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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136855
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】固体電解コンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/052 20060101AFI20240927BHJP
   H01G 9/15 20060101ALI20240927BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20240927BHJP
【FI】
H01G9/052 500
H01G9/15
B22F1/00 N
B22F1/00 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048141
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 伸幸
(72)【発明者】
【氏名】古川 剛士
【テーマコード(参考)】
4K018
【Fターム(参考)】
4K018AA06
4K018AA14
4K018AA40
4K018BA03
4K018BA08
4K018BA20
4K018KA37
(57)【要約】
【課題】高容量な固体電解コンデンサを提供する。
【解決手段】多孔質の陽極体と、陽極体に埋設された埋設部および陽極体の外部へ突出する突出部を有する陽極ワイヤと、を備え、陽極体は、弁作用金属粒子の焼結体であり、陽極体の形状は、陽極ワイヤが突出する正面と、正面の反対側の背面と、実装面側の底面と、底面の反対側の上面と、を有する形状であり、正面において、陽極ワイヤが突出する植立面が周囲よりも凹んでいる、陽極素子。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質の陽極体と、
陽極ワイヤと、
を備え、
前記陽極ワイヤは、前記陽極体に埋設された埋設部および前記陽極体の外部へ突出する突出部を有し、
前記陽極体は、弁作用金属粒子の焼結体であり、
前記陽極体の形状は、前記陽極ワイヤが突出する正面と、前記正面の反対側の背面と、実装面側の底面と、前記底面の反対側の上面と、を有する形状であり、
前記正面において、前記陽極ワイヤが突出する植立面が周囲よりも凹んでいる、陽極素子。
【請求項2】
前記植立面が、前記底面から前記上面まで延びている、請求項1に記載の陽極素子。
【請求項3】
前記陽極体が、前記植立面の両側に2つの凸部を有する、請求項1に記載の陽極素子。
【請求項4】
前記凸部の前記植立面からの突出長さは、前記突出部の長さの85%以上175%以下である、請求項3に記載の陽極素子。
【請求項5】
前記突出部の突端が、前記陽極体の前記正面よりも前記植立面側に位置している、請求項1に記載の陽極素子。
【請求項6】
前記突出部の突端が、前記陽極体の前記正面よりも突出している、請求項1に記載の陽極素子。
【請求項7】
請求項1に記載の陽極素子と、前記陽極素子の表面に形成された誘電体層と、前記誘電体層の少なくとも一部を覆う陰極部と、を備えるコンデンサ素子と、
前記陽極ワイヤに電気的に接続された陽極端子と、
前記陰極部に電気的に接続された陰極端子と、
前記陽極端子の一部および前記陰極端子の一部を露出させた状態で前記コンデンサ素子を覆う外装体と、
を備え、
前記突出部が、前記陽極端子と接続されている、固体電解コンデンサ。
【請求項8】
前記陽極端子が、前記陽極ワイヤの突出部と溶接される枕部と、前記枕部から前記底面に沿って屈曲する下面端子部と、を有する、請求項7に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項9】
前記下面端子部が、前記植立面側に向かって屈曲している、請求項8に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項10】
前記下面端子部が、前記植立面から離れる方向に屈曲している、請求項8に記載の固体電解コンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電解コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、等価直列抵抗(ESR)が小さく、周波数特性に優れている固体電解コンデンサの開発が進められている。固体電解コンデンサは、多孔質の陽極体と、陽極体の表面に形成された誘電体層と、誘電体層の少なくとも一部を覆う固体電解質層とを具備する。
