処理に用いるシリコーンオイルの例としては、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、フェニルメチルポリシロキサン、アミノ変性ポリシロキサン、エポキシ変性ポリシロキサン、カルボキシル変性ポリシロキサン、カルビノール変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン、メタクリル変性ポリシロキサン、メルカプト変性ポリシロキサン、フェノール変性ポリシロキサン等が挙げられる。
【0157】
前記処理液の調製に用いる溶媒は、ケイ素含有有機化合物がアルコキシシラン化合物又はシラザン化合物である場合は、アルコールが好ましい。当該アルコールの例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等が挙げられる。前記処理液の調製に用いる溶媒は、ケイ素含有有機化合物がシリコーンオイルである場合は、炭化水素類が好ましい。当該炭化水素類の例としては、ベンゼン、トルエン、ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン等が挙げられる。
【0158】
前記処理液において、ケイ素含有有機化合物の濃度は、1~50質量%が好ましく、5~40質量%がより好ましく、10~30質量%が更に好ましい。
【0159】
表面処理に用いるケイ素含有有機化合物の量は、チタン酸ストロンチウム粒子100質量部に対して、1~50質量部が好ましく、5~40質量部がより好ましく、5~30質量部が更に好ましい。
【0160】
[1-8.トナー粒子の水分量]
本発明に係るトナー粒子は、温度10℃・湿度20%RHの環境下で24時間放置したときの全体水分量が、0.4質量%以上であることを特徴とする。当該全体水分量は、0.8質量%以上であることが好ましい。
【0161】
「全体水分量」とは、トナー粒子の全体の質量に対する、トナー粒子の外部及び内部に存在する水分の質量のことをいう。
【0162】
温度10℃・湿度20%RHの環境下における全体水分量を高くすることで、低温低湿環境下でもトナーの帯電量の立ち上がりが良好となり、かぶりを抑制できる。
【0163】
本発明に係るトナー粒子は、温度10℃・湿度20%RHの環境下で24時間放置したときの内部水分量が、0.3質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることが好ましい。
【0164】
「内部水分量」とは、トナー粒子の全体の質量に対する、トナー粒子の内部に存在する水分の質量のことをいう。
【0165】
温度10℃・湿度20%RHの環境下における内部水分量を高くすることによって、低温低湿環境下で長時間使用された場合においても、内部水分が少しずつ外部に拡散される。その水分が電荷の移動を促進するため、トナーの帯電量の立ち上がりが良好となり、かぶりを抑制できる。
【0166】
本発明のトナーは、温度10℃・湿度20%RHの環境下で24時間放置したときの、前記トナー粒子の全体水分量が、0.6質量%以上であり、内部水分量が、0.5質量%以上であることが、特に好ましい。
【0167】
全体水分量及び内部水分量の測定方法は、以下のとおりである。
【0168】
全体水分量及び内部水分量は、JIS K 0068:2001における「a)カールフィッシャー滴定法」の「2)電量滴定法」に準じて測定する。
【0169】
測定装置は限定されないが、例えば微量水分測定装置(MOICO-A19、HIRANUMA社製)を使用できる。
【0170】
温度10℃・湿度20%RHの環境下で24時間放置したトナー粒子〔0.5g〕を、装置専用のサンプル瓶に精密に秤量する。トナー粒子を入れたサンプル瓶を、アルミホイルと装置専用サンプル瓶蓋を用いて密栓する。密栓したサンプル瓶内の空気中に存在する水分を補正用の測定するために、密栓した空のサンプルを同時に2本測定する。
【0171】
以下の測定条件(1)で、試料を加熱し、水分量[質量%]を測定する。
【0172】
測定条件(1)
試料加熱温度:110℃
試料加熱時間:終点を超えた状態を25秒間保持したら測定終了。終点とは、滴定セル内に存在するヨウ素の量が一定になる電位であり、最初から装置に設定されている。
窒素ガス流量:150mL/分
試薬:HYDRANAL(登録商標)-Coulomat CG-K
HYDRANAL(登録商標)-Coulomat AK
【0173】
上記の測定条件(1)による測定で得られた水分量[質量%]を、トナー粒子の全体水分量[質量%]とする。
