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特開2024-136854エチレン・α-オレフィン共重合体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136854
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】エチレン・α-オレフィン共重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/6592 20060101AFI20240927BHJP
   C08F 210/16 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C08F4/6592
C08F210/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048139
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉富 哲志
(72)【発明者】
【氏名】岡部 暁斗
(72)【発明者】
【氏名】恵比澤 郁子
(72)【発明者】
【氏名】山村 雄一
【テーマコード(参考)】
4J100
4J128
【Fターム(参考)】
4J100AA02P
4J100AA04Q
4J100CA04
4J100DA01
4J100DA04
4J100DA09
4J100DA12
4J100FA10
4J100FA19
4J100FA28
4J100GB05
4J100GC26
4J100GC35
4J128AA01
4J128AB00
4J128AC28
4J128AD08
4J128AD13
4J128BA01A
4J128BA01B
4J128BB01A
4J128BB01B
4J128BC12
4J128BC15B
4J128BC25A
4J128EA01
4J128EB02
4J128EB05
4J128EC02
4J128FA02
4J128FA07
4J128FA09
4J128GA01
4J128GA04
4J128GA05
4J128GA06
4J128GA07
4J128GA08
4J128GB01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】エチレン架橋したメタロセン化合物を用いたエチレン・α-オレフィン共重合体の製造方法において、重合活性を向上させること。
【解決手段】(A)ジルコニウム原子またはハフニウム原子を有し、かつ特定のシクロペンタジエン環及びフルオレン環構造を含む架橋メタロセン化合物と、(B)有機金属化合物(B-1)、有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)および前記メタロセン化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物(B-3)からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物とを含むオレフィン重合触媒、および水素の存在下、エチレンおよび炭素数が3以上のα-オレフィンを125℃~200℃で共重合する工程を含む、エチレン・α-オレフィン共重合体の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式[1]で表されるメタロセン化合物と、
(B)有機金属化合物(B-1)、有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)および前記メタロセン化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物(B-3)からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と
を含むオレフィン重合触媒、および水素の存在下、エチレンおよび炭素数が3以上のα-オレフィンを125℃~200℃で共重合する工程を含む、エチレン・α-オレフィン共重合体の製造方法。
【化1】
(式[1]中、R、R、R、R、R、R、R及びR12は、それぞれ独立に水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基またはケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基を示し、R~Rのうち相互に隣り合う二つの基同士は互いに結合して環を形成していてもよい。
およびR11は、水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基およびケイ素含有基以外のへテ口原子含有基から選ばれる互いに同一の原子または基であり、
およびR10は、水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基およびケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基から選ばれる互いに同一の原子または基であり、
およびRは、互いに結合して環を形成していてもよく、R10およびR11は、互いに結合して環を形成していてもよい。
Mはジルコニウム原子またはハフニウム原子を示す。
Qはハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、炭素数4~10の中性の共役もしくは非共役ジエン、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子を示す。
jは1~4の整数である。
jが2以上の場合は、複数個のQは互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項2】
前記水素の、エチレンに対するモル比が0より大きく0.010未満の量である、請求項1に記載のエチレン・α-オレフィン共重合体の製造方法。
