(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136862
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】リニア電源回路
(51)【国際特許分類】
G05F 1/56 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
G05F1/56 310N
G05F1/56 310H
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048152
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100133514
【弁理士】
【氏名又は名称】寺山 啓進
(74)【代理人】
【識別番号】100135714
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 一生
(74)【代理人】
【識別番号】100167612
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 直行
(72)【発明者】
【氏名】宮下 貴重
【テーマコード(参考)】
5H430
【Fターム(参考)】
5H430BB01
5H430BB09
5H430BB11
5H430BB12
5H430EE04
5H430FF07
5H430FF13
5H430GG11
(57)【要約】
【課題】負荷応答特性が高速なリニア電源回路を提供する。
【解決手段】リニア電源回路100は、入力信号Vin,Ierrが入力され、第1電流信号I11,I12を出力する入力部1と、第1電流信号I11,I12を第1電圧信号V1に変換する電流電圧変換部2と、第1電圧信号V1を第2電流信号I31,I32に変換する電圧電流変換部3と、カレントミラー回路41,42により第2電流信号I31,I32から出力電流信号Ioを生成し、出力端子OUTに出力する出力部4とを備え、入力部1と電流電圧変換部2が電流帰還型オペアンプ5を構成している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号が入力され、第1電流信号を出力する入力部と、
前記第1電流信号を第1電圧信号に変換する電流電圧変換部と、
前記第1電圧信号を第2電流信号に変換する電圧電流変換部と、
カレントミラー回路により前記第2電流信号から出力電流信号を生成し、出力端子に出力する出力部と、
を備え、
前記入力部と前記電流電圧変換部が電流帰還型オペアンプを構成している、
リニア電源回路。
【請求項2】
前記入力部は、前記入力信号が入力される第1入力端子、前記出力端子と電気的に接続される第2入力端子、および前記第1入力端子と前記第2入力端子に接続されたバッファ回路を備え、前記バッファ回路から前記第1電流信号を前記電流電圧変換部に出力する、
請求項1に記載のリニア電源回路。
【請求項3】
前記バッファ回路は、SEPP(Single Ended Push-Pull)回路で構成されている、請求項2に記載のリニア電源回路。
【請求項4】
前記第2入力端子と前記出力端子の間に接続された帰還抵抗が設けられている、
請求項2に記載のリニア電源回路。
【請求項5】
前記帰還抵抗と並列接続された帰還容量が設けられている、
請求項4に記載のリニア電源回路。
【請求項6】
前記電圧電流変換部と前記出力部とが、AB級アンプを構成している、
請求項1に記載のリニア電源回路。
【請求項7】
前記電流電圧変換部は、前記AB級アンプのバイアス回路を含む、
請求項6に記載のリニア電源回路。
【請求項8】
前記カレントミラー回路と並列接続された抵抗を更に備える、
請求項1に記載のリニア電源回路。
【請求項9】
前記入力部に供給される電源電圧と前記出力部に供給される電源電圧が異なる、
請求項1から8のいずれか1項に記載のリニア電源回路。
【請求項10】
前記入力部と前記出力部に供給される電源電圧が共通である、
請求項1から8のいずれか1項に記載のリニア電源回路。
【請求項11】
前記出力端子とグランドの間に接続された外付けの出力キャパシタにより位相補償を行う、請求項1から8のいずれか1項に記載のリニア電源回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リニア電源回路に関する。
【背景技術】
【0002】
リニア電源回路は、様々なデバイスの電源回路に用いられている。
【0003】
このようなリニア電源回路の一例として、特許文献1を挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リニア電源回路は、負荷電流が急激に変化した場合でも、出力電圧の変動を小さく抑えられるように、高速な負荷応答特性であることが望ましい。特に、LDO(Low Drop Out)のように低い入出力電位差で動作するリニア電源回路では、入出力電位差に対して、出力電圧の変動がより小さく抑えられていることが望ましい。
