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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136863
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/52 20060101AFI20240927BHJP
   H01L 23/50 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H01L21/52 A
H01L23/50 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048153
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100152205
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 昌司
(72)【発明者】
【氏名】片廻 陸
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 秀春
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健之
【テーマコード(参考)】
5F047
5F067
【Fターム(参考)】
5F047AA11
5F047AB06
5F047BA01
5F047BA32
5F047BB11
5F047BB16
5F047CB03
5F067BE02
5F067DA14
(57)【要約】
【課題】簡易かつ安価に製造でき、リードフレームに対する半導体チップの面積占有率が改善された半導体装置を提供する。
【解決手段】本実施形態に係る半導体装置は、リードフレームと、半導体チップとを備える。前記リードフレームは、フレーム主面と、前記フレーム主面に設けられたフレーム凸部とを有する。前記半導体チップは、半導体層と、前記半導体層の底面に設けられ、前記フレーム凸部に接合された電極とを有する。前記半導体チップの前記電極は、前記フレーム凸部を囲う突起部を有し、前記突起部の外側面は、前記半導体層の側面と面一である。
【選択図】図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレーム主面と、前記フレーム主面に設けられたフレーム凸部とを有するリードフレームと、
半導体層と、前記半導体層の底面に設けられ、前記フレーム凸部に接合された電極とを有する半導体チップと、
を備え、
前記半導体チップの前記電極は、前記フレーム凸部を囲う突起部を有し、
前記突起部の外側面は、前記半導体層の側面と面一である、半導体装置。
【請求項2】
前記電極のうち前記半導体層に接する面と反対側の電極主面と、前記突起部とによって画成された凹部が、前記リードフレームの前記フレーム凸部と嵌合している、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記半導体チップの前記電極は、前記フレーム凸部側から順に、第1の金属層と、前記第1の金属層に積層され、前記第1の金属層と異なる材料から構成された第2の金属層とを有する、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1の金属層のヤング率は、前記第2の金属層のヤング率よりも大きい、請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1の金属層の材料は、ニッケルおよび/または銅を含み、
前記第2の金属層の材料は、アルミニウムおよび/または銀を含む、請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1の金属層の厚みは、前記第2の金属層の厚みよりも小さい、請求項3~5のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項7】
前記半導体層において前記電極と接する面は平坦である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記半導体チップの前記突起部と前記リードフレームの前記フレーム主面が離間するように、前記フレーム凸部の高さは、前記突起部の高さよりも高い、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記リードフレームの前記フレーム凸部は、複数の小凸部を有する、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記リードフレームの前記フレーム凸部は、四角錐形状を有する、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記リードフレームの前記フレーム主面に、前記フレーム凸部と高さが異なる第2のフレーム凸部が設けられ、