【0174】
測定条件(1)から試料加熱温度と窒素ガス流量を変更した以下の測定条件(2)で、試料を加熱し、水分量[質量%]を測定する。
【0175】
試料加熱温度:30℃
試料加熱時間:終点を超えた状態を25秒間保持したら測定終了。終点とは、滴定セル内に存在するヨウ素の量が一定になる電位であり、最初から装置に設定されている。
窒素ガス流量:120mL/分
試薬:HYDRANAL(登録商標)-Coulomat CG-K
HYDRANAL(登録商標)-Coulomat AK
【0176】
上記の測定条件(2)による測定で得た加熱時間[分]と水分量[質量%]のデータから、表Iに示すように、1分間当たりの水分変化量[質量%]を算出する。
【0177】
【0178】
1分間当たりの水分変化量[質量%]が一定になり始めるまでの加熱時間[分]を、外部水分量時間と定義する。ここでの「一定」とは、「水分変化量の変化割合[%]」が5%以下である状態が連続して4点以上続いた状態のことをいう。「水分変化量の変化割合[%]」とは、一つ前の「1分間当たりの水分変化量[質量%]」とそのときの「1分間当たりの水分変化量[質量%]」の変化割合[%]のことをいう。
【0179】
例えば加熱時間10分における「水分変化量の変化割合[%]」は、加熱時間9分の「1分間当たりの水分変化量(0.0175質量%)」と加熱時間10分の「1分間当たりの水分変化量(0.0172質量%)」の変化割合[%]である。そのため、加熱時間10分における「水分変化量の変化割合[%]」は、以下のとおり1.714%と求められる。
(0.0175質量%-0.0172質量%)/0.0175質量%×100=1.714%
【0180】
表Iに例示する測定結果の場合、加熱時間13分から、1分間当たりの水分変化量[質量%]が一定になり始めているとみなせる。そのため、外部水分量時間は、12分である。
【0181】
外部水分量時間における水分量[質量%]を、トナー粒子の「外部水分量[質量%]」とする。表Iに例示する測定結果の場合、外部水分量は0.65質量%である。
【0182】
全体水分量[質量%]と外部水分量[質量%]の差を、内部水分量[質量%]とする。
【0183】
外部水分量がほぼ0質量%の場合、測定条件(2)の30℃での加熱では、測定初期での水分量変化が少ないため、すぐに測定が終了してしまう。その場合、測定条件(1)の110℃での加熱による測定における水分量[質量%]を、内部水分量[質量%]とみなす。
【0184】
図1は、表Iに例示した測定結果を、横軸を加熱時間[分]に、縦軸を1分間当たりの水分変化量[質量%]にして、グラフにしたものである。
【0185】
図2は、表Iに例示した測定結果を、横軸を加熱時間[分]に、縦軸を水分量[質量%]にして、グラフにしたものである。
【0186】
[2.トナーの製造方法]
トナーは、トナー母体粒子を製造し、必要に応じてこれに外添剤を添加することで、製造できる。
【0187】
トナー母体粒子の製造方法の例としては、混練粉砕法、懸濁重合法、乳化凝集法、溶解懸濁法、ポリエステル伸長法、分散重合法等が挙げられる。
【0188】
これらの中でも、高画質化、高安定性に有利となる粒子径の均一性、形状の制御性、コア・シェル構造形成の容易性等の観点より、乳化凝集法が好ましい。
【0189】
乳化凝集法は、例えば以下の手順で行う。界面活性剤や分散安定剤によって樹脂粒子が分散された分散液を、着色剤粒子等の分散液と混合する。この系に、凝集剤を添加し、所望の粒子径となるまで凝集させる。その後又は凝集と同時に、樹脂粒子間の融着を行い、形状制御を行うことにより、トナー母体粒子を製造する。樹脂粒子を、離型剤、荷電制御剤等の内添剤を含有したものとしてもよい。樹脂粒子を、組成の異なる樹脂により構成される2層以上の複数層で形成された複合粒子としてもよい。
【0190】
凝集時に、異種の樹脂粒子を添加し、コア・シェル構造のトナー母体粒子とすることも、トナー構造設計の観点から好ましい。
【0191】
樹脂粒子は、例えば、乳化重合法、ミニエマルション重合法、転相乳化法等により製造できる。樹脂粒子に内添剤を含有させる場合、樹脂粒子は、ミニエマルション重合法により製造することが好ましい。
【0192】
トナー母体粒子の乾燥工程においては、トナー粒子の水分量を上述のとおりにするために、乾燥条件を必要に応じて調整する。例えば、トナー母体粒子が過乾燥となってしまわないように、換言すると、ある程度の水分がトナー母体粒子に残るように、乾燥条件を調整する。
【0193】
