(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136857
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】仮接合方法及び接合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B23K 20/12 20060101AFI20240927BHJP
B23K 101/12 20060101ALN20240927BHJP
【FI】
B23K20/12 310
B23K20/12 360
B23K101:12
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048145
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 智洋
【テーマコード(参考)】
4E167
【Fターム(参考)】
4E167AA06
4E167AA07
4E167AA08
4E167AA13
4E167AA29
4E167BG06
4E167BG12
4E167BG14
4E167BG24
4E167BG25
4E167BG26
4E167DB06
(57)【要約】
【課題】仮接合部に回転ツールの抜き穴が残ることを抑制可能な仮接合方法を提供する。
【解決手段】仮接合方法は、第1部材と第2部材とを仮接合部において回転ツールを用いた摩擦攪拌接合により接合する工程を備えている。回転ツールは、仮接合部に挿入された状態で、仮接合部の一方端から仮接合部の他方端まで移動された後に、他方端から一方端に向かって仮接合終了位置まで移動される。他方端から一方端に向かって仮接合終了位置まで回転ツールが移動している際、回転ツールの挿入深さは、仮接合終了位置に近づくにしたがって小さくなる。回転ツールは、仮接合終了位置において引き抜かれる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材と第2部材とを仮接合部において回転ツールを用いた摩擦攪拌接合により接合する工程を備え、
前記回転ツールは、前記仮接合部に挿入された状態で、前記仮接合部の一方端から前記仮接合部の他方端まで移動された後に、前記他方端から前記一方端に向かって仮接合終了位置まで移動され、
前記他方端から前記一方端に向かって前記仮接合終了位置まで前記回転ツールが移動している際、前記回転ツールの挿入深さは、前記仮接合終了位置に近づくにしたがって小さくなり、
前記回転ツールは、前記仮接合終了位置において引き抜かれる、仮接合方法。
【請求項2】
前記他方端から前記仮接合終了位置までの前記回転ツールの移動距離は、前記一方端から前記他方端までの前記回転ツールの移動距離よりも小さく、かつ前記回転ツールのツール径よりも大きい、請求項1に記載の仮接合方法。
【請求項3】
第1部材と第2部材とを仮接合部において回転ツールを用いた摩擦攪拌接合により仮接合する工程と、
前記第1部材と前記第2部材とを前記仮接合部を通る本接合部において前記回転ツールを用いた摩擦攪拌接合により本接合する工程とを備え、
前記回転ツールは、前記仮接合部に挿入された状態で、前記仮接合部の一方端から前記仮接合部の他方端まで移動された後に、前記他方端から前記一方端に向かって仮接合終了位置まで移動され、
前記他方端から前記一方端に向かって前記仮接合終了位置まで前記回転ツールが移動している際、前記回転ツールの挿入深さは、前記仮接合終了位置に近づくにしたがって小さくなり、
前記回転ツールは、前記仮接合終了位置において引き抜かれる、接合体の製造方法。
【請求項4】
前記他方端から前記仮接合終了位置までの前記回転ツールの移動距離は、前記一方端から前記他方端までの前記回転ツールの移動距離よりも小さく、かつ前記回転ツールのツール径よりも大きい、請求項3に記載の接合体の製造方法。
【請求項5】
前記第1部材は、開口部を有する箱状容器であり、
前記第2部材は、前記開口部を閉塞するように前記箱状容器上に配置されている封止体であり、
前記仮接合部は、前記箱状容器と前記封止体とが重なっている部分にある、請求項3に記載の接合体の製造方法。
【請求項6】
前記本接合部は、前記開口部の開口縁に沿った環状であり、
前記回転ツールは、前記本接合部に挿入された状態で、接合開始位置から前記本接合部を周回して前記接合開始位置まで移動された後に、接合終了位置まで移動され、
前記接合開始位置から前記接合終了位置まで移動している際、前記回転ツールの挿入深さは、前記接合終了位置に近づくにしたがって小さくなり、