前記半導体装置は、第2の半導体層と、前記第2の半導体層の底面に設けられ、前記第2のフレーム凸部に接合された第2の電極とを有し、前記半導体チップと異なる厚みを有する第2の半導体チップをさらに備え、
前記第2の半導体チップの前記第2の電極は、前記第2のフレーム凸部を囲う第2の突起部を有し、
前記第2の突起部の外側面は、前記第2の半導体層の側面と面一であり、
前記半導体チップの上面の高さと前記第2の半導体チップの上面の高さが同じである、請求項1に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リードフレームを用いて製造される半導体装置として、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、FRD(Fast Recovery Diode)等がある。これらの半導体装置を製造する工程においては、半導体チップをリードフレームにマウントする工程が含まれる。
【0003】
このマウント工程においては、半導体チップの位置や角度がずれるという課題がある。この課題に対して、従来は、ずれを抑制することや、ずれを許容することによって対応されている。しかし、ずれを抑制する場合、位置調整工程を加えることによる工程難度の上昇や、別途の治具を必要とすることによるコストの上昇などの問題があった。一方、ずれを許容する場合、リードフレームに対する半導体チップの面積占有率が低下し、半導体装置の小型化が妨げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4174978号
【特許文献2】特開2007-227762号公報
【特許文献3】特開平5-308084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態は、簡易かつ安価に製造でき、リードフレームに対する半導体チップの面積占有率が改善された半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態に係る半導体装置は、リードフレームと、半導体チップとを備える。前記リードフレームは、フレーム主面と、前記フレーム主面に設けられたフレーム凸部とを有する。前記半導体チップは、半導体層と、前記半導体層の底面に設けられ、前記フレーム凸部に接合された電極とを有する。前記半導体チップの前記電極は、前記フレーム凸部を囲う突起部を有し、前記突起部の外側面は、前記半導体層の側面と面一である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1A】第1の実施形態に係る半導体装置の平面図である。
図1B】第1の実施形態に係る半導体装置の図1AにおけるI-I線に沿う断面図である。
図2】実施形態に係る半導体チップの断面図である。
図3A】実施形態に係る半導体ウェーハをダイシングした後の、ダイシング部分における半導体チップのSEM画像である。
図3B】比較例に係る半導体ウェーハをダイシングした後の、ダイシング部分における半導体チップのSEM画像である。
図4】実施形態に係る半導体チップのSEM画像である。
図5】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための図である。
図6】マウント工程におけるセルフアライメントについて説明するための図である。
図7A】第1の実施形態の変形例1に係る半導体装置の平面図である。
図7B】第1の実施形態の変形例1に係る半導体装置の図7AにおけるII-II線に沿う断面図である。
図8A】第1の実施形態の変形例2に係る半導体装置の平面図である。
図8B】第1の実施形態の変形例2に係る半導体装置の図8AにおけるIII-III線に沿う断面図である。
図9】第2の実施形態に係る半導体装置の断面図である。
図10A】比較例に係る半導体装置の位置ずれについて説明するための図である。
図10B】比較例に係る半導体装置の角度ずれについて説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。実施形態は、本発明を限定するものではない。図面は模式的または概念的なものであり、各部分の比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。明細書と図面において、既出の図面に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0009】