【0006】
しかしながら、これまで一般的に用いられてきたリニア電源回路では、電圧帰還型オペアンプを用いて構成されており、電圧帰還型オペアンプを用いたリニア電源回路では負荷応答特性を高速にするのに限界があった。
【0007】
本開示の目的は、負荷応答特性が高速なリニア電源回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本開示の一態様に係るリニア電源回路は、入力信号が入力され、第1電流信号を出力する入力部と、第1電流信号を第1電圧信号に変換する電流電圧変換部と、第1電圧信号を第2電流信号に変換する電圧電流変換部と、カレントミラー回路により第2電流信号から出力電流信号を生成し、出力端子に出力する出力部とを備える。入力部と電流電圧変換部は、電流帰還型オペアンプを構成している。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様に係るリニア電源回路によれば、負荷応答特性が高速なリニア電源回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態に係るリニア電源回路のブロック図である。
【
図2A】
図2Aは、実施形態で用いられる第1カレントミラー回路の構成例を示す図である。
【
図2B】
図2Bは、実施形態で用いられる第2カレントミラー回路の構成例を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るリニア電源回路をバッファアンプとして構成したときの負荷応答特性を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係るリニア電源回路のオープンループ特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、実施形態を説明する。なお、以下で説明する実施形態は、包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の設置位置及び接続形態は、一例であり、本開示に限定する主旨ではない。また、以下の実施形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。さらに、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率と異なる場合がある。
【0012】
図1は、実施形態に係るリニア電源回路100のブロック図である。リニア電源回路100は、第1入力端子としての正入力端子INPと、第2入力端としての負入力端子INNと、入力部1と、電流電圧(I/V)変換部2と、電圧電流(V/I)変換部3と、出力部4と、出力端子OUTとを備える。
【0013】
正入力端子INPには、例えば、入力電圧Vinが入力される。負入力端子INNには、例えば、出力端子OUTからの帰還電流Ierrが入力される。入力部1は、正入力端子INPに入力された入力電圧Vinと負入力端子INNに入力された帰還電流Ierrが入力信号として入力され、入力信号に応じた第1電流信号I11,I12を生成して出力する。電流電圧変換部2は、第1電流信号I11,I12のミラー電流として第1カレントミラー回路11と第2カレントミラー回路12により生成された電流I21,I22を第1電圧信号V1に変換して出力する。第1電圧信号V1の値は、電流I21と電流I22のバランスによって変化する。電圧電流変換部3は、第1電圧信号V1を第2電流信号I31,I32に変換して出力する。出力部4は、第3カレントミラー回路41と第4カレントミラー回路42により第2電流信号I31,I32から出力電流信号としての出力電流Ioを生成し、出力端子OUTに出力する。
【0014】
入力部1は、バッファ回路10を備える。バッファ回路10は、例えば、SEPP(Single Ended Push-Pull)回路で構成されている。バッファ回路10は、正入力端子+の入力インピーダンスが高いのに対して、負入力端子-の入力インピーダンスは低くなっている。すなわち、電流帰還型オペアンプの特徴として、負入力端子-はバッファ回路10の出力端子に相当するので、負入力端子-の入力インピーダンスは低くなっている。正入力端子INPがバッファ回路10の正入力端子+に接続され、負入力端子INNがバッファ回路10の負入力端子-に接続されている。
【0015】
電流電圧(I/V)変換部2は、バイアス回路20を備える。バイアス回路20は、第1カレントミラー回路11と第2カレントミラー回路12を介してバッファ回路10と接続されている。
【0016】
第1カレントミラー回路11は、例えば、