【請求項3】
前記エチレン・α-オレフィン共重合体の135℃デカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]が1.0dl/g以上である、請求項1に記載のエチレン・α-オレフィン共重合体の製造方法。
【請求項4】
前記化合物(B)が前記有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)を含む、請求項1に記載のエチレン・α-オレフィン共重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン・α-オレフィン共重合体の製造方法に関し、より詳細にはメタロセン触媒を用いたエチレン・α-オレフィン共重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オレフィン重合用の均一系触媒としては、いわゆるメタロセン化合物がよく知られている。メタロセン化合物を用いてオレフィンを重合する方法、特にα-オレフィンを立体規則的に重合する方法は、W.Kaminskyらによってアイソタクテイック重合が報告(Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,24,507(1985))されて以来、重合活性の更なる向上や立体規則性改善の視点から多くの改良研究が行なわれている。このような研究の一環としてシクロペンタジエニル配位子とフルオレニル配位子を炭素一原子で架橋したメタロセン化合物を用いた重合結果がJ.A.Ewenによって報告されている(J.Am.Chem.Soc.,110,6255(1988))。さらにシクロペンタジエニル配位子とフルオレニル配位子を炭素二原子で架橋(エチレン架橋)したメタロセン化合物を用いたポリプロピレンの重合結果がM.H.Leeによって報告されている(J.Organomet.Chem.,561,37(1998))。
【0003】
これらの重合活性は十分でないという課題に鑑み、特許文献1では、公知のメタロセン化合物を用いた場合と比べて高い重合活性を有するメタロセン化合物、およびこれを含む触媒の存在下でオレフィンを重合する方法が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、架橋メタロセン化合物を含む触媒の存在下でエチレンを(共)重合して、高い生産性で分子量分布の狭いエチレン系ワックスが得られることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-175707号公報
【特許文献2】特開2004-149673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、エチレン架橋したメタロセン化合物を用いたエチレンの共重合においては、重合活性の向上の観点から、さらなる改善の余地があった。
本発明は、エチレン架橋したメタロセン化合物を用いたエチレン・α-オレフィン共重合体の製造方法における重合活性の向上を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、たとえば以下の[1]~[4]に関する。
[1]
(A)下記一般式[1]で表されるメタロセン化合物と、
(B)有機金属化合物(B-1)、有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)および前記メタロセン化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物(B-3)からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と
を含むオレフィン重合触媒、および水素の存在下、エチレンおよび炭素数が3以上のα-オレフィンを125℃~200℃で共重合する工程を含む、エチレン・α-オレフィン共重合体の製造方法。
【0008】
【化1】
(式[1]中、R、R、R、R、R、R、R及びR12は、それぞれ独立に水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基またはケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基を示し、R~Rのうち相互に隣り合う二つの基同士は互いに結合して環を形成していてもよい。
およびR11は、水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基およびケイ素含有基以外のへテ口原子含有基から選ばれる互いに同一の原子または基であり、
およびR10は、水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基およびケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基から選ばれる互いに同一の原子または基であり、
およびRは、互いに結合して環を形成していてもよく、R10およびR11は、互いに結合して環を形成していてもよい。
Mはジルコニウム原子またはハフニウム原子を示す。
Qはハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、炭素数4~10の中性の共役もしくは非共役ジエン、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子を示す。
jは1~4の整数である。
jが2以上の場合は、複数個のQは互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【0009】
[2]
前記水素の、エチレンに対するモル比が0より大きく0.010未満の量である、前記[1]のエチレン・α-オレフィン共重合体の製造方法。
【0010】
[3]
