(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136853
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】延伸フィルム
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20240927BHJP
C08L 67/04 20060101ALI20240927BHJP
C08L 101/12 20060101ALI20240927BHJP
C08L 3/02 20060101ALI20240927BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20240927BHJP
C08L 101/16 20060101ALN20240927BHJP
【FI】
C08J5/18 CES
C08L67/04
C08L101/12
C08L3/02
B32B27/32 Z
C08L101/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048138
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥村 麻子
(72)【発明者】
【氏名】浅野 晋一
【テーマコード(参考)】
4F071
4F100
4J002
4J200
【Fターム(参考)】
4F071AA08
4F071AA43
4F071AF30Y
4F071AF32Y
4F071AH03
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4J002AA011
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4J200DA17
4J200DA28
4J200EA04
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4J200EA21
4J200EA22
(57)【要約】
【課題】透明性が抑制されており、光沢度が高いため印刷適性に優れる延伸フィルムを提供する。
【解決手段】結晶性熱可塑性樹脂Aと、結晶性熱可塑性樹脂Bとを含有する樹脂成分を含む層aを有する延伸フィルムであって、
前記結晶性熱可塑性樹脂Aは、融点が135℃~175℃である結晶性ポリオレフィン系樹脂であり、
前記結晶性熱可塑性樹脂Bは、バイオマスプラスチックであり、
前記バイオマスプラスチックの含有量は、前記延伸フィルムを100質量%として0.5~50質量%であり、
下記測定方法により測定した前記延伸フィルムの不透明度が20%以上90%以下であり、
前記延伸フィルムのJIS Z8741に準拠した測定方法により測定角度20°の条件により測定した光沢度が15%以上である、
ことを特徴とする延伸フィルム。
(不透明度の測定方法)
延伸フィルムの全光線透過率をJIS K7361-1に準拠した測定方法により測定し、下記式に従って不透明度を算出する。
[不透明度(%)]=100-全光線透過率(%)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性熱可塑性樹脂Aと、結晶性熱可塑性樹脂Bとを含有する樹脂成分を含む層aを有する延伸フィルムであって、
前記結晶性熱可塑性樹脂Aは、融点が135℃~175℃である結晶性ポリオレフィン系樹脂であり、
前記結晶性熱可塑性樹脂Bは、バイオマスプラスチックであり、
前記バイオマスプラスチックの含有量は、前記延伸フィルムを100質量%として0.5~50質量%であり、
下記測定方法により測定した前記延伸フィルムの不透明度が20%以上90%以下であり、
前記延伸フィルムのJIS Z8741に準拠した測定方法により測定角度20°の条件により測定した光沢度が15%以上である、
ことを特徴とする延伸フィルム。
(不透明度の測定方法)
延伸フィルムの全光線透過率をJIS K7361-1に準拠した測定方法により測定し、下記式に従って不透明度を算出する。
[不透明度(%)]=100-全光線透過率(%)
【請求項2】
前記層aの片面又は両面に層bを備え、前記層bは、バイオマスプラスチックを含有しない、請求項1に記載の延伸フィルム。
【請求項3】
前記バイオマスプラスチックは、デンプンを含む、請求項1又は2に記載の延伸フィルム。
【請求項4】
前記バイオマスプラスチックは、少なくともデンプン及びポリ乳酸を含み、前記デンプンの含有量は、前記バイオマスプラスチックを100質量%として、5~90質量%である、請求項1又は2に記載の延伸フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、延伸フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂フィルムは、耐湿性、耐水性及び耐油性等の諸性能に優れると共に、良好な機械強度を有することから、食品や薬品等の包装材料、ディスプレイ等の保護フィルムなど、種々の用途に広く適用されており、利用価値の高い機能性材料である。
【0003】
一方で、近年では、プラスチック材料の廃棄量が増大していること、また、プラスチック材料の焼却処理で発生する二酸化炭素による地球温暖化をもたらす懸念がある等の様々な問題が提起されている。このため、地球環境や人体への配慮等の観点から生分解性を有するバイオマスプラスチックが大きく注目されており、従来のプラスチック材料と、バイオマスプラスチックとを組み合わせた様々な材料開発が盛んに進められている(例えば、特許文献1,2等を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2008/23758号
【特許文献2】特表2017-519863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の樹脂フィルムでは、透明性が高いものが使用されている。このため、樹脂フィルム上に所望の模様を印刷する際には、まず白ベタ印刷を行い、その上で所望の模様を印刷することが行われており、白ベタ印刷の工程を省略するため、半透明な、透明性が低い樹脂フィルムが望まれている。
【0006】
また、バイオマスプラスチックを用いたフィルムでは、表面保護層平滑性に劣るため表面光沢度が低くなり、印刷面に、特にグラビア印刷時に印刷の抜けが生じる、いわゆるミッシングドットが発生し易いという問題がある。このため、バイオマスプラスチックを用い、且つ、印刷適性に優れた樹脂フィルムの開発が望まれている。
【0007】
