(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136860
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】ひずみゲージおよびひずみセンサ
(51)【国際特許分類】
G01B 7/16 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
G01B7/16 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048149
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】小笠 洋介
【テーマコード(参考)】
2F063
【Fターム(参考)】
2F063AA25
2F063CA07
2F063DA02
2F063DA05
2F063DC08
2F063DD02
2F063DD03
2F063EC03
2F063EC05
2F063EC14
2F063EC17
2F063EC18
2F063EC20
2F063EC27
(57)【要約】
【課題】本開示は、より適切なクリープ特性を示すひずみゲージを実現する。
【解決手段】基材と、前記基材上に形成される一対の電極と、前記基材上に形成される複数のグリッド部と、を有し、前記複数のグリッド部はそれぞれ抵抗体を含み、前記複数のグリッド部の抵抗体は、それぞれ前記一対の電極と直列に接続され、かつ、互いが並列に接続されており、前記抵抗体は平面視において長手方向を第1方向に向けて並置された細長状部を直列に接続した形状であり、前記複数のグリッド部それぞれに含まれる抵抗体の前記細長状部の短手方向の幅は、前記グリッド部毎に異なるひずみゲージ。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材上に形成される一対の電極と、
前記基材上に形成される複数のグリッド部と、を有し、
前記複数のグリッド部はそれぞれ抵抗体を含み、
前記複数のグリッド部の抵抗体は、それぞれ前記一対の電極と直列に接続され、かつ、互いが並列に接続されており、
前記抵抗体は平面視において長手方向を第1方向に向けて並置された細長状部を直列に接続した形状であり、
前記複数のグリッド部それぞれに含まれる抵抗体の前記細長状部の短手方向の幅は、前記グリッド部毎に異なる、ひずみゲージ。
【請求項2】
前記複数のグリッド部それぞれに含まれる抵抗体の前記細長状部の並置の間隔は、前記グリッド部毎に異なる、請求項1に記載のひずみゲージ。
【請求項3】
前記複数のグリッド部それぞれに含まれる抵抗体の前記細長状部の数は、前記グリッド部毎に異なる、請求項1または2に記載のひずみゲージ。
【請求項4】
前記抵抗体は、Cr、CrN、及びCr2Nを含む膜から形成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載のひずみゲージ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のひずみゲージを複数個含んだひずみセンサであって、
前記複数のひずみゲージは、各自の前記一対の電極の少なくとも一方を共有して接続されることでブリッジ回路を形成している、ひずみセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ひずみゲージおよびひずみセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ダイアフラムと、該ダイアフラム上に抵抗体薄膜によってブリッジ回路を構成するように形成された第1、第2、第3および第4の抵抗体を備える歪ゲージが開示されている。特許文献1には、当該歪ゲージが、該第1および第3の抵抗体の間に形成した梯子状の第1調整抵抗体と、前記第2および第4の抵抗体の間に形成した梯子状の第2調整抵抗体と、を有することが開示されている。
【0003】
特許文献2には、抵抗体によって形成された歪み検出用の折り返しパターン部と、レーザトリミングによる抵抗調整用の抵抗調整パターン部と、を備えて起歪体に配置される歪みゲージが開示されている。特許文献2には、前記抵抗調整パターン部が、トリミング長さにより抵抗値を調整する連続調整パターン部と、選択的にトリミング切断することで抵抗値を変化させる抵抗配線からなる短絡調整パターン部と、を有することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平04-133401号公報
【特許文献2】特開2017-173029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ひずみゲージにおいて、クリープは測定誤差の要因となり得る。したがって、ひずみゲージのクリープ特性を改善することが求められている。また、例えばある具体的な使用環境下において、より適切なクリープ特性を有するひずみゲージを得られるようにしたい、という要求も存在する。
【0006】
本開示は、より適切なクリープ特性を示すひずみゲージを実現する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様では、基材と、前記基材上に形成される一対の電極と、前記基材上に形成される複数のグリッド部と、を有し、前記複数のグリッド部はそれぞれ抵抗体を含み、前記複数のグリッド部の抵抗体は、それぞれ前記一対の電極と直列に接続され、かつ、互いが並列に接続されており、前記抵抗体は平面視において長手方向を第1方向に向けて並置された細長状部を直列に接続した形状であり、前記複数のグリッド部それぞれに含まれる抵抗体の前記細長状部の短手方向の幅は、前記グリッド部毎に異なるひずみゲージが提供される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、より適切なクリープ特性を示すひずみゲージを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るひずみゲージを例示する平面図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係るひずみゲージを例示する断面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係るひずみゲージを例示する拡大図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係るひずみゲージの取付前に行う工程を説明するための拡大図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係るひずみゲージを例示する断面図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態に係るひずみセンサを例示する平面図である。