図2Aに示すように、第1トランジスタQ1と第2トランジスタQ2を備える。第1トランジスタQ1と第2トランジスタQ2は、例えば、それぞれ、Pチャネル型MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)により構成されている。第1トランジスタQ1の制御電極(例えば、ゲート)は、第1トランジスタQ1の第1主電極(例えば、ドレイン)および第2トランジスタQ2の制御電極(例えば、ゲート)と接続されている。第1トランジスタQ1と第2トランジスタQ2の第2主電極(例えば、ソース)が互いに接続され、第1直流電源VCC1と接続される電源端子となっている。第1トランジスタQ1の第1主電極(例えば、ドレイン)は、参照電流(第1電流信号I11)が流れる参照電流端子となっている。第2トランジスタの第1主電極(例えば、ドレイン)は、ミラー電流(電流I21)が流れるミラー電流端子となっている。第1トランジスタQ1に対する第2トランジスタQ2の大きさを変更することにより、参照電流(第1電流信号I11)とミラー電流(電流I21)の比率(ミラー比)を調整することができる。例えば、第1トランジスタQ1と第2トランジスタQ2を同じ大きさにすれば、ミラー比が1、すなわち、第1電流信号I11=I21となる。
【0017】
第2カレントミラー回路12は、例えば、
図2Bに示すように、第3トランジスタQ3と第4トランジスタQ4を備える。第3トランジスタQ3と第4トランジスタQ4は、例えば、それぞれ、Nチャネル型MOSFETにより構成されている。第3トランジスタQ3の制御電極(例えば、ゲート)は、第3トランジスタQ3の第1主電極(例えば、ドレイン)および第4トランジスタQ4の制御電極(例えば、ゲート)と接続されている。第3トランジスタQ3と第4トランジスタQ4の第2主電極(例えば、ソース)が互いに接続され、グランドと接続される電源端子となっている。第3トランジスタQ3の第1主電極(例えば、ドレイン)は、参照電流(第1電流信号I12)が流れる参照電流端子となっている。第4トランジスタの第1主電極(例えば、ドレイン)は、ミラー電流(電流I22)が流れるミラー電流端子となっている。第3トランジスタQ3に対する第4トランジスタQ4の大きさを変更することにより、参照電流(第1電流信号I12)とミラー電流(電流I22)の比率(ミラー比)を調整することができる。例えば、第3トランジスタQ3と第4トランジスタQ4を同じ大きさにすれば、ミラー比が1、すなわち、第1電流信号I12=I22となる。また、第1トランジスタQ1と第3トランジスタQ3のミラー比を1とすると、負入力端子INNに流入する電流に誤差電流が含まれないときには、帰還電流Ierrがゼロとなり、第1電流信号I11=I12となる。負入力端子INNに流入する電流に誤差電流が含まれるときには、帰還電流Ierrはゼロにならず、第1電流信号I11+Ierr=I12となる。
【0018】
なお、第1カレントミラー回路11および第2カレントミラー回路12の構成は、上述の構成に限定されない。カレントミラー回路は、よく知られている既存の技術であるので、設計者により、適宜適切な構成を選択することができる。
【0019】
第1カレントミラー回路11は、電源端子に第1直流電源VCC1の直流電圧が供給され、参照電流端子がバッファ回路10の第1端子aに接続され、ミラー電流端子がバイアス回路20の第1端子cに接続されている。第2カレントミラー回路12は、電源端子がグランドに接続され、参照電流端子がバッファ回路10の第2端子bに接続され、ミラー電流端子がバイアス回路20の第2端子dに接続されている。第1カレントミラー回路11の第1トランジスタQ1と第2カレントミラー回路12の第3トランジスタQ3が、入力部1に含まれる。第1カレントミラー回路11の第2トランジスタQ2と第2カレントミラー回路12の第4トランジスタQ4が、電流電圧変換部2に含まれる。
【0020】
入力部1と電流電圧変換部2は、電流帰還型オペアンプ5を構成している。
【0021】
バッファ回路10は、正入力端子+と負入力端子-に入力された入力信号、例えば、入力電圧Vinと帰還電流Ierrに応じて、第1端子aに第1電流信号I11が生成され、第2端子bに第1電流信号I12が生成される。第1カレントミラー回路11により、第1電流信号I11に対して所定のミラー比の電流I21が生成されて、バイアス回路20の第1端子cに入力される。第2カレントミラー回路12により、第1電流信号I12に対して所定のミラー比の電流I22が生成されて、バイアス回路20の第2端子dから出力される。バイアス回路20は、電流I21,I22に応じた第1電圧信号V1を第3端子eと第4端子fの間に出力する。第1電圧信号V1は、電圧電流変換部3の第1端子gと第2端子hに入力される。
【0022】