トナー母体粒子の乾燥方法は特に制限されないが、生産性の観点から、凍結乾燥、フラッシュジェット乾燥、振動型流動乾燥等が好ましい。この中でも、フラッシュジェット乾燥がより好ましい。
【0194】
フラッシュジェット乾燥でトナー母体粒子が過乾燥にならないようにする条件として、例えば、以下の方法が挙げられる。
[1]吹き込む気体の温度(入口温度)を上げる。
[2]排出される気体の温度(出口温度)を下げる。
[3]吹き込む気体と排出される気体の温度差を変えずに、両方の温度を下げる。
[4]吹込み風量を上げる。
【0195】
トナー母体粒子への外添剤の添加方法の好適な例としては、乾燥されたトナー母体粒子に外添剤を粉体で添加する乾式法が挙げられる。混合装置の例としては、ヘンシェルミキサー、コーヒーミル等の機械式の混合装置が挙げられる。
【0196】
[3.現像剤]
本発明のトナーは、単独で磁性又は非磁性の一成分現像剤として使用してもよく、キャリア粒子と混合して二成分現像剤として使用してもよい。
【0197】
キャリア粒子としては、例えば、従来公知の材料からなる磁性粒子を用いることができる。磁性粒子の例として、鉄、フェライト、マグネタイト等の金属、それらの金属とアルミニウム、鉛等の金属との合金等が挙げられる。キャリア粒子は、特にフェライト粒子が好ましい。
【0198】
キャリア粒子として、磁性粒子の表面を樹脂等の被覆剤で被覆した被覆型キャリア粒子や、バインダー樹脂中に磁性体微粉末を分散した分散型キャリア粒子を用いてもよい。キャリア粒子は、感光体へのキャリア粒子の付着を抑制する観点から、被覆型キャリア粒子が好ましい。
【0199】
キャリア粒子の体積基準のメジアン径は、20~100μmの範囲内が好ましく、25~80μmの範囲内がより好ましい。キャリア粒子の体積基準のメジアン径は、例えば、湿式分散機を備えたレーザー回折式粒度分布測定装置(HELOS、SYMPATEC社)で測定できる。
【0200】
キャリア粒子は、上述のトナー粒子に適量混合すればよい。当該混合に用いられる混合装置の例には、ナウターミキサー、W型混合機、V型混合機等が含まれる。
【0201】
[4.画像形成方法]
本発明の画像形成方法は、上述の本発明のトナーを用いることを特徴とする。具体的には、本発明の画像形成方法は、本発明のトナーと、電子写真方式の画像形成装置と、を用いて、実施できる。電子写真方式の画像形成装置には、公知のものを用いることができる。
【実施例0202】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。下記実施例において、特記しない限り、操作は、室温(25℃)で行われた。下記実施例において、特記しない限り、「%」及び「部」は、それぞれ、「質量%」及び「質量部」を意味する。
【0203】
〔非晶性ポリエステルa1の合成〕
下記非晶性ポリエステルのモノマーを、窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を備えた四つ口フラスコに入れ、窒素ガスにより不活性雰囲気下とし、機械攪拌下で170℃に加熱し溶解させた。
【0204】
・多価アルコール
エチレングリコール 112.0質量部
ネオペンチルグリコール 188.0質量部
・多価カルボン酸
テレフタル酸 68.0質量部
フマル酸 4.0質量部
ドデセニルコハク酸 78.0質量部
【0205】
この系に、エステル化触媒としてTi(OBu)4を多価カルボン酸成分全量に対して0.003質量%投入した。次いで、この系を235℃まで昇温して、常圧下(101.3kPa)にて5時間、さらに減圧下(8kPa)にて1時間、反応を行った。次いで、この系を200℃まで冷却し、減圧下(20kPa)にて反応を行った。その後、この系の脱溶剤を行い、非晶性ポリエステルa1を得た。
【0206】
〔非晶性ポリエステル粒子分散液A1の調製〕
得られた非晶性ポリエステルa1〔108質量部〕をメチルエチルケトン〔64質量部〕に入れ、70℃で30分撹拌し、溶解させた。この系に、イオン交換水〔26質量部〕にポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムを濃度が1質量%になるよう溶解させた水溶液を添加した。この系に、25質量%の水酸化ナトリウム水溶液〔3.4質量部〕を添加した。この系を、撹拌機を有する反応容器に入れた。この系を撹拌しながら、この系に、70℃に温めたイオン交換水〔270質量部〕を70分間に亘って滴下混合した。滴下の途中で容器内の液は白濁化し、全量滴下後に均一に乳化状の状態を得た。この乳化液の油滴の粒子径をレーザー回折式粒度分布測定器「LA-750(HORIBA製)」にて測定した結果、体積平均粒子径は90nmであった。