【
図7】
図7は、第3実施形態に係るひずみセンサを例示する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0011】
平行、直角、直交、水平、垂直、上下、左右および前後等の方向には、実施形態の効果を損なわない程度のずれが許容される。角部の形状は、直角に限られず、丸みを帯びてもよい。平行、直角、直交、水平、垂直には、それぞれ略平行、略直角、略直交、略水平、略垂直が含まれてもよい。
【0012】
例えば、略平行は、2つの線又は2つの面が互いに完全に平行でなくても、製造上許容される範囲内であれば互いに平行として扱うことができることを意味する。略直角、略直交、略水平および略垂直のそれぞれについても、略平行と同様に、2つの線又は2つの面の相互の位置関係が製造上許容される範囲内であればそれぞれに該当することが意図される。
【0013】
〈第1実施形態〉
図1は、第1実施形態に係るひずみゲージを例示する平面図である。
図2は、第1実施形態に係るひずみゲージを例示する断面図である。具体的には、
図2は、
図1におけるA-A断面図である。
図3は、第1実施形態に係るひずみゲージを例示する拡大図である。具体的には、
図3は、
図1におけるひずみ検出部30付近を拡大した図である。
【0014】
なお、図面には、説明の便宜のために、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸からなるXYZ直交座標系が設定される場合がある。なお、当該座標系は、説明のために定めるものであって、本実施形態に係るひずみセンサ等の姿勢について限定するものではない。
【0015】
第1実施形態に係るひずみゲージの一例であるひずみゲージ1は、基材10と、ひずみ検出部30と、一対の配線40と、一対の電極50と、カバー層60と、を有する。なお、カバー層60は必須の構造ではない。
図1においてカバー層60を点線で示す。また、
図3において、カバー層60は省略する。ひずみ検出部30は、
図3に示すように、3個のグリッド部(グリッド部31、グリッド部32、およびグリッド部33)を含んでいる。
【0016】
なお、本開示に係るひずみゲージにおけるグリッド部の個数は、2個以上であれば何個であってもよい。言い換えると、本開示に係るひずみゲージは、複数のグリッド部を有していればよい。
【0017】
なお、本実施形態では、便宜上、ひずみゲージ1において、Z軸正方向側を上側又は一方の側、Z軸負方向側を下側又は他方の側とする。又、各部位のZ軸正方向側の面を一方の面又は上面、Z軸負方向側の面を他方の面又は下面とする。但し、ひずみゲージ1は天地逆の状態で用いることができ、又は任意の角度で配置できる。又、平面視とは対象物を基材10の上面10aの法線方向から視ることを指し、平面形状とは対象物を基材10の上面10aの法線方向から視た形状を指すものとする。
【0018】
基材10は、抵抗体(後述する抵抗体31r、抵抗体32rおよび抵抗体33r)等を形成するためのベース層となる部材であり、可撓性を有する。基材10の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、5μm~500μm程度とすることができる。特に、基材10の厚さが5μm~200μmであると、接着層等を介して基材10の下面に接合される起歪体表面からの歪の伝達性、環境に対する寸法安定性の点で好ましく、10μm以上であると絶縁性の点で更に好ましい。
【0019】
基材10は、例えば、PI(ポリイミド)樹脂、エポキシ樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂、PEN(ポリエチレンナフタレート)樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、ポリオレフィン樹脂等の絶縁樹脂フィルムから形成できる。なお、フィルムとは、厚さが500μm以下程度であり、可撓性を有する部材を指す。
【0020】
ここで、「絶縁樹脂フィルムから形成する」とは、基材10が絶縁樹脂フィルム中にフィラーや不純物等を含有することを妨げるものではない。基材10は、例えば、シリカやアルミナ等のフィラーを含有する絶縁樹脂フィルムから形成しても構わない。
【0021】
基材10の樹脂以外の材料としては、例えば、SiO2、ZrO2(YSZも含む)、Si、Si2N3、Al2O3(サファイヤも含む)、ZnO、ペロブスカイト系セラミックス(CaTiO3、BaTiO3)等の結晶性材料が挙げられ、更に、それ以外に非晶質のガラス等が挙げられる。又、基材10の材料として、アルミニウム、アルミニウム合金(ジュラルミン)、チタン等の金属を用いてもよい。この場合、金属製の基材10上に、例えば、絶縁膜が形成される。
【0022】
グリッド部31、グリッド部32、およびグリッド部33は、それぞれ抵抗体を含む、ひずみゲージ1の受感部である。なお、ひずみゲージ1において、全てのグリッド部のクリープの符号は同一である。
図3の例では、グリッド部31は抵抗体31rを含み、グリッド部32は抵抗体32rを含み、グリッド部33は抵抗体33rを含む。ひずみゲージ1において、複数のグリッド部のそれぞれに含まれる抵抗体(すなわち、抵抗体31r、抵抗体32r、および抵抗体33r)は、それぞれ一対の電極50と直列に接続されており、かつ、互いが並列に接続されている。
【0023】
抵抗体31r、抵抗体32r、および抵抗体33rは、それぞれが基材10上に所定のパターンで形成された薄膜であり、ひずみを受けて抵抗変化を生じる受感部である。抵抗体31r、抵抗体32r、および抵抗体33rは、基材10の上面10aに直接形成されてもよいし、基材10の上面10aに他の層を介して形成されてもよい。なお、
図1では、便宜上、抵抗体31r、抵抗体32r、および抵抗体33rを濃い梨地模様で示している。
【0024】