【0003】
陽極体として、金属粒子の成形体の焼結体が用いられる。成形体は、通常、陽極ワイヤを金型の所定位置に配置し、当該金型に金属粒子を投入し、加圧成形することにより製造される。
【0004】
特許文献1は、「アノードワイヤの第1の部分がアノード粉末から延出するように前記アノードワイヤを前記アノード粉末内に挿入することと、前記アノード粉末の一部を押圧して第1の密度を有するバルク領域を形成することと、前記第2の部分の前記アノードワイヤと共に前記アノード粉末の第2の部分を押圧して第2の密度を有する高密度部分を形成することであって、前記第2の部分の前記押圧は前記第2の部分の前記アノードワイヤを歪めるのに十分である、押圧することとを含む、コンデンサアノードを形成する方法」を提案している。
【0005】
特許文献2は、「対向する一対の主面を含む多孔質焼結体と、前記多孔質焼結体に埋設され、その一方の前記主面から延びる金属製リードと、前記多孔質焼結体上に形成された誘電体層と、前記誘電体層上に形成された固体電解質層と、を備え、前記多孔質焼結体は、一対の側面および該側面より狭小な一対の端面を含み、前記多孔質焼結体の一対の前記端面は、一対の前記主面の間に第1の凹部を含む、コンデンサ素子を備えた固体電解コンデンサ」を提案している。
【0006】
特許文献3は、「弁金属の粉末を多孔質の立方体に固めて焼結したチップ体と、このチップ体の一端面から突出する陽極ワイヤと、前記チップ体における金属粉末の表面に形成した誘電体膜と、この誘電体膜の表面に形成した固体電解質層と、この固体電解質層の表面に形成した陰極側電極膜とから成る固体電解コンデンサ用のコンデンサ素子において、前記チップ体は、これに誘電体膜を形成する以前においてその各側面のうち少なくとも一つの側面に、少なくとも一つの凹所を、当該凹所が少なくともチップ体における他端面に達しないように設けた形態であることを特徴とする固体電解コンデンサに使用するコンデンサ素子の構造」を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2020-505761号公報
【特許文献2】特開2018-164061号公報
【特許文献3】特開平10-106897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本開示は、固体電解コンデンサの高容量化を目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面は、多孔質の陽極体と、陽極ワイヤと、を備え、前記陽極ワイヤは、前記陽極体に埋設された埋設部および前記陽極体の外部へ突出する突出部を有し、前記陽極体は、弁作用金属粒子の焼結体であり、前記陽極体の形状は、前記陽極ワイヤが突出する正面と、前記正面の反対側の背面と、実装面側の底面と、前記底面の反対側の上面と、を有する形状であり、前記正面において、前記陽極ワイヤが突出する植立面が周囲よりも凹んでいる、陽極素子に関する。
【0010】
本発明の別の側面は、上記陽極素子と、前記陽極素子の表面に形成された誘電体層と、前記誘電体層の少なくとも一部を覆う陰極部と、を備えるコンデンサ素子と、前記陽極ワイヤに電気的に接続された陽極端子と、前記陰極部に電気的に接続された陰極端子と、前記陽極端子の一部および前記陰極端子の一部を露出させた状態で前記コンデンサ素子を覆う外装体と、を備え、前記突出部が、前記陽極端子と接続されている、固体電解コンデンサに関する。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、高容量な固体電解コンデンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の実施形態に係る固体電解コンデンサの一例の外装体を透視した模式的な正面図である。
図2】本開示の実施形態に係る陽極素子の一例を模式的に示す斜視図である。