本発明は、透明性が抑制されており、光沢度が高いため印刷適性に優れる延伸フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の融点を有する結晶性ポリオレフィン系樹脂と、バイオマスプラスチックとを含有し、延伸フィルム中の上記バイオマスプラスチックの含有量が特定の範囲であり、不透明度及び光沢度が特定の範囲である延伸フィルムが上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、下記の延伸フィルムに関する。
1.結晶性熱可塑性樹脂Aと、結晶性熱可塑性樹脂Bとを含有する樹脂成分を含む層aを有する延伸フィルムであって、
前記結晶性熱可塑性樹脂Aは、融点が135℃~175℃である結晶性ポリオレフィン系樹脂であり、
前記結晶性熱可塑性樹脂Bは、バイオマスプラスチックであり、
前記バイオマスプラスチックの含有量は、前記延伸フィルムを100質量%として0.5~50質量%であり、
下記測定方法により測定した前記延伸フィルムの不透明度が20%以上90%以下であり、
前記積層体のJIS Z8741に準拠した測定方法により測定角度20°の条件により測定した光沢度が15%以上である、
ことを特徴とする延伸フィルム。
(不透明度の測定方法)
延伸フィルムの全光線透過率をJIS K7361-1に準拠した測定方法により測定し、下記式に従って不透明度を算出する。
[不透明度(%)]=100-全光線透過率(%)
2.前記層aの片面又は両面に層bを備え、前記層bは、バイオマスプラスチックを含有しない、項1に記載の延伸フィルム。
3.前記バイオマスプラスチックは、デンプンを含む、項1又は2に記載の延伸フィルム。
4.前記バイオマスプラスチックは、少なくともデンプン及びポリ乳酸を含み、前記デンプンの含有量は、前記バイオマスプラスチックを100質量%として、5~90質量%である、項1~3のいずれかに記載の延伸フィルム。
【発明の効果】
【0010】
本発明の延伸フィルムは、透明性が抑制されており、光沢度が高いため印刷適性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0012】
本発明の延伸フィルムは、結晶性熱可塑性樹脂Aと、結晶性熱可塑性樹脂Bとを含有する樹脂成分を含む層aを有する延伸フィルムであって、前記結晶性熱可塑性樹脂Aは、融点が135℃~175℃である結晶性ポリオレフィン系樹脂であり、前記結晶性熱可塑性樹脂Bは、バイオマスプラスチックであり、前記バイオマスプラスチックの含有量は、前記延伸フィルムを100質量%として0.5~50質量%であり、前記積層体のJIS K7361-1に準拠した測定方法により測定した不透明度は、20%以上90%以下であり、前記積層体のJIS Z8741に準拠した測定方法により測定角度20°の条件により測定した光沢度が15%以上であることを特徴とする。本発明延伸フィルムは、結晶性熱可塑性樹脂Aと、結晶性熱可塑性樹脂Bとを含有する樹脂成分を含む層aを有しており、上記結晶性熱可塑性樹脂Bであるバイオマスプラスチックを特定量含有し、不透明度が20%以上90%以下であることにより、白色を呈し、透明性が抑制されている。また、本発明の延伸フィルムは、特定の範囲の融点の結晶性熱可塑性樹脂Aを含有し、測定角度20°の条件により測定した光沢度が15%以上であることにより、光沢度が高くなっており、印刷適性に優れている。このため、本発明の延伸フィルムによれば、樹脂フィルム上に所望の模様を印刷する際に、白ベタ印刷の工程を省略することができ、且つ、バイオマスプラスチックを用いていても、印刷面のミッシングドットを抑制することができる。
【0013】
[層a]
本発明の延伸フィルムは、層aを少なくとも有する。層aは、延伸フィルムにおけるコア層としての役割を果たす層である。層aは、結晶性熱可塑性樹脂Aと、結晶性熱可塑性樹脂Bとを含有する樹脂成分を含む。以下、樹脂成分に含まれる各成分について説明する。
【0014】
(結晶性熱可塑性樹脂A)
結晶性熱可塑性樹脂Aは、結晶性ポリオレフィン系樹脂であって、融点が135℃~175℃である限り、特にその種類は限定されない。本明細書において、結晶性熱可塑性樹脂とは、示差走査熱量計(例えば、パーキン・エルマー社製入力補償型DSC、DiamondDSC)を用いて、窒素流下、-40℃から300℃まで20℃/分の速度で昇温し、300℃で5分間保持し、20℃/分で-40℃まで冷却し、-40℃で5分間保持した後、再び20℃/分で300℃まで昇温した際のDSC曲線に、明確な溶融ピークが現れる熱可塑性樹脂をいう。一方、非晶性熱可塑性樹脂とは、DSCを用いた上記測定において明確な溶融ピークが現れない熱可塑性樹脂をいう。
【0015】
本発明において、結晶性熱可塑性樹脂Aとしては、結晶性ポリオレフィン系樹脂が用いられる。結晶性ポリオレフィン系樹脂としては、公知の結晶性ポリオレフィン系樹脂を広く用いることができる。結晶性ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、オレフィンを重合してなるポリマーであり、好ましくは炭素数2~20、より好ましくは炭素数2~10、さらに好ましくは炭素数3~6のオレフィンを重合してなるポリマーを挙げることができる。具体的には、結晶性ポリオレフィン系樹脂として、結晶性であるポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ(1-ブテン)樹脂、ポリイソブテン樹脂、ポリ(1-ペンテン)樹脂、ポリ(4-メチルペンテン-1)樹脂が挙げられる。結晶性ポリオレフィン系樹脂は、上記バイオマスプラスチックと混ざりやすい(相溶しやすい)という点で、結晶性ポリプロピレン系樹脂であることが好ましい。結晶性ポリオレフィン系樹脂は、1種単独又は2種以上の混合物とすることができる。
【0016】
結晶性熱可塑性樹脂Aが結晶性ポリプロピレン系樹脂である場合、結晶性ポリプロピレン系樹脂は、プロピレンの単独重合体、及び、プロピレンとエチレンとの共重合体からなる群から選ばれた少なくとも1種がさらに好ましい。結晶性ポリオレフィン系樹脂が結晶性プロピレン単独重合体である場合は、フィルムの機械強度及び耐熱性が向上しやすく、結晶性ポリオレフィン系樹脂が結晶性プロピレン-エチレン共重合体である場合、低温での折り割れ性が良化しやすい。
【0017】