抵抗体31r、抵抗体32r、および抵抗体33rは、例えば、Cr(クロム)を含む材料、Ni(ニッケル)を含む材料、又はCrとNiの両方を含む材料から形成できる。すなわち、抵抗体31r、抵抗体32r、および抵抗体33rは、それぞれCrとNiの少なくとも一方を含む材料から形成できる。Crを含む材料としては、例えば、Cr混相膜が挙げられる。Niを含む材料としては、例えば、Cu-Ni(銅ニッケル)が挙げられる。CrとNiの両方を含む材料としては、例えば、Ni-Cr(ニッケルクロム)が挙げられる。
【0025】
ここで、Cr混相膜とは、Cr、CrN、Cr2N等が混相した膜である。Cr混相膜は、酸化クロム等の不可避不純物を含んでもよい。
【0026】
抵抗体31r、抵抗体32r、および抵抗体33rのそれぞれの厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。例えば、抵抗体31r、抵抗体32r、および抵抗体33rのそれぞれの厚さは、0.05μm~2μm程度とすることができる。特に、抵抗体31r、抵抗体32r、または抵抗体33rの厚さが0.1μm以上であると抵抗体31r、抵抗体32r、および抵抗体33rのそれぞれを構成する結晶の結晶性(例えば、α-Crの結晶性)が向上する点で好ましく、1μm以下であると抵抗体31r、抵抗体32r、および抵抗体33rのそれぞれを構成する膜の内部応力に起因する膜のクラックや基材10からの反りを低減できる点で更に好ましい。抵抗体31r、抵抗体32r、および抵抗体33rのそれぞれの幅は、抵抗値や横感度等の要求仕様に対して最適化し、かつ断線対策も考慮して、例えば、10μm~100μm程度とすることができる。
【0027】
例えば、抵抗体31r、抵抗体32r、および抵抗体33rのそれぞれがCr混相膜である場合、安定な結晶相であるα-Cr(アルファクロム)を主成分とすることで、ゲージ特性の安定性を向上できる。又、抵抗体31r、抵抗体32r、および抵抗体33rのそれぞれがα-Crを主成分とすることで、ひずみゲージ1のゲージ率を10以上、かつゲージ率温度係数TCS及び抵抗温度係数TCRを-1000ppm/℃~+1000ppm/℃の範囲内とすることができる。ここで、主成分とは、対象物質が抵抗体を構成する全物質の50重量%以上を占めることを意味するが、ゲージ特性を向上する観点から、抵抗体31r、抵抗体32r、および抵抗体33rのそれぞれはα-Crを80重量%以上含むことが好ましく、90重量%以上含むことが更に好ましい。なお、α-Crは、bcc構造(体心立方格子構造)のCrである。
【0028】
又、抵抗体31r、抵抗体32r、および抵抗体33rのそれぞれがCr混相膜である場合、Cr混相膜に含まれるCrN及びCr2Nは20重量%以下であることが好ましい。Cr混相膜に含まれるCrN及びCr2Nが20重量%以下であることで、ゲージ率の低下を抑制できる。
【0029】
又、CrN及びCr2N中のCr2Nの割合は80重量%以上90重量%未満であることが好ましく、90重量%以上95重量%未満であることが更に好ましい。CrN及びCr2N中のCr2Nの割合が90重量%以上95重量%未満であることで、半導体的な性質を有するCr2Nにより、TCRの低下(負のTCR)が一層顕著となる。更に、セラミックス化を低減することで、脆性破壊の低減がなされる。
【0030】
一方で、膜中に微量のN2もしくは原子状のNが混入、存在した場合、外的環境(例えば高温環境下)によりそれらが膜外へ抜け出ることで、膜応力の変化を生ずる。化学的に安定なCrNの創出により上記不安定なNを発生させることがなく、安定なひずみゲージを得ることができる。
【0031】
抵抗体31rは、複数の細長状部31reを含む。抵抗体31rの細長状部31reは、長手方向を同一方向(Y軸方向)に向けて、短手方向(X軸方向)に所定間隔で並置されている。また、隣接する細長状部31reの端部は、互い違いに連結されている。すなわち、抵抗体31rは、全体としてジグザグに折り返す構造を有している。言い換えると、抵抗体31rは、平面視において長手方向をY軸方向にむけて並置された細長状部31reを、直列に接続した形状である。複数の細長状部31reの長手方向がグリッド方向となり、グリッド方向と垂直な方向がグリッド幅方向となる。
図3に示す通り、細長状部31reの幅はWL1である。なお、本明細書において「細長状部の幅」とは、細長状部の短手方向の長さを示すこととする。また、
図3に示す通り、細長状部31reの並置の間隔はWS1である。
【0032】
抵抗体32rは、複数の細長状部32reを含む。抵抗体32rの細長状部32reは、長手方向を同一方向(Y軸方向)に向けて、短手方向(X軸方向)に所定間隔で並置されている。また、隣接する細長状部32reの端部は、互い違いに連結されている。すなわち、抵抗体32rは、全体としてジグザグに折り返す構造を有している。言い換えると、抵抗体32rは、平面視において長手方向をY軸方向にむけて並置された細長状部32reを、直列に接続した形状である。複数の細長状部32reの長手方向がグリッド方向となり、グリッド方向と垂直な方向がグリッド幅方向となる。細長状部32reの幅はWL2である。また、細長状部32reの並置の間隔はWS2である。
【0033】
抵抗体33rは、複数の細長状部33reを含む。抵抗体33rの細長状部33reは、長手方向を同一方向(Y軸方向)に向けて、短手方向(X軸方向)に所定間隔で並置されている。また、隣接する細長状部33reの端部は、互い違いに連結されている。すなわち、抵抗体33rは、全体としてジグザグに折り返す構造を有している。言い換えると、抵抗体33rは、平面視において長手方向をY軸方向にむけて並置された細長状部33reを、直列に接続した形状である。複数の細長状部33reの長手方向がグリッド方向となり、グリッド方向と垂直な方向がグリッド幅方向となる。細長状部33reの幅はWL3である。また、細長状部33reの並置の間隔はWS3である。
【0034】
ひずみゲージ1において、複数のグリッド部のそれぞれ(すなわち、グリッド部31、グリッド部32およびグリッド部33のそれぞれ)に含まれる抵抗体の細長状部の幅は、グリッド部毎に異なる。すなわち、幅WL1、幅WL2、および幅WL3は、それぞれ異なる値である。
【0035】
なお、本実施形態で細長状部(細長状部31re、細長状部32re、および細長状部33re)を略矩形で示したが、細長状部の形状はこれに限定されない。例えば、各グリッド部の細長状部は、部位によって幅が異なっていてもよい。この場合、幅WL1、幅WL2、および幅WL3は、それぞれ細長状部31re、細長状部32re、および細長状部33reの幅の平均値であってもよい。