【0207】
この乳化液を70℃で保温したまま、ダイヤフラム式真空ポンプ「V-700」(BUCHI社製)を使用し、15kPa(150mbar)に減圧下で1時間撹拌した。これにより、メチルエチルケトンを蒸留除去し、非晶性ポリエステルa1の粒子が分散された非晶性ポリエステル粒子分散液A1を調製した。
【0208】
得られた非晶性ポリエステル粒子分散液A1の固形分は、25%であった。粒度分布測定器にて測定した結果、非晶性ポリエステル粒子分散液A1中における非晶性ポリエステル粒子の体積平均粒子径は、94nmであった。
【0209】
〔結晶性ポリエステルc1の合成〕
下記の原料モノマーを、窒素導入管、脱水管、撹拌機及び熱電対を装備した四つ口フラスコに入れ、窒素ガスにより不活性雰囲気下とし、機械攪拌下で170℃に加熱し溶解させた。
【0210】
・多価カルボン酸
セバシン酸 287.9質量部
・多価アルコール
1,6-ヘキサンジオール 112.1質量部
【0211】
次いで、四つ口フラスコ中を乾燥窒素ガスで置換した。得られた混合液にTi(OBu)4を多価カルボン酸成分全量に対して0.003質量%添加した。この系を235℃まで昇温し、常圧下(101.3kPa)にて5時間、さらに減圧下(8kPa)にて1時間反応を行った。得られた反応液を200℃まで冷却した後、減圧下(20kPa)にて、1時間反応させることにより、結晶性ポリエステルc1を得た。
【0212】
〔結晶性ポリエステル粒子分散液C1の調製〕
得られた結晶性ポリエステルc1〔174質量部〕をメチルエチルケトン〔102質量部〕に入れ、75℃で30分撹拌し、溶解させた。この系に、イオン交換水〔26質量部〕にポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムを濃度が1質量%になるよう溶解させた水溶液を添加した。この系に、25質量%の水酸化ナトリウム水溶液〔4.6質量部〕を添加した。この系を、撹拌機を有する反応容器に入れた。この系を撹拌しながら、この系に70℃に温めた水〔375質量部〕を70分間に亘って滴下混合した。滴下の途中で容器内の液は白濁化し、全量滴下後に均一に乳化状の状態を得た。
【0213】
この乳化液を70℃で保温したまま、ダイヤフラム式真空ポンプ「V-700」(BUCHI社製)を使用し、15kPa(150mbar)に減圧下で1時間撹拌した。これにより、メチルエチルケトンを蒸留除去した。この系を冷却速度6℃/minで冷却し、結晶性ポリエステルc1の粒子が分散された結晶性ポリエステル粒子分散液C1を調製した。
【0214】
得られた結晶性ポリエステル粒子分散液C1の固形分は、25%であった。粒度分布測定器にて測定した結果、結晶性ポリエステル粒子分散液C1中における結晶性ポリエステル粒子の体積平均粒子径は、202nmであった。
【0215】
〔着色剤粒子分散液P1の調製〕
ドデシル硫酸ナトリウム〔226質量部〕をイオン交換水〔1600質量部〕に添加した。この系を撹拌しながら、この系に銅フタロシアニン(C.I.ピグメントブルー15:3)〔420質量部〕を徐々に添加した。この系を撹拌装置クレアミックス(エム・テクニック社製、「クレアミックス」は同社の登録商標)を用いて分散処理することにより、着色剤粒子分散液P1を調製した。
【0216】
着色剤粒子分散液P1中の着色剤粒子は、体積基準のメジアン径が110nmであった。
【0217】
〔離型剤粒子分散液W1の調製〕
下記の材料を110℃に加熱して、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて分散した。
【0218】
・離型剤w1(日本精蝋社製、HNP-9) 50質量部
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬社製、ネオゲンRK) 5質量部
・イオン交換水 200質量部
【0219】
その後、この系をマントンゴーリン高圧ホモジナイザー(ゴーリン社)で分散処理した。これにより、平均粒子径が0.21μmである離型剤を分散させてなる離型剤分散液W1を調製した。離型剤分散液W1における離型剤に濃度は、26質量%であった。
【0220】
離型剤粒子分散液W1中の離型剤粒子の体積平均粒子径を、マイクロトラックUPA-150(日機装社製)にて測定したところ、215nmであった。
【0221】
〔トナー母体粒子1の製造〕