また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、たとえば、「平行」、「同じ」等の用語等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
【0010】
(第1の実施形態)
図1A図4を参照して、第1の実施形態に係る半導体装置1について説明する。図1Aは、本実施形態に係る半導体装置1の平面図である。図1Bは、本実施形態に係る半導体装置1の図1AにおけるI-I線に沿う断面図である。図2は、実施形態に係る半導体チップ20の断面図である。図3Aは、実施形態に係る半導体ウェーハをダイシングした後の、ダイシング部分における半導体チップ20の走査型電子顕微鏡画像(SEM画像)である。図3Bは、比較例に係る半導体ウェーハをダイシングした後の、ダイシング部分における半導体チップのSEM画像である。図4は、実施形態に係る半導体チップ20のSEM画像である。なお、図3Aおよび図3Bは、いずれも半導体ウェーハをダイシングした後のダイシング部分を表しているため、図3Aおよび図3Bには、当該ダイシング部分を中心として2つの半導体チップの端部分がそれぞれ図示されている。
【0011】
図1A図2に示すように、本実施形態に係る半導体装置1は、リードフレーム10と、半導体チップ20と、接合材30とを備える。
【0012】
リードフレーム10は、フレーム主面11と、フレーム主面11に設けられたフレーム凸部12とを有する。フレーム凸部12は、フレーム主面11における半導体チップ20をマウントする領域(搭載領域)となる。図1Aに示すように、フレーム凸部12の大きさは、平面視で半導体チップ20よりも一回り小さい。なお、リードフレーム10は、図示しないリードなどを有してもよい。
【0013】
半導体チップ20は、図1B図3に示すように、半導体層21と、半導体層21の底面に設けられた電極22とを有する。半導体装置1において、半導体チップ20の電極22は、接合材30を介してリードフレーム10のフレーム凸部12に接合されている。図1Aに示すように、本実施形態では半導体チップ20が平面視で正方形状であるため、フレーム凸部12は正方形状である。なお、これに限られず、半導体チップ20は、平面視で長方形状であってもよい。この場合、フレーム凸部12は平面視で長方形状となる。
【0014】
本実施形態では、半導体チップ20はIGBTである。なお、半導体チップ20の種類は特に限定されず、たとえば、半導体チップ20は、MOSFET、FRDなどであってもよい。
【0015】
半導体層21は、半導体チップ20の種類に応じて形成されたp型半導体領域およびn型半導体領域を含む。半導体層21は、たとえばシリコン(Si)、炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)の内いずれかを含む半導体からなる半導体層である。半導体層21の材料としてシリコンが用いられる場合、n型不純物として、たとえばヒ素、リンまたはアンチモンが用いられ、p型不純物として、たとえばホウ素が用いられる。なお、半導体層21は、エピタキシャル層であってもよいし、ウェハが個片化された半導体基板であってもよいし、あるいは、エピタキシャル層と半導体基板から構成されてもよい。
【0016】
電極22は、本実施形態では、IGBTのコレクタ電極である。この場合、半導体層21のうち、電極22に接する面はp型半導体領域となる。
【0017】
接合材30は、半導体チップ20をリードフレーム10に接合する。より詳しくは、半導体チップ20の電極22をリードフレーム10のフレーム凸部12に接合する。接合材30としては、半田、導電性のペーストなど、種々のものが適用可能である。なお、図1Bおよび図2において、接合材30は、半導体チップ20よりも横方向に広がっているが、これに限られず、接合材30は、半導体チップ20と同じ幅であってもよい。
【0018】
次に、電極22の詳細について説明する。図1B図3Aおよび図4に示すように、電極22は、半導体層21に接する面と反対側の電極主面23と、電極主面23に設けられた突起部24とを有する。図4に示すように、突起部24は、電極主面23を囲むように設けられている。電極22がフレーム凸部12に接合された半導体装置1においては、図1Bおよび図2に示すように、突起部24は、フレーム凸部12を囲う。また、本実施形態に係る半導体装置1では、電極主面23はフレーム凸部12の頂面12bと対向し、頂面12bが向く方向と垂直な方向でみたとき、突起部24はフレーム凸部12を囲む。
【0019】