【0036】
ひずみゲージ1において、複数のグリッド部のそれぞれ(すなわち、グリッド部31、グリッド部32およびグリッド部33のそれぞれ)に含まれる抵抗体の細長状部の並置の間隔は、グリッド部毎に異なっていてもよいし、一部のグリッド部または全部のグリッド部の細長状部の間隔が同じであってもよい。例えば、
図3に示すように、間隔WS1、間隔WS2、および間隔WS3はそれぞれ異なる値であってよい。しかしながら、各グリッド部における細長状部の並置の間隔の大小関係および異同関係は、この例に限定されない。例えば、WS1とWS2は同値であり、WS3は異なる値であってもよいし、WS1、WS2、およびWS3が全て同じ値であってもよい。
【0037】
言い換えると、ひずみゲージ1において、複数のグリッド部のそれぞれ(すなわち、グリッド部31、グリッド部32およびグリッド部33のそれぞれ)に含まれる抵抗体の細長状部の数は、グリッド部毎に異なっていてもよい。また、一部のグリッド部または全部のグリッド部の細長状部の数が同じであってもよい。
【0038】
配線40は基材10上に形成され、各抵抗体(抵抗体31r、抵抗体32r、および抵抗体33r)と電極50とをそれぞれ接続する。各配線40は直線状には限定されず、任意のパターンとすることができる。また、各配線40は任意の長さとすることができる。配線40はそれぞれ、第1金属層41と、第1金属層41の上面に積層された第2金属層42とから成る。なお、
図1では、便宜上、第1金属層41を抵抗体31r、抵抗体32r、および抵抗体33rのそれぞれと同じ濃い梨地模様で示しており、第2金属層42を抵抗体31r、抵抗体32r、および抵抗体33rのそれぞれよりも薄い梨地模様で示している。
【0039】
本実施形態の例では、各配線40はY軸方向に沿って延びている。言い換えると、各配線40は、Y軸方向に長手方向を有する。本実施形態では便宜上、配線40の特定の部位に名称を付けて説明を行うが、以下で説明する配線40の各部位は、それぞれ一体に形成されている。本実施形態に係るひずみゲージ1では、一対の配線40はそれぞれ、電極50と反対の端部において、X軸方向側に屈曲して凸部40pを形成している。そして、ひずみゲージ1において、各配線40の凸部40pは
図3に示すように略平行に対向するよう伸びている。ひずみゲージ1においては、対向する凸部40pの間を橋渡しするように抵抗体31r、抵抗体32r、および抵抗体33rが設けられる。これにより、一対の配線40の間にグリッド部31、グリッド部32およびグリッド部33が設けられる。
【0040】
抵抗体31r、抵抗体32r、および抵抗体33rの一端(例えばY正方向側の一端)と、2つの電極50のうち一方の電極50(例えばX負方向側の電極50)とは、配線40を介して電気的に接続される。また、抵抗体の他端(例えばY負方向側の一端)と、他方の電極50(例えばX正方向側の電極50)との間も、配線40を介して電気的に接続される。すなわち、抵抗体31r、抵抗体32r、および抵抗体33rは、一対の配線40を介して一対の電極50と電気的に接続されている。
【0041】
電極50は、ひずみにより抵抗体に生じる抵抗値の変化を外部に出力するための一対の電極である。電極50には、例えば、外部接続用のリード線等が接合される。各電極50は基材10上に形成される。電極50は、配線40を介して抵抗体31r、抵抗体32r、および抵抗体33rと電気的に接続される。電極50は、例えば、
図1のように平面視で略円形であってもよいし、略矩形であってもよい。また、電極50は、配線40よりも拡幅して形成されていてもよい。
【0042】
なお、抵抗体31r、抵抗体32r、および抵抗体33rと、第1金属層41とは便宜上別符号としているが、同一工程において同一材料により一体に形成できる。従って、抵抗体31r、抵抗体32r、および抵抗体33rと、第1金属層41とは、厚さが略同一である。また、第2金属層42は便宜上別符号としているが、同一工程において同一材料により一体に形成できる。従って、第2金属層42は、厚さが略同一である。
【0043】
第2金属層42は、抵抗体31r、抵抗体32r、および抵抗体33rのそれぞれ(ならびに第1金属層41)よりも低抵抗の材料から形成されていてよい。第2金属層42の材料は、抵抗体31r、抵抗体32r、および抵抗体33rよりも低抵抗の材料であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。例えば、抵抗体31r、抵抗体32r、および抵抗体33rがCr混相膜である場合、第2金属層42の材料として、Cu、Ni、Al、Ag、Au、Pt等、または、これら何れかの金属の合金、これら何れかの金属の化合物、或いは、これら何れかの金属、合金、化合物を適宜積層した積層膜が挙げられる。第2金属層42の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。例えば、第2金属層42の厚さは3μm~5μm程度とすることができる。
【0044】
第2金属層42は、第1金属層41の一部に形成されてもよいし、第1金属層41の全体に形成されてもよい。電極50となる第2金属層42の上面に、更に他の1層以上の金属層を積層してもよい。例えば、第2金属層42を銅層とし、銅層の上面に金層を積層してもよい。或いは、第2金属層42を銅層とし、銅層の上面にパラジウム層と金層を順次積層してもよい。電極50の最上層を金層とすることで、電極50のはんだ濡れ性を向上できる。
【0045】
なお、抵抗体31r、抵抗体32r、抵抗体33r、および配線40を被覆し、電極50を露出するように、基材10の上面10aにカバー層60を設けても構わない。カバー層60を設けることで、抵抗体31r、抵抗体32r、抵抗体33r、および配線40に機械的な損傷等が生じることを防止できる。又、カバー層60を設けることで、抵抗体31r、抵抗体32r、抵抗体33r、および配線40を湿気等から保護できる。なお、カバー層60は、電極50を除く部分の全体を覆うように設けてもよい。
【0046】
カバー層60は、例えば、PI樹脂、エポキシ樹脂、PEEK樹脂、PEN樹脂、PET樹脂、PPS樹脂、複合樹脂(例えば、シリコーン樹脂、ポリオレフィン樹脂)等の絶縁樹脂から形成できる。カバー層60は、フィラーや顔料を含有しても構わない。カバー層60の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、2μm~30μm程度とすることができる。