前記回転ツールは、前記接合終了位置において引き抜かれる、請求項5に記載の接合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、仮接合方法及び接合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特開2018-65164号公報(特許文献1)には、仮接合方法が記載されている。特許文献1に記載の仮接合方法では、中空容器本体と封止体とが、仮接合部において、回転ツールを用いた摩擦攪拌接合によりスポット仮付けされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の仮接合方法が行われた後、中空容器本体と封止体とが、仮接合部を通るように配置されている本接合部において、回転ツールを用いた摩擦攪拌接合により本接合が行われる。特許文献1に記載の仮接合方法によると、仮接合部に回転ツールの抜き穴が残るため、本接合部に当該抜き穴に起因した凹み欠陥が発生しやすく、中空容器の気密性・水密性を損なう原因となり得る。
【0005】
本開示は、上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものである。より具体的には、本開示は、仮接合部に回転ツールの抜き穴が残ることを抑制可能な仮接合方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の仮接合方法は、第1部材と第2部材とを仮接合部において回転ツールを用いた摩擦攪拌接合により接合する工程を備えている。回転ツールは、仮接合部に挿入された状態で、仮接合部の一方端から仮接合部の他方端まで移動された後に、他方端から一方端に向かって仮接合終了位置まで移動される。他方端から一方端に向かって仮接合終了位置まで回転ツールが移動している際、回転ツールの挿入深さは、仮接合終了位置に近づくにしたがって小さくなる。回転ツールは、仮接合終了位置において引き抜かれる。
【発明の効果】
【0007】
本開示の仮接合方法によると、仮接合部に回転ツールの抜き穴が残ることを抑制可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図7】仮接合工程S1の終了後における仮接合部40近傍の拡大平面図である。
【
図9】仮接合工程S1の変形例1を説明する拡大平面図である。
【
図10】仮接合工程S1の変形例2を説明する拡大平面図である。
【
図11】仮接合工程S1の変形例3を説明する拡大平面図である。
【
図12】仮接合工程S1の変形例4を説明する拡大平面図である。
【
図13】本接合工程S2の変形例を説明する平面図である。
【
図16】接合体100Aの製造方法における仮接合工程S1を説明する拡大平面図である。
【
図17】
図16中のXVII-XVIIにおける断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の実施形態の詳細を、図面を参照しながら説明する。以下の図面では、同一又は相当する部分に同一の参照符号を付し、重複する説明は繰り返さないものとする。
【0010】
実施の形態1.
実施の形態1に係る接合体を説明する。実施の形態1に係る接合体を、接合体100とする。
【0011】
(接合体100の構成)
以下に、接合体100の構成を説明する。
【0012】
図1は、接合体100の斜視図である。
図2は、接合体100の分解斜視図である。
図1及び
図2に示されているように、接合体100は、第1部材10と、第2部材20とを有している。第1部材10は、箱状部材11である。第2部材20は、封止体21を有している。接合体100は、中空容器である。
【0013】
第1部材10(箱状部材11)の構成材料は、摩擦攪拌が可能な金属材料である。第1部材10(箱状部材11)の構成材料の具体例には、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、チタン、チタン合金、マグネシウム、マグネシウム合金等が挙げられる。第2部材20(封止体21)の構成材料は、摩擦攪拌が可能な金属材料である。第2部材20(封止体21)の構成材料の具体例には、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、チタン、チタン合金、マグネシウム、マグネシウム合金等が挙げられる。第2部材20(封止体21)の構成材料は、第1部材10(箱状部材11)の構成材料と同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0014】
箱状部材11は、側壁部11aと、底壁部11bとを有している。側壁部11aは、平面視において矩形環状である。底壁部11bは、側壁部11aの下端に連なっている。これにより、側壁部11aの下端側は、閉塞されている。箱状部材11は、開口部11cを有している。開口部11cは、側壁部11aの上端により画されている。上記のとおり側壁部11aが平面視において矩形環状であるため、開口部11cは矩形状である。
【0015】