また、本実施形態では、図2に示すように、電極22の電極主面23および突起部24によって画成された凹部Cが、リードフレーム10のフレーム凸部12と嵌合している。より詳しくは、マウント後の突起部24の先端は、フレーム凸部12の上面よりも低い高さに位置し、フレーム凸部12は、左右の突起部24の間に位置する。このように、凹部Cとフレーム凸部12が嵌合することにより、半導体チップ20をフレーム凸部12にマウントする際に、ずれを抑制することができる。なお、本願にいう「嵌合」は、フレーム凸部12と電極22の凹部Cとが厳密に嵌合する場合に限られず、半導体チップ20がフレーム凸部12上に位置決めされる程度に緩く嵌合する場合も含む。
【0020】
また、図2および図3Aに示すように、本実施形態では、突起部24の外側面24aは、半導体層21の側面21aと面一である。言い換えると、外側面24aと側面21aは同一平面上に位置する。より詳しくは、電極22の側面22aは突起部24の外側面24aを含み、側面22aは半導体層21の側面21aと面一である。一方、突起部24の内側面24bは、外側面24aと鋭角に交わり、先端から遠ざかるにつれてより内側(電極主面23の中央側)に向かうような形状である。より詳しくは、突起部24の横方向の長さは、突起部24の先端から電極主面23に向かうにつれて長くなっていく。後述するように、突起部24はダイシングの際に形成されるバリであるため、このような形状となる。
【0021】
電極22の内部構成について説明する。図2および図3Aに示すように、電極22は、フレーム凸部12側から順に、すなわち、半導体チップ20内においては電極主面23側から順に、金属層25と、金属層25に積層された金属層26とを有する。
【0022】
金属層25は、半導体チップ20の底面を形成し、金属層26よりも硬い(すなわち、ヤング率が大きい)金属からなる。金属層25の材料は、たとえばニッケル、銅、またはこれらの両方を含む。本実施形態では、金属層25の材料は、主にニッケルである。なお、金属層25の上に、さらに、金(Au)などからなる表面処理層が設けられてもよい。
【0023】
金属層26は、金属層25と異なる材料から構成され、金属層25よりも柔らかい(すなわち、ヤング率が小さい)金属からなる。金属層26の材料は、たとえばアルミニウム、銀、またはこれらの両方を含む。本実施形態では、金属層26の材料は、主にアルミニウムである。
【0024】
また、図2に示すように、金属層25の厚みT1は、金属層26の厚みT2よりも小さい。特に、突起部24の外側面24aおよび電極22の側面22aにおいて(すなわち、半導体チップ20を側方から見て)、金属層26は金属層25よりも厚い。
【0025】
詳しくは後述するが、このように、柔らかく厚い金属層26の上に、硬く薄い金属層25を設けることにより、ダイシングの際に強固なバリ状の突起部24を形成することができる。
【0026】
ここで、図3Bを参照して、比較例に係る半導体チップについて説明する。比較例に係る半導体チップ200においては、強固な突起部が形成されない。図3Bに示すように、半導体チップ200は、半導体層210の上に電極220が設けられている。電極220は、硬い金属層250と、柔らかい金属層260を有するが、金属層260の厚みは、金属層250の厚み以下である。そのため、図3Bに示すように、比較例に係る半導体チップ200では、突起部240が強固なものとならない。よって、マウント工程において突起部240を用いて、半導体チップ200とフレーム凸部12を嵌合させ、半導体チップのずれを抑制することは困難である。
【0027】
(第1の実施形態の製造方法)
次に、図5および図6を参照して、第1の実施形態に係る半導体装置1の製造方法について説明する。図5は、本実施形態に係る半導体装置1の製造方法を説明するための図である。図6は、マウント工程におけるセルフアライメントについて説明するための図である。
【0028】
まず、図5(1)に示すように、平坦なリードフレーム部材60を用意する。リードフレーム部材60は、リードフレーム10を作製するための板状の材料であり、フレーム主面11と、フレーム主面11の反対側の裏面14とを有する。
【0029】
次に、図5(1)に示すように、プレス機70を用いて、リードフレーム部材60の裏面14から、リードフレーム部材60をプレスする。これにより、図5(2)に示すように、フレーム主面11にフレーム凸部12を形成する。
【0030】