また、結晶性ポリオレフィン系樹脂が結晶性プロピレン単独重合体と結晶性プロピレン-エチレン共重合体の2成分を含む場合、耐熱性と低温での折り割れ性が共に優れたフィルムが得られやすい。結晶性プロピレン単独重合体と結晶性プロピレン-エチレン共重合体の好ましい質量比率は、結晶性プロピレン単独重合体(P1):結晶性プロピレン-エチレン共重合体(P2)=70:30~99:1であり、より好ましい質量比率はP1:P2=75:25~98:2であり、さらに好ましい質量比率はP1:P2=78:22~97:3である。
【0018】
結晶性プロピレン単独重合体としては、結晶性のアイソタクチックポリプロピレン樹脂が好ましい。斯かる結晶性のアイソタクチックポリプロピレン樹脂は、高温核磁気共鳴(NMR)測定によって求められる立体規則性度であるメソペンタッド分率([mmmm])が92%~98%であることが好ましく、93%~97%であることがさらに好ましい。メソペンタッド分率[mmmm]が92%以上であると、高い立体規則性成分により、樹脂の結晶性が向上し、高い熱安定性、機械強度が得られやすい。一方、メソペンタッド分率[mmmm]を98%以下とすることで、延伸性が良好となりやすい。
【0019】
上記メソペンタッド分率([mmmm])を測定するための使用できる高温NMR装置は特に制限はなく、例えば、ポリオレフィン類の立体規則性度が測定可能な一般に市販されている高温型核磁気共鳴(NMR)装置を使用することができ、例として、日本電子株式会社製高温型フーリエ変換核磁気共鳴装置(高温FT-NMR)JNM-ECP500を挙げることができる。観測核は13C(125MHz)であり、測定温度は135℃、溶媒にはオルト-ジクロロベンゼン(ODCB:ODCBと重水素化ODCBの混合溶媒(体積混合比=4/1))が用いられる。高温NMRによる方法は、公知の方法、例えば、「日本分析化学・高分子分析研究懇談会編、新版高分子分析ハンドブック、紀伊国屋書店、1995年、610頁」に記載の方法により行うことができる。測定モードは、シングルパルスプロトンブロードバンドデカップリング、パルス幅9.1μsec(45°パルス)、パルス間隔5.5sec、積算回数4500回、シフト基準はCH3(mmmm)=21.7ppmとされる。
【0020】
立体規則性度を表すペンタッド分率は、同方向並びの連子「メソ(m)」と異方向の並びの連子「ラセモ(r)」の5連子(ペンタッド)の組み合わせ(mmmmやmrrm等)に由来する各シグナルの強度積分値より百分率で算出される。mmmmやmrrm等に由来する各シグナルの帰属に関し、例えば「T.Hayashi et al.,Polymer,29巻,138頁(1988)」等のスペクトルの記載が参照される。上記メソペンタッド分率([mmmm])は、ポリプロピレン樹脂の重合条件や触媒の種類、触媒量等の重合条件を、適宜調整することによってコントロールすることができる。
【0021】
結晶性熱可塑性樹脂Aは、融点が135℃~175℃である。結晶性熱可塑性樹脂Aの融点が135℃未満である場合には、得られる延伸フィルムの耐熱性が低下し、延伸フィルムの生産性が低下するおそれがあり、所望の延伸性も得られない。結晶性熱可塑性樹脂Aの融点が175℃を超える場合には、結晶性熱可塑性樹脂A及び結晶性熱可塑性樹脂Bが相溶することが困難となり、所望の延伸性が得られない。
【0022】
結晶性熱可塑性樹脂Aの融点は、好ましくは138℃~170℃、より好ましくは140℃~166℃、さらに好ましくは145℃~164℃、特に好ましくは150℃~163℃である。これによって、延伸フィルムの生産性及び得られる耐熱性が良好となる。
【0023】
結晶性熱可塑性樹脂Aのガラス転移温度は特に限定されず、例えば、50℃以下とすることができ、-30℃~30℃がより好ましい。
【0024】
本発明では、結晶性樹脂Aの融点及びガラス転移温度は、示差走査熱量計(例えば、パーキン・エルマー社製入力補償型DSC、DiamondDSC)を用いて測定された値である。
【0025】
結晶性熱可塑性樹脂Aのメルトマスフローレートは特に限定されない。樹脂の流動性が適度な範囲となり、また、前記微細分散物の大きさが制御しやすくなって、所望の延伸フィルムが作製しやすいという点で、結晶性熱可塑性樹脂Aのメルトマスフローレートは好ましくは0.5g/10分~8g/10分、より好ましくは1g/10分~6g/10分である。本明細書でいうメルトマスフローレートは、JIS K-7210(1999)に準拠し、230℃、21.18Nで測定した値をいう。
【0026】
結晶性熱可塑性樹脂Aは公知の方法で製造することができる。例えば、結晶性熱可塑性樹脂Aが結晶性プロピレン単独重合体である場合、チタン、アルミニウム化合物からなるチーグラー触媒系を用い、炭化水素溶媒中プロピレンを重合する方法、液状プロピレン中で重合する方法(バルク重合)、気相で重合する方法等により製造することができる。結晶性プロピレン単独重合体は、市販品等から入手することができ、代表的な市販品としては、例えば、株式会社プライムポリマー製のプライムポリプロ(登録商標)シリーズの単独重合体、サンアロマー株式会社製のPC412A等、日本ポリプロ株式会社製のノバテック(登録商標)シリーズの単独重合体、Borealis社製Daployシリーズ、大韓油化工業株式会社製5014Lシリーズ、住友化学株式会社製の住友ノーブレン(登録商標)シリーズの単独重合体等が挙げられる。
【0027】
結晶性熱可塑性樹脂Aが結晶性プロピレン-エチレン共重合体である場合、プロピレンとエチレンとのランダム共重合体、プロピレンとエチレンとのブロック共重合体のいずれであってもよい。結晶性プロピレン-エチレン共重合体におけるエチレン単位の含有割合は、50質量%以下とすることができる。結晶性プロピレン-エチレン共重合体は公知の方法で製造することができ、あるいは市販品等から入手することができる。代表的な市販品としては、例えば株式会社プライムポリマー社製プライムポリプロ(登録商標)シリーズの共重合体、日本ポリプロ株式会社製のノバテックPP(登録商標)シリーズの共重合体及びウインテック(登録商標)シリーズ、住友化学株式会社製の住友ノーブレン(登録商標)シリーズの共重合体等が挙げられる。
【0028】
層a中の結晶性熱可塑性樹脂Aの含有量は、層aを形成する樹脂成分を100質量層a前記層aは、結晶性熱可塑性樹脂A及び結晶性熱可塑性樹脂Bの全質量に対して、前記結晶性熱可塑性樹脂Aを30~96質量%含有する。これにより、結晶性熱可塑性樹脂A及び結晶性熱可塑性樹脂Bは相溶性が良好となり、所望のヘーズかつ延伸倍率を有する延伸フィルムを得ることができる。また、結晶性熱可塑性樹脂Aの含有割合が上記範囲であることで、所望の透明性を有し、機械強度に優れたフィルムが得られやすくなる。
【0029】