前記エチレン・α-オレフィン共重合体の135℃デカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]が1.0dl/g以上である、前記[1]または[2]のエチレン・α-オレフィン共重合体の製造方法。
【0011】
[4]
前記化合物(B)が前記有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)を含む、前記[1]~[3]のいずれかのエチレン・α-オレフィン共重合体の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、エチレン架橋したメタロセン化合物を用いたエチレン・α-オレフィン共重合体の製造方法において、重合活性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明に係るエチレン・α-オレフィン共重合体の製造方法は、
(A)後述する一般式[1]で表されるメタロセン化合物と、
(B)有機金属化合物(B-1)、有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)および前記メタロセン化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物(B-3)からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と
を含むオレフィン重合触媒、ならびに水素の存在下、エチレンおよび炭素数が3以上のα-オレフィンを125℃~200℃で共重合する工程を含むことを特徴としている。
【0014】
《メタロセン化合物(A)》
メタロセン化合物(A)は、下記一般式[1]で表される。
【0015】
【化2】
【0016】
(置換基を有していてもよいシクロペンタジエニル基)
式[1]中、R、R、RおよびRは、それぞれ独立に水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基またはケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基であり、R~Rのうち相互に隣り合う2つの基同士は互いに結合して環を形成していてもよい。
炭化水素基、ケイ素含有基およびケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基の具体例については後述する。
、R、RおよびRは、好ましくはすべて水素原子である。
【0017】
(置換フルオレニル基)
式[1]中、R、R、RおよびR12は、それぞれ独立に水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基またはケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基であり、好ましくは水素原子、炭化水素基またはケイ素含有基であり、より好ましくは水素原子である。
【0018】
およびR11は水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基およびケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基から選ばれる同一の原子または同一の基であり、好ましくは水素原子、炭化水素基およびケイ素含有基から選ばれる。
【0019】
およびR10は水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基およびケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基から選ばれる同一の原子または同一の基であり、好ましくは水素原子、炭化水素基およびケイ素含有基から選ばれる。
【0020】
およびRは互いに結合して環を形成していてもよく、R10およびR11は互いに結合して環を形成していてもよい。
重合活性の視点からは、RおよびR11がいずれも水素原子でないことが好ましく;R、R、R10およびR11がいずれも水素原子ではないことがさらに好ましく;RおよびR11が炭化水素基およびケイ素含有基から選ばれる同一の基であり、且つRおよびR10が炭化水素基およびケイ素含有基から選ばれる同一の基であることが特に好ましい。
【0021】
また、RおよびRが互いに結合して脂環または芳香環を形成し、R10およびR11が互いに結合して脂環または芳香環を形成していることも好ましい。RおよびR(R10およびR11)が互いに結合して脂環または芳香環を形成した場合の置換フルオレニル基としては、後述する一般式[i]~[v]で表される化合物に由来する基が好適な例として挙げられる。
【0022】
(置換基の例示)
~R12における炭化水素基としては、炭素数1~20の炭化水素基が好ましく、その具体例としては、
メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デカニル基、アリル(allyl)基などの直鎖状炭化水素基;
イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、アミル基、3-メチルペンチル基、ネオペンチル基、1,1-ジエチルプロピル基、1,1-ジメチルブチル基、1-メチル-1-プロピルブチル基、1,1-プロピルブチル基、1,1-ジメチル-2-メチルプロピル基、1-メチル-1-イソプロピル-2-メチルプロピル基などの分岐状炭化水素基;
シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基などの環状飽和炭化水素基;
フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フェナントリル基、アントラセニル基などの環状不飽和炭化水素基およびこれらの核アルキル置換体;
ベンジル基、クミル基などの、飽和炭化水素基が有する少なくとも1つの水素原子がアリール基で置換された基
が挙げられる。