【0047】
このように、配線40は、抵抗体31r、抵抗体32r、および抵抗体33rと同一材料からなる第1金属層41上に第2金属層42が積層された構造である。そのため、各配線40は抵抗体31r、抵抗体32r、および抵抗体33rよりも抵抗が低くなるため、各配線40が抵抗体として機能してしまうことを抑制できる。その結果、抵抗体31r、抵抗体32r、および抵抗体33rによるひずみ検出精度を向上できる。
【0048】
言い換えれば、抵抗体31r、抵抗体32r、および抵抗体33rよりも低抵抗な配線40を設けることで、ひずみゲージ1の実質的な受感部を抵抗体31r、抵抗体32r、および抵抗体33rが形成された局所領域に制限できる。そのため、抵抗体31r、抵抗体32r、および抵抗体33rによるひずみ検出精度を向上できる。
【0049】
特に、抵抗体31r、抵抗体32r、および抵抗体33rとしてCr混相膜を用いたゲージ率10以上の高感度なひずみゲージにおいて、配線40を抵抗体31r、抵抗体32r、および抵抗体33rよりも低抵抗化して実質的な受感部を抵抗体31r、抵抗体32r、および抵抗体33rが形成された局所領域に制限することは、ひずみ検出精度の向上に顕著な効果を発揮する。又、配線40を抵抗体31r、抵抗体32r、および抵抗体33rよりも低抵抗化することは、横感度を低減する効果も奏する。
【0050】
なお、抵抗体31r、抵抗体32r、および抵抗体33rと電極50とを接続する配線40の長さは、配線40が直線状か否かにかかわらず、配線40のそれぞれに沿った長さで5mm以上とすることが好ましい。長さを5mm以上とすることで、電極50にリード線等をはんだ付けする際の熱が、抵抗体31r、抵抗体32r、および抵抗体33r、またはこれを覆うカバー層60に伝わり難くなり、ゲージ諸特性の熱負荷を軽減できる。
【0051】
次に、ひずみゲージ1の取付前に行う工程について説明する。
図4は、第1実施形態に係るひずみゲージの取付前に行う工程を説明するための拡大図である。ひずみゲージのクリープ特性は、抵抗体の細長状部における線幅に依存することが分かっている。したがって、ひずみゲージにおいて、引張応力または圧縮応力を受ける領域(受感領域)を複数のグリッド(例えば、グリッド部31、グリッド部32、およびグリッド部33)に分け、かつそれぞれのグリッド部に含まれる抵抗体の線幅が異なるひずみゲージを作成することで、
図1~
図3に示したような、「クリープ特性の異なる複数のグリッド部」が設けられたひずみゲージを作成することができる。
【0052】
上述のように作成したひずみゲージ1について、取付前のいずれかの工程において、複数のグリッド部のうち1つのグリッド部の抵抗体を残して、他のグリッド部の抵抗体と、配線40との接続部分をレーザトリミングなどにより切断する(切断工程)。これにより、所望のグリッド部の抵抗体のみ導通させたひずみゲージ1を作成することができる。例えば、
図4に示すように、グリッド部33(すなわち、抵抗体33r)を用いる場合は、抵抗体31rおよび抵抗体32rのそれぞれを矢印CLで示す部分で切断することにより、抵抗体31rおよび抵抗体32rのそれぞれを断線させる。抵抗体31rおよび抵抗体32rのそれぞれを断線させることにより、ひずみゲージ1は、抵抗体33rを受感領域とするひずみゲージとなる。
【0053】
このように、ひずみゲージ1の抵抗体を後から1つに選択できるため、各グリッド部のクリープ特性を予め測定しておくことで、所望のクリープ特性を有する抵抗体のみを残したひずみゲージを作成することができる。したがって、各グリッド部のクリープ特性(例えば、クリープ量およびクリープリカバリー量)が、ひずみゲージ1の種々の使用条件(例えば、起歪体の材質、ならびに使用時の温度および湿度等)に応じた特性になるよう各グリッド部の抵抗体の線幅を設定してひずみゲージ1を作製しておくことで、後から(例えば、ひずみゲージ1の取付工程の直前で)、ひずみゲージ1を、所望のクリープ特性が得られるひずみゲージとすることができる。
【0054】
なお、抵抗体を断線させるために切断する部分は、上記の例に限られない。例えば、一対の電極50の間で該当する抵抗体を断線できるならば、上記の矢印CLで示す部分とは異なる場所で切断してもよい。
【0055】
このように、第1実施形態に係るひずみゲージによれば、複数のグリッド部を備え、ひずみゲージを取り付ける際に、クリープ特性のよいグリッド部を選択し他を断線させることにより、使用条件下において適切なクリープ特性を示すひずみゲージを作成できる。したがって、第1実施形態によれば、より適切なクリープ特性を示すひずみゲージを実現することができる。
【0056】
(ひずみゲージ1の製造方法)
以下、本実施形態に係るひずみゲージ1の製造方法について説明する。ひずみゲージ1を製造するためには、まず、基材10を準備し、基材10の上面10aに金属層(便宜上、金属層Aとする)を形成する。金属層Aは、最終的にパターニングされて抵抗体31r、抵抗体32r、抵抗体33r、および第1金属層41となる層である。従って、金属層Aの材料や厚さは、前述の抵抗体31r、抵抗体32r、抵抗体33r、および第1金属層41の材料や厚さと同様である。
【0057】
金属層Aは、例えば、金属層Aを形成可能な原料をターゲットとしたマグネトロンスパッタ法により成膜できる。金属層Aは、マグネトロンスパッタ法に代えて、反応性スパッタ法や蒸着法、アークイオンプレーティング法、パルスレーザー堆積法等を用いて成膜してもよい。
【0058】
ゲージ特性を安定化する観点から、金属層Aを成膜する前に、下地層として、基材10の上面10aに、例えば、コンベンショナルスパッタ法により所定の膜厚の機能層を真空成膜してもよい。
【0059】
本願において、機能層とは、少なくとも上層である金属層A(抵抗体31r、抵抗体32r、および抵抗体33r)の結晶成長を促進する機能を有する層を指す。機能層は、更に、基材10に含まれる酸素や水分による金属層Aの酸化を防止する機能や、基材10と金属層Aとの密着性を向上する機能を備えていることが好ましい。機能層は、更に、他の機能を備えていてもよい。
【0060】
基材10を構成する絶縁樹脂フィルムは酸素や水分を含むため、特に金属層AがCrを含む場合、Crは自己酸化膜を形成するため、機能層が金属層Aの酸化を防止する機能を備えることは有効である。