封止体21は、平板状の部材である。封止体21は、開口部11cを閉塞するように、側壁部11aの上端上に配置されている。封止体21は、例えば、平面視において矩形状である。
【0016】
第1部材10(箱状部材11)と第2部材20(封止体21)とは、本接合部30において接合されている。本接合部30は、箱状部材11(側壁部11aの上端)と封止体21とが重なる位置にある。本接合部30は、例えば平面視において環状である。より具体的には、本接合部30は、開口部11cの開口縁に沿った矩形環状である。箱状部材11と封止体21が接合されることにより、接合体100の内部には、側壁部11a、底壁部11b及び封止体21により画されている閉空間が形成されている。
【0017】
(接合体100の製造方法)
以下に、接合体100の製造方法を説明する。
【0018】
図3は、接合体100の製造工程図である。
図3に示されているように、接合体100の製造方法は、仮接合工程S1と、本接合工程S2とを有している。
【0019】
図4は、仮接合工程S1を説明する平面図である。
図5は、
図4中のVにおける拡大図である。
図6は、
図5中のVI-VIにおける断面図である。
図4から
図6に示されているように、仮接合工程S1では、仮接合部40において、第1部材10(箱状部材11)と第2部材20(封止体21)とが、回転ツール50を用いた摩擦攪拌接合により仮接合される。
【0020】
仮接合部40は、本接合部30は、箱状部材11(側壁部11aの上端)と封止体21とが重なる位置にある。仮接合部40の数は、例えば、複数である。複数の仮接合部40は、平面視において開口部11cの開口縁に沿った矩形環状に間隔を空けて並んでいる。仮接合部40は、一方端40aと他方端40bとを有している。他方端40bは、一方端40aの反対側の端である。
【0021】
仮接合工程S1では、第1に、側壁部11aの上端上に封止体21が配置される。第2に、一方端40aに回転している回転ツール50が挿入される。この際、回転ツール50は、その先端部(先端部50a)が側壁部11aと封止体21の境界面に達するように挿入される。すなわち、回転ツール50は、封止体21を貫通するように挿入される。第3に、回転ツール50が、一方端40aから他方端40bまで移動される。回転ツール50の移動に伴い、仮接合部40にある箱状部材11の構成材料及び封止体21の構成材料が塑性流動し、側壁部11aの上端と封止体21とが摩擦攪拌接合される。
【0022】
第4に、回転ツール50が、他方端40bから一方端40aに向かって仮接合終了位置40cまで移動される。この際、回転ツール50の挿入深さは仮接合終了位置40cに近づくにしたがって小さくなり、回転ツール50は仮接合終了位置40cにおいて引き抜かれる。
図7は、仮接合工程S1の終了後における仮接合部40近傍の拡大平面図である。
図7に示されているように、仮接合工程S1の終了後において、仮接合部40の表面には溝40dが形成されている。溝40dは、平面視において、他方端40bと仮接合終了位置40cとの間に延びている。溝40dの幅は、仮接合終了位置40cに近づくにしたがって小さくなっている。
【0023】
回転ツール50が一方端40aから他方端40bに至るまでの平面視における軌跡を軌跡L1とし、回転ツール50が他方端40bから仮接合終了位置40cに至るまでの平面視における軌跡を軌跡L2とする。軌跡L2は、例えば、軌跡L1と重なっている。回転ツール50が一方端40aから他方端40bに至るまでの平面視における移動距離を移動距離DIS1とし、回転ツール50が他方端40bから仮接合終了位置40cに至るまでの移動距離を移動距離DIS2とし、回転ツール50のツール径をツール径Dとする。移動距離DIS2は、好ましくは、移動距離DIS1よりも小さく、かつツール径Dよりも大きい。
【0024】
回転ツール50は、例えば、ショルダを有しないショルダレスツールである。先端部50aの長さは、封止体21の厚さよりも大きい。先端部50aの表面は、例えば、先端に近づくほど外径が小さくなるように回転ツール50の中心軸に対して傾斜している。先端部50aの表面の傾斜角度は、例えば20°以上40°以下である。なお、図示されていないが、先端部50aの表面には、螺旋状の溝加工が行われている。螺旋状の溝加工は、回転ツール50の回転方向と逆方向に行われていることが好ましい。例えば回転ツール50が左回りに回転される場合、螺旋状の溝は、先端に向かって右回りに形成される。
【0025】
本接合工程S2は、仮接合工程S1の後に行われる。
図8は、本接合工程S2を説明する平面図である。
図8に示されているように、第1部材10(箱状部材11)と第2部材20(封止体21)とが、本接合部30において、回転ツール50を用いて摩擦攪拌接合される。本接合部30は、平面視において仮接合部40を通っている。
【0026】