図3】本開示の実施形態に係る固体電解コンデンサの一例の外装体を透視した模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、本開示の実施形態について例を挙げて説明するが、本開示は以下で説明する例に限定されない。以下の説明では、具体的な数値や材料を例示する場合があるが、本開示の効果が得られる限り、他の数値や材料を適用してもよい。なお、本開示に特徴的な部分以外の構成要素には、公知の固体電解コンデンサの構成要素を適用してもよい。この明細書において、「数値A~数値Bの範囲」という場合、当該範囲には数値Aおよび数値Bが含まれる。
【0014】
[固体電解コンデンサ]
固体電解コンデンサは、コンデンサ素子を備え、コンデンサ素子は、陽極素子(「陽極部」とも称する。)と、陽極素子の表面に形成された誘電体層と、誘電体層の少なくとも一部を覆う陰極部を備える。なお、「コンデンサ」は「キャパシタ」と読み替えてもよい。
【0015】
コンデンサ素子は、陽極素子(陽極部)と陰極部に区分される。陽極素子は、多孔質の陽極体と、陽極ワイヤを具備する。陽極ワイヤは、陽極体に埋設された埋設部と、陽極体の外部へ突出する突出部を有する。陰極部の構成に特に限定はなく、公知の陰極部またはそれと同様の構成を有する陰極部であってもよい。
【0016】
陽極部と陰極部との間には、誘電体層が介在している。誘電体層は、陽極体の表面に形成され、陽極ワイヤの表面にも形成されてよい。誘電体層は、特に限定されず、公知の方法で形成してもよい。例えば、誘電体層は、陽極体に化成処理を施し、陽極体の表面に酸化被膜を成長させることにより形成される。化成処理は、化成液中に陽極体を浸漬して陽極体の表面を陽極酸化することによって施してもよい。原子層体積法(ALD法)のような気相法を利用して酸化被膜を形成してもよい。酸素を含む雰囲気下で陽極体を加熱して陽極体の表面を酸化してもよい。
【0017】
固体電解コンデンサは、陽極ワイヤに電気的に接続された陽極端子と、陰極部に電気的に接続された陰極端子と、陽極端子の一部および陰極端子の一部を露出させた状態でコンデンサ素子を覆う外装体を備える。
【0018】
(陽極素子)
陽極素子(陽極部)は、多孔質の陽極体と陽極ワイヤを備える。陽極体の形状は、陽極ワイヤが突出する正面と、正面の反対側の背面と、実装面側の底面と、底面の反対側の上面を有する形状である。正面において、陽極ワイヤが突出する植立面は周囲よりも凹んでいる。つまり、陽極体の正面は凹凸を有する面である。陽極体は、正面が凹凸を有する点を除き、概ね、直方体もしくは六面体の形状を有し得る。
【0019】
陽極体は、弁作用金属粒子の成形体の焼結体である。陽極体は、弁作用金属粒子を形成し、成形体を焼結することにより形成される。弁作用金属粒子は、弁作用金属合金の粒子でもよく、弁作用金属化合物の粒子でもよく、弁作用金属以外の添加元素を含んでもよい。
【0020】
弁作用金属としては、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)などが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、TaおよびNbの少なくとも一方が好ましい。
【0021】
陽極体の製造においては、例えば、弁作用金属粒子の中に、陽極ワイヤの一部(埋設部)が埋め込まれ、当該粒子が所定形状に加圧成形される。その後、得られた成形体を焼結することによって、陽極ワイヤの一部が埋設された陽極体が形成される。
【0022】
陽極ワイヤは、金属で形成されている。金属は弁作用金属であってもよい。陽極ワイヤの一部は陽極体に埋設され、残部は陽極体から突き出した突出部である。埋設部は、突出部の突出方向の延長線上に延びていてもよい。この場合、陽極ワイヤは概ね直線状の形状である。ただし、陽極ワイヤの埋設部および突出部の少なくとも一方は、屈曲もしくは折れ曲がりを有してもよい。
【0023】
陽極ワイヤの形態は、特に限定されず、概ね線状の形状であればよい。陽極ワイヤの長さ方向に垂直な断面の形状は、円形でもよく、楕円形でもよく、多角形でもよく、その他の形状でもよい。陽極ワイヤは、その長さ方向に垂直な断面の形状が長方形であるリボン形状であってもよい。
【0024】
(陽極端子)
陽極端子は、陽極リードフレーム、陽極リード端子などとも称される。陽極端子は、外装体の内部に埋設される内部端子部と、外装体から少なくとも一部が外部に露出する外部端子部を有する。陽極端子は、例えば、金属(銅、銅合金など)のシート(金属板および金属箔を含む)を公知の金属加工法で加工することによって形成してもよい。
【0025】