下記材料を丸型ステンレス製フラスコに入れ、0.1Nの硝酸を添加してpHを3.5に調整した。
【0222】
・イオン交換水 200質量部
・非晶性ポリエステル粒子分散液A1 150質量部
・結晶性ポリエステル粒子分散液C1 40質量部
・着色剤粒子分散液P1 15質量部
・離型剤粒子分散液W1 10質量部
・アニオン性界面活性剤(TaycaPower) 2.8質量部
【0223】
これに、ポリ塩化アルミニウム(PAC、王子製紙社製、30%粉末品)〔2.0質量部〕をイオン交換水〔30質量部〕に溶解させたPAC水溶液を添加した。この系を、ホモジナイザー(IKA社製ウルトラタラックスT50)を用いて30℃において分散処理した。その後、この系を加熱用オイルバス中で45℃まで加熱し、分散粒子の体積平均粒子径が4.1μmとなるまで保持した。
【0224】
この系に、非晶性ポリエステル粒子分散液A1〔60質量部〕を追加し、30分保持した。分散粒子の体積平均粒子径が4.5μmとなったところで、さらに非晶性ポリエステル粒子分散液A1〔60質量部〕を追加し、30分保持した。続いて、10%のNTA(ニトリロ三酢酸)金属塩水溶液(キレスト70、キレスト社製)〔20質量部〕を加えた。その後、1Nの水酸化ナトリウム水溶液を用いて、この系のpHを9.0にした。その後、この系にアニオン活性剤(TaycaPower)〔1.0質量部〕を投入した。この系を、撹拌を継続しながら85℃まで加熱し、5時間保持した。その後、この系を20℃/分の速度で20℃まで冷却後、濾過した。濾過して得られた粒子を、イオン交換水で充分に洗浄した。
【0225】
得られた含水粒子に対して、フラッシュジェットドライヤー(連続瞬間気流乾燥機、セイシン企業社製、型式:2インチ)による乾燥処理を行った。連続瞬間気流乾燥機の入口温度(吹き込み気体温度)を90℃、出口温度(吐き出し気体温度)を36℃、風量を2m3/minに設定し、粒子を乾燥させた。これにより、体積平均粒子径5.0μmのトナー母体粒子1を得た。
【0226】
〔非晶性ポリエステルa2~a9の合成〕
非晶性ポリエステルa1の合成において、原料モノマーを表IIに記載のものに変更した以外は同様にして、非晶性ポリエステルa2~a9を得た。
【0227】
非晶性ポリエステルa2~a9の合成においては、ビスフェノールA誘導体として、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、及びビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物を用いた。
【0228】
〔非晶性ポリエステル粒子分散液A2~A9の調製〕
非晶性ポリエステル粒子分散液A1の調製において、非晶性ポリエステルを表IIに記載のものに変更した以外は同様にして、非晶性ポリエステル粒子分散液A2~A9を得た。
【0229】
【0230】
〔結晶性ポリエステルc2~c5の合成〕
結晶性ポリエステルc1の合成において、原料モノマーを表IIIに記載のものに変更した以外は同様にして、結晶性ポリエステルc2~c5を得た。表IIIにおいて物質名の後に括弧書きしているC6等の記載は、炭素数を示す。
【0231】
〔結晶性ポリエステル粒子分散液C2~C5の調製〕
結晶性ポリエステル粒子分散液C1の調製において、結晶性ポリエステルを表IIIに記載のものに変更した以外は同様にして、結晶性ポリエステル粒子分散液C2~C5を得た。
【0232】
【0233】
〔離型剤粒子分散液W2~W5の調製〕
離型剤粒子分散液W1の調製において、離型剤を表IVに記載のものに変更した以外は同様にして、離型剤粒子分散液W2~W5を得た。
【0234】
【0235】
〔トナー母体粒子2~20、22~27の製造〕
トナー母体粒子1の製造において、以下の点をそれぞれ変更した以外は同様にして、トナー母体粒子2~20及び22~27を得た。
[1]用いる非晶性ポリエステル分散液、結晶性ポリエステル分散液、及び離型剤粒子分散液を、成分が表VIに記載のものになるように、変更した。
[2]乾燥条件を、表VIに記載のとおりに、変更した。
【0236】
〔ビニル系樹脂粒子分散液V1の調製〕
(第1段重合)
撹拌装置、温度センサー、冷却管及び窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、ドデシル硫酸ナトリウム〔8質量部〕及びイオン交換水〔3000質量部〕を仕込んだ。この系を、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた。昇温後、この系に、過硫酸カリウム10質量部をイオン交換水〔200質量部〕に溶解させた溶液を添加した。この系の液温を再度80℃にした。この系に、下記モノマーの混合液を1時間かけて滴下した。