本接合工程S2では、第1に、本接合開始位置30aに回転している回転ツール50が挿入される。この際、回転ツール50は、先端部50aが側壁部11aと封止体21の境界面に達するように挿入される。すなわち、回転ツール50は、封止体21を貫通するように挿入される。第3に、回転ツール50が、本接合開始位置30aから本接合部30を周回して再び本接合開始位置30aに戻るまで移動される。これにより、本接合部30にある箱状部材11の構成材料及び封止体21の構成材料が塑性流動し、側壁部11aの上端と封止体21とが摩擦攪拌接合される。
【0027】
回転ツール50が、本接合開始位置30aから本接合終了位置30bまで移動される。本接合終了位置30bは、本接合部30にある。この際、回転ツール50の挿入深さは本接合終了位置30bに近づくにしたがって小さくなり、回転ツール50は本接合終了位置30bにおいて引き抜かれる。以上により、
図1に示される接合体100の構造が形成されることになる。
【0028】
(仮接合工程S1の変形例)
図9は、仮接合工程S1の変形例1を説明する拡大平面図である。
図9に示されているように、仮接合部40は、平面視において直線状でなくてもよい。例えば、開口部11cの開口縁の角部近傍にある仮接合部40は、開口部11cの開口縁の角部に沿って曲がっていてもよい。この場合、軌跡L1や軌跡L2も、同様に曲がっている。
【0029】
図10は、仮接合工程S1の変形例2を説明する拡大平面図である。
図11は、仮接合工程S1の変形例3を説明する拡大平面図である。
図10及び
図11に示されているように、軌跡L2は、軌跡L1と重なっていなくもよい。より具体的には、軌跡L2は、
図10に示されるように軌跡L1と非平行であってもよい。すなわち、回転ツール50は、他方端40bから一方端40aに向かって仮接合終了位置40cまで斜方に移動されてもよい。また、軌跡L2は、
図11に示されているように、軌跡L1と平行であるが、仮接合部40の延びる方向と直交する方向において軌跡L1とずれた位置にあってもよい。すなわち、回転ツール50は、他方端40bに達した後に平面視において曲線状に折り返された後、再び直線状に移動されてもよい。
【0030】
図12は、仮接合工程S1の変形例4を説明する拡大平面図である。
図12に示されているように、仮接合部40は、平面視において渦巻状に延びていてもよい。この場合、一方端40a及び他方端40bは、例えば、それぞれ平面視において渦巻状の仮接合部40の最外周及び最内周にある。
【0031】
(本接合工程S2の変形例)
図13は、本接合工程S2の変形例を説明する平面図である。
図13に示されているように、本接合工程S2では、本接合終了位置30bが平面視において本接合部30の外にあってもよい。なお、この場合も同様に、回転ツール50の挿入深さは本接合終了位置30bに近づくにしたがって小さくなり、回転ツール50は本接合終了位置30bにおいて引き抜かれる。
【0032】
(接合体100の製造方法の効果)
以下に、接合体100の製造方法の効果を説明する。
【0033】
接合体100の製造方法では、仮接合工程S1が行われる。仮接合工程S1では、回転ツール50が、他方端40bから一方端40aに向かって仮接合終了位置40cまで移動される間に挿入深さが徐々に小さくなった上で、仮接合終了位置40cにおいて引き抜かれる。そのため、接合体100の製造方法では、仮接合工程S1が行われた後に、回転ツール50の抜き穴が残りにくい。その結果、本接合工程S2が行われた後に仮接合工程S1において残った回転ツール50の抜き穴に起因した凹み欠陥が形成されにくく、接合体100(中空容器)の気密性・水密性を確保することが可能である。
【0034】
また、仮接合工程S1では、回転ツール50が他方端40bに達した後に一方端40aに向かって折り返して移動されるため、仮接合部40を短くすることができる。また、回転ツール50がこのように折り返して移動されるため、仮接合部40の全長にわたって第1部材10(箱状部材11)と第2部材20(封止体21)とを強固に仮接合することができる。なお、回転ツール50が他方端40bに達した後に方向を変えずに移動させ、挿入深さを徐々に小さくした上で回転ツール50を引き抜く場合、未接合領域(仮接合部40の外)に溝40dが形成されることになり、本接合工程S2が行われる際に欠陥発生の原因となることがある。
【0035】
移動距離DIS2がツール径Dよりも大きくすることにより、溝40dの深さを小さくすることができる。移動距離DIS2を移動距離DIS1よりも小さくすることにより、回転ツール50の引き抜きを強固に接合された仮接合部40において行うことができる。先端部50aの表面に螺旋状の溝加工が行われている場合、回転ツール50を挿入する際に回転ツール50を駆動する接合装置に対する負荷を低減することが可能である。この場合、摩擦攪拌接合中に組成流動する金属材料を仮接合部40(本接合部30)に留めることが可能となる。
【0036】
実施の形態2.