【0023】
これらの中でも、炭素原子数1~20の直鎖状または分岐状の脂肪族炭化水素基、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基などが好ましい。
【0024】
~R12におけるケイ素含有基としては、炭素数1~20のケイ素含有基が好ましく、その具体例としてはアルキルシリル基(例:トリメチルシリル基)、およびアリールシリル基(例:トリフェニルシリル基)が挙げられる。
【0025】
ヘテロ原子含有基(ケイ素含有基を除く)の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基N-メチルアミノ基、トリフルオロメチル基、トリブロモメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基が挙げられる。
【0026】
(M、Qおよびj)
式[1]中、Mはジルコニウム原子またはハフニウム原子であり、好ましくはジルコニウム原子である。
【0027】
Qはハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、炭素原子数4~10の中性の共役もしくは非共役ジエン、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子を示し、jは1~4の整数を示し、jが2以上の整数の場合は複数あるQはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0028】
Qにおける炭化水素基としては、例えば、炭素原子数1~10の直鎖状または分岐状の脂肪族炭化水素基、炭素原子数3~10の脂環族炭化水素基が挙げられる。脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、2-メチルプロピル基、1,1-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、1,1-ジエチルプロピル基、1-エチル-1-メチルプロピル基、1,1,2,2-テトラメチルプロピル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、1,1-ジメチルブチル基、1,1,3-トリメチルブチル基、ネオペンチル基が挙げられる。脂環族炭化水素基としては、例えば、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、1-メチル-1-シクロヘキシル基が挙げられる。
Qにおけるハロゲン化炭化水素基としては、Qにおける上記炭化水素基が有する少なくとも一つの水素原子がハロゲン原子で置換された基が挙げられる。
【0029】
(好ましいメタロセン化合物(A)の例示)
以下にメタロセン化合物(A)の具体例を示す。なお、例示化合物中、オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニルとは式[i]で示される構造の化合物に由来する基を指し、オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニルとは式[ii]で示される構造の化合物に由来する基を指し、ジベンゾフルオレニルとは式[iii]で示される構造の化合物に由来する基を指し、1,1',3,6,8,8'-ヘキサメチル-2,7-ジヒドロジシクロペンタフルオレニルとは式[iv]で示される構造の化合物に由来する基を指し、1,3,3',6,6',8-ヘキサメチル-2,7-ジヒドロジシクロペンタフルオレニルとは式[v]で示される構造の化合物に由来する基を指す。
【0030】
【化3】
【0031】
メタロセン化合物(A)としては、例えば、
エチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
エチレン(シクロペンタジエニル)(3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
エチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
エチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
エチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
エチレン(シクロペンタジエニル)(1,1',3,6,8,8'-ヘキサメチル-2,7-ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
エチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3',6,6',8-ヘキサメチル-2,7-ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
エチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジフェニル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
エチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジメチル-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
エチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-(トリメチルフェニル)-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
エチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-(ジメチルフェニル)-3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド
が挙げられる。
【0032】
メタロセン化合物(A)としては、上記例示の化合物の「ジクロリド」を「ジフロライド」、「ジブロミド」、「ジアイオダイド」、「ジメチル」または「メチルエチル」などに代えた化合物、「シクロペンタジエニル」を「3-tert-ブチル-5-メチル-シクロペンタジエニル」、「3,5-ジメチル-シクロペンタジエニル」、「3-tert-ブチル-シクロペンタジエニル」または「3-メチル-シクロペンタジエニル」などに替えた化合物を挙げることもできる。また、上述の化合物と重複するが、特開2004-149673号公報の[0015]~[0025]に記載された化合物も挙げられる。
【0033】
以上の架橋メタロセン化合物は公知の方法によって製造可能であり、特に製造方法が限定されるわけではない。公知の方法としては、例えば、本出願人による国際公開第01/27124号パンフレット、国際公開第04/029062号パンフレットに記載の方法が挙げられる。
【0034】
《化合物(B)》
前記オレフィン重合触媒は
前記化合物(B)は、有機金属化合物(B-1)、有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)および前記架橋メタロセン化合物(P)と反応してイオン対を形成する化合物(B-3)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物(B)である。
【0035】
(有機金属化合物(B-1))
有機金属化合物(B-1)として、具体的には下記のような周期律表第1、2族および第12、13族の有機金属化合物(B-1a)、(B-1b)、(B-1c)が挙げられる。
【0036】
(B-1a)一般式 Ra mAl(ORbnpq で表される有機アルミニウム化合物。
(式中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+p+q=3である。)
このような化合物として、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ-n-ブチルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウムなどのトリ-n-アルキルアルミニウム、
トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリsec-ブチルアルミニウム、トリ-t-ブチルアルミニウム、トリ-2-メチルブチルアルミニウム、トリ-3-メチルヘキシルアルミニウム、トリ-2-エチルヘキシルアルミニウムなどのトリ分岐状アルキルアルミニウム、
トリシクロヘキシルアルミニウム、トリシクロオクチルアルミニウムなどのトリシクロアルキルアルミニウム、
トリフェニルアルミニウム、トリ(4-メチルフェニル)アルミニウムなどのトリアリールアルミニウム、
ジイソプロピルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどのジアルキルアルミニウムハイドライド、
一般式(i-C49xAly(C510z(式中、x、y、zは正の数であり、z≦2xである。)で表されるイソプレニルアルミニウムなどのアルケニルアルミニウム、
イソブチルアルミニウムメトキシド、イソブチルアルミニウムエトキシドなどのアルキ
ルアルミニウムアルコキシド、
ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジブチルアルミニウムブトキシドなどのジアルキルアルミニウムアルコキシド、
エチルアルミニウムセスキエトキシド、ブチルアルミニウムセスキブトキシドなどのアルキルアルミニウムセスキアルコキシド、
一般式Ra 2.5Al(ORb0.5などで表される平均組成を有する部分的にアルコキシ化されたアルキルアルミニウム、
ジエチルアルミニウムフェノキシド、ジエチルアルミニウム(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシド)などのアルキルアルミニウムアリーロキシド、
ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジブチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジイソブチルアルミニウムクロリドなどのジアルキルアルミニウムハライド、
エチルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミドなどのアルキルアルミニウムセスキハライド、
エチルアルミニウムジクロリドなどのアルキルアルミニウムジハライドなどの部分的にハロゲン化されたアルキルアルミニウム、
ジエチルアルミニウムヒドリド、ジブチルアルミニウムヒドリドなどのジアルキルアルミニウムヒドリド、
エチルアルミニウムジヒドリド、プロピルアルミニウムジヒドリドなどのアルキルアルミニウムジヒドリドおよびその他の部分的に水素化されたアルキルアルミニウム、
エチルアルミニウムエトキシクロリド、ブチルアルミニウムブトキシクロリド、エチルアルミニウムエトキシブロミドなどの部分的にアルコキシ化およびハロゲン化されたアルキルアルミニウム
などを例示することができる。
【0037】
また、上記一般式Ra mAl(ORbnpqで表される化合物に類似する化合物も使用することができ、例えば窒素原子を介して2以上のアルミニウム化合物が結合した有機アルミニウム化合物を挙げることができる。このような化合物として具体的には、(C252AlN(C25)Al(C252などを挙げることができる。
【0038】
(B-1b)一般式 M2AlRa 4 で表される周期律表第1族金属とアルミニウムとの錯アルキル化物。(式中、M2はLi、NaまたはKを示し、Raは炭素数1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示す。)