【0237】
スチレン 480.0質量部
n-ブチルアクリレート 250.0質量部
メタクリル酸 68.0質量部
【0238】
上記混合液の滴下後、この系を80℃にて2時間加熱、撹拌した。これにより、モノマーの重合を行い、「第1段重合後のビニル系樹脂粒子分散液」を調製した。
【0239】
(第2段重合)
撹拌装置、温度センサー、冷却管及び窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、イオン交換水〔1100質量部〕と「第1段重合後のビニル系樹脂粒子分散液」〔55質量部(固形分換算)〕を仕込んだ。この系を、87℃に加熱した。
【0240】
下記材料を85℃にて溶解させた。
【0241】
スチレン 256.5質量部
2-エチルヘキシルアクリレート) 95.3質量部
メタクリル酸 38.2質量部
n-オクチル-3-メルカプトプロピオネート(連鎖移動剤) 4.0質量部
離型剤w1(日本精蝋社製、HNP-9) 131.0質量部
【0242】
この混合液に対し、循環経路を有する機械式分散機CLEARMIX(エム・テクニック社製)により、10分間の混合分散処理を行った。これにより、乳化粒子(油滴)を含む分散液を調製した。
【0243】
この分散液を、上記5Lの反応容器に追加した。この系に、過硫酸カリウム〔5.4質量部〕をイオン交換水〔103質量部〕に溶解させた重合開始剤の溶液を添加した。この系を87℃にて1時間にわたり加熱撹拌することにより、重合を行った。これにより、「第2段重合後のビニル系樹脂粒子分散液」を調製した。
【0244】
(第3段重合)
「第2段重合後のビニル系樹脂粒子分散液」に、過硫酸カリウム〔7.3質量部〕をイオン交換水〔157.9質量部〕に溶解させた溶液を添加した。この系に、84℃の温度条件下で、下記材料の混合液を90分かけて滴下した。
【0245】
スチレン 370.0質量部
nーブチルアクリレート 165.0質量部
メタクリル酸 40.0質量部
メタクリル酸メチル 47.2質量部
n-オクチル-3-メルカプトプロピオネート 8.6質量部
【0246】
滴下終了後、この系を2時間にわたり加熱撹拌することにより、重合を行った。その後、この系を28℃まで冷却した。これにより、ビニル系樹脂v1の粒子を含有する粒子分散液V1を得た。
【0247】
〔トナー母体粒子21の製造〕
撹拌装置、温度センサー及び冷却管を取り付けた反応容器に、ビニル系樹脂粒子分散液V1〔480質量部(固形分換算)〕及びイオン交換水〔350質量部〕を投入した。この系に、室温下(25℃)で、5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液を添加した。これにより、この系のpHを10に調整した。この系に、着色剤粒子分散液P1〔36.4質量部(固形分換算)〕を投入した。この系に、50質量%塩化マグネシウム水溶液〔80質量部〕を、撹拌下、30℃で10分間かけて添加した。得られた分散液を5分間静置した。その後、この系を60分間かけて80℃まで昇温した。80℃に到達後、この系に結晶性ポリエステル粒子分散液C1〔60質量部(固形分換算)〕を20分かけて投入した。粒子径の成長速度が0.01μm/分となるように撹拌速度を調整して、体積基準のメジアン径が6.0μmになるまで成長させた。体積基準のメジアン径は、コールターマルチサイザー3(コールター・ベックマン社製)による測定値である。
【0248】
この系に、塩化ナトリウム〔80質量部〕をイオン交換水〔300質量部〕に溶解させた水溶液を添加して、粒子径の成長を停止させた。次いで、この系を80℃の状態で撹拌し、トナー粒子の平均円形度が0.970になるまで粒子の融着を進行させた。その後、この系を0.5℃/分以上の降温速度で冷却し、30℃以下まで液温を冷却濾過した。濾過により得られた粒子を、イオン交換水で充分に洗浄した。
【0249】
得られた含水粒子に対して、フラッシュジェットドライヤー(連続瞬間気流乾燥機、セイシン企業社製、型式:2インチ)による乾燥処理を行った。連続瞬間気流乾燥機の入口温度(吹き込み気体温度)を90℃、出口温度(吐き出し気体温度)を36℃、風量を2m3/minに設定し、粒子を乾燥させた。これにより、体積平均粒子径5.0μmのトナー母体粒子21を得た。
【0250】
〔シリカ粒子S1の調製〕