陽極ワイヤの突出部は、陽極端子(内部端子部)と接続されている。突出部と内部端子部の接続は、溶接により行われてもよく、導電性部材を介して行われてもよい。
【0026】
陽極端子(内部端子部)は、陽極ワイヤの突出部と溶接される枕部を有してもよい。枕部は、内部端子部の少なくとも一部を構成している。内部端子部は、枕部から底面に沿って屈曲する下面端子部を有してもよい。枕部は、突出部と交差する端面を有する板状部であり得る。当該端面は突出部を底面側から支持する。
【0027】
下面端子部は、植立面側に向かって屈曲していてもよい。この場合、下面端子部が陽極体の正面側に更に突出することがないため、下面端子部のためのデッドスペースを小さくすることができ、陽極体を最大限大きくすることができる。よって、高容量化に有利である。
【0028】
下面端子部は、植立面から離れる方向に屈曲していてもよい。この場合、下面端子部が陽極体の正面側に更に突出するが、下面端子部の形成プロセスが容易であり、生産性の向上に有利である。
【0029】
内部端子部は、外装体の外部からは視認できない部分である。外部端子部は、外装体の外部から視認できる部分である。例えば、陽極端子または陰極端子が板状の部分を有し、その板状の部分の一方の面が外装体と接触し、残りの面が外装体の外部から視認できる場合、そのような板状の部分は、外部端子部である。外部端子部は、固体電解コンデンサを回路部材に電気的に接続する端子電極の役割を有する。回路部材には、基板、電子部品などが包含される。固体電解コンデンサは、一般に、回路部材に搭載されて使用される。
【0030】
植立面は、正面の正投影像の一部と重複する面である。植立面は、陽極ワイヤの埋設部と突出部の境界を画定する面であり得る。埋設部と突出部の境界を切断する断面は、植立面と面一であり得る。正面の正投影像の植立面と重複しない部分に対応する面は、植立面よりも陽極ワイヤの突出部と同じ方向に突出している。植立面の面方向と陽極ワイヤの突出部が突出する方向とが成す角度は、概ね90°であればよいが、0°より大きければよく、45°以上90°以下であってもよい。
【0031】
植立面の形状は、特に限定されないが、植立面を正面側から見たときの形状が四角形であることが、弁作用金属粒子の成形体の形成が容易である点で好ましく、矩形であることがより好ましい。
【0032】
植立面は、実装面側の底面から、底面の反対側の上面まで延びていることが望ましい。植立面が底面から上面まで連続する面である場合、そのような植立面を周囲より凹ませることは、より複雑な形状に凹ませるよりも容易である。底面から上面に向かう方向と垂直な植立面の幅Aは、容量向上の観点からは小さいほど好ましく、固体電解コンデンサの生産性の向上の観点(例えば、突出部と陽極端子の接続プロセスの容易さ)からは、大きいほど好ましい。底面から上面に向かう方向と垂直な正面の幅(正面の正投影像の幅)をBとすると、B/3<A≦B/2を満たすことが好ましく、B/3<A≦2B/5を満たすことがより好ましい。
【0033】
なお、実装面とは、固体電解コンデンサの回路部材との対向面であり、通常、実装面に陽極端子の外部端子部が配されている。
【0034】
植立面の位置は、正面の中央でもよく、右寄りでもよく、左寄りでもよく、一方の側面に連続する位置でもよい。側面とは、陽極体の正面、背面、底面および上面以外の面である。
【0035】
植立面が正面の中央に位置する場合、陽極体は、植立面の両側に2つの凸部を有する。そのような陽極体は、例えば3つの同じ高さの直方体部位で構成される。2つが凸部を構成する小さな直方体部位であり、残りの一つが凸部以外を構成する大きな直方体部位である。大きな直方体部位の一面(植立面を含む面)に2つの小さな直方体ブロックが繋がっている。小さな直方体ブロックの3面は、大きな直方体ブロックの3面と面一になっていてもよい。
【0036】
植立面が一方の側面に連続する位置である場合、陽極体は、植立面の一方側に1つの凸部を有し得る。そのような陽極体は、例えば2つの同じ高さの直方体部位で構成される。1つが凸部を構成する小さな直方体部位であり、残りの一つが凸部以外を構成する大きな直方体部位である。大きな直方体部位の一面(植立面を含む面)に1つの小さな直方体部位が繋がっている。小さな直方体部位の3面は、大きな直方体部位の3面と面一になっていてもよい。ただし、2つの植立面をそれぞれ一方および他方の側面に連続するように設けてもよい。この場合、2つの植立面からそれぞれ陽極ワイヤを植立させてもよい。このとき、小さな直方体部位の2面が、大きな直方体部位の2面と面一になっていてもよい。