結晶性熱可塑性樹脂Aの含有量は、層aを形成する樹脂成分を100質量%として、40~99.5質量%が好ましく、50~95質量%がより好ましく、50~90質量%が更に好ましく、60~80質量が特に好ましい。結晶性熱可塑性樹脂Aの含有量が上記範囲であることにより、延伸フィルムの透明性がより抑制され、且つ、光沢度が向上することにより、印刷適性がより向上する。
【0030】
(結晶性熱可塑性樹脂B)
結晶性熱可塑性樹脂Bは、バイオマスプラスチックである限り、特にその種類は限定されず、例えば、公知のバイオマスプラスチックを広く挙げることができる。このような結晶性熱可塑性樹脂Bとしては、例えば、米、トウモロコシ、サトウキビ等の植物から得られるデンプン、セロハン、ポリ乳酸、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、セルロース、キチン、キトサン、グルテン、ゼラチン、ゼイン、大豆タンパク、コラーゲン、ケラチン等のバイオマス由来の樹脂を用いることができる。これらの中でも、デンプン、セロハン、ポリ乳酸、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、セルロース等のバイオマス由来の樹脂が好ましく、延伸フィルムの透明性がより抑制される点でデンプンがより好ましく、延伸フィルムの透明性がより抑制され、且つ、延伸フィルムが白色を呈することができる点で、米由来のデンプンが更に好ましい。
【0031】
結晶性熱可塑性樹脂Bとしては、また、生分解性を有する脂肪族系ポリエステル樹脂を用いてもよい。
【0032】
生分解性を有する脂肪族系ポリエステル樹脂としては、ポリ乳酸、ポリヒドロキシアルカン酸(ポリ乳酸を除く)、ポリヒドロキシブチレート、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート/アジペート、ポリエチレンサクシネート、ポリリンゴ酸、ポリグリコール酸、ポリジオキサノン、ポリ(2-オキセタノン)等の脂肪族系ポリエステル樹脂等を挙げることができる。
【0033】
結晶性熱可塑性樹脂Bは、1種単独で、又は、2種以上を混合して用いることができる。
【0034】
結晶性熱可塑性樹脂Bとしては、上記デンプンと、脂肪族系ポリエステルとを併用することが好ましい。脂肪族系ポリエステルは、上記結晶性熱可塑性樹脂Aと均一に混ざりやすい点で好ましい。脂肪族系ポリエステルとしては、ポリ乳酸、ポリヒドロキシアルカン酸、並びに、乳酸及びポリヒドロキシアルカン酸を含む混合モノマーの重合体、からなる群より選ばれる1種以上が好ましく、ポリ乳酸がより好ましい。すなわち、結晶性熱可塑性樹脂Bに用いられるバイオマスプラスチックは、デンプン及びポリ乳酸を含むことがより好ましい。
【0035】
結晶性熱可塑性樹脂Bに用いられるバイオマスプラスチックがデンプン及びポリ乳酸を含む場合、デンプンの含有量は、バイオマスプラスチックを100質量%として、5~90質量%が好ましく、10~80質量%がより好ましく、20~70質量%更に好ましく、30~60質量%が特に好ましい。デンプンの含有量の下限が上記範囲であることにより、延伸フィルムの透明性がより抑制され、延伸フィルムがより白色を呈することができる。デンプンの含有量の下限が上記範囲であることにより、延伸フィルムの光沢度が向上することにより、印刷適性がより向上する。
【0036】
ポリ乳酸としては、例えば、原料モノマーとして乳酸成分を縮重合させて得られるポリ乳酸等、公知のポリ乳酸を広く使用することができる。なお、ポリ乳酸は、L-乳酸(L体)及びD-乳酸(D体)のいずれかの光学異性体のみ、あるいは、双方を含有することができる。
【0037】
ポリヒドロキシアルカン酸としては、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシヘプタン酸グリコール酸等の少なくとも1種を含むヒドロキシカルボン酸成分の重合体が挙げられる。
【0038】
乳酸とポリヒドロキシアルカン酸とを含む混合モノマーの重合体としては、乳酸モノマーと前記ヒドロキシカルボン酸成分とを縮重合させて得られる重合体が挙げられる。
【0039】
結晶性熱可塑性樹脂Bの融点は、110℃~200℃が好ましく、120℃~190℃がより好ましく、130℃~185℃が更に好ましく、140℃~180℃が特に好ましい。結晶性熱可塑性樹脂Bの融点の下限上記範囲であると、得られる延伸フィルムの耐熱性が向上し、延伸フィルムの生産性がより向上する。結晶性熱可塑性樹脂Bの融点の上限が上記範囲であると、結晶性熱可塑性樹脂Bと結晶性熱可塑性樹脂Aとの相溶性がより向上し、延伸倍率の調節がより容易になり、所望の延伸フィルムが得やすくなる。
【0040】
結晶性熱可塑性樹脂Bのガラス転移温度は特に限定されず、例えば、-40℃~70℃とすることができ、0℃~70℃がより好ましい。
【0041】
本発明では、結晶性熱可塑性樹脂Bの融点及びガラス転移温度は、示差走査熱量計(例えば、パーキン・エルマー社製入力補償型DSC、DiamondDSC)を用いて測定された値である。
【0042】
結晶性熱可塑性樹脂Bのメルトマスフローレートは特に限定されない。樹脂の流動性が適度な範囲となり、また、前記微細分散物の大きさが制御しやすくなって、所望の延伸フィルムが作製しやすいという点で、結晶性熱可塑性樹脂Bのメルトマスフローレートは好ましくは0.5g/10分~15g/10分、より好ましくは1g/10分~10g/10分、さらに好ましくは2g/10分~10g/10分である。本明細書でいうメルトマスフローレートは、JIS K-7210(1999)に準拠し、230℃、21.18Nで測定した値をいう。
【0043】
結晶性熱可塑性樹脂Bの製造方法は特に限定されず、例えば、公知のバイオマスプラスチックを製造する方法を広く採用することができる。また、結晶性熱可塑性樹脂Bは、市販品等からも入手することができる。ポリ乳酸の代表的な市販品としては、例えば、NatureWorks社製「4032D」(融点163℃)、トタルコービオン社製「L175」(融点175℃)、「LX175」(融点155℃)、「LX930」(融点130℃)等が挙げられる。その他の代表的な結晶性熱可塑性樹脂Bの市販品としては、例えば、Tianan Biologic Material社製のポリヒドロキシアルカノエート「ENMAT(登録商標)Y1000P」、三菱ケミカル株式会社製のポリブチレンサクシネート「BioPBS(登録商標)FZ91」、「BioPBS(登録商標)FD82」等が挙げられる。
【0044】