【0061】
機能層の材料は、少なくとも上層である金属層Aの結晶成長を促進する機能を有する材料であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。例えば、機能層の材料として、Cr(クロム)、Ti(チタン)、V(バナジウム)、Nb(ニオブ)、Ta(タンタル)、Ni(ニッケル)、Y(イットリウム)、Zr(ジルコニウム)、Hf(ハフニウム)、Si(シリコン)、C(炭素)、Zn(亜鉛)、Cu(銅)、Bi(ビスマス)、Fe(鉄)、Mo(モリブデン)、W(タングステン)、Ru(ルテニウム)、Rh(ロジウム)、Re(レニウム)、Os(オスミウム)、Ir(イリジウム)、Pt(白金)、Pd(パラジウム)、Ag(銀)、Au(金)、Co(コバルト)、Mn(マンガン)、Al(アルミニウム)からなる群から選択される1種または複数種の金属、この群の何れかの金属の合金、または、この群の何れかの金属の化合物が挙げられる。
【0062】
上記の合金としては、例えば、FeCr、TiAl、FeNi、NiCr、CrCu等が挙げられる。また、上記の化合物としては、例えば、TiN、TaN、Si3N4、TiO2、Ta2O5、SiO2等が挙げられる。
【0063】
機能層が金属または合金のような導電材料から形成される場合には、機能層の膜厚は抵抗体の膜厚の1/20以下であることが好ましい。このような範囲であると、α-Crの結晶成長を促進できると共に、抵抗体に流れる電流の一部が機能層に流れて、ひずみの検出感度が低下することを防止できる。
【0064】
機能層が金属または合金のような導電材料から形成される場合には、機能層の膜厚は抵抗体の膜厚の1/50以下であることがより好ましい。このような範囲であると、α-Crの結晶成長を促進できると共に、抵抗体に流れる電流の一部が機能層に流れて、ひずみの検出感度が低下することを更に防止できる。
【0065】
機能層が金属または合金のような導電材料から形成される場合には、機能層の膜厚は抵抗体の膜厚の1/100以下であることが更に好ましい。このような範囲であると、抵抗体に流れる電流の一部が機能層に流れて、ひずみの検出感度が低下することを一層防止できる。
【0066】
機能層が酸化物や窒化物のような絶縁材料から形成される場合には、機能層の膜厚は、1nm~1μmとすることが好ましい。このような範囲であると、α-Crの結晶成長を促進できると共に、機能層にクラックが入ることなく容易に成膜できる。
【0067】
機能層が酸化物や窒化物のような絶縁材料から形成される場合には、機能層の膜厚は、1nm~0.8μmとすることがより好ましい。このような範囲であると、α-Crの結晶成長を促進できると共に、機能層にクラックが入ることなく更に容易に成膜できる。
【0068】
機能層が酸化物や窒化物のような絶縁材料から形成される場合には、機能層の膜厚は、1nm~0.5μmとすることが更に好ましい。このような範囲であると、α-Crの結晶成長を促進できると共に、機能層にクラックが入ることなく一層容易に成膜できる。
【0069】
なお、機能層の平面形状は、例えば、
図1に示す抵抗体の平面形状と略同一にパターニングされている。しかし、機能層の平面形状は、抵抗体の平面形状と略同一である場合には限定されない。機能層が絶縁材料から形成される場合には、抵抗体の平面形状と同一形状にパターニングしなくてもよい。この場合、機能層は少なくとも抵抗体が形成されている領域にベタ状に形成されてもよい。あるいは、機能層は、基材10の上面全体にベタ状に形成されてもよい。
【0070】
また、機能層が絶縁材料から形成される場合に、機能層の厚さを50nm以上1μm以下となるように比較的厚く形成し、かつベタ状に形成することで、機能層の厚さと表面積が増加するため、抵抗体が発熱した際の熱を基材10側へ放熱できる。その結果、ひずみゲージ1において、抵抗体の自己発熱による測定精度の低下を抑制できる。
【0071】
機能層は、例えば、機能層を形成可能な原料をターゲットとし、チャンバ内にAr(アルゴン)ガスを導入したコンベンショナルスパッタ法により真空成膜できる。コンベンショナルスパッタ法を用いることにより、基材10の上面10aをArでエッチングしながら機能層が成膜されるため、機能層の成膜量を最小限にして密着性改善効果を得ることができる。
【0072】
ただし、これは、機能層の成膜方法の一例であり、他の方法により機能層を成膜してもよい。例えば、機能層の成膜の前にAr等を用いたプラズマ処理等により基材10の上面10aを活性化することで密着性改善効果を獲得し、その後マグネトロンスパッタ法により機能層を真空成膜する方法を用いてもよい。
【0073】
機能層の材料と金属層Aの材料との組み合わせは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。例えば、機能層としてTiを用い、金属層Aとしてα-Cr(アルファクロム)を主成分とするCr混相膜を成膜可能である。
【0074】
この場合、例えば、Cr混相膜を形成可能な原料をターゲットとし、チャンバ内にArガスを導入したマグネトロンスパッタ法により、金属層Aを成膜できる。あるいは、純Crをターゲットとし、チャンバ内にArガスと共に適量の窒素ガスを導入し、反応性スパッタ法により、金属層Aを成膜してもよい。この際、窒素ガスの導入量や圧力(窒素分圧)を変えることや加熱工程を設けて加熱温度を調整することで、Cr混相膜に含まれるCrNおよびCr2Nの割合、並びにCrNおよびCr2N中のCr2Nの割合を調整できる。
【0075】
これらの方法では、Tiからなる機能層がきっかけでCr混相膜の成長面が規定され、安定な結晶構造であるα-Crを主成分とするCr混相膜を成膜できる。また、機能層を構成するTiがCr混相膜中に拡散することにより、ゲージ特性が向上する。例えば、ひずみゲージ1のゲージ率を10以上、かつゲージ率温度係数TCSおよび抵抗温度係数TCRを-1000ppm/℃~+1000ppm/℃の範囲内とすることができる。なお、機能層がTiから形成されている場合、Cr混相膜にTiやTiN(窒化チタン)が含まれる場合がある。
【0076】
なお、金属層AがCr混相膜である場合、Tiからなる機能層は、金属層Aの結晶成長を促進する機能、基材10に含まれる酸素や水分による金属層Aの酸化を防止する機能、および基材10と金属層Aとの密着性を向上する機能の全てを備えている。機能層として、Tiに代えてTa、Si、Al、Feを用いた場合も同様である。