次に、図5(3)に示すように、半導体チップ20をリードフレーム10にマウントする。より詳しくは、まず、フレーム凸部12に接合材30を塗布し、次に、チップマウンターを用いて半導体チップ20をマウントする。このとき、図6に示すように、半導体チップ20のマウント位置がずれていたとしても、フレーム凸部12と凹部Cとが嵌合するように半導体チップ20が自動的に移動するセルフアライメント効果が生じる。すなわち、電極22の突起部24がフレーム凸部12を囲うように移動する。より詳しくは、図6に示す例において、半導体チップ20は、2点鎖線の位置から矢印の方向(右斜め下方向)に移動し、実線で示した半導体チップ20の位置に移動する。これにより、半導体チップ20はリードフレーム10の所定位置(フレーム凸部12)に接合される。
【0031】
以上の工程により、半導体装置1を製造することができる。このように、第1の実施形態に係る半導体装置1の製造方法によれば、フレーム凸部12を有するリードフレーム10と、フレーム凸部12を囲う突起部24を有する半導体チップ20とを備える半導体装置1を簡易に製造することができる。すなわち、位置調整工程を加えることによる工程難度の上昇や、別途の治具を必要とすることによるコストの上昇などを回避し、簡易かつ低コストで半導体装置1を製造することができる。
【0032】
なお、半導体チップ20は、たとえば次のように製造される。
【0033】
まず、半導体層21と、半導体層21の底部に設けられた電極層と有する半導体ウェーハ(図示せず)を用意する。当該電極層は、電極主面側(外側)から順に、ダイシング後に電極22の金属層25となる硬い金属層と、ダイシング後に電極22の金属層26となる柔らかい金属層とを有する。
【0034】
次に、電極層と反対側からダイシングブレードを当て半導体ウェーハをダイシングすることにより半導体チップ20を形成する。ダイシングの際、電極層において、柔らかい金属層が大きく伸びる一方、硬い金属層はあまり伸びない。そのため、硬い金属層が厚みを維持したまま下方に変形し、当該変形により生じた隙間を柔らかい金属層が埋めるように変形する。これにより、図3Aに示すように、硬い金属層25と、柔らかい金属層26とを有する突起部24が形成される。また、図3Aに示すように、突起部24の外側面24aは、半導体層21の側面21aと面一となる。より詳しくは、突起部24の外側面24aを含む電極22の側面22aは、半導体層21の側面21aと面一となる。さらに、ダイシングは半導体チップ20の四方において行われるため、突起部24は電極主面23を囲むように形成される。
【0035】
なお、上記の説明においては、リードフレーム部材60の裏面14からリードフレーム部材60をプレスすることにより、フレーム凸部12を形成した。これに限られず、リードフレーム部材60のフレーム主面11からリードフレーム部材60をプレスすることにより、フレーム凸部12を形成してもよい。また、プレス加工に限らず、リードフレーム部材60にフレーム凸部12となる部材を固定することでフレーム凸部12を形成してもよい。
【0036】
以上説明したように、第1の実施形態に係る半導体装置1によれば、リードフレーム10にフレーム凸部12が設けられ、フレーム凸部12に半導体チップ20の電極22が接合され、電極22がフレーム凸部12を囲う突起部24を有する。すなわち、電極主面23および突起部24によって画成された凹部Cが、フレーム凸部12と嵌合している。これにより、半導体チップ20をマウントする際に、セルフアライメント効果が得られるため、半導体チップ20がフレーム凸部12に適切にマウントされる。
【0037】
ここで、リードフレームに対する半導体チップの面積占有率について、図10Aおよび図10Bを参照して説明する。図10Aは、比較例に係る半導体装置の位置ずれについて説明するための図である。図10Bは、比較例に係る半導体装置の角度ずれについて説明するための図である。
【0038】
図10Aに示すように、強固な突起部を有していない半導体チップ200を、リードフレーム100のフレーム主面110に接合する際に、半導体チップ200がフレーム主面110と平行な方向に移動することがある。また、図10Bに示すように、半導体チップ200を、リードフレーム100のフレーム主面110に接合する際に、半導体チップ200がフレーム主面110と平行な平面内で回転することがある。
【0039】
このように、強固な突起部を有していない半導体チップ200を凸部を設けていないリードフレーム100にマウントする場合、平面視で搭載領域MRを半導体チップ200よりも大きく設計する必要がある。したがって、半導体装置を小型化することが難しくなる。
【0040】
一方、本実施形態に係る半導体装置1では、セルフアライメント効果によりずれが抑制されることから、リードフレーム10における搭載領域は、半導体チップ20の大きさと同程度でよい。そのため、リードフレーム10に対する半導体チップ20の面積占有率を改善することができ、半導体装置1を小型化することができる。
【0041】