電圧電流変換部3は、入力された第1電圧信号V1を第2電流信号I31,I32に変換して、出力部4に出力する。電圧電流変換部3には、電源端子に第1直流電源VCC1の直流電圧が供給されている。
【0023】
出力部4は、第3カレントミラー回路41と第4カレントミラー回路42を備える。第3カレントミラー回路41および第4カレントミラー回路42は、
図2A,2Bに示した第1カレントミラー回路11および第2カレントミラー回路12と同様に構成されているため、その詳細な説明は省略する。
【0024】
第3カレントミラー回路41は、電源端子に第1直流電源VCC1とは電圧値が異なる第2直流電源VCC2の直流電圧が供給され、参照電流端子が電圧電流変換部3の第3端子iに接続されている。第4カレントミラー回路42は、電源端子がグランドに接続され、参照電流端子が電圧電流変換部3の第4端子jに接続されている。第3カレントミラー回路41のミラー電流端子は、出力端子OUTを介して、第4カレントミラー回路42のミラー電流端子に接続されている。
【0025】
電圧電流変換部3の第3端子iに流れる第2電流信号I31のミラー電流として、第3カレントミラー回路41により、所定のミラー比の電流I41が生成される。電圧電流変換部3の第4端子jに流れる第2電流信号I32のミラー電流として、第4カレントミラー回路42により、所定のミラー比の電流I42が生成される。電流I41と電流I42の差分が、出力電流Ioとして出力端子OUTに出力される。出力電流Ioが大きい場合、電流I41と出力電流Ioが略等しく、電流I42は略ゼロである。
【0026】
第3カレントミラー回路41の参照電流である第2電流信号I31が流れる第1トランジスタQ1の第1主電極と第2主電極の間に並列に接続された第1抵抗R1を設けてもよい。また、第4カレントミラー回路42の参照電流である第2電流信号I32が流れる第3トランジスタQ3の第1主電極と第2主電極の間に並列に接続された第2抵抗R2を設けてもよい。出力部4に第1抵抗R1と第2抵抗R2を設けることにより、第1抵抗R1と第2抵抗R2に出力部4のアイドリング電流を吸収させて低減することができる。
【0027】
電圧電流変換部3は、入力された第1電圧信号V1を、第3カレントミラー回路41と第4カレントミラー回路42によって構成されている出力部4へ入力するための第2電流信号I31,I32に変換して出力する。出力部4を第3カレントミラー回路41と第4カレントミラー回路42によって構成することにより、出力部4の出力インピーダンスを上げることができる。なお、出力部4の出力インピーダンスを上げる手段は、出力部4を第3カレントミラー回路41と第4カレントミラー回路42によって構成することのみに限定はされない。また、出力部4を第3カレントミラー回路41と第4カレントミラー回路42によって構成することにより、
図1のように、入力部1の第1直流電源VCC1と出力部4の第2直流電源VCC2とを分けることができる。このため、リニア電源回路100では、広い電源電圧範囲に対応することができる。なお、出力部4の電源は、入力部1と同じ第1直流電源VCC1を用いてもよい。
【0028】
電圧電流変換部3と出力部4は、AB級アンプ6を構成している。バイアス回路20は、入力信号Vin,Ierrに応じた第1電流信号I11,I12のミラー電流I21,I22を電流電圧変換した電圧とAB級アンプ6のバイアス電圧が重畳した第1電圧信号V1を電圧電流変換部3に供給する。電圧電流変換部3と出力部4でAB級アンプ6を構成することで、出力負荷変動時に出力電圧Voのオーバーシュートを抑制するためのシンク能力をリニア電源回路100に持たせることができる。なお、アプリケーションによっては、リニア電源回路100はシンク能力がなくてもよい。
【0029】
電流帰還型オペアンプ5は、バイアス回路20によりトランス・インピーダンスを上げるように構成されている。電流帰還型オペアンプのトランス・インピーダンスとは、電圧帰還型オペアンプにおけるオープンループゲインに相当するものであり、トランス・インピーダンスを大きくすることによりゲイン誤差を小さくすることができる。なお、電流帰還型オペアンプ5のトランス・インピーダンスを大きくする手段は、バイアス回路20のみに限定されない。
【0030】
また、電圧帰還型オペアンプは、一般に、位相補償用のキャパシタンスを内部に有する。これに対して、実施形態の電流帰還型オペアンプ5は、内部に位相補償用のキャパシタンスを有していない。その代わりに、出力端子OUTとグランドの間に接続される外付けの出力キャパシタCLによりリニア電源回路100の位相補償を行うことができる。出力部4の出力インピーダンスを上げて、外付けの出力キャパシタCLを位相補償に利用することで、リニア電源回路100の第1ポールを実現し、リニア電源回路100の安定動作を実現することができる。外付けの出力キャパシタCLのキャパシタンスを調整することにより、第1ポールの位置を容易に調整することができる。また、出力部4の出力インピーダンスを上げることで、出力キャパシタCLによる第1ポールの周波数を下げることができるため、リニア電源回路100の安定動作を実現することができる。