このような化合物として、LiAl(C254、LiAl(C7154などを例示することができる。
【0039】
(B-1c)一般式 Rab3 で表される周期律表第2族または第12族金属のジアルキル化合物。(式中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示し、M3はMg、ZnまたはCdである。)
【0040】
(有機アルミニウムオキシ化合物(B-2))
有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)としては、従来公知のアルミノキサンをそのまま使用することができる。具体的には、下記一般式[III]で表わされる化合物および下記一般式[IV]で表わされる化合物を挙げることができる。
【0041】
【化4】
式[III]および[IV]中、Rは炭素数1~10の炭化水素基、nは2以上の整数を示す。
【0042】
特にRがメチル基であるメチルアルミノキサンであってnが3以上、好ましくは10以上のものが利用される。これらアルミノキサン類に若干の有機アルミニウム化合物が混入していても差し支えない。
【0043】
本発明においてエチレンと炭素数が3以上のα-オレフィンとの共重合を高温で行う場合には、特開平2-78687号公報に例示されているようなベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物も適用することができる。また、特開平2-167305号公報に記載されている有機アルミニウムオキシ化合物、特開平2-24701号公報、特開平3-103407号公報に記載されている二種類以上のアルキル基を有するアルミノキサンなども好適に利用できる。なお、本発明で用いられることのある「ベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物」とは、60℃のベンゼンに溶解するAl成分がAl原子換算で通常10%以下、好ましくは5%以下、特に好ましくは2%以下であり、ベンゼンに対して不溶性または難溶性である化合物である。
【0044】
また、有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)としては、下記一般式[V]で表されるような修飾メチルアルミノキサン等も挙げることができる。
【0045】
【化5】
式[V]中、Rは炭素数1~10の炭化水素基、mおよびnはそれぞれ独立に2以上の整数を示す。
【0046】
有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)の一例であるメチルアルミノキサンは、容易に入手可能であり、かつ高い重合活性を有するので、オレフィン重合における活性剤として一般的に使用されている。しかしながら、メチルアルミノキサンは、飽和炭化水素に溶解させ難いため、環境的に望ましくないトルエンまたはベンゼンのような芳香族炭化水素の溶液として使用されてきた。このため、近年、飽和炭化水素に溶解させたアルミノキサンとして、式[IV]で表されるメチルアルミノキサンの可撓性体(flexible body)が開発され、使用されている。式[V]で表されるこの修飾メチルアルミノキサンは、例えば、米国特許第4960878号明細書、米国特許第5041584号明細書に示されるように、トリメチルアルミニウムおよびトリメチルアルミニウム以外のアルキルアルミニウムを用いて調製され、例えば、トリメチルアルミニウムおよびトリイソブチルアルミニウムを用いて調製される。Rxがイソブチル基であるアルミノキサンは、飽和炭化水素溶液の形でMMAO、TMAOの商品名で市販されている(Tosoh Finechem Corporation、Tosoh Research&Technology Review、Vol 47、55(2003)を参照)。
【0047】
さらに、有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)として、下記一般式[VI]で表されるボロンを含んだ有機アルミニウムオキシ化合物も挙げることができる。
【0048】
【化6】
式[VI]中、Rcは炭素数1~10の炭化水素基を示す。Rdは、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1~10の炭化水素基を示す。
【0049】
(メタロセン化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物(B-3))
メタロセン化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物(B-3)(以下、「イオン化イオン性化合物」または単に「イオン性化合物」と略称する場合がある。)としては、特表平1-501950号公報、特表平1-502036号公報、特開平3-179005号公報、特開平3-179006号公報、特開平3-207703号公報、特開平3-207704号公報、米国特許5321106号公報などに記載されたルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物などを挙げることができる。さらに、ヘテロポリ化合物およびイソポリ化合物も挙げることができる。
【0050】
その他、特開2004-51676号公報によって例示されているイオン性化合物も制限無く使用が可能である。
上記のイオン性化合物(B-3)は、1種単独で用いてもよく2種以上を混合して用いでもよい。
【0051】
前記オレフィン重合触媒は、好ましくは前記化合物(B-2)を含む。
メタロセン化合物(A)、化合物(B-1)~(B-3)は、任意の順序で反応系に導入すればよい。
【0052】
重合触媒の各成分の使用法、添加順序は任意に選ばれる。また、触媒中の各成分の少な
くとも2つ以上は予め接触されていてもよい。
架橋メタロセン化合物(P)(以下「成分(P)」ともいう。)は、反応容積1リットル当り、通常1×10-9~1×10-1モル、好ましくは1×10-8~1×10-2モルになるような量で用いられる。