【0077】
このように、金属層Aの下層に機能層を設けることにより、金属層Aの結晶成長を促進可能となり、安定な結晶相からなる金属層Aを作製できる。その結果、ひずみゲージ1において、ゲージ特性の安定性を向上できる。また、機能層を構成する材料が金属層Aに拡散することにより、ひずみゲージ1において、ゲージ特性を向上できる。
【0078】
次に、金属層Aの上面に、第2金属層42および電極50を形成する。第2金属層42および電極50は、例えば、フォトリソグラフィ法により形成できる。
【0079】
具体的には、まず、金属層Aの上面を覆うように、例えば、スパッタ法や無電解めっき法等により、シード層を形成する。次に、シード層の上面の全面に感光性のレジストを形成し、露光および現像して第2金属層42および電極50を形成する領域を露出する開口部を形成する。このとき、レジストの開口部の形状を調整することで、第2金属層42および電極50を任意の形状とすることができる。レジストとしては、例えば、ドライフィルムレジスト等を用いることができる。
【0080】
次に、例えば、シード層を給電経路とする電解めっき法により、開口部内に露出するシード層上に第2金属層42および電極50を形成する。電解めっき法は、タクトが高く、かつ、第2金属層42および電極50として低応力の電解めっき層を形成できる点で好適である。膜厚の厚い電解めっき層を低応力とすることで、ひずみゲージ1に反りが生じることを防止できる。なお、第2金属層42および電極50は無電解めっき法により形成してもよい。
【0081】
次に、レジストを除去する。レジストは、例えば、レジストの材料を溶解可能な溶液に浸漬することで除去できる。
【0082】
次に、シード層の上面の全面に感光性のレジストを形成し、露光および現像して、
図1の抵抗体31r~33r、配線40、および電極50と同様の平面形状にパターニングする。レジストとしては、例えば、ドライフィルムレジスト等を用いることができる。そして、レジストをエッチングマスクとし、レジストから露出する金属層Aおよびシード層を除去し、
図1の平面形状の抵抗体31r~33r、配線40、および電極50を形成する。
【0083】
例えば、ウェットエッチングにより、金属層Aおよびシード層の不要な部分を除去できる。金属層Aの下層に機能層が形成されている場合には、エッチングによって機能層は抵抗体31r~33r、配線40、および電極50と同様に
図1に示す平面形状にパターニングされる。なお、この時点では、抵抗体31r~33rおよび第1金属層41上にシード層が形成されている。
【0084】
次に、第2金属層42および電極50をエッチングマスクとし、第2金属層42および電極50から露出する不要なシード層を除去することで、第2金属層42および電極50が形成される。なお、第2金属層42および電極50の直下のシード層は残存する。例えば、シード層がエッチングされ、機能層、抵抗体31r~33r、配線40、および電極50がエッチングされないエッチング液を用いたウェットエッチングにより、不要なシード層を除去できる。
【0085】
その後、必要に応じ、基材10の上面10aに、抵抗体31r~33rおよび配線40を被覆し電極50を露出するカバー層60を設けることで、ひずみゲージ1が完成する。カバー層60は、例えば、基材10の上面10aに、抵抗体31r~33rおよび配線40を被覆し電極50を露出するように半硬化状態の熱硬化性の絶縁樹脂フィルムをラミネートし、加熱して硬化させて作製できる。カバー層60は、基材10の上面10aに、抵抗体31r~33rおよび配線40を被覆し電極50を露出するように液状またはペースト状の熱硬化性の絶縁樹脂を塗布し、加熱して硬化させて作製してもよい。電極50を露出させる開口部は、例えば、フォトリソグラフィ法により形成できる。
【0086】
なお、抵抗体31r~33rおよび第1金属層41の下地層として基材10の上面10aに機能層を設けた場合には、ひずみゲージ1は
図5に示す断面形状となる。符号20で示す層が機能層である。機能層20を設けた場合のひずみゲージ1の平面形状は、例えば、
図1と同様となる。但し、前述のように、機能層20は、基材10の上面10aの一部または全部にベタ状に形成される場合もある。
【0087】
≪第2実施形態≫
第2実施形態では、ひずみゲージを複数個、具体的には2個、含んだひずみセンサの例について説明する。ひずみセンサを構成する場合、複数のひずみゲージは、各自の電極の少なくとも一方を共有して接続されることでブリッジ回路を形成するようにしてもよい。
【0088】
図6は、第2実施形態に係るひずみセンサ2を例示する平面図である。ひずみセンサ2は、基材110と、ひずみ検出部130Aおよびひずみ検出部130Bと、配線140A、配線140Bおよび配線140Cと、電極150A、電極150Bおよび電極150Cと、カバー層160を備える。ひずみ検出部130A、ひずみ検出部130B、配線140A、配線140Bおよび配線140Cは、基材110の表面110a上に形成される。また、ひずみセンサ2は、配線140A、配線140Bおよび配線140Cのそれぞれと同様に形成されるダミー配線140Eを有していてもよい。
【0089】
配線140Aは、上面に電極150Aを有する。配線140Bは、上面に電極150Bを有する。配線140Cは、上面に電極150Cを有する。ひずみセンサ2において、電極150Aと電極150Bとで一対の電極が形成されており、電極150Bと電極150Cとで、更に別の一対の電極が形成されているといえる。
【0090】
ひずみ検出部130Aおよびひずみ検出部130Bのそれぞれは、ひずみ検出部30と同様に形成されることから、第1実施形態の説明を参照することとして、ここでは詳細な説明は省略する。なお、ひずみ検出部130Aにおける抵抗体の細状体部はY軸方向に長手方向を有し、ひずみ検出部130Bにおける抵抗体の細状体部はX軸方向に長手方向を有する。
【0091】
ひずみ検出部130Aは、配線140Aと配線140Bとに接続する。ひずみ検出部130Bは、配線140Bと配線140Cとに接続する。
【0092】
配線140Aは、第1金属層141Aと、第1金属層141Aの上面に積層された第2金属層142Aとを有する。配線140Bは、第1金属層141Bと、第1金属層141Bの上面に積層された第2金属層142Bとを有する。配線140Cは、第1金属層141Cと、第1金属層141Cの上面に積層された第2金属層142Cとを有する。ダミー配線140Eは、第1金属層141Eと、第1金属層141Eの上面に積層された第2金属層142Eとを有する。