実施の形態2に係る接合体を説明する。実施の形態2に係る接合体を、接合体100Aとする。ここで、接合体100と異なる点を主に説明し、重複する説明は繰り返さないものとする。
【0037】
(接合体100Aの構成)
以下に、接合体100Aの構成を説明する。
【0038】
図14は、接合体100Aの斜視図である。
図15は、接合体100Aの分解斜視図である。
図14及び
図15に示されているように、接合体100Aは、第1部材10(箱状部材11)と、第2部材20(封止体21)とを有している。接合体100Aでは、第1部材10(箱状部材11)と第2部材20(封止体21)とが本接合部30において回転ツール50を用いた摩擦攪拌接合により接合されている。これらの点に関して、接合体100Aの構成は、接合体100の構成と共通している。
【0039】
接合体100Aでは、側壁部11aの上端に、凹部11dが形成されている。凹部11dは、段差底面11daと、段差側面11dbとを有している。段差底面11daは、平面視において開口部11cの隣にある。段差側面11dbの下端は、開口部11cとは反対側の段差底面11daの端に連なっている。段差側面11dbの上端は、凹部11dの周囲にある側壁部11aの上端に連なっている。
【0040】
接合体100Aでは、封止体21が、開口部11cを閉塞するように段差底面11da上に配置されている。封止体21が段差底面11da上に配置されている状態で、封止体21の側面は、段差側面11dbに接触することが好ましい。接合体100Aでは、本接合部30が、平面視において、凹部11dの周囲にある側壁部11aの上端と封止体21の外周縁に重なっている。これらの点に関して、接合体100Aの構成は、接合体100の構成と異なっている。
【0041】
(接合体100Aの製造方法)
以下に、接合体100Aの製造方法を説明する。
【0042】
接合体100Aの製造方法は、仮接合工程S1と本接合工程S2とを有している。この点に関して、接合体100Aの製造方法は、接合体100の製造方法と共通している。接合体100Aの製造方法は、仮接合工程S1の詳細に関して、接合体100の製造方法と異なっている。
【0043】
図16は、接合体100Aの製造方法における仮接合工程S1を説明する拡大平面図である。
図17は、
図16中のXVII-XVIIにおける断面図である。
図16及び
図17に示されているように、接合体100Aの製造方法では、仮接合部40が、平面視において凹部11dの周囲にある側壁部11aの上端と封止体21の外周縁に重なっている。なお、その他の点に関して、接合体100Aの製造方法における仮接合工程S1は、接合体100の製造方法における仮接合工程S1と同様である。
【0044】
(接合体100Aの製造方法の効果)
以下に、接合体100Aの製造方法の効果を説明する。
【0045】
接合体100Aの製造方法でも、接合体100の製造方法と同様に、仮接合工程S1が行われる。そのため、接合体100Aの製造方法でも、仮接合工程S1が行われた後に、回転ツール50の抜き穴が残りにくく、本接合工程S2が行われた後に仮接合工程S1において残った回転ツール50の抜き穴に起因した凹み欠陥が形成されにくい。
【0046】
実施の形態3.
実施の形態3に係る接合体を説明する。実施の形態3に係る接合体を、接合体200とする。ここでは、接合体100と異なる点を主に説明し、重複する説明は繰り返さないものとする。
【0047】
(接合体200の構成)
以下に、接合体200の構成を説明する。
【0048】
図18は、接合体200の斜視図である。
図18に示されているように、接合体200は、第1部材10と、第2部材20とを有している。接合体100Aでは、第1部材10と第2部材20とが本接合部30において回転ツール50を用いた摩擦攪拌接合により接合されており、本接合部30が第1部材10と第2部材20とが重なる位置にある。これらの点に関して、接合体200の構成は、接合体100の構成と共通している。
【0049】
接合体200では、第1部材10が箱状部材11ではなく、第2部材20が封止体21ではない。接合体200は、中空容器ではない。接合体200では、本接合部30が平面視において環状ではなく直線状である。これらの点に関して、接合体200の構成は、接合体100の構成と異なっている。
【0050】
(接合体200の製造方法)
以下に、接合体200の製造方法を説明する。
【0051】
接合体200の製造方法は、仮接合工程S1と本接合工程S2とを有している。この点に関して、接合体200の製造方法は、接合体100の製造方法と共通している。接合体200の製造方法は、仮接合工程S1の詳細に関して、接合体100の製造方法と異なっている。