【0053】
有機金属化合物(B-1)(以下「成分(B-1)」ともいう。)は、成分(B-1)と、成分(P)中の遷移金属原子(M)とのモル比[(B-1)/M]が、通常0.01~50,000、好ましくは0.05~10,000となるような量で用いられる。
【0054】
有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)(以下「成分(B-2)」ともいう。)は、成分(B-2)中のアルミニウム原子と、成分(P)中の遷移金属原子(M)とのモル比[(B-2)/M]が、通常10~5,000、好ましくは20~2,000となるような量で用いられる。
【0055】
イオン性化合物(B-3)(以下「成分(B-3)」ともいう。)は、成分(B-3)と、成分(P)中の遷移金属原子(M)とのモル比[(B-3)/M]が、通常1~10,000、好ましくは1~5,000となるような量で用いられる。
【0056】
重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。さらに、重合を反応条件の異なる二つ以上の重合器で連続的に行うことも可能である。
本発明では、前記オレフィン重合触媒の存在下にエチレンと炭素数が3以上のα-オレフィンとを共重合させてエチレン・α-オレフィン共重合体を製造する。
【0057】
炭素数が3以上のα-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンなどの炭素数が3~20のα-オレフィンを挙げることができる。これらの炭素数が3以上のα-オレフィンは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0058】
重合反応における重合原料オレフィン中のエチレン含有量は、通常80~95モル%、好ましくは80~90モル%の範囲であり、炭素数が3以上のα-オレフィンの含有量は、通常5~20モル%、好ましくは10~20モル%の範囲である。
【0059】
本発明では、重合反応は通常、炭化水素媒体中で実施される。前記炭化水素媒体として具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素、ガソリン、灯油、軽油などの石油留分などを挙げることができる。さらに、重合に用いるオレフィンを用いることもできる。
【0060】
本発明では、エチレンと炭素数が3以上のα-オレフィンとの共重合は、水素(H)の存在下で行われる。重合系に供給される水素(H)の、重合系に供給されるエチレンに対するモル比(水素のモル数/エチレンのモル数)は、好ましくは0.010未満、より好ましくは0.001以上0.010未満である。モル比が上記範囲内となるように重合系に水素を供給すると、重合活性を向上させることができる。
【0061】
本発明では、エチレンと炭素数が3以上のα-オレフィンとの共重合は、125~200℃で、より好ましくは125~155℃、特に好ましくは125~140℃の範囲で行われる。重合温度が上記範囲内にあると、重合系に水素ガスを供給することによる重合活性向上の効果が大きい。一方、重合温度が上記範囲よりも低いと、重合系に水素ガスを供給することによる重合活性向上の効果が小さい。
【0062】
平均滞留時間(重合時間)は、1時間以下、好ましくは40分以下、より好ましくは30分以下、好ましくは5~20分である。
重合圧力は、通常常圧~10MPa-G、好ましくは常圧~5MPa-G、より好ましくは常圧~4MPa-Gである。
【0063】
(エチレン・α-オレフィン共重合体)
本発明に係る製造方法で得られるエチレン・α-オレフィン共重合体の、135℃デカリン中で測定される極限粘度[η]はたとえば1.0dL/g以上、好ましくは1.0~2.0dL/gである。
極限粘度[η]は、たとえば、重合器に装入する水素(H)量あるいは重合温度により、調整することができる。
【0064】
本発明に係る製造方法で得られるエチレン・α-オレフィン共重合体の、ASTM D-1238に準拠して190℃、2.16kg荷重下で測定されるメルトフローレート(MFR)に対するASTM D-1238に準拠して190℃、10.0kg荷重下で測定されるメルトフローレート(MFR10)の比(MFR10/MFRまたはI10/Iとも記載する。)は、たとえば5.0~20、好ましくは6.0~10である。
【0065】
極限粘度[η]およびMFR10/MFRが上記範囲にあるエチレン・α-オレフィン共重合体は、成形加工性に優れている。
【実施例0066】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
[各種物性の測定]
実施例等で得られた共重合体の物性の測定方法は以下のとおりである。
【0067】
<エチレン含有量(C2含量)>
共重合体のエチレン含有量は、FT-IR(日本分光製FT-IR410型赤外分光光度計)により測定した。
【0068】
(FT-IR測定方法)
FT-IRでは、実施例等で得られた重合体を135℃に加熱し、ホットプレスにて溶解延伸後、室温下加圧冷却することで得られたフィルムを測定サンプルとして用い、検量線を利用してエチレン構造単位含有率を測定した。
【0069】
検量線作成用の共重合体サンプルのエチレン含有量を、下記条件の13C-NMR測定によって特定した。
検量線は、これらのサンプルを用い、FT-IRの測定データから、エチレン構造単位含有率データと直線、あるいは直線に近い曲線の関係になる特定の2種の吸収波数のピーク強度比を選択し、これらの関係をグラフにして得た。
【0070】
13C-NMR測定方法)