結晶性熱可塑性樹脂Bであるバイオマスプラスチックの含有量は、延伸フィルム全体の重量を100質量%として、0.5~50質量%である。バイオマスプラスチックの含有量の下限が0.5質量%未満であると、延伸フィルムの透明性が得られない。バイオマスプラスチックの含有量の上限が50質量%を超えると、光沢度が低下し、印刷適性が低下する。上記バイオマスプラスチックの含有量は、5~40質量%が好ましく、10~30質量%がより好ましい。
【0045】
(他の樹脂)
層aを構成する樹脂成分は、結晶性熱可塑性樹脂A、及び結晶性熱可塑性樹脂Bのみからなるものであってもよい。ただし、この場合において樹脂成分に不回避的に含まれる成分までも除外するものではない。また、本発明の効果が阻害されない限り、層aを構成する樹脂成分は、結晶性熱可塑性樹脂A、及び結晶性熱可塑性樹脂B以外の他の樹脂を含んでいてもよい。
【0046】
結晶性熱可塑性樹脂A、及び結晶性熱可塑性樹脂B以外の他の樹脂としては、スチレン系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ナイロン系樹脂やそれらの共重合体、例えば、スチレン-ブタジエン共重合体等のビニル単量体-ジエン単量体共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体等のビニル単量体-ジエン単量体-ビニル単量体共重合体等が挙げられる。
【0047】
他の樹脂の含有量は、層aに含まれる樹脂成分の全質量を100質量%として15質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。他の樹脂の含有量の下限値は、特に限定されないが、例えば0質量%、1質量%などである。
【0048】
[層b]
本発明の延伸フィルムは、層a(つまり、コア層)のみを有する単層構造であってもよく、層a以外の他の層を更に有する、いわゆる積層構造であってもよい。層bはいわゆるスキン層としての役割を果たすことができ、これにより、延伸フィルムの表面がより平滑になって、光沢度をより向上させることができ、延伸フィルムの印刷適性をより向上させることができる。
【0049】
本発明の延伸フィルムが積層構造である場合、例えば、層aの片面又は両面に他の層を貼り合わせてなる積層体が挙げられる。かかる他の層としては、例えば、樹脂で形成され、バイオマスプラスチックらを含有しない層bを挙げることができる。すなわち、本発明の延伸フィルムの層構成としては、上記層aの片面又は両面に層bを備え、上記層bは、バイオマスプラスチックを含有しない層構成が挙げられる。
【0050】
上記層bに含まれる樹脂としては、例えば、融点が100~175℃である結晶性ポリオレフィン系樹脂Cが挙げられる。
【0051】
融点が100~175℃である結晶性ポリオレフィン系樹脂Cとしては、例えば、前記結晶性熱可塑性樹脂Aと同様、オレフィンを重合してなるポリマーであり、好ましくは炭素数2~20、より好ましくは炭素数2~10、さらに好ましくは炭素数3~6のオレフィンを重合してなるポリマーを挙げることができる。具体的には、結晶性ポリオレフィン系樹脂として、結晶性であるポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ(1-ブテン)樹脂、ポリイソブテン樹脂、ポリ(1-ペンテン)樹脂、ポリ(4-メチルペンテン-1)樹脂が挙げられる他、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体、エチレン-ブテン共重合体、プロピレン-エチレン-ブテン共重合体等の、α-オレフィン同士の共重合体等が例示できる。結晶性ポリオレフィン系樹脂Cは、1種単独又は2種以上の混合物とすることができる。層bに含まれる結晶性ポリオレフィン系樹脂Cは、層aに含まれる上記結晶性熱可塑性樹脂Aと同一であってもよい。
【0052】
層bに含まれる樹脂は、結晶性熱可塑性樹脂Cのみであってもよい。あるいは、層bに含まれる樹脂は、結晶性熱可塑性樹脂Cと共に、結晶性熱可塑性樹脂A、及び結晶性熱可塑性樹脂Bからなる群より選ばれる1種以上を含むこともできる。さらに、層bに含まれる樹脂は、前述の他の樹脂を含むことができる。つまり、層bに含まれる樹脂は結晶性熱可塑性樹脂Cを必須とし、これ以外に、結晶性熱可塑性樹脂A、結晶性熱可塑性樹脂B、及び前記他の樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことができる。
【0053】
延伸フィルムの光沢度をより向上させることができる点で、層bに含まれる樹脂は、結晶性熱可塑性樹脂Cのみであることが好ましい。層bが結晶性熱可塑性樹脂C以外を含む場合、層bの全質量に対する前記結晶性熱可塑性樹脂Cの含有割合は80質量%以上、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上である。
【0054】
本発明の延伸フィルムが層bを備える場合、層bは、層aに直接貼り合わされて積層されてもよいし、あるいは、層a及び層bの間に、他の層が介在されていてもよい。延伸フィルムのヘーズをより小さくすることができる点で、層bは、層aに直接貼り合わされて積層されていることが好ましい。
【0055】
層bが層aの両面に形成されている場合、互いの層bは同一の成分で形成されていてもよいし、あるいは互いの層は異なる成分で形成されていてもよい。
【0056】
[層c]
本発明の延伸フィルムは、本発明の効果が阻害されない限り、層b以外の層cをさらに有していてもよい。層cとしては、例えば、防曇性、帯電防止性、粘着性、平滑性、光沢性、印刷適性、耐ブロッキング性、滑り性、強度付与性、酸素ガス、エチレンガス等のガスバリア性、水蒸気バリア性、匂い成分のバリア性、包装内容物の成分移行の防止性、抗菌性、抗カビ性等の各種機能を一つ以上有する層、これら各種機能を一つ以上とヒートシール性を有する層等が挙げられる。
【0057】
層cは、層aに直接貼り合わされて積層されてもよいし、あるいは、層a及び層cの間に、他の層(例えば、前記層b)が介在されていてもよい。層cが層aの両面に形成されている場合、互いの層cは同一の成分で形成されていてもよいし、あるいは互いの層cは異なる成分で形成されていてもよい。
【0058】
以上のように、本発明の延伸フィルムは、層aをコア層として、必要に応じて、層b、及び層cからなる群より選ばれる少なくとも1種の層が積層されていてもよい。より具体的には、本発明の延伸フィルムは、層aをコア層として、この片面又は両面に層bが直接貼り合わされてなる積層体(つまり、b/a/b)を含むことができる。また、本発明の延伸フィルムは、層aをコア層として、この片面に層bが直接貼り合わされ、逆側の面には、層cが貼り合わされてなる積層体(つまり、b/a/c)を含むことができる。また、本発明の延伸フィルムは、層aをコア層として、この両面にc層が直接貼り合わされてなる積層体(つまり、c/a/c)を含むことができる。さらには、本発明の延伸フィルムは、層aをコア層として、この片面に層cが貼り合わされてなる積層体(つまり、a/c)を含むことができる。