【0037】
陽極ワイヤの突出部が突出する方向における小さな直方体部位の長さC(換言すれば、凸部の植立面からの突出長さ)は、例えば、陽極ワイヤの突出部の長さLの85%以上175%以下であってもよい。また、小さな直方体部位の長さCは、陽極体の正面から背面までの距離(一様でない場合には最大距離)の10%以上50%以下が好ましい。
【0038】
陽極ワイヤの突出部の突端は、陽極体の正面よりも第1距離だけ突出していてもよい。ここでは、陽極体の正面とは、最も突出部の突出方向に位置する面をいう。突出部の突端を陽極体の正面よりも突出させることで、突出部と陽極端子の接続が容易になる。第1距離は、固体電解コンデンサの体積効率の観点から、陽極体の正面から背面までの距離(一様でない場合には最大距離)の10%以下が好ましい。
【0039】
突出部の突端は、陽極体の正面よりも植立面側に位置していてもよい。この場合、植立面を底面とする凹部に、突出部を収容することができるので、固体電解コンデンサの体積効率が顕著に向上する。
【0040】
(陰極部)
陰極部は、例えば固体電解質層を有する。陰極部は、固体電解質層の少なくとも一部を覆う陰極層を含んでもよい。固体電解質層に特に限定はなく、公知の電解コンデンサに用いられている固体電解質を適用してもよい。固体電解質層は、2層以上の異なる固体電解質層の積層体であってもよい。固体電解質層は、誘電体層の少なくとも一部を覆うように配置される。固体電解質層は、マンガン化合物や導電性高分子を用いて形成してもよい。
【0041】
導電性高分子は、π共役系高分子であってもよく、導電性高分子の例には、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、およびこれらの誘導体などが含まれる。これらは、単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。また、導電性高分子は、2種以上のモノマーの共重合体でもよい。なお、導電性高分子の誘導体とは、導電性高分子を基本骨格とする高分子を意味する。例えば、ポリチオフェンの誘導体の例には、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)などが含まれる。
【0042】
導電性高分子にはドーパントが添加されている。ドーパントは、導電性高分子に応じて選択でき、公知のドーパントを用いてもよい。ドーパントの例には、ナフタレンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、およびこれらの塩などが含まれる。固体電解質層の一例は、ポリスチレンスルホン酸(PSS)がドープされたポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)を用いて形成される。
【0043】
導電性高分子を含む固体電解質層は、誘電体層にモノマーやオリゴマーを含浸させ、その後、化学重合や電解重合によりモノマーやオリゴマーを重合させる方法、あるいは、誘電体層が形成された陽極体に、導電性高分子(および必要に応じてドーパント)の溶液または分散液を含浸し、乾燥させることにより、誘電体層の少なくとも一部に形成される。
【0044】
陰極層は、固体電解質層上に形成された導電層であってもよく、例えば、固体電解質層を覆うように形成された導電層であってもよい。陰極層は、固体電解質層上に形成されたカーボン層と、カーボン層上に形成された金属ペースト層とを含んでもよい。カーボン層は、黒鉛等の導電性炭素材料と樹脂とによって形成されてもよい。金属ペースト層は、金属粒子(例えば銀粒子)と樹脂とによって形成されてもよく、例えば公知の銀ペーストによって形成されてもよい。
【0045】
(陰極端子)
陰極端子は、陰極リードフレーム、陰極リード端子などとも称される。陰極端子は、外装体の内部に埋設される内部端子部と、外装体から少なくとも一部が外部に露出する外部端子部を有する。陰極端子は、例えば、金属(銅、銅合金など)のシート(金属板および金属箔を含む)を公知の金属加工法で加工することによって形成してもよい。
【0046】
コンデンサ素子の陰極層は、導電性部材によって陰極端子の接続面に接続される。導電性部材は、金属粒子(例えば銀粒子)と樹脂を含む材料でもよく、例えば公知の金属ペースト(例えば銀ペースト)用いてもよい。樹脂は熱硬化性を有してもよい。その場合、金属ペーストを加熱することにより、硬化した導電性部材が形成される。