【0031】
リニア電源回路100を用いてバッファアンプを構成するときには、リニア電源回路100が電流帰還型オペアンプを用いた構成であるため、出力端子OUTと負入力端子INNとを接続する経路に帰還電流Ierrを流すための帰還抵抗Rfを挿入する。また、帰還抵抗Rfと並列に帰還容量Cfを接続してもよい。リニア電源回路100の進相補償が必要な場合、外付けの帰還容量Cfのキャパシタンスを調整することにより、第2ポールの位置を容易に調整することができる。
【0032】
図3は、リニア電源回路100をバッファアンプとして構成したときの負荷応答特性を示す図である。バッファアンプの構成では、
図1に示すように、出力端子OUTとグランドの間には外付けの出力キャパシタCLが接続されており、出力端子OUTは帰還抵抗Rfを介して負入力端子INNと接続されており、帰還抵抗Rfには帰還容量Cfが並列で接続されている。また、正入力端子INPには、入力電圧Vinが入力されている。ここで、出力キャパシタCL=4.7μF、帰還抵抗Rf=100kΩ、帰還容量Cf=20pF、入力電圧Vin=1.500Vである。
【0033】
図3に示すように、時刻0~50μ秒の間では、出力電流Io=0mA、出力電圧Vo=1.4980Vの定常状態となっている。そして、時刻50μ秒で、負荷電流が変動して、出力電流Ioが0から150mAに変動すると、出力電圧Voが急落して、最大約2mVのアンダーシュートと応答時間約5μ秒の後に、出力電圧Vo=1.4935Vとなり、1.4980Vから少ない変動で安定する。また、時刻100μ秒で、負荷電流が変動して、出力電流Ioが150mAから0mAに変動すると、出力電圧Voが急上昇し、最大約0.3mVのオーバーシュートと応答時間約20μ秒の後に、再び出力電圧Vo=1.4980Vでほぼ安定する。
【0034】
リニア電源回路100のオーバーシュート、アンダーシュート、および応答時間に対して、電圧帰還型オペアンプを用いたリニア電源回路では、少なくとも10倍以上のオーバーシュート、アンダーシュート、および応答時間となってしまう。
【0035】
図4に、出力負荷として4.7μFの出力キャパシタCLが接続されている時のリニア電源回路100のオープンループ特性を参考として示す。
図4の上段はオープンループ利得、下段は位相シフト、横軸は周波数であり、それぞれ、出力電流Ioが150mA(実線)、50mA(破線)、1mA(一点鎖線)の場合を示している。このように、出力電流Ioの大きさによりオープン利得と位相シフトの様相が変化する。また、オープンループ利得の第1ポールの位置は、出力キャパシタのキャパシタンスを調整することによって調整することができる。
【0036】
以上、実施形態に係るリニア電源回路100では、負荷応答時のオーバーシュート、アンダーシュートおよび応答時間を極めて小さくすることができる。すなわち、リニア電源回路100では、負荷電流が急激に変化したときの出力電圧の変動をより小さく抑えることのできる、負荷応答特性が高速なリニア電源回路を提供することができる。
【0037】
また、リニア電源回路100は、負荷応答時のオーバーシュート、アンダーシュートが極めて小さいため、外付けの出力キャパシタCLの容量を小さくすることができるので、部品点数の少数化、低コスト化、省面積化などを実現することができる。
【0038】
また、リニア電源回路100は、負荷応答時のオーバーシュート、アンダーシュートが極めて小さいため、LDO(Low Drop Out)や、各種LSI(Large‐Scale Integration:大規模集積回路)の内部電源などに適格である。
【0039】
なお、上述の実施形態は本発明の一例である。このため、本発明は、上述の実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計などに応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【0040】
(付記)
(付記1:
図1、3)
リニア電源回路100は、入力信号Vin、Ierrが入力され、第1電流信号I11,I12を出力する入力部1と、第1電流信号I11,I12を第1電圧信号V1に変換する電流電圧変換部2と、第1電圧信号V1を第2電流信号I31,I32に変換する電圧電流変換部3と、カレントミラー回路41,42により第2電流信号I31,I32から出力電流信号Ioを生成し、出力端子OUTに出力する出力部4とを備える。入力部1と電流電圧変換部2が電流帰還型オペアンプ5を構成している。付記1に記載のリニア電源回路100によれば、負荷応答特性が高速なリニア電源回路を提供することができるという効果を奏する。また、出力部4をカレントミラー回路41,42により構成することで、出力部4の出力インピーダンスを上げることができる。