【0059】
本発明の延伸フィルムは、好ましくは、層aをコア層として、この片面又は両面に層bが直接貼り合わされた積層体である。
【0060】
(添加剤)
本発明の延伸フィルムは、必要に応じて、任意成分として、添加剤を含むことができる。添加剤は、例えば、延伸フィルムに適用される公知の添加剤を広く挙げることができ、例として、熱安定剤、酸化防止剤、有機及び無機滑剤、塩素捕獲剤、帯電防止剤等が挙げられる。
【0061】
熱安定剤及び酸化防止剤の例としては、フェノール系、ヒンダードアミン系、ホスファイト系、ラクトン系、トコフェロール系の熱安定剤や酸化防止剤が例示される。具体的には、ジブチルヒドロキシトルエン、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](BASFジャパン株式会社製「Irganox(登録商標)1010」)、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4ヒドロキシ)ベンゼン(BASFジャパン株式会社製「Irganox(登録商標)1330」)、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト(BASFジャパン株式会社製「Irgafos(登録商標)168」)等が挙げられる。これらのなかでも、フェノール系酸化防止剤系から選ばれた少なくとも1種あるいはそれらの組み合わせ、あるいはフェノール系とホスファイト系との組み合わせ、及びフェノール系とラクトン系、フェノール系とホスファイト系とラクトン系の組み合わせが、延伸フィルムに化学的な安定性を付与できる観点から好ましい。
【0062】
滑剤の例としては、有機系滑剤として、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド等脂肪族アミド、ラウリル酸ジエタノールアミド、アルキルジエタノールアミン、脂肪族モノグリセライド、脂肪族ジグリセライド、シリコーン架橋ポリマー、また無機系滑剤として、シリカ、アルミナ等が挙げられるが、印刷用途での印刷版の汚れの少ない有機系滑剤が好ましい。
【0063】
塩素捕獲剤の例としては、ステアリン酸カルシウムや金属石鹸類、ハイドロタルサイト等が挙げられる。
【0064】
帯電防止剤の例としては、アルキルメチルジベタイン、アルキルアミンジエタノール及び/又はアルキルアミンエタノールエステル及び/又はアルキルアミンジエタノールジエステル等が挙げられる。これらのうち2種類以上の帯電防止剤を併用しても良く、さらに脂肪族アルコールを併用しても良い。それらのなかでも、ステアリルジエタノールアミンモノステアリン酸エステルとステアリルジエタノールアミンを併用すると、帯電防止性能に優れ、印刷適性が向上することから好ましい。帯電防止剤の代表的な市販品の例としては、花王株式会社製エレクトロストリッパー(登録商標)シリーズ等が挙げられる。
【0065】
添加剤は、層aに含まれていてもよいし、本発明の延伸フィルムが層a以外の他の層(層b、層c等)を備える場合は、当該他の層が添加剤を含むこともできる。添加剤の含有割合は、本発明の効果が損なわれない程度で任意に調節することができ、例えば、延伸フィルムの全質量を基準に1質量%以下とすることができ、0.5質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがより好まし、0.01質量%以下であることがさらに好ましい。
【0066】
本発明の延伸フィルムの厚みは特に限定されず、その使用用途に応じて適宜設定することができる。延伸フィルムの厚みは、例えば、10~150μmであることが好ましく、より好ましくは15~100μm、さらに好ましくは15~60μmである。
【0067】
[延伸フィルムの特性]
本発明の延伸フィルムは、不透明度が20%以上90%以下である。不透明度が20%未満であると、所望の模様を印刷する際に白ベタ印刷の工程を省略することができず、工程が煩雑である。不透明度が90%を超えると、バイオマスプラスチックの含有量を多くする必要があり、光沢度が低下して印刷適性が低下する。不透明度の下限は、30%以上が好ましく、40%以上がより好ましい。また、不透明度の上限は、80%以下が好ましく、70%以下がより好ましい。
【0068】
なお、上記延伸フィルムの不透明度は、下記測定方法により測定することができる。
(不透明度の測定方法)
延伸フィルムの全光線透過率をJIS K7361-1に準拠した測定方法により測定し、下記式に従って不透明度を算出する。
[不透明度(%)]=100-全光線透過率(%)
【0069】
[延伸フィルムの特性]
本発明の延伸フィルムは、JIS K7361-1に準拠した測定方法により測定した不透明度が20%以上90%以下である。不透明度が20%未満であると、所望の模様を印刷する際に白ベタ印刷の工程を省略することができず、工程が煩雑である。不透明度が90%を超えると、バイオマスプラスチックの含有量を多くする必要があり、光沢度が低下して印刷適性が低下する。不透明度の下限は、30%以上が好ましく、40%以上がより好ましい。また、不透明度の上限は、80%以下が好ましく、70%以下がより好ましい。
【0070】
本発明の延伸フィルムは、JIS Z8741に準拠した測定方法により測定角度20°の条件により測定した光沢度が15%以上である。光沢度が15%未満であると、延伸フィルムの印刷適性が低下する。光沢度の下限は、20%以上が好ましく、30%以上がより好ましい。また、光沢度の上下は特に限定されず、100%、90%等であってもよい。
【0071】
本発明の延伸フィルムは、包装用、食品包装用、薬品包装用、装飾用(ファッション用含む)、ラベル用、テープ用基材、印刷用基材、文具用、家電用、ポスター用紙、感熱紙基材、記録用紙基材、住宅の内装用及び外装用、自動車用、等に好適に用いることができる。
【0072】
[延伸フィルムの製造方法]
本発明の延伸フィルムの製造方法は特に限定されず、例えば、公知の製造方法を広く採用することができる。例えば、前記結晶性熱可塑性樹脂A及び前記結晶性熱可塑性樹脂Bを少なくとも含む樹脂原料を押出成形して樹脂シートを得て、この樹脂シートの延伸を施すことにより、本発明の延伸フィルムを製造することができる。かかる製造方法を「製造方法A」と略記する。