【0047】
(外装体)
外装体は、固体電解コンデンサの表面にコンデンサ素子が露出しないように、コンデンサ素子の周囲に配置される。外装体は、陽極端子と陰極端子とを絶縁する。外装体は、例えば、熱硬化性樹脂と絶縁性フィラーを含む樹脂組成物で構成され得る。外装体は、コンデンサ素子を金型に収容し、トランスファー成型法、圧縮成型法等により、未硬化の樹脂組成物を金型に導入し、硬化させることにより形成してもよい。
【0048】
外装体を構成する絶縁性の熱硬化性樹脂の例には、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、ポリイミド、不飽和ポリエステルなどが含まれる。
【0049】
絶縁性フィラーの例には、絶縁性の粒子、繊維などが含まれ、粒子が好ましい。絶縁性フィラーを構成する絶縁性材料としては、例えば、シリカ、アルミナなどの酸化物、ガラス、鉱物材料(タルク、マイカ、クレーなど)などが挙げられる。外装体における絶縁性フィラーの含有率に特に限定はなく、30質量%~95質量%の範囲(例えば50質量%~90質量%の範囲)にあってもよい。
【0050】
以下、図面を参照しながら更に具体的に説明するが、以下の例は本発明を限定するものではない。以下で示す図は模式的なものであり、実際の部材の形状、寸法、数などを正確に反映するものではない。以下で説明する例には、上述した構成を適用できる。また、以下で説明する例は、上述した記載に基づいて変更できる。また、以下で説明する事項を、上記の実施形態に適用してもよい。また、以下で説明する実施形態において、本開示の固体電解コンデンサに必須ではない構成要素は省略してもよい。
【0051】
図1は、本開示の実施形態に係る固体電解コンデンサの一例の外装体を透視した模式的な縦断面図である。図2は、本開示の実施形態に係る陽極素子の一例を模式的に示す斜視図である。図3は、本開示の実施形態に係る固体電解コンデンサの一例の外装体を透視した模式的な平面図である。
【0052】
図1に示す固体電解コンデンサ100は、コンデンサ素子110、陽極端子120、陰極端子130および外装体101を含む。コンデンサ素子110は、陽極素子(陽極部)111、誘電体層114および陰極部115を含む。陽極素子111は、陽極体113と、陽極ワイヤ112を含む。陽極体113の表面には誘電体層114が形成されている。陰極部115は、誘電体層114の少なくとも一部を覆うように配置された固体電解質層116と、固体電解質層116上に形成された陰極層117とを含む。陰極層117は、例えば、固体電解質層116上に形成されたカーボン層と、カーボン層上に形成された金属ペースト層を含む。陰極層117は、導電性部材(導電層)141を介して、陰極端子130に接続されている。
【0053】
陽極ワイヤ112の一部は陽極体113の植立面113pから、固体電解コンデンサ100の前面100fに向かって突出する突出部112aである。陽極ワイヤ112の他の部分は陽極体113に埋設された埋設部112bである。
【0054】
陽極端子120は、下面端子部(陽極外部端子部)121および枕部(陽極内部端子部)122を含む。下面端子部121は、固体電解コンデンサ100の底面(コンデンサ底面100b)において外装体101から露出している。枕部122は、陽極ワイヤ112に接続されている。陰極端子130は、陰極外部端子部131および陰極内部端子部132を含む。陰極外部端子部131は、固体電解コンデンサ100のコンデンサ底面100bにおいて外装体101から露出している。
【0055】
陽極体113の形状は、陽極ワイヤ112が突出する正面113fと、正面113fの反対側の背面113eと、実装面側の底面113bと、底面113bの反対側の上面113uを有する形状である。正面113fにおいて、陽極ワイヤ112が突出する植立面113pは周囲よりも凹んでいる。つまり、陽極体113の正面113fは凹凸を有する面である。より具体的には、陽極体113の正面113fの植立面113p以外の面は、植立面113pよりも陽極ワイヤ112の突出部112aと同じ方向に突出している。植立面113pの面方向と陽極ワイヤ112の突出部112aが突出する方向とが成す角度は、概ね90°(例えば80~90°)である。
【0056】