【0041】
(付記2:
図1)
付記1に記載のリニア電源回路100において、入力部1は、入力信号Vinが入力される第1入力端子INP、出力端子OUTと電気的に接続される第2入力端子INN、および第1入力端子INPと第2入力端子INNに接続されたバッファ回路10を備え、バッファ回路10から前記第1電流信号I11,I12を電流電圧変換部2に出力する。
【0042】
(付記3)
付記2に記載のリニア電源回路100において、バッファ回路10は、SEPP(Single Ended Push-Pull)回路で構成されている。
【0043】
(付記4:
図1)
付記2に記載のリニア電源回路100において、第2入力端子INNと出力端子OUTの間に接続された帰還抵抗Rfが設けられている。付記4に記載のリニア電源回路100によれば、第2入力端子INNと出力端子OUTの間に接続された帰還抵抗Rfが設けられていることにより、出力端子OUTからの帰還電流Ierrを第2入力端子INNに入力することができる。
【0044】
(付記5:
図1)
付記4に記載のリニア電源回路100において、帰還抵抗Rfと並列接続された帰還容量Cfが設けられている。付記5に記載のリニア電源回路100によれば、リニア電源回路100の進相補償が必要な場合、外付けの帰還容量Cfのキャパシタンスを調整することにより、第2ポールの位置を容易に調整することができる。
【0045】
(付記6:
図1)
付記1から5のいずれか1項に記載のリニア電源回路100において、電圧電流変換部3と出力部4とが、AB級アンプ6を構成している。付記6に記載のリニア電源回路100によれば、電圧電流変換部3と出力部4でAB級アンプ6を構成することで、出力負荷変動時に出力電圧Voのオーバーシュートを抑制するためのシンク能力をリニア電源回路100に持たせることができる。
【0046】
(付記7:
図1)
付記6に記載のリニア電源回路100において、電流電圧変換部2は、前記AB級アンプ6のバイアス回路20を含む。付記7に記載のリニア電源回路100によれば、バイアス回路20によりトランス・インピーダンスを大きくするで、ゲイン誤差を小さくすることができる。
【0047】
(付記8:
図1)
付記1から7のいずれか1項に記載のリニア電源回路100において、カレントミラー回路41,42と並列接続された抵抗R1,R2を更に備える。付記8に記載のリニア電源回路100によれば、カレントミラー回路41,42と並列接続された抵抗R1,R2に出力部4のアイドリング電流を吸収させて低減することができる。
【0048】
(付記9:
図1)
付記1から8のいずれか1項に記載のリニア電源回路100において、入力部1に供給される電源電圧VCC1と出力部4に供給される電源電圧VCC2が異なる。付記9に記載のリニア電源回路100によれば、入力部1の第1直流電源VCC1と出力部4の第2直流電源VCC2とを分けることができるため、リニア電源回路100において広い電源電圧範囲に対応することができる。
【0049】
(付記10)
付記1から8のいずれか1項に記載のリニア電源回路100において、入力部1と出力部4に供給される電源電圧VCC1が共通である。付記10に記載のリニア電源回路100によれば、入力部1と出力部4に供給される電源電圧VCC1が共通であることにより、リニア電源回路100の構成を簡便にすることができる。
【0050】
(付記11:
図1)
付記1から10のいずれか1項に記載のリニア電源回路100において、出力端子OUTとグランドの間に接続された外付けの出力キャパシタCLにより位相補償を行う。付記11に記載のリニア電源回路100によれば、外付けの出力キャパシタCLを位相補償に利用することで、リニア電源回路100の第1ポールを実現し、リニア電源回路100の安定動作を実現することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 入力部
2 電流電圧変換部
3 電圧電流変換部
4 出力部
5 電流帰還型オペアンプ
6 AB級アンプ
10 バッファ回路
11 第1カレントミラー回路
12 第2カレントミラー回路
20 バイアス回路
41 第3カレントミラー回路
42 第4カレントミラー回路
100 リニア電源回路
Cf 帰還容量
CL 出力キャパシタ
I11,I12 第1電流信号
I31,I32 第2電流信号
Ierr 帰還電流(入力信号)
INN 負入力端子(第2入力端子)
INP 正入力端子(第1入力端子)
Io 出力電流(出力電流信号)
OUT 出力端子
R1 第1抵抗
R2 第2抵抗
Rf 帰還抵抗
V1 第1電圧信号
VCC1 第1直流電源
VCC2 第2直流電源
Vin 入力電圧(入力信号)