【0073】
製造方法Aで使用する樹脂原料は、必要に応じて、上述の他の樹脂を含んでいてもよい。さらに、製造方法Aで使用する樹脂原料は、必要に応じて添加剤が含まれていてもよい。樹脂原料中の各成分の含有割合は、前述の層aに含まれる樹脂成分中の各樹脂の含有割合と同様である。
【0074】
当該樹脂原料の調製方法は、例えば、公知の調製方法と同様とすることができ、樹脂のペレットや粉体等を、タンブラーやミキサー等のバッチ式混合装置や、あるいは連続計量式混合装置を用いてドライブレンドする方法;もしくは、樹脂のペレットや粉体等を、必要に応じて他の樹脂のペレットや粉体及び/又は添加剤と共に混練機に供給し、溶融混練してメルトブレンド樹脂組成物を得る方法;等が挙げられる。中でも、溶融混練することで、樹脂原料を調製することが好ましく、この場合、前記結晶性熱可塑性樹脂A及び前記結晶性熱可塑性樹脂Bが均一に混ざりやすく、光沢度が高くなり印刷適性に優れる延伸フィルムが得られやすい。
【0075】
溶融混練に用いる混練機としては公知の混練機を使用でき、1軸スクリュータイプ、2軸スクリュータイプ、又はそれ以上の多軸スクリュータイプを用いてよく、さらに、2軸以上のスクリュータイプの場合、同方向回転、異方向回転のいずれの混練タイプをも用いてよい。前記結晶性熱可塑性樹脂A及び前記結晶性熱可塑性樹脂Bが均一に混ざりやすい点で、同方向回転の2軸スクリュータイプの混練機が好ましい。
【0076】
溶融混練の混練温度は、140~270℃が好ましく、160~240℃がより好ましい。上記温度範囲とすることで、前記結晶性熱可塑性樹脂A及び前記結晶性熱可塑性樹脂Bがより均一に混ざり合うことができる。溶融混練の際の樹脂の劣化防止のため、窒素等の不活性ガスをパージすることもできる。溶融混練された樹脂は、一般的に公知の造粒機を用いて、適当な大きさにペレタイズすることによってメルトブレンド樹脂組成物ペレットを得ることができる。
【0077】
製造方法Aでは、上述の通り得られた樹脂原料を用いて樹脂シートを得ることができる。具体的には、樹脂原料を押出機に供給し、加熱溶融して、必要に応じて、フィルター等により微小異物等を除去した後、Tダイよりシート状に溶融押出することで、樹脂シートを得ることができる。
【0078】
樹脂シートを得るために使用する押出機は、例えば、公知の押出機を広く使用することができる。押出機のスクリュータイプに制限は無く、1軸スクリュータイプ、2軸スクリュータイプ、又はそれ以上の多軸スクリュータイプを用いて良く、樹脂原料を前記ドライブレンドで調製した場合は、2軸スクリュータイプ、又はそれ以上の多軸スクリュータイプを用いると混合及び分散性に優れやすい。押出温度は、140~270℃が好ましく、160~240℃がより好ましい。押出の際の樹脂の熱劣化防止のため、窒素等の不活性ガスパージをすることができる。
【0079】
溶融押出された樹脂シートは、例えば、20~80℃の温度に設定した少なくとも1個以上の金属ドラム上にエアナイフや他のロール、又は静電気等により密着させるといった公知の方法により、シート状に成形され、樹脂シートは、いわゆる原反シートとして得られる。金属ドラムのより好ましい温度は30~80℃である。
【0080】
製造方法Aは、例えば、積層工程をさらに備えることができ、これにより、積層構造を有する樹脂シートを得ることができる。例えば、層aの片面または両面に前記層bが形成された延伸フィルムを得ようとする場合に、製造方法Aは積層工程を備えることができる。
【0081】
積層工程では、例えば、従来から採用されている積層方法を広く使用することができ、例えば、共押出法、ラミネート法等を用いて積層することにより得られるフィルムが挙げられる。
【0082】
具体的には、積層構造を有する延伸フィルムを製造する場合、2以上のドライブレンド及び/又はメルトブレンド樹脂組成物(各樹脂組成物の組成は異なっていても同じであってもよい)を共押出して積層構造を有する樹脂シートを得て、かかる積層構造を有する樹脂シートを延伸させることができる。あるいは、単層構造の延伸フィルムと、他のフィルムとをラミネートすることによっても積層構造を有する延伸フィルムを製造することができる。その他、単層として押出しされた無延伸フィルムを2層以上互いに貼り合わせて得られる多層無延伸フィルム(各層を構成する樹脂組成物の組成は異なっていても同じであってもよい)を延伸することによっても積層構造を有する延伸フィルムを製造することができる。
【0083】
上記共押出法としては、溶融樹脂を金型手前のフィードブロック内で接触させるダイ前積層法、金型、例えばマルチマニホールドダイの内部の経路で接触させるダイ内積層法、同心円状の複数リップから吐出し接触させるダイ外積層法等が挙げられる。例えばダイ内積層法の場合には、3層マルチマニホールドダイ等の多層ダイを用いて、表層(スキン層:層b)とコア層(中間層:層a)からなる、層b/層a/層bの3層の層構成などとすることができる。
【0084】
ラミネート法としては、Tダイ法に用いる溶融押出成型法の設備を使用し、溶融樹脂のフィルムを別のフィルム上に直接押し出して積層フィルムを成型する押出ラミネート法等が挙げられる。
【0085】
ヒートシール法としては、貼り合わせた複数のフィルムに加熱した金属体をフィルム外部から押し当て、伝導した熱がフィルムを溶融させて接着する外部加熱法、及び高周波の電波や超音波によってフィルムに熱を発生させ接合する内部発熱法等が挙げられる。
【0086】
製造方法Aでは、上記の積層方法を単独で又は複数組み合わせて用いることができる。
【0087】
以上のように、製造方法Aが積層工程を有する場合、樹脂シートは積層構造を有することができ、製造方法Aが積層工程を有さない場合、樹脂シートは単層構造を有する。単層構造を有する樹脂シートを用いて後記延伸をすることで、層aからなる延伸フィルムを得ることができる。単層構造を有する樹脂シートを用いて後記延伸をする場合は、層aを少なくとも備える多層の延伸フィルムを得ることができる。
【0088】
製造方法Aでは、上述の単層又は積層構造を有する樹脂シート(原反シート)の延伸を施す。延伸方法としては、周速差を設けたロール間で延伸する方法、テンター法、チューブラー法等公知の方法を用いることができる。延伸方向としては、一軸延伸、二軸延伸、斜め方向への二軸延伸等が可能であり、二軸以上の延伸では、逐次延伸及び同時延伸がいずれも適用可能である。これらのうち所望の延伸フィルムが得られ易い点から、テンター法による同時二軸延伸法、テンター法による逐次二軸延伸法、及び周速差を設けたロール間で縦(流れ、MD)延伸した後テンター法にて横(巾、TD)延伸する逐次二軸延伸法が好ましい。以下、逐次二軸延伸法により本発明の延伸フィルムを得る方法を説明するが、これに限定されるものではない。