また、セルフアライメント効果によりずれが抑制されるため、半導体チップ20のマウント工程において、位置調整工程や、別途または専用の治具を必要とせず、半導体装置1を簡易かつ安価に製造できる。
【0042】
また、専用の治具を必要としないため、異なるサイズの半導体チップ20を容易に製造することができる。
【0043】
なお、たとえば半導体装置1が縦型のNch MOSFETである場合や、半導体装置1がFRDであり、電極22がFRDのカソード電極である場合、半導体層21のうち、電極22に接する面はn型半導体領域となる。この場合、金属層26と半導体層21との間に、当該n型半導体領域と電極22とのオーミック接合を形成する第3の金属層が設けられてもよい。第3の金属層の材料は、たとえばチタンである。チタンは、金属層26の一例であるアルミニウムと比べるとヤング率は大きいものの、金属層26と比べて厚みが十分小さければ、ダイシングの際に強固な突起部24の形成が可能である。このように、第3の金属層を設けることにより、電極22がn型半導体領域に接する場合であっても、電気特性を損なうことなく突起部24を形成することができる。
【0044】
また、半導体層21において電極22と接する面は平坦であってもよい。すなわち、半導体層21自体が、フレーム凸部12を囲う突起部を有していなくてもよい。これにより、半導体の特性への影響を抑制することができる。さらに、金属層25,26の厚みを均一にすることができ、電極主面23を囲う均一な突起部24を形成することができる。そのため、半導体チップ20をマウントする際に、半導体チップ20がフレーム主面11と平行な軸を中心に回転することを抑制することができる。なお、半導体層21と電極22の密着性を向上させるために、半導体の特性への影響が少ない範囲で、半導体層21のうち電極22に接する面が粗化されている場合も、半導体層21において電極22と接する面が平坦であることに含まれる。
【0045】
また、図2に示すように、フレーム凸部12の高さL1は、突起部24の高さL2より高くてもよい。これにより、半導体チップ20を接合する際に、半導体チップ20の突起部24の先端とリードフレーム10のフレーム主面11が離間するため、突起部24の先端がフレーム主面11に当接することによる接合強度の低下を抑制することができる。
【0046】
また、図2に示すように、凹部Cに充填される接合材30の厚みL3は、突起部24の高さL2よりも小さくてもよい。これにより、突起部24によるセルフアライメント効果を向上させることができる。
【0047】
(第1の実施形態の変形例1)
図7Aおよび図7Bを参照して、第1の実施形態の変形例1について説明する。図7Aは、本変形例に係る半導体装置の平面図である。図7Bは、本変形例に係る半導体装置の図7AにおけるII-II線に沿う断面図である。
【0048】
本変形例と第1の実施形態との相違点の1つは、フレーム凸部の形状である。以下、本変形例について、第1の実施形態との相違点を中心に説明し、同様の部分の説明は省略する。
【0049】
図7Aおよび図7Bに示すように、本変形例において、リードフレーム10Aのフレーム凸部は、格子状に整列した複数の小凸部12aを有する。複数の小凸部12aの形状は、たとえば四角錐台形状である。
【0050】
このように、複数の小凸部12aを設けることにより、異なるサイズの半導体チップ20を、リードフレーム10Aに接合することができる。サイズの小さい半導体チップ20については、小凸部12a間の隙間に突起部24が位置するようにリードフレーム10Aに接合すればよい。よって、本変型例によれば、一種類のリードフレーム10Aにより、複数種類の半導体チップ20に対応することができる。
【0051】
また、接合の際に接合材30が小凸部12a間の隙間に浸透しやすく、接合後、接合材30は、第1の実施形態よりも多くの表面積を有することとなるため、リードフレーム10Aと半導体チップ20の接合強度を向上させることができる。
【0052】
なお、このような複数の小凸部12aは、複数の小凸部12aに対応する型を有するプレス機を用いて、リードフレーム10Aのフレーム主面11側からプレスすることにより形成してもよい。
【0053】
また、小凸部12aの数、各小凸部12aの大きさおよび配列形態は、図7Aおよび図7Bに示したものに限定されず、任意である。たとえば、図7Aでは縦方向と横方向にそれぞれ同じ数の小凸部12aが並び、フレーム凸部は、全体として正方形状となっているが、これに限定されず、縦方向と横方向にそれぞれ異なる数の小凸部12aが並び、全体として長方形状であってもよい。各小凸部12aの平面形状は四角形に限らず、三角形等の他の多角形または円状であってもよい。
【0054】
(第1の実施形態の変形例2)