撹拌機、滴下ロート、及び温度計を備えた3リットルの反応容器に、メタノール〔945質量部〕、28%アンモニア水〔45質量部〕、及び水〔135質量部〕を添加して、混合した。この溶液の温度を35℃に調整して撹拌しながら、この系にテトラメトキシシラン〔405質量部〕を6時間かけて滴下した。滴下後、撹拌を1時間継続し、加水分解を行い、シリカ粒子の懸濁液を得た。この分散液を減圧蒸留及び乾燥して粒子を得た。この粒子を解砕して、シリカ粒子S1を得た。
【0251】
得られたシリカ粒子S1の個数平均粒子径を前述した方法で算出したところ、120nmであった。
【0252】
〔シリカ粒子S2~S4の調製〕
シリカ粒子S1の調製において、メタノールとアンモニア水と水との質量比、及び溶液の温度を制御することにより、表Vに記載の個数平均粒子径を有するシリカ粒子S2~S4を調製した。
【0253】
〔チタン酸ストロンチウム粒子T1の調製〕
硫酸法で得られたメタチタン酸を脱鉄漂白処理した。この系に水酸化ナトリウム水溶液を加え、この系のpHを9.0とし、脱硫処理を行った。その後、塩酸によりこの系のpHを5.8まで中和し、ろ過水洗を行った。洗浄済みケーキに水を加え、TiO2として1.85モル/Lのスラリーとした。このスラリーに塩酸を加え、スラリーのpHを1.0とし、解膠処理を行った。このメタチタン酸をTiO2として0.625モル採取し、3Lの反応容器に投入した。この系に、塩化ストロンチウム水溶液及び塩化ランタン水溶液をSrO/LaO/TiO2モル比で1.00/0.06/1.00となるよう0.663モル添加した。その後、この系のTiO2濃度を、0.313モル/Lに調整した。次に、この系を撹拌混合しながら90℃に加温した。この系に、5N水酸化ナトリウム水溶液296mLを11時間かけて添加した。この系を95℃で1時間撹拌を続け、反応を終了した。
【0254】
当該反応スラリーを50℃まで冷却し、この系のpHが5.0となるまでこの系に塩酸を加えた。この系を、1時間撹拌した。得られた沈殿物をデカンテーション洗浄した。当該沈殿を含むスラリーに塩酸を加え、スラリーのpHを6.5に調整した。この系の固形分に対して9質量%のイソブチルトリメトキシシランをこの系に添加した。この系の撹拌を、1時間、保持した。次いで、この系をろ過及び洗浄した。得られたケーキを120℃の大気中で8時間乾燥した。これにより、ランタンを含有するチタン酸ストロンチウム粒子T1を得た。
【0255】
得られたチタン酸ストロンチウム粒子T1の個数平均粒子径を、前述した方法で算出したところ、35nmであった。
【0256】
【0257】
〔トナー粒子1の製造〕
トナー母体粒子1〔100質量部〕に、シリカ粒子S1〔1.5質量部〕を添加した。これを、ヘンシェルミキサー(日本コークス工業社製)により、回転翼周速35mm/秒、32℃で20分間混合した。混合後、45μmの目開きのふるいを用いて、混合物から粗大粒子を除去した。これにより、トナー粒子1を得た。
【0258】
〔トナー粒子2~18及び20~27の製造〕
トナー粒子1の製造において、トナー母体粒子1をトナー母体粒子2~18及び20~27のそれぞれ変更した以外は同様にして、トナー粒子2~18及び20~27を得た。
【0259】
〔トナー粒子19の製造〕
トナー母体粒子19〔100質量部〕に、シリカ粒子S1〔1.5質量部〕及びチタン酸ストロンチウム粒子T1〔0.5質量部〕を添加した。これを、ヘンシェルミキサー(日本コークス工業社製)により回転翼周速35mm/秒、32℃で20分間混合した。混合後、45μmの目開きのふるいを用いて、混合物から粗大粒子を除去した。これにより、トナー粒子19を得た。
【0260】
〔ビスフェノールA誘導体由来の構造単位の含有率〕
各トナー粒子における、非晶性ポリエステルにおける全アルコール由来の構造単位100モル%に対するビスフェノールA誘導体由来の構造単位の含有率を、表VIIの「非晶性ポリエステル中[%]」の列に示す。
【0261】
各トナー粒子における、ポリエステル(非晶性ポリエステル及び結晶性ポリエステル)における全アルコール由来の構造単位100モル%に対するビスフェノールA誘導体由来の構造単位の含有率を、表VIIの「全ポリエステル中[%]」の列に示す。
【0262】
〔水分量測定〕
トナー粒子の全体水分量及び内部水分量を、微量水分測定装置(MOICO-A19、HIRANUMA社製)を用いて、上述の方法で測定した。各トナー粒子において測定した全体水分量及び内部水分量は、表VIIに示すとおりである。
【0263】
〔耐熱性評価〕