【0089】
逐次二軸延伸法では、使用する樹脂の融点及びガラス転移温度により延伸温度や延伸倍率を調整することが好ましい。まず、樹脂シート(原反シート)を好ましくは100~160℃、より好ましくは120~150℃の温度に保ち、周速差を設けたロール間に通して、あるいはテンター法にて、縦方向に好ましくは2~10倍、より好ましくは2.5~8倍、さらに好ましくは3~6倍、特に好ましくは4~5倍に延伸する。引き続き、当該延伸フィルムをテンター法にて、好ましくは160℃以上の温度で、横方向に好ましくは2~12倍、より好ましくは4~11.5倍、さらに好ましくは6~11倍、特に好ましくは8~10倍に延伸した後、緩和、熱セットを施し巻き取る。
【0090】
巻き取られたフィルムは、好ましくは20~45℃程度の雰囲気中でエージング処理を施した後、所望の製品幅に断裁することができる。以上より、本発明の延伸フィルムを製造することができる。
【実施例0091】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の態様に限定されるものではない。なお、特に断わらない限り、「部」及び「%」はそれぞれ「質量部」及び「質量%」を示す。
【0092】
実施例及び比較例で用いた樹脂は、以下の通りである。
【0093】
(結晶性熱可塑性樹脂A)
・樹脂A-1:サンアロマー(登録商標)PC412A(サンアロマー株式会社製、ポリプロピレンホモポリマー、MFR=3g/10分、融点160℃)
・樹脂A-1:ウインテック(登録商標)WFW5T重合体(日本ポリプロ株式会社製、融点142℃
【0094】
(結晶性熱可塑性樹脂B)
・樹脂B-1:デンプン 商品名 ライスレジンR50E-4(株式会社バイオマスレジン南魚沼製、MFR=5g/10分)
・樹脂B-2:Luminy(登録商標)LX175(Total Corbion PLA社製、ポリ乳酸)
【0095】
(実施例1)
表1に示すように、層aを形成するための結晶性熱可塑性樹脂Aとして99.5質量%の樹脂A-1のペレットと、層aを形成するための結晶性熱可塑性樹脂B(バイオマスプラスチック)として、0.5質量%の樹脂B-1のペレットとを混合し、ミキサーでドライブレンドして樹脂原料を調製した。得られた樹脂原料を、株式会社東洋精機製作所製ラボプラストミル(登録商標)(モデル4C150)にストランドダイを備えた2軸押出機(L/D=25)を接続した装置にホッパーから投入し、230℃にて溶融混練した。樹脂原料をストランド状に押し出し、水冷後、ストランドカッターにてペレット状に断裁して、メルトブレンド樹脂組成物ペレットを得た。メルトブレンド樹脂組成物ペレットを、一軸スクリュータイプ押出機aにホッパーから投入して溶融し、単層ダイより押し出した。押し出された樹脂層を、45℃に制御した冷却ドラム上にエアナイフを用い空気圧で押しつけながら冷却固化して原反シートを得た。
【0096】
得られた原反シートに対して、ブルックナー社製バッチ式二軸延伸機KAROを用いて延伸を行った。延伸方法は、縦方向に延伸した後横方向に延伸する逐次二軸延伸法にて実施した。設定温度150℃のオーブン内にてフィルム温度(Ts)が135℃に達するまで予熱してから、縦方向に延伸速度6倍/秒にて5倍まで延伸した。次いで、設定温度165℃のオーブン内にてフィルム温度が145℃に達するまで予熱し、横方向に延伸速度1倍/秒にて10倍まで延伸した。次いで同オーブン内にて、緩和速度0.5倍/秒にて横方向を9.5倍まで緩和し、次いで10秒間熱セットした後、オーブンより排出して室温へ冷却し、厚みが25μmの延伸フィルムを調製した。
【0097】
(実施例2~6、比較例1、2)
層aを形成するための結晶性熱可塑性樹脂A、及び、結晶性熱可塑性樹脂B(バイオマスプラスチック)の樹脂の配合を、表1に示すように変更した以外は実施例1と同様の方法で、厚みが25μmの延伸フィルムを調製した。
【0098】
(評価方法)
実施例及び比較例で用いた樹脂、調製した延伸フィルムについて、下記評価を行った。
【0099】
[樹脂の融点、ガラス転移温度]
実施例及び比較例で使用した樹脂の融点、ガラス転移温度は、パーキン・エルマー社製入力補償型DSC、DiamondDSCを用い、以下の手順により算出した。各樹脂を5mg量り取り、アルミニウム製のサンプルホルダーに詰め、DSC装置にセットした。窒素流下、-40℃から300℃まで20℃/分の速度で昇温し、300℃で5分間保持し、20℃/分で-40℃まで冷却し、-40℃で5分間保持した。その後再び20℃/分で300℃まで昇温する際のDSC曲線より、融点およびガラス転移温度を求めた。JIS-K7121の9.1(1)に定める溶融ピーク(複数の溶融ピークを示す場合は最大の溶融ピーク)を融点とし、JIS-K7121の9.3(1)に定める中間点ガラス転移温度をガラス転移温度とした。
【0100】
[延伸フィルムの厚み]
延伸フィルムの厚みは、マイクロメーター(JIS B-7502)を用いて、JIS C-2151に準拠して測定した。
【0101】
[延伸フィルムの不透明度]
延伸フィルムの全光線透過率をJIS K7361-1に準拠した測定方法により測定し、下記式に従って不透明度を算出した。
[不透明度(%)]=100-全光線透過率(%)
【0102】
[延伸フィルムの光沢度]
延伸フィルムの表面の光沢度は、株式会社村上色彩技術研究所製変角光沢計GM-3D型を用いて、JIS Z8741に準拠して、測定角度20°の条件により測定した。なお、当該測定では、フィルムの縦方向および横方向について測定し、両者を平均した値を測定値とした。
【0103】
[延伸フィルムのグラビア印刷適性]
延伸フィルムに、印刷局式グラビア印刷試験機を用いてグラビア印刷を行い、10%階調網点部のミッシングドットの程度を目視により観察し、下記の評価基準に従って評価した。なお、○評価以上であれば実使用において問題ないと評価される。
◎:網点の欠落が見られない。
〇:網点の欠落が殆どない。
△:数個程度のミッシングドットが認められる。
×:十数個程度のミッシングドットが認められる。
【0104】
評価結果を表1に示す。
【0105】
【0106】
表1の結果から、実施例で得られた延伸フィルムは、特定の融点を有する結晶性ポリオレフィン系樹脂と、特定の融点を有するバイオマスプラスチックとが所定の割合で形成される層aを備えることから、透明性が抑制されており、光沢度が高いため印刷適性に優れることが分かった。