【0093】
第1金属層141A等の詳細については、同様の構成を有する第1金属層41についての説明を参照することとする。また、第2金属層142A等の詳細については、同様の構成を有する第2金属層42についての説明を参照することとする。
【0094】
第2実施形態に係るひずみセンサには、複数のグリッド部を備えたひずみゲージが少なくとも1つ含まれている。そして、当該複数のグリッド部を備えたひずみゲージは、第1実施形態に係るひずみゲージと同様に、ひずみセンサを取り付ける際に、クリープ特性のよいグリッド部を選択し他を断線させることにより、使用条件下において適切なクリープ特性を示すひずみゲージを作成できる。そのため、第2実施形態に係るひずみセンサ全体としても、より適切なクリープ特性が得られるといえる。したがって、第2実施形態に係るひずみセンサによれば、より適切なクリープ特性を示すひずみゲージを実現することができる。
【0095】
なお、ひずみセンサ2において、ひずみ検出部130Aおよびひずみ検出部130Bのそれぞれは、複数のグリッド部を備えるが、ひずみ検出部130Aおよびひずみ検出部130Bのいずれか一つにおいて、複数のグリッド部を備えるようにしてもよい。
【0096】
≪第3実施形態≫
第3実施形態では、ひずみゲージを複数個、具体的には4個、含んだひずみセンサの例について説明する。ひずみセンサを構成する場合、複数のひずみゲージは、各自の電極の少なくとも一方を共有して接続されることでブリッジ回路を形成するようにしてもよい。
【0097】
図7は、第3実施形態に係るひずみセンサ3を例示する平面図である。ひずみセンサ3は、基材210と、ひずみ検出部230A、ひずみ検出部230B、ひずみ検出部230Cおよびひずみ検出部230Dと、配線240A、配線240B、配線240Cおよび配線240Dと、電極250A、電極250B、電極250Cおよび電極250Dと、カバー層260を備える。ひずみ検出部230A、ひずみ検出部230B、ひずみ検出部230C、ひずみ検出部230D、配線240A、配線240B、配線240C、配線240Dは、基材210の表面210a上に形成される。また、ひずみセンサ3は、配線240A、配線240B、配線240Cおよび配線240Dのそれぞれと同様に形成されるダミー配線240Eを有していてもよい。
【0098】
配線240Aは、上面に電極250Aを有する。配線240Bは、上面に電極250Bを有する。配線240Cは、上面に電極250Cを有する。配線240Dは、上面に電極250Dを有する。電極250Aと電極250B、電極250Bと電極250C、電極250Cと電極250D、および、電極250Dと電極250Aはそれぞれ一対の電極を形成している。
【0099】
ひずみ検出部230A、ひずみ検出部230B、ひずみ検出部230Cおよびひずみ検出部230Dのそれぞれは、ひずみ検出部30と同様に形成されることから、第1実施形態の説明を参照することとして、ここでは詳細な説明は省略する。なお、ひずみ検出部230Aおよびひずみ検出部230Cのそれぞれにおける抵抗体の細状体部はX軸方向に長手方向を有し、ひずみ検出部230Bおよびひずみ検出部230Dのそれぞれにおける抵抗体の細状体部はY軸方向に長手方向を有する。
【0100】
ひずみ検出部230Aは、配線240Aと配線240Bとに接続する。ひずみ検出部230Bは、配線240Bと配線240Cとに接続する。ひずみ検出部230Cは、配線240Cと配線240Dとに接続する。ひずみ検出部230Dは、配線240Dと配線240Aとに接続する。
【0101】
配線240Aは、第1金属層241Aと、第1金属層241Aの上面に積層された第2金属層242Aとを有する。配線240Bは、第1金属層241Bと、第1金属層241Bの上面に積層された第2金属層242Bとを有する。配線240Cは、第1金属層241Cと、第1金属層241Cの上面に積層された第2金属層242Cとを有する。配線240Dは、第1金属層241Dと、第1金属層241Dの上面に積層された第2金属層242Dとを有する。ダミー配線240Eは、第1金属層241Eと、第1金属層241Eの上面に積層された第2金属層242Eとを有する。
【0102】
第1金属層241A等の詳細については、同様の構成を有する第1金属層41についての説明を参照することとする。また、第2金属層242A等の詳細については、同様の構成を有する第2金属層42についての説明を参照することとする。
【0103】
第3実施形態に係るひずみセンサには、複数のグリッド部を備えたひずみゲージが少なくとも1つ含まれている。そして、当該複数のグリッド部を備えたひずみゲージは、第1実施形態に係るひずみゲージと同様に、ひずみセンサを取り付ける際に、クリープ特性のよいグリッド部を選択し他を断線させることにより、使用条件下において適切なクリープ特性を示すひずみゲージを作成できる。そのため、第3実施形態に係るひずみセンサ全体としても、より適切なクリープ特性が得られるといえる。したがって、第3実施形態に係るひずみセンサによれば、より適切なクリープ特性を示すひずみゲージを実現することができる。
【0104】
なお、ひずみセンサ3において、ひずみ検出部230A、ひずみ検出部230B、ひずみ検出部230Cおよびひずみ検出部230Dのそれぞれは、複数のグリッド部を備えるが、ひずみ検出部230A、ひずみ検出部230B、ひずみ検出部230Cおよびひずみ検出部230Dの少なくともいずれか一つにおいて、複数のグリッド部を備えるようにしてもよい。
【0105】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲およびその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0106】
1 ひずみゲージ、2、3 ひずみセンサ、10、110、210 基材、31、32、33 グリッド部、31r、32r、33r 抵抗体、31re、32re、33re 細長状部、40、140A、140B、140C、240A、240B、240C、240D 配線、41、141A、141B、141C、241A、241B、241C、241D 第1金属層、42、142A、142B、142C、242A、242B、242C、242D 第2金属層、50、50、150A、150B、150C、250A、250B、250C、250D 電極、60、160、260 カバー層