調製した各トナー粒子について、以下の方法で耐熱性を評価した。
トナー粒子0.5gを内径21mmの10mLガラス瓶に取り、蓋を閉めて、振とう機を用い、室温で600回振とうした。振とう機には、「タップデンサーKYT-2000」(セイシン企業社製)を用いた。その後、ガラス瓶を、蓋を開けた状態で温度57.5℃、湿度35%RHの環境下において2時間放置した。次いで、トナー粒子を、ガラス瓶から48メッシュ(目開き350μm)の篩上に、トナーの凝集物を解砕しないように注意しながら移した。これを「パウダーテスター」(ホソカワミクロン社製)にセットし、押さえバー及びノブナットで固定した。送り幅1mmとなる振動強度に調整し、10秒間振動を加えた後、篩上の残存したトナー量の比率[質量%]を測定した。下記式(A)により、トナー凝集率を算出した。
【0264】
式(A):トナー凝集率[%]=(篩上の残存トナー質量[g]/0.5g)×100
【0265】
同様の測定を温度60.0℃、及び62.5℃でそれぞれ行った。X軸を温度とし、Y軸をトナー凝集率として、プロットを作成した。温度57.5℃、60.0℃、及び62.5℃の内、トナー凝集率が50%となる領域を挟む2つの温度間で、近似直線を引いた。内挿により、トナー凝集率が50%となる温度(以下、「50%凝集温度」ともいう。)を算出した。
【0266】
50%凝集温度に基づき、以下の基準で耐熱性を評価した。A、B及びCが合格レベルである。評価結果は表VIIIに示すとおりである。
【0267】
A:50%凝集温度が、59℃以上である。
B:50%凝集温度が、58℃以上59℃未満である。
C:50%凝集温度が、57℃以上58℃未満である。
D:50%凝集温度が、57℃未満である。
【0268】
〔二成分現像剤の製造〕
各トナー粒子と、アクリル樹脂を被覆した体積平均粒子径32μmのフェライトキャリアとを、トナー粒子濃度が6質量%となるように混合した。これにより、各トナー粒子を含有する二成分現像剤をそれぞれ製造した。
【0269】
〔画像形成システムの準備〕
複合機「bizhub PRESS(登録商標) C1070」(コニカミノルタ社製)の定着装置を、定着上ベルト及び定着下ローラの表面温度を変更可能に改造した。これに、上記製造した二成分現像剤を順次装填した。これを、定着温度、トナー付着量、及びシステム速度を自由に設定できるように改造した。この画像形成システムを、下記の低温定着性評価及びかぶり評価に用いた。
【0270】
〔低温定着性評価〕
低温定着性評価は、常温常湿(温度20℃、湿度50%RH)の環境下で行った。記録媒体には、A4サイズの上質紙「NPI上質(127.9g/m2)」(日本製紙社製)を用いた。トナー付着量が11.3g/m2となるように、画像形成システムを設定した。100mm×100mmサイズの画像を定着させる定着実験を、設定される定着温度を110℃から180℃まで2℃刻みで上げるように変更しながら、繰り返し行った。定着オフセットによる画像汚れが目視で確認されない最低の定着温度を、最低定着温度(U.O.回避温度)とした。
【0271】
最低定着温度に基づき、以下の基準で低温定着性を評価した。A、B及びCが合格レベルである。評価結果は表VIIIに示すとおりである。
【0272】
A:最低定着温度が、130℃未満である。
B:最低定着温度が、130℃以上135℃未満である。
C:最低定着温度が、135℃以上140℃未満である。
D:最低定着温度が、140℃以上である。
【0273】
〔かぶり評価〕
かぶり評価は、低温低湿(温度10℃、湿度15%RH)の環境下で行った。記録媒体には、A4サイズの上質紙(64g/m2)を用いた。画素率が45%の画像を5000枚プリント後、白紙をプリントした。プリントした白紙の20カ所の反射濃度を測定し、その平均値を白紙濃度として採用した。反射濃度の測定には、反射濃度計「RD-918」(マクベス社製)を用いた。
【0274】
白紙濃度に基づき、以下の基準でかぶりを評価した。A、B及びCが合格レベルである。評価結果は表VIIIに示すとおりである。
【0275】
A:白紙濃度が、0.005未満で、良好なレベルである。
B:白紙濃度が、0.005以上0.008未満で、実用上問題ないレベルである。
C:白紙濃度が、0.008以上0.012未満で、実用上問題ないレベルである。
D:白紙濃度が、0.012以上で、実用上問題あるレベルである。
【0276】
【0277】
【0278】
【0279】
上記の結果から、本発明のトナーを用いることによって、かぶりを抑制した良好な画質を得られることが確認できた。