図8Aおよび図8Bを参照して、第1の実施形態の変形例2について説明する。図8Aは、本変形例に係る半導体装置の平面図である。図8Bは、本変形例に係る半導体装置の図8AにおけるIII-III線に沿う断面図である。
【0055】
本変形例と第1の実施形態との相違点の1つは、フレーム凸部の形状である。以下、本変形例について、第1の実施形態との相違点を中心に説明し、同様の部分の説明は省略する。
【0056】
図8Aおよび図8Bに示すように、本変形例では、リードフレーム10Bのフレーム凸部12Bは、四角錐形状を有する。半導体チップ20は、電極22の辺がフレーム凸部12Bの辺と平行になるように位置決めされた状態でリードフレーム10Bに接合される。これにより、リードフレーム10Bは、フレーム凸部12Bよりも辺が短い半導体チップ20であればどのようなサイズにも対応することができる。よって、本変型例によれば、さらに柔軟に、異なるサイズの半導体チップ20に対応することができる。
【0057】
なお、フレーム凸部12Bは、フレーム凸部12Bに対応する型を有するプレス機を用いて、リードフレーム10Bのフレーム主面11側からプレスすることにより形成してもよい。
【0058】
また、フレーム凸部12Bは、上面が平らな四角錐台形状であってもよい。
【0059】
(第2の実施形態)
図9を参照して、第2の実施形態に係る半導体装置について説明する。図9は、本実施形態に係る半導体装置の断面図である。以下、本実施形態について、第1の実施形態との相違点を中心に説明し、同様の部分の説明は省略する。
【0060】
図9に示すように、本実施形態に係る半導体装置は、第1の実施形態に係る半導体装置1に加えて、さらに、半導体チップ40と、半導体チップ40をリードフレーム10Cに接合する接合材50とを備える。また、リードフレーム10Cのフレーム主面11には、半導体チップ40用のフレーム凸部13が設けられている。
【0061】
半導体チップ40は、半導体チップ20と異なる厚みを有する点以外は、半導体チップ20と同様の構成を有する。すなわち、半導体チップ40は、半導体層41と、半導体層41の底面に設けられた電極42とを有する。電極42は、半導体層41に接する面と反対側の電極主面43と、電極主面43を囲むように設けられた突起部44とを有する。また、突起部44の外側面は、半導体層41の側面と面一である。また、半導体チップ40の電極42をリードフレーム10Cのフレーム凸部13に接合した半導体装置において、突起部44はフレーム凸部13を囲う。すなわち、電極主面43はフレーム凸部13の頂面13bと対向し、頂面13bが向く方向と垂直な方向でみたとき、突起部44はフレーム凸部13を囲む。半導体チップ40は、フレーム凸部13と、電極主面43および突起部44で画成された凹部とによって位置決めされる。
【0062】
また、フレーム凸部13は、フレーム凸部12と高さが異なる。より詳しくは、フレーム凸部12,13の高さは、半導体チップ20,40を接合した後に、半導体チップ20の上面の高さと半導体チップ40の上面の高さが同じ高さHになるような高さである。よって、図9に示すように、半導体チップ20よりも半導体チップ40の方が薄い場合、半導体チップ20用のフレーム凸部12よりも半導体チップ40用のフレーム凸部13の方が高さが高い。
【0063】
このように、第2の実施形態に係る半導体装置によれば、異なる厚みを有する複数の半導体チップ20,40を1つのリードフレーム10Cにマウントする場合に、異なる高さを有するフレーム凸部12,13を設けるという簡易な構成により、半導体チップ20,40の上面の高さが揃った半導体装置を提供することができる。そのため、たとえば半導体チップ20と半導体チップ40の間をワイヤーで電気的に接続するワイヤボンディングを安定化することができる。
【0064】
なお、半導体チップ40は、半導体チップ20と同じ厚みであってもよい。この場合、フレーム凸部13は、フレーム凸部12と同じ高さであってもよい。
【0065】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0066】
1 半導体装置
10,10A,10B,10C リードフレーム
11 フレーム主面
12,12B,13 フレーム凸部
12a 小凸部
12b,13b 頂面
14 裏面
20,40 半導体チップ
21,41 半導体層
22,42 電極
23,43 電極主面
25,26,45,46 金属層
24,44 突起部
30,50 接合材
60 リードフレーム部材
70 プレス機
C 凹部
H 高さ
MR 搭載領域
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10A
図10B