【0052】
接合体200の製造方法における仮接合工程S1では、複数の仮接合部40が、平面視において環状ではなく直線状に間隔を空けて並んでいる(
図18参照)。なお、その他の点に関して、接合体200の製造方法における仮接合工程S1は、接合体100の製造方法における仮接合工程S1と同様である。
【0053】
(接合体200の製造方法の効果)
以下に、接合体200の製造方法の効果を説明する。
【0054】
接合体200の製造方法でも、接合体100の製造方法と同様に、仮接合工程S1が行われる。そのため、接合体200の製造方法でも、仮接合工程S1が行われた後に、回転ツール50の抜き穴が残りにくく、本接合工程S2が行われた後に仮接合工程S1において残った回転ツール50の抜き穴に起因した凹み欠陥が形成されにくい。
【0055】
[付記]
本開示の諸態様を、付記としてまとめて記載する。
【0056】
<付記1>
第1部材と第2部材とを仮接合部において回転ツールを用いた摩擦攪拌接合により接合する工程を備え、
前記回転ツールは、前記仮接合部に挿入された状態で、前記仮接合部の一方端から前記仮接合部の他方端まで移動された後に、前記他方端から前記一方端に向かって仮接合終了位置まで移動され、
前記他方端から前記一方端に向かって前記仮接合終了位置まで前記回転ツールが移動している際、前記回転ツールの挿入深さは、前記仮接合終了位置に近づくにしたがって小さくなり、
前記回転ツールは、前記仮接合終了位置において引き抜かれる、仮接合方法。
【0057】
<付記2>
前記他方端から前記仮接合終了位置までの前記回転ツールの移動距離は、前記一方端から前記他方端までの前記回転ツールの移動距離よりも小さく、かつ前記回転ツールのツール径よりも大きい、付記1に記載の仮接合方法。
【0058】
<付記3>
第1部材と第2部材とを仮接合部において回転ツールを用いた摩擦攪拌接合により仮接合する工程と、
前記第1部材と前記第2部材とを前記仮接合部を通る本接合部において前記回転ツールを用いた摩擦攪拌接合により本接合する工程とを備え、
前記回転ツールは、前記仮接合部に挿入された状態で、前記仮接合部の一方端から前記仮接合部の他方端まで移動された後に、前記他方端から前記一方端に向かって仮接合終了位置まで移動され、
前記他方端から前記一方端に向かって前記仮接合終了位置まで前記回転ツールが移動している際、前記回転ツールの挿入深さは、前記仮接合終了位置に近づくにしたがって小さくなり、
前記回転ツールは、前記仮接合終了位置において引き抜かれる、接合体の製造方法。
【0059】
<付記4>
前記他方端から前記仮接合終了位置までの前記回転ツールの移動距離は、前記一方端から前記他方端までの前記回転ツールの移動距離よりも小さく、かつ前記回転ツールのツール径よりも大きい、付記3に記載の接合体の製造方法。
【0060】
<付記5>
前記第1部材は、開口部を有する箱状容器であり、
前記第2部材は、前記開口部を閉塞するように前記箱状容器上に配置されている封止体であり、
前記仮接合部は、前記箱状容器と前記封止体とが重なっている部分にある、付記3又は付記4に記載の接合体の製造方法。
【0061】
<付記6>
前記本接合部は、前記開口部の開口縁に沿った環状であり、
前記回転ツールは、前記本接合部に挿入された状態で、接合開始位置から前記本接合部を周回して前記接合開始位置まで移動された後に、接合終了位置まで移動され、
前記接合開始位置から前記接合終了位置まで移動している際、前記回転ツールの挿入深さは、前記接合終了位置に近づくにしたがって小さくなり、
前記回転ツールは、前記接合終了位置において引き抜かれる、付記5に記載の接合体の製造方法。
【0062】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものでないと考えられるべきである。この出願の範囲は上記の説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0063】
100,100A,200 接合体、10 第1部材、11 箱状部材、11a 側壁部、11b 底壁部、11c 開口部、11d 凹部、11da 段差底面、11db 段差側面、20 第2部材、21 封止体、30 本接合部、30a 本接合開始位置、30b 本接合終了位置、40 仮接合部、40a 一方端、40b 他方端、40c 仮接合終了位置、40d 溝、50 回転ツール、50a 先端部、D ツール径、DIS1,DIS2 移動距離、L1,L2 軌跡、S1 仮接合工程、S2 本接合工程。