ここでは、植立面113pの形状は、矩形であり、かつ、底面113bから上面113uまで連続する面である。植立面の幅A(底面から上面に向かう方向と垂直な植立面の幅)と、正面の正投影像の幅B(底面から上面に向かう方向と垂直な正面の幅)は、B/3<A≦2B/5を満たす。
【0057】
植立面113pの位置は、正面113fの中央に位置する。陽極体113は、植立面113pの両側で凸部を形成する小さな2つの直方体部位1131と、植立面113pを含む平面よりも背面113e側に位置する大きな直方体部位1132とで構成されている。小さな2つの直方体部位1131の3面は、大きな直方体部位1132の3面と面一になっている。
【0058】
図1では、陽極ワイヤ112の突出部112aが突出する方向における小さな直方体部位1131の長さC(凸部の植立面113pからの突出長さ)は、陽極ワイヤ112の突出部112aの長さLよりも僅かに大きく、長さLの100%以上120%以下の範囲内である。突出部112aは、植立面113pを底面とする凹部に収容されており、固体電解コンデンサ100は高い体積効率を有する。
【0059】
ただし、C>Lである必要はな。例えばC≦Lとすることで、陽極ワイヤ112の突出部112aの突端を陽極体113の正面113fよりも第1距離だけ突出させてもよい。これにより、陽極ワイヤ112の突出部112aと陽極端子120の枕部122との接続プロセスが容易になる。
【0060】
(付記)
上記記載によって以下の技術が開示される。
(技術1)
多孔質の陽極体と、
陽極ワイヤと、
を備え、
前記陽極ワイヤは、前記陽極体に埋設された埋設部および前記陽極体の外部へ突出する突出部を有し、
前記陽極体は、弁作用金属粒子の焼結体であり、
前記陽極体の形状は、前記陽極ワイヤが突出する正面と、前記正面の反対側の背面と、実装面側の底面と、前記底面の反対側の上面と、を有する形状であり、
前記正面において、前記陽極ワイヤが突出する植立面が周囲よりも凹んでいる、陽極素子。
(技術2)
前記植立面が、前記底面から前記上面まで延びている、技術1に記載の陽極素子。
(技術3)
前記陽極体が、前記植立面の両側に2つの凸部を有する、技術1または2に記載の陽極素子。
(技術4)
前記凸部の前記植立面からの突出長さは、前記突出部の長さの85%以上175%以下である、技術3に記載の陽極素子。
(技術5)
前記突出部の突端が、前記陽極体の前記正面よりも前記植立面側に位置している、技術1~4のいずれか1つに記載の陽極素子。
(技術6)
前記突出部の突端が、前記陽極体の前記正面よりも突出している、技術1~4のいずれか1つに記載の陽極素子。
(技術7)
技術1~6のいずれか1つに記載の陽極素子と、前記陽極素子の表面に形成された誘電体層と、前記誘電体層の少なくとも一部を覆う陰極部と、を備えるコンデンサ素子と、
前記陽極ワイヤに電気的に接続された陽極端子と、
前記陰極部に電気的に接続された陰極端子と、
前記陽極端子の一部および前記陰極端子の一部を露出させた状態で前記コンデンサ素子を覆う外装体と、
を備え、
前記突出部が、前記陽極端子と接続されている、固体電解コンデンサ。
(技術8)
前記陽極端子が、前記陽極ワイヤの突出部と溶接される枕部と、前記枕部から前記底面に沿って屈曲する下面端子部と、を有する、技術7に記載の固体電解コンデンサ。
(技術9)
前記下面端子部が、前記植立面側に向かって屈曲している、技術8に記載の固体電解コンデンサ。
(技術10)
前記下面端子部が、前記植立面から離れる方向に屈曲している、技術8に記載の固体電解コンデンサ。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本開示に係る固体電解コンデンサは、高容量化に有利であり、特に高容量化と小型化の両立が求められる様々な用途に利用できる。
【符号の説明】
【0062】
100 :固体電解コンデンサ
100b :コンデンサ底面
100f :前面
101 :外装体
110 :コンデンサ素子
111 :陽極素子(陽極部)
112 :陽極ワイヤ
112a :突出部
112b :埋設部
113 :陽極体
113b :底面
113e :背面
113f :正面
113p :植立面
113u :上面
114 :誘電体層
115 :陰極部
116 :固体電解質層
117 :陰極層
120 :陽極端子
121 :下面端子部
122 :枕部
130 :陰極端子
131 :陰極外部端子部
132 :陰極内部端子部
1131 :直方体部
1132 :直方体部
図1
図2
図3