o-ジクロロベンゼン/ベンゼン-d6(4/1{vol/vol%})を測定溶媒とし、測定温度120℃、スペクトル幅250ppm、パルス繰り返し時間5.5秒、パルス幅4.7μ秒(45°パルス)の測定条件下(100MHz、日本電子ECX400P)、または測定温度120℃、スペクトル幅250ppm、パルス繰り返し時間5.5秒、パルス幅5.0μ秒(45°パルス)の測定条件下(125MHz、ブルカー・バイオスピンAVANCEIIIcryo-500)にて13C-NMRスペクトルを測定し、常法により各種シグナルをアサインし、シグナル強度の積分値を基にしてエチレン含有量の定量を行った。
【0071】
<密度>
共重合体の密度はASTM D1505に準拠して測定した。
【0072】
<メルトフローレート(MFR10およびMFR2)>
ASTM D-1238の標準法により、190℃、10.0kg荷重下でメルトフローレート(MFR10)を測定した。
ASTM D-1238の標準法により、190℃、2.16kg荷重下でメルトフローレート(MFR)を測定した。
また、下式によりI10/Iを算出した。
10/I=MFR10/MFR
【0073】
<極限粘度[η]>
測定サンプル約20mgをデカリン15mlに溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定した。このデカリン溶液にデカリン溶媒を5ml追加して希釈後、同様にして比粘度ηspを測定した。この希釈操作をさらに2回繰り返し、下記式に示すように濃度(C)を0に外挿した時のηsp/Cの値を極限粘度[η](単位;dl/g)として求めた。
[η]=lim(ηsp/C) (C→0)
【0074】
<数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)>
Agilent社製GPC-粘度検出器(GPC-VISCO)PL-GPC220を用い、以下のように測定した。
【0075】
分析カラムにはAgilent PLgel Olexisを2本用い、検出器には示差屈折計および3キャピラリー粘度計を用い、カラム温度は145℃とし、移動相としてはo-ジクロロベンゼンを用い、流速を1.0ml/分とし、試料濃度は0.1重量%とした。標準ポリスチレンには、東ソー社製のものを用いた。分子量計算は、粘度計および屈折計から実測粘度を計算し、実測ユニバーサルキャリブレーションより数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)を求めた。
【0076】
[合成例1]
公知の方法により、下記式で表される化合物(エチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、以下「A触媒」とも記載する。)を合成した。
【0077】
【化7】
【0078】
[実施例1]
充分に窒素置換した内容積2Lのステンレス製オートクレーブにヘキサン500mL、1-ブテン600mL、水素200mLを装入し、系内の温度を130℃に昇温後、エチレンを供給することにより全圧を3.0MPa-Gとした。次に、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)0.2mmolを窒素で重合器に圧入後、A触媒を0.0002mmolと、修飾メチルアルミノキサン(商品名:TMAO341、東ソー・ファインケム(株)製、以下「MMAO」と記載する。)をAl原子換算で0.1mmolとを室温で15分間混合して得られたプレミックス触媒を窒素で圧入し、攪拌回転数を250rpmにすることにより重合を開始した。その後、エチレンのみを連続的に供給することにより全圧を3.0MPa-Gに保ち、130℃で9分間重合を行った。少量のメタノールを系内に添加することにより重合を停止した後、未反応のエチレン、1-ブテン、水素をパージした。得られたポリマー溶液を、大過剰のメタノール/アセトン混合溶液中に投入することにより、ポリマーを析出させた。ポリマーをろ過により回収し、120℃の減圧下で一晩乾燥し、エチレン含量が83mol%、密度が867kg/m、MFRが1.42g/10min、MFR10が13.3g/10min、MFR10/MFRが9.37、極限粘度[η]が1.49dl/g、Mwが96,900、Mnが34,900、分子量分布(Mw/Mn)が2.78であるエチレン/1-ブテン共重合体が29.7g得られた。重合活性は987kg/mmol-Zr・hであった。
【0079】
[実施例2、3および比較例1]
重合条件を表1に記載のとおり変更したこと以外は実施例1と同様にして、エチレン/1-ブテン共重合体を製造した。重合結果を表1に示す。
【0080】
[参考例2]
充分に窒素置換した内容積2Lのステンレス製オートクレーブにヘキサン500mL、1-ブテン600mLを装入し、系内の温度を130℃に昇温後、エチレンを供給することにより全圧を3.0MPa-Gとした。次に、TIBAL0.2mmolを窒素で重合器に圧入後、A触媒を0.0003mmolと、MMAOをAl原子換算で0.15mmolとを室温で15分間混合して得られたプレミックス触媒を窒素で圧入し、攪拌回転数を250rpmにすることにより重合を開始した。その後、エチレンのみを連続的に供給することにより全圧を3.0MPa-Gに保ち、130℃で9分間重合を行った。少量のメタノールを系内に添加することにより重合を停止した後、未反応のエチレン、1-ブテンをパージした。得られたポリマー溶液を、大過剰のメタノール/アセトン混合溶液中に投入することにより、ポリマーを析出させた。ポリマーをろ過により回収し、120℃の減圧下で一晩乾燥し、エチレン含量が83mol%、密度が869kg/m、MFRが0.53g/10min、MFR10が5.7g/10min、MFR10/MFRが10.75、極限粘度[η]が1.70dl/g、Mwが224,000、Mnが85,500、分子量分布(Mw/Mn)が2.62であるエチレン/1-ブテン共重合体が20.84g得られた。重合活性は460kg/mmol-Zr・hであった。
【0081】
[参考例1、3]
重合条件を表1に記載のとおり変更したこと以外は参考例2と同様に重合を行った。重合結果を表1に示す。
【0